結論
アールビバンは、ホテルやイベントホールで版画・絵画を売る会社だ。年に845回の催事を開き、買った客の多くに自社グループの割賦を貸す。2026年3月期の売上は127億円、営業利益は27億円で、利益率は21%に達した。筆者の結論は、稼ぐ力は本物だが、景気と規制に弱く、本質価値は買付価格の6割強にとどまる、というものだ。
利益の半分近くは、割賦の金融事業が生んでいる。売上の14%にすぎないのに、利益は12億円ある。利益率は68%だ。つまり、絵が売れるほど貸出残高が増え、金利と手数料が積み上がる仕組みだ。
弱みは、需要が景気に左右される点だ。50万〜110万円の高額品で、買う理由は必需ではなく、気分と勧めに左右される。2017年3月期までは赤字の年も繰り返した。会社の計画も、2027年3月期は減収減益だ。
2026年8月には、会長兼社長が設立した会社によるMBO(経営陣による買収)が成立した。買付価格は時価総額に直すと約174億円で、株式併合で上場廃止となる。少数株主が受け取る値段は、この額で決まる。
分析上の価値はそれより低い。稼ぐ力は認めても、景気の山で利益が出ていると見るからだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、アールビバンは『稼ぐ力は強いが、その稼ぎが続くかが読めない会社』だ。
事業は10年後も残る。ただし、利益の質に注意がいる。高額品の催事販売は景気の山で膨らみ、谷で落ちる。2026年3月期の営業利益27億円は、その山にいる可能性が高い。
株主が自由に使える利益は大きい。営業利益27億円に対し、事業に要る投資は小さい。金融事業は残高が増えるぶん資金を使うが、それでも配当を出せていた。
資本の使い方は、堅い。借入は小さく、自社株買いで価値を壊した形跡はない。ただし、MBOの買収資金が会社に載れば、財務は一変する。
安全域は、中立でも薄い。稼ぎの質が景気の山である点を、倍率と確率に入れた。割賦の貸倒れが表に出る谷では、利益が大きく削られる。資本コストで割り引いた価値は、買付価格を下回る。
長く持つ株主から見れば、景気の谷でも金融の貸倒れが抑えられるかが、判断の軸になる。
何で稼ぐ会社か
アールビバンは、現代アーティストの版画や、イラストレーターの版画、油彩画を売る会社だ。事業は三つに分かれる。
中心はアート関連事業で、2026年3月期の売上は100億円、利益は13億円。ホテルやイベントホールで開く催事が主な売り場で、年に845回開く。内訳は自社企画が8割弱、店舗内が2割だ。主力商品の価格は50万〜110万円で、客の多くは信販会社のクレジットを使う。
金融サービス事業は、子会社のダブルラックが担う。買った客に個別信用購入あっせん、つまり割賦を貸す。契約残高は33億円で、売上18億円に対し利益は12億円もある。稼ぎの半分近くはここから出る。
健康産業事業は、ホットヨガ『アミーダ』22店とピラティス1店の運営だ。売上は9億円で、利益は1億円ほどにとどまる。
稼ぎ方は、新規の客を催事に呼び、高額品を売り、割賦で貸す流れだ。有価証券報告書は、新規顧客の獲得に主眼を置くと書く。つまり、客を増やし続けないと売上が保てない商売である。
2026年3月期は、売上が18%増え、営業利益が28%増えた。過去最高の水準だ。
優良さと弱いところ
優良さの核は、高い利益率と、売る場所を自前で作れる催事の仕組みにある。ただし、堀、つまり他社がまねできない強みは、見かけほど深くない。
強みは三つ。第一に、営業利益率が20%前後を保つ。2019年3月期から、毎年17%以上だ。第二に、金融事業が売上の14%で利益の46%を稼ぐ。客に貸すことで、絵の売上に加えて金利が入る。第三に、催事を自社で企画する力。会場の確保と集客は、同業が簡単にまねできない。
弱みは三つある。第一に、品物の値打ちを客が確かめにくい。版画は二次市場で売りにくく、買い手の満足が不安定になりやすい。第二に、高額品を対面で勧めて売る形は、特定商取引法や割賦販売法など、消費者保護の規制の影響を受けやすい。第三に、赤字の年が過去に6回あり、景気の波に弱い。
資本効率は並だ。過去10年のROEの中央値は8.5%で、2026年3月期は10.4%だった。
筆者は、利益率は優れているが、安定した稼ぎではなく、景気の山の稼ぎと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
版画と絵画の販売は、景気と客層に大きく左右される市場だ。
購入は必需ではなく、気分と勧められた雰囲気で決まる。景気が良く、客の懐に余裕がある時は、売上が大きく伸びる。2026年3月期の売上が18%増えたのは、その例だ。逆に景気が悪化すると、高額品から先に止まる。過去の赤字の年が、それを示している。
