結論
キャンドゥは 百円ショップの国内第 3 位で、イオンが親会社の専門店だ。筆者の結論は、事業は悪くないが今の値段は高すぎる、というものだ。最大の理由は利益の小ささにある。売上は 870 億円あるのに営業利益は 15 億円、純利益は 4 億円台にすぎない。
同社は店舗数が 1,350 店を超え、国内の 百円ショップ市場(約 1.1 兆円)の 1 割弱を占める。ダイソーが 6 割余り、セリアがその 3 分の 1 強で、キャンドゥは大手 2 社のあとを追う立場だ。売上に対する利益の取り分は、過去 10 年のほとんどで 1〜3% にとどまる。2024 年 2 月期は純損益が赤字になった。
追い風はイオンの出店網と共同仕入れで、三百円・五百円の商品を増やす動きも利益率を押し上げる。それでも 10 年後の中立では、利益率は 3% 手前、純利益は今の 4 倍弱にとどまると筆者は見る。
本質価値は今の時価総額の 2 割ほどで、割高と判断する。楽観の筋書きですら、今の値段に届かない。今の株価は、イオンによる買い取りへの期待や再建の成功を先に払っている値段だと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、キャンドゥは持ち続けたいと思える会社ではない。理由は、堀が薄く、利益が小さすぎるからだ。売上が 870 億円あっても、残る利益は 15 億円で、株主のものになる純利益は 4 億円台だ。事業の儲けが安定して厚いとは言えず、安全域を取る土台が無い。
評価できる点はある。百円ショップは景気に強く、イオンという親会社の後ろ盾もある。出店網と共同仕入れが形になれば、利益率は 2016 年ごろの 3% 台に戻りうる。それでも、10 年後に純利益が 16 億円ほどになるという中立の見立てでも、10 年後の時価総額は今の 4 割にとどまる。
経営の資本の使い方には、疑問が残る。減損と退店の費用が毎年のように出ており、新しい店への投資が稼ぎに結びついているとは言い切れない。ダイソーとセリアという、規模で勝る 2 社がある以上、キャンドゥが先に出る場面は少ない。
筆者がいちばん気にしているのは、今の値段だ。時価総額 500 億円は、利益が 4 倍になることを、前払いしているに等しい。わからない事業ではないが、払う値段に見合わない。
何で稼ぐ会社か
キャンドゥは、百円ショップ「Can★Do」を全国で 1,350 店余り運営している。直営店が中心で、フランチャイズの店と、ネット通販が加わる。売るのは日用雑貨・文具・台所用品・手芸用品・季節の商品などで、1 店に数万点の品が並ぶ。
特徴は店の置き場所だ。ダイソーとセリアが郊外のロードサイドや大型店を軸にするのに対し、キャンドゥは都心の駅ビルや商業施設の小さな区画に多く出てきた。家賃は高いが、人通りに頼れる。2021 年にイオンが親会社となってからは、イオンのモールとスーパーの中への出店が増え、WAON も使えるようになった。
商品は 百円が土台だが、三百円・五百円の「脱・百円」の品を増やし、大人向けの雑貨や食品も扱う。新業態「ライフスタイル提案型ショップ」も展開する。中国・東南アジアで商品を作り、日本で売る。為替と海外の人件費が原価に直接響く。
収益の源は単純で、店の数と、1 店当たりの売上だ。店の数は人口と出店余地で決まり、1 店当たりの売上は、客数と、1 人が何点買うかで決まる。値段を上げにくい商売なので、買う点数と、高い値段の商品の比率が伸びの鍵になる。1 店当たり売上は 6,400 万円ほどで、ダイソーやセリアの店よりは小ぶりである。
優良さと弱いところ
キャンドゥの堀は薄い。百円ショップは仕入れの規模が効く商売で、規模の上位はダイソー、セリアだ。キャンドゥは 3 位で、仕入れ価格でも店の売上でも、先を行く 2 社に及ばない。1 店当たりの売上が小さいため、家賃と人件費が重くのしかかる。
成績もそれを表している。売上高営業利益率は過去 10 年のほとんどが 1〜3% で、ROE の中央値は 3% 台だ。2023 年 2 月期から 3 期は営業利益がほぼ消え、純損益は赤字が続いた。ダイソーやセリアと同じ 百円の看板の下で、原価と人件費の上昇をどこまで価格に転嫁できるかが勝負になる。
強みは 2 つある。1 つは、イオンの出店網と共同仕入れという後ろ盾だ。もう 1 つは、都心の駅前や商業施設に多く出ている点で、郊外型の 2 社が入りにくい場所を押さえている。ただ、この強みは、利益率を目に見える形で押し上げるまでには至っていない。
経営については、直近の 2026 年 2 月期に営業利益が 8 割増えるなど立て直しは進むが、純利益 4 億円台は、まだ「利益の質が変わった」と言い切れる水準ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
百円ショップ市場は約 1.1 兆円で、3 年連続で 1 兆円を超えた。成長率は 2025 年度で 2.7% にとどまり、前年度の 6.8% から鈍っている。大手 4 社の店舗は約 8,900 店で、2030 年に 1 万店規模になるとの見通しがある。市場はなお伸びるが、伸びの中心は 三百円以上の品への移行だ。
