結論
平和堂は滋賀県を地盤に、京都・福井・大阪・富山へ店を広げる総合スーパーだ。食品を軸に衣料と住まいの売場、専門店を一つの建物に収める。筆者の見立ては、事業は堅いが株主に残る利益が少なく、今の値段には安全域が無い、というものだ。
堅さの源は店の密度にある。滋賀県内だけで80店を超え、同じ人の暮らしの中に何度も顔を出す。電子マネーのHOPが客を囲い込み、物流と食品加工の自社網が仕入れを支える。2026年2月期の営業収益は4,560億円で過去最高だった。
問題は儲けの薄さだ。営業利益は133億円で、売上に対して3%に届かない。純利益を自己資本で割ったROEは5%前後にとどまり、資本コストの7%台を下回る。稼いだ利益を店に戻しても、それだけで価値が増えない会社だ。
2026年8月までの半年も、売上は3%伸びたのに営業利益は17%減った。粗利益率が計画に届かなかった。通期は営業利益143億円を見込むが、実現には下期の巻き返しが要る。
10年後の中立は、純利益が今より2割あまり増えるにとどまる。それに配当などの還元を足しても、今の時価総額に届かない。強気に寄せても同じ水準で、悲観では大きく割る。総合ではやや割高と見る。ただし純資産は時価総額を大きく上回り、財務は堅い。大きく負ける前に、再編や株主の動きが働く余地も残る。滋賀を中心に店の土地を自社で持ち、簿価だけで984億円ある。悲観の床はこの土地の売却額に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは堀の広さと、堀が株主の利益になっているかだ。平和堂の堀は、店の密度と暮らしへの食い込みで、広くて長持ちする。滋賀の暮らしから、この会社がすぐに消えることは考えにくい。
ただ、その堀が生む利益は薄い。売上の3%も残らず、自己資本に対する利益は資本コストを下回る。稼いだお金を店に戻しても、その分の価値が増えない。こういう会社は、持っているだけで価値が増えるとは言えない。
筆者がいちばん気にするのは、資本の使い方だ。自己資本は10年で3割ほど積み上がる見込みで、還元も控えめだ。ためた利益は、額面より低くしか評価できない。ここを自社株買いや新しい投資で直すのが、株主から見た最大の宿題だ。
払う値段の安全域は無い。純資産が時価総額を上回るのは、利益を生まない資本が厚いからで、割安の根拠にならない。財務の堅さは、大きく負けない守りだ。それ以上でも以下でもない。
何で稼ぐ会社か
平和堂は滋賀県に80店を超える店を持つ地場最大級のスーパーで、京都・福井・大阪・富山などにも広げている。主力は食品で、売上の6割ほどを占めると筆者は見る。同じ建物に衣料と住まいの売場、専門店のテナントが同居する、総合スーパーの作りだ。
小売の周辺に、物流・食品加工・クレジット・電子マネーなどの事業がある。電子マネーのHOPは、店の客を囲い込む仕組みでもある。周辺事業は小売より利益率が高く、グループの利益を下支えしている。外食やゲームセンターは整理が進み、ゲームセンター運営のユーイングは2025年にGENDAへ譲渡した。
地域内で店を密に構える出店を、同社はドミナントと呼ぶ。物流・加工・広告・人の配置を一つの地域に集中させ、費用を薄める狙いだ。近年は子会社の吸収合併も続き、丸善、ヤナゲン、エールを順に取り込んだ。2026年8月には福井南部商業開発の吸収も予定する。
決算の区分は小売・小売周辺・その他の3つだが、区分間の取引を含むため足すと連結売上を超える。食品・衣料住まい・周辺の内訳は、開示から筆者が推定したものだ。
優良さと弱いところ
堀は、店の密度と暮らしへの食い込みにある。滋賀では買い物の習慣そのものが平和堂に寄っている。ネットスーパーは2026年1月に滋賀で始めたばかりで、配達や電球の交換といった生活サービスで客との距離を縮めてきた。ロピア、オーケー、コスモス薬品の関西進出にも、密度で受けて立つ構えだ。
ただ、堀の広さは利益の厚さに変わっていない。営業利益率は過去10年で2.4%から3.6%の間を動くだけで、ROEの中央値は5.6%だ。堀があるのに儲けが薄いのは、衣料や住まいの売場が重く、人件費と改装の費用が利益を食うからだ。
財務は堅い。純有利子負債は21億円とほぼゼロで、自己資本比率は6割を超える。借金に頼らず、赤字の期もない。この安定は強みだが、使い道のない資本が積み上がり、ROEを下げている面もある。
