結論
ベルクは、埼玉を中心に関東で150店ほどを持つ食品スーパーだ。派手さはないが、生鮮と総菜の質と低い運営費で、長く10%前後のROEを保ってきた。
筆者の結論は、今の値段には安全域があるというものだ。今期は価格競争と賃上げで営業利益が14%減る見込みだが、それが10年続くとは見ない。出店余地と店網の密度が、稼ぐ力を支える。
店は年に4〜5店ずつ増え、10年後に200店近くになる。ただし新店は埼玉の外が多く、立ち上がりが遅い。営業利益率は4%台前半にとどまり、利益は店数と物価で伸びる程度だ。
弱点は競合の厚みである。ヤオコー、オーケー、ロピアが同じ商圏に大型店を出し、安さの競争が続く。店の多くは賃借で、売上が落ちても家賃は残る。
それでも総合では、本質価値は今の時価総額を上回ると見る。ただしこの差は、今期の減益が一時で終わることに支えられている。減益が10年の水準になる筋書きでは、価値は今の値段を割る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味だが続く事業だと見る。食品は毎日の買い物で、店の質を磨けば客は戻ってくる。ベルクは、10年以上、利益の質を保ってきた会社だ。
気になるのは、稼ぎが再投資に食われていることだ。利益の8割近くを店と工場に回し、それでもROEは10%前後にとどまる。つまり、新しく投じるお金の稼ぎは、これ以上上がらない。成長しても、株主の手元に戻る利益はそう増えない。
安全域は、今の値段にはあると筆者は見る。今期の減益を織り込んでも、10年の稼ぐ力は時価総額を上回る。だが、その差は競合の価格攻勢が一時で終わることに支えられている。減益が10年続けば、安全域は消える。
借入が軽く、店が増え続ける限り、ゆっくりした複利の会社として持てる。ただ、競合の動きと今期の減益の原因は、半年ごとに確かめたい。
何で稼ぐ会社か
ベルクの稼ぎは、食品スーパーの店舗運営にほぼ集約される。1959年に秩父市の「主婦の店」として始まり、いまは関東1都6県に約150店を持つ。店は埼玉が約6割で、千葉と群馬が続き、東京・神奈川にも出ている。
強みは、生鮮と総菜の作り込みだ。寄居町の物流センターと総菜工場で一括して加工し、店の作業を減らして品質を揃える。自社の総菜工場は第三工場の稼働で能力を広げており、先行して費用が出る局面にある。店頭では総菜とベーカリー、コーヒーなど、店内で作る商品を前に出し、スーパー専業の安売りとは違う客層を狙う。PB「クラベルク」で安さと粗利の両方を取りにいく。
出店は関東全域で年6〜8店が計画だが、建築の人手不足で工期が延び、今期は新店6店に減った。埼玉の外は競合が濃く、店が育つのに時間がかかる。
最大株主はイオンで15%を持つ。業務・資本提携の関係にあるが、経営は原島姓の経営者が長く率いてきた。社長は2020年から原島一誠氏だ。
稼ぎ方は単純で、店が増え、1店あたりの売上が物価並みに伸びれば利益が増える。ただし食品の粗利は薄く、売上の1%の利益率の差が営業利益を大きく動かす。人件費と電気代の上昇が続く今、費用を売上でどれだけ吸収できるかが焦点になる。
優良さと弱いところ
ベルクの堀は、店の密度と、総菜工場・物流センターを使った運営の効率にある。埼玉の主婦に選ばれる店の質を、低い費用で作れることが強みだ。営業利益率は10年以上、4%台前半を保ち、ROEも10%台を続けてきた。
一方で、堀は強いとは言えない。ヤオコーはほぼ同じ商圏で規模が上、オーケーとロピアは価格で勝負する。ベルクは値ごろ感で引っ張られ、粗利益率は今期0.1ポイント下がった。
ROEは10%前後で安定しているが、これは利益の8割近くを店と工場に再投資して稼いだ数字だ。配当性向は20%台と低く、利益のほとんどを成長に回す。成長の質が落ちれば、ROEもすぐ下がる。
経営は堅実で、借入は自己資本の2割程度と軽い。ただし、店の多くは賃借で、差入保証金が100億円を超える。借金に見えない固定の約束が店ごとにあり、売上が落ちると損益の傾きが大きくなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
関東の食品スーパーは、地場同士の競争が最も激しい市場の1つだ。埼玉ではヤオコーが約200店を持ち、ベルクとは同じ商圏で価格を競う。川越では2025年にオーケーが大型店を開き、ヤオコーの旗艦店とベルクの店の近くに出た。ロピア、トライアル、まいばすけっとも関東で店を増やしている。
食品は生活必需品で、景気で需要が大きくは動かない。だが人口は減り、客数は伸びにくい。売上は物価と客単価で伸び、客数はほぼ横ばいか微減になる。今期のベルクの既存店売上は上期で0.4%減と、米の売上減と競合の影響を受けた。
構造としては、売れ行きの良い店の近くに競合が出る。出店の余地は埼玉の外にあるが、そこは競合が濃い。賃上げ、電気代、物流費の上昇は業界共通の重しで、価格を上げやすい会社と上げにくい会社の差が利益率に出る。ベルクは節約志向の中で値上げを抑えており、その分を粗利益で払っている。