業界の勝者はダイソーで、市場の 6 割余りを占める。セリアは大創産業の 3 分の 1 強の売上を持ち、利益率は 百円ショップで最も高い。3 位がキャンドゥ、4 位がワッツだ。トップ 2 社の店舗網が広がるほど、キャンドゥが出せる好立地は減る。
数量の見通しは国内の人口減で伸びにくい。店数の増加は競争の激化と表裏一体で、1 店当たりの売上を押し上げにくい。物価が上がる局面では、百円という看板が縛りになる。原価と人件費が上がっても値上げの幅が限られ、利益率が削られる。
景気の影響は小さく、節約志向で客足はむしろ伸びる。この点は他の専門店より強い。ただし、値上げが通りにくいため、利益は景気の外ではなく原価の波に左右される。
資本政策と M&A
配当は長く横ばいで、総額は年 3 億円に満たない。利益が小さい間は、配当を増やす余裕がない。株主還元より、店舗の入れ替えと設備投資にお金を回している。
親会社のイオンは、2021 年に TOB(株式公開買い付け)と創業家の持ち株の取得で、キャンドゥを連結子会社にした。上場は維持されたが、イオンの影響力は強い。2026年7月には、創業家の資産管理会社が持つ13.78%の全株がイオンへ現物配当で移り、イオンの議決権は約65%に上がった。残る流通株は3分の1ほどで、完全子会社化に向かう下地は整いつつある。出店先はイオン向けが中心で、共同仕入れと WAON の導入が柱だ。
買収などの大型投資は少ない。買い手になる余力も乏しく、むしろイオンが残りの株を買い取って完全子会社にする可能性が残る。10 年の間に TOB が起きる確率を、筆者は 2 割弱とみる。その場合は、利益が小さい分、買い取りの値段も利益で決まる前提で見る。
店舗の賃借料は固定の約束で、売上の 1 割前後とみられる。見た目の財務は堅いが、家賃を差し引けば余裕は小さい。2028 年から新しいリース会計基準が入り、貸借対照表の数字の形は変わる。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の利益と会社予想、台帳の株数(1,601 万株)、倍率と ROE・k の整合を確かめた。余り資産・含み益の数え漏れは無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
キャンドゥは、イオンの経営資源を丸ごと使える 百円ショップだ。出店先はイオンのモールとスーパーで、すでに 10 年は出店し続けられる土地がある。共同仕入れが進めば、原価率は確実に下がり、同じ 百円でも粗利が増える。
都心の駅前に強い店が多く、三百円・五百円の商品でも客が付く。大人向けの雑貨、食品、手芸と、ターゲットを広げる余地が大きい。売上の増え方も物価を上回れる。
2026 年 2 月期は営業利益が 8 割増え、2027 年 2 月期の第 1 四半期も増収増益だ。減損と赤字店の整理は一巡し、利益の質も変わった。利益率が 3% から 5% へ上がれば、純利益は今の 10 倍近くになる。その時、時価総額 500 億円は割安に見える。イオンが完全子会社化に動く場合には、買い取りの値段が上乗せになる期待も持てる。
百円ショップは景気の影響を受けにくく、物価が上がる局面でも客が離れにくい。店の数を増やし続けられる市場は、いまの日本では多くない。イオンという後ろ盾のある会社が、店舗網の拡大と商品の高付加価値化の両方を進められる点を、評価すべきだ。
慎重な見方
売上 870 億円に対し、純利益は 4 億円台にすぎない。百円ショップで利益を出せるのは、規模の勝者であるダイソーと、効率の良い店を持つセリアだけだ。キャンドゥは過去 10 年のほとんどで利益率 1〜3% にとどまり、3 期連続で最終赤字になった年もある。
原価は為替と海外の人件費で上がり、人件費は物価で上がる。百円という看板が、値上げを縛る。三百円以上の商品が増えても、客数が減れば固定費が重くのしかかる。家賃は売上が落ちても下がらない。
イオンの後ろ盾は、これまでの 5 年でも利益率を目に見える形で動かしていない。出店は増えても、1 店当たりの売上が伸びなければ意味がない。時価総額は純利益の 100 倍を超える。10 年先に利益が 4 倍になっても、価値はまだ今の値段に遠い。
人口が減る国内で、店を増やし続ければ、1 店当たりの売上は薄まる。ダイソー・セリアのように、ブランドと規模で押す競争相手がいる以上、キャンドゥが先に出るには、価格を下げるか、品揃えで差をつけるしかない。どちらも利益率を押し下げる力になる。親会社が大きいことは安心材料だが、少数株主にとっては、それだけでは稼ぐ力の証明にならない。
どちらに重みを置いたか
事業の実力については、慎重な見方が優勢だ。利益率が 3% 台に戻ることは認めても、5% は遠く、それも今の時価総額には届かない。確率は中立に最も重みを置き、利益率が 1% 台にとどまる筋書きにも同じ程度の重みを持たせた。
