結論
エターナルホスピタリティグループは、焼き鳥居酒屋「鳥貴族」を国内に約700店持つ持株会社だ。全品を同じ値段で出す均一価格が看板で、居酒屋では珍しく店を増やしてきた。2023年にやきとり大吉を傘下に入れ、海外にも31店を出している。
筆者の結論は、事業は良いが今の値段は先を見すぎている、というものだ。10年後の中立の純利益は約35億円と、直近の2倍強を見込む。それでも、払う値段に対する取り分は資本コストに届かない。
気になる点は2つある。1つ目は利益の質だ。2026年7月期は売上が11%増えたのに、営業利益は10%減った。人件費と出店の費用が先に出て、値上げが追いつかなかった。均一価格は全品が一度に上がるので、客に値上げが見えやすい。2つ目は成長の置き場所だ。国内は大都市で飽和に近づき、中期経営計画の最終年度の目標も引き下げた。伸ばすなら海外と新業態だが、まだ小さく、上海では4店を閉じる。
強みもはっきりしている。直営店の営業利益率は10〜12%で、値上げのあとも客数が増えてきた。借金はなく、純現金がある。会社が傾く心配は小さい。問題は事業の質ではなく、値段のほうだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、鳥貴族は「分かりやすい事業」だ。客が頼むのは焼き鳥と酒で、値段は全品同じ。何で稼ぎ、何が壊れると困るかが、すぐ言える。
10年後も事業は残る。焼き鳥は国内で年齢を問わず受け入れられ、食材の国産化と均一価格という型は、まねされても崩れにくい。ただ、堀は「深い」とまでは言えない。同じ価格帯の居酒屋は参入しやすく、勝敗は運営の腕で決まる。
株主に残る利益、つまり出店などの再投資を引いたあとの利益は、見た目の営業利益より薄い。直営店は出店のたびに内装と保証金に現金が出ていく。1店の投資は数年で回収できるが、費用高の局面ではその回収が長引く。
経営は創業者の大倉氏が率いる。店に根ざした経営で、資本配分の履歴は堅実だ。一方で、2026年7月期は出店も利益も計画を大きく下回った。見込みの精度は、ここから確かめる必要がある。
安全域という点では、今の値段は10年の中立でも足りない。強気の筋書きなら届くが、そこに賭ける値段は払わない、というのが筆者の立場だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は国内の鳥貴族だ。全国に約700店あり、売上の約9割をこの1ブランドが占める。
店の運営は2つに分かれる。1つは直営で、約410店ある。店の売上がそのまま会社の売上になり、店の営業利益率は10〜12%だ。もう1つはTCC、つまり社員が独立して営む加盟店で、約250店ある。会社には食材の販売代金とロイヤルティが入る。
値段は全品同じだ。1986年に均一価格に切り替えて客が増え、以来これを守る。2026年10月には全品を約5%値上げした。5年連続の値上げだ。食材は2016年から全品を国産にし、年に6回ほど新メニューを入れて原価の上がりを吸収する。原価は売上の約35%、人件費も約35%、家賃は7〜8%の構成だ。
2つ目の柱はやきとり大吉だ。1975年創業の焼き鳥の加盟店網で、約480店ある。1店は10坪ほどの小さな店で、独立した経営者が営む。会社には加盟料と食材の収入が入る。鳥貴族より売上は小さいが、店を持たない分だけ利益率が高い。
3つ目は海外と新業態だ。韓国・台湾・香港・米国・ベトナム・シンガポールなど7地域に31店を出した。米国では3つのブランドが店の段階で黒字になった。ハンバーガーの「TORIKI BURGER」のような新業態は、まだ赤字の実験の段階にある。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、均一価格と国産食材の組み合わせだ。客は「全品同じ値段」で迷わず頼める。会社は原価を一定の範囲に収める工夫を店ごとに求められ、そこが運営の腕になる。値上げのあとも既存店の客数が増えた年が続いた事実が、この仕組みの強さを示す。
もう1つの強みは、店ごとの稼ぐ力だ。直営の平均月商は約900万円で、営業利益率は10〜12%ある。1店の投資を数年で回収できるので、出店を続ける限り利益が積み上がる。
弱みも3つある。まず、1ブランドへの依存が大きい。鳥貴族が崩れれば、大吉も海外も補いきれない。次に、均一価格の縛りがある。原価が上がっても、値上げは全品を一度に上げるしかなく、客に見えやすい。コロナ前の2019年7月期にも最終赤字に落ちた。最後に、費用の管理に甘さがある。2026年7月期は、第4四半期に売上に合わせたシフトの調整が追いつかず、人件費が約2.7%増えた。中計の目標を引き下げた理由に、原価率と建築費の読み違えも挙げている。
資本効率は、2024年7月期の24.5%、2025年7月期の17.6%と高い。ただ、赤字の期もあり、10年の中央値は12%台だ。長く続く水準は、この中央値のほうを見る。
