結論
JMホールディングスは、精肉を核にしたプロ向けのスーパーを116店営む会社だ。主力は飲食店が仕入れに使う「肉のハナマサ」と、関東のロードサイドに出す「ジャパンミート」。売上の96%をこのスーパー事業が占める。筆者の結論は適正だ。10年後の本質価値は、今の時価総額768億円とほぼ同じになる。
稼ぎの源は単純だ。店が1つ増えるたびに売上が積み上がり、物価の上昇がそこに乗る。国内の人口は細るが、この会社は出店で増収を続けてきた。売上は10年で約2倍になり、借金を持たず純現金を保つ。
弱点は値段を決める力だ。2026年7月期は売上が6.6%増えたのに、営業利益は10%減った。仕入れの値上がりを売値に移すのが遅れ、粗利が細ったためだ。肉は相場で動く商品で、これは一時の失敗というより事業の性質に近い。
来期の会社計画は、営業利益110億円と大きな戻りを見込む。筆者はそこまで急には戻らないと見る。10年の中立では営業利益が150億円前後になり、会社が中期計画で掲げる2029年の水準に5年ほど遅れて届く形だ。
創業家が4割近くを持つので、買収で価値が一気に動く可能性は小さい。上振れも下振れも、店の増やし方と粗利の守り方で決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は好きになれる点と、受け入れにくい点が同居している。好きなのは、事業が単純で、10年先も存在すると思えることだ。人は肉を食べ、飲食店は仕入れ先を探し続ける。そこで精肉の調達と加工という具体的な強みを持ち、借金をほとんど持たない。
受け入れにくいのは、利益の質だ。値段を自分で決められず、肉の相場と仕入れの転嫁に利益が左右される。2026年7月期の減益が、その弱さを見せた。薄い利益率では、小さな失敗が利益に大きく響く。
資本の使い方は悪くない。借金はなく、出店に投資し、配当を増やし、自社株買いも始めた。ただ、稼いだ現金の多くを店に回しても、新しい店の稼ぎが資本コストをどれだけ上回るかは見えにくい。
安全域は薄い。中立の価値は今の時価総額とほぼ同じで、悪い方に傾いた時の下落は大きい。払う値段に見合うかと問われれば、見合う程度だが、余裕があるとは言えない。もう少し安ければ、オーナーとして持ち続けたい会社だと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、精肉を軸にしたスーパー事業だ。2025年7月期の売上は約1,815億円、営業利益は約96億円で、全社の売上の96%を占める。店は114店あり、肉のハナマサが64、ジャパンミートの生鮮館が17、同じくジャパンミートの単独店が21、地域密着のスーパーみらべるが12だ。
肉のハナマサは、東京都内の駅前や飲食店が多い街に出す。業務用の大容量パックと低い単価で、飲食店の仕入れ先になる。個人の客も買えるが、家族の少ない家庭には量が多い。そこで近年は小型の「PLUS」を増やし、個人客も取り込む。2025年7月期は新店10店のうち9店がPLUSだ。
ジャパンミートの生鮮館は、ジョイフル本田などホームセンターの中に出し、精肉・青果・鮮魚・惣菜でファミリー層を狙う。単独店は生鮮館を小さくした形で、関東のロードサイドに出す。
強みは加工と物流だ。加工物流センターで肉をまとめて加工し、倉庫に大量に備蓄して相場の波をならす。特定の商品を大量に並べて安く売る「異常値販売」も得意だ。
残りの4%は外食(焼肉・とんかつの「漫遊亭」19店)、青果の仲卸、米の小売、イベントなどだ。営業利益率はスーパー事業の5.3%に対し、周辺は8%と高いが、規模は小さい。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、精肉の調達と加工にある。創業は精肉専門店で、肉をまとめて仕入れ、自前の加工物流センターで切り分けて店に回す。この流れがあるから、プロ客が欲しがる大容量の肉を安く出せる。堀と呼べるのはここだけだ。
値段を決める力は強くない。2026年7月期は売上が増えたのに、営業利益は10%減った。仕入れが上がったのに、売値に移すのを慎重にした。客を逃したくない気持ちは分かるが、利益を守る力が弱いことの裏返しでもある。営業利益率はずっと3〜5%台で、薄利だ。
資本の使い方は堅実だ。借金をほとんど持たず、自己資本比率は6割を超える。純現金があり、10年連続で増収を続けてきた。ROEは過去10年の中央値が12%台で、小売としては高い。ただ、中期計画が2029年の目標をROE「10%以上」と、足元の14%台より低く置いたのは気になる。成長のために現金を抱える意思表示にも見える。
