結論
東京一番フーズは、首都圏で泳ぎとらふぐ料理専門店「とらふぐ亭」とすしの「寿し常」を営み、長崎でふぐとまぐろを育てる会社だ。筆者の結論は割高である。利益の 30 倍ほどという値段に対し、資本の稼ぎは資本コストに届かず、借入も自己資本を上回る。
事業には面白みがある。自社の養殖場から魚を店に送り、仕入れの値段を自分で抑える。ふぐ専門の看板は、首都圏で 30 店以上を構える競合の少ない分野だ。米国にも和食店を 2 つ出した。
だが利益は小さい。営業利益はここ数年 2 億円前後で、売上の 3% ほどしかない。ふぐは冬の料理で、夏は赤字になりやすい。借入は 30 億円あり、金利が上がれば利払いが利益を削る。
株主への還元は無配で、優待だけだ。優待の額面の利回りは 7% と高いが、会社の負担は額面の 4 割ほどとみる。筆者は、厚い優待が値段を支えていると見るが、事業の稼ぎだけでは今の値段に届かない。
上振れの鍵は米国の店の広がりで、5 店を超えて利益を出せば見方は変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「看板は面白いが、稼ぎが追いつかない」事業だ。ふぐ専門の店と自社の養殖という組み合わせは珍しく、まねをしにくい。10 年後もとらふぐ亭は残っているだろう。
だがオーナーとして持ち続けたいかと問えば、今の値段では「いいえ」だ。営業利益は 2 億円前後で、その 30 倍ほどの値段を払うことになる。資本の稼ぎは資本コストに届かず、借入は自己資本を上回る。無配で、還元は優待だけである。
安全域は無いとみる。悪い年には赤字に落ち、借入の返済に追われる。厚い優待は株主にとってうれしいが、その価値は優待が続く限りの話で、業績が悪くなれば真っ先に縮む。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の使い道だ。無配のまま利益を手元に残し、借入も足して、米国の店と東京の建物に回している。その投資が資本コストを上回る稼ぎを生むなら報われる。だが今のところ、全体の利益率は 10 年前より低い。払う値段に見合う稼ぎが出るまで、待つ理由は乏しい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 9 割は飲食だ。主力のとらふぐ亭は、生きたとらふぐを店の水槽で泳がせ、注文を受けてからさばく。東京・埼玉・千葉・神奈川に 30 店台を持ち、冬の鍋と宴会が売上の山になる。2020 年に譲り受けたすしの寿し常は、不採算の店を閉めて立て直してきた。ニューヨークには和食店の WOKUNI を構え、2026 年 5 月に 2 店目を開いた。グループの店は 60 余りある。
2 つ目の柱は外販だ。子会社の長崎ファームが平戸でふぐと本まぐろを育て、自社の店に送るほか、飲食店や小売に売る。まぐろは大きく育ててから出荷するため、利益が出るまでに年数がかかる。外販はこれまで赤字が続いたが、今期は黒字に戻った。
3 つ目は東京の不動産の賃貸だ。2026 年に新しい建物が完成し、賃料が増えている。
費用の面では、家賃と人件費が重い。店はほとんどが借りもので、売上が落ちても家賃は残る。建物の取得で借入は 30 億円に増えた。
無配で、株主への還元は自社の店で使える優待券だけである。
決算は 9 月で、10 月から 3 月の冬の半年に利益の大半を稼ぎ、夏の半年は赤字に近い。季節の偏りが大きいので、四半期の数字だけで勢いを読むと誤る。
優良さと弱いところ
優良さは並みより下とみる。強みは、ふぐ専門の看板と自社の養殖だ。生きたふぐを扱う店は免許と技が要り、新しく入る競合は少ない。養殖の魚を自社の店に送れば、仕入れの値段の振れを抑えられる。
弱みは利益の小ささと振れだ。売上に対する営業利益は 3% 前後で、過去 12 年で 8% を超えた年は 10 年以上前だけだ。ふぐは冬の料理で、夏は店が空く。コロナの 2 年は営業赤字が続き、自己資本は 3 割減った。
財務も弱い。借入は自己資本の 1.5 倍を超え、自己資本比率は 3 割に届かない。資本の稼ぎは資本コストに届いた年が少ない。
経営は社長の坂本大地氏が担い、米国の出店と不動産の賃貸に手を広げる。手を広げる先が本業の稼ぎを上回るかは、まだ見えない。
資本の使い方にも注文がある。本業の店の改善が道半ばのうちに、借入で東京の建物を買った。賃料は安定するが、外食の会社が不動産を持つ理由は株主には見えにくい。稼ぐ力の割に、事業の数が多すぎる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は人件費の上昇を最も強く受ける業種だ。業種ノートでは、値上げが通る人気の店は客数を落とさずに売上を伸ばし、通らない店は利益率を失うとみる。最低賃金は毎年上がり、店員の取り合いは続く。
ふぐ料理は外食の中でも特殊だ。値段は高く、宴会と家族の祝いの席が中心で、景気が冷えると真っ先に削られる。リーマンの時とコロナの時、高い価格帯の外食は売上が 2〜3 割落ちた。一方で、ふぐを扱う店は免許と技が要り、大手のチェーンはほとんどいない。競合は個人の店と、関西のふぐ料理の老舗チェーンにとどまる。
魚の値段も上がっている。天然の魚は取れる量が減り、養殖の魚が増えている。自社で育てる会社は、値段の振れを抑えられる。ただ餌の値段と魚の病気という別の危うさも抱える。