楽観の筋書きでも、今の値段に届かない点は、計算が示す通りだ。イオンの支援は下を支えるが、価値を押し上げる力は限られる。確率はやや悲観・悲観側に寄せ、合わせて 4 割弱とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,465 円235 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 237 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 819 円131 億円、今との差 −74.4%、 期待の年率 −6.1%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,596 円736 億円 | 469 円75 億円 | +58.3% | +4.7% | 405 円65 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,681 円429 億円 | 344 円55 億円 | −5.5% | −0.6% | 605 円97 億円 |
| 中立 | 34% | 1,430 円229 億円 | 250 円40 億円 | −47.5% | −6.2% | 571 円91 億円 |
| やや悲観 | 24% | 271 円43 億円 | 156 円25 億円 | −86.6% | −18.2% | 103 円16 億円 |
| 悲観 | 14% | 71 円11 億円 | 62 円10 億円 | −95.8% | −27.2% | 19 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,465 円235 億円 | 237 円38 億円 | −46.8% | −6.1% | 1,703 円273 億円 |
今の株価時価総額 3,200 円512 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% イオンの調達力と高価格帯で別の会社になる 利益 41 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 4,596 円736 億円
イオン向けの出店が 10 年続き、店舗は 1,650 店まで増える。三百円・五百円の商品が売り場の半分近くを占め、客単価は物価を上回って伸びる。イオンとの共同仕入れで原価が下がり、海外から直接買い付ける量も増えて、同じ 百円でも粗利が厚くなる。
利益率は 5% 近くに乗る。ダイソーやセリアの背中が見える位置だ。出店のための借入は要らず、配当は利益とともに増える。
イオンが残りの株を買い取って完全子会社にする可能性もあるが、この筋書きでは上場が続く前提で、利益の伸びがそのまま価値になる。ただしそれでも、今の時価総額を上回るには足りない。
- 百円ショップ事業(Can★Do):数量 1,650(店舗数(店))× 価格 0.90(1 店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,484 億円・営業利益 74 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.15 倍、時価総額 700 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が 5% 近くまで上がるのは、過去 10 年で一度も無い水準。イオンの後ろ盾が本物でも、連続で当たる必要があり厚くは置けない。
やや楽観 20% 出店と商品の高価格化が噛み合う 利益 26 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 2,681 円429 億円
店舗は 1,540 店まで増え、増えた分はイオンのモールが中心になる。売り場の高価格帯が広がり、客単価は物価をやや上回って伸びる。
イオンとの共同仕入れの効果が数年かけて出て、原価率が少しずつ下がる。利益率は 4% 近くに乗り、2016 年ごろの水準を超える。
店舗の入れ替えは続くが、赤字店の整理は一巡し、減損の額は小さくなる。配当も少しずつ増える。ダイソーとセリアの優位は崩れないが、キャンドゥは都心とイオンのモールという自分の持ち場で、堅実に稼ぐ会社になる。10 年の終わりには、利益は今の 6 倍近い水準に届く。
- 百円ショップ事業(Can★Do):数量 1,540(店舗数(店))× 価格 0.88(1 店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,356 億円・営業利益 53 億円。営業利益率3.9%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.53 倍、時価総額 410 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画線(2028/02 期の営業利益 18 億円)を超え、2016 年ごろの 3% 台の利益率に戻る筋書き。イオンの後ろ盾がある分、十分ありうる。