筆者は、事業の質は外食の中で上位だが、堀は「強い」と言い切れるほど深くない、と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は外食の中でも、コロナで最も深く落ちた業態だ。日本フードサービス協会によると、パブレストラン/居酒屋の売上は2024年に前年比5.5%増、2025年に4.0%増と戻ってきた。ただ、店の数はコロナ前を大きく下回ったまま下げ止まった段階だ。
市場の大きさは、協会の推計で「喫茶店・居酒屋」を合わせて約2兆円。居酒屋はこの半分強と置くと約1.2兆円(推計)になる。鳥貴族の国内店の全店売上は、直営が約380億円、TCCが約200億円の推計で、合わせて約600億円。シェアは約5%だ。
競合は、ワタミ(売上約930億円)、大庄(約530億円)、串カツ田中(約110億円)、非上場のモンテローザ(白木屋・笑笑)などだ。多くは総合居酒屋で、客が少人数・平日・低価格へ移る流れの中で、均一価格の専門店が客を集めやすい。
10年先は、人口が減り、若い世代の酒量が減るので、居酒屋の客数は少しずつ細ると見る。その中で、鳥貴族は総合居酒屋の客を奪ってシェアを7%前後に高められる。
費用の面は厳しい。最低賃金は上がり続け、建築費は高止まりし、都市部の賃料も上がっている。2026年7月期は、この3つが同時に利益を削った。値上げで取り返せるかが、居酒屋チェーン全体の分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、累進配当(減らさず増やす方針)と連結配当性向20%以上を掲げる。2027年7月期の年間配当は、分割後の1株で見て前期と同じ水準を予想する。実際の配当性向は3割ほどだ。自社株買いの実績は確認できず、稼いだ現金はまず出店に回る。
株主優待は、分割後100株から対象で、1年以上保有の株主には5%割引券を4枚追加する。費用は販管費に入っており、利益から引き済みだ。株主数は開示を確かめられず、4万人と仮置きした。年の食事券は1人あたりの額面は年にわずかで、合計約1億円、原価率を35%として会社の費用は年約0.35億円と推計する。10年では3.5億円で、続く見込みを中立・楽観1.0、やや悲観0.75、悲観0.5として還元の合計に足した。自己資本の流れには入れない。
買収は、2023年のやきとり大吉の子会社化が最大だ。2024年にHASUの事業を譲り受け、2025年にはAO社との合弁を作った。規模の大きな買収はなく、買収で価値を壊した履歴も目立たない。
資本の使い道は、直営店の出店が主だ。新リース会計基準が2028年7月期から入ると、店の賃借が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がる。家賃はもともと利益から引かれており、価値は変わらない。ただし毎年必ず払う固定の約束なので、純現金の厚さは見かけほど強くない。
TOBなどで買われる可能性は、時価総額が約300億円と小さく、外食の再編が進む点から、10年では低くないと見る(kabufuの参考値は10年以内に約19%)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鳥貴族の店は、値上げのあとも客が増えるほど強い。2026年7月期の既存店売上は6.7%増、客数も3.8%増えた。直近の値上げは2026年10月から始まり、2027年7月期の予想には入っていない。取り返せる余地が残っている。
2026年7月期の営業利益の落ち込みは、第4四半期の人件費と、出店が5〜7月に集中した費用による。会社は一過性と説明しており、2027年7月期の第1四半期から直ると見る。
海外にも種はある。韓国は店の段階の利益が通期で黒字になり、米国も3ブランドすべてが黒字化した。上海のように赤字が広がった地域は、早く閉じて傷を浅くした。
やきとり大吉は、独立開業の仕組みを再び回し始める。店を持たない分、増えるほど会社の利益率が上がる。
国内の出店余地はまだある。地方への初出店は福島・大分と続き、直営は2026年7月期に40店を出した。会社は2030年の国内千店を目標にしている。
借金がなく、純現金があり、自己資本比率は46%と堅い。コロナで最も深く落ちた業態でも潰れず、回復した。この体力があれば、次の10年も店を増やし続けられる。
慎重な見方
利益の質が落ちている。2026年7月期は売上が11%増えたのに、営業利益は10%減り、純利益も23%減った。期初の予想は純利益21億円の増益で、それが一転して減益になった。見込みの精度は低い。
中計は最終年度の目標を引き下げた。売上600億円・営業利益60億円・ROE20%の約束が、原価率と建築費の読み違いで崩れた。国内の出店も、計画の84〜88店に対して実績は53店だった。