経営の課題は、利益率を上げる道筋の確かさだ。会社は2030年に営業利益率4.5%、ROE8%を掲げる。過去に3.6%を超えたことはなく、筆者は半分の改善でも難しいと見る。創業家関連の会社が7%を持ち、滋賀銀行も5%を持つ。安定株主は多く、経営は守られている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーは地域ごとに戦う商売だ。全国で再編が続く中、平和堂は単独で地域の密度を守る道を選んでいる。北陸では、ライフとアルビスの提携が競争を変えた。富山の新店の周りには、19の競合店があると報じられた。
関西では、ロピア、オーケー、コスモス薬品が次々に進出し、イオンの存在感も高まっている。食品の値段競争に強いのは、ドラッグストアと会員制の大型店だ。滋賀でも、平和堂は食品の客をこれらと分け合う。
衣料・住まいの専門店化は他社も進めており、総合スーパーの形は全国で細っている。
需要の面では、人口は滋賀が比較的しっかりしているが、京都北部や福井は減る。客が減る分を、物価の上昇による単価の伸びで補う形が続く。ただ、値上げが通ると客数が落ちる。同社の2026年8月までの半年は、売上は伸びたが粗利益率が計画に届かなかった。
衣料と住まいは、ネット通販と専門店に押されている。2026年2月期も、食品は堅調だったが、衣料・住まいは計画を下回った。景気の波では、食品は底堅く、衣料は先に削られる。平和堂は、その両方を抱える会社だ。食品が稼ぎを支え、衣料・住まいが足を引っ張る構図は、当面変わらない。
資本政策と M&A
還元は、配当性向30%以上と、減らさない累進配当が基本だ。2026年2月期の配当性向は35%ほどで、2027年2月期も年間の配当額を据え置く予定だ。自社株買いは機動的に行うとするが、大きな規模の実績は乏しい。
資本の使い道は、改装と新店、物流・加工の設備だ。近年は子会社の吸収合併が中心で、大型の買収はない。政策保有株は売却を進めており、2024年の3〜11月期は売却益が純利益を押し上げた。投資有価証券は57億円で、その他有価証券評価差額金は9億円(税引き後)と小さい。戻り方0.5を掛けて5億円弱、価値の1%にも届かないので足していない。
株主は安定している。創業家出身の代表が出資する会社が7%、滋賀銀行が5%を持つ。大量保有報告書は、前者を安定株主としての保有と記している。このため敵対的な買収は起こりにくく、再編も地方スーパー同士の話し合いで進むのが筋だ。
店の土地は自社で持つ分が厚い。連結の土地は簿価で984億円、自己資本の半分にあたる。営業に使う土地なので、中立の価値には含み益を入れず、悲観の床にだけ使う。賃貸等不動産(主に店の建物をテナントに貸す分)は簿価251億円に対し期末の時価が234億円で、含み益は無く、むしろ18億円の含み損だ。賃貸損益72億円は店の運営と一体の収入なので、事業の純利益に残している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
滋賀での密度は他社が追いつけない堀だ。会社は2030年に、営業利益率4.5%、ROE8%を掲げる。第5次中期経営計画は、子育て世代の取り込み、HOP経済圏の拡大、コスト構造の改革の3本柱で、いずれも利益率を押し上げる施策だ。
プロセスセンターとデリカセンターを使えば、店の作業を減らしながら品ぞろえを増やせる。自社のプライベートブランド比率を2030年に25%まで上げる目標もあり、粗利益の改善に直結する。ネットスーパーは滋賀で始まったばかりで、伸びしろが残る。
2026年8月までの減益は、粗利益率が計画に届かないという一時の問題だ。通期予想は据え置かれ、単体は増益だった。新店は北陸と関西に続き、高い密度で出せる地域が増えている。
衣料の不振も、売場の入れ替えと専門店の誘致で立て直せる。不要な子会社は整理が進み、ゲームセンターは譲渡済みだ。余った自己資本は厚く、累進配当と自社株買いの余力がある。
利益率が過去の最高を超えて3.7%まで上がれば、純利益は今の1.7倍になる。ROEは6%台に届き、資本コストとの差が縮まる。
慎重な見方
店の密度は堀でも、利益の厚さにつながっていない。営業利益率は過去10年で3.6%を超えたことがなく、4.5%という目標は実績から遠い。減益の原因が一時のものか、競争の構造から来るのか、切り分けられていない。
ロピアとオーケーは、食品の値段で平和堂より安く売れる。コスモス薬品は食品を安く売って客を連れていく。滋賀の食品でも、客の取り合いは続くだろう。値上げが通りにくい中で、賃金は毎年3〜5%上がる。この板挟みが利益率を削る。
