結論
ジョイフルは、九州発のハンバーグを軸にした郊外型ファミリーレストランだ。国内外で約 670 店を持ち、4 割強がフランチャイズ(FC)である。
筆者の結論は割高である。10 年後の利益に妥当な倍率を掛けて今に引き直すと、本質価値は今の時価総額の半分ほどにとどまる。
今の利益は本物だ。2020 年に直営約 200 店を閉め、自己資本比率が 1%まで落ちた会社が、2026 年 6 月期に営業利益 46 億円、利益率 6.3%まで戻した。閉店と値上げに加え、直営の店を社員独立の FC に切り替え、本部の取り分を安定させた成果である。
ただ、その利益を 10 年続けても、今の値段には届かない。ファミレスは人口が減る国内の成熟市場で、店は増えない。FC 転換は利益率を一度は押し上げるが、そこから先の伸びしろは小さい。直近では客数も前年を割り始めた。
財務は、立て直しの途中にある。自己資本は 155 億円まで戻ったが、政策銀行の劣後ローンが残る。
強みは、値頃感、九州での根強い顧客、アプリ会員、そして立て直しを実行した運営力だ。堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるほどではない。潰れかけた会社を戻した実績は評価するが、払う値段には余裕がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「立て直しの実行力は評価できるが、まだ堀はなく、払う値段に余裕がない」。
事業の本質は、郊外の広い店で、安く、毎日使われる食事を出すことだ。再投資の先は限られるが、その分、利益がたまれば株主に戻せる。FC 転換は、本部が店の重い負担を持たずに稼ぐ形で、資本の使い方としては賢い。
一方、株主に残る利益、つまり再投資を引いたオーナー利益は、営業利益に近い。店の更新費用が毎年かかるが、ためた利益の使い道が少なく、自己資本の利益率は先で下がる。
経営は、2020 年の危機のときに店を絞り、立て直しを実行した。この実績は評価できる。ただし、同じ業態が再び波に襲われたとき、同じ手を打てるかは、まだ試されていない。
安全域の目で見ると、今の時価総額は、2026 年の利益がそのまま 10 年続くことを前提にしても、高い。ファミレスは構造的に縮む領域で、予測できない部分もある。確信度は下げて考えるべきだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、ハンバーグを軸にした郊外型のファミレスだ。国内では 37 都道府県に店があり、九州と中四国が地盤である。ハンバーグは 1 日に 10 万個を作る。
店の数は 2026 年 6 月末で 671 店。直営が 388 店、FC が 283 店である。2026 年 6 月期だけで、直営 82 店を社員独立の FC に切り替えた。FC の店は、本部に食材の販売とロイヤリティが入る。直営のように店の人件費と家賃を本部が負わない代わりに、1 店あたりの取り分は小さい。本部は利益が安定し、景気の波に強くなる。
店以外の売上も育てている。テイクアウトとデリバリー、量販店と通販向けの冷凍商品、アプリ会員 583 万人を使った販促である。新しい形の店も試している。駅や商業施設のフードコートに出す「JOYFULL EXPRESS」、郊外のカフェ「並木街珈琲」、中華麺の「麺屋いろどり」などだ。台湾にも 36 店を持つ。
子会社だったフレンドリーは、上場廃止に伴う買い取りで完全子会社にした。愛知には新しい工場を設け、中部から関西、関東へ広げる準備を進める。
2020 年の危機のあと、会社は直営約 200 店を閉め、店舗網を軽くした。今は、残った店で利益を取る形になっている。
優良さと弱いところ
優良さは「普通だが、立て直しの実行力は本物」と見る。
強みの第一は、値頃感と品ぞろえだ。ハンバーグを軸に、朝食から夜まで使える。安さを売りにする郊外型は、物価高の中で下方シフト、つまり高い外食から安い外食への移動の恩恵も受ける。2026 年の既存店の売上は、通期で前年の 108%まで伸びた。
第二は、会員の厚みだ。アプリは 583 万人が入れており、販促を自前で打てる。キャラクターとの組み合わせも 17 回重ねた。
第三は、仕組みの軽さだ。FC 転換で、本部の取り分は店の売上の波に左右されにくくなった。
弱みも多い。第一に、堀は浅い。ファミレスは、ガスト、サイゼリヤ、ロイヤルホスト、ココスなど競合が多い。安さと品ぞろえの両方で他社と並ぶのは難しい。第二に、財務の傷は癒えたばかりだ。2019 年と 2020 年に大きな赤字を出し、自己資本は一時ほぼゼロになった。2021 年には政策銀行から劣後ローンを受けた。第三に、客数だ。2026 年 6 月と 9 月の既存店は、客数が前年を割った。値上げが通る一方、客が戻らなくなる気配がある。