客層には構造の問題がある。若い層が催事で高額品を契約するトラブルは、業界全体で知られる。国の規制が強まれば、売り方を変える必要が出る。
値段は上がる。物価が年3%上がれば、品物の価格は名目で伸ばせる。ただし高額の趣味品なので、客が受け入れる値上げには限りがある。筆者は、10年で1.25倍ほどが限度と見る。
数量は、催事の回数と、1回あたりの来場者で決まる。販売員の確保が制約になる。人口は減り、客層は高齢化するので、回数は10年で横ばいか微減と見る。
競合は、百貨店のギャラリー、同業の催事販売会社、ネットのアート販売だ。ネットは、会場に来る客を奪う可能性がある。
割賦の金融事業は、借りる客が増えるほど残高が伸びる。貸倒れのリスクは、景気が悪化した時に表に出る。
資本政策と M&A
資本政策の最大の事件は、経営陣によるMBOだ。2026年7月、会長兼社長の野澤克巳氏が設立した会社が、公開買付けを発表した。
前回の買付けは、価格がこれより1割ほど低く、不成立に終わった。筆頭株主の牧寛之氏が応募しなかったためだ。今回は牧氏が全株の応募を表明し、応募は買付予定数の下限を上回って成立した。買付価格は、時価総額に直すと約174億円。DCF(将来の稼ぎの現在価値)の評価レンジの上限に近い。
資金は、三井住友銀行が最大127億円、みずほ銀行が最大33億円を出す。買収の借入が、のちに会社に移る形をとる可能性がある。
株式併合は2026年11月13日に効力が出る予定で、端数の株は買付価格で買い取られる。上場廃止となる。配当は2027年3月期は無配に決まった。2026年3月期は配当性向が32%で、その半分は特別配当だった。
筆者は、買付価格はDCFの範囲内で、フェアネス・オピニオンは取っていない点が気になると見る。ただし、前日の終値に1割ほど上乗せした額で、少数株主は手放す形になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
稼ぐ力は本物だ。営業利益率は2019年3月期から、毎年17%を超えている。コロナ後の2022年3月期以降も、20%を保った。2026年3月期は売上が18%、営業利益が28%伸びた。
金融事業が大きな武器になる。売上の14%で利益の46%を稼ぎ、利益率は68%だ。契約残高は前期比17%増え、貸出が積み上がるほど金利収入が増える。会社の計画でも、2029年3月期に金融の営業利益は13.5億円に増える。
催事は自社で企画でき、会場の確保と集客のノウハウがある。新規の客を取り続ける仕組みは、10年続いた。
借入は小さく、利払いの負担はほぼ無い。配当性向は2025年3月期に7割近くまで上げ、2026年3月期も3割を超えた。
景気が崩れなければ、この稼ぎは当面続く。非公開になり、四半期の開示から解放されれば、アーティストの入れ替えと新ジャンルの開拓に集中できる。
新しいアーティストを入れ替えながら客を取り続ける力は、この会社が40年かけて磨いた強みだ。景気が崩れない限り、稼ぎは当面続く。
慎重な見方
利益率は景気の山の姿だ。2012年3月期までは赤字の年が続き、2017年3月期にも赤字を出した。赤字の年は6回ある。2026年3月期の27億円は、売上が18%伸びた山の年の稼ぎにすぎない。会社自身が、2027年3月期は減収減益を計画している。
金融の利益率68%は、貸倒れが少ない好況の姿だ。景気が悪化し、返せない客が増えれば、貸倒引当金が一気に積み上がる。2026年3月期の増益の一因も、その引当金が減ったことだ。
売り方にも不安がある。高額品を対面で勧めて売る形は、消費者保護の規制が強まれば、続けにくくなる。販売員の確保も、人口減で難しくなる。客層は高齢化し、新規客を取り続けるのが年々難しくなる。
品物は二次市場で値が付きにくく、客の不満が強まれば解約や返品が増える。
MBOの買付価格は、会社自身のDCFの範囲内だ。つまり、会社の内部計画から見ても、今の値段は十分に高い。
版画の評判が落ちれば、新規客を取り続ける仕組みが逆回転する。客数が減れば、金融事業の残高も伸びなくなる。二つの利益源が同じ客に依存している点に注意がいる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。利益率が景気の山の水準であること、金融の貸倒れが好況で抑えられていること、会社自身が減益を計画していることが決め手だ。強気の見方の核は、割賦の金融事業が稼ぎを積み上げる点で、これは確かに強い。そこで、楽観の確率は小さくせず、悲観側は厚くしすぎなかった。中立は利益率が19%に下がる形で、悲観側を37%、楽観側を25%にした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,684 円246 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 592 円54 億円)。 今の値に割り戻すと 1,613 円148 億円、今との差 −14.2%、 期待の年率 +5.7%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,421 円405 億円 | 951 円87 億円 | +185.7% | +11.1% | 322 円29 億円 |