10年の見通しは、客数が人口とともに細り、売上は客単価と店数で決まる世界だ。物価は年3%で上がり、客単価は押し上がるが、買い上げ点数は減る。出店で売上は伸びても、利益率は競争で守るのが精一杯だと筆者は見る。
資本政策と M&A
資本の使い方は、再投資が中心だ。配当性向は20%以上を目安とし、配当は増やしているが、利益の8割近くは新店・工場・改装に回る。自己株式は発行済みの0.2%ほどで、自社株買いは多くない。
M&Aは、これまで大きな買収はなく、自前の出店で拡大してきた。中期計画は2030年2月期に売上5,000億円以上、経常利益率4.5%、店数180店以上を掲げる。年6〜8店の出店が前提だが、今期は工期の遅れで6店に減る。
大株主はイオンの15%で、そのほかに株式会社IH、THが並ぶ。イオンは提携先だが、経営統合の動きは確認できていない。ただ地場の再編が進む業界でもあり、TOBや統合の可能性は消えない。
借入は自己資本の2割で軽いが、出店と工場投資で今期も純借入が増えた。利益がしぼむ年は、投資を絞るか借入を増やすかの選択が出てくる。
点検済み(2026-10-19):中立の営業利益率 4.2% は今・会社予想と同じで山を超えないこと、出店ペースが計画より遅いことを確かめた。穴なし。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今期の減益は一時の痛みだ。仕入れ高騰、電気代、賃上げが同時に来ただけで、店の質が落ちたわけではない。上期でも営業収益は2.8%増え、PB「クラベルク」と値ごろ感の強化は客数を守る手になる。
中期計画の店数180店は埼玉・群馬の稼ぎ頭に加え、千葉・東京・神奈川の新店が育てば手が届く。寄居町の物流センターと総菜工場は、店が増えるほど1店あたりの費用が下がる仕組みだ。粗利益率が戻れば、営業利益率は4.5%近くまで回復する。
借入は自己資本の2割と軽く、金利が上がっても利払いは営業利益の57倍をまかなえる。ヤオコーもオーケーも、同じ埼玉で共存してきた。競合が来ても、ベルクは店の質で客を保ってきた実績がある。10年で見れば、利益は店数と物価で着実に積み上がる。
加えて、関東の食品スーパーは地場の店が強く、全国チェーンが入り込みにくい。埼玉で磨いた店の運営を千葉や東京に広げる余地は大きく、業界の再編が進む中でも、独立のまま利益を伸ばす道が残る。
慎重な見方
今期の営業利益14%減は、節約志向と価格競争という構造の変化が表に出たものだ。上期の既存店は0.4%減で、客数と買い上げ点数がともに落ちている。ヤオコーは店数でベルクを大きく上回り、オーケーとロピアは価格で勝負する。川越ではオーケーがベルクの近くに大型店を開いた。
粗利益率は、値下げと仕入れ高で下がる一方、賃上げと電気代は毎年重くなる。利益率が3%台前半まで下がるのは、十分ありうる。店の多くは賃借で、売上が落ちても家賃は残る。
出店は工期の遅れで計画を下回り、新店は埼玉の外で客を集めるのに時間がかかる。ROEが10%前後なのは再投資を8割以上続けた結果で、成長が鈍れば、増えた自己資本が重しになり、ROEは8%台に落ちる。10年後も今の収益が続くと見るのは楽観が過ぎる。
加えて、イオンが15%を持つ大株主である以上、経営の独立性にも微妙な影響がある。再編や統合の動きが出れば、価値の見方も変わる。
どちらに重みを置いたか
どちらの見方にも根拠があるが、慎重な見方のほうがやや強い。今期の減益の理由は一時のものではなく、競合の価格攻勢と賃上げという構造で、1年では消えない。そこで確率は中立に最も厚く置きつつ、やや悲観を厚めに残した。
一方、強気の見方も外せない。借入が軽く、店網の質が保たれる限り、赤字に落ちる筋書きは確率が低い。悲観は10%にとどめ、楽観は8%と控えめにした。総合では、本質価値は今の時価総額を上回るが、安全域は競合次第で消える。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 14,272 円2,973 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,622 円338 億円)。 今の値に割り戻すと 8,411 円1,752 億円、今との差 +32.3%、 期待の年率 +9.6%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 23,261 円4,845 億円 | 1,939 円404 億円 | +296.2% | +14.8% | 2,016 円420 億円 |
| やや楽観 | 20% | 19,470 円4,056 億円 | 1,738 円362 億円 | +233.5% | +12.8% | 4,242 円884 億円 |
| 中立 | 36% | 16,766 円3,492 億円 | 1,594 円332 億円 | +188.7% | +11.2% | 6,610 円1,377 億円 |
