結論
RIZAPグループは、会員制の無人型ジム「chocoZAP」を柱にする持株会社だ。ほかに調理家電のBRUNO、スーツのORIHICA、アミューズメントやトレーディングカードのREXTなど、買収で集めた子会社を多数抱える。筆者の結論は、10年で見れば今の値段は割高に傾く、というものだ。理由は、稼ぎの柱がまだ若い一つの事業に寄っていることにある。
立て直しは進んだ。営業利益は前期の約6倍の111億円になり、会社は実質無借金と8期ぶりの復配を宣言した。広告費を大きく絞っても会員が下げ止まったことは、事業に地力があることを示している。
それでも手放しでは買えない。会員数は2年前の目標の半分以下で止まり、ジムという商売は同じ作りの競合がまねしやすい。家賃と設備という固定の約束も重い。堀、つまり他社がまねできない強みが薄い会社に、高い倍率は付けられない。
中立の10年後は、営業利益が今の2倍強、純利益が100億円ほどだ。倍率は資本コストをわずかに上回る程度にとどまり、時価総額は今の2割増し前後に収まる。年率では資本コストに届かない。今の値段は、会員が急回復し海外も当たる筋書きをかなり織り込んでいる。
強気の道は確かにある。出店が再び回り、会員が300万人に近づき、海外が根づけば、時価総額は3倍近くに伸びる。ただ、その確率は1割ほどと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「長く持ち続けたい事業」とは言いにくい。理由は三つある。
一つ目は、10年先の利益が読みにくいことだ。chocoZAPは生まれて5年に満たない。会員の退会率、競合の出方、店舗が成熟した後の収益が、いずれもまだ検証途上にある。わからない事業には、確信を下げる。
二つ目は、堀の薄さだ。会費を上げれば離れ、下げれば利益が消える。ジムは、人気が続く間だけ儲かる商売になりやすい。子会社群の方は小さな堀を持つが、全体を押し上げるほどの力はない。
三つ目は、オーナー利益が見かけより少ないことだ。無人店でも店の改装は数年ごとに必要で、そのたびに投資が要る。会計上の利益から、改装と新店の投資を引いた手取りは、純利益より小さい。
良い点もある。経営の学習は早く、悪い点を数字で直す力は示した。安全域という最後の物差しでは、いまの値段が、会員の急回復と海外の成功をかなり前提にしている点が気になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は三つに分かれる。第一にchocoZAP。月々の会費は3千円前後で、24時間いつでも使える小さな無人店舗だ。ジムのほかにセルフ脱毛や白髪染め、コンビニ機能を詰め込み、ふだん運動しない人の入口になった。国内は2,030店、会員は約117万人に達し、香港や台湾にも出ている。会費は毎月入る積み上げ型で、ここが利益を牽引する。
第二は、会社名の由来であるRIZAP。2か月のパーソナル指導に数十万円を払う高額商品で、ピーク時に比べ規模は縮んだ。いまは広告の入口としての役割も大きい。
第三が、買収で積み上がった子会社群で、売上の7割を占める。BRUNOはおしゃれな調理家電とカタログギフト、ORIHICAは低価格スーツ、REXTはアミューズメントとトレーディングカード、一新時計は時計の小売り。いずれも国内の成熟市場で、数量は伸びにくい。
かつては赤字の会社を安く買って立て直す「結果にコミット」の寄せ集めで、2019年3月期は190億円超の赤字を出した。その後、不採算を整理し、柱を一つに絞る形に変わった。chocoZAPの利益が連結の半分を超えた今は、事実上「chocoZAPと、その資金源の子会社群」という二層の会社だ。
会費は前払いに近い形で入り、現金の回収は早い。一方、店舗は借りて営むため、家賃と設備の償却が毎月の固定費になる。会員が一定数を割ると利益が急に落ちるのが、この商売の怖いところだ。
優良さと弱いところ
この会社の堀は薄い。最も強みがあるのは、いまのchocoZAPの店舗数と認知度だ。2,000店という密度は、近所に店がある安心感になる。広告費を半分以下に絞っても会員が減り止まったのは、その証拠といえる。
ただし、ジムの商売そのものには、他社が入りにくい壁がない。24時間・無人という形は、エニタイムフィットネスやカーブスの店舗網、それに格安ジムが同じ土俵で攻めてこられる。会員が離れる費用も低い。会費を上げにくいのも、この構造から来る。
資本の使い方にも傷がある。2019年に営業赤字を出した過去には、拡大を急いだ買収と出店の失敗が重なった。直近2年間で、出店と広告を止める決断ができた点は、経営の学習として評価できる。それでも、創業者で社長の瀬戸氏が議決権の過半を握り、他の株主が経営の方向を止めにくい。
ROEは過去10年の中央値で1.7%、直近でも3%にとどまる。資本コストを稼げた年はほとんどない。今期の予想でようやく8%だ。