中立 34% 利益率は 3% 近くに戻るが、それ以上は伸びない 利益 16 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 1,430 円229 億円
店舗は 1,450 店まで増える。出店の中心はイオンのモールで、都心の駅前の店は入れ替えながら維持する。客数は人口とともにやや細るが、高価格帯の商品で客単価を上げ、1 店当たりの売上は物価並みに伸びる。
利益率は 2.8% まで戻る。2016 年ごろの 3% 台には届かない。人件費と物流費は物価で上がり、百円という看板が値上げの幅を縛るからだ。
稼ぐ力は今の 2 倍ほどになるが、ROE は 10% 手前にとどまる。ダイソーとセリアの背中は遠いままで、第 3 位の座は変わらない。イオンの支援は出店を支えるが、稼ぐ力を劇的に変えるまでには至らない、というのが中立の見立てだ。
- 百円ショップ事業(Can★Do):数量 1,450(店舗数(店))× 価格 0.86(1 店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,248 億円・営業利益 35 億円。営業利益率2.8%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.48 倍、時価総額 221 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 10 年の利益率は 0.3〜3.4%。計画線の延長より少し上、2016 年ごろの水準に戻ると置くのが最も確からしい。
やや悲観 24% ダイソーとセリアに押され利益率が 1% 台に張り付く 利益 5 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 271 円43 億円
ダイソーとセリアが郊外とモールで店を増やし、キャンドゥは好立地を取りきれない。店舗は純減に転じて 1,300 店になる。
客単価は物価に届かず、1 店当たりの売上の伸びは 10 年で 3 割弱にとどまる。人件費と家賃は売上が伸びなくても上がるため、利益率は 1% 台前半に張り付く。
減損と退店の費用が毎年のように出て、純利益は営業利益の 4 割しか残らない。ROE は 4% 前後で、資本コストに届かない。配当は据え置きが続く。イオンの支援で店は残るが、利益は薄いまま伸びず、自己資本の増え方も遅い。10 年たっても、いまの立ち位置から動けない。
- 百円ショップ事業(Can★Do):数量 1,300(店舗数(店))× 価格 0.82(1 店当たり年間売上高(億円))→ 売上 1,069 億円・営業利益 13 億円。営業利益率1.2%
倍率:事業の純利益 5.1 億円・事業 ROE 約 4%。ROE が k 8.3% を下回るので上限は 1÷k=約 12.0 倍。構造的に劣る筋書きで、上限の約 7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:過去 10 年のうち 5 年は利益率 1% 以下。原価と人件費の上昇を値上げで転嫁しきれない状態が続く筋書きは、中立と並んで厚く見る。
悲観 14% 家賃だけが残る縮小 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 71 円11 億円
ダイソー・セリアの攻勢と人手不足で店舗が 1,150 店まで縮み、客数が戻らない。原価と人件費は物価で上がるのに、百円の看板で値上げが通らない。
家賃は売上が落ちても下がらない固定費として残る。利益率は 0.3% まで下がり、減損が続いて純利益はほぼ消える。
イオンの支援はあっても、不採算店の閉鎖で自己資本は削られる。残る価値は、手元の純現金までと見る。イオンが事業を丸ごと引き取れば、少数株主の取り分は更に小さくなる恐れもある。構造的に負けた 百円ショップの姿だ。家賃の約束が重いため、売上が 2 割落ちれば利益は消える。店を閉めるにも、原状回復と違約金の費用がかかる。
- 百円ショップ事業(Can★Do):数量 1,150(店舗数(店))× 価格 0.77(1 店当たり年間売上高(億円))→ 売上 887 億円・営業利益 3 億円。営業利益率0.3%
倍率:事業の純利益 0.8 億円では稼ぐ力は 10 億円に届かない。売れる資産は、純現金 11.4 億円のみとみて、今の自己資本 105 億円に対する PBR 約 0.11 倍で置いた(在庫・什器は買掛金と退店費用で相殺とみる)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.114 倍・時価総額 11 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:店舗の縮小が止まらず、家賃などの固定費が重く残る筋書き。10 年で見れば無視できず、中立の半分以下の確率でも落としたくない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