| やや楽観 | 19% | 3,676 円336 億円 | 798 円73 億円 | +138.0% | +9.1% | 850 円78 億円 |
| 中立 | 38% | 3,137 円287 億円 | 667 円61 億円 | +102.3% | +7.3% | 1,445 円132 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,816 円166 億円 | 437 円40 億円 | +19.9% | +1.8% | 541 円49 億円 |
| 悲観 | 13% | 710 円65 億円 | 197 円18 億円 | −51.8% | −7.0% | 118 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,684 円246 億円 | 592 円54 億円 | +74.3% | +5.7% | 3,276 円300 億円 |
今の株価時価総額 1,880 円172 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 景気が保たれ、催事と割賦がともに伸びる 利益 26 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,421 円405 億円
景気が保たれ、催事の回数は900回に増える。アーティストの入れ替えが当たり、新規客の獲得が進む。1回あたりの売上は物価並みに伸びる。
アート関連の営業利益率は15%に上がり、金融事業は残高が65億円に倍増する。貸倒れは抑えられ、利益率は68%を保つ。営業利益は42億円ほどで、会社の計画をはるかに上回る。
借入は小さいままで、配当は利益の4割ほどを払う。
非公開化後の経営は、アーティストの入れ替えと新ジャンルの開拓に集中できる。販売員の育成も進み、催事の質が上がる。規制の強化も大きな打撃にはならず、売り方の見直しだけで済む。
10年の終わりには、アート関連、金融、健康のいずれもが黒字で、会社全体の利益は今の1.5倍を超える。
- アート関連(版画・絵画の催事販売):数量 900(催事の開催数(回))× 価格 0.16(1回あたり売上(億円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 21 億円。催事900回、利益率15%
- 金融サービス(割賦・クレジット):数量 65.0(割賦の契約残高(億円・実質))× 価格 0.45(残高あたり年収益(比率・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 20 億円。割賦残高が倍増
- 健康産業(ホットヨガ・ピラティス):数量 25.0(店舗数)× 価格 0.54(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。ホットヨガは小幅に伸びる
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.65 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:景気の山が10年続き、規制も強まらない筋書きだ。実績は強いが、谷で赤字を出した歴史がある。そこで楽観は6%にとどめた。
やや楽観 19% 会社の計画に近く、催事と割賦が緩やかに伸びる 利益 22 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 3,676 円336 億円
催事の回数は850回で、1回あたりの売上は物価をわずかに下回って伸びる。アート関連の営業利益率は13.5%を保つ。
金融事業は残高が57億円に増え、会社の計画どおり、割賦債権の買取を増やす。貸倒れは抑えられ、営業利益は35億円ほどだ。
配当は利益の4割ほどを払い、ROEは7%台。資本コストにわずかに届かない。
