結論
パルグループは、若い女性向けの衣料ブランドと、雑貨店3COINSで稼ぐ会社だ。筆者の結論は「適正」で、本質価値は今の時価総額を1割弱下回るだけにとどまる。
3COINSは2018年ごろに200店前後で頭打ちになった。そこから大型店と食品も扱う新しい型で立て直し、売上を倍にした。衣料はECが売上の4割に届き、会員は1,300万人を超える。売上は5年連続、営業利益は4年連続で過去最高になった。
ただし、堀(他社がまねできない強み)は深くない。流行の商売で、客が次の店へ移る費用はほぼゼロだ。店の家賃は不況でも払う固定の約束で、純現金が約840億円あっても見かけほど安全ではない。創業家が株の3割強を持つため、現金の戻りも遅れやすい。
10年の中立は、店とECが成熟し、利益率が今よりやや下がる筋書きだ。それでも物価の分だけ利益は大きくなり、今の値段は大きく割高でも割安でもない。強気の筋書きが実現すれば今の2倍を超えるが、勢いが止まれば大きく下がる。幅の広い会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の利益は「良いが、長持ちしにくい利益」だ。
良い点は、3COINSの立て直しが本物だったことだ。同じ名前の店が、価格帯と店の型を変えて、売上を倍にした。経営が、顧客を見て商売を変える力を持っている。また、純現金が厚く、借金に頼らず出店できる。
悪い点は、堀の浅さだ。ブランドは強いが、商品は流行で決まる。客が「次」に移る費用はゼロに近い。10年後も今の利益率を保てる確信は持ちにくい。家賃という固定の約束もある。景気が崩れると、利益が一気に消える構造だ。
資本の使い方は、堅実に見える。ただ、純現金を積み上げているのに、株主への戻りが遅れている点が気になる。創業家が3割強を持つので、少数株主が配分に声を上げにくい。
払う値段の安全域は、10年後の利益を保守的に置いた時の価値と今の時価総額の差で見る。その差は大きくない。良い会社だが、値段の余裕で守られているとは言えない。
何で稼ぐ会社か
パルグループは、若い女性向けのアパレルと、雑貨店「3COINS」の二本立てで稼ぐ会社だ。2026年2月期の売上は約2,350億円。衣料が6割強、雑貨が4割弱を占める。
衣料は CIAOPANIC・russet・BIRTHDAY BAR などの自社ブランドを持ち、店舗と自社EC、ZOZOTOWN で売る。ECは衣料売上の約4割に達し、アプリ会員は1,300万人を超えた。企画から販売まで自社でこなすSPA(製造小売)の形で、会員の購買データを次の商品づくりに生かしている。
雑貨の中核が3COINSだ。もとは三百円の均一ショップだったが、いまは税込三百三十円を中心に、三百円台を超える付加価値の高い商品も売る。2018年ごろは200店前後で頭打ちだった。そこから、大型店と食品も扱う新しい店の型、男性向けの品揃えで立て直し、約380店まで増えた。雑貨の営業利益は前期から5割近く伸び、会社全体の稼ぎ頭になりつつある。
海外は始まったばかりだ。2025年7月に香港、8月にクアラルンプールへ出店し、香港1号店は国内のどの店よりも売れたと会社は説明する。ただ、店数はまだ数店で、全体への寄与は小さい。
優良さと弱いところ
強みは、流行を読む力と、会員1,300万人のデータを持つことだ。衣料と雑貨を同じ客に売れるため、新しい店を出すたびに客を一から集める費用が低く済む。3COINSが約5年で売上を倍にしたのは、この力と、価格帯を広げる決断がかみ合った結果だ。
収益性は高い。営業利益率は2026年2月期で約12%、ROEは20%を超えた。純現金は約840億円ある。ただ、これは見かけほど安全ではない。店舗の賃借が多く、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。差入保証金だけで総資産の約9%に当たる。
弱みは三つある。第一に、流行を相手にする商売だ。3COINS自身が過去に伸び悩んだように、客の好みは移る。第二に、ECの手数料と広告費が利益を削る。ZOZOTOWN経由の売上は約280億円ある。第三に、経営は創業家に近い。創業家の資産管理会社が株の3割強を持ち、創業者は退任した。外部の目が経営を律する力は強くない。
筆者は、堀(他社がまねできない強み)は「普通」にとどめた。ブランドは強いが、10年先まで残るほどの独占力はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のアパレル市場は、約8.5兆円で緩やかに伸びている。ただ、人口は減り、客数は増えない。伸びているのは、値上げが通る会社と、ECで客を囲い込める会社だけだ。
同社の衣料の相手は、ユニクロ、しまむら、ZOZOTOWN に並ぶ他社ブランドだ。10〜20代向けには、中国発の超低価格EC、SHEINも割って入る。同社は価格では勝負せず、トレンドとブランドの世界観で選ばれる位置を狙う。それは当たれば利益率が高く、外れれば在庫が重く残る商売だ。
雑貨は、百円ショップが約1兆円市場を作った。ダイソー、セリア、キャンドゥが品質を上げて追い、無印良品やニトリの小物も同じ客を奪い合う。3COINSは「百円ショップより上、無印良品より下」の空き地を最初に取った。しかし、この空き地は広くない。ダイソーが三百円台の商品を増やせば、差は縮まる。
10年で見ると、国内は成熟する。伸ばせるのは、ECの比率と、大型店への入れ替え、そして海外だ。海外は香港・マレーシアが好調だが、現地の家賃と人件費、現地ブランドとの競争は国内と別物になる。