創業家が経営も株主も握る。意思決定は速いが、少数株主の目で資本の使い方を問う力は弱い。店の多くは賃借で、家賃は景気が悪くても払う固定の約束だ。純現金が見かけほど強くないと筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プロ向け・都市型のスーパーは、物価高で追い風と逆風が同時に吹く。飲食店は仕入れを安くしたいので、大容量で安い店は頼られる。一方、食肉は輸入も国産も相場が上がりやすく、仕入れの上昇を売値に移せるかが利益を分ける。
競合は3つに分けて考える。1つは「業務スーパー」を全国に展開する神戸物産で、売上は5,000億円規模とこの会社の3倍近い。2つ目はコストコやドン・キホーテなど、安さを売りにする大型店。3つ目は食品を強めるドラッグストアと、同じ領域のライフコーポレーションやベルクのような食品スーパーだ。個人客の財布を取り合う点で、競合の幅は広い。
都心の駅前に、肉に絞った大容量の店を密に出す業態は、実は競合が少ない。この点で強みはある。ただ、人件費は最低賃金とパート不足で年に3〜5%上がる。セルフレジや加工の内製化で吸収できるかが分かれ目になる。
人口は減るが、店の数を増やす余地はまだある。2024年にハナマサは大阪の九条駅前に関西初出店した。関西は首都圏ほど店を密に置けず、物流も新しく作る必要があるので、ここが成長の鍵であり試金石でもある。
景気の谷では、飲食店向けの需要が弱る。個人向けの生鮮は底堅いが、プロ客の比率が高い店は、食品スーパーほど不況に強くない。
資本政策と M&A
還元は第一の方針としながら、配当は控えめだ。純利益に対する配当の割合は2割台で、残りは出店と現金に回ってきた。2026年9月には上限20億円の自社株買いを決め、配当も増やす方針だ。時価総額の3%弱にあたる規模で、資本効率を意識し始めた動きと見る。
中期計画は2029年7月期に、売上2,500億円、営業利益150億円、純利益91億円を掲げる。出店を速め、関西や新しい地域に広げ、PBや直輸入、加工の内製化を進める。M&Aも積極的に探すとしているが、大型の買収の実績はまだない。
2026年7月期の営業利益が90億円と、計画の道筋を下回ったので、計画の達成は後ろにずれると筆者は見る。
創業家の持ち分は4割近い。ホームセンターのジョイフル本田も株主に名を連ねる。支配が固いので、買収提案で一気に価値が動く場面は考えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
JMホールディングスは、売上を20年近く伸ばし続けてきた。2026年7月期の減益は、仕入れの値上がりを売値に移すのを遅らせたことと、13億円の減損が重なった結果だ。事業の傷ではなく、客を守るために利益を一時的に削った判断だ。会社は2027年7月期に営業利益を110億円へ戻す計画を出し、自社株買いと増配でその自信を示している。
店の数はまだ伸ばせる。ハナマサは都心の駅前でプロ客を持ち、PLUSで個人客も取り込む。関西には初出店して数年で、物流の整備が進めば店を密に出せる。中期計画の2029年の営業利益150億円は、売上が毎年伸びれば届く水準だ。
純現金があり、借金もない。出店の資金は自前で賄え、金利が上がっても利払いはほぼ増えない。創業家が約4割を持つ経営は、短期の株価に振り回されず、長い目で店を増やせる。ジャパンミートの精肉の調達力は、外食にも使える。粗利が戻れば、営業利益率は5%台半ばに乗る。
慎重な見方
2026年7月期の減益は、一時の失敗とは思えない。肉は相場で動き、仕入れが上がった時に売値へ移せない会社は、また同じことを繰り返す。営業利益率は5%前後と薄く、粗利が1ポイント動くだけで利益が2割動く。値段を決める力が弱いことは、この事業の性質だ。
人件費は年に3〜5%上がり、都心の家賃は景気が悪くても払う固定の約束だ。純現金が48億円あっても、店の賃借料を考えれば見かけほど強くない。新リース会計基準が始まれば、借金と同じ重さで見えるようになる。
競合は幅広い。神戸物産の業務スーパーは売上がこの会社の3倍近く、コストコやドラッグストアも食品を強めている。プロ客も個人客も取り合う中で、ハナマサだけが値上げを通せる理由は見当たらない。中期計画のROE目標が足元より低いのは、成長しても稼ぎは増えにくいという会社自身の見立てではないか。
創業家が4割近くを握るので、少数株主の声は届きにくい。出店が止まり、粗利も戻らなければ、増収という物語が崩れる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分で強いのは、出店が続き、純現金と創業家の長期目線が支えになることだ。慎重な言い分で強いのは、値段を決められない事実が決算に現れたことだ。2026年7月期の減益は、会社が言う一時要因だけでは説明しきれない。
確率は中立を最も厚くし、2つの言い分が噛み合う場所を中心に置いた。やや悲観は強気側の裏返しの筋書きなので、やや楽観より少し厚くした。10年先の本質価値は今の時価総額とほぼ同じで、適正という結論になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/07 期)