一方、子会社群のうちREXTや一新時計は過去最高益を出しており、堀は個別に見れば小さな商売でも存在する。ただ、全体の稼ぐ力を支えるのはまだchocoZAPだ。その利益が、競合の参入と退会率の上下でどれだけ続くかが、会社の質を決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のフィットネス市場は、会員数の面では人口減で頭打ちに近い。ただ、運動をほとんどしない層はなお厚く、入口を安く広くするモデルで市場に新しく人を呼び込めるのが、chocoZAPの勝ち筋だ。
競合はすでに多い。エニタイムフィットネスは国内で1,100店規模、カーブスは女性向けに2,000店と会員約88万人を持つ。chocoZAPは出店と会員の両方でこの2強に並んだ。次に、各地の格安ジムと、自治体の公営施設が低価格で競う。
市場の中でのchocoZAPの位置は「安さと近さ」だ。品質で選ぶ人はエニタイムや高級ジムへ行き、時間と手間をかけたくない人がchocoZAPを使う。この層は、少し会費が上がると離れやすい。会社自身も、キャンペーン経由の会員は退会率が高いと認めている。
海外では、香港で会員が日本の1.4倍、客単価は1.8倍という。日本より所得が高く、ジム自体が高価な市場に、安くて近い無人店を持ち込む形だ。ただ、現地のジム大手や家賃の高さとの勝負になる。まだ19店規模で、成否の判断は早い。
子会社群の側は、国内の成熟した小売り・娯楽だ。調理家電、スーツ、時計、アミューズメントとも、人口が減る中で数量は伸びない。トレーディングカードのような一時の追い風はあるが、持続はわからない。ここは「物価分の値上げが通れば、利益率を保てる」業態だ。
人件費の上昇は無人店が中心のchocoZAPには比較的軽い。一方、家賃と電気代の上昇は物価並みに効く。
資本政策と M&A
お金の使い方は、攻めから守りへ、そしてまた攻めへと動いている。2024年から2025年にかけて出店と広告を絞り、現金を生んだ。営業キャッシュフローは年300億円を超え、現預金が有利子負債を上回る形になった。リース負債まで含めた純負債は、なお数百億円ある。
その現金は、まず配当へ向かった。無配は8期続き、2026年3月期にようやく復配した。2027年3月期は配当性向20%を目安とし、上限26億円の自社株買いも決めた。還元は小さいが、始まったことの意味は大きい。
同時に、2027年3月期は150億円超の成長投資に踏み切る。国内最大650店、海外最大150店を新設し、既存の約1,900店を全面改装する。店舗の改装で解約を減らすという筋だが、2年前に出店を急いだ結果の失敗を知る投資家には不安が残る。
買収の側では、かつての「安く買って立て直す」路線は止まっている。子会社は今も数多く、上場子会社も複数持つ。支配株主がいる以上、会社の売り手・買い手としてのTOBは、創業者の意向が最優先だ。参考の統計上は10年以内のTOBが約2割とされるが、筆者は低いとみる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
chocoZAPはまだ序盤だ。国内の潜在店舗数は8,000店とされ、いまの2,000店は4分の1にすぎない。店舗が増えれば会員が増え、広告の効率も上がる。既存店の95%が3か月連続で黒字になり、損益分岐の会員数はこの2年でほぼ半分に下がった。固定費の重い商売が、軽くなったことを意味する。
海外も大きい。香港は会員が日本の1.4倍、客単価が1.8倍と出ている。台湾、韓国、さらにその先で同じ形が通れば、国内の天井を超える成長になる。売上の7割を占める子会社群も、REXTが過去最高益を更新するなど、一つ一つが稼ぐ形に変わった。
財務の傷は癒えた。営業キャッシュフローは年300億円を超え、実質無借金だ。復配も始まった。いまの時価総額は、営業利益の9倍ほどにすぎず、利益が200億円台に乗れば、倍率が据え置きでも株価は2倍になる。会員が300万人に届けば、利益は400億円も見える。
もう一つ、固定費の読み方がある。無人店は人件費が軽く、店舗が成熟すれば利益の大半が会費から手元に残る。会員が積み上がるほど、広告と本部の費用は薄まる。10年の間に、この形が一巡すれば、利益率は今の想定より高い所に落ち着く余地がある。
慎重な見方
会員数は2年前の目標の半分以下で、2025年には110万人まで減った。いまの117万人は回復というより下げ止まりにすぎない。会社の掲げた「2027年3月期に営業利益400億円」は、いつの間にか姿を消した。
ジムという事業は、同じ形の競合がいくらでも作れる。エニタイム、カーブス、格安ジムが近くにあり、会費を上げれば会員は離れる。利益が戻ったのは、広告と出店を止めたからで、再び出店と広告を増やせば、利益は押し下げられる。150億円超の成長投資は、その転換点だ。
連結の売上の7割を占める子会社群は、どれも成熟した国内小売りで、数量は人口とともに細る。しかも、店舗の家賃は年70億円規模の固定の約束で、会員が減れば利益は急に消える。2019年の190億円超の赤字は、遠い昔の話ではない。
