結論
グローバルスタイルは、大阪が本社のオーダースーツの専門店だ。全国の主要都市に41店を持ち、客の体に合わせて仕立てたスーツを、既製品に近い値段で売る。筆者の結論は、今の値段は割安だ、というものだ。
一番の理由は、縮む市場の中で伸びる側にいることだ。スーツの市場は、在宅勤務と服装の自由化で年々細っている。それでも、就職や昇進、結婚式など「ここ一番」の一着は、合わせて仕立てたいという客が増えた。2026/07期の売上は124億円で、既存店だけで6%以上伸びた。ROEは20%前後と高い。
弱みもはっきりしている。店は借りた建物で、家賃は毎年必ず払う約束だ。借入は純額で15億円ほどある。生地の在庫も24億円と重い。スーツの需要がもう一段崩れれば、利益はすぐに薄くなる。
10年後の中立では、店は60店台に増え、売上は約230億円、純利益は約10億円になる。確率を重ねた本質価値は、今の時価総額を4割余り上回る。店を増やす余地と、注文の仕立てが持つ値段の力が、安全域の源だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続ける価値のある小さな事業だと筆者は見る。
事業はわかりやすい。体に合うスーツを、手の届く値段で仕立てる。10年後も、ここ一番の一着を仕立てる客はいる。スーツ全体が縮んでも、その中で注文の仕立ての割合は上がる。この会社は、その流れの真ん中にいる。
資本の使い方も悪くない。稼いだ利益を出店と生地に回し、ROE20%前後を保ってきた。配当も利益の3割に増やした。買収で無理に規模を追わず、店を一つずつ増やしている。
注意すべきは、借入と家賃だ。店は借りた建物で、家賃は売上が落ちても払う約束だ。借入も利益の2年分ある。スーツの需要が一段崩れた時、この固定の費用が利益を一気に削る。
安全域は、今の値段にある程度ある。純利益の7倍台という今の値段は、店の数が伸び続けるなら安い。ただ、それは出店の余地とオーダーの伸びが続くことが前提だ。大きな値下げの競争に巻き込まれれば、その前提は崩れる。
何で稼ぐ会社か
グローバルスタイルは、オーダースーツの店だけを営む単一の事業の会社だ。「GINZA Global Style」の名で、札幌から福岡まで全国の主要都市に41店を持つ。
稼ぎ方はこうだ。客は店で生地とデザインを選び、採寸を受ける。注文の代金は先に受け取り、国内外の工場で仕立てて数週間後に渡す。値段は1着数万円からで、百貨店の高級な仕立てより安く、量販店の既製品よりは高い。この価格帯で、体に合う一着を手の届く値段で作れることが売りだ。
2026/07期の売上は124億円、1店あたりでは約3億円になる。注文の時点で代金を受け取るので、前受金が積み上がり、運転資金は軽い。一方、生地は自社で買い付けて持つので、在庫は24億円と売上の2割に近い。
客を集める手段は、SNSだ。社員が出演するドラマ「ガチスーツ」の動画は累計で1億回再生を超え、若い新規客が増えた。スーツだけでなく、シャツ、ポロシャツ、女性のブラウス、コートも注文で作る。
費用の柱は、生地と仕立ての原価、店の家賃と人件費、広告だ。原価率は45%ほどで、粗利は厚いが、店の固定費が重い。2027/07期は6店を新しく出す計画だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、中くらいの強さだと筆者は見る。
強みは三つある。一つめは、仕立ての仕組みだ。採寸の型と工場への発注、生地の買い付けを自社で回し、数万円台で体に合うスーツを作れる。二つめは、客を呼ぶ力だ。SNSの動画で若い客を集める手法は、紳士服の大手が持たない武器になった。三つめは、客が戻ってくる仕組みだ。一度採寸した客は、型が店に残るので、次も同じ店で頼みやすい。
値決めの力もある。原材料と円安で生地は高くなったが、粗利率は55%ほどを保っている。
資本効率は高い。ROEは過去5年の中央値で21%と、紳士服の大手の数倍だ。
弱みは、規模と真似のしやすさだ。オーダースーツは、SADAや麻布テーラーなど非上場の専門店、青山商事やAOKIのオーダーの売り場と、競争相手が多い。仕組みそのものは、資金のある大手なら作れる。店の数で勝負する大手が本気で値下げに出れば、利益率は削られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スーツの市場は、長く縮んでいる。帝国データバンクによると、紳士服の主要7社のスーツの売上は、2025年度に3,386億円と2年続けて減った。在宅勤務と服装の自由化で、毎日スーツを着る人は減り続ける。