景気の波には弱い側に入る。リーマン級の不況では、衣料も雑貨も買い控えが起き、家賃だけが残る。
資本政策と M&A
株主還元は増やす方針だ。2026年2月期の終わりに実質の増配を出した。ROEで12%を安定して保つのが会社の経営指標で、実際の水準はそれを上回る。ただ、過去5年の純利益の累計に対して、純現金は大きく積み上がっている。還元が利益に追いついているとは言いにくい。
M&Aで事業を広げるタイプではない。出店と、ECのシステム、会員基盤への投資が中心で、買収で価値を壊すリスクは小さい。子会社のNOLLEY'Sなどを通じた、ブランドの買い増しは補完的だ。
創業家の資産管理会社が3割強を持つため、他社からのTOB(株式公開買い付け)は起きにくい。政策保有株は231銘柄に及ぶが、大半は小口で、価値は小さい。
経営の世代交代は論点だ。創業者の退任に際して多額の特別功労金が出た。創業家の影響が強い経営が、今後も資本を規律よく使えるかを見ておきたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
3COINSは、一度頭打ちを経験してから立て直した。大型店と食品付きの店の型は、国内でまだ入れ替えの余地がある。香港1号店が国内のどの店よりも売れたことは、商品がアジアでも通じる証拠だ。出店のたびに利益率も上がっている。
衣料は、会員1,300万人という、他のアパレルにはない資産を持つ。会員は2,000万人を目指す計画だ。衣料と雑貨を同じ箱で送る同梱配送が始まれば、客単価は上がり、送料の負担も下がる。ECは2030年度に1,000億円を目指しており、今の約1.7倍だ。
純現金は約840億円あり、借金なしで出店と成長投資を続けられる。物価が上がる世界では、値上げを自分で決められる商品が強い。三百円台を超える商品の定着は、その力の現れだ。経営計画は2029年2月期に売上3,000億円。今の約1.3倍で、無理な数字ではない。創業家が長期の目線で経営するため、短期の利益に流されずに投資できる。創業家が筆頭株主として残ることで、店の型を変える大きな決断も社内で素早く下せる。
海外の入口も開いた。香港とマレーシアで店を開き、香港の1号店は国内のどの店よりも売れたと会社は言う。国内の天井が見えても、アジアの都市部には同じ価格帯の空きがまだ広い。ここで当たりの型を見つければ、10年後の店数は大きく変わる。
慎重な見方
売上が倍になった3COINSは、もう「勢い」でなく「平常」を測る段階に入っている。国内の店は400店に迫り、同じ型の店がこれ以上増える余地は小さい。ダイソー、セリアが品質を上げ、無印良品とニトリの小物も同じ客を狙う。雑貨の利益が5割近く増えたのは、三百円超の商品に切り替えた一度きりの効果で、続くとは限らない。
衣料は流行で決まる。ECは売上の4割を占めるが、ZOZOTOWN経由は約280億円で、手数料は重い。自社EC投資は、ほかの専門店も同じ競争で膨らむ。SHEINのような超低価格ECが、10〜20代の客を奪う。
純現金は見かけほど安全ではない。店舗の家賃は固定の約束で、不況で売上が落ちても払い続ける。差入保証金も総資産の約9%ある。
創業家が3割強を握り、創業者は退任したが、外部の目は弱い。純現金の積み上がりに比べて還元が遅れており、少数株主が声を上げにくい。堀が浅い会社に、10年先まで同じ利益を期待するのは危ない。
海外も、数店の好調だけで語れる段階ではない。現地の家賃、人件費、現地ブランドとの競争は国内と別物だ。香港の好調が一時のご祝儀だったと分かれば、出店の計画は止まる。
どちらに重みを置いたか
筆者は、事業の強さについては強気の言い分を認める。3COINSの立て直しと会員基盤は実績で裏づけられている。一方、慎重な言い分の、堀の浅さ、家賃の重さ、現金の戻りの遅さも同じくらい強い。そこで確率は中立にいちばん厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて3割半まで取った。流行の商売は、勢いが止まった時の落ち込みが深いからだ。中立の10年後の時価総額は今を5割半ば上回るが、資本コストで割り戻して配当を足すと今を1割弱下回り、適正の範囲に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,746 円4,751 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 618 円1,069 億円)。 今の値に割り戻すと 1,763 円3,050 億円、今との差 +21.7%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,964 円8,590 億円 | 917 円1,586 億円 | +306.1% | +15.0% | 588 円1,018 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,030 円6,974 億円 | 771 円1,334 億円 | +231.6% | +12.7% | 1,056 円1,828 億円 |
| 中立 | 33% | 3,208 円5,552 億円 | 655 円1,134 億円 | +166.8% | +10.3% | 1,275 円2,206 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,171 円2,026 億円 | 494 円855 億円 | +15.0% | +1.4% | 383 円663 億円 |