訪日客は追い風だ。日本の高級な魚料理は海外の客に人気で、ふぐもその一つになりうる。海外に出る和食店は増えており、米国では人件費と家賃の高さが壁になる。
米国では日本食の人気が高く、ニューヨークの和食店は値段の高い店でも客が入る。ただ家賃と人件費は日本の 2〜3 倍で、店を増やすには資金が要る。小さな会社には重い挑戦で、成功するかどうかで 10 年の姿は大きく変わる。
資本政策と M&A
配当は出していない。株主への還元は、3 月末と 9 月末に 500 株以上を持つ株主へ贈る優待券だけだ。優待券 1 枚でとらふぐのコース 1 人前と交換でき、会社は額面の利回りを 7% と示す。優待の費用は開示が無い。筆者は、500 株以上の株主を 2,500 人ほど、年の配布を 6,000 枚ほどとみて、会社の負担を年 0.2 億円前後と推定した。10 年で 2 億円ほどを株主への還元に数えた。
大株主は株式会社なにわが 29%、社長の坂本大地氏が 2 割強を持ち、合わせて株の半分を超える。敵対的な買収は起きにくい。
資金は米国の出店と東京の賃貸の建物に回っている。借入で建物を買ったので、純有利子負債は 20 億円ほどに増えた。新しいリースの会計基準では、借りた店が BS に載り、負債はさらに大きく見える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
とらふぐ亭は他にない看板だ。生きたふぐを店でさばく専門店は、首都圏で競合がほとんどいない。自社の養殖場から魚を送るので、魚の値段が上がっても仕入れを抑えられる。今期は第 3 四半期までで営業利益が通期の予想を上回り、店の改善は数字に出ている。
米国の WOKUNI は成長の芽だ。ニューヨークで和食は人気で、1 店目は利益を出している。2 店目が軌道に乗れば、店を増やす道が開く。平戸の本まぐろも大きく育てて出荷する段階に入り、外販は黒字に戻った。東京の賃貸の建物は、毎年の安定した賃料を生む。
優待は額面で 7% の利回りがある。長く持つ個人の株主に支えられ、値段は崩れにくい。
社長が株の 2 割強を持ち、経営と株主の利害はそろっている。米国と養殖という 2 つの芽が同時に実れば、利益は今の数倍になりうる。今の値段は、その芽の価値をまだ半分も見ていない。冬の需要は毎年必ず戻り、ふぐの専門店という立ち位置は崩れにくい。
慎重な見方
利益の 30 倍という値段は高すぎる。営業利益は 10 年以上、2 億円前後を行き来しているだけで、伸びた実績が無い。利益率は 3% で、少しの逆風で赤字に落ちる。コロナの 2 年は営業赤字が続き、自己資本は 3 割減った。
借入も重い。建物の取得で借入は 30 億円に増え、自己資本の 1.5 倍を超えた。金利が 3.5% に上がれば利払いは年 0.5 億円増え、純利益の 3 分の 1 が消える。
ふぐは高い価格帯の料理で、景気が冷えれば宴会から削られる。米国は人件費と家賃が高く、2 店で全体は変わらない。無配で還元は優待だけで、その優待も業績が悪くなれば縮む。帳簿の価値の 2 倍を超える値段に、安全域は無い。
資本の使い方も心配だ。無配のまま、借入で建物を買い、米国に出る。どれも本業の稼ぎを上回るか見えないまま、手が広がっている。利益の小さな会社が多くの事業を抱えれば、どれも中途半端に終わる。優待の厚さで値段を支える形は、業績の悪い年に一気に崩れる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。看板と養殖の面白さは本物だが、利益の小ささと借入の重さが値段に入っていない。中立に 3 割半、悲観側に 4 割弱、楽観側に 2 割半を置いた。米国の店が 5 店を超えて利益を出すか、営業利益が 2 年続けて 4 億円を超えれば、楽観側に寄せる。逆に優待を縮めるか、借入をさらに増やして手を広げれば、慎重な側に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 170 円15 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 21 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 84 円7 億円、今との差 −81.6%、 期待の年率 −8.3%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 354 円32 億円 | 45 円4 億円 | −12.0% | −1.3% | 28 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 273 円24 億円 | 22 円2 億円 | −34.8% | −4.2% | 53 円5 億円 |
| 中立 | 36% | 219 円20 億円 | 22 円2 億円 | −46.8% | −6.1% | 87 円8 億円 |
| やや悲観 | 25% | 63 円6 億円 | 17 円2 億円 | −82.4% | −16.0% | 20 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 9 円1 億円 | 11 円1 億円 | −95.5% | −26.7% | 3 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 170 円15 億円 | 21 円2 億円 | −57.9% | −8.3% | 191 円17 億円 |