その中で、伸びているのがオーダーだ。毎日着る数着は減っても、就職、昇進、結婚式、商談など、ここ一番で着る一着には、体に合う良いものを選ぶ客が増えた。業界では「量から質へ」の転換と呼ばれる。紳士服の大手もオーダーの売り場を広げている。
競争の形は、二つに分かれる。青山商事、AOKI、コナカなどの大手は、郊外の店の網を持ち、既製品の売り場の一角でオーダーを売る。もう一方が、SADAや麻布テーラー、グローバルスタイルのような専門店で、都市の駅の近くやショッピングセンターに店を構える。専門店は、採寸と仕立ての手際で客の信頼を得る。
原価の面では、生地の多くを輸入に頼る。円安と原材料の上昇は原価を押し上げるが、注文の仕立ては値上げが通りやすい。
10年の中立では、スーツの量は少しずつ減り、オーダーの割合は上がり続ける、と筆者は見る。オーダーの客の数は横ばいからやや増え、1着の値段は物価並みに上がる。グローバルスタイルは、店の数を増やしてシェアを取る側にいる。
資本政策と M&A
還元の方針は、2026年に一歩進んだ。配当性向の目安を、それまでの10〜20%から30%に引き上げた。2026/07期の配当総額は約1.9億円で、前の期の1.7倍だ。株主優待は、200株以上の株主に自社の店で使える優待券を出す。費用の開示は無いが、年0.05億円前後と推定し、10年で約0.5億円を還元に足した。
借入は、短期と長期で22億円ほどあり、現金は7億円だ。純負債は約15億円で、利益の2年分に当たる。出店と生地の在庫に資金を使うため、現金は溜まりにくい。借り換えの金利が上がれば、利払いは少し重くなる。
株は、田城弘志社長と、社長が代表を務める資産管理の会社で約4割を持つ。2023年に、社長の会社の間で株を移した。オーナーの会社なので、買収の提案が来ても、社長の判断で決まる。逆に言えば、大手の紳士服が専門店を取り込みたいと考えれば、話は社長との交渉になる。
M&Aの歴史は無い。成長は自社の出店で積み上げてきた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、縮む市場で伸びる専門店という、めずらしい位置を重く見る。
スーツの市場は縮んでいるが、オーダーは伸びている。ここ一番の一着を体に合わせて仕立てたい客は、むしろ増えた。グローバルスタイルは、その客を数万円台の値段で取る仕組みを持つ。既存店の受注は6%以上伸び、全店では10%近く伸びた。
客を集める力も強い。SNSのドラマは累計1億回の再生を超え、紳士服の大手が届かなかった若い客を連れてくる。一度採寸した客は型が店に残るので、次も戻ってくる。
店を増やす余地も大きい。41店はまだ主要都市が中心で、中核都市とショッピングセンターに出す余地がある。会社は2027/07期に6店を出す。1店の売上は約3億円、利益率は6%台で、新しい店も早く黒字になる。
資本効率は高い。ROEは20%前後で、配当性向も30%に上げた。純利益の7倍台という今の値段は、利益が伸び続ける会社には安い。大手が専門店を取り込みたいと考えれば、買収の値段も付く。
慎重な見方
慎重な見方は、スーツという商品そのものの先細りを突く。
毎日スーツを着る人は、10年後にはさらに減る。オーダーの割合が上がっても、パイ全体が縮めば、伸びはいずれ止まる。ここ一番の一着は、数年に一度しか買わない。
競争も激しくなる。青山商事やAOKIは、全国の店の網でオーダーの売り場を広げている。SADAや麻布テーラーなどの専門店も同じ客を狙う。採寸と仕立ての仕組みは、資金があればまねできる。値段の競争に入れば、粗利率55%の厚みはすぐに削られる。
固定の約束も重い。店は借りた建物で、家賃は売上が落ちても下がらない。借入は純額で15億円ほどあり、生地の在庫も24億円ある。売上が1割落ちれば、利益は半分以上消える形だ。
2026/07期の最高益も、耐用年数の誤りを直して償却が減った分を含む。過年度の法人税も払った。小さな会社の管理の甘さが見える。社長と社長の会社が4割を持ち、経営は一人の判断に頼る。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、受注の伸びと出店の余地、高いROEという数字に支えられている。慎重な見方は、スーツの先細りと競争という構造を突くが、それが今の伸びを止めた証拠はまだ無い。