| 悲観 | 12% | 289 円500 億円 | 224 円387 億円 | −64.6% | −9.9% | 62 円106 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,746 円4,751 億円 | 618 円1,069 億円 | +132.3% | +8.8% | 3,364 円5,821 億円 |
今の株価時価総額 1,448 円2,506 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% ブランドが世代を超えて定着 利益 400 億円 · PER 21.0 倍 · 株価時価総額 4,964 円8,590 億円
3COINSは大型店と食品付きの新しい型で国内の出店を続け、香港とマレーシアの成功を足がかりにアジアの主要都市へ広がる。10年後の店数は国内外で650店ほどになる。三百円台を超える付加価値の高い商品が定着し、値付けも物価以上に通る。衣料はCIAOPANICなど既存ブランドが若い世代の支持を保ち、自社ECと同梱配送でECの売上が実質で倍近くに伸びる。会員は2,000万人を超え、衣料と雑貨を同じ顧客に売る仕組みが利益率を押し上げる。創業家から次の経営陣への移行も円滑に進み、資本の使い方は今のまま堅実に保たれる。ここまで揃えば、ROEは20%台に乗り、利益は今の2倍を超える。
- 衣料事業:数量 1,730(店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数))× 価格 1.57(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,714 億円・営業利益 380 億円。営業利益率14.0%
- 雑貨事業(3COINS):数量 650(3COINS 店数(店))× 価格 3.19(1店当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,075 億円・営業利益 259 億円。営業利益率12.5%
倍率:事業の純利益 394 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 21.02 倍、時価総額 8,590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大型店の型と会員基盤が10年先まで続き、海外も当たる必要がある。実現すれば強いが、流行を相手にする商売で連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 3COINSの大型化と海外が伸び続ける 利益 336 億円 · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 4,030 円6,974 億円
3COINSは国内で大型店への入れ替えを続け、海外も香港・マレーシアに続く出店が当たって、店数は580店ほどに増える。1店当たりの売上は物価並みに伸び、利益率も11%台に改善する。衣料はタウン系のブランドが好調を保ち、ECは実質で7割ほど増える。会員の囲い込みが進み、同梱配送で客単価が上がる。経営の世代交代は問題なく進むが、衣料は流行の波があって、利益率は今より少し上がる程度にとどまる。利益は伸びるものの、飛び抜けて高い成長ではなく、堅実に積み上がる10年になる。1店ごとの売上は物価の分だけ伸び、店とECの数も増えるため、売上は今の1.8倍ほどになる。海外は小さいままだが、成功の型が見えたことで出店の速度が上がる。同社の経営陣は、売上の伸びと利益率の改善を両立させる姿勢を保つ。
- 衣料事業:数量 1,640(店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数))× 価格 1.55(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,535 億円・営業利益 337 億円。営業利益率13.3%
- 雑貨事業(3COINS):数量 580(3COINS 店数(店))× 価格 3.10(1店当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 1,798 億円・営業利益 201 億円。営業利益率11.2%
倍率:事業の純利益 330 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 20.2 倍、時価総額 6,974 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近5年の成長(売上は2倍近く、営業利益は3倍近く)が緩やかに続く筋書き。3COINSが実際に立て直した実績があるため、やや重く見る。
中立 33% 中立:伸びは続くが、店も客も成熟する 利益 277 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 3,208 円5,552 億円