今の株価時価総額 453 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 米国の和食店が育ち、養殖まぐろも柱になる 利益 3 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 354 円32 億円
ニューヨークの和食店 WOKUNI が当たり、米国で店を 10 近くに増やす。自社で育てたふぐとまぐろを、日本の店と米国の店の両方に送る形ができる。国内のとらふぐ亭は、冬の高級な鍋として訪日客にも知られる。店の数は 70 になり、1 店あたりの売上も物価より少し速く伸びる。外販は平戸の本まぐろが大きく育ち、出荷が 5 割増える。東京の賃貸の建物も満室で回る。営業利益は 5 億円台、純利益は 3 億円近くになる。それでも借入は重く、資本の稼ぎは資本コストに少し届かない。配当を始める余力も出て、株主への還元は優待だけでなくなる。
- 飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI):数量 70.0(店の数(店))× 価格 1.45(1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む))→ 売上 102 億円・営業利益 5 億円。70 店 × 1 店 1.45 億円(実質 1.05 倍 × 物価 1.34 倍)、利益率 5%
- 外販(卸・加工・養殖):数量 300(外販の出荷量(トン・推定))× 価格 0.05(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。推定 300 トン × 1 トン 0.047 億円(物価 1.34 倍)、利益率 4%
- 不動産賃貸:数量 6.0(貸している物件の数(推定))× 価格 0.15(1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。推定 6 物件 × 1 物件 0.147 億円、利益率 5 割
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 32 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の WOKUNI が店を増やし、平戸の養殖まぐろの外販が伸びる筋書き。米国は 2 店目を出したばかりで実績が浅く、過去 12 年の営業利益率の山 8% に届いた年も 10 年以上前なので 7% に止めた。
やや楽観 18% 店の改善と賃貸で、利益が今の 2 倍に 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 273 円24 億円
国内の店は不採算の店を閉め終え、残った店の稼ぎが上がる。自社の養殖で仕入れの値段が安定し、物価の上昇を売値に移しやすい。人の配置の見直しで人件費の比率も下がる。米国は 2 店を軌道に乗せ、もう数店を足す。店の数は 65 に増え、売上は物価の分だけ伸びる。外販はまぐろの出荷が 3 割増え、赤字を抜ける。東京の賃貸の建物が満室になり、毎年の賃料が利益の下支えになる。営業利益は 4 億円台、純利益は 2 億円強と今の 2 倍になる。無配は続き、還元は優待にとどまる。米国の店の数が増えれば、楽観の筋書きへの道も見える。
- 飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI):数量 65.0(店の数(店))× 価格 1.38(1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む))→ 売上 90 億円・営業利益 4 億円。65 店 × 1 店 1.38 億円(実質横ばい × 物価 1.34 倍)、利益率 4.2%
- 外販(卸・加工・養殖):数量 260(外販の出荷量(トン・推定))× 価格 0.05(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。推定 260 トン × 0.047 億円、利益率 3%
- 不動産賃貸:数量 5.0(貸している物件の数(推定))× 価格 0.15(1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。推定 5 物件 × 0.147 億円、利益率 5 割
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人件費率と原価率の改善が続き、新しい賃貸の建物が利益を足す筋書き。今期の 3Q 累計の営業利益は前年を上回っており、改善の実績があるので 2 割弱。
中立 36% 店は少し減り、物価の分だけ伸びる 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 219 円20 億円
国内の外食は人口が減る中で、値上げの通る店だけが残る。とらふぐ亭は冬の宴会と家族の祝いの店で、値上げは通るが客の数は少しずつ減る。寿し常は不採算の店をさらに閉め、店の数は 60 に絞られる。米国の 2 店は利益を少し足すが、全体を変えるほどではない。売上は物価の分だけ伸び、飲食の利益率は今と同じ 3% 台の半ばを保つ。外販の養殖は赤字を抜けて小さな黒字になり、東京の賃貸は毎年の安定した賃料を生む。借入の金利は 1% 台から 3.5% へ上がり、利払いが年 0.5 億円増える。純利益は 1.7 億円ほどで、今期の予想より少し多い程度だ。無配が続き、株主の受け取りは年 0.2 億円ほどの優待にとどまる。