均一価格は値上げの自由度を縛る。原価が上がるたびに全品を一度に上げ、客に見えやすい。次はまたいくら上がるのかと考える客が増えれば、若い世代から離れていく。
海外は先行投資が重い。上海は直営7店のうち4店を閉じ、中国で減損が出た。米国のファストフード型もこれからの実験だ。海外を伸ばすたびに、会社全体の利益率は薄まる。
人件費は構造的に上がる。2026年8月に平均1.9%のベアと年間休日の拡大を決めた。家賃は店が減っても残る固定の約束で、売上が落ちた時の痛みは外から見えるより深い。
今の時価総額は、2027年7月期の予想利益で割っても16倍ほどだ。10年かけて利益が倍になって初めて割安に見える水準で、ここから先の出店の失敗に耐える余裕は薄い。
どちらに重みを置いたか
店ごとの稼ぐ力と、値上げのあとも客が増える実績では、強気の見方が正しい。しかし、費用が値上げに勝ち続けられるかと、海外・新業態が利益を作るかでは、慎重な見方のほうが強い。2026年7月期の計画未達は、見込みの精度の低さを示した。確率はやや悲観とその外側に厚く置き、中立は3分の1にとどめた。資本コストには、単一ブランドと居酒屋の景気への弱さを少しだけ足した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/07 期)
確率で加重した株価時価総額 2,772 円640 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 352 円81 億円)。 今の値に割り戻すと 1,611 円372 億円、今との差 +21.7%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.4%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,099 円1,407 億円 | 644 円149 億円 | +409.3% | +17.7% | 539 円124 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,488 円1,035 億円 | 492 円114 億円 | +276.1% | +14.2% | 1,096 円253 億円 |
| 中立 | 33% | 3,230 円745 億円 | 384 円89 億円 | +173.0% | +10.6% | 1,193 円275 億円 |
| やや悲観 | 26% | 824 円190 億円 | 228 円53 億円 | −20.5% | −2.3% | 274 円63 億円 |
| 悲観 | 11% | 149 円34 億円 | 60 円14 億円 | −84.3% | −16.9% | 23 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,772 円640 億円 | 352 円81 億円 | +136.0% | +9.0% | 3,124 円721 億円 |
今の株価時価総額 1,324 円305 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 国内千店に迫り、海外と新業態が育つ 利益 66 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 6,099 円1,407 億円
国内の鳥貴族は950店まで増え、東北・北陸・九州の地方都市でも直営とTCC(社内独立の加盟店)が根づく。2026年10月の値上げのあとも客数が崩れず、均一価格の分かりやすさが逆に武器になる。海外は韓国のソウルと米国のファストフード型が当たり、300店規模に育つ。海外の店は黒字で回り、先に出した開業費が一巡して利益率は8%に届く。
やきとり大吉は「地元でリース方式」で出店が進み、650店まで戻る。TORIKI BURGERのような新業態からも、育つブランドが1つ出る。
人件費は自動化とシフト管理で売上に合わせて動かせるようになり、第4四半期のような取りこぼしは起きなくなる。国内の営業利益率は12.5%まで上がり、本社費を引いた全社でも8%台に乗る。
- 国内の鳥貴族(直営+TCC):数量 950(国内の鳥貴族の店舗数(店))× 価格 0.91(1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目))→ 売上 867 億円・営業利益 108 億円。営業利益率12.5%
- やきとり大吉ほか(加盟店網):数量 650(やきとり大吉の店舗数(店))× 価格 0.06(1店あたりの会社の売上(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 7 億円。営業利益率18%
