結論
チムニーは「はなの舞」「さかなや道場」「さかな酒場 魚星」を持つ居酒屋チェーンで、酒類販売のやまやが株の5割超を持つ。直営とコントラクト(官公庁施設の食堂受託)で約290店、FCと子会社で約170店、グループで460店ほどを動かしている。
筆者の結論は割高だ。2026年3月期の売上は264億円でも、営業利益は5億円に届かなかった。この利益に、今の時価総額は40倍を超える値を付けている。
追い風はある。のれんの償却(年4.6億円ほど)は2030年ごろに終わり、その分の利益は戻る。豊洲市場の買参権で魚を直接仕入れる強みも他の居酒屋にはない。
だが向かい風は構造的だ。飲酒の機会そのものが細り、2026年3月期の上期は客数が前年より4%減った。客単価を4%上げて売上を保っているが、値上げが客数をさらに削る入口にいる。店舗は賃借で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。
中立では、10年後の純利益は9億円ほど、時価総額は90億円ほどにとどまる。楽観の上限でも、今の時価総額には届かない。株主優待も利益から出ており、受け取る側の価値は還元として足した。それでも今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「持ち続けたい事業」とは言いにくい。居酒屋は参入が容易で、競合が多く、値段を自分で決められない。事業の本質は、毎日客を呼び続ける努力そのものだ。
鮮魚の仕入れは確かな強みだが、強みから利益が十分に出ていない。売上の264億円に対して営業利益は5億円に届かず、手元に残る利益(オーナー利益)は店の改装と出店の投資を引くとさらに細くなる。
資本の使い方にも疑問が残る。のれんが約20億円あり、毎年の償却が利益を圧迫してきた。株主優待は、会社の利益を食って株主の財布に渡る。受け取る側の価値は数えるが、会社の利益から出ていることは変わらない。
安全域の点では、今の時価総額は10年の中立の本質価値を大きく上回る。事業が読みにくく、確信度は低い。業績が戻るなら見立ては変わるが、戻る確率は十分に織り込んだ。割高の幅は大きい。
最後に、持ち主の目で見た時の問いを置く。10年この会社を持つとして、毎年の利益から何が残るか。純利益は年10億円に届かず、そこから優待と配当で3割から5割が出ていく。残りで店を直し、借入を返す。持ち主に自由に使える余りは、ほとんど出ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は三つある。第一は直営の居酒屋で、はなの舞が36店、さかなや道場が68店、魚星が34店ある。いずれも豊洲市場の買参権で鮮魚を仕入れ、刺身を売り物にする。客単価は業態により、2千円前後から4千円台まで幅がある。店の広さも10坪台の小型から60坪超の大型まであり、駅前の商業ビルに入る店が多い。
第二はコントラクトで、防衛省・法務省所管の施設などで食堂を受託する。約90施設を持ち、景気や酒の飲み方に左右されにくい。居酒屋を補う安定収入だが、1施設の売上は小さい。
第三はFC(フランチャイズ。加盟店が店を出し、本部はロイヤリティと食材の売上を得る)と子会社だ。はなの舞はFCが52店と直営より多い。紅フーズコーポレーションなどの子会社が約28店、食材を卸す大田市場チムニーもある。
連結売上264億円のうち、直営店の売上が約220億円、残りの約44億円がFC関連と食材卸、子会社の分と筆者はみる。グループ全体の売上(FC店の売上を含む)は約370億円。本部の取り分は、直営ほど大きくない。2025年9月までの半年で、新店5に対し退店19と、店は減っている。別に、親会社やまやの子会社であるつぼ八を持分法で持つ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、鮮魚の仕入れにある。豊洲市場の買参権を持つ居酒屋チェーンは多くなく、同じ値段で鮮度の高い刺身を出せる。ただ、客はそこまで産地を見ず、強みが価格を決める力に変わっていない。
値段の決定権は弱い。2026年3月期上期の客単価は前年比4%増えたが、客数は4%減った。客を失いながら単価で補う動きは、長くは続かない。
資本の効率も低い。過去10年のROEの中央値は8.8%で、資本コストを超えていない。営業利益率は2018年3月期の6.6%から、コロナ後は2〜5%にとどまる。
財務は純現金がわずかにある。借入は短期27億円と長期27億円、現金は60億円だ。ただし家賃は売上の1割強、年25億円前後と筆者はみる。純現金の薄さを考えると、見かけほど強くはない。親会社の方針に左右される面もある。