創業者が議決権の過半を握る体制では、拡大を急ぐ判断を、外から止めにくい。実質無借金といっても、リース負債を含めれば純負債は数百億円残る。この会社に高い倍率が付くには、まだ実績が足りない。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力が戻った点では強気の言い分が強い。だが10年の価値を決めるのは、会員が減っても利益が続くかという耐久力で、ここは慎重な見方に分がある。堀が薄く、競合が同じ形で攻められる事業には、高い倍率は付けられない。
そこで確率は、中立に3割台半ばを置き、楽観とやや楽観の合計を3割台前半に抑えた。悲観は、過去に破綻の寸前まで行った事業の歴史を重く見て、1割強にとどめた。結果として、中立でも時価総額は今の2割増し前後にとどまり、資本コストを超える利回りは出ない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 233 円1,386 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 41 円245 億円)。 今の値に割り戻すと 122 円729 億円、今との差 −26.2%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 601 円3,578 億円 | 81 円480 億円 | +310.6% | +15.2% | 82 円487 億円 |
| やや楽観 | 22% | 338 円2,014 億円 | 60 円360 億円 | +140.2% | +9.2% | 88 円522 億円 |
| 中立 | 34% | 207 円1,229 億円 | 42 円250 億円 | +49.7% | +4.1% | 84 円503 億円 |
| やや悲観 | 20% | 57 円338 億円 | 18 円105 億円 | −55.2% | −7.7% | 15 円89 億円 |
| 悲観 | 12% | 39 円230 億円 | 3 円15 億円 | −75.2% | −13.0% | 5 円29 億円 |
| 加重平均 | 100% | 233 円1,386 億円 | 41 円245 億円 | +65.0% | +5.1% | 274 円1,630 億円 |
今の株価時価総額 166 円988 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 12% chocoZAPが国内外で根づき、利益が4倍に 利益 256 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 601 円3,578 億円
chocoZAPが国内で3,500店規模まで広がり、台湾・韓国・東南アジアでも根づく。会員は300万人に近づき、会費の入る安定した積み上げ型が利益を押し上げる。女性専用店とAI店長の導入で退会率が下がり、広告費をかけなくても会員が自然に増える。
店舗は成熟し、1店ごとの利益率が上がる。売上に占める本部の広告と管理の費用の割合が下がり、chocoZAPの営業利益率は27%に届く。海外は、客単価の高さで国内より稼ぐ店になる。
子会社群は、REXTやBRUNOが主力商品を伸ばし、利益率が7%に改善する。子会社の統合も進み、少数株主の取り分が減る。実質無借金を保ち、配当と自社株買いを増やす。10年間、競合と退会率の悪化を一度も大きく受けない、最も理想的な10年になる。
- chocoZAP(会員制の無人型ジム):数量 300(平均会員数(万人・国内外の合計))× 価格 4.60(1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む))→ 売上 1,380 億円・営業利益 373 億円。会員 300 万人 × 1 人 4.6 万円(今の 1.46 倍)、営業利益率 27%
- RIZAP(パーソナルジム)ほか:数量 2.8(年間の新規契約者数(万人))× 価格 49(1 人あたり契約額(万円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 17 億円。契約 2.8 万人 × 49 万円、営業利益率 12%
- その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群):数量 40,000(対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア)× 価格 4.8%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,930 億円・営業利益 135 億円。対象市場 4 兆円 × シェア 3.6%(価格=シェア×物価 1.34 倍)、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 256 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.5% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.47 倍、時価総額 3,447 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内外の出店が10年間途切れず、退会率も落ち着くという連続した成功が必要で、実績の短い事業には確度が高くないので1割余りに置いた。
