結論
ハウス オブ ローゼは、百貨店とショッピングセンターに約200の直営店を持ち、ハンドクリームや入浴剤、化粧品を売る専門店だ。筆者の結論は割高である。手元に20億円を超える現金があり借入もほぼ無いが、本業の営業利益は売上の1%に満たない。
客は贈り物と自分へのご褒美を探す女性が中心だ。商品は自社で企画し、外の工場に作らせる。ワコールホールディングスが議決権の2割強を持つ関連会社でもある。売上は10年で2割近く減った。百貨店の売場が減り、ロクシタンやサボンのような海外のブランドとの競争も厳しくなったためだ。
会社は2028年3月期に営業利益率3.1%を目指す。筆者はその達成を中立の筋に織り込んだうえで、10年後の自己資本利益率(ROE)を3〜4%とみる。帳簿の1.2倍という今の値段は、その稼ぎに対して高い。値段を支えているのは、自社製品の株主優待を求める個人の株主だろう。
現金の厚さは悲観の筋の底を支えるが、株主に戻す約束が無い以上、全額は数えられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ハウス オブ ローゼは「お金はあるが、事業がお金を生まない会社」だ。手元の22億円の現金は確かな価値だ。だが、200の店と750人の従業員が生む利益は、年に1億円に届かない。
筆者がいちばん気にしているのは、売る場所の細りだ。百貨店の売場は毎年減り、店を閉じるたびに売上が削られる。モールとネットに移っても、海外のブランドとドラッグストアに挟まれ、値段の力は付きにくい。
今の値段は帳簿の1.2倍だ。ROEが1%に満たない会社に、帳簿を上回る値段が付く理由は乏しい。株主優待を楽しむ個人の株主にとっては意味のある持ち株だが、オーナーとして事業を持つなら、営業利益率が中期計画の3%台に乗り、それが続く証拠を待ちたい。それまでは、厚い現金が株主の損を限る役目を果たすにとどまる。
何で稼ぐ会社か
ハウス オブ ローゼは1977年に始まったボディケアと化粧品の専門店で、東京の赤坂に本社を置く。売上は約115億円、従業員は750人ほどだ。
売上の8割近くは、直営店の商品の販売だ。全国の百貨店とショッピングセンターに約200の店を持ち、ハンドクリーム、ボディソープ、入浴剤、基礎化粧品を売る。ネットの通販も同じ事業に入る。商品は天然の成分を使う自社の企画で、作るのは外の工場だ。2025年には「MAMA BUTTER」のブランドを譲り受けた。
残りの2割強は2つの事業だ。1つは卸の販売で、全国の量販店や専門店に自社の商品を卸す。もう1つは直営店のサービスで、リラクゼーションのサロンと、女性向けの運動の教室カーブスのフランチャイズを営む。カーブスの会員は約1万500人いる。
店の多くは百貨店の中の小さな売場だ。百貨店に払う場所の代金と販売員の人件費が、費用の中心になる。売上の山は贈り物の季節の12月と3月にある。ワコールとは一部の商品の仕入れで取引があるが、経営は独立している。
直営店のサービスは月会費で入る収入が中心で、季節の山谷を少しならす役割を持つ。
優良さと弱いところ
強みは、百貨店の売場に長く根を張った店の網と、贈り物として選ばれる自社の商品だ。ハンドクリームや入浴剤は値段が手ごろで、季節ごとの限定の品で客を呼び戻せる。借入がほぼ無く、現金が厚いのも守りの強さだ。
弱さは大きい。第1に、稼ぐ力が弱い。営業利益率は過去10年で5%を超えたことが無く、2026年3月期は0.6%だった。第2に、売る場所が細っている。地方の百貨店は閉店が続き、店を閉じるたびに売上が減る。第3に、ブランドの力が海外のブランドに劣る。ロクシタンやサボン、ラッシュは同じ売場で値段を高く取り、ドラッグストアは安い品で客を奪う。
ワコールが大株主として監査の目を入れ、経営の独立は保たれている。ただ、資本の使い方を変える圧力は弱い。堀、つまり他社がまねできない強みは狭いとみる。新しいブランドを買って足す動きは、その弱さを補う試みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のボディケアと入浴剤の市場は、数千億円の規模で大きくは伸びない。人口が減る中で、香りや天然の成分で単価を上げる品が伸び、安い量販の品と二極に分かれている。ハウス オブ ローゼはその真ん中にいる。
売る場所の変化が大きい。百貨店は地方から閉店が続き、全国の店の数は20年でほぼ半分になった。客はショッピングセンターとネット、ドラッグストアに移った。専門店のチェーンは、百貨店の売場を閉じながら、モールとネットに軸を移すしかない。
競争は激しい。ロクシタン、サボン、ラッシュのような海外のブランドは、同じモールで香りとブランドの力で値段を高く取る。ドラッグストアは花王や資生堂の安い品で日々の需要を取る。贈り物の需要は、ネットの手軽な贈り物の仕組みにも流れている。
筆者は、10年で直営店が180前後に減り、1店あたりの売上は物価並みに伸びるとみる。卸と、カーブスのような通いのサービスは、店の減りを少し補う。
通いのサービスは、高齢の女性が増える国内では数少ない伸びる需要だ。カーブスの本部は全国で会員を増やしており、フランチャイズの店も客を集めやすい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年2回の配当で、2026年3月期は総額1.2億円を配った。純利益はほぼゼロだったので、配当は手元の現金から出た形だ。自社株買いはほとんどしていない。
