結論
シュッピンは、マップカメラの名でカメラを、同じ仕組みで高級時計を、ネットを中心に売る専門店だ。売上は約 520 億円で、カメラが 8 割を占める。新品も扱うが、儲けの核は、買い取った中古品を検品して再び売る回転にある。
筆者の結論は、10 年先の価値は今の時価総額とほぼ釣り合い、適正というものだ。会社の質は高い。カメラ好きの会員が 75 万人を超え、ROE は過去 10 年の中央値で 21% ある。ただ、在庫を抱える商売で、利益は相場・為替・新製品の発売時期で大きく振れる。
直近は苦しい。前期は営業利益が 25% 減り、会社が 2025 年に出した中期計画の営業利益 34 億円に対し、実績は 25 億円だった。今期の第 1 四半期は、基幹システムの入れ替えでネット販売が止まり、カメラの利益が 3 割減った。
一方、株主への姿勢は前向きだ。前期は配当性向が 6 割に達し、自社株買いで約 185 万株を消却した。財務は堅く、自己資本比率は 57% だ。
筆者は、システムの混乱が一過性なら、利益は戻るとみる。ただ、戻る先は、会社が掲げる経常利益率 8% ではなく、5% 台と見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、シュッピンは資本の軽い良い商売だが、利益の安定という点では注意がいる。
良い点は三つある。ROE が高く、少ない資本で稼ぐ。会員基盤が厚く、買取の入口を持つ。株主への姿勢が前向きで、自社株買いと配当を続ける。
気になる点も三つある。ひとつは、在庫の相場リスクだ。仕入れた品の値段が下がれば、利益が飛ぶ。ふたつめは、経営の実行力だ。中期計画の営業利益は、前期に 3 割近く届かなかった。みっつめは、システムの混乱だ。基幹システムの入れ替えで、売上が止まり、特別損失まで出した。
株主のものになる利益は、設備投資が小さいので、純利益の 8 割ほどになる。年 14 億円前後だ。今の時価総額と比べると、10 年で利益が 1.6 倍になる中立の筋書きなら、価値は今の値段に近い。
払う値段に安全域があるかと問えば、薄い。ただ、会社が計画の数字を達成できない一方で、財務は堅く、悲観の筋書きでも赤字は出ない。ほぼ適正と見る。
何で稼ぐ会社か
シュッピンは「1 商材 1 店舗」を掲げる専門店の会社だ。カメラ(マップカメラ)、時計、筆記具の三つを、それぞれ専門のネットショップと店で売る。自転車は、2026 年 3 月末で撤退した。売上の内訳は、カメラ 407 億円、時計 104 億円、筆記具が数億円だ。
稼ぎの源は二つある。ひとつは中古品の買取と再販だ。顧客から買い取った品を検品して売ると、新品より粗利が高い。もうひとつは、会員を使った売り方だ。Web 会員は累計 75 万人で、毎月 4,600 人ずつ増える。AI を使って、会員ごとにすすめる品を変える仕組みを持つ。
店舗は東京都内に 4 店ほどで、実店舗は買取と接客の窓口の役割だ。売上の大半はネットで立つ。粗利益率は 19% 前後で、小売としては低いが、在庫の回転で稼ぐ。
新製品の発売が数量を左右する。カメラはメーカーが新型を出すたびに買い替えが起き、中古市場も動く。時計は、高級ブランドの相場と為替に影響される。海外の観光客向けの免税売上も、一部を占める。2026 年 4 月には、基幹システムを入れ替え、ネット販売を一時止めた。
優良さと弱いところ
シュッピンの強みは、カメラ好きの顧客基盤と、中古品の仕入れから販売までを回す仕組みにある。会員 75 万人は、買い取りの入口にも、販売の出口にもなる。中古品は、買い取る力があるほど品ぞろえが厚くなり、客がさらに集まる。動画で商品を見せる自社スタジオや、AI を使った在庫・価格・販促の運営も、他社と差をつける。
ROE は過去 10 年で 16〜40% と高く、中央値は 21% だ。自己資本が小さい割に利益を稼ぐ、資本の軽い商売だ。財務は堅く、純有利子負債は 28 億円で、利払いは小さい。
弱みは四つある。ひとつは相場だ。在庫はカメラ・時計の中古相場に左右され、仕入れ値が下がれば在庫の評価が目減りする。ふたつめは単一のネット経路への依存で、システムが止まれば売上が止まる。実際に今期、その形で減益になった。みっつめは中期計画の達成度で、前期は計画の営業利益の約 74% だった。よっつめは、営業利益率の波だ。12 年で 1〜7% の幅で動いた。
筆者は、堀は普通の会社と見る。会員基盤は強いが、競合のキタムラ、コメ兵、フリマアプリの存在があり、値段を決める力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カメラ・時計の中古市場は、リユース全体の拡大に乗る。国内のリユース市場は 2024 年に 3.3 兆円で、15 年続けて伸びた。政府は 2030 年に 4.6 兆円を掲げる。中古品は、節約志向と物価高で選ばれやすい。カメラは、ミラーレスと動画需要で新型の買い替えが活発だ。