非公開化後に、アーティストの再構成が進み、新規客の獲得が緩やかに続く。販売員の確保は課題だが、採用の強化で補える。規制の強化は小幅にとどまる。
10年の終わりには、金融事業の利益がアート関連を上回る。貸倒れが平常にとどまる限り、この構成は安定している。割賦債権の買取も、会社の計画に沿って進む。
- アート関連(版画・絵画の催事販売):数量 850(催事の開催数(回))× 価格 0.15(1回あたり売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 18 億円。催事850回、利益率13.5%
- 金融サービス(割賦・クレジット):数量 57.0(割賦の契約残高(億円・実質))× 価格 0.43(残高あたり年収益(比率・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 16 億円。割賦残高が57億円
- 健康産業(ホットヨガ・ピラティス):数量 22.0(店舗数)× 価格 0.54(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。ホットヨガは横ばい
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.03 倍、時価総額 280 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画は2029年3月期まで営業利益が27億円前後で、緩やかな成長を見込む。この延長にあたる筋書きで、19%とした。
中立 38% 景気の山から平常へ戻り、営業利益率は19%台にとどまる 利益 18 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 3,137 円287 億円
催事は800回に減り、1回あたりの売上は物価に届かず、10年で1.25倍にとどまる。アート関連の営業利益率は12%に下がる。
金融事業は残高が50億円に増え、会社の計画に沿った伸びを保つ。ただし残高あたりの収益は下がる。貸倒れは平常の水準に戻り、営業利益は14億円ほどになる。
全体の営業利益は29億円ほど。利益率は19%と、過去の山の水準を下回る。配当は利益の35%ほどを払う。ROEは6%台で、資本コストには届かない。
販売員の確保が制約となり、催事の回数は伸びない。新規客の獲得は続くが、景気の山で膨らんだ分が戻る。MBOの借入が会社の負担にならなければ、財務は今の堅さを保つ形だ。
10年の終わりには、金融事業の利益がアート関連とほぼ並ぶ。利益の質は今より金融に偏り、景気に弱い面は残る。
- アート関連(版画・絵画の催事販売):数量 800(催事の開催数(回))× 価格 0.15(1回あたり売上(億円・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 14 億円。催事800回、利益率12%
- 金融サービス(割賦・クレジット):数量 50.0(割賦の契約残高(億円・実質))× 価格 0.42(残高あたり年収益(比率・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 14 億円。割賦残高が50億円
- 健康産業(ホットヨガ・ピラティス):数量 20.0(店舗数)× 価格 0.54(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。ホットヨガは20店に縮む
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.38 倍、時価総額 219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が山の水準にあることを踏まえ、平常に戻る筋書きを最大にした。会社自身も2027年3月期の減益を計画している。そこで38%とした。
やや悲観 24% 景気が悪化し、催事と割賦がともに縮む 利益 10 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 1,816 円166 億円
景気が悪化し、催事は650回に減る。客の財布が縮み、1回あたりの売上は物価を下回る。アート関連の営業利益率は8%に下がる。
金融事業は、貸倒れが増える。残高は38億円にとどまり、利益率も62%に下がる。ホットヨガは赤字に近づく。
営業利益は17億円ほどで、今の6割だ。配当は利益の3割に減り、新規の出店や催事の拡大も止まる。
販売員の離職が増え、催事の質も落ちる。規制の強化で売り方に制約が出るが、事業は続く。MBOの借入が会社に移り、利払いが利益を少し削る。
