結論
トーエルは、神奈川を中心に一都三県でLPガスとボトルウォーターを売る会社だ。売上の4分の3がLPガス、4分の1が宅配水である。筆者の結論は「適正圏」。事業は堅いが、安くもない。
強みは自前の配送網と財務だ。輸入基地から顧客へ直接運ぶ物流でコストを抑え、小さな販売店のガス事業を預かる「総合管理」で数量を保ってきた。自己資本比率は77%で、借金はリース債務だけだ。
弱みは、市場が縮むことと、稼ぎが物価に追いつきにくいことだ。国内のLPガス需要は人口減とオール電化で、実質で年に1.6〜1.7%減る。営業利益は過去12年、おおむね14〜23億円の幅で動き、今期の会社予想も19億円と、足元では伸びていない。
株主還元は、自己株式の取得を機動的に行う方針で、支配株主もいない。現金は、事業に要る分を除いて27億円ほどあるとみた。
結果として、確率で重みをつけた価値は、今の時価総額をわずかに下回る。安全域は現金が支えるが、上振れの余地は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、トーエルは「悪い会社ではないが、安くもない」類いの銘柄だ。縮む市場に、低コストの配送という実務の強みで居座っている。借金はなく、現金は時価総額の4割に近い。
株主が自由に使える利益は、純利益の7割ほどと筆者は見る。設備投資は有形・無形の取得で年に11億円、リース返済が3億円で、減価償却の15億円とほぼ同額だ。ただし、更新の費用は物価で膨らむ。償却は取得時の値段のままなので、会計の利益が見かけ上ふくらむ。現金で見ると、10年の終わりには、設備投資が償却を2億円ほど上回る。
経営は、自己株式の取得という現実の手段を持つ。ROEが資本コストを下回る会社では、現金を寝かせるより返すほうが株主に報いる。筆者は、余った現金27億円を、4分の3の価値で数えた。現金が積み上がってきた過去を割り引いた。
安全域は、悲観の筋書きでも現金が支える。今の値段は、現金を引いた事業を9倍ほどの利益で評価する。縮む市場の事業としては、安くも高くもない水準だ。
何で稼ぐ会社か
トーエルは、1963年に創業した横浜の会社だ。LPガス(プロパン)を輸入基地から顧客へ直接運び、一般家庭と事業所に売る。自前の配送で、輸送のコストを抑えることが強みだと会社は説明する。
稼ぎの柱は二つある。一つ目はエネルギー事業で、売上203億円、利益は22億円(本社の費用を配賦する前の率で10.7%)。家庭向けの小売に加え、小さな販売店のガス事業を預かる「総合管理」と、他社への卸がある。電力の小売、ガス機器、配管工事も扱う。
二つ目はウォーター事業で、売上68億円、利益は12億円(率18.0%)。「アルピナ」「信濃湧水」などの国産水と、ハワイ産の「Pure Hawaiian」を、サーバー付きで宅配する。ハワイに工場を持つ。
本社の費用14億円を引いた全体の営業利益は19.8億円、率は7.3%だ。従業員は連結で約450人、LPガスの充填工場は厚木と土浦にある。顧客は一般家庭が中心で、検針と保安の点検も自社で担う。ガスは生活に欠かせず、解約されにくいため、売上は景気で大きく動かない。冬の気温が低いと使用量が増える。
優良さと弱いところ
優良さを一言で言えば「財務は盤石、事業は縮む市場の中で粘る」会社だ。堀、つまり他社がまねできない強みは、自前の配送網と、首都圏に集めた顧客の密度にある。
強みは三つある。一つ目は、基地から顧客へ直接運ぶ物流で、コストが業界平均より低いと会社は言う。二つ目は、後継者のいない小さな販売店のガス事業を預かる「総合管理」と卸で、数量を積み上げる力だ。三つ目は、借金がほぼ無い財務で、自己資本比率は77%に達する。
弱みも三つある。一つ目は、国内のLPガス需要が人口減とオール電化で、実質で年に1.6〜1.7%縮むことだ。二つ目は、ウォーターの利益率が人件費と物流費の上昇で、21%から18%に下がったことだ。三つ目は資本の効率で、ROEは過去10年の中央値で7%台と、資本コストの8%に届かない。
経営は、中期計画を毎年見直すローリング方式だ。1年前の版が2028年4月期に置いた営業利益23億円は、今の版で20.5億円に下がった。計画は控えめに読むのが妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
LPガスの市場は、数量が減り続ける成熟市場だ。国内の需要は人口減、オール電化、ガス機器の高効率化で、実質で年に1.6〜1.7%縮むと筆者は見る。価格は輸入価格と為替に連動し、物価の分は名目で上がる。2026年4月期は輸入価格の低下で売上が減った。
全面施行された改正省令は、ガス機器の無償貸与など、顧客を奪い合うための営業費を抑える。過当競争がやわらぐ追い風だが、永続すると決めつけない。トーエル自身も「お客さまの争奪戦は激しさを増している」と書く。