一方、波も大きい。カメラは、新製品の発売時期で売上が動く。前期は、前の年の大型新製品の反動と、免税売上の減少で上期が落ち込んだ。時計は、高級ブランドの相場と為替に影響を受ける。米国の関税政策もブランド側の値付けに響いた。
競争は三つの方向から来る。ひとつは、全国チェーンのキタムラと、時計・ブランド品のコメ兵などの専門店だ。ふたつめは、メルカリなどのフリマアプリで、個人間取引へ品が流れる。みっつめは、メーカー自身の下取りと中古販売への参入だ。仕入れ(買取)の安定確保が、価格決定力の源泉になる。
人件費と物流費は上がるが、シュッピンは店舗が少なく、ネット中心なので影響は小さい。システムと広告のコストが、固定費の主役だ。
10 年では、カメラの数量はなだらかな増加、時計は横ばい、価格は物価並みに上がるとみる。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向を目安に、増配と自社株買いを組み合わせる。前期は、配当性向が約 6 割に達した。今期の会社予想は、配当性向 46% だ。さらに前期は、自己株を約 185 万株消却した。取得額は 6 億円ほどと推定する。
財務は、純有利子負債が 28 億円で、利払いは小さい。現金は約 13 億円と薄く、余った現金は無い。借入は、在庫を持つための運転資金だ。
投資は、基幹システムとデータウエアハウスの入れ替えが中心だ。前期は、開発計画の変更で、ソフトの減損 3.9 億円を特別損失とした。新しいシステムの償却が今期から増え、営業利益を押し下げる。
M&A の実績はほぼ無い。今のビジネスの領域は、カメラと時計の中古・新品で、買収で広げる意思は見えない。買収される側の確率は、推定で 10 年に 2 割ほどだ。
店舗が少なく、新リース会計の影響は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シュッピンの利益は、一時的な要因で押し下げられている。前期は、新製品の反動と免税売上の減少が重なり、今期はシステムの入れ替えで一時的にネット販売が止まった。これらは、稼ぐ力の衰えではない。第 4 四半期のカメラ売上は、過去最高だった。
新しいシステムが安定すれば、売上と利益は戻る。AI を使った在庫・価格・販促の仕組みと、75 万人の会員基盤は、そのまま残る。会社の計画は、2028 年 3 月期の営業利益を 44 億円としている。前期の 25 億円からの回復は、需要の戻りと新システムの効果で実現できる。
構造的な追い風もある。リユース市場は 15 年続けて拡大し、政府は 2030 年に 4.6 兆円を目指す。カメラはミラーレスと動画で買い替えが活発で、会員の数は毎月増える。
資本の効率が高い。ROE は 16% 以上で、利益の 6 割を配当で返し、自社株買いも行う。経常利益率 8% の目標が実現すれば、利益は今の 1.7 倍近くになる。
慎重な見方
利益の振れが大きい商売だ。営業利益率は 12 年で 1〜7% の間を動き、前期は 4.9% まで下がった。在庫の相場、為替、新製品の発売時期、免税売上のどれかが悪化するたびに、利益が飛ぶ。
中期計画は、前期の営業利益を 34 億円と置いたが、実績は 25 億円で、3 割近く届かなかった。経営の読みが甘いという見方もできる。基幹システムの入れ替えは、開発計画の変更で減損を出し、稼働後はネット販売の停止という形で売上を失った。ネットに依存する会社にとって、重い失敗だ。
競争は強まる。フリマアプリへ個人間の取引が流れ、メーカー自身が下取りと中古販売に乗り出し、仕入れの競争が厳しくなる。時計は相場と関税に翻弄される。
中古品は、買い取りの力で決まる。会員基盤は強いが、仕入れ値を自由に決められる力は無い。今の値段は、利益が戻る前提に立っている。\さらに、経営の実行力に疑問が残る。中期計画は 1 年目から未達で、システム投資は減損を出した。経常利益率 8%、ROE 30% という目標も、直近の数字からは遠い。会社の言葉を割り引いて見る必要がある。
どちらに重みを置いたか
直近の苦しさは一時的な要因が多く、会員基盤と財務の強さでは強気の見方が上回る。ただ、10 年という長さでは、利益の振れの大きさと、計画の未達という慎重な見方の指摘が重い。