10年の終わりには、金融事業の利益がアート関連の2倍近くになる。割賦の残高が縮む分、金利収入も減る。会社は金融への依存が高いまま、景気の回復を待つ形になる。
- アート関連(版画・絵画の催事販売):数量 650(催事の開催数(回))× 価格 0.14(1回あたり売上(億円・名目))→ 売上 91 億円・営業利益 7 億円。催事650回、利益率8%
- 金融サービス(割賦・クレジット):数量 38.0(割賦の契約残高(億円・実質))× 価格 0.40(残高あたり年収益(比率・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 9 億円。割賦残高38億円、貸倒れが増える
- 健康産業(ホットヨガ・ピラティス):数量 15.0(店舗数)× 価格 0.51(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。ホットヨガはほぼ損益ゼロ
倍率:ROE4%台は資本コスト8.25%を大きく下回る。稼ぎの力(純利益÷k)は約108億円で、これを今の自己資本162億円に対する倍率に直すと0.665倍になる。PBRは0.665倍を置いた。
確率:景気の谷が10年に一度は来る前提で、2017年3月期までの赤字の歴史も踏まえた。貸倒れが増える谷の筋書きとして、24%とした。
悲観 13% 規制の強化と景気の谷が重なり、催事販売が崩れる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 710 円65 億円
景気の谷と規制の強化が重なる。催事の回数は450回に減り、1回あたりの売上は大きく落ちる。アート関連の営業利益率は0%に近づく。
金融事業は貸倒れが急増し、利益率は50%に下がる。残高は25億円に縮む。ホットヨガは赤字になる。営業利益は5億円ほどだ。
配当は大きく減る。在庫の版画は二次市場で値が付かず、評価損が出る。自己資本も削られる。
客の満足は落ち、解約と返品が増える。MBOの借入が会社に移れば、利払いが重くのしかかる。事業の整理と、金融事業の売却を迫られる。
10年の終わりには、事業の中心は小規模な催事と割賦の回収に縮む。ホットヨガは売却され、アーティストの契約も整理される。株主に残る価値は、回収できる債権と在庫の一部だ。
- アート関連(版画・絵画の催事販売):数量 450(催事の開催数(回))× 価格 0.13(1回あたり売上(億円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 0 億円。催事450回、利益率0%
- 金融サービス(割賦・クレジット):数量 25.0(割賦の契約残高(億円・実質))× 価格 0.38(残高あたり年収益(比率・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 5 億円。割賦残高25億円、貸倒れが急増
- 健康産業(ホットヨガ・ピラティス):数量 8.0(店舗数)× 価格 0.48(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。ホットヨガは赤字
倍率:利益はほぼ消えるのでPERは当てない。今の自己資本162億円に0.4倍を掛けた。借入と返品・解約の負担を先に考える。
確率:消費者保護の規制の強化と、景気の谷が重なる、構造的な負けの筋書きだ。過去に赤字の年が6回あり、13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アート関連(版画・絵画の催事販売)
ホテルやイベントホールで版画・絵画を売る。年に845回の催事を開く。主力商品は50万〜110万円。
| 数量催事の開催数(回) | 価格1回あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 845 | 0.12 | 100 | 13 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.15 | 118 | 14 |
取り方:売上100億円を、催事の開催数845回で割り、1回あたり0.1185億円(約1,185万円)と置いた。1回あたりの売上は、来場者数と購入額の積で決まる。開催数は2026年3月期の実績。営業利益は13.4億円。
金融サービス(割賦・クレジット)
子会社のダブルラックが、購入者向けに個別信用購入あっせん(割賦)を行う。