小売の主役は、全国に数多い中小の販売店だ。後継者が見つからない店が多く、岩谷産業などの大手と、トーエルのような地域の卸が、その顧客を引き取る。業界の再編が追い風になる一方、引き取るための営業権の取得に費用がかかる。
ボトルウォーターは、味への関心と高層マンションの増加で、堅調な市場だ。競争は広告と配送の効率で決まる。トーエルは、エネルギー事業と合わせて、ガス・電気・水のセット販売「ライフラインパッケージ」を進めている。取引先が増えるほど、配送の効率も上がる。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、現金の厚さと、自己株式を使う姿勢だ。配当性向は3割前後で、直近の予想は33%。2025年4月期には自己株式を12.6億円取得し、2026年6月にも市場外取引で買い付けた。会社は「自己資本比率のコントロール」と「機動的な自己株式取得」を、PBR改善の策に掲げる。
現金及び預金は65億円で、定期預金や有価証券(流動)はない。有利子負債はリース債務の7.7億円だけだ。投資有価証券は17億円、政策保有は9銘柄で、規模は小さい。
大株主は、MONY(11.8%)、ミナックス(8.3%)、個人株主、光通信(5.0%)、岩谷産業(4.6%)などだ。支配株主も親会社もいない。TOBや買収の対象になる可能性は、岩谷産業のような同業が絡む形で残る。
株主優待は、500株以上で自社製品が年2回届く。費用は年に1億円に満たず、還元の額には足さなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
トーエルは、縮む市場の中で数量を保つ、数少ない地域の会社だ。後継者のいない中小の販売店が増えるほど、「総合管理」と卸の取り分は広がる。改正省令で営業費の過当競争がやわらげば、低コストの配送が利益に変わる。
ウォーターは、ブランドの認知が進めば直販が伸び、広告費も薄まる。ハワイ産のミニボトルは、航空会社のハワイ便の機内でも採用されている。2027年4月期の予想は営業利益19億円と控えめだが、システム投資と車両購入で減価償却が増える分を織り込んだ数字で、投資が一巡すれば利益は戻る。中期計画の2029年4月期、営業利益22億円は十分に届く水準で、物価の分を価格に乗せて、利益率も8%台へ戻る。
さらに、会社は自己株式の取得を掲げる。PBR 0.7倍台の今、買い戻しは株主に報いる最も確かな手段だ。現金27億円ほどを自己株式に回すだけでも、1株あたりの利益は1割以上押し上がる。支配株主のいない会社なので、株主の声も通りやすい。
慎重な見方
LPガスは、人口減とオール電化で、数量が構造的に縮む。会社は営業権の取得で数量を保ってきたが、その費用は利益を削る。改正省令が営業費の優位を奪えば、低価格を売りにする会社の差も縮む。
ウォーターは、人件費と物流費の上昇を価格に乗せきれず、利益率が下がり続けている。OEMの減少も響いた。水の市場は堅調でも、広告費をかけて顧客を取る競争は終わらない。営業利益は過去12年、14〜23億円の枠の中で動いており、2027年4月期の予想も、減価償却と広告費の増加で19億円と減益を見込む。値上げの余地が乏しい中で、費用だけが先に増える形だ。物価が上がった10年後も、実質では今を下回るとみるのが自然だ。
中期計画は毎年下方修正されている。現金は厚いが、ROEが資本コストを下回る会社の現金は、寝かせるほど価値が減る。営業権の取得は、買った顧客が解約すれば、費用だけが残る。設備の更新費も物価で上がり、会計の利益ほど現金は残らない。
どちらに重みを置いたか
中立は、数量が小さく減り、物価の分が利益に残りきらない姿だ。現金と自己株式の取得が下を支えるので大きく負けにくいが、上に伸びる材料も乏しい。判断の分かれ目は、数量が保たれるかと、現金が株主に戻るかの二点だ。確率で重みをつけた価値は、今の値段をわずかに下回り、適正圏の上側と筆者は見る。逆に、自己株式の取得が加速し、数量が保たれれば、上に抜ける道も細くはない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 1,408 円259 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 391 円72 億円)。 今の値に割り戻すと 955 円176 億円、今との差 +5.3%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,593 円477 億円 | 619 円114 億円 | +254.1% | +13.5% | 193 円35 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,108 円388 億円 | 511 円94 億円 | +188.7% | +11.2% | 445 円82 億円 |