強みを一言で言えば、魚の目利きができる居酒屋だ。ただ、その差は客席の数と立地、人手の確保で簡単に埋もれる。10年先も続く強みか、と問われれば、筆者は続く部分と薄れる部分が半々とみる。続くのは仕入れ網で、薄れるのは客を引く力だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は、外食の中でも最も厳しい業態の一つだ。市場は2023年に9,152億円と、コロナ前に届かない。パブ・居酒屋の2025年の売上は前年比104%と回復基調だが、中身は客単価の上昇が主で、客数は小幅な伸びにとどまる。
構造は三つの力で決まる。第一に飲酒の機会が減っている。若い世代は飲まず、会社の宴会も減った。第二に人手不足と最低賃金の上昇で、深夜営業の居酒屋は特に人件費が重い。第三に、競合が多い。鳥貴族のような専門業態、モンテローザ(白木屋・笑笑など)やワタミの大手がいる。
一方で、団体客と訪日客は戻っている。チムニーも修学旅行などの団体を取り込む。ただ、15時以降の日曜から木曜のフリー客は苦戦している。
業界の数量は、人口が減る日本ではほぼ横ばいか微減とみる。値上げが客数を削るかが分かれ目で、物価3%の世界では価格を通せる店だけが残る。
チムニーの位置は、規模でも専門性でも中位だ。はなの舞やさかなや道場は、鳥貴族のように価格で客を呼ぶ店でも、高単価の専門店でもない。大衆居酒屋の真ん中で、この層が最も競合が多く、閉店も多い。魚星は専門業態として差別化を図るが、まだ36店の規模で、全体を支えるには時間がかかる。
資本政策と M&A
還元は安定配当を基本にする。2026年3月期の配当は年2回の合計で前期並みだったが、2027年3月期は半分に減らす計画だ。配当の総額は年約1億円で、純利益の4割程度にあたる。自社株買いはほとんど行っていない。
優待は3月と9月の年2回、100株で3千円分、500株以上で1万5千円分の食事券か「角力カレー」を出す。株主数は2024年に約1.8万人と多く、個人株主が優待目当てで持つ。優待の費用額は会社が開示していない。筆者は年3億円ほどと推定し、10年の還元に足した。根拠は、株主数1.8万人、1人当たり年6千円分の券面、使用率と原価率の掛け合わせだ。この推定は大きくぶれる。
資本政策の柱は親会社との関係だ。やまやは2013年に約140億円でカーライルから株を買い取り、持株比率は5割強に保たれる。アサヒビールとキリンも合わせて1割強を持つ。これらは酒の仕入れ先でもあり、取引の面でも関係が深い。2018年にやまやが買収したつぼ八は、チムニーの持分法の会社となり、その損益が利益の波になる。完全子会社化の可能性はあるが、その価格は事業の稼ぐ力から離れにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
チムニーの底はもう見えている。のれん償却は2030年ごろに終わり、約4.6億円が利益に戻る。不採算店の整理は2025年から本格化しており、退店が一巡すれば店舗の平均は上がる。
魚星は豊洲市場の買参権を武器にした専門業態で、2022年の開業から36店まで増えた。駅前の大型店で客単価も高く、はなの舞よりも収益性が高い。今後は110店規模に伸ばせば、直営の利益率を6〜8%に引き上げられる。
コントラクトは景気に左右されない安定収入で、全国90施設に及ぶ。団体客と訪日客も戻っている。
親会社のやまやは酒を扱い、仕入れ・販売で協業できる。完全子会社化されれば、上場コストが消えて利益率が上がる可能性もある。ここまで業績が薄いと、少しの改善でも利益は何倍にも増える。10年で営業利益が30億円近くに届く道はありうる。
さらに、資本の配分でも改善の余地がある。借入は返済が進んでおり、財務は悪くない。優待で個人株主の裾野を保てば、株式の需給も安定する。株主構成のうち5割は親会社、1割強は酒の大手2社で、経営は安定している。小さな会社が小さな改善を積み上げれば、利益は倍にも見える。
慎重な見方
2026年3月期の営業利益は5億円に届かず、前期比で半分近くに減った。売上が増えていないのに販管費が3%増え、利益を食っている。上期は客数が前年比4%減と、構造的な減少がまだ止まらない。
居酒屋の客数は、飲酒機会の減少と若い世代の居酒屋離れで細る。値上げで売上を保つ戦略は、客数をさらに落とす悪循環につながる。人件費は物価以上に上がり、スポットワーカー(短期の人材)への依存も高まっている。
店舗は賃借で、家賃は売上が落ちても出ていく固定費だ。のれんの償却が終わっても、減損が出る余地は残る。赤字の期は2010年以降で4回ある。
今の時価総額は利益の40倍以上と、将来の改善を先に織り込みすぎている。完全子会社化の期待は、すでに5割を持つ親会社には強い動機がない。TOBが起きても、事業の稼ぐ力から離れた価格は払いにくい。