確率で加重した株価時価総額 3,089 円1,574 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 533 円271 億円)。 今の値に割り戻すと 1,909 円973 億円、今との差 +26.9%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.2%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,252 円2,676 億円 | 785 円400 億円 | +301.4% | +14.9% | 604 円308 億円 |
| やや楽観 | 24% | 4,158 円2,119 億円 | 648 円330 億円 | +219.5% | +12.3% | 1,153 円588 億円 |
| 中立 | 34% | 3,422 円1,744 億円 | 549 円280 億円 | +164.1% | +10.2% | 1,350 円688 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,666 円849 億円 | 392 円200 億円 | +36.9% | +3.2% | 453 円231 億円 |
| 悲観 | 10% | 354 円181 億円 | 255 円130 億円 | −59.5% | −8.6% | 61 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,089 円1,574 億円 | 533 円271 億円 | +140.8% | +9.2% | 3,621 円1,845 億円 |
今の株価時価総額 1,504 円766 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 10% 店の増加と粗利の改善がそろう 利益 143 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 5,252 円2,676 億円
関西と新しい地域への出店が軌道に乗り、店は10年で175まで増える。小型で個人客も取り込む「PLUS」の形が当たり、1店あたりの売上が物価並みに伸びる。仕入れの直輸入と加工の内製化が効き、粗利が改善する。値上げの転嫁も遅れなくなる。
営業利益率は5%台後半へ上がる。会社が中期計画で描く2029年の営業利益150億円を、数年早く超える動きだ。外食やイベントなどの周辺事業も小さく伸びる。
稼いだ現金は出店と還元に回り、創業家は自社株買いも続ける。M&Aで同じ精肉・食品の卸や小売を取り込む選択肢もあるが、ここでは大型の買収は置かない。
それでも、この会社の事業は食肉相場と都心の人件費・家賃に縛られる。利益率が6%近くまで上がる状態を、10年先まで保てるとは置けない。
- スーパーマーケット事業:数量 175(店舗数(店))× 価格 21(1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 3,733 億円・営業利益 217 億円。営業利益率 5.8%
- その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど):数量 21.0(外食の店舗数(店))× 価格 5.51(1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む))→ 売上 116 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.44 倍、時価総額 2,644 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の加速・粗利改善・個人客の取り込みがそろう必要があり、会社計画に近い上振れだが、FY26の減益で値決めの弱さが見えたので高くは置かない。
やや楽観 24% 出店が続き利益率もやや改善 利益 115 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 4,158 円2,119 億円
出店は年に2〜3店のペースを保ち、10年で155店になる。ハナマサの都心店は飲食店の仕入れ先として定着し、PLUSは個人客を少しずつ増やす。1店あたりの売上は、物価の上昇を概ね売値に移せる。
粗利は2026年7月期の落ち込みから戻り、営業利益率は5%台半ばで落ち着く。仕入れの直輸入やPB、加工の内製化が、相場に振れる粗利を下から支える。
関西の店は大阪に初出店して数年たち、物流が整って黒字化する。ただし関西は競合も多く、都心のように密度で勝てるわけではない。