| 中立 | 37% | 1,717 円316 億円 | 435 円80 億円 | +137.3% | +9.0% | 796 円147 億円 |
| やや悲観 | 28% | 742 円137 億円 | 304 円56 億円 | +15.4% | +1.4% | 293 円54 億円 |
| 悲観 | 12% | 424 円78 億円 | 174 円32 億円 | −34.0% | −4.1% | 72 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,408 円259 億円 | 391 円72 億円 | +98.3% | +7.1% | 1,799 円331 億円 |
今の株価時価総額 907 円167 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 営業権取得が実り、水も伸びて、利益率が過去最高を超える 利益 30 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 2,593 円477 億円
中小の販売店の撤退が続き、総合管理と卸、営業権の取得で、LPガスの数量が実質で1割強増える。改正省令の効果で値引きの競争がやわらぎ、価格は物価を少し上回って通る。ウォーターはブランドの認知が進み、直販が伸びて、数量は3割増える。広告費は売上に対して薄まり、営業利益率は18%に戻る。全体の営業利益は40億円ほどで、率は9%と、過去12年の最高9.0%に並ぶ。会社は自己株式の取得を続け、還元は純利益の5割台半ばになる。現金の積み上がりも抑えられ、ROEは10%近くまで上がる。市場から見れば、縮む業界の中で例外的に伸びる地域の会社に見え、倍率も上がる。それでも、年間の需要の縮みは止まらない。
- エネルギー(LPガス・電力・器具・工事):数量 14.0(LPガスの販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 227(売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 318 億円・営業利益 35 億円。数量 14.00 万トン × 売値 227(円/キロ)、利益率 11.0%(本社の費用を配賦する前)
- ウォーター(宅配水):数量 832(ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定))× 価格 1,479(売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目))→ 売上 123 億円・営業利益 22 億円。数量 832 万本 × 売値 1478(円/本)、利益率 18.0%(本社の費用を配賦する前)
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 15.22 倍、時価総額 477 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:縮む市場で数量を増やし、ウォーターも伸び、物価の分も価格に乗せるという三つが重なる必要がある。連続して当たる筋書きなので、確率は低く置いた。
やや楽観 17% 数量を保ち、物価の分は価格に乗せる 利益 25 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,108 円388 億円
LPガスの数量は、業界の縮みを営業権の取得と総合管理で相殺して、実質で5%ほど増える。価格は物価並みに通り、エネルギー事業の利益率は10%台半ばを保つ。ウォーターは直販が伸びて、数量は2割弱増えるが、人件費の上昇で利益率は17〜18%にとどまる。営業利益は32億円ほどで、率は8%になる。本社の費用も物価で増えるが、システム投資が効いて、その伸びを抑える。会社は自己株式の取得を続け、還元は純利益の5割ほどになる。ROEは8%まで上がり、資本コストとほぼ同じになる。中期計画の7.5%は超えるが、新規事業の大きな利益は期待できず、堅実な会社として評価される。
- エネルギー(LPガス・電力・器具・工事):数量 13.1(LPガスの販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 222(売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 292 億円・営業利益 31 億円。数量 13.12 万トン × 売値 222(円/キロ)、利益率 10.5%(本社の費用を配賦する前)