| やや悲観 | 26% | 8,490 円1,768 億円 | 1,589 円331 億円 | +58.5% | +4.7% | 2,620 円546 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,736 円570 億円 | 1,320 円275 億円 | −36.2% | −4.4% | 406 円85 億円 |
| 加重平均 | 100% | 14,272 円2,973 億円 | 1,622 円338 億円 | +149.9% | +9.6% | 15,893 円3,311 億円 |
今の株価時価総額 6,360 円1,325 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 出店と工場の稼働が最後まで実を結ぶ 利益 274 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 23,261 円4,845 億円
首都圏で出店を続ける力が最後まで衰えず、店は225店まで増える。ヤオコーやオーケーと同じ商圏でぶつかっても、生鮮と総菜の質と値ごろ感で客を離さない。寄居の物流・総菜工場と新しい工場が仕事量に見合って回り、仕入れと運びの費用が売上より遅く増える。賃上げは続くが、1人あたりの作業を減らす仕組みで吸収できる。営業利益率は4.7%まで戻り、中期計画の経常利益率4.5%を超える。
店が増えても利益の質は変わらない。新店の多くは埼玉の外で、客が育つまで時間がかかるが、10年のうちには成熟する。借入は工場と店への投資で増えるが、利益で十分まかなえる。工場と店が足並みをそろえて回るため、新店の失敗も少なく済む。ここまでうまくいっても、新しく投じるお金の稼ぎは自己資本の積み上がりで薄まり、ROEは10%台前半にとどまる。
- 食品スーパー事業(ベルク):数量 225(店舗数(店))× 価格 38(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 8,454 億円・営業利益 397 億円。営業利益率4.7%
倍率:事業の純利益 274 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.41 倍、時価総額 4,770 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数と利益率が同時に計画を上回る必要があり、今期の減益と競合の厚みを見れば、起きにくい上振れ。
やや楽観 20% 粗利益率が戻り店数も伸びる 利益 233 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 19,470 円4,056 億円
中期計画の店数目標には届かないが、年に4〜5店の純増を続ける。今期の減益は仕入れ高騰と賃上げが同時に来た一時の痛みで、値上げの浸透とPB「クラベルク」の拡大で粗利益率が少しずつ戻る。工場の稼働率が上がり、物流の費用も売上に対して軽くなる。10年後の店数は210店、営業利益率は4.4%に戻る。
競合とのすみ分けが進み、既存店の売上は物価並みに近づく。埼玉と群馬の旧来の店が稼ぎ頭であり続け、千葉・東京・神奈川の店が少しずつ黒字化の底上げに加わる。借入が増える局面はあっても利払いは小さい。ROEは9%台で、資本を厚くしても稼ぎはほぼ追いつく。中期計画の店数と利益率には届かないが、地場の優良チェーンとしての位置は守る10年になる。
- 食品スーパー事業(ベルク):数量 210(店舗数(店))× 価格 37(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 7,714 億円・営業利益 339 億円。営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 233 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.91 倍、時価総額 3,940 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数の伸びが続き、粗利益率が戻る筋書き。今期の下方修正を一時的なものと見る余地を残した。
中立 36% 店は増えるが利益率は今のまま 利益 201 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 16,766 円3,492 億円
店は年4〜5店のペースで増え、10年後に195店になる。中期計画の180店は2030年度より遅れて届く。新店は埼玉の外が多く、立ち上がりに時間がかかるため、1店あたりの売上は物価ほどには伸びない。営業利益率は今期の底から戻るが、4.2%と今の水準にとどまる。賃上げと物流・電気代の上昇を、PBと総菜の粗利益と作業の効率化でほぼ吸収する形だ。
ヤオコー、オーケー、ロピアとの価格競争は終わらない。ベルクは安さだけでは勝負せず、生鮮・総菜の質と店のきれいさで客を保つ。それで利益率は守れるが広がらない。自己資本は利益の8割近くを積み上げるので、ROEは今の10%台から8%台へゆるやかに下がる。稼ぐ力は伸びるが、資本を厚くしても稼ぎの伸びは追いつかない10年になる。