3COINSは国内の出店余地が限られてくる。大型店への入れ替えで店数は520店ほどまで増えるが、客数は人口減で頭打ちになり、1店当たりの実質売上は横ばいに近い。値付けは物価に沿って上がる。衣料は店舗を増やさず、ECが実質で5割ほど伸びて全体を支える。利益率は人件費とEC手数料の上昇を値上げで吸収しきれず、今よりやや下がる。会員は2,000万人に近づくが、同じ顧客への販売は想定ほど増えない。総じて、どちらの事業も今の水準を保ちながら物価の分だけ大きくなる、成熟した優良企業の10年になる。海外出店は香港やマレーシアなど数か国の都市部にとどまり、全体の1割に届かない。創業家から次の経営陣への移行は大きな混乱なく進むが、投資の判断が速くなるわけでもない。純現金は積み上がるが、還元は利益の半分程度にとどまる。
- 衣料事業:数量 1,540(店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数))× 価格 1.52(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,345 億円・営業利益 293 億円。営業利益率12.5%
- 雑貨事業(3COINS):数量 520(3COINS 店数(店))× 価格 3.04(1店当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 1,581 億円・営業利益 158 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 271 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 19.35 倍、時価総額 5,552 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は成熟、海外は小さく、ECが伸びるという最も素直な読み。強気・慎重の議論の落としどころで、確率を最も厚くした。
やや悲観 23% 3COINSの勢いが止まり、流行に置いていかれる 利益 165 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 1,171 円2,026 億円
3COINSの国内店数は400店台前半で止まる。同じ価格帯にダイソーやセリアが品質を上げて迫り、無印良品やニトリの小物とも客を奪い合う。大型店は家賃が重く、利益率は6%台に戻る。海外は香港の好調が続かず、出店が止まる。衣料はECの手数料と広告費が膨らみ、利益率は1割を切る。値上げへの反発もあり、価格は物価に届かない。それでも赤字には落ちず、人件費の上昇で利益が削られる10年になる。純現金は残るが、店舗の家賃は固定費として残る。創業家の影響が強い経営は、勢いが落ちた時の判断が遅れやすい。純現金は残るので事業は続くが、成長株としての評価は後退する。
- 衣料事業:数量 1,380(店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数))× 価格 1.48(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 2,039 億円・営業利益 194 億円。営業利益率9.5%
- 雑貨事業(3COINS):数量 430(3COINS 店数(店))× 価格 2.92(1店当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 1,255 億円・営業利益 82 億円。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益161億円・事業 ROE 11.6%。RONIC=k 7.5%+1/2×(ROE−k)=9.9%、g 4% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.0倍。堀は普通で、流行と家賃の固定費があるため上限の約8割の11.2倍に置いた。
確率:流行を相手にする商売なので、勢いが止まる筋書きは実際に起こりうる。3COINSは過去に200店前後で伸び悩んだ実績があり、やや厚く見る。
悲観 12% 構造的に負ける:家賃だけが重く残る 利益 44 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 289 円500 億円
3COINSは流行から外れ、国内の店は330店ほどに縮む。以前に200店前後で頭打ちになった時期と同じことが、さらに深く起きる。安さを求める客はダイソーなどに、品質を求める客は無印良品に流れ、同社の価格は物価についていけず下がる。衣料もSHEINなど超低価格のECに押され、店を閉めても家賃が先に重く残る。営業利益率は3%まで落ち、自社EC投資の元も取れない。創業家支配のもとで、経営の判断が遅れる。純現金は食い込まれ、事業は優良さを失って、ただの平凡な専門店グループに戻る。利益は今の3分の1にも届かず、強かった時の面影は店名だけになる。
- 衣料事業:数量 1,150(店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数))× 価格 1.37(店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 1,576 億円・営業利益 63 億円。営業利益率4.0%
- 雑貨事業(3COINS):数量 330(3COINS 店数(店))× 価格 2.67(1店当たり年間売上高(億円・名目))→ 売上 883 億円・営業利益 18 億円。営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益41億円・事業 ROE 4.1% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=12.1倍。構造的に競争劣位のため上限の約7割の8.5倍に置き、余った現金は半分に目減りした額を別に足している。