還元は配当に加えて自社株買いを時々挟み、純現金は増えすぎない。強気の中でも、利益の伸びは出店と物価の分に収まる。
- スーパーマーケット事業:数量 155(店舗数(店))× 価格 21(1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 3,257 億円・営業利益 176 億円。営業利益率 5.4%
- その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど):数量 20.0(外食の店舗数(店))× 価格 5.35(1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む))→ 売上 107 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 115 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.87 倍、時価総額 2,052 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店が続き、粗利が戻るという、会社の中計に沿った道筋。業界ノートの中立〜やや楽観の範囲。
中立 34% 店は年2〜3店ずつ増え、利益率は5%で安定 利益 95 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 3,422 円1,744 億円
出店は年に2〜3店と、ここ数年より少し落ち着いたペースで進み、10年で140店になる。1店あたりの売上は物価の上昇に少し届かず、10年で1.3倍だ。新しい店は小型のPLUSが中心で、1店の売上が既存より小さい分を、物価の上昇で埋める形になる。
粗利は食肉相場と仕入れの転嫁で上下するが、均すと2025年7月期並みに戻る。営業利益率は5%で、人件費の上昇は売値とセルフ化で吸収する。
10年後の営業利益は150億円前後。会社の中期計画が2029年に置く150億円に、5年から6年遅れて届く。
稼いだ現金は出店と配当に使い、自社株買いは時々行う。自己資本は積み上がって、ROEは10%を切る水準に下がる。それでも資本コストは上回る。創業家の支配は続き、買収で価値が動くことはない。
- スーパーマーケット事業:数量 140(店舗数(店))× 価格 21(1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 2,898 億円・営業利益 145 億円。営業利益率 5.0%
- その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど):数量 20.0(外食の店舗数(店))× 価格 5.28(1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む))→ 売上 106 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.36 倍、時価総額 1,648 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中心。出店は鈍るが続き、粗利は均すと2025年7月期並み。FY26の減益を見て、強気の人の主張(FY27に営業利益110億)はそのまま採らない。
やや悲観 22% 粗利が戻らず出店も鈍る 利益 59 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,666 円849 億円
仕入れの値上がりを売値に移せず、粗利が2026年7月期の水準から戻らない。営業利益率は4%を割る。人件費は年に3〜5%上がり続け、店の運営費が重くなる。
出店は鈍って10年で125店。減損した店の整理も出て、1店あたりの売上は物価に追いつかない。業務スーパーやコストコ、ドラッグストアの食品強化が、プロ客と個人客の両方に効いてくる。
純利益は60億円前後にとどまり、10年前の水準とほとんど変わらない。純現金は積み上がるが、使い道がなく自己資本だけが厚くなり、ROEは資本コストを下回る。
それでも事業が崩れるわけではない。精肉の調達力と加工物流は残り、都心の店は一定の客を保つ。ただ、成長の物語は終わる。
- スーパーマーケット事業:数量 125(店舗数(店))× 価格 20(1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 2,488 億円・営業利益 95 億円。営業利益率 3.8%
- その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど):数量 19.0(外食の店舗数(店))× 価格 5.12(1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む))→ 売上 97 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 5.0%