- 食品スーパー事業(ベルク):数量 195(店舗数(店))× 価格 36(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 6,999 億円・営業利益 294 億円。営業利益率4.2%
倍率:事業の純利益 201 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.51 倍、時価総額 3,318 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店は増えるが利益率は今の水準にとどまる、最も起きやすい形。
やや悲観 26% 価格競争が長引き利益率が下がる 利益 141 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 8,490 円1,768 億円
埼玉の中心部で、ヤオコー、オーケー、ロピアが大型店を重ねて出し、価格競争が長引く。ベルクは客数を守るために値下げを続け、粗利益率が下がる。人件費は賃上げ圧力で毎年上がり、それを売上の伸びで吸収できない。出店は年3〜4店に減り、10年後に175店。営業利益率は3.5%まで下がる。
既存店の客数は少しずつ減り、店の1店あたり売上は物価に追いつかない。それでも赤字にはならず、生活必需品の食品を売る事業は崩れない。配当は守るが、投資の余力が細り、新店の質も落ちる。今期の減益が一時でなく、10年の水準になるという見立てである。
- 食品スーパー事業(ベルク):数量 175(店舗数(店))× 価格 34(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 5,986 億円・営業利益 210 億円。営業利益率3.5%
倍率:ROE 6.7%(純利益 141 億円 ÷ 自己資本 2,103 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.0% + 残る割合 1/2 ×(6.7 − 7.0)= 6.9%、長期の成長率 g 3.5% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 14.0 倍。事業の ROE が資本コスト 7.0% 以下なので伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 14.3 倍が上限。価格競争で稼ぎが薄れる筋書きなので、その 8 割の 11.4 倍に置いた。
確率:今期の減益の原因(価格競争・賃上げ・仕入れ高)は 1 年では消えにくく、10年続くと見る人の言い分が強いので厚めに置いた。
悲観 10% 儲からない店が増える構造的な負け 利益 50 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,736 円570 億円
店の数を増やしても儲からない構造に落ち込む。関東の食品スーパーは、ディスカウント型の店と、ネットスーパー・宅配に挟まれる。ベルクは客数減を値下げで追うが、粗利益率が1〜2ポイント下がり、家賃・人件費という固定の費用は下がらない。営業利益率は1.8%まで落ち、営業利益は100億円を割る。
新店は採算に乗らず、減損が続く。店を借りているため、売上が落ちても家賃は払い続けなければならず、損益が一気に傾く。イオン(持株15%)との関係の見直しや、他の地場チェーンとの再編が焦点になる。優良な地場スーパーでなくなり、普通の中堅チェーンとして評価される10年である。
- 食品スーパー事業(ベルク):数量 155(店舗数(店))× 価格 31(1店舗当たり年間営業収益(億円))→ 売上 4,868 億円・営業利益 88 億円。営業利益率1.8%
倍率:ROE 3.0% と谷の利益で、稼ぐ力(純利益 50 億円 ÷ k 7.0%)は約 714 億円。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k = 14.3 倍で、構造的に負けた筋書きとしてその 8 割の 11.4 倍に置いた。売れる資産の額は確かめられていないので、床は稼ぐ力の範囲にとどめ、資産の評価は足していない。
確率:関東の食品スーパーは地場同士の競争が激しく、固定費の重い賃借店が利益を削る構造的な負けは無視できない。ただし生活必需品で需要自体は残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー事業(ベルク)
関東1都6県で約150店を運営する食品スーパー。生鮮・総菜・PBが主力で、埼玉が店の約6割を占める。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 151 | 28 | 4,234 | 179 |