衣料と住まいの売場は、通販に客を奪われ、計画を割り込み続けている。大型の改装で除却損も出る。ネットスーパーの開始は後発で、費用が先に出る。
ROEが5%前後で、資本コストを下回る。目標の8%に届く道筋は、費用を大きく削るか、自己資本を大きく減らすかしかない。会社の還元は、性向30%台と控えめだ。
さらに、2028年以降の新しいリース会計は、賃借店舗の約束を貸借対照表に載せ、見かけの財務の強さを下げる。安定株主に守られる反面、経営に緊張が生まれにくいことも、利益率が上がらない理由の一つだ。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、会社の掲げる目標が実現すれば、という仮定に立つ。弱気の言い分は、過去10年の実績という動かない事実に立つ。実績の重さを取り、確率は中立の少し悲観寄りに置いた。
中立では、営業利益率は今と同じ2.9%前後にとどまり、純利益は10年で2割増える。ROEは資本コストを下回るので、倍率は利益の1÷資本コストが上限になる。強気でも利益率は3.6%付近で、目標の4.5%は置かなかった。
やや悲観と悲観を合わせた確率は3割あまりある。総合ではやや割高だが、財務の堅さと純資産の厚さがあり、悲観でも赤字には沈まない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,988 円1,478 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 855 円423 億円)。 今の値に割り戻すと 2,078 円1,028 億円、今との差 −19.4%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,535 円2,243 億円 | 1,191 円589 億円 | +122.0% | +8.3% | 458 円227 億円 |
| やや楽観 | 21% | 3,981 円1,969 億円 | 1,017 円503 億円 | +93.8% | +6.8% | 1,049 円519 億円 |
| 中立 | 37% | 3,381 円1,672 億円 | 867 円429 億円 | +64.7% | +5.1% | 1,572 円777 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,790 円885 億円 | 716 円354 億円 | −2.8% | −0.3% | 602 円297 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,082 円535 億円 | 530 円262 億円 | −37.5% | −4.6% | 161 円80 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,988 円1,478 億円 | 855 円423 億円 | +49.0% | +4.1% | 3,842 円1,900 億円 |
今の株価時価総額 2,579 円1,275 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 店の密度が利益率を押し上げた10年 利益 161 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,535 円2,243 億円
第5次計画の3本柱が効く。プライベートブランドの比率が上がり、プロセスセンターとデリカセンターが店の作業を減らし、食品の粗利益が厚くなる。HOPの会員が増え、ネットスーパーも滋賀の外へ広がる。食品の店は182店に増え、1店当たりの売上も物価並みに伸びる。
衣料と住まいの売場は、専門店の誘致で貸し床の収入が増え、利益率は4%台に戻る。周辺事業は物流と加工の外販で伸びる。営業利益率は3.7%と過去の最高を超える。
その代わり、還元は性向45%まで高める。純利益は今の1.7倍になり、ROEは6%に届くが、まだ資本コストの7%台には届かない。強気の筋書きでも、利益の質は優良の水準まで来ていない。
- 食品スーパー(食品売場):数量 182(平和堂の店舗数(店))× 価格 22(1店当たり年間の食品売上(億円))→ 売上 4,004 億円・営業利益 128 億円。営業利益率3.2%