倍率:ROE 6.8%(純利益 59 億円 ÷ 自己資本 867 億円)で資本コスト 7.25% 以下。伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 13.3 倍。粗利が戻らず成長も止まった事業の稼ぎは長続きしないと見て、上限の約 8.6 割の 12.92 倍に置いた。
確率:FY26に出た粗利の低下が定着し、人件費も重い筋書き。値決めの弱さは事実として見えたので、やや悲観を中立より厚く置いた。
悲観 10% 競合に押され、固定費だけが残る 利益 19 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 354 円181 億円
都心のプロ客を業務スーパーやネット卸に奪われ、個人客もコストコやドラッグストアに流れる。売上は物価ほど伸びず、1店あたりの売上は10年で1.15倍にとどまる。
粗利が戻らない一方、家賃と人件費は物価で上がる。固定費は売上が落ちても減らない。営業利益率は2%を割り、店の減損が相次いで、赤字の店を閉める。店は105まで減る。
精肉の調達力という強みはあるが、売値を決めるのは相場と競合で、会社は値段を決められない。外食も縮み、周辺事業の利益はほぼ消える。
純利益は20億円前後にとどまり、配当は維持できても自社株買いは止まる。ただ、純現金と店舗網はなお残り、再編で別の価値が出る余地はある。構造的に優良さを失った10年だ。
- スーパーマーケット事業:数量 105(店舗数(店))× 価格 18(1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目))→ 売上 1,922 億円・営業利益 35 億円。営業利益率 1.8%
- その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど):数量 16.0(外食の店舗数(店))× 価格 4.72(1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む))→ 売上 76 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 2.0%
倍率:稼ぐ力は事業の純利益 19 億円 ÷ k 7.25% = 253 億円。ROE 2.7% は資本コスト以下で、1÷k = 13.3 倍が上限。固定費だけが残る構造的な縮みで利益は長続きしないとみて、その約 7 割の 9.5 倍に置いた。純現金(約 48 億円)と店舗網は残るが、内訳を決算短信で確かめていないので売れる資産の床は積まない。
確率:競合に押され固定費が残る構造的な負け。創業家が経営を握り事業の傾きも早く直せるため、5%は超えるが10%を上回らせない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
スーパーマーケット事業
肉のハナマサ・ジャパンミート・スーパーみらべるの 114 店(2025年7月末)。精肉を核に、プロ向けの大容量と個人向けの生鮮を売る。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円、物価込みの名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 114 | 16 | 1,815 | 96 |
| 10 年後 中立 | 140 | 21 | 2,898 | 145 |
取り方:2025年7月期のスーパー事業の売上 1,815 億円(セグメント利益 95.7 億円)を期末の店舗数 114 で割り、1 店舗当たりの売上を逆算した。数量は店舗数、価格は 1 店舗当たり売上で、物価 3% が乗る名目。中立では、1 店当たり売上は物価 1.34 倍に、小型の PLUS 店が増える影響と客数の目減りを少し引いた 10 年 1.30 倍に置いた。
その他(外食・青果仲卸・米穀・イベントなど)
焼肉・とんかつの漫遊亭 19 店、青果の仲卸、米の小売、イベント、レジ業務の受託、ショッピングセンター運営。
| 数量外食の店舗数(店) | 価格1店舗当たりの売上(億円、周辺事業を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/07 | 19.0 | 3.94 | 75 | 6 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 5.28 | 106 | 7 |