やや楽観 22% 国内の出店が続き、会員が倍近くに 利益 160 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 338 円2,014 億円
国内は3,300店まで増え、会員は230万人台になる。海外は香港を中心に50店ほどで、規模はまだ小さい。広告の効率が改善した状態が続き、退会率は今より少し低い水準に落ち着く。
店舗の改装が効いて、利用者の満足度が上がる。会費は物価並みに上げられ、客単価も海外の高い単価が混ざって上がる。営業利益率は23%に届く。ただ、競合の進出は続き、最高水準までは伸びない。
子会社群は、物価分の値上げが通り、利益率は6%台に上がる。数量は人口減で少しずつ減る。復配後は配当性向を3割へ引き上げ、自社株買いも続ける。堅実に伸びる、強気の中でもやや控えめな10年だ。
- chocoZAP(会員制の無人型ジム):数量 235(平均会員数(万人・国内外の合計))× 価格 4.50(1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む))→ 売上 1,058 億円・営業利益 243 億円。会員 235 万人 × 1 人 4.5 万円(今の 1.42 倍)、営業利益率 23%
- RIZAP(パーソナルジム)ほか:数量 2.6(年間の新規契約者数(万人))× 価格 49(1 人あたり契約額(万円・名目))→ 売上 127 億円・営業利益 13 億円。契約 2.6 万人 × 49 万円、営業利益率 10%
- その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群):数量 39,000(対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア)× 価格 4.4%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,725 億円・営業利益 107 億円。対象市場 3.9 兆円 × シェア 3.3%、営業利益率 6.2%
倍率:事業の純利益 160 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.5% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.32 倍、時価総額 1,968 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の出店が続き、会員が今の2倍弱に増える筋書き。広告効率が改善した今の勢いの延長線にあるので、2割強を置く。
中立 34% 会員は伸びるが、競合と退会で利益率は平準化 利益 104 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 207 円1,229 億円
国内は2,900店ほどで増加が止まり、会員は190万人にとどまる。海外は香港・台湾で100店規模の足がかりを作る。競合のエニタイムやカーブスも対抗し、会費の引き上げは物価に届かないが、海外の高い単価の分が客単価を押し上げる。
広告費は、会員を維持するために今より増える。利益率は20%に落ち着く。店舗は改装のたびに投資が要り、手取りの利益は見かけの純利益よりやや小さい。
子会社群は、国内の人口減で数量が5%ほど減るが、値上げで売上はほぼ物価分伸びる。利益率は5.5%で今と変わらない。RIZAP本体は契約数が細り、広告の入口としての役割に徹する。
全体で、営業利益は今の2倍強になる。ただし純利益は営業利益の4割台半ばにとどまる。リースの金利と少数株主の取り分があるためだ。堅実な、普通に強い10年である。
- chocoZAP(会員制の無人型ジム):数量 190(平均会員数(万人・国内外の合計))× 価格 4.40(1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む))→ 売上 836 億円・営業利益 167 億円。会員 190 万人 × 1 人 4.4 万円(今の 1.39 倍)、営業利益率 20%
- RIZAP(パーソナルジム)ほか:数量 2.4(年間の新規契約者数(万人))× 価格 49(1 人あたり契約額(万円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 9 億円。契約 2.4 万人 × 49 万円、営業利益率 8%