全体として、利益が数十年続くとは言えない。10 年先まで利益が守られる確度は普通とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、日本フードサービス協会によると 2023 年に約 24 兆円まで戻った。ただし人口が減るため、客数は伸びない。伸びるのは客単価、つまり値上げの分だ。
その中で、ファミレスは構造的に厳しい。郊外の大きな店は家賃と人件費が重く、客は低価格のチェーンと中食に流れている。物価が年 3%で上がる世界では、人件費の上昇がそのまま店の利益を削る。
競合は、ガストを持つすかいらーく、イタリアンのサイゼリヤ、ココスを持つゼンショー、ロイヤルホストのロイヤルホールディングスなどだ。ハンバーグでは、びっくりドンキーやブロンコビリーもある。ジョイフルは、九州と中四国で店が密になっており、地盤は固い。ただし、その地域は人口の減りが早い。
成長の領域は三つある。一つは、FC 転換。本部の負担を軽くし、加盟者の努力で店を増やす。二つ目は、テイクアウトと通販。店の外で稼ぐ道を増やす。三つ目は、中部から関東への展開で、愛知の新工場がその足がかりになる。
逆風は、人件費の上昇と、輸入食材の高騰だ。150 円の世界では、原材料のコストが物価以上に上がりやすい。パートの確保も年々難しくなる。
業界の分かれ目は、客数が減る中で、値上げと FC 転換で利益を守れるかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は、配当が小さい。利益に対する配当の割合は 1 割台とみられ、自己資本の回復が優先されている。会社も、自己資本力の回復に言及している。
財務の履歴を見ておく必要がある。2020 年 9 月に 107 億円の協調融資枠を組み、2021 年 6 月には政策銀行などから 40 億円の劣後ローンを受けた。これで上場を維持し、2021 年 6 月期は最終黒字に転じた。劣後ローンは今も残るとみる。
買収は、子会社のフレンドリーを完全子会社にした程度で、大型の M&A は見られない。FC 転換を進めるため、2026 年 11 月の株主総会に定款の変更を付議する予定である。
10 年以内の TOB の確率は、kabufu の参考値で 2 割余り。ただし筆頭株主の持分など支配の状況を確認できておらず、ここでは確率に織り込まない。
株主優待は、100 株以上で食事の割引券を年 2 回出す。年間の費用は 1 億円に満たないと推定し、10 年の還元への上乗せは小さいので、ここでは数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2020 年に直営約 200 店を閉めた会社が、2026 年には営業利益率 6%台まで戻した。これは偶然ではなく、値上げ、店の絞り込み、FC 転換が全て効いた結果だ。2026 年 6 月期だけで 82 店を FC に切り替えた実績もある。
本部は FC から食材とロイヤリティを受け取り、店の家賃と人件費を負わない。FC が増えるほど利益は安定し、景気の波に強くなる。社員独立の FC は、現場を知る人が自分の店として運営するので、店の質も保たれる。
会員基盤は厚く、アプリは 583 万人が使う。販促を自前で打てる強みは、他のチェーンが簡単にまねできない。キャラクターとの組み合わせも 17 回重ね、若い客を呼び込めている。
愛知の新工場は、中部から関西、関東への展開の足がかりになる。九州では密な店舗網を持ち、新しい地域でも同じ食事を同じ値段で出せる。テイクアウトや量販店向けの商品も育ち、店の外で稼ぐ道も増えた。
人件費の上昇は値上げと工場の効率化で吸収できる。自己資本が回復した今、劣後ローンの返済も進み、配当を増やせる段階に入る。
慎重な見方
今の利益は、2020 年の危機の後の、閉店と値上げで出した利益だ。営業利益率 6.3%は過去 12 年で最良の水準で、続くかどうかは確かめられていない。
客数は既に落ちている。2026 年 6 月と 9 月の既存店は、売上が増えたのに客数は前年を割った。値上げで売上を保っているだけで、客が戻っていない。
FC 転換には限りがある。直営が減れば、切り替える店が減り、本部の取り分の伸びは止まる。FC の加盟者が人手不足で撤退すれば、本部の収入も細る。
財務の傷は癒えたばかりだ。2019 年と 2020 年の赤字で自己資本は一時ほぼゼロになり、政策銀行の劣後ローンで持ちこたえた。同じことがまた起きれば、今度は助けが来る保証はない。
さらに、ファミレスは構造的に縮んでいる。郊外の広い店は家賃と人件費が重く、低価格チェーンと中食に客が流れる。九州と中四国は人口の減りが早い。台湾も小さく、全体を支えるほどではない。
今の時価総額は、この利益が続くことを前提にしている。前提が崩れれば、倍率は縮む。
どちらに重みを置いたか