取り方:2025年7月期の「その他」の売上 74.8 億円(利益 5.96 億円)を、外食の店舗数 19 で割って 1 店舗当たりの売上として置いた(青果・米・イベントも含むので目安)。外食の価格は物価並みに上がるとして、中立で 10 年 1.34 倍に置いた。
リスクと懸念
粗利の弱さと値決め力
肉は相場で動き、仕入れが上がった時に売値へ移せるかが利益を決める。2026年7月期は売上が増えたのに、営業利益は10%減った。営業利益率が5%前後と薄いので、粗利が1ポイント動くと利益は2割動く。ここが戻らなければ、中期計画の利益は遠のく。
家賃と人件費の固定費
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。最低賃金とパート不足で人件費は年に3〜5%上がる。景気が悪くなると、プロ客の多い都心店は特に厳しい。新リース会計基準が2028年7月期から始まれば、賃借料が借金と同じ重さで貸借対照表に載る。
競合の幅の広さ
業務スーパー(神戸物産)は規模が大きく、コストコやドン・キホーテも食品を強めている。ドラッグストアも食品の比率を上げ、個人客の財布を取り合う。プロ客の仕入れ先でも、ネット卸などの選択肢が増えている。値上げを通す力が試される。
出店の失敗と関西
中期計画は出店を速め、関西や新しい地域に広げる。関西は店を密に置きにくく、物流も新しく作る必要がある。出店が計画を下回れば増収の物語が崩れ、減損も出る。2026年7月期にも13億円の減損が出ている。
創業家が握るガバナンス
創業家が4割近くを持ち、社長も創業家だ。意思決定は速いが、少数株主の目で資本の使い方を問う力は弱い。資本効率の目標が足元より低い点も、その表れかもしれない。買収で価値が一気に動く場面は考えにくく、再評価のきっかけが少ない。
大型M&Aの実行
中期計画はM&Aを積極的に探すとするが、大型の買収の実績はまだない。同業の精肉・食品の卸や小売を買えば、規模は取れるが、価格を払いすぎれば純現金を失い、資本の効率も落ちる。買収に踏み切れば、期待と不安が同時に膨らむ。
今後の分かれ目
- 仕入れが上がった局面でも、粗利率が2025年7月期の水準を保てたら
- 値決め力は思ったより強いと判断し、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 2027年7月期の営業利益が110億円の計画に届かず、100億円を割ったら
- 粗利の弱さが定着したと見て、やや悲観の確率を厚くする。
- 関西の店が黒字化し、出店が年に3〜4店のペースで続いたら
- 店数の伸びの前提を上げ、やや楽観の筋書きに重みを移す。
- 業務スーパーやコストコが都心に出店攻勢をかけたら
- プロ客と個人客の取り合いが強まるので、悲観側に確率を寄せる。
- 自社株買いや増配が上限まで進み、さらに追加されたら
- 資本効率への意識が定着したと見て、還元の前提を上げる。
- 食肉の相場が急に下がり、仕入れが安くなったら
- 粗利が一時的に戻るが、売値の引き下げ圧力も強まるため、利益の改善は割り引いて見る。
見ておくもの
- スーパー事業の既存店売上高と粗利率の四半期の推移
- 新規出店数と、肉のハナマサPLUSの個人客の動き
- 関西の店の黒字化の進み具合
- 中期計画(2029年7月期の営業利益150億円)に対する進捗
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質の量)と1店舗当たり売上(物価込みの名目)でスーパー事業を積み、利益率は物価で動かさず、自己資本は今の値に期間の純利益の合計を足して還元を引いて流した。倍率は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限(k 7.25%、g 4.0%)の8.5〜9割に置き、悲観側は稼ぐ力から置いた。純現金が時価総額の1割に届かず、リースの約束(有報で未確認)は悲観の固定費で表した。リース会計の新基準で数字の形が変わるが、家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。今の株価は最後に比べただけで、倍率を寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→18.44 倍・やや楽観 PER 14.3→17.87 倍・中立 PER 13.8→17.36 倍・やや悲観 PER 11.5→12.92 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0.0% を足した 7.5%。事業は傾いておらず、上乗せは置かない。創業家の支配・粗利の弱さといった個別のリスクは、k に足さず、やや悲観・悲観の確率と利益率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。