- その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群):数量 38,000(対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア)× 価格 4.0%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,528 億円・営業利益 84 億円。対象市場 3.8 兆円(実質 0.95 倍)× シェア 3.0%、営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.45 倍、時価総額 1,193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会員は倍近くまで伸びるが、競合が増え、会費の引き上げが通りにくい中で利益率が平準化する筋書きの中心値で、最も厚く置いた。
やや悲観 20% 競合と退会に押され、利益が伸びない 利益 37 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 57 円338 億円
競合が増え、会員は140万人に伸び悩む。キャンペーン経由の会員は離れやすく、広告費を増やさないと会員を維持できない。国内の出店は2,300店で打ち止めになり、改装投資の回収が遅れる。
客単価は物価に届かない。無人店でも、同じ形の競合に値下げで対抗せざるを得ないからだ。営業利益率は12%まで下がる。固定の家賃と設備が重く、会員が1割減ると利益は3割近く減る構造になる。
海外は香港で数十店にとどまり、赤字が続く。子会社群は、人口減と消費の低迷で数量が減り、利益率は4%に下がる。それでも事業が崩れるわけではなく、配当は小さく続く。成長が止まった、冴えない10年だ。
- chocoZAP(会員制の無人型ジム):数量 140(平均会員数(万人・国内外の合計))× 価格 3.90(1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む))→ 売上 546 億円・営業利益 66 億円。会員 140 万人 × 1 人 3.9 万円(今の 1.23 倍)、営業利益率 12%
- RIZAP(パーソナルジム)ほか:数量 2.0(年間の新規契約者数(万人))× 価格 45(1 人あたり契約額(万円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。契約 2.0 万人 × 45 万円、営業利益率 3%
- その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群):数量 36,000(対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア)× 価格 3.8%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,351 億円・営業利益 54 億円。対象市場 3.6 兆円 × シェア 2.8%、営業利益率 4%
倍率:ROE 5.4% が k 9.25% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、PER の上限は 1÷k=11.1 倍。競合に押され利益が伸びず、固定の家賃も重いので、上限の 7.7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:競合が増え、キャンペーンに頼る会員が離れ、広告費が戻って利益が伸びない筋書き。過去2年の会員減少が実際に起きたことを重く見て、やや高めの2割にした。
悲観 12% 会員離れと固定費で、再び赤字に 利益 −45 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 39 円230 億円
chocoZAPは過当競争に飲み込まれる。同じ形の無人ジムが各地に増え、会員は85万人まで減る。会費を下げて対抗するが、家賃と設備の固定費が重く、店ごとの利益が出なくなる。1,000店以上の閉店と減損が出て、自己資本が削られる。
RIZAP本体は契約数が細り、広告の入口としての役割も失う。子会社群も、家賃が固定のまま売上が落ち、利益率は2%に下がる。赤字の子会社の整理に再び追われ、かつての2019年の姿に近づく。
配当は初めの数年に合計15億円ほど払ったあと止まり、自社株買いもできない。この分は利益でなく、手元の現金と店舗・資産の売却で払う。純負債が再び増え、財務の自由度がなくなる。創業者の支配が続く中で、方向転換の判断が遅れる。事業の質が崩れ、優良さを失った10年になる。
- chocoZAP(会員制の無人型ジム):数量 85.0(平均会員数(万人・国内外の合計))× 価格 3.50(1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む))→ 売上 298 億円・営業利益 −6 億円。会員 85 万人 × 1 人 3.5 万円(値下げ)、営業利益率 -2%