- 海外・新業態:数量 300(海外と新業態の店舗数(店))× 価格 1.77(1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心))→ 売上 532 億円・営業利益 43 億円。営業利益率8%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.3% が k 7.35% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.89 倍、時価総額 1,379 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の出店余地、海外の黒字化、人件費の吸収が10年間そろう必要がある。2026年7月期は出店も利益も計画に届かなかった実績があり、連続成功は多く見ない。
やや楽観 22% 国内は堅く伸び、海外が黒字で広がる 利益 49 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 4,488 円1,035 億円
国内は870店まで増える。大都市は飽和に近いが、地方の出店と建て替えが続く。均一価格は2〜3年に1度のペースで通り、客数は横ばいから小幅な増加で推移する。
海外は200店規模。韓国が柱になり、米国の3ブランドは黒字を保つ。上海のような失敗は繰り返さず、出店の基準を守る。
大吉は560店まで伸びる。利益率は国内で11.8%と、直営店の10〜12%の上限寄りに収まる。人件費と建築費の上がり方は、価格改定とメニューの入れ替えでほぼ吸収できる。
新業態は小さな黒字で、会社全体の利益率は7〜8%台に戻る。2026年7月期に見えた費用の先走りは、2〜3年かけて売上に追いつかれる。筆者はこの筋書きを、実現しやすい上振れと見る。
- 国内の鳥貴族(直営+TCC):数量 870(国内の鳥貴族の店舗数(店))× 価格 0.88(1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目))→ 売上 767 億円・営業利益 91 億円。営業利益率11.8%
- やきとり大吉ほか(加盟店網):数量 560(やきとり大吉の店舗数(店))× 価格 0.06(1店あたりの会社の売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 6 億円。営業利益率18%
- 海外・新業態:数量 200(海外と新業態の店舗数(店))× 価格 1.71(1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心))→ 売上 343 億円・営業利益 22 億円。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 7.35% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍。全体の PER 20.43 倍、時価総額 1,001 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:既存店が値上げ後も伸び、直営店の利益率が高いことは足元で確かめられている。国内の堅調と海外の黒字が続くという現実的な上振れで、計画未達の履歴を考え中立より薄くした。
中立 33% 中立:国内は店を増やし切り、海外は小さな柱にとどまる 利益 36 億円 · PER 19.9 倍 · 株価時価総額 3,230 円745 億円
国内の鳥貴族は800店まで増えて止まる。大都市は飽和し、建築費と賃料の上昇で出店の基準を満たす物件が減る。均一価格は物価並みに上がり、客数は人口に合わせてほぼ横ばいになる。
海外は120店。韓国と米国で形はできるが、国内ほどは稼げない。1店あたりの収益は国内の半分ほどで、利益の足を引く期間が長い。
大吉は500店前後で横ばい、新業態は小さな黒字にとどまる。営業利益率は、直営店の11%から本社費を引いて7.5%前後になる。2026年7月期に見えた「売上は増えるのに利益が増えにくい」形が、10年かけてゆっくり直る姿だ。
- 国内の鳥貴族(直営+TCC):数量 800(国内の鳥貴族の店舗数(店))× 価格 0.84(1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目))→ 売上 675 億円・営業利益 74 億円。営業利益率11%
- やきとり大吉ほか(加盟店網):数量 500(やきとり大吉の店舗数(店))× 価格 0.06(1店あたりの会社の売上(億円、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 5 億円。営業利益率17%