そこで中立は、出店のペースを会社の計画の3分の1ほどに落とし、利益率はならした今の水準にとどめた。確率は中立に厚く、強気の側に34%、慎重な側に31%を置き、わずかに強気の側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 4,857 円165 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 708 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 2,732 円93 億円、今との差 +88.9%、 期待の年率 +14.4%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,180 円312 億円 | 1,088 円37 億円 | +610.1% | +21.7% | 1,232 円42 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,146 円243 億円 | 882 円30 億円 | +455.2% | +18.7% | 1,766 円60 億円 |
| 中立 | 35% | 5,334 円181 億円 | 735 円25 億円 | +319.7% | +15.4% | 2,124 円72 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,386 円47 億円 | 500 円17 億円 | +30.4% | +2.7% | 377 円13 億円 |
| 悲観 | 11% | 359 円12 億円 | 235 円8 億円 | −58.9% | −8.5% | 65 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,857 円165 億円 | 708 円24 億円 | +284.9% | +14.4% | 5,565 円189 億円 |
今の株価時価総額 1,446 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% オーダーの代名詞になり、店は倍に 利益 18 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 9,180 円312 億円
SNSで集めた若い客が、昇進や結婚のたびに戻ってくる。オーダースーツといえばこの店、という名前が定着する。店は年4〜5店のペースで増え、10年で85店になる。地方の中核都市とショッピングセンターにも広がる。
1店の売上は、物価並みに上がる。客は1着の値段より体に合うことを重視し、値上げは通る。シャツやコート、女性の服の注文も増え、1人の客が使う額が上がる。
店の数が増え、生地の買い付けと工場への発注の規模が効く。営業利益率は7.5%に上がり、営業利益は26億円近くになる。配当は利益の3割で増え続け、借入は利益で返していく。
紳士服の大手がオーダーで追いかけてくるが、専門店の手際と若い客の支持で差を保つ。大手から事業ごと買いたいという話が来てもおかしくない会社になる。
- オーダースーツの店(GINZA Global Style):数量 85.0(店の数(店。期末))× 価格 40,468(1店あたり売上(万円))→ 売上 344 億円・営業利益 26 億円。85店、1店の売上1.34倍、利益率7.5%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.23 倍、時価総額 302 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既存店が年6%伸び、6店を出す計画が続けば届く姿だ。ただ、スーツ全体が縮む中で10年続けるのは容易ではなく、1割強に置いた。
やや楽観 22% 出店が続き、利益率は7%を保つ 利益 14 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 7,146 円243 億円
店は年3店ほどのペースで増え、10年で75店になる。新しい店は中規模の都市が増え、1店の売上は実質でわずかに下がる。それでも値上げは物価並みに通り、1店の売上は10年で3割近く上がる。
オーダーの割合が上がる流れは続く。大手の紳士服がオーダーの売り場を広げるが、専門店の仕立ての手際と、SNSで集めた客の支持で、シェアを保つ。
営業利益率は7%で、営業利益は約20億円になる。配当は利益の3割を保ち、借入は少しずつ減る。ROEは13%ほどで、資本コストを上回り続ける。店を一つずつ増やす経営が、そのまま利益の伸びになる姿だ。
- オーダースーツの店(GINZA Global Style):数量 75.0(店の数(店。期末))× 価格 38,445(1店あたり売上(万円))→ 売上 288 億円・営業利益 20 億円。75店、1店の売上1.27倍(実質0.95倍×物価1.34倍)、利益率7%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.81 倍、時価総額 230 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027/07期の計画は6店の出店と既存店の5%増で、受注も伸びている。この勢いが半分ほど続く姿は十分ありうる。2割強に置いた。