立て直しの実行力と FC 転換の仕組みについては、強い見方に説得力がある。一方で、客数の前年割れと、利益率が過去の山に並んだだけの現状、そして財務の傷という慎重な見方の指摘も的を射ている。
確率は、中立よりやや悲観側に寄せた。この利益を 10 年続けるには、客数の回復と FC の担い手の増加が必要だからだ。
中立の営業利益率は 6%手前にとどめ、過去の山を超えないと置いた。自己資本は積み上がるが再投資先が乏しく、自己資本の利益率は下がる。計算の結果、10 年後の中立でも今の時価総額を下回り、還元を足しても差は埋まらない。総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,446 円447 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 358 円111 億円)。 今の値に割り戻すと 861 円266 億円、今との差 −34.7%、 期待の年率 +3.2%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,635 円815 億円 | 504 円156 億円 | +138.1% | +9.1% | 251 円78 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,990 円616 億円 | 446 円138 億円 | +84.8% | +6.3% | 512 円158 億円 |
| 中立 | 33% | 1,761 円545 億円 | 401 円124 億円 | +64.0% | +5.1% | 713 円221 億円 |
| やや悲観 | 26% | 805 円249 億円 | 294 円91 億円 | −16.6% | −1.8% | 286 円88 億円 |
| 悲観 | 12% | 226 円70 億円 | 129 円40 億円 | −73.1% | −12.3% | 43 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,446 円447 億円 | 358 円111 億円 | +36.9% | +3.2% | 1,804 円558 億円 |
今の株価時価総額 1,318 円408 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% FC が国内 450 店に広がり、利益率が山を超える 利益 45 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 2,635 円815 億円
社員独立のFC がさらに広がり、国内の FC は 450 店規模になる。直営は 300 店に絞られ、本部は食材とロイヤリティで稼ぐ会社に近づく。値上げは物価並みに通り、アプリ会員を使った販促で客数も落ちない。テイクアウトや量販店向けの商品も育ち、台湾は店を増やす。本部の費用は売上ほど増えず、営業利益率は 7%台に上がり、過去の山を超える。ただし、そこまで伸ばすには、人手不足の中で FC の担い手を増やし続ける必要がある。自己資本は厚みを増し、配当も増やせる。ジョイフルは、危機から再生した会社の中でも優等生と評価される 10 年になる。
- 直営店(台湾・食品販売を含む):数量 300(直営店の年平均店数(店))× 価格 2.06(1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額))→ 売上 619 億円・営業利益 31 億円。直営の年平均 300 店・1 店売上の指数 1.40
- FC 向け(食材販売・ロイヤリティ):数量 450(FC の年平均店数(店))× 価格 0.53(1 店あたり本部の年間取り分(億円))→ 売上 239 億円・営業利益 50 億円。FC の年平均 450 店・本部の取り分の指数 1.40
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.75 倍、時価総額 709 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:FC を 450 店まで広げて、さらに利益率が山を超えるには、人手不足の中で担い手が増え続ける必要がある。再生途上の会社の実績からは遠く、1 割未満にした。
やや楽観 21% FC 転換が進み、利益率は過去の山に並ぶ 利益 35 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 1,990 円616 億円