- 衣料・住まい・専門店:数量 172(平和堂の店舗数(店))× 価格 10(1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円))→ 売上 1,776 億円・営業利益 75 億円。営業利益率4.2%
- 周辺・その他事業:数量 182(平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数))× 価格 3.79(1店当たりの周辺事業の売上(億円))→ 売上 689 億円・営業利益 34 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 2,206 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気に寄せても利益率は過去の最高を少し超える程度で、会社の目標の4.5%までは届かない。実現には粗利益の改善と人件費の吸収が両方要るため確率は低く置く。
やや楽観 21% 目標に届かないが利益率が緩やかに上がる 利益 141 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,981 円1,969 億円
食品の粗利益率が計画どおりに戻り、新店は北陸と関西で年に数店ずつ増える。店は178店になる。ロピアなどの進出で値上げの幅は抑えられるが、密度とHOPで客数は守られる。
衣料と住まいは縮小を続けつつ、赤字の売場を整理して利益率を3%台後半に保つ。売上の伸びは物価に届かず、1店当たりの売上は物価の上昇より低い伸びにとどまる。通販に客が流れ、売場の面積を減らす分だ。営業利益率は3.3%まで上がる。会社が掲げる4.5%には届かない。
純利益は10年で5割増える。還元は性向42%で、自己資本はゆっくり積み上がる。ROEは5%台にとどまり、資本コストとの差は埋まらない。堅い会社が、堅いまま少しだけ良くなる10年だ。
- 食品スーパー(食品売場):数量 178(平和堂の店舗数(店))× 価格 22(1店当たり年間の食品売上(億円))→ 売上 3,830 億円・営業利益 111 億円。営業利益率2.9%
- 衣料・住まい・専門店:数量 172(平和堂の店舗数(店))× 価格 10(1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円))→ 売上 1,721 億円・営業利益 65 億円。営業利益率3.8%
- 周辺・その他事業:数量 178(平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数))× 価格 3.71(1店当たりの周辺事業の売上(億円))→ 売上 660 億円・営業利益 31 億円。営業利益率4.7%
倍率:事業の純利益 141 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,932 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:目標に届かなくても、粗利益率が計画へ戻り新店が育つ筋書きで、実現しうる上側の中心に置く。
中立 37% 店の密度は守るが、利益率は今と同じ水準 利益 118 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,381 円1,672 億円
滋賀の密度は守られ、食品は人口の減少を物価の上昇が補って緩やかに伸びる。新店と改装は続くが、人件費と物流費の上昇が粗利益の改善を吸い取る。営業利益率は今と同じ2.9%前後にとどまる。
衣料と住まいの売場は、通販と専門店に押されて売上の伸びが物価に届かない。利益率は3%前後で守るが、店の数は増えない。周辺事業は物流と加工で堅く伸びる。
売上は10年で3割増えるが、純利益の伸びは2割ほどだ。還元は性向40%で、自己資本は3割ほど積み上がる。ROEは4%台のままで、資本コストを下回る。ためた利益は、額面どおりには評価できない。堅いが、株主には何も増えない10年になる。
- 食品スーパー(食品売場):数量 175(平和堂の店舗数(店))× 価格 21(1店当たり年間の食品売上(億円))→ 売上 3,680 億円・営業利益 92 億円。営業利益率2.5%
- 衣料・住まい・専門店:数量 170(平和堂の店舗数(店))× 価格 9.69(1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円))→ 売上 1,647 億円・営業利益 53 億円。営業利益率3.2%。価格は物価1.34倍に届かない1.22倍(通販流出で売場を縮めるため)
