結論
イオン九州は、九州でイオン、マックスバリュ、ザ・ビッグを運営する食品スーパーの会社だ。親会社イオンが議決権の約 75% を持つ。店は 270 店。九州の食卓を押さえる強みはあるが、儲けは売上の 2% に届かない。
筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。理由は、10 年後の利益が物価の分しか伸びない見立てにある。人口は減る。トライアルやコスモス薬品のような安売りの強敵が、福岡にも押し寄せている。人件費は物価以上に上がる。それでも売上は、物価と買収の取り込みで 5,500 億円ほどから 8,000 億円近くへ増える。営業利益率は 2% 前後で変わらず、利益は 100 億円強から 150 億円台へ伸びる程度だ。
救いは財務の落ち着きにある。自己資本比率は約 3 割で、親会社のイオンという後ろ盾もある。大やけどはしにくい。ただ、稼いだ利益のうち配当に回るのは 3 割ほどで、残りは店の建て替えや買収に使われる。その投資の稼ぎが資本コストを超えにくい点を、筆者はいちばん気にしている。
たまった利益が資本コストを超えて回らない限り、PER は 1÷資本コストの 13 倍が頭打ちになる。中立の筋書きでは、10 年後の時価総額が今を下回る。親会社による買い取りという上振れの芽はあるが、それは筋書きには入れず、リスクとして書く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、イオン九州は「悪くはないが、安全域がない」会社だ。
事業の本質は、毎日の食費を預かる商売だ。需要は景気に左右されにくく、10 年先も店は残る。これは評価できる。一方、儲けは売上の 2% 以下で、少し値下げするだけで利益が消える。値段を自分で決める力が弱い商売は、長く持ち続けるオーナーにとって、資本が増えても稼ぎが増えにくい。
資本の使い方では、出店や建て替えに使うお金の稼ぎが、資本コストをわずかに下回る見立てだ。稼いだお金を配当に 3 割しか回さず、残りを低い稼ぎの事業に注ぐ構造は、持ち続けるほど価値が増えにくい。親会社が 75% を持つため、少数株主には資本政策を動かす手段もない。
そのため、この会社に払ってよい値段は、利益の 10 倍前後が上限と筆者は考える。今の値段はこれを大きく上回る。安全域を取るなら、もっと下がってから検討する会社だ。悲観の筋書きは厚めに見ておくべきである。ただし、親会社による買い取りが起きれば、少数株主に上振れが生じる点は残る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、福岡を軸にした食品スーパーだ。マックスバリュ 117 店が主力で、買い物の頻度が高く、安定した売上をつくる。都市部の小型店マックスバリュエクスプレスが 41 店、ディスカウントのザ・ビッグが 29 店ある。
GMS、つまり総合スーパーのイオンは 67 店。食品に加えて衣料や日用品を売る。集客の核だが、利益率は低い。ウエルシアプラスは、食品とドラッグを一つの店にまとめた新しい形で、16 店まで増えた。
同社は 2020 年にマックスバリュ九州を吸収した。売上は 2,000 億円台から 5,000 億円規模に跳ね上がった。2026 年 3 月には長崎のジョイフルサン(9 店)を合併し、大分のトキハインダストリー(23 店)を完全子会社にした。九州内の食品スーパーを買い集める戦略だ。
収益の源は、単純に言えば店の数と客の数、それに客単価だ。仕入れはイオン全体の調達力に乗る。自社ブランドのトップバリュは、イオンの共同開発品だ。利益のおよそ 8 割は食品スーパー系と筆者はみている。ただ、開示が会社全体 1 本のため、セグメントごとの数字は推定になる。
店は借りているものが多いとみられる。家賃は売上が落ちても払う固定の約束で、数字に表れない重さになる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、あまり深くない。食品スーパーは地域に根を張る商売だが、客は近くの安い店へ動く。イオン九州の武器は、イオンの調達力と、福岡を中心にした出店網、それに電子マネーのポイントだ。強いが、トライアルやコスモス薬品のように、価格で攻める相手に値段で勝つほどではない。
資本効率はまずまずだ。ROE は直近で 10% 弱、過去 10 年の中央値は約 6% である。赤字だった 2010 年代の半ばから、合併で規模が増えた後に営業利益率が 2% まで戻った。ただ、この 2% が天井に近い。2025 年の中間決算では、生活応援の値下げと出店の償却で利益が半分近く減った。値下げに頼る経営は、利益を守りにくい。
経営は堅実で、無理な買収をしてこなかった。トキハやジョイフルサンも、店数の少ない会社を買い足す小ぶりな買い物だ。配当は 15 年ほど続けて守られ、2026 年 2 月期は増配した。一方、自社株買いはしない。親会社が議決権の 7 割半を持つので、少数株主の声が資本政策に届きにくい点が弱みだ。
借金は重くない。純有利子負債は 350 億円、自己資本比率は約 3 割。ただ、店の家賃という約束がこれに加わるため、見かけほど強いとは言えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
九州の食品小売は、勝ち残りの戦いに入っている。人口は減り、客は増えない。その中でトライアルが、西友を買って全国に広がる足場を得た。トライアルの食品売上は 5,300 億円、コスモス薬品は 5,800 億円と、イオン九州の食品系 3,750 億円を上回る。いずれも低価格で、ドラッグストアは食品の安さで客を奪っている。