直営から FC への切り替えが予定どおり進み、FC は 380 店、直営は 320 店になる。値上げは物価並みに通り、客数は人口の減少で少し細る。本部の取り分が安定するため、利益は売上より早く伸び、営業利益率は 6%台に乗る。台湾と他業態は小さな柱にとどまる。人件費と食材費の上昇は、中央工場の効率化と値上げで吸収される。ただし、新しい FC の加盟者が増えにくくなる後半の数年は、転換のペースが鈍る。利益は伸びるが、過去の山を大きくは超えない。自己資本は 400 億円に届かず、配当は少しずつ増える。
- 直営店(台湾・食品販売を含む):数量 320(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.98(1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額))→ 売上 632 億円・営業利益 25 億円。直営の年平均 320 店・1 店売上の指数 1.34
- FC 向け(食材販売・ロイヤリティ):数量 380(FC の年平均店数(店))× 価格 0.51(1 店あたり本部の年間取り分(億円))→ 売上 193 億円・営業利益 41 億円。FC の年平均 380 店・本部の取り分の指数 1.34
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.87 倍、時価総額 520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:FC 転換は 2026 年に 82 店を実行した実績があり、この道筋は現実的。ただし利益率が山に並ぶだけで終わると見て、2 割余りにとどめた。
中立 33% 中立:店数は横ばい、FC 転換で利益率は 6%手前に定着 利益 31 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,761 円545 億円
店の数はほぼ横ばいで、直営と FC が同じ 330 店ずつになる。値上げは物価の 3 割増に届かず、客数は人口とともに少しずつ細る。FC 転換で本部の取り分は安定するが、転換が一巡すると利益率の改善は止まる。営業利益率は 6%手前で落ち着き、過去の山の 6.3%を超えない。人件費の上昇は値上げと中央工場の効率化でほぼ吸収される。台湾は小さな黒字にとどまる。自己資本は利益の積み上げで厚くなるが、事業への再投資先が限られ、自己資本の利益率は 9%前後に下がる。配当は利益の 4 割を目安に増える。立て直しの成果が定着した、堅実なファミレスの 10 年である。
- 直営店(台湾・食品販売を含む):数量 330(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.92(1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額))→ 売上 632 億円・営業利益 25 億円。直営の年平均 330 店・1 店売上の指数 1.30
- FC 向け(食材販売・ロイヤリティ):数量 330(FC の年平均店数(店))× 価格 0.49(1 店あたり本部の年間取り分(億円))→ 売上 163 億円・営業利益 36 億円。FC の年平均 330 店・本部の取り分の指数 1.30
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.8% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.46 倍、時価総額 448 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数の横ばいと FC 転換の一巡という落としどころ。慎重な言い分のほうが数字の裏づけが厚いので、確率の重心をやや下に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:客数が戻らず、値上げ頼みで利益が細る 利益 21 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 805 円249 億円
既存店の客数が戻らず、値上げ頼みの売上になる。客単価を上げすぎれば客が離れ、1 店あたりの売上は物価の 2 割増にとどまる。FC は 280 店に増えるが、直営が思うように FC へ切り替わらず、本部の取り分は伸びない。直営の営業利益率は 3%まで下がり、人件費の上昇がそのまま利益を削る。台湾は赤字が続き、整理の対象になる。営業利益率は 4%台に戻り、過去の平均並みになる。自己資本は積み上がるが、再投資先が乏しく、自己資本の利益率は 6%台に落ちる。配当は据え置かれる。九州の地盤を守る力は残るが、中部や関東への展開は止まり、愛知の新工場は稼働率が上がらず、費用だけが重くのしかかる。