- ウォーター(宅配水):数量 755(ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定))× 価格 1,447(売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 19 億円。数量 755 万本 × 売値 1447(円/本)、利益率 17.5%(本社の費用を配賦する前)
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 14.38 倍、時価総額 377 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改正省令と営業権の取得が効いて、数量を保てる姿。事業の質と財務の堅さを考えて、中立に次ぐ厚みで置いた。
中立 37% 数量は小さく減り、利益は物価に追いつかない 利益 21 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 1,717 円316 億円
LPガスの数量は、業界の縮みをほぼ営業権の取得で埋めて、実質で3%ほど減る。価格は物価並みに上がり、エネルギー事業の利益率は10%台前半で、今より少し薄くなる。ウォーターの数量は5%増え、人件費の上昇で利益率は17%を割る。本社の費用は物価で1.3倍に増え、営業利益は25億円ほどで、率は7%と、今とほぼ同じ水準に戻る。実質では、利益は今の9割ほどにとどまる。会社は配当性向を3割台に保ち、自己株式の取得を足して、還元は純利益の5割になる。現金は緩やかにたまり、ROEは7%弱にとどまる。大きな失敗も大きな成功もない、地味な10年になる。
- エネルギー(LPガス・電力・器具・工事):数量 12.1(LPガスの販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 217(売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 263 億円・営業利益 27 億円。数量 12.12 万トン × 売値 217(円/キロ)、利益率 10.3%(本社の費用を配賦する前)
- ウォーター(宅配水):数量 672(ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定))× 価格 1,415(売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目))→ 売上 95 億円・営業利益 16 億円。数量 672 万本 × 売値 1415(円/本)、利益率 16.8%(本社の費用を配賦する前)
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.5 倍、時価総額 293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:LPガスの数量は小さく減り、ウォーターは緩やかに伸び、人件費の上昇が利益率を削る標準の姿。最も厚く置いた。
やや悲観 28% 数量が縮み、費用の上昇を転嫁しきれない 利益 13 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 742 円137 億円
人口減とオール電化で、LPガスの数量は実質で1割強減る。営業権の取得を続けても、小さな販売店の撤退が一巡すれば、数量を保つ手が尽きる。価格は物価に届かず、エネルギー事業の利益率は9%を割る。ウォーターは人件費と物流費の上昇で、利益率が15%まで下がる。営業利益は14億円ほどで、2020年4月期の谷に近い水準へ戻る。本社の費用は物価で増え、固定費としてのしかかる。会社は配当を守るが、自己株式の取得は縮み、還元は純利益の4割台半ばにとどまる。余った現金は、設備の更新と営業権の取得に食われて、0.75倍に減る。ROEは4%台で、市場は低い倍率しか認めない。
- エネルギー(LPガス・電力・器具・工事):数量 11.0(LPガスの販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 211(売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 20 億円。数量 11.00 万トン × 売値 211(円/キロ)、利益率 8.8%(本社の費用を配賦する前)
- ウォーター(宅配水):数量 608(ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定))× 価格 1,373(売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 13 億円。数量 608 万本 × 売値 1373(円/本)、利益率 15.0%(本社の費用を配賦する前)