加えて、優待は費用として利益を削る。年3億円ほどと推定される優待は、営業利益に匹敵する重さで、これを続ける限り利益は薄いままだ。株主のために出す優待が、会社の稼ぎを細らせている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。足元の客数減と利益の薄さは数字で確認でき、強気の見方は改善の余地を語るにとどまる。確率はやや悲観を27%、悲観を15%に厚くし、中立は35%に絞った。のれん償却の終了は確実な追い風だが、利益率の改善は人件費に食われる。上振れの合計は23%で、最良でも今の時価総額に並ぶ程度だ。強気の見方で最も説得力があるのは、のれん償却の終わりだ。ただそれは会計上の費用が消えるだけで、現金は出ていかない部分であり、本質価値を大きく動かさない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 439 円85 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 236 円45 億円)。 今の値に割り戻すと 339 円65 億円、今との差 −69.8%、 期待の年率 −4.9%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,168 円225 億円 | 404 円78 億円 | +40.2% | +3.4% | 94 円18 億円 |
| やや楽観 | 17% | 809 円156 億円 | 342 円66 億円 | +2.7% | +0.3% | 196 円38 億円 |
| 中立 | 35% | 501 円97 億円 | 280 円54 億円 | −30.3% | −3.5% | 273 円53 億円 |
| やや悲観 | 27% | 154 円30 億円 | 158 円31 億円 | −72.2% | −12.0% | 84 円16 億円 |
| 悲観 | 15% | 100 円19 億円 | 83 円16 億円 | −83.7% | −16.6% | 27 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 439 円85 億円 | 236 円45 億円 | −39.8% | −4.9% | 675 円130 億円 |
今の株価時価総額 1,121 円216 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 魚星が育ち、居酒屋の利益率が一段上がる 利益 18 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 1,168 円225 億円
筆者が描く最良の姿は、魚星が主力に育つ道だ。専門業態の魚星は、豊洲市場の買参権(市場で直接魚を買える権利)を生かした鮮魚が売り物で、今の36店が10年で110店ほどに増える。大型店の客単価は高く、狭い商圏でも客が来る。
はなの舞とさかなや道場は不採算店の整理が済み、残った店の質が上がる。直営は330店、1店当たり売上は物価に加えて客単価の上積みで10年1.40倍になる。直営の営業利益率は8%、FC・食材卸は14%まで上がる。のれん償却が2030年ごろに終わり、本社費は物価分だけ増える。
営業利益は27億円、純利益は18億円に届く。それでも自己資本は136億円まで積み上がり、ROEは13%にとどまる。優待は続き、株主への還元は優待分を含めて約80億円になる(自己資本の流れには優待の費用を入れていない。利益から引き済みのため)。
この姿でも、時価総額は190億円ほどと今の水準を下回る。魚星が当たり、のれん償却が消え、物価の追い風を受けても、居酒屋の利益率は構造的に上限があるからだ。
- 直営店(居酒屋・コントラクト):数量 330(直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店))× 価格 1.08(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 357 億円・営業利益 29 億円。営業利益率8%
- FC・食材卸・子会社:数量 190(FC店+子会社店舗数(店))× 価格 0.35(1店舗当たり本部収入(億円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 9 億円。営業利益率14%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.73 倍、時価総額 225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魚星の出店が続き、のれん償却の終わりと値上げが重なり、客数の減りも止まる。三つがそろう必要があり、確率は低い。