- 海外・新業態:数量 120(海外と新業態の店舗数(店))× 価格 1.58(1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心))→ 売上 190 億円・営業利益 10 億円。営業利益率5%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.35% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.8% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍。全体の PER 19.88 倍、時価総額 706 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は増えて止まり、海外は小さな柱という見立てを中心に置く。業界の中立(値上げは物価並み、数量は成熟)と、2026年7月期の「増収減益」の形を重ねた。
やや悲観 26% 費用高が値上げに勝ち、利益が伸びない 利益 19 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 824 円190 億円
国内は740店で頭打ちになる。人件費・原材料・賃料が値上げより速く上がり、均一価格のため全品を一度に上げざるを得ず、客が離れる局面が出る。価格の伸びは物価を下回る。
海外は70店にとどまる。上海に続いて撤退や閉店が出て、海外全体が収支とんとんの水準で止まる。大吉はリース方式が広がらず、店が430店まで減る。
営業利益率は、国内で9%、全社でも5%を割る。売上は今より5割増えるが、利益は今とほぼ変わらない10年になる。
配当は減らさないが、増やす余地も小さい。出店に使える現金が細り、店の建て替えや改装を後ろに回すため、店の魅力が落ちる悪循環の入口にも立つ。
- 国内の鳥貴族(直営+TCC):数量 740(国内の鳥貴族の店舗数(店))× 価格 0.79(1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目))→ 売上 582 億円・営業利益 52 億円。営業利益率9%
- やきとり大吉ほか(加盟店網):数量 430(やきとり大吉の店舗数(店))× 価格 0.06(1店あたりの会社の売上(億円、名目))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。営業利益率14%
- 海外・新業態:数量 70.0(海外と新業態の店舗数(店))× 価格 1.42(1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心))→ 売上 99 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%
倍率:ROE 8.5%(純利益 18 億円 ÷ 自己資本 218 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.35% + 残る割合 1/2 ×(8.5 − 8.3)= 8.4%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 12.2 倍。稼ぎは残るが費用高に追いつけず、伸びと堀の持ちを低く見る、やや悲観は上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:人件費と建築費の上昇が、均一価格の値上げでは追いつかない局面が長引く可能性が高い。2026年7月期の減益、中計の目標引き下げ、海外の撤退が実際に起きており、強気より慎重な見方がやや強いと判断して厚く置いた。
悲観 11% 構造的に客が離れ、固定費だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 149 円34 億円
居酒屋離れとコスト高が重なり、鳥貴族の客数が戻らなくなる。若い世代が酒を飲む機会が減り、均一価格の値上げのたびに客が減る。国内は560店まで減り、TCCの閉店が目立つ。
海外は撤退が相次いで30店に縮む。米国のファストフード型も育たない。大吉も加盟店の高齢化で300店まで細る。
家賃は店が減っても残る固定の約束で、人件費も下がりにくい。売上は伸びず、営業利益は赤字に沈む。のれんと店舗の減損が出て、自己資本も削られる。それでも焼き鳥の需要は消えず、店の再編や事業の売却で一部は価値が戻る。
借金はなく純現金も残るので、会社が行き詰まるわけではない。ただ、株主に残る価値は、現金と店の再編による回収が中心になる。
- 国内の鳥貴族(直営+TCC):数量 560(国内の鳥貴族の店舗数(店))× 価格 0.72(1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目))→ 売上 405 億円・営業利益 16 億円。営業利益率4%(家賃は固定で残る)