確率は中立に 38% を置き、強気側(楽観とやや楽観)は 30%、悲観側(やや悲観と悲観)は 32% とした。同じ領域のリユースの会社より悲観をやや厚くしたのは、在庫相場の振れと、基幹システムという実行面の弱さを見たためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,094 円444 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 592 円126 億円)。 今の値に割り戻すと 1,401 円297 億円、今との差 +20.3%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,085 円867 億円 | 900 円191 億円 | +328.2% | +15.7% | 399 円85 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,084 円654 億円 | 749 円159 億円 | +229.4% | +12.7% | 843 円179 億円 |
| 中立 | 38% | 2,344 円497 億円 | 622 円132 億円 | +154.8% | +9.8% | 1,127 円239 億円 |
| やや悲観 | 22% | 814 円173 億円 | 424 円90 億円 | +6.4% | +0.6% | 272 円58 億円 |
| 悲観 | 10% | 189 円40 億円 | 259 円55 億円 | −61.5% | −9.1% | 45 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,094 円444 億円 | 592 円126 億円 | +130.8% | +8.7% | 2,687 円570 億円 |
今の株価時価総額 1,164 円247 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% システムが安定し、カメラ・時計とも伸び、利益率 7% に届く 利益 45 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 4,085 円867 億円
新システムが安定し、AI を使った在庫・価格・販促の運営が成果を出す。カメラは新型の買い替えと動画需要で数量が 10 年で 1.35 倍に増え、時計も海外・免税の需要で 1.3 倍になる。値段は物価と商品構成で 1.37 倍上がる。売上は 940 億円ほどになる。
営業利益率は、2022 年 3 月期の山 7.2% に近い 7.0% まで戻り、営業利益は 66 億円。会員は 150 万人を超え、買取の入口が厚くなる。会社は配当性向を 6 割で保ち、自社株買いも続ける。
競合のキタムラやコメ兵、フリマアプリは残るが、買取の入口を会員と動画で押さえるシュッピンが、中古の仕入れで優位に立つ。メーカーの下取りとも共存し、新品と中古の両方を売る強みが出る。海外の購入者も増え、免税と越境販売が利益に加わる。
- カメラ事業:数量 45.8(年間販売点数(万点、推定))× 価格 16(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 753 億円・営業利益 53 億円。数量 1.35 倍 × 値段 1.37 倍、営業利益率 7.0%
- 時計事業:数量 1.9(年間販売本数(万本、推定))× 価格 96(1 本あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 185 億円・営業利益 13 億円。数量 1.30 倍 × 値段 1.37 倍、営業利益率 7.0%
- 筆記具ほか:数量 2.4(年間販売点数(万点、推定))× 価格 2.74(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.61 倍 × 値段 1.37 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.27 倍、時価総額 863 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:システムの安定、新製品の連続、相場と為替の追い風が 10 年にわたり重なる必要があり、確率は低い。
やや楽観 22% システムが安定し、利益率が 6% 台まで回復する 利益 35 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 3,084 円654 億円
システムの混乱が収まり、前期に落ち込んだ免税売上も戻る。カメラの数量は 10 年で 1.2 倍、時計は 1.15 倍になり、値段は物価並みの 1.34 倍。売上は 820 億円。