- 周辺・その他事業:数量 175(平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数))× 価格 3.63(1店当たりの周辺事業の売上(億円))→ 売上 635 億円・営業利益 29 億円。営業利益率4.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 7.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 1,617 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の密度は守られ、利益率は今と同じ水準にとどまる。過去10年の利益率の幅の中央で、最も重みを置く。
やや悲観 24% 競争で粗利益が削られ続ける 利益 84 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,790 円885 億円
ロピア、オーケー、コスモス薬品の進出で、食品の値段競争が滋賀にも及ぶ。値上げが通らない一方、賃金は上がり続け、食品の利益率は2%に落ちる。店は172店に減る。人件費を価格に転嫁しきれず、人手不足で営業時間や売場の維持にも費用がかさむ。
衣料と住まいは大型の改装を重ねても客が戻らず、利益率は2%まで下がる。滋賀以外の新しい店は、既存店より立ち上がりが遅い。売場を縮める分、売上の伸びも物価に届かない。ネットスーパーの先行費用も重い。
純利益は84億円と、今より1割ほど減る。還元は性向40%を保つが、金額は減る。ROEは3%台で、資本コストの半分に届かない。それでも赤字には沈まず、財務の堅さで会社は続く。
- 食品スーパー(食品売場):数量 172(平和堂の店舗数(店))× 価格 20(1店当たり年間の食品売上(億円))→ 売上 3,506 億円・営業利益 70 億円。営業利益率2.0%
- 衣料・住まい・専門店:数量 166(平和堂の店舗数(店))× 価格 9.13(1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円))→ 売上 1,516 億円・営業利益 30 億円。営業利益率2.0%
- 周辺・その他事業:数量 172(平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数))× 価格 3.46(1店当たりの周辺事業の売上(億円))→ 売上 596 億円・営業利益 23 億円。営業利益率3.8%
倍率:ROE 3.4%(純利益 84 億円 ÷ 自己資本 2,489 億円)が資本コスト 7.3% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 13.7 倍。競争で利益率が下がり、稼ぎの質も悪化する筋書きなので、構造的な負けとして上限 13.7 倍の約 69% の 9.5 倍に置いた。
確率:今期の減益が示すとおり、粗利益率が計画に届かない状態が続く筋書き。競合の進出と賃金の上昇を踏まえ、強気側より重く置く。
悲観 10% 構造的に利益を生まなくなる 利益 42 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,082 円535 億円
食品の値段競争に負け、客と利益を大型店とドラッグストアに奪われる。食品の利益率は1%台前半まで落ち、衣料と住まいはほぼ利益が出ない。店は168店に減り、売場の整理で大型の除却損が続く。
周辺事業は、小売の規模が縮むことで物流と加工の稼働が落ち、利益率が2%台に下がる。売上は10年で1割ほどしか増えない。
純利益は40億円強にまで落ちる。配当は減らさない方針を守れず、性向は保っても金額が縮む。それでも借金はほぼ無く、店の土地を自社で持つ。簿価で984億円ある土地は、稼ぎが細っても消えない価値だ。閉める店の土地を売り、他の食品チェーンへ統合する道が現実の選択肢になる。ただ売るには手間と時間がかかり、値も叩かれる。この筋書きの価値は、稼ぐ力ではなく、土地を売って得られる額で測る。
- 食品スーパー(食品売場):数量 168(平和堂の店舗数(店))× 価格 19(1店当たり年間の食品売上(億円))→ 売上 3,207 億円・営業利益 42 億円。営業利益率1.3%