やや楽観 17% 整理が終わり、利益率がコロナ前の水準に戻る 利益 13 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 809 円156 億円
不採算店の整理が2年ほどで終わり、直営は300店で下げ止まる。魚星は70店ほどに増え、他の業態からの転換も進む。直営の営業利益率は7%に戻る。コロナ前の2018年3月期の6.6%を少し上回る水準だ。
FC・食材卸は店数が178に増え、利益率13%を保つ。のれん償却は2030年ごろに消え、本社費は物価並みに増える。営業利益は20億円、純利益は13億円となる。
客数は年1%弱の減りが続くが、客単価の上げ幅が物価をわずかに超え、売上を支える。株主への還元は配当と優待を合わせて約66億円となる(優待の費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない)。
この姿は、コロナ前に近い水準への回復であり、飛躍ではない。それでも整理後の身軽さが、利益率の戻りを支える。
- 直営店(居酒屋・コントラクト):数量 300(直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店))× 価格 1.06(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 317 億円・営業利益 22 億円。営業利益率7%
- FC・食材卸・子会社:数量 178(FC店+子会社店舗数(店))× 価格 0.35(1店舗当たり本部収入(億円、名目))→ 売上 63 億円・営業利益 8 億円。営業利益率13%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.01 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:退店の整理が終わり、のれん償却が消え、客単価の上積みが客数減をおおむね吸収する。上振れとして現実的だが、飲酒機会の減少が続く下では確度は中程度。
中立 35% 店は少しずつ減り、のれん償却の終了が利益を支える 利益 9 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 501 円97 億円
中立の姿は、小さくなりながら守る居酒屋だ。直営は270店に減り、客数は年0.3%ずつ細る。客単価は物価並みに上げ、1店当たり売上は10年で1.30倍にとどまる。FC・子会社の店は165に微減する。
直営の営業利益率は6%、FC・食材卸は12.5%。のれん償却が2030年ごろに終わり、約4.6億円の費用が消える。この分が利益の改善の大半を占める。本社費は物価で増え、営業利益は14億円、純利益は9億円となる。
自己資本は108億円で、ROEは8%と資本コストを下回る。配当は利益の3割台、優待は年3億円ほどと推定し、10年の還元は約54億円とした。優待の費用は利益から引き済みなので、自己資本の流れには入れていない。
店舗の整理は続き、新店は魚星を中心に年数店にとどまる。物価分の値上げは通るが、客数の細りがその分を削る。結果として売上は10年で24%増にとどまり、物価の34%に届かない。
- 直営店(居酒屋・コントラクト):数量 270(直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店))× 価格 1.00(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 271 億円・営業利益 16 億円。営業利益率6%
- FC・食材卸・子会社:数量 165(FC店+子会社店舗数(店))× 価格 0.35(1店舗当たり本部収入(億円、名目))→ 売上 58 億円・営業利益 7 億円。営業利益率12.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 97 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の客数減、販管費の増え方、本社の費用の硬さから、利益は改善しても薄い水準にとどまるとみる。
やや悲観 27% 客数減が止まらず、利益が薄いまま続く 利益 3 億円 · PER 8.9 倍 · 株価時価総額 154 円30 億円