- 飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI):数量 60.0(店の数(店))× 価格 1.38(1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。60 店 × 1 店 1.38 億円(実質横ばい × 物価 1.34 倍)、利益率 3.6%
- 外販(卸・加工・養殖):数量 230(外販の出荷量(トン・推定))× 価格 0.05(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。推定 230 トン × 0.047 億円(物価 1.34 倍)、利益率 2%
- 不動産賃貸:数量 5.0(貸している物件の数(推定))× 価格 0.15(1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。推定 5 物件 × 0.147 億円、利益率 5 割
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(人件費の上昇を値上げで吸収できる会社は客数を大きく落とさない)に、寿し常の不採算店の整理を足した形。直近 3 期の営業利益は 1.4〜2.5 億円で横ばいなので、もっとも起こりやすいとみた。
やや悲観 25% 人件費と魚の値段に押され、利益が細る 利益 0 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 63 円6 億円
景気が冷え、高い価格帯のふぐ料理は宴会と祝いの席から削られる。人手不足で店員の時給は物価より速く上がり、魚と燃料の値段も上がる。客の数は減り、店は 52 まで減る。家賃は売上が落ちても下がらず、飲食の利益率は 2% に沈む。外販は収支とんとんで、米国の店も伸び悩む。借入の利払いが利益を削り、純利益は 0.5 億円ほどしか残らない。優待は縮み、無配は続く。帳簿の価値は残るが、それを生かす稼ぎが無い。値段は稼ぐ力に見合う水準まで下がる。米国の店は家賃と人件費が重く、撤退の費用が出るおそれもある。外販の養殖も、餌と燃料の値上げで再び赤字に戻る。
- 飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI):数量 52.0(店の数(店))× 価格 1.27(1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。52 店 × 1 店 1.27 億円(実質 0.95 倍 × 価格 1.30 倍)、利益率 2%(家賃は固定)
- 外販(卸・加工・養殖):数量 180(外販の出荷量(トン・推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。推定 180 トン × 0.044 億円、収支とんとん
- 不動産賃貸:数量 4.0(貸している物件の数(推定))× 価格 0.15(1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。推定 4 物件 × 0.147 億円、利益率 5 割
倍率:ROE は約 2%で k を大きく下回り、値段は稼ぐ力(純利益÷k)までで PER の上限は 11.4 倍。家賃が固定費として残り利益の振れが大きいので上限の 7.5 割の 8.5 倍。床の資産は借入が重くほぼ残らないので、稼ぐ力の方が値段を決める。EV(時価総額+純有利子負債 20 億前後)÷営業利益は 21 倍と高く、借入を含めた事業の値段で見ても安くはない。
確率:人手不足の賃上げと魚の値段の上げに、値上げが追いつかない筋書き。2016〜19/09 期は利益率 1〜4% に沈んだ実績があり、外食の中でも高い価格帯で節約の波を受けやすいので 2 割半。
悲観 14% 赤字が続き、借入の返済に追われる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 9 円1 億円
消費の冷え込みと人件費の上げが重なり、とらふぐ亭と寿し常の客が大きく減る。店は 40 まで減り、営業赤字が何年も続く。米国の店も閉め、外販の養殖は魚の病気と餌の値上げで赤字になる。減損と閉店の費用で、自己資本はほぼ消える。借入の返済のために、東京の賃貸の建物と土地を売る。優待も縮み、株主の受け取りはほとんど無くなる。値段は、残った店と建物を売って借入を払った残りに近づき、ほとんど残らない。大株主の 2 社と社長で株の 5 割を持ち、少数株主は再建の道を選べない。優待を目当てにした株主も離れ、値段の支えは消える。
- 飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI):数量 40.0(店の数(店))× 価格 1.05(1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。40 店 × 1 店 1.05 億円(実質 0.85 倍 × 価格 1.20 倍)、利益率 −3%