流れは三つある。一つ目は価格競争の強まりだ。物価が 3% で上がる中、客は買う量を減らし、安い店を探す。二つ目は人件費の上昇だ。最低賃金が上がり、パートの確保も難しい。セルフレジや電子棚札で省人化を進めているが、効果は限られている。三つ目は再編だ。弱い地場チェーンが買われる。イオン九州のトキハ、ジョイフルサンの買収も、この流れの上にある。
数量でみると、国内の食品の量は 10 年で 0.9 から 1.0 倍へ縮むのが普通だ。九州は福岡がまだ強いが、地方は減る。店の数を増やしても、全体の食べる量は増えない。伸びる場所は、福岡の都市部と、小型店のエクスプレス、食品とドラッグを合わせたウエルシアプラスである。
同社の中期計画は、福岡で小型店とウエルシアプラスを合計 110 店出し、営業収益 6,230 億円、営業利益 119 億円を狙う内容だった。営業利益の目標は、売上が 14% 伸びても利益は 1 割強という低い狙いで、薄利構造を自ら認めている。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向の 3 割弱を目安にし、2026 年 2 月期は増配して総額 17 億円だった。次の期も同額の予想だ。自社株買いはなく、残りの利益は出店・建て替え・買収に回る。
M&A は九州の食品スーパーの買い足しが中心で、2026 年 3 月のトキハインダストリー、ジョイフルサンが直近だ。どちらも小ぶりな買い物で、取得額は開示されていない。
最大の論点は親会社イオンとの関係だ。議決権の約 75% をイオンが持つ。浮動株は 25% 前後しかなく、東証の上場維持の基準に近づく。イオンは過去に、グループの小売会社を完全子会社にして再編してきた。九州の事業を一本にまとめる動きがありうる。ただ、買い取りの時期と値段は誰にもわからず、筋書きに織り込めない。
政策保有株は大きくない。借入は、イオングループの信用を背景に調達できる。
株主優待は年約2.6億円(会社の費用ベース。株主優待券10,000円相当/年×単元株主約3.7万人(額面3.7億円)×使われ率7割)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+26億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
九州の食品小売は、強い会社に集約される局面にある。福岡では、イオン九州が県内の食品小売で首位に立った。人口が集まる都市部で、小型店のマックスバリュエクスプレスとウエルシアプラスを一気に増やせば、売上は数量でも伸びる。
M&A の余地も大きい。トキハ、ジョイフルサンに続き、九州の地場チェーンは後継者難で売り物が出る。買えば店数が増え、仕入れの交渉力が上がる。イオン全体の調達と、トップバリュの共同開発がその利益を押し上げる。
利益率にも伸びしろがある。セルフレジや電子棚札、物流の共同化はまだ効果が出きっていない。人件費が上がっても、この省人化が追いつけば、営業利益率は 2% から 2.5% 近くへ上がる。ウエルシアプラスは食品とドラッグを一つにまとめ、客単価を上げられる。
財務は堅く、親会社の後ろ盾があるため、投資を続けられる。景気が悪くなっても食品は売れ、他の小売より谷が浅い。配当も毎年守られ、増配の余地がある。10 年かけてこれが実を結べば、利益は今の倍近くになる。
慎重な見方
売上は増えても、利益が増えない会社だ。2025 年の中間決算では、生活応援の値下げと出店の償却で営業利益が半分近く減った。値下げをすれば客は来るが、利益は残らない。
相手が悪い。トライアルは西友を取り込み、データで売り場を最適化する。コスモス薬品は食品を安く売って客を連れてくる。どちらも九州に本拠を置き、イオン九州の主戦場の福岡で増えている。イオンの調達力があっても、店ごとの採算は苦しくなる。
小型店への出店も、効率がよいとは限らない。小型店は 1 店の売上が小さく、人件費や家賃の重さがそのまま利益を削る。買った会社の中にも、ジョイフルサンのように赤字の会社がある。
財務は 3 割の自己資本比率で、金利が上がると利払いが増える。店は借りているものが多く、家賃は売上が落ちても払う。新しいリース会計が入ると、借金が増えたように見える。
親会社が 75% を持つので、少数株主は売り手になれない。値上がりを期待して買う理由が、成長でも還元でもなく、親会社の買い取りだけになる。その期待は、10 年待っても実現しないことがある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方には事実の裏付けがある。福岡での出店や M&A は進み、親会社の調達力という武器もある。だが、利益率の弱さと競合の強さを突く慎重な見方のほうが、数字の裏付けは強い。売上は物価で自然に増えるが、利益が物価を超えて伸びる根拠は薄い。そのため確率は中立に 38%、やや悲観と悲観を合わせて 35% と、悲観側をやや厚くした。
中立の筋書きは、売上が 8,000 億円近くになっても営業利益率は 2% 弱のまま、ROE は資本コストをわずかに下回る。PER の上限は 1÷資本コストの約 13 倍で、その 8 割に置いた。今の値段はこの水準を超えているため、割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,739 円937 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 670 円229 億円)。 今の値に割り戻すと 1,760 円602 億円、今との差 −34.9%、 期待の年率 +2.4%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,133 円1,756 億円 | 953 円326 億円 | +125.3% | +8.5% | 426 円146 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,286 円1,466 億円 | 842 円288 億円 | +89.9% | +6.6% | 1,026 円351 億円 |