財務は堅い。現金は22億円あり、借入はほぼ無い。自己資本比率は7割に近い。ただ、百貨店とモールの売場は借りており、場所の代金と人件費は売上が落ちても下がりにくい約束だ。
株主優待は、100株以上の株主に自社の商品を年1回贈る。原価で見た費用は年に1億円に満たない。大株主はワコールホールディングスで、議決権の2割強を持つ。ワコールが持株を売る場面では、再編の話が出る余地もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期の利益の落ち込みは一時的だ。賃上げの前倒し、計画を超えた退店、MAMA BUTTERの譲り受けの初期の費用が重なっただけで、2027年3月期の4〜5月の売上は前の年を上回った。赤字の店を閉じれば、残る店の利益率は上がる。
会社は2028年3月期に営業利益率3.1%を目指している。2019年3月期には5.1%を稼いだ実績がある。MAMA BUTTERのような天然の成分のブランドを足し、ネットの通販を伸ばせば、売る場所の細りを補える。
カーブスのフランチャイズは、会員の月会費で安定した収入を生む。高齢の女性の運動の需要は人口が減っても伸びる。
財務は堅く、現金は時価総額の3分の1を超える。ワコールが2割強を持ち、いずれ持株を手放す時には、同業や投資会社が買い手になりうる。
値上げの余地もある。ハンドクリームや入浴剤は1回の支払いが小さく、客は数十円の値上げを気にしにくい。贈り物の需要は、景気が悪くても大きくは消えない。
慎重な見方
売上は10年で2割近く減った。百貨店の売場の閉鎖は続き、店を閉じるたびに売上は消える。営業利益率は過去10年の多くで1〜3%にとどまり、2026年3月期は0.6%だった。中期計画の3.1%は、過去の実績から見て高い目標だ。
競争相手は強い。ロクシタンやサボン、ラッシュはブランドの力で値段を高く取り、ドラッグストアは花王や資生堂の安い品を並べる。ハウス オブ ローゼの商品は、どちらにも勝ちにくい真ん中にある。
費用は物価とともに上がる。販売員の賃上げは続き、場所の代金も下がらない。売上が少し落ちるだけで赤字になる体質だ。
配当は利益を上回り、現金を少しずつ減らしている。現金は厚いが、自社株買いで戻す気配は無く、ワコールも経営に口を出さない。
ネットの通販も、大手のモールの中では値段の比較にさらされる。ブランドを買って足す動きも、譲り受けの費用が先に出て、利益が出るまで時間がかかる。作らせている外の工場の原料の値上がりも続く。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。2026年3月期の落ち込みに一時的な費用が混じるのは確かだが、売る場所の細りと海外のブランドとの競争は構造の話だ。中立に中期計画に近い利益率の回復を織り込み、そのうえで最も厚くした。楽観は過去12年の山を超えるので5%にとどめた。営業利益率が2期続けて3%に乗るかで見直す。現金の厚さは、悲観の筋の底を高くする理由として効かせた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 688 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 240 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 473 円22 億円、今との差 −65.4%、 期待の年率 −3.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,693 円80 億円 | 425 円20 億円 | +55.2% | +4.5% | 106 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,153 円54 億円 | 340 円16 億円 | +9.4% | +0.9% | 269 円13 億円 |
| 中立 | 40% | 638 円30 億円 | 255 円12 億円 | −34.6% | −4.2% | 357 円17 億円 |
| やや悲観 | 25% | 425 円20 億円 | 170 円8 億円 | −56.4% | −8.0% | 149 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 287 円14 億円 | 106 円5 億円 | −71.2% | −11.7% | 47 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 688 円32 億円 | 240 円11 億円 | −32.0% | −3.8% | 928 円44 億円 |
今の株価時価総額 1,365 円64 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 5% モールとネットに移りきり、利益率が5%台に戻る 利益 5 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 1,693 円80 億円