- やきとり大吉ほか(加盟店網):数量 300(やきとり大吉の店舗数(店))× 価格 0.05(1店あたりの会社の売上(億円、名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。営業利益率8%
- 海外・新業態:数量 30.0(海外と新業態の店舗数(店))× 価格 1.18(1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心))→ 売上 35 億円・営業利益 −4 億円。営業利益率−10%
倍率:営業赤字の谷で純利益 −3 億円。ROE は k を大きく下回り、稼ぐ力から値は付かないので、PBR で書く。今の自己資本 98 億円に 0.35 倍を掛けた。従来の判断である純現金に近い水準で、床の純現金+売れる資産の税後 30 億円とほぼ同じ。やや悲観の PER 倍率より低い。
確率:コロナ禍で居酒屋が最も大きな打撃を受け、2021年7月期と2022年7月期は営業赤字だった。構造的な客離れとコスト高が重なる筋書きは、10年では無視できない。ただし鳥貴族の店は黒字を保つ力があり、業態ごと消えるわけではないため11%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の鳥貴族(直営+TCC)
焼き鳥居酒屋「鳥貴族」を全国で展開する中核事業。直営店は店の売上、TCC(社内独立の加盟店)は食材の販売代金とロイヤルティが会社の売上になる。
| 数量国内の鳥貴族の店舗数(店) | 価格1店あたりの会社の売上(億円。直営とTCCの平均、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 661 | 0.63 | 416 | 50 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.84 | 675 | 74 |
取り方:2025年7月末の国内の鳥貴族は661店(直営約410・TCC約250)。会社の売上は全社464億円の約9割と報じられ、416億円と置いて店数で割った。直営は店の売上、TCCは食材とロイヤルティだけが入るので、1店あたりの平均は店の売上より小さい。営業利益は、直営の店の利益率を12%と置いた推計(会社は店の営業利益率10〜12%と説明)。先の1店あたりの売上は、中立で物価並みの10年1.34倍。客数は人口に合わせて横ばいとみて、数量には混ぜない。店数は市場(居酒屋約1.2兆円・推計)のシェアで考え、今約5%を中立で約7%に置いた。
やきとり大吉ほか(加盟店網)
1975年創業の焼き鳥加盟店網。独立した経営者が10坪ほどの小さな店を営み、会社には加盟料と食材の収入が入る。
| 数量やきとり大吉の店舗数(店) | 価格1店あたりの会社の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 475 | 0.05 | 22 | 4 |
| 10 年後 中立 | 500 | 0.06 | 31 | 5 |
取り方:2025年7月末のグループ1,158店から、鳥貴族の661店、海外の約17店、国内の新業態の約5店を引いて約475店と置いた。売上22億円は会社の開示がないため推計(加盟店網で店を持たず、1店あたり年約460万円の収入)。営業利益4億円は利益率18%の推計。価格は中立で物価並みの10年1.34倍に置いた。
海外・新業態
韓国・米国・台湾・香港などの海外店と、国内の新業態(TORIKI BURGERなど)。先行投資の最中で、まだ赤字。
| 数量海外と新業態の店舗数(店) | 価格1店あたりの会社の売上(億円、名目。直営中心) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 22.0 | 1.18 | 26 | −12 |
| 10 年後 中立 | 120 | 1.58 | 190 | 10 |
取り方:2025年7月末の海外は17店(2026年7月末の31店から当期の出店14店を引いた)、国内の新業態を約5店と置いた。売上は全社464億円から鳥貴族と大吉の分を引いた26億円で、店の売上が大きい米国・韓国の直営店が中心のため、1店あたり約1.2億円。営業利益は海外の開業費と赤字で−12億円の推計。海外の増加分は小型の店も含めて直営を中心に増えるとし、先の価格は中立で物価並みに置いた。
リスクと懸念
費用高が値上げに勝つ
最低賃金・建築費・食材と、都市部の賃料が同時に上がる。2026年7月期は営業利益が10%減り、中計の目標も引き下げた。均一価格は全品を一度に上げるしかなく、客が離れる局面もある。値上げの自由度は同業より小さい。