中立 35% 店は60店台に、利益率6.5% 利益 10 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 5,334 円181 億円
店は年2店ほどのペースで増え、10年で62店になる。都市の一等地はおおむね埋まり、新しい店は中規模の都市と郊外のショッピングセンターが中心になる。1店の売上は実質で1割近く下がるが、値上げは物価並みに通り、1店の売上は10年で2割強上がる。
スーツを毎日着る人はさらに減る。ただ、ここ一番の一着を仕立てる客は残り、オーダーの割合は上がる。大手の紳士服も同じ客を狙い、広告と値引きの競争が続く。
営業利益率は、ならした今の水準に近い6.5%を保つ。営業利益は約15億円、純利益は約10億円になる。家賃と人件費は物価で上がるが、値上げで吸収する。配当は利益の3割で続け、借入は横ばいで回す。ROEは11%ほどで、資本コストをやや上回る。
- オーダースーツの店(GINZA Global Style):数量 62.0(店の数(店。期末))× 価格 37,231(1店あたり売上(万円))→ 売上 231 億円・営業利益 15 億円。62店、1店の売上1.23倍(新しい店は中規模の都市で実質0.92倍、値段は物価並みの1.34倍)、利益率6.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.33 倍、時価総額 167 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の余地はあるが、スーツ全体が縮み、大手のオーダーとの競争も強まる。店を年2店ほど増やし、利益率を今の水準で保つ姿がいちばん起こりやすいとみた。
やや悲観 20% 出店が止まり、値下げの競争に巻き込まれる 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,386 円47 億円
大手の紳士服がオーダーの売り場を一気に広げ、値段で攻めてくる。SADAなどの専門店も店を増やし、都市の駅前で客の奪い合いになる。グローバルスタイルは出店のペースを落とし、10年で50店にとどまる。
1店の売上は実質で15%下がる。値上げは物価に届かず、広告と値引きで客をつなぐ。粗利率が下がり、家賃と人件費は物価で上がる。営業利益率は4%に落ち、営業利益は約7億円になる。
純利益は4億円台で、ROEは資本コストを下回る。配当は利益の3割で減る。借入の金利も上がり、利払いが重くなる。会社は続くが、成長の会社から、普通の専門店に変わる。
- オーダースーツの店(GINZA Global Style):数量 50.0(店の数(店。期末))× 価格 33,371(1店あたり売上(万円))→ 売上 167 億円・営業利益 7 億円。50店、1店の売上1.1倍(実質0.85倍、値上げは物価に届かない)、利益率4%
倍率:純利益約4.4億円、ROEは6%ほどで資本コスト8%に届かない。稼ぐ力の価値は純利益÷kで約52億円だが、ためた利益が額面を下回る分を見て8倍。
確率:スーツの市場は2年続けて縮み、大手もオーダーに力を入れる。新しい店の当たり外れが出て、値引きの競争に入る筋書きの現実味は高く、2割に置いた。
悲観 11% スーツ離れと値下げで赤字に 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 359 円12 億円
構造的に負ける筋書きだ。スーツを着る場面そのものが減り、ここ一番の一着も、ネットで寸法を送る安い仕立てに客が流れる。大手の紳士服もオーダーの値段を下げ、専門店の値段の強みが消える。
店は35に減り、1店の売上は物価に大きく遅れる。家賃と人件費は売上が落ちても残り、営業損益は赤字になる。閉店の費用と減損が出て、自己資本は今より小さい29億円ほどに削られる。借入の返済のために、生地の在庫を安く処分する。
残る価値は、採寸の型を持つ客の名簿と、店の網を買う相手が付く分だけだ。大手が専門店の網を安く取り込む形で、株主の取り分は小さくなる。
- オーダースーツの店(GINZA Global Style):数量 35.0(店の数(店。期末))× 価格 27,180(1店あたり売上(万円))→ 売上 95 億円・営業利益 −2 億円。35店、1店の売上0.9倍、赤字