売る場所の移り替えが成功する筋書きだ。百貨店の売場を閉じた分を、モールとネットの通販で取り戻し、直営店は210前後を保つ。MAMA BUTTERのような天然の成分のブランドが若い客を呼び、1店あたりの売上は物価を上回って伸びる。
卸は量販店の売場を広げ、カーブスとサロンの会員も増える。営業利益は9億円台になり、利益率は5%を超える。現金の利息も加わり、純利益は5億円を超える。
ROEは9%近くに上がり、資本コストをわずかに上回る。配当は増え、自社株買いも始める。ワコールの持株の行方次第では、同業との再編で値段が付く場面もある。
- 直営店商品販売(ネット通販を含む):数量 210(直営店の数(期末))× 価格 6,115(1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む))→ 売上 128 億円・営業利益 5 億円。210店×1店6,100万円(1.42倍)、4%
- 卸販売:数量 2,500(卸先の売場の数(推定))× 価格 97(1売場あたりの年間の売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。2,500売場×97万円(1.41倍)、11%
- 直営店サービス(サロン・カーブス):数量 17,000(会員と利用者の数(人・推定))× 価格 12(1人あたりの年間の支払い(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。17,000人×12.1万円(1.40倍)、8%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.49 倍、時価総額 80 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率5%台は2019年3月期の5.1%以来で、過去12年の山をわずかに上回る。店の入れ替えとブランドの力の両方が要るので5%とした。
やや楽観 18% 中期計画の利益率3%台を達成し、保つ 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,153 円54 億円
中期計画が実る筋書きだ。赤字の売場を閉じ、残った店の利益率が上がる。直営店は200前後を保ち、1店あたりの売上は物価をやや上回る。ネットの通販とMAMA BUTTERが伸び、贈り物の季節の売上も戻る。
卸は売場を1割増やし、カーブスとサロンの会員も増える。営業利益は7億円ほどになり、利益率は4%台に乗る。純利益は4億円弱で、ROEは7%ほどに上がる。資本コストにはまだ届かない。
配当は利益に見合う水準になり、現金を削らずに払えるようになる。自社株買いはまだ行わない。帳簿の価値は少しずつ増え始める。
- 直営店商品販売(ネット通販を含む):数量 200(直営店の数(期末))× 価格 5,942(1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む))→ 売上 119 億円・営業利益 4 億円。200店×1店5,940万円(1.38倍)、3%
- 卸販売:数量 2,200(卸先の売場の数(推定))× 価格 95(1売場あたりの年間の売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。2,200売場×95万円(1.38倍)、10%
- 直営店サービス(サロン・カーブス):数量 15,000(会員と利用者の数(人・推定))× 価格 12(1人あたりの年間の支払い(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。15,000人×11.9万円(1.38倍)、7%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は2028年3月期に営業利益率3.1%を目指し、2027年3月期の4〜5月の売上は前の年を上回った。計画を達成して保つ筋として18%とした。
中立 40% 店を減らしながら、薄い利益を保つ 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 638 円30 億円
店を減らしながら、薄い利益を保つ筋書きだ。百貨店の閉店で直営店は180に減るが、モールとネットで1店あたりの売上は物価並みに伸びる。賃上げと場所の代金の上昇を値上げで吸収し、直営店の利益率は1%に戻る。
卸とカーブスが利益を下支えし、営業利益は3.6億円ほどになる。利益率は2.6%で、中期計画の目標に少し届かない。現金の利息を足し、純利益は2億円弱だ。
ROEは3〜4%にとどまる。配当は今の水準を保つが、純利益とほぼ同じ額を配るので、帳簿の価値は増えない。現金は厚いまま眠り、株主の稼ぎは資本に比べて薄い。
- 直営店商品販売(ネット通販を含む):数量 180(直営店の数(期末))× 価格 5,770(1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む))→ 売上 104 億円・営業利益 1 億円。180店(0.87倍)×1店5,770万円(物価並み1.34倍)、1%