百円ショップ事業(Can★Do)
全国 1,350 店余りの 百円ショップ。都心の駅前と、イオンのモール・スーパー内が中心で、三百円・五百円の商品を増やしている。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,355 | 0.64 | 871 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1,450 | 0.86 | 1,248 | 35 |
取り方:連結の売上 870.6 億円(2026/02 期)を、期末の店舗数約 1,355 店(第三者の集計)で割って 1 店当たり売上を逆算した。数量は店の数。1 店当たり売上は客数と客単価の積で、10 年の中立は物価並みの 1.34 倍(客数の目減りを、高価格帯への移行が埋める)。店は国内の 百円ショップ約 8,900 店(大手 4 社)の 15% 前後。
リスクと懸念
規模で勝る 2 社の攻勢
ダイソーは市場の 6 割余り、セリアも大創産業の 3 分の 1 強の売上を持つ。両社が好立地とモールを押さえるほど、キャンドゥの出店先は狭まる。仕入れの規模でも劣るため、同じ 百円でも粗利で差がつきやすい。
百円の看板が値上げを縛る
原価は為替と海外の人件費で、人件費は物価で上がる。百円という看板があるため、値上げの幅が限られる。三百円以上の商品を増やしても、客数が落ちれば効果は小さい。利益率が 1% 台にとどまる最大の理由になる。
家賃と人件費の固定費
都心の駅前や商業施設に多く出ているため、家賃は売上の 1 割前後とみられる。売上が落ちても家賃は下がらない。人手不足で時給が上がる局面では、利益がすぐ削られる。新リース会計基準で、この約束が貸借対照表に載る。
減損と退店の費用
過去 10 年で最終赤字が 4 期あり、店舗の減損と退店の費用が毎年のように出ている。入れ替えのたびに利益が削られるなら、出店投資の稼ぎが資本コストに届かない。利益の質が改善しない恐れがある。
イオン依存
イオンの連結子会社であり、出店先も共同仕入れもイオンの方針に左右される。親会社の意向が少数株主の利益と一致するとは限らない。イオンが残りの株を買い取る場合、価格が利益で決まれば、期待ほどの上乗せは出ない。
今の値段の高さ
時価総額は 500 億円で、純利益の 100 倍を超える。利益が計画どおりに増えなければ、業績が落ちる前に値段が縮む。今の値段には、再建の成功が先に織り込まれている。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 年続けて 3% を超えたら
- 再建が定着したとみて、楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし、5% には届かないとの前提は崩さない。
- 共同仕入れの効果が粗利率に表れたら
- 利益率の上方修正の根拠になる。中立の 2.8% を 3% 台へ動かす。
- 既存店の客数が前年割れを 2 期続けたら
- 客単価の上昇だけでは支えきれないとみて、やや悲観側に確率を寄せる。
- イオンが完全子会社化の TOB を発表したら
- 買い取り価格が利益で決まる水準なら価値は大きく変わらない。大きく上回るなら、買収側の判断として別に評価する。
- ダイソー・セリアが都心のテナントに本格出店したら
- キャンドゥの強みの都心が崩れる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 最終赤字が再び出たら
- 利益の質が変わっていないことを意味する。悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期ごと)と粗利率の推移
- 既存店の売上・客数・客単価(月次)
- 出店・退店の数と、イオン向けの比率
- 減損損失と退店費用の額
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)× 1 店当たり売上(物価込みの名目)で売上を積み、利益率は 2016 年ごろの実績と計画線から置いた。倍率は ROE と k 8.3%・g 4% から正当化 PER(約 12.9 倍)を出し、ROE が k を上回るので下限 1÷k に近い 12.2 倍とした。今の時価総額(PER 100 倍超)は最後に比べただけで、値付けには使っていない。悲観の床は PBR の谷でなく、純現金 11.4 億円から置いた。数字の形は、今と同じ家賃を営業費用に入れた形でそろえてあり、新リース会計基準で営業利益・純有利子負債の形が変わる点は考慮していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→17.15 倍・やや楽観 PER 13.2→15.53 倍・中立 PER 12.2→13.48 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。