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。減損と閉店の損で自己資本は29億円ほどに減る。売れる資産から借入を引いた残りと、客の名簿と店の網を買う相手が付く分を見て、その0.42倍の約12億円。
確率:服装の自由化は一方向に進み、オーダーも安い通販の仕立てに客を取られる道がある。家賃と借入の固定の約束が重く、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オーダースーツの店(GINZA Global Style)
全国の主要都市の直営店で、オーダースーツ・シャツ・コートなどを採寸して仕立てて売る。単一のセグメント。
| 数量店の数(店。期末) | 価格1店あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 41.0 | 30,200 | 124 | 9 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 37,231 | 231 | 15 |
取り方:2026/07期末の41店と売上123.8億円は短信の開示。1店あたり約3.02億円。営業利益9.40億円は耐用年数の一括修正で償却が1.24億円減った分を含み、ならすと約8.2億円(利益率6.6%)。10年の利益率はならした値から置いた。
リスクと懸念
スーツ離れ
在宅勤務と服装の自由化で、スーツを着る人は減り続ける。主要7社のスーツの売上は2年続けて減った。オーダーの伸びがこの縮みを上回らなくなれば、出店の前提が崩れる。
大手と専門店の競争
青山商事やAOKIもオーダーの売り場を広げ、SADAなどの専門店も店を増やす。値段の競争になれば、粗利率55%の厚みは削られる。仕立ての仕組みは、資金のある大手ならまねできる。
家賃と借入の固定の約束
店は借りた建物で、家賃は売上が落ちても下がらない。借入は純額で15億円ほどある。客が減る年は、家賃と利払いが残り、利益が一気に縮む。2027年4月以後に始まる年度から、借りた店の約束が貸借対照表に載る。
生地の在庫と円安
生地の在庫は24億円と売上の2割に近い。流行や色の好みが変われば評価損が出る。生地の多くは輸入で、円安と原材料の上昇が原価を押し上げる。
会計の誤りと管理の体制
2026/07期に、固定資産の耐用年数の誤りを一括で直し、償却費が1.2億円減った。過年度の法人税も1.1億円払った。小さな会社の管理の体制に、まだ弱い所がある。
オーナーへの依存
社長と社長の会社で約4割を持ち、経営の判断は社長に集まる。社長の後を継ぐ人と、その時の株の行方が、会社の先を左右する。
今後の分かれ目
- 既存店の受注が2期続けて前年を下回った
- オーダーの伸びが止まった合図だ。やや慎重な筋書きの確率を上げる。
- 年6店ほどの出店が3年続き、新しい店も利益を出した
- 店の数で伸びる形が回っている証拠だ。強気の筋書きに近づく。
- 大手の紳士服がオーダーの値段を大きく下げた
- 値段の競争に入った合図だ。粗利率の動きを見て、慎重な筋書きの確率を上げる。
- 大手の紳士服やファンドから買収の提案が出た
- 社長が応じれば、事業の価値に上乗せした値段で株主の取り分が決まる。
- 借入が増え、純負債が利益の4年分を超えた
- 出店を借金で急いでいる合図だ。金利の上昇に弱くなり、慎重な筋書きの確率を上げる。
見ておくもの
- 既存店と全店の受注高
- 店の数と新しい店の売上
- 粗利率と広告費の比率
- 生地の在庫の残高
- 借入の残高と配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。中立は純利益約10億円、ROE11%ほどで資本コスト8%を上回り、残る割合1/2・g4%で式の上限は約13.1倍。その8割の10.4倍に置いた。今の株価やPER、同業の紳士服の値付けは倍率の根拠に使っていない。起点の利益は、耐用年数の一括修正の分を除いたならした値で考えた。新リース会計基準で店の賃借が貸借対照表に載るが、10年後の数字は家賃を費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→17.23 倍・やや楽観 PER 12→16.81 倍・中立 PER 11.8→16.33 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1%を足した8.5%。紳士服の大手の青山商事・AOKIと同じ物差しにした。オーダーの伸びは筋書きの数量で表し、kでは下げない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。