- 卸販売:数量 2,000(卸先の売場の数(推定))× 価格 92(1売場あたりの年間の売上(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。2,000売場×92万円(1.34倍)、9%
- 直営店サービス(サロン・カーブス):数量 13,300(会員と利用者の数(人・推定))× 価格 12(1人あたりの年間の支払い(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。13,300人(0.95倍)×11.6万円(1.34倍)、6%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:百貨店の売場の細りと、退店と値上げの効果が打ち消し合う落としどころ。過去10年の営業利益率の真ん中あたりに戻る筋として40%とした。
やや悲観 25% 百貨店の閉店が続き、直営店が赤字のまま 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 425 円20 億円
売る場所の細りが、退店の効果を上回る筋書きだ。地方の百貨店の閉店が続き、直営店は160に減る。モールでは海外のブランドとドラッグストアに挟まれ、1店あたりの売上は物価に届かない。賃上げを値段に移せず、直営店は小さな赤字を続ける。
卸とカーブスがその赤字を埋めるだけで、営業利益は1億円に満たない。店の減損も続き、純利益はゼロに近い。配当は減らすか、現金を削って続ける。
株主にとっての価値は、手元の現金と売場の保証金の回収にほぼ限られる。それも、現金を株主に戻す約束が無いので、帳簿の額より割り引かれる。
- 直営店商品販売(ネット通販を含む):数量 160(直営店の数(期末))× 価格 5,383(1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む))→ 売上 86 億円・営業利益 −1 億円。160店(0.77倍)×1店5,380万円(1.25倍、物価に届かない)、赤字
- 卸販売:数量 1,800(卸先の売場の数(推定))× 価格 86(1売場あたりの年間の売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。1,800売場×86万円(1.25倍)、8%
- 直営店サービス(サロン・カーブス):数量 12,000(会員と利用者の数(人・推定))× 価格 11(1人あたりの年間の支払い(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。12,000人×10.8万円、3%
倍率:利益がほぼ無く稼ぐ力(純利益÷k ≒ 4億円)は床にならない。現金と売場の保証金の回収の約27億円に戻り方0.75を掛けた約20億円を、今の自己資本54.8億円で割った0.365倍。
確率:売上は10年で年2%ずつ減り、2026年3月期の営業利益率は0.6%だった。回復が続かない筋として25%とした。
悲観 12% ボディケアの専門店という形が細り、現金を削って縮む 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 287 円14 億円
専門店という形そのものが細る筋書きだ。百貨店の売場は大半が消え、モールでも海外のブランドとドラッグストアに客を取られる。直営店は120に減り、1店あたりの売上も細る。直営店の赤字は広がり、カーブスの会員も減る。
営業赤字が続き、店の減損と退店の費用が現金を削る。配当は大きく減らす。ワコールも持株を手放し、安い値段での再編を待つ形になる。
株主に残るのは、閉店の費用を払ったあとの現金だ。それも、少数の株主の手に戻る保証は無い。カーブスのフランチャイズの契約が切れれば、その収入も失う。店を閉じる時の原状回復の費用も重い。
- 直営店商品販売(ネット通販を含む):数量 120(直営店の数(期末))× 価格 5,000(1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む))→ 売上 60 億円・営業利益 −2 億円。120店(0.58倍)×1店5,000万円(1.16倍)、赤字
- 卸販売:数量 1,500(卸先の売場の数(推定))× 価格 82(1売場あたりの年間の売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。1,500売場×82万円、6%
- 直営店サービス(サロン・カーブス):数量 8,000(会員と利用者の数(人・推定))× 価格 11(1人あたりの年間の支払い(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。8,000人、赤字
倍率:赤字なので稼ぐ力は床にならない。現金22.4億円から退店の費用約4億円を引いた約18億円に戻り方0.75を掛けた約13.5億円を、今の自己資本54.8億円で割った0.246倍。