客数の減りが年1%ペースで続き、客単価の上げが追いつかなくなる。直営は245店まで減り、1店当たり売上は10年1.25倍にとどまる。FC店も閉店が増え、本部収入は伸びない。
人件費と賃借料は物価かそれ以上に増える。直営の営業利益率は4%、FC・食材卸は10%。営業利益は5億円強と、今の水準とほぼ変わらない。のれん償却の終わりは、そのまま人件費の増加に食われる。
金利の上昇で借入の利払いが増え、純利益は3億円まで下がる。自己資本は80億円、ROEは4%。配当は利益に連れて薄くなり、優待は3/4に縮む。10年の還元は約30億円。
この姿では、整理が遅れて退店の費用がかさみ、減損も出る。のれんは償却で消えるが、店舗の資産は簿価を下回る価値に見直される。親会社の支援で上場は保たれるが、株主への還元は細る。
- 直営店(居酒屋・コントラクト):数量 245(直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店))× 価格 0.97(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 236 億円・営業利益 10 億円。営業利益率4%
- FC・食材卸・子会社:数量 150(FC店+子会社店舗数(店))× 価格 0.34(1店舗当たり本部収入(億円、名目))→ 売上 51 億円・営業利益 5 億円。営業利益率10%
倍率:ROE 3.9%(純利益 3.1 億円 ÷ 自己資本 80 億円)が資本コスト 9.0% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 11.1 倍。ためた利益は額面の価値に届かない。稼ぐ力がさらに弱く、ためた自己資本も活用できないので、上限の 8.0 割の 8.9 倍に置いた。
確率:上期の客数が前年比4%減という足元の動きが続く確度は高く、整理を進めても利益が戻りきらない見方に十分な根拠がある。
悲観 15% 居酒屋が構造的に縮み、赤字の整理が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 100 円19 億円
飲酒機会の減少と若い世代の居酒屋離れが定着し、客数が10年で2割近く減る。直営は200店に縮み、FCの閉店も続く。1店当たり売上は10年で1.20倍にとどまり、人件費の増加を吸収できない。
営業利益は赤字に沈み、本社費を削っても2億円強の損失が続く。店舗の減損が積み重なり、自己資本は52億円に減る。家賃は売上が落ちても同じだけ出ていく固定費で、閉店には原状回復と解約の費用がかかる。
配当はほぼ止まり、優待も半分に縮む。のれんの償却が終わっても、赤字が続くので意味を持たない。親会社のやまやが完全子会社にする選択肢もあるが、その場合も価格は事業の稼ぐ力に見合う水準にとどまる。
- 直営店(居酒屋・コントラクト):数量 200(直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店))× 価格 0.93(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 185 億円・営業利益 2 億円。営業利益率1%
- FC・食材卸・子会社:数量 120(FC店+子会社店舗数(店))× 価格 0.31(1店舗当たり本部収入(億円、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 2 億円。営業利益率6%
倍率:稼ぐ力が赤字なので、床は純現金と差入保証金などの売れる資産に近い。今の自己資本64億円に0.3倍を掛けて置いた(家賃の約束や原状回復費を引くと、帳簿の自己資本の3割に満たない)。
確率:居酒屋は飲酒機会の減少と人手不足で構造的に負けやすい業態で、2010年以降にも赤字の期が4回ある。確率を二桁に置く根拠は十分。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(居酒屋・コントラクト)
はなの舞・さかなや道場・魚星などの直営居酒屋と、官公庁施設の食堂を受託するコントラクト店。会社の売上の大半を占める。
| 数量直営店舗数(居酒屋+コントラクト、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 285 | 0.77 | 220 | 11 |
| 10 年後 中立 | 270 | 1.00 | 271 | 16 |
取り方:2025年9月末の直営店291店(居酒屋199、コントラクト92)から、下期の退店を踏まえて期末285店と置いた。直営店売上は上期110億円の倍で約220億円。1店当たりでは0.77億円。セグメント別の損益は非開示で、営業利益11億円(利益率5%)は筆者の推定。先の1店当たり売上は、客数の細りを小さく見て中立で10年1.30倍(物価1.34倍に客数減を3%反映)。