- 衣料・住まい・専門店:数量 160(平和堂の店舗数(店))× 価格 8.34(1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円))→ 売上 1,334 億円・営業利益 7 億円。営業利益率0.5%
- 周辺・その他事業:数量 168(平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数))× 価格 3.11(1店当たりの周辺事業の売上(億円))→ 売上 523 億円・営業利益 13 億円。営業利益率2.5%
倍率:ROE 1.8%(純利益 42 億円 ÷ 自己資本 2,350 億円)が資本コスト 7.3% 以下で、稼ぐ力だけなら 42 億円 ÷ k = 575 億円(PER 13.7 倍が上限)。ここは売れる資産の方を床にする。土地の簿価 984 億円に売却の費用・税・期間の掛け目 0.6 を掛けて 590 億円、投資有価証券 54 億円(評価差額の税を引く)を足し、純有利子負債 21 億円と資産除去債務 89 億円を引いた 535 億円(今の自己資本 1,958 億円の 0.273 倍)。やや悲観(PBR 0.32 倍)より低い。稼ぐ力の PER ではなく資産の PBR で置くので、事業の PER(535÷42 = 12.7 倍)はやや悲観の 9.5 倍より高く見えるが、床の資産で値が付く筋書きで、順序は価値の額(798 億円>535 億円)で守る。
確率:値段競争に負けて利益を生まなくなる構造的な筋書き。財務が堅く土地の床もあり、赤字に沈みにくいので10%にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(食品売場)
食品売場。生鮮・惣菜・日配・PB。
| 数量平和堂の店舗数(店) | 価格1店当たり年間の食品売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 170 | 16 | 2,750 | 67 |
| 10 年後 中立 | 175 | 21 | 3,680 | 92 |
取り方:2026年2月期の連結営業収益4,560億円を、開示がない内訳を筆者が推定して分けた(食品を約6割の2,750億円)。数量は平和堂の店舗数170店。1店当たり売上は名目で、先の伸びは物価の1.34倍から、人口減と競合に客を取られる分を引いた中立1.30倍に置いた。営業利益は区分ごとの開示がなく推定。
衣料・住まい・専門店
衣料、住居関連品の売場と、店内の専門店テナント収入。
| 数量平和堂の店舗数(店) | 価格1店当たり年間の衣料・住まい・専門店の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 170 | 7.94 | 1,350 | 45 |
| 10 年後 中立 | 170 | 9.69 | 1,647 | 53 |
取り方:食品以外の売場と専門店の収入を1,350億円と推定した。数量は店舗数170店。通販と専門店に押され、価格(1店当たり売上)は、通販への流出で売場を縮める分だけ物価の1.34倍に届かない、中立1.22倍に置いた(物価より下げる理由はこれ)。営業利益は推定で、貸し床の収入を含むため食品より利益率が高い。
周辺・その他事業
物流・食品加工・クレジット・電子マネー(HOP)・外食など小売の周辺事業。
| 数量平和堂の店舗数(店、周辺事業が支える店の数) | 価格1店当たりの周辺事業の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 170 | 2.71 | 460 | 21 |
| 10 年後 中立 | 175 | 3.63 | 635 | 29 |
取り方:小売周辺事業の売上は区分間取引を含み593億円だが、連結の売上に残る分を460億円と推定した。支える店の数(170)を数量に置き、1店当たりの周辺事業売上を価格とした。物価並みの1.34倍を中立とする。営業利益は推定。
リスクと懸念
食品の粗利益の悪化
2026年2〜8月は売上が3%増えたのに、粗利益率が計画に届かず営業利益が17%減った。原材料の高騰や価格競争が続けば、通期の利益見通しも崩れる。値上げが通らない中で賃金が毎年上がるため、利益率は構造的に下がりやすい。
関西の競争激化