- RIZAP(パーソナルジム)ほか:数量 1.5(年間の新規契約者数(万人))× 価格 40(1 人あたり契約額(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 −3 億円。契約 1.5 万人 × 40 万円、営業利益率 -5%
- その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群):数量 33,000(対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア)× 価格 3.2%(シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,061 億円・営業利益 21 億円。対象市場 3.3 兆円 × シェア 2.4%、営業利益率 2%
倍率:赤字になるので PER は使わず、PBR で置く。床は今の自己資本505億円に 0.455 倍を掛けた230億円。子会社群の稼ぐ力(営業利益21億円の約10倍)と売れる在庫・店舗資産の税後で支えられる額とみて、ためた利益を床にはしない。自己資本は減損後の320億円。
確率:会員離れと固定の家賃で再び赤字に戻る筋書き。2019年に実際に190億円超の赤字を出した経緯があるので、5%未満にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
chocoZAP(会員制の無人型ジム)
月々の会費が3千円前後で使える24時間の無人店舗。国内2,030店・海外26店、会員は約117万人。連結営業利益の半分超を稼ぐ。
| 数量平均会員数(万人・国内外の合計) | 価格1 人あたり年間売上(万円・名目、会費と物販・海外の高単価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 114 | 3.16 | 360 | 58 |
| 10 年後 中立 | 190 | 4.40 | 836 | 167 |
取り方:会員は 2025 年 11 月の 110.5 万人から 2026 年 6 月の 116.7 万人の間で、年度の平均を約 114 万人と置いた。売上は開示がなく、RIZAP 関連事業(chocoZAP と RIZAP)の売上 466 億円から RIZAP 本体の分を引いた推定で約 360 億円(1 人あたり年 3.2 万円。月額に直すと 3 千円弱で、キャンペーン値引きと入会月の按分を含む)。営業利益は「連結 111 億円の 5 割超」から 58 億円と置いた(推定)。会員数は実質の数量で、物価の分と海外の高単価は 1 人あたり売上に入れた。 数量は実物(会員数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
RIZAP(パーソナルジム)ほか
2 か月の指導に数十万円を払う高額コースが中心。いまは chocoZAP への広告の入口の役割も持つ。
| 数量年間の新規契約者数(万人) | 価格1 人あたり契約額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.9 | 37 | 106 | 9 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 49 | 117 | 9 |
取り方:RIZAP 関連事業の売上 466 億円から chocoZAP の推定 360 億円を引いた約 106 億円を、年間契約約 2.9 万人 × 1 人約 36.5 万円と置いた(推定。開示なし)。営業利益は関連事業の改善額(+52.5 億円)から chocoZAP を引いた残りで約 9 億円(推定)。
その他既存事業(家電・スーツ・時計・アミューズメントなど子会社群)
BRUNO(調理家電)、ORIHICA(スーツ)、REXT(アミューズメント・トレカ)、一新時計、SD エンタテインメントなど。売上の 7 割を占める。
| 数量対象の国内市場の合計(億円・実質、今の値段)× シェア | 価格シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40,000 | 3.0% | 1,206 | 66 |
| 10 年後 中立 | 38,000 | 4.0% | 1,528 | 84 |
取り方:連結売上 1,672 億円から RIZAP 関連の 466 億円を引いた約 1,206 億円。対象市場は、調理家電・紳士服・時計・アミューズメント・トレーディングカードなどの国内小売りの合計を約 4 兆円と置いた粗い推定で、そこでのシェアは約 3.0%。営業利益は連結 111 億円から他を引いた推定で約 66 億円(率 5.5%)。数量は市場の実質規模、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