- 直営店(台湾・食品販売を含む):数量 350(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.77(1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額))→ 売上 619 億円・営業利益 19 億円。直営の年平均 350 店・1 店売上の指数 1.20
- FC 向け(食材販売・ロイヤリティ):数量 280(FC の年平均店数(店))× 価格 0.46(1 店あたり本部の年間取り分(億円))→ 売上 128 億円・営業利益 26 億円。FC の年平均 280 店・本部の取り分の指数 1.20
倍率:ROE 6.4%(純利益 21 億円 ÷ 自己資本 329 億円)は k 8.75% に届かず、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ROE が k を下回り、利益の質も落ちるため、上限の 7 割へは引き上げず 8 倍(上限の 6.8 割)に置いた。
確率:直近の既存店の客数は前年を割り、利益率が過去の最良を維持する前提は置きにくい。客数減が続く筋書きを 4 分の 1 に置いた。
悲観 12% 悲観:薄い利益率のまま、また財務が痛む 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 226 円70 億円
人手不足とロードサイドの客の減少で、直営は 300 店、FC は 200 店に細る。値上げをしても客数が戻らず、1 店あたりの売上は物価の 1 割増にとどまる。直営の営業利益率は 1%未満に落ち、家賃と人件費が固定の約束として残る。FC の加盟者の撤退が増え、本部の食材とロイヤリティの収入が細る。2020 年の再現になり、閉店の費用が重なって、また財務が痛む。配当は大きく削られる。それでも店と工場が全て消えるわけではなく、再編や事業売却で一部の価値が引き出される余地は残る。創業家の持分など支配の状況は確認できておらず、少数株主に価値が戻るかは読めない。2020 年の危機のときは、直営の約 200 店を閉めて立て直した。同じ手がもう一度使えるとは限らない。
- 直営店(台湾・食品販売を含む):数量 300(直営店の年平均店数(店))× 価格 1.62(1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額))→ 売上 486 億円・営業利益 2 億円。直営の年平均 300 店・1 店売上の指数 1.10
- FC 向け(食材販売・ロイヤリティ):数量 200(FC の年平均店数(店))× 価格 0.42(1 店あたり本部の年間取り分(億円))→ 売上 84 億円・営業利益 13 億円。FC の年平均 200 店・本部の取り分の指数 1.10
倍率:悲観の稼ぐ力は純利益 1 億円未満 ÷ k 8.75% とごく小さい。そこで売れる資産の税引き後(約 70 億円)を床とみて、今の自己資本 155 億円に対する PBR 0.45 倍で測った。店の内装は売れず、価値は工場、自社の所有地、敷金の返還にしかない。家賃と借入の約束は先に払う。純有利子負債は 19 億円で、EV ÷ 営業利益で見ても倍率は 20 倍前後に収まり結論は変わらない。
確率:2020 年に実際に起きた筋書きで、財務の傷は癒えたばかり。劣後ローンも残るので、構造的に負ける筋書きは 1 割を超える確率で残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店(台湾・食品販売を含む)
ジョイフルほかの直営のファミリーレストランと、台湾の店、テイクアウト・量販店向けの食品販売。店は賃借が多く、家賃は固定の約束。
| 数量直営店の年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円。台湾・食品販売を店に割り付けた額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 425 | 1.47 | 627 | 31 |
| 10 年後 中立 | 330 | 1.92 | 632 | 25 |
取り方:2026 年 6 月期の売上 727 億円から、FC 向けの取り分(下記)を引いた 627 億円を、期首の約 460 店と期末 388 店の平均 425 店で割った。台湾と食品販売の売上は区分の開示が無く、直営の 1 店に割り付けた。利益は開示が無く、店の営業利益率 5%と推定し、本社費を調整に分けた。先の 1 店売上は物価 1.34 倍を基に、客数の減少を入れて中立 1.30 倍に置いた。
FC 向け(食材販売・ロイヤリティ)
社員独立などのフランチャイズ店に食材を販売し、ロイヤリティを受け取る本部の事業。
| 数量FC の年平均店数(店) | 価格1 店あたり本部の年間取り分(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 265 | 0.38 | 101 | 25 |