| 中立 | 38% | 3,064 円1,048 億円 | 731 円250 億円 | +40.5% | +3.5% | 1,442 円493 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,181 円404 億円 | 570 円195 億円 | −35.2% | −4.2% | 403 円138 億円 |
| 悲観 | 12% | 723 円247 億円 | 213 円73 億円 | −65.3% | −10.1% | 112 円38 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,739 円937 億円 | 670 円229 億円 | +26.2% | +2.4% | 3,409 円1,166 億円 |
今の株価時価総額 2,701 円924 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 福岡で勝ち、M&A も実って利益率が上がる 利益 120 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 5,133 円1,756 億円
福岡の都市部で、小型店のマックスバリュエクスプレスとウエルシアプラスが計画どおりに増え、新しい客層を取り込む。トキハ、ジョイフルサンに続く九州内の買収も進み、店数が増えて仕入れの交渉力が高まる。セルフレジや電子棚札、物流の共同化の効果が出て、人件費の上昇を吸収する。GMS は建て替えと入れ替えで集客力を保つ。食品とドラッグを合わせたウエルシアプラスは、客単価を上げて利益率が 3% 近くになる。こうして営業利益率は 2.4% ほどまで上がり、利益は今の倍以上になる。それでも商売の本質は薄利の小売で、他社が追いつけない強みがあるわけではない。
- GMS 事業(イオン):数量 64.0(GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 50(1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 3,200 億円・営業利益 35 億円。GMS、営業利益率 1.1%
- SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ):数量 245(標準店換算の店数(実質、店))× 価格 20(標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 4,828 億円・営業利益 154 億円。SM 系(標準店換算)、営業利益率 3.2%
- ウエルシアプラス・その他:数量 70.0(店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 19(1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む))→ 売上 1,295 億円・営業利益 39 億円。ウエルシアプラス・その他、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 120 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.63 倍、時価総額 1,756 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:福岡の出店と M&A が重なり、人件費の上昇も省人化で吸収する必要がある。成功すれば強いが、薄利の食品スーパーで利益率が上がる確度は高くない。
やや楽観 20% 出店と買収が順調で、薄利ながら着実に増益 利益 105 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 4,286 円1,466 億円
出店と買収が順調に進む。福岡のウエルシアプラスと小型店は計画の半ば以上まで増え、買収したトキハやジョイフルサンの店も、仕入れの統合と店の入れ替えで採算が改善する。トライアルなど競合の攻勢は続くが、イオンの調達力とトップバリュで値段の差を埋め、客の流出は小さく抑える。GMS の利益率は薄いまま、食品系は 3% 前後を保つ。営業利益率は 2.3% ほどまで上がり、利益は今の 1.9 倍になる。配当は連結配当性向の 3 割強で続き、ROE は 9% 前後で保たれる。ただし、稼いだ利益を店の建て替えと出店に回し続けるため、資本コストを大きく超える稼ぎには育たない。堅実だが、驚きのない 10 年である。
- GMS 事業(イオン):数量 63.0(GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 50(1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 3,150 億円・営業利益 35 億円。GMS、営業利益率 1.1%
- SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ):数量 228(標準店換算の店数(実質、店))× 価格 20(標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 4,493 億円・営業利益 139 億円。SM 系(標準店換算)、営業利益率 3.1%
- ウエルシアプラス・その他:数量 55.0(店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 19(1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む))→ 売上 1,018 億円・営業利益 27 億円。ウエルシアプラス・その他、営業利益率 2.7%
倍率:事業の純利益 105 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 13.96 倍、時価総額 1,466 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の方向が概ね当たり、食品系の利益率が現状をやや上回る想定。親会社の調達力があるため、十分にありうる。
中立 38% 中立:売上は物価で伸び、利益率は 2% 弱のまま 利益 80 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,064 円1,048 億円
売上は物価の上昇と買収の取り込みで 8,000 億円近くに増える。ただし客の数は、人口減と競合に押されて 1 店当たりで 3〜5% 減る。GMS は閉鎖と建て替えで店数が 5 店ほど減る。食品系は、買収と小型店の出店で標準店換算の店数が増える。福岡では強く、地方の店は苦しい。人件費の上昇とトライアルなどとの価格競争で、利益率は今と同じ 2% 弱から動かない。営業利益は 150 億円台に伸び、純利益は 80 億円になる。配当性向は 3 割強、残りは出店と建て替えに回る。ROE は 7% 台で、資本コストをわずかに下回る。親会社は議決権の約 75% を持ち続ける。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約2.6億円×10年)を足している。
- GMS 事業(イオン):数量 60.0(GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 50(1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 3,000 億円・営業利益 21 億円。GMS、営業利益率 0.7%
- SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ):数量 210(標準店換算の店数(実質、店))× 価格 20(標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 4,138 億円・営業利益 120 億円。SM 系(標準店換算)、営業利益率 2.9%
- ウエルシアプラス・その他:数量 43.0(店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 19(1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む))→ 売上 796 億円・営業利益 16 億円。ウエルシアプラス・その他、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,032 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は物価と買収で伸びるが、人件費と価格競争で利益率は動かない。いちばんありそうな中心の筋書き。
やや悲観 23% 安売りの強敵に押され、利益が細る 利益 36 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,181 円404 億円
トライアルやコスモス薬品が福岡の郊外から都市部へ入り、値下げ競争が続く。1 店当たりの客は 1 割減り、GMS は 10 店ほど閉鎖する。食品系も、買収した店の中に採算の合わない店が出て、小型店の出店は慎重になる。ウエルシアプラスは出店のペースが落ち、小さな規模にとどまる。営業利益率は 1.3% まで下がり、利益は今の 8 割にも届かない。家賃や人件費は売上が落ちても減らないため、利益の落ち込みが大きくなる。純利益は 36 億円で、ROE は 4% を切る。配当は今の水準を守れても、増える余地はない。親会社は少数株主の声を聞かず、事業の整理も進まない 10 年になる。
- GMS 事業(イオン):数量 52.0(GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 49(1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 2,522 億円・営業利益 5 億円。GMS、営業利益率 0.2%
- SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ):数量 190(標準店換算の店数(実質、店))× 価格 19(標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 3,632 億円・営業利益 80 億円。SM 系(標準店換算)、営業利益率 2.2%