倍率:事業の ROE は純利益 12.9 億円(現金の利息を除く)÷自己資本(余った現金を除く)290 億円で 4.5%。k 7.5% を大きく下回るので、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。ROE÷k(0.56)は下限の 0.6 を割る。上限 12.5 倍に 0.6 と 9 割を掛けた 6.8 倍より少し高い 7.2 倍に置いた。余った現金は谷で食われて 0.75 倍とみた。
確率:電化の加速と、改正省令の効果の薄れが重なると、利益率が4%台まで下がる。中立に近い厚みで置いた。
悲観 12% 電化と値引き競争で数量が崩れ、利益が消える 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 424 円78 億円
構造的に負ける。電化が想定より速く進み、LPガスの数量は10年で3割減る。改正省令の運用が緩み、大手が首都圏で値引きを仕掛けて、価格は物価に届かない。エネルギー事業の利益率は6%台に落ちる。ウォーターは広告費が重くなり、数量は2割減って、率は11%まで下がる。本社の費用は物価で増え、営業利益はほぼゼロになる。配当は守れず、自己株式の取得も止まる。それでも借金は無く、現金、売掛金、投資有価証券が残るので、倒産は遠い。会社は事業を縮めて現金を返すか、同業に買われる道を探るしかない。株主は、市場が現金の価値さえ割り引く姿を見ることになる。
- エネルギー(LPガス・電力・器具・工事):数量 8.8(LPガスの販売数量(万トン、実質。推定))× 価格 187(売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目))→ 売上 163 億円・営業利益 11 億円。数量 8.75 万トン × 売値 186(円/キロ)、利益率 6.5%(本社の費用を配賦する前)
- ウォーター(宅配水):数量 512(ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定))× 価格 1,215(売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目))→ 売上 62 億円・営業利益 7 億円。数量 512 万本 × 売値 1214(円/本)、利益率 11.0%(本社の費用を配賦する前)
倍率:構造的に優良でなくなり、稼ぐ力は消える姿。この筋書きの営業利益はほぼ 0 で、純利益は 3 億円ほどにとどまり、稼ぐ力は純利益 ÷ k 7.5% ≒ 39 億円にしかならない。他方で、現金 64.9 億円・運転資本の回収・投資有価証券の税引き後から負債を引いた約 78 億円は残る。今の自己資本 220 億円に対する PBR 0.355 倍(時価総額 約 78 億円)に置いた。土地(帳簿 63.6 億円)は事業に使う資産なので床に入れない。
確率:電化が想定より速く進み、改正省令の効果も消えて、値引き競争が戻る構造的な負け。足元の利益は安定しているが、数量は縮む市場なので、1割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エネルギー(LPガス・電力・器具・工事)
LPガスの小売と卸、小さな販売店の事業を預かる総合管理。電力の小売、ガス機器、配管工事を含む。売上の4分の3。
| 数量LPガスの販売数量(万トン、実質。推定) | 価格売上を数量で割った1キロあたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 12.5 | 162 | 203 | 22 |
| 10 年後 中立 | 12.1 | 217 | 263 | 27 |
取り方:エネルギー事業の売上 202.8 億円・利益 21.69 億円(本社の費用を配賦する前、2026/04 期)。数量の開示は無く、2015/04 期の 12.2 万トンと、その後の「顧客数の増加で数量は前年並み〜増」の記述から 12.5 万トンと推定した。売上を割った売値は 162(円/キロ)で、電力・器具・工事の売上を含む。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
ウォーター(宅配水)
国産とハワイ産のボトルウォーターを、サーバー付きで家庭に届ける。OEM(他社ブランドへの供給)も含む。
| 数量ボトルの販売本数(万本、12リットル換算。推定) | 価格売上を本数で割った1本あたりの売値(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 640 | 1,056 | 68 | 12 |
| 10 年後 中立 | 672 | 1,415 | 95 | 16 |