ロピア、オーケー、コスモス薬品が関西へ進出し、イオンの存在感も高まっている。食品の値段で比べられる場面が増え、密度の堀だけでは客数を守れなくなる恐れがある。北陸ではライフとアルビスの提携も競争を変えた。
衣料・住まい売場の不振
通販と専門店に押され、衣料と住まいは計画を割り込んでいる。大型の改装には除却損も伴う。売場面積を減らすか、貸し床に変える判断が遅れると、利益率の足を引っ張り続ける。
資本効率の低さ
ROEは5%前後で、資本コストの7%台を下回る。自己資本が積み上がるほどROEは下がる。還元の拡大か新しい投資で資本の使い方を変えない限り、株主の価値は増えにくい。
人件費と物流費の上昇
最低賃金の上昇とパート不足で、店の運営費は毎年3〜5%のペースで上がる。物流費も上がる。セルフレジや加工センターで吸収できなければ、利益率が削られる。
リースと財務の見かけ
新しいリース会計は、賃借店舗の約束を貸借対照表に載せる。2029年2月期ごろから、自己資本比率は今の6割台より下がって見える。家賃は毎年必ず払う固定の約束で、売上が落ちても減らない。借りている店の家賃の額は、開示から確かめられなかった。
事業再編の実行
子会社の吸収合併は続き、2026年8月には福井南部商業開発の取り込みも予定する。統合の費用や店の整理が想定を超えれば、利益を圧迫する。安定株主が多く、経営への緊張が働きにくい面もある。
今後の分かれ目
- 2026年下期に粗利益率が計画へ戻り、通期の営業利益が143億円に届いたら
- 食品の改善が一時の問題だったと確認でき、中立から強気側へ確率を移す。
- 下期も粗利益率が計画に届かず、通期の予想が引き下げられたら
- 構造的な利益率の低下と見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2027年に開く吹田・城陽・富山の新店が、計画どおりの売上で立ち上がったら
- 関西・北陸でも密度の堀が通じる証拠となり、強気側の確率を上げる。
- 関西でロピア・オーケーが滋賀の近くへ出店を重ねたら
- 食品の値段競争が滋賀にも及ぶ合図で、やや悲観側へ寄せる。
- 会社が自社株買いを大きく実施するか、還元の方針を引き上げたら
- 自己資本の厚さを使う動きとして評価し、ROEの見方を上方に直す。
- 地方スーパーの経営統合や資本提携に平和堂が加わる動きが出たら
- 規模の経済や費用の共有で利益率が動くかを確かめ、筋書きを見直す。
見ておくもの
- 連結営業利益率と、食品の粗利益率(会社の計画との差)
- 滋賀県内と関西・北陸の新店の売上の立ち上がり
- 食品の既存店の客数と客単価(月次)
- ロピア・オーケー・コスモス薬品など競合の出店と値段
- ROEと還元の方針の変化(自社株買いの有無)
- 新リース会計適用後の純負債と家賃の約束の大きさ
倍率と資本コストの決め方
売上は食品・衣料住まい・周辺の3つに分け、店舗数(実質)×1店当たり売上(物価が乗る名目)で積んだ。利益率は物価で動かさず、純利益は営業利益の0.68倍(過去中央値0.67)とした。自己資本は今の値に純利益の合計を足し、還元を引いて流した。ROE が資本コスト以下のため、倍率は 1÷k を上限とし中立はその8割に置いた。今の株価や過去の PER・PBR から置いてはいない。悲観は、稼ぐ力(純利益42億円÷k)より、営業用の土地を掛け目0.6で売った額(床535億円)の方が大きいので、今の自己資本に0.273倍を掛けた。土地の時価は簿価並みとみて含み益は入れず、賃貸等不動産は時価が簿価を下回り、店と一体の収入なので分けていない。新リース会計は2029年2月期以降に数字の形を変えるが、10年後の数字は家賃を費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→13.7 倍・やや楽観 PER 11.6→13.7 倍・中立 PER 11→13.7 倍)。
資本コスト 7.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality −0.2% を足した 7.3%。食品が中心で景気に左右されにくい(循環 −0.5%)ものの、値段は大型店・ドラッグストアとの競争で決まりやすく(値決め +0.2%)、衣料・住まいは構造的に細る(寿命 +0.1%)。借金はほぼ無く 0。個別の事情は k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。