| 10 年後 中立 | 195 | 36 | 6,999 | 294 |
取り方:2026年2月期の連結営業収益 4,234 億円を、2026年8月末時点の店舗数 151 店で割って 1 店当たりの収益を逆算した(開示の店数は期末で、新店は期の途中から売上が立つため、1 店当たりはやや低めに出る)。10 年の価格は、物価 1.34 倍から、新店が既存店より小ぶりで立ち上がりが遅いことと客数の目減りを引いて、中立で 1.28 倍に置いた。数量は店数で、中立は年 4〜5 店の純増。
リスクと懸念
価格競争と客数の減少
ヤオコー、オーケー、ロピアが同じ商圏に大型店を出し、安さの競争が続く。上期の既存店売上は0.4%減で、客数と買い上げ点数がともに落ちた。値下げで客を守れば粗利益率が削られ、守らなければ客が離れる。どちらに転んでも利益率には痛みが出る。
人件費・物流費・電気代の上昇
賃上げは続き、物流費と電気代も上がっている。今期の営業利益14%減の主因は、売上の計画未達で販管費率が1.0ポイント上がったことだ。売上が伸び悩むと、この費用増がそのまま利益を削る。総菜工場の稼働に伴う先行費用も重なる。
賃借店の固定費
出店の多くは賃借で、差入保証金は約108億円に達する。家賃は売上が落ちても払い続ける固定の約束だ。新リース会計基準が2028年から適用されると、借金の形が見える形で貸借対照表に載り、純借入や自己資本比率の見え方が変わる。悲観では家賃が利益を直撃する。
埼玉の外への出店の難しさ
出店は関東全域で年6〜8店が計画だが、今期は工期の遅れで新店が6店に減った。千葉・東京・神奈川は競合が濃く、立ち上がりに時間がかかる。埼玉の稼ぎ頭の店と同じ利益率を、新しい地域で出せるかが成長の分かれ目になる。
稼ぎが再投資に食われる構造
配当性向は20%台と低く、利益の8割近くを新店・工場・改装に回している。新店の稼ぎが悪化すれば、自己資本だけが積み上がってROEが下がる。成長を続けることが、そのまま価値を生むとは限らない。
再編・TOBの可能性
最大株主はイオンで15%を持つ。地場の食品スーパーの再編が進む中、買収や統合の対象になる可能性は消えない。株価が割安に放置されれば、提案が出ることもある。ただし、現時点でそうした動きの確認はない。
今後の分かれ目
- 既存店売上が2期続けて前年を下回ったら
- やや悲観・悲観に確率を寄せる。価格競争が構造に変わったと見る。
- 粗利益率が26%台前半を保ったまま、販管費率が下がり始めたら
- 中立・やや楽観に重みを移す。工場と物流の稼働が効き始めた合図。
- 千葉・東京・神奈川の新店が、埼玉の店に近い売上で立ち上がったら
- 出店余地が広いと見て、楽観側の確率を上げてよい。
- 出店が年4店を下回る状態が続いたら
- 中期計画の180店は遠のく。やや悲観の店数に近づく。
- イオンが持株を増やす、または他社との経営統合が出たら
- 再編による上振れ(楽観)と、独立性の低下の両面を確かめる。
- 新リース会計基準の適用で純有利子負債が大きく増えたら
- 見かけの借金の重さと、家賃の固定費の大きさを分けて見直す。
見ておくもの
- 既存店売上高・客数・客単価の月次(競合との差)
- 粗利益率と販管費率の四半期の動き
- 新店の数と、埼玉の外の新店の売上の立ち上がり
- 純有利子負債と設備投資額の変化
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)×1店当たり営業収益(物価込みの名目)で売上を積み、利益率は物価で動かさず、純利益は営業利益の0.71倍から利払いの増分を引いた。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した(ROEは結果)。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 7.0%、g 3.5%、RONICはk+1/2×(ROE−k))の上限の9〜9.5割にとどめ、中立はROEがkを超えるので1÷kを下限とした。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の範囲で置き、資産の評価は足していない。今の株価は最後に比べただけである。店舗の賃借は今の形(家賃を営業費用に入れた形)で10年後も置き、2028年2月期からの新リース会計基準で営業利益と純借入の形が変わる点に注意する。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.2→17.41 倍・やや楽観 PER 14.7→16.91 倍・中立 PER 14.3→16.51 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.5% を足した 7.0%。生活必需品の食品で景気に左右されにくいので循環を −0.5% とし、値決め・借金・寿命は普通の 0。競合との価格競争や今期の減益は k に足さず、やや悲観・悲観の確率と利益率で表した。事業は傾いておらず上乗せ(extra)も置かない。