取り方:ウォーター事業の売上 67.6 億円・利益 12.19 億円(率 18.0%)。本数の開示は無く、2015/04 期の 638 万本と、その後のOEMの減少・直販の増加の記述から 640 万本と推定した。売上を割った売値は 1 本あたり約 1,056(円/本)で、サーバーや器具の売上を含む。
リスクと懸念
LPガスの数量が想定より速く縮む
国内の需要は実質で年に1.6〜1.7%縮むと見る。トーエルは営業権の取得と総合管理で数量を保ってきたが、その源になる中小の販売店が尽きれば、数量は市場並みに減り始める。電化の加速は、売上の4分の3を占めるエネルギー事業に直接響く。
改正省令の追い風が薄れる
改正省令は、営業費を使った顧客の奪い合いを抑えた。この規制が緩めば、無償貸与や過大な値引きが再び広がり、低コストを武器にする会社の優位が薄れる。逆に、規制がさらに強まれば、小さな販売店の撤退が早まり、トーエルに追い風になる。
物価が利益に残りきらない
人件費と物流費は物価を超えて上がり、ウォーター事業の利益率は21%から18%へ下がった。価格を上げると顧客が離れ、上げなければ利益が削られる。売上が10年で3割増えても、営業利益は実質で減る恐れがある。
LPガスの仕入れ価格と為替
仕入れは輸入価格とドルで決まり、販売価格に転嫁するまでに時間差がある。2026年4月期は為替差益が経常利益を0.9億円押し上げた。差益は繰り返さないので、利益の質を見るときに差し引いた。
設備の更新費用の膨らみ
車両、タンクローリー、容器、メーターの更新費は物価で上がる。減価償却は取得時の値段のままなので、会計の利益が見かけ上ふくらみ、現金は細る。2027年4月期の予想も、減価償却の増加で減益を見込む。
現金が株主に届かない
現金は厚いが、ROEが資本コストを下回る間は、寝かせるほど価値が減る。自己株式の取得が止まり、営業権の取得や投資に使われれば、余った現金の価値を満額で見た前提が崩れる。
今後の分かれ目
- LPガスの販売数量が2年続けて前年を下回る
- 総合管理と卸の勢いが尽きたとみて、数量の縮みを中立に取り込み、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が8%を2期続けて超える
- 物価の分を価格に乗せられる力を確かめられたとして、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 自己株式の取得が年に5億円を超えて続く、または配当性向を4割台へ上げる
- 現金の戻りが実績で裏づけられたとして、余った現金の価値をより高く見て、倍率の置き方を上げる。
- 中期計画の営業利益が、また次の版で下方修正される
- 計画を信じず、中立の営業利益を下げ、悲観側の確率を増やす。
- 改正省令の運用が緩む、または大手が首都圏で値引き攻勢をかける
- 低コストの優位が消えるとみて、エネルギー事業の利益率を下げ、悲観を厚くする。
- 岩谷産業などの同業が買い付けに動く、または大量保有が増える
- TOBの可能性を材料に、上振れの確率を少し上げる。
見ておくもの
- エネルギー事業とウォーター事業の事業別営業利益と率
- LPガスの販売数量と顧客件数、営業権の取得
- 中期経営計画の毎期の見直しと達成率
- 減価償却と設備投資の差、車両・メーターの更新
- 自己株式の取得と配当性向、現金の残高
- 輸入価格と為替、改正省令の運用
倍率と資本コストの決め方
本稿は、ROE が資本コスト k 7.5%(基本 7.5% + quality 0.5%)を下回る前提で、倍率の上限を 1÷k の 12.5 倍に置き、ROE÷k で割り引いた。悲観は谷の PBR からでなく、現金と運転資本の回収、投資有価証券の税引き後から流した床で置いた。今の株価の PER から決めたわけではない。余った現金は、現金及び預金 64.9 億円からリース債務 7.7 億円と運転の緩衝 30 億円を引いた 27 億円で、戻り方は 0.75 とした。売掛金・在庫は事業の運転資金として使われる。土地 63.6 億円は事業に使う帳簿価格のまま数え、含み益は足していない。政策保有株の配当は利益に入っており、価値に重ねて足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→15.22 倍・やや楽観 PER 12→14.38 倍・中立 PER 10.6→13.5 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。同じ領域の2734サーラコーポレーションと同じ水準で、8174日本瓦斯(8.25%)より低い。日本瓦斯は電力と都市ガスの相場に利益が振れ、値決めの力も弱いため。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。