- ウエルシアプラス・その他:数量 30.0(店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 18(1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む))→ 売上 539 億円・営業利益 3 億円。ウエルシアプラス・その他、営業利益率 0.5%
倍率:ROE 3.9%(純利益 36 億円 ÷ 自己資本 928 億円)。事業の ROE が資本コストを大きく下回り、PER の上限は 1÷k = 13.3 倍だが、稼ぐ力(純利益 ÷ k = 480 億円)の 7 割にあたる 9.5 倍に抑え、上限へ引き上げていない。家賃が固定費として残る。EV ÷ 営業利益は、時価総額 342 億円に今の純有利子負債 350 億円を足して 7.9 倍で、借金を足しても割高ではない。
確率:トライアルやコスモス薬品の進出で、値下げが常態化する。2025 年の中間決算のように利益が削られる動きは、すでに現実になっている。
悲観 12% 価格競争に敗れ、GMS が赤字で稼ぐ力を失う 利益 −30 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 723 円247 億円
GMS は客が減り続け、赤字が定着する。閉鎖を急いでも、家賃や人件費という固定の約束が重くのしかかる。食品系も、トライアルとコスモス薬品に値段で負け、利益率が 1% 弱まで落ちる。小型店の出店は採算に乗らず、ウエルシアプラスも縮む。営業利益は赤字寸前で、減損が重なり純損益は赤字になる。10 年の純利益の合計はほぼゼロで、配当は大きく減らされるが、赤字の期も続く分は資産の売却や借入で払うことになり、自己資本は赤字と減損の分だけ細る。それでも店網そのものと、自社が持つ土地や建物の価値は残る。親会社が九州の事業を整理し、少数株主は資産価値の近くで出ていく展開になる。
- GMS 事業(イオン):数量 45.0(GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 47(1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 2,099 億円・営業利益 −21 億円。GMS、営業利益率 -1.0%
- SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ):数量 160(標準店換算の店数(実質、店))× 価格 18(標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目))→ 売上 2,941 億円・営業利益 24 億円。SM 系(標準店換算)、営業利益率 0.8%
- ウエルシアプラス・その他:数量 15.0(店舗数(客数の変化を含む実質、店))× 価格 17(1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む))→ 売上 259 億円・営業利益 −5 億円。ウエルシアプラス・その他、営業利益率 -2.0%
倍率:GMS の赤字が定着して純利益が赤字となり、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後から事業の借入を引いた約 250 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 603 億円に PBR 0.41 倍を掛けて測った。谷の年は営業利益がほぼゼロで EV ÷ 営業利益は測れないが、谷の 1 年の利益で測る数字ではなく、資産の床で測った。
確率:GMS が構造的に赤字となり、小型店の出店も実らない複合の筋書き。薄利の商売では一度崩れると戻りにくいため、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
GMS 事業(イオン)
イオンの名で運営する総合スーパー 67 店。食品と衣料・日用品を売る集客の核。
| 数量GMS 店舗数(客数の変化を含む実質、店) | 価格1 店当たり営業収益(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 67.0 | 37 | 2,500 | 20 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 50 | 3,000 | 21 |
取り方:2025/11 時点の GMS 67 店。会社は営業収益を分けて開示しないため、全体 5,471 億円のうち 2,500 億円を GMS と推定し、67 店で割って 1 店約 37 億円とした。営業利益 20 億円は食品系より薄いとみた推定。
SM 系事業(マックスバリュ・エクスプレス・ザ・ビッグ)
食品スーパーのマックスバリュ 117 店、小型のエクスプレス 41 店、ディスカウントのザ・ビッグ 29 店。
| 数量標準店換算の店数(実質、店) | 価格標準店 1 店当たり営業収益(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 187 | 15 | 2,750 | 90 |
| 10 年後 中立 | 210 | 20 | 4,138 | 120 |