| 10 年後 中立 | 330 | 0.49 | 163 | 36 |
取り方:期首の約 247 店と期末 283 店の平均 265 店に、1 店あたりの本部の取り分を 0.38 億円(食材の販売と使用料。開示は無く、FC 店の売上の約 3 割と筆者が推定)として置いた。利益率は食材の粗利と使用料から約 25%と推定。先の 1 店の取り分は中立で物価並みの 1.30 倍に置いた。
リスクと懸念
既存店の客数の減少
2026 年 6 月と 9 月の既存店は、売上が増えたのに客数が前年を割った。値上げで売上を保っている状態で、客単価の伸びが止まれば売上も落ちる。ファミレスは低価格チェーンと中食に客を取られやすい。
人件費と食材費の上昇
パートの確保は年々難しくなり、最低賃金は上がり続ける。郊外の大きな店は人手が要り、輸入食材は 150 円の世界で物価以上に上がりやすい。値上げで吸収できなければ利益率が削られる。
財務の傷と劣後ローン
2020 年に自己資本比率が 1%まで落ち、政策銀行の劣後ローン 40 億円で持ちこたえた。今は 45%に戻ったが、また赤字が続いたとき、同じ助けが来る保証はない。
FC 転換の限界と担い手
直営の店を FC に切り替えるほど、次に切り替える店は少なくなる。加盟者が人手不足で撤退すれば、本部の食材とロイヤリティの収入が細る。転換が一巡した後の成長が見えない。
地域と人口
地盤の九州と中四国は人口の減りが早く、店の数を増やすほど既存店と客を奪い合う。愛知から関西・関東への展開は、新しい地域で同じ値頃感が通るか未確認だ。
家賃とリース
郊外の店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束だ。新リース会計基準(2028 年 6 月期以降)で賃借が貸借対照表に載り、見かけの負債と自己資本比率が変わる。悲観では売上が落ちても家賃は残る。
今後の分かれ目
- 既存店の客数が前年比プラスに戻ったら
- 値上げと販促が客を呼び戻している証拠で、中立から強気側に重みを移してよい。
- FC が 350 店を超え、直営が 330 店を割ったら
- 転換が計画以上に進み、利益率の山を超える筋書きの確率を上げる。
- 営業利益率が 2 年続けて 6.5%を超えたら
- 改善が定着した合図で、中立の利益率を引き上げて見直す。
- 既存店の客数が 2 年続けて前年を割ったら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。値上げの余地が尽きたと見る。
- 台湾の店の閉鎖や、FC の撤退が増えたら
- 海外と FC の拡大が規模だけで終わっているとみて、悲観側の確率を上げる。
- 劣後ローンの返済や借り換えで条件が悪くなったら
- 財務の傷が癒えていない合図で、悲観側に重みを移す。
見ておくもの
- 月次の既存店の売上・客数・客単価(前年比)
- 直営と FC の店数の推移
- 営業利益率(2026 年 6 月期の 6.3%を保てるか)
- 台湾と新しい形の店(フードコート・カフェ)の採算
- 自己資本と劣後ローンの残高
倍率と資本コストの決め方
直営と FC 向けの 2 区分で、店数(実質)× 1 店売上(名目)を積んだ。自己資本は今の 155 億円に期間の純利益を足して還元を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)から出した正当化 PER の 7〜10 割に置き、市場の倍率は使っていない。営業利益率は過去の山 6.3%以下に置いた。悲観の床は売れる資産の税後で置いた。店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束で、未経過リース料の額は未確認である。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形にそろえ、2028 年 6 月期からの新リース会計基準で見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→15.75 倍・やや楽観 PER 12→14.87 倍・中立 PER 11.8→14.46 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%に quality +1.0%を足した 8.5%。個別のリスク(客数の減少・FC の担い手・財務の再悪化)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で自己資本比率も 45%に戻ったので、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.75%。