- 外販(卸・加工・養殖):数量 150(外販の出荷量(トン・推定))× 価格 0.04(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。推定 150 トン × 0.04 億円、利益率 −5%
- 不動産賃貸:数量 4.0(貸している物件の数(推定))× 価格 0.15(1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。推定 4 物件 × 0.147 億円、利益率 5 割
倍率:赤字なので PBR で置く。稼ぐ力はゼロで、値段は床の資産(約 0.8 億、floor_assets_why)まで。今の自己資本 16 億に対し 0.05 倍。
確率:コロナの 2020〜21/09 期に営業赤字が続き自己資本が 3 割減った実績があり、借入が自己資本を上回る今は谷の傷が深いので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
飲食(とらふぐ亭・寿し常・WOKUNI)
首都圏のふぐ専門店とすし店、米国の和食店を営む。売上の 9 割。
| 数量店の数(店) | 価格1 店あたりの売上(億円・名目。客数と客単価を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 63.0 | 1.03 | 65 | 2 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.38 | 83 | 3 |
取り方:店の数は 2025 年 9 月末のグループ 63 店。飲食の売上 65 億円を店の数で割った(推定の置き方。客数の開示は無い)。利益は edinetdb のセグメントの値(約 3.6%)。
外販(卸・加工・養殖)
長崎ファームの養殖のふぐ・本まぐろと加工品を、飲食店・小売・卸に売る。
| 数量外販の出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 200 | 0.04 | 7 | −1 |
| 10 年後 中立 | 230 | 0.05 | 11 | 0 |
取り方:出荷量の開示は無い。魚の卸値を 1 トン 0.035 億円前後と見て、外販の売上 7 億円から 200 トンと推定した。
不動産賃貸
東京の居住用・事業用の建物を貸す。2026 年に新しい建物が完成した。
| 数量貸している物件の数(推定) | 価格1 物件あたりの外部の賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.0 | 0.11 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.15 | 1 | 0 |
取り方:物件の数の開示は無いので 3 と推定し、外部の賃料 0.33 億円を割った。新しい建物の分で 10 年後は物件が増える。
リスクと懸念
景気の冷え込みと宴会の削減
ふぐ料理は高い価格帯で、宴会と祝いの席が中心だ。景気が冷えると真っ先に削られ、コロナの時は営業赤字が 2 年続いた。利益率 3% の会社には深い傷になる。
借入と金利の上昇
建物の取得で借入は 30 億円に増え、自己資本を上回る。金利が 3.5% に上がれば利払いは年 0.5 億円増え、純利益の 3 分の 1 ほどが消える。
人件費と魚の値段
店員の時給は物価より速く上がり、ふぐをさばく職人も足りない。魚と餌、燃料の値段も上がる。値上げが追いつかなければ、薄い利益はすぐ消える。
養殖の危うさ
まぐろは出荷まで年数がかかり、魚の病気や赤潮、餌の値上げで損失が出る。外販は長く赤字が続いた事業で、黒字が定着したとはまだ言えない。
優待の見直し
還元は優待だけだ。業績が悪くなれば優待を縮める会社は多く、優待に支えられた株主の顔ぶれと値段が崩れるおそれがある。
今後の分かれ目
- 米国の WOKUNI が 5 店を超えて利益を出したら
- 海外で店を増やす型ができた印。楽観側の確率を上げてよい。
- 営業利益が 2 年続けて 4 億円を超えたら
- 店の改善と賃貸が利益に定着した印。やや楽観の筋書きに近づく。
- 優待の内容を縮めたら
- 還元が細る。株主の受け取りを下げ、悲観側の確率を上げる。
- 借入をさらに増やして建物や店を買ったら
- 資本の使い道を見る。稼ぎが資本コストを下回る投資なら、慎重な側に寄せる。
見ておくもの
- 既存店の売上と客数
- 冬のとらふぐ亭の売上
- 米国の店の数と利益
- 外販の利益
- 借入の残高と金利
- 優待の内容の変更
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価から置いていない。全ての筋書きで ROE は k 9.25% を下回り、PER の上限は 1÷k=11.4 倍。利益の質で 7.5〜9 割を選んだ。今の PER 30 倍前後は根拠にしていない。悲観は床の資産(約 0.8 億)で置いた。優待は推定の年 0.2 億を還元に足した。新リース会計基準で借りた店が BS に載るが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→10.81 倍・やや楽観 PER 9.7→10.81 倍・中立 PER 9.1→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。