| 数量割賦の契約残高(億円・実質) | 価格残高あたり年収益(比率・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.2 | 0.53 | 18 | 12 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 0.42 | 21 | 14 |
取り方:売上17.7億円を、割賦の契約残高33.2億円で割り、残高あたり年0.534と置いた。この比率には金利のほか手数料が含まれ、残高が増えると下がる傾向がある。営業利益は12.1億円。
健康産業(ホットヨガ・ピラティス)
ホットヨガ『アミーダ』22店とマシンピラティス1店を運営する。
| 数量店舗数 | 価格1店あたり年売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 23.0 | 0.40 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 0.54 | 11 | 1 |
取り方:売上9.2億円を、ホットヨガ22店とピラティス1店の計23店で割り、1店あたり0.402億円と置いた。営業利益は0.9億円。
リスクと懸念
景気の谷での需要の急減
高額の趣味品は、景気が悪化すると真っ先に止まる。過去に赤字の年が6回ある。2026年3月期の営業利益率21%は、山の水準で、谷では数%に落ちる恐れがある。
割賦の貸倒れ
金融事業は利益の46%を稼ぐが、客の多くは若い層で、景気が悪化すれば返済が滞る。2026年3月期の増益には、貸倒引当金が減った効果がある。引当が膨らめば、利益は大きく削られる。
消費者保護の規制の強化
高額品を対面で勧めて売り、クレジットで払わせる形は、特定商取引法・割賦販売法の対象になりやすい。規制が強まれば、売り方と解約の対応が変わり、売上が減る。
販売員の確保と客層の高齢化
催事は販売員の人数に縛られる。人口減で採用が難しくなり、新規の客層も狭まる。新規の客を取り続けないと、売上を保てない商売である。
MBOに伴う借入と財務の変化
買収資金は銀行から最大160億円が出る。この借入が会社に載ると、利払いが利益を大きく削る。非公開化後は開示も減り、外から状況を確かめにくくなる。
品物の値打ちと客の満足
版画は二次市場で売りにくい。買った後に値打ちを確かめた客の満足が下がると、解約や返品、悪い評判につながる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が20%を保ったまま売上が伸び続ける
- 景気の山ではなく、稼ぎが定着した形で、楽観の筋書きに近づく。
- 割賦の貸倒引当金が前期の2倍に膨らむ
- 金融事業の利益が大きく削られ、全社の営業利益は2割以上減る。悲観の筋書きに近づく。
- 特定商取引法などの規制が、催事販売に対して強化される
- 売り方の見直しで、催事の回数と1回あたりの売上が落ちる。悲観の筋書きに近づく。
- 催事の回数が毎年減る
- 新規客の獲得が追いつかない証拠で、売上の縮小が先に出る。
- MBOの借入が会社に移る
- 利払いが営業利益の2割を超え、財務の余裕が消える。
- 二次市場で値が付く作品が増える
- 客の満足が上がり、解約の少ない安定した稼ぎにつながる。
見ておくもの
- 催事の開催数と1回あたりの売上
- 割賦の契約残高と貸倒引当金
- 営業利益率(アート関連)
- 消費者保護の規制の動き
- 販売員の採用数と離職
- MBOの借入と利払い
- 株式併合の効力(2026年11月13日)
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の中立のROE(約6.5%)が資本コスト8.25%に届かない点から、式の上限(約9.3倍)の7.5割にあたる7.0倍と置いた。今の株価や買付価格は見ていない。買付価格と分析上の価値の比較は、答えが出た後に行ったもの。資本コストは、景気の谷の赤字の年が6回あることなどから、基本7.5%に1.75%を足した。10年後の数字は、会社が借りる店舗や会場の費用を営業費用に入れた今の形でそろえた。新リース会計は2028年3月期から適用され、営業利益は少し増え、借入に見える負債が増えるが、その形は使っていない。金融事業の借入は、金融の利ざやとして扱い、利払いの増減には入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.1→13.65 倍・やや楽観 PER 8→13.03 倍・中立 PER 7→12.38 倍・やや悲観 PBR 0.66→0.665 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。