取り方:2025/11 時点の 3 業態計 187 店。営業収益 2,750 億円と推定して 187 で割り、標準店 1 店 14.7 億円とした。小型店は標準店の半分ほどに数え、買収した店は店の売上で換算する。営業利益 90 億円は全体の 108 億円から GMS 20 億円を引き、ウエルシアプラスの赤字を戻した推定。
ウエルシアプラス・その他
食品とドラッグを 1 店にまとめたウエルシアプラス 16 店と、その他の収入。
| 数量店舗数(客数の変化を含む実質、店) | 価格1 店当たり営業収益(億円、名目、その他収入を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 16.0 | 14 | 221 | −2 |
| 10 年後 中立 | 43.0 | 19 | 796 | 16 |
取り方:ウエルシアプラス 16 店。営業収益は全体 5,471 億円から GMS・SM 系の推定を引いた約 221 億円、営業利益は開始期の赤字として約 −2 億円と推定した。出店途上のため、この欄の数字は精度が低い。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
価格競争の激化
トライアルは西友を取り込んで食品売上 5,300 億円、コスモス薬品は 5,800 億円と、イオン九州の食品系を上回る。福岡の都市部まで安売りが入れば、値下げで利益が削られる。2025 年の中間決算で、すでに営業利益が半減した例がある。
GMS の構造的な弱さ
GMS のイオンは 67 店で、営業利益率は 1% 前後と推定される。衣料と日用品の客がネットや専門店へ流れ、建て替えや閉鎖の費用が続く。固定費の家賃が残るため、売上の落ち込みが利益を大きく削る。
人件費と最低賃金の上昇
最低賃金は上がり続け、パートの確保も難しい。セルフレジや電子棚札の効果は、2025 年の時点で限定的と会社が認めている。省人化が追いつかなければ、物価で売上が増えても利益率は下がる。
買収の実行リスク
2026 年 3 月に合併したジョイフルサンは赤字の会社で、トキハインダストリーも含め、取得額が開示されていない。小ぶりな買い物とはいえ、統合に手間取れば利益が出ず、のれんの減損にもなりうる。
親会社との利害
イオンが議決権の約 75% を持ち、少数株主は資本政策を動かせない。親会社の都合で事業の整理や買い取りが決まる。買い取りは上振れになりうるが、時期も値段も読めない。
金利とリース会計
借り換えで金利が上がると利払いが増える。10 年で年 9 億円ほどの負担増と推定される。2028 年 3 月期ごろから新しいリース会計が入り、貸借対照表に家賃の約束が載ると、自己資本比率は下がって見える。
災害と人口減
九州は地震や台風の被害を受けやすい。人口は減り、地方の店は客が増えにくい。店舗網が九州に集中しているため、地域の景気や災害の影響が直接かかる。
今後の分かれ目
- 福岡でトライアルやコスモス薬品の出店が増え、既存店の客数が減り続けたら
- やや悲観・悲観の確率を上げ、食品系の利益率の見通しを下げる。
- ウエルシアプラスと小型店の出店が計画どおり進み、1 店ごとの採算が確かめられたら
- やや楽観側の重みを増やし、食品系の数量の見通しを上げる。
- トキハインダストリーとジョイフルサンの統合で営業利益率が上がったら
- 買収の失敗の見方を後退させ、中立〜やや楽観の確率を上げる。
- イオンが完全子会社化の方針を示したら
- 少数株主への上振れが生じる。ただし値段と時期次第で、筋書きの確率は文面を見て決める。
- GMS の閉鎖や減損が相次いだら
- 悲観側の重みを増やし、家賃の固定費の重さを利益率に織り込む。
- 配当性向が 4 割を超えて引き上げられたら
- 資本の使い方が改善したとみて、中立の PER を上限へ近づける。
見ておくもの
- 福岡での既存店の客数と、競合(トライアル・コスモス薬品)の出店数
- 食品系の営業利益率と、売上総利益率の動き
- ウエルシアプラス・マックスバリュエクスプレスの出店数と 1 店の採算
- トキハインダストリー・ジョイフルサンの統合後の利益
- 親会社イオンの持ち分と、上場維持・再編の方針
倍率と資本コストの決め方
売上は店数(標準店換算、客数の変化を含む実質)×1 店当たり売上(物価 3% を価格として 10 年 1.34 倍)で積み、利益率は筋書きの構造から置いた。自己資本は今の値+純利益の合計−還元で流し、倍率は ROE が資本コスト 7.75% をわずかに下回るため上限 1÷k(13.3 倍)の 8 割に置いた。やや悲観は稼ぐ力の 7 割、悲観は売れる資産の床で置き、市場の倍率や過去の底は使っていない。今の PER を見て筋書きを動かしていない。新リース会計で貸借対照表の形が変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。親会社による買い取りの上振れは筋書きに入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.2→14.63 倍・やや楽観 PER 12.5→13.96 倍・中立 PER 11.9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に品質の調整 0% を足した 7.5%。食品の需要は安定し景気の影響が小さいが(循環 −0.25%)、値段は競合に決められやすく(値決め +0.25%)、借金は普通で(0)、寿命は普通(0)。事業は黒字で傾いておらず上乗せはしない。親会社の持ち分が大きい点や買収の実行といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.75%。