確率:10年で構造的に負ける複合的な筋書き。家賃が固定費として残り、創業家支配のため判断が遅れる点も重なるが、衣料と雑貨が同時に崩れる確度は高くない。quality と同じ理由では上げ下げしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
衣料事業
CIAOPANIC・russet・BIRTHDAY BAR などの自社ブランドを、店舗と自社EC・ZOZOTOWNで売る。EC は衣料売上の約4割。
| 数量店舗換算の数(実店舗+EC売上を店舗平均で割った店数) | 価格店舗1つ当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,274 | 1.14 | 1,448 | 189 |
| 10 年後 中立 | 1,540 | 1.52 | 2,345 | 293 |
取り方:衣料事業の売上1,448億円のうちEC は590億円。実店舗(約750店と推定)の1店当たり売上は約1.14億円で、EC を同じ額で割ると約520店分になるため、合わせて1,274店分。店数と EC の実質の伸びを数量に、物価3%は価格に入れる。店舗数は有報で確認できず推定。
雑貨事業(3COINS)
税込三百三十円を中心に、三百円台を超える付加価値の高い商品も売る雑貨店。雑貨事業の9割弱を占め、香港・マレーシアに出店した。
| 数量3COINS 店数(店) | 価格1店当たり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 395 | 2.27 | 896 | 83 |
| 10 年後 中立 | 520 | 3.04 | 1,581 | 158 |
取り方:雑貨事業の売上896億円を、約395店(2026/02の報道では約380店、400店に迫る)で割った。EC・海外・他ブランドの売上も混ざる。1店当たりの実質売上は大型化で伸びたが、先は横ばいと置き、物価3%は価格に入れる。
リスクと懸念
流行の変化と在庫
衣料は流行で売上が決まり、外れれば在庫が重く残る。3COINSも2018年ごろに200店前後で頭打ちになった。客の好みが移ると、利益は店数や売上の伸びより速く落ちる。
家賃という固定の約束
店舗の賃借が多く、家賃は不況で売上が落ちても払う。差入保証金は総資産の約9%。純現金が厚くても、見かけほど強い財務ではない。新リース会計基準でBSの形も変わる。
3COINSの国内飽和
店数は400店に迫り、同じ型の出店余地は縮む。ダイソーやセリアが品質を上げれば、価格帯の差も縮まる。海外は香港・マレーシアの数店だけで、全体を支えるには足りない。
ECの手数料と競争
ECは衣料売上の約4割で、ZOZOTOWN経由は約280億円。手数料と広告費で利益率が削られる。SHEINなど超低価格ECが若い客を奪う可能性もある。
創業家支配と世代交代
創業家の資産管理会社が株の3割強を持ち、創業者は退任した。外部の監視が効きにくく、資本の使い方に偏りが出る恐れがある。純現金の積み上がりに対して、還元が遅い点も気になる。
人件費と仕入れコスト
最低賃金の上昇で店舗の人件費は年3〜5%増える。円安で仕入れも重くなる。値上げで吸収できなければ、利益率が下がる。
今後の分かれ目
- 3COINSの既存店売上が2四半期以上続けて前年割れしたら
- 勢いが止まった可能性が高い。やや悲観・悲観の筋書きに重みを移す。
- 香港・マレーシアに続く海外出店が計画どおり増え、1店当たり売上が国内並みを保ったら
- 3COINSの数量の天井が上がる。やや楽観・楽観の確度を上げる。
- 衣料と3COINSの同梱配送でEC会員の購買額が目に見えて上がったら
- 会員基盤が利益率を押し上げる証拠。中立の利益率を上方に直す。
- 純現金が積み上がるのに配当や自社株買いが増えなかったら
- 余った現金の戻り方を0.5より下に見直す。
- ダイソーやセリアが三百円台の商品を本格的に増やしたら
- 3COINSの価格帯の優位が薄れる。値付けの前提を下げる。
- 不況で既存店売上が2割以上落ち、家賃が重くのしかかったら
- 悲観の筋書きに近づく。純現金の食い込みを見直す。
見ておくもの
- 3COINSの店数・既存店売上・海外店舗数
- 衣料のEC比率とZOZOTOWN経由の売上、会員数の推移
- 営業利益率(雑貨と衣料それぞれ)と粗利率
- 配当・自社株買いなどの還元と純現金の推移
- 創業家の持株比率と経営体制の変化
倍率と資本コストの決め方
衣料は店舗換算の数(実店舗+EC)×1店当たり売上、3COINSは店数×1店当たり売上で10年を積み、物価3%は価格に入れた。利益率は過去の最高水準(営業利益率約12%)より上に置かず、中立ではやや下げた。倍率は正当化PERの上限の約85%に置き、今のPER(約14倍)や同業の倍率は使っていない。悲観は家賃が固定費として残る構造から、稼ぐ力と売れる資産で床を置いた。新リース会計基準でBSが変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.7→21.02 倍・やや楽観 PER 14.8→20.2 倍・中立 PER 13.7→19.35 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。