同じ形の競合が増える
無人・24時間のジムは、エニタイムフィットネスやカーブスなど既存大手と格安ジムが、同じ土俵で追ってこられる。会費を上げれば離れ、下げれば利益が消える。堀の薄さが、10年の利益と倍率の両方を縛る最大の論点だ。
退会率とキャンペーン依存
会社自身が、キャンペーン経由の会員は退会率が高いと認めている。2025年には会員が110万人まで減った。広告を絞れば利益は出るが、増やせば会員は増えても利益が薄まる。この綱引きが続く限り、利益は上下する。
家賃と設備という固定の約束
2,000店の家賃は年70億円規模と推定され、会員が減っても払い続ける。1,900店の全面改装も投資になる。会員が一定数を割ると、利益が急に消える。悲観の筋書きでは、この固定費が赤字の主因になる。
拡大を急ぐ癖
2019年3月期は、買収と出店の拡大が裏目に出て、190億円超の赤字を出した。2027年3月期は150億円超の投資で出店を再加速する。創業者の議決権が過半で、外から止めにくい。同じ失敗の再発を、筆者は最も警戒する。
子会社群の成熟と人口減
売上の7割を占める子会社群は、調理家電、スーツ、時計、アミューズメントなど国内の成熟市場だ。人口が減る中で数量は伸びず、物価分の値上げが通るかが鍵になる。トレーディングカードの追い風は一時の可能性がある。
海外展開の不確実性
香港は会員も客単価も日本より高いと会社は説明するが、まだ19店だ。現地のジム大手や高い家賃と戦う必要がある。海外で最大150店を一気に出す計画は、失敗した時の損失も大きい。
支配株主と上場子会社
創業者の瀬戸氏が議決権の過半(約55%)を握る。上場子会社の少数株主との利益の食い違いや、配当・自社株買いの姿勢が創業者の意向に左右される点は、他の株主にとって読みにくい。
今後の分かれ目
- chocoZAPの会員が、出店と広告を増やしても退会率が上がらず、150万人を超えて伸び続けたら
- 広告効率が本物とみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。国内の潜在店舗数も見直す。
- 会員数がまた前年を割り、出店の増加を打ち消したら
- やや悲観・悲観に重みを移す。今の利益は広告と出店を止めた結果にすぎないという見方が正しくなる。
- 香港・台湾の店が黒字化し、会員が日本並みに積み上がったら
- 海外の上乗せを楽観に近づけて見直す。単価が高い分、全体の利益率を押し上げる。
- エニタイムやカーブスが、無人・低価格の新業態で本格的に追ってきたら
- 会費を上げにくくなるので、利益率の前提を下げる。
- 子会社群の整理や売却が進み、少数株主の取り分が減ったら
- 純利益÷営業利益の比が改善するので、純利益の見立てを少し上げる。
- 出店の再加速で営業利益が会社予想の下限(120億円)を割ったら
- 投資の回収が遅れているとみて、中立の確率を下げ、やや悲観に寄せる。
見ておくもの
- chocoZAPの会員数(四半期)と退会率の推移
- 既存店の黒字比率と損益分岐の会員数
- 営業利益と純利益の差(リースの金利と少数株主の取り分)
- 香港・台湾の店舗数と1店あたりの会員数
- 子会社群(REXT・BRUNO・ORIHICA)の利益率と、上場子会社の整理の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト9.25%(基本7.5%に品質+1.5%)と長期の成長率4.0%から、利益ベースの正当化PERで決めた。中立のROEは10.9%でk 9.25%をわずかに上回るだけなので、PERは下限(1÷k=11.1倍)に近い11.3倍になる。今の株価は、最近の利益が小さいためPERが極端に高く、それには寄せていない。売上は、chocoZAPを会員数×1人あたり年売上、RIZAP本体を契約数×単価、子会社群を対象市場×シェアで積んだ。物価3%は価格の側に入れ、会員数や市場には混ぜていない。IFRSの会社なので店舗のリースはすでにBSに載っており、営業利益は家賃でなく減価償却と利息に分かれた形だ。10年後もこの形でそろえた。リースの金利は純利益÷営業利益の比(中立で0.45)に入れ、会員が減った時は家賃が固定で残ると悲観の利益率に反映した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.47 倍・やや楽観 PER 11.3→12.32 倍・中立 PER 11.3→11.45 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の上乗せ1.5%を足して9.0%。事業が傾いているとまでは言えないので、extra は付けない。個別のリスクは筋書きと確率に入れた。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 9.25%。