単一ブランドへの依存
売上の約9割が鳥貴族1ブランドだ。味や接客の問題、競合の均一価格店の台頭、若い世代の酒離れが重なれば、補うブランドがない。大吉や海外は、まだ全体の穴を埋める大きさにない。
海外と新業態が利益を作らない
海外は先行投資が重く、全体の利益率を薄める。上海は直営7店のうち4店を閉じ、減損が出た。米国のファストフード型も実験の段階だ。失敗が続くと、本業の稼ぎを食いつぶす。
計画の精度と開示の信頼
2026年7月期は、期初の純利益21億円の増益予想が13億円の減益に変わった。出店も国内外84〜88店の計画に対して53店だった。中計の新しい数値目標は示されていない。次の計画の精度が試される。
家賃など固定費の重さ
直営の店は賃借が中心で、家賃は売上の7〜8%に当たる年約28億円(推計)。売上が落ちても家賃は減らず、赤字の期には固定費が重くのしかかる。2028年7月期から新リース会計基準が入り、自己資本比率も見かけは下がる。
居酒屋の需要の構造変化
人口が減り、若い世代の飲酒機会が減る。行動制限のようなショックが再び起きれば、居酒屋が最も深く落ちる。2021年7月期は営業利益が大きく赤字になった。
食品の安全と評判
全国で約700店の鳥貴族で一度でも大きな品質問題が起きると、均一価格の信頼が傷つく。国産食材と店ごとの調理を売りにする分、評判の傷は大きい。
今後の分かれ目
- 2026年10月の値上げのあとも、既存店の客数が前年を上回り続けたら
- 均一価格の値決め力が確かめられる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 2027年7月期の営業利益が30億円の予想に届かず、人件費率の高止まりが続いたら
- 第4四半期の人件費が一過性という説明が崩れる。やや悲観の筋書きに重みを移す。
- 韓国と米国の店の段階の黒字が広がり、海外が全体の利益に寄与し始めたら
- 海外の店数と利益率を上方修正し、中立〜やや楽観の確度を上げる。
- 上海に続く海外の撤退や、国内新業態の閉店が出たら
- 海外・新業態の前提を下げ、やや悲観〜悲観に寄せる。
- やきとり大吉の店数が増え始め、加盟店網の再拡大が確かめられたら
- 加盟店網の利益率が全社の質を押し上げる。中立〜やや楽観に寄せる。
- 新しい中期計画の数値目標が出て、国内の出店ペースを現実的な水準に直したら
- 計画の精度が戻ったと見て、確率の悲観寄りを少し戻す。
見ておくもの
- 国内の鳥貴族の既存店売上・客数(毎月の開示)
- 2026年10月の値上げ後の客数(2026年10月以降の月次)
- 人件費率・原価率・出店費用の推移(営業利益率の戻り)
- 韓国・米国の店の段階の利益と、海外の出店数
- 新しい中期経営計画の数値目標と出店ペース
倍率と資本コストの決め方
店数(実質)×1店あたりの会社の売上(名目)を3つに分けて積み、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流して(ROEは結果)、新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC=k+1/2×(ROE−k))と長期g 4.0%の式から正当化PERを出し、その7〜8.5割に置いた。今の株価や過去・同業の倍率は使っていない。中立の約35億円は今のPERが16倍前後でも変わらず、株価が半分でも倍でも価値の数字は動かない。純現金は家賃の約束と出店投資と運転資金に見合うとして、余った現金には分けていない。店は賃借が中心で家賃は毎年払う固定の約束。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえ、2028年7月期からの新リース会計基準で営業利益・純有利子負債・自己資本比率の見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。起点はbriefの2025年7月期とし、2026年7月期の実績(売上512億・営業利益27.9億・純利益13億)は文章と確率に反映した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→20.89 倍・やや楽観 PER 12.6→20.43 倍・中立 PER 11.6→19.88 倍)。
資本コスト 7.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足した 8.3%。居酒屋は景気とコロナ型の需要ショックに弱く、1ブランドへの依存もあるため、普通より少し上に置いた。個別の失敗(海外・新業態・出店の見込み違い)は k に足さず、やや悲観・悲観の確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.35%。