FC・食材卸・子会社
加盟店からのロイヤリティと食材売上、紅フーズコーポレーションなど子会社の売上。本部の取り分が多い。
| 数量FC店+子会社店舗数(店) | 価格1店舗当たり本部収入(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 168 | 0.26 | 44 | 6 |
| 10 年後 中立 | 165 | 0.35 | 58 | 7 |
取り方:FC店142と子会社28店の概数から、直営以外の連結売上約44億円を店数で割って1店当たり約0.26億円。食材売上や設備使用料を含む。利益は開示がなく、利益率12.6%は筆者の推定。物価並みの食材売上と加盟料で、中立は10年1.34倍。
リスクと懸念
客数の構造的な減少
2026年3月期上期は直営の客数が前年比4%減。値上げで客単価を4%上げて補っているが、客数が戻らなければ値上げの余地もなくなる。飲酒機会の減少は個社では止められない。
人件費・賃借料の固定費
人件費と賃借料が増え、販管費は上期で3%増えた。最低賃金の上昇は続き、スポットワーカー頼みも品質を落とす。家賃は売上が落ちても出ていく固定の約束で、閉店も解約費と原状回復費がかかる。
退店の加速と減損
上期は新店5に対し退店19。のれんと店舗資産が合わせて約40億円あり、客数が戻らなければ減損の余地は大きい。退店のたびに差入保証金の回収と原状回復の費用も生じる。
親会社との関係とガバナンス
やまやが5割超を持ち、アサヒビール・キリンも1割強を持つ。仕入れ先が株主という構図は、少数株主の目線との利害がずれうる。親会社が連結で自社の利益を優先する余地はある。
優待の費用と縮小の可能性
優待は年3億円ほどと推定され、営業利益に匹敵する。業績が悪化すれば縮小・廃止もありうる。優待目当ての株主が離れれば、株価の下支えも消える。
つぼ八など関連会社の損益
持分法で持つつぼ八の損益が経常利益をぶらす。2027年3月期の第1四半期は投資損失で経常益が減った。居酒屋チェーンどうしの重なりもあり、本業と同じ逆風を受ける。
今後の分かれ目
- のれん償却が終わる2030年ごろに、営業利益率が4%台に乗ったら
- 中立から、やや楽観に重みを移す。償却の終わりだけでなく、店の稼ぎ自体が戻っている証拠になる。
- 直営の既存店客数が前年を下回る状態が3期続いたら
- やや悲観・悲観に重みを寄せる。客単価で補う余地が尽きたとみる。
- 魚星の出店が60店を超え、1店当たり利益が他業態より高いと確認できたら
- 楽観・やや楽観の確度を上げる。専門業態が主力に移る道が見える。
- やまやが完全子会社化のTOBを発表したら
- 価格が事業の稼ぐ力から離れにくい点を確認する。プレミアム次第で少数株主の取り分は変わるが、本質価値の見方は変えない。
- 優待の縮小・廃止が発表されたら
- 還元の受け取り分を減らして見直す。会社の利益には影響しないが、株主の価値は下がる。
見ておくもの
- 直営店の既存店客数と客単価の月次
- 新店数と退店数の半期ごとの推移
- のれん償却の残高と終わる時期
- 魚星の店数と1店当たり利益
- つぼ八の持分法損益
- 優待の内容変更
倍率と資本コストの決め方
店数×1店当たり売上で直営とFC・他の二つに分け、利益率は過去12年の山(9.9%)を大きく下回る4%台にした。ROEが資本コスト9%以下なので、中立のPERの上限は1÷k=11.1倍で、その9割の10倍に置いた。今の株価や過去のPERには寄せていない。悲観の床は稼ぐ力と純現金・差入保証金から置き、過去のPBRの谷は使っていない。新リース会計基準(2028/03期から)でリース負債が貸借対照表に載るが、10年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。優待は年3億円と推定して還元に足した(根拠が弱く、ここは大きくぶれる)。のれん償却は2030年ごろに終わる前提を利益率に入れ、減価償却は取得時の値段のままとして本社費だけを物価で増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→12.73 倍・やや楽観 PER 10.2→12.01 倍・中立 PER 10→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.5%を足して9.0%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。