確率:2015年と2021年に最終赤字を出し、売上は10年で2割近く減った。専門店の形そのものが細る構造的な負けとして12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店商品販売(ネット通販を含む)
百貨店・ショッピングセンターの直営店とネット通販で、自社企画のボディケア・入浴剤・化粧品を売る。
| 数量直営店の数(期末) | 価格1店あたりの年間の売上(万円・ネット通販を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 208 | 4,306 | 90 | −1 |
| 10 年後 中立 | 180 | 5,770 | 104 | 1 |
取り方:直営208店(2026年3月、データ提供サービス)で、セグメントの売上89.57億円を割った1店あたり約4,300万円。セグメント利益の開示が無いので、全社の営業利益0.69億円を卸とサービスの推定の黒字との差で約−1.4億円と推定。
卸販売
全国の量販店・専門店・一般卸に自社の商品を卸す。
| 数量卸先の売場の数(推定) | 価格1売場あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 69 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,000 | 92 | 18 | 2 |
取り方:売場の数の開示が無いため推定。売上13.76億円を、1売場あたり年約69万円とみて約2,000売場。利益率は卸の販売員の費用が無いので約1割と推定。
直営店サービス(サロン・カーブス)
リラクゼーションのサロンと、フランチャイズのカーブス(女性向けの運動の教室)。
| 数量会員と利用者の数(人・推定) | 価格1人あたりの年間の支払い(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14,000 | 8.63 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13,300 | 12 | 15 | 1 |
取り方:カーブスの期末会員10,490人にサロンの常連の推定約3,500人を足した約14,000人で、売上12.08億円を割った1人あたり年約8.6万円。利益は推定。
リスクと懸念
百貨店の売場の細り
直営店の多くは百貨店の中の売場だ。地方の百貨店は閉店が続き、売場を失うたびに売上が消える。モールとネットへの移り替えが遅れれば、売上は細り続ける。
海外のブランドとドラッグストアとの競争
ロクシタンやサボン、ラッシュはブランドの力で値段を高く取り、ドラッグストアは安い品で日々の需要を取る。真ん中にいる自社の商品は、どちらにも勝ちにくい。
人件費と場所の代金
販売員の賃上げが続き、百貨店とモールに払う場所の代金も下がらない。売上が少し落ちるだけで営業赤字になる体質だ。
利益を上回る配当と眠る現金
2026年3月期は純利益をほぼ全額上回る配当を出した。現金は厚いが、自社株買いで株主に戻す方針は無く、事業が稼がなければ少しずつ削られる。
ワコールの持株の行方
ワコールホールディングスが議決権の2割強を持つ。持株を手放す時の値段と相手次第で、株価と経営の形が大きく変わりうる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 中期計画の達成と定着の証拠として、やや楽観の確率を上げる。
- 直営店の数が年に10以上減り、売上が減り続けたら
- 売る場所の細りが止まらない証拠として、やや悲観に重みを移す。
- 自社株買いを始めるか、配当性向の方針を数字で示したら
- 現金が株主に戻る証拠として、戻り方を引き上げる。
- ワコールが持株を手放すか、同業との再編の話が出たら
- 現金と店の網に値段が付く場面として、時価総額の見方を見直す。
- MAMA BUTTERなど新しいブランドとネットの通販の売上が全体の2割を超えたら
- 売る場所の移り替えが進んだとみて、直営の1店あたりの売上の見通しを引き上げる。
見ておくもの
- 月次の既存店の売上
- 営業利益率(中期計画の3.1%に届くか)
- 直営店の数と退店の数
- ネットの通販とMAMA BUTTERの売上
- ワコールの持株の比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRを見ずに、ROEとk 8.25%から決めた。中立のROEは3〜4%で資本コストを大きく下回るので、PERは1÷kの12.5倍の7.5割に置いた。中立の営業利益率は2.6%で、過去12年の山5.1%と中期計画の3.1%より低い。現金は運転資金を除いた12億円を戻り方0.75で足した。今の帳簿の1.2倍という値段は株主優待の人気を映すとみるが、価値の計算には入れていない。2028年3月期からの新リース会計基準では売場の賃借の分が負債に載るが、10年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.7→13.49 倍・やや楽観 PER 10.6→12.12 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。