営業利益率は 6.2% まで戻り、営業利益は 51 億円。会社の掲げる経常利益率 8% には届かないが、直近 5 年の水準に戻る。配当性向は 6 割弱、自社株買いも織り込む。AI を使った運営が定着し、在庫の回転が上がる。\カメラは新型の発売が続き、買い替えの周期に合わせて中古の仕入れも増える。時計は相場の落ち着きで在庫の評価損が出にくくなる。基幹システムの償却は重いが、売上の増加で吸収できる。
- カメラ事業:数量 40.7(年間販売点数(万点、推定))× 価格 16(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 655 億円・営業利益 41 億円。数量 1.20 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 6.2%
- 時計事業:数量 1.7(年間販売本数(万本、推定))× 価格 94(1 本あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 10 億円。数量 1.15 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 6.2%
- 筆記具ほか:数量 2.4(年間販売点数(万点、推定))× 価格 2.68(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.61 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.69 倍、時価総額 645 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:一時的な要因が薄れ、会社の計画に近い水準へ緩やかに戻る筋書き。直近 5 年の利益率 5〜7% の中位だ。
中立 38% 利益は戻るが、利益率は 5% 台前半にとどまる 利益 27 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 2,344 円497 億円
システムの混乱は一過性で、利益は戻る。カメラの数量は 10 年で 1.1 倍、時計は 1.05 倍と、緩やかに増える。値段は物価並みの 1.34 倍で、売上は 750 億円ほどになる。筆記具は小さく、自転車は消える。
営業利益率は 5.3% で、前期の 4.9% より少し高く、2022 年 3 月期の山 7.2% は超えない。営業利益は 40 億円、純利益は 27 億円になる。配当性向は 6 割弱、自社株買いも続ける。会社は、「資本の軽い堅実な専門店」の位置にとどまる。\会員数は緩やかに増え、買取の入口は保たれる。フリマアプリへの流出は一部で起きるが、品ぞろえと検品の質で顧客をつなぎとめる。新システムの償却と広告費が固定費として残るので、利益率は大きくは上がらない。
- カメラ事業:数量 37.3(年間販売点数(万点、推定))× 価格 16(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 600 億円・営業利益 32 億円。数量 1.10 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.3%
- 時計事業:数量 1.6(年間販売本数(万本、推定))× 価格 94(1 本あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 8 億円。数量 1.05 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 5.3%
- 筆記具ほか:数量 2.4(年間販売点数(万点、推定))× 価格 2.68(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 0.61 倍 × 値段 1.34 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍。全体の PER 17.85 倍、時価総額 484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近 5 年の利益率の平均に近く、数量が緩やかに増え、価格が物価並みに上がる、実績に最も近い筋書き。
やや悲観 22% 為替・関税・フリマの逆風で、利益率が 4% 弱に 利益 16 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 814 円173 億円
時計の相場と関税、免税売上の減少が続き、カメラもフリマアプリへの流出で伸びが止まる。カメラの数量は 10 年で 5% 減り、時計は 15% 減る。価格は競争で物価に届かず 1.25〜1.28 倍にとどまる。売上は 610 億円。
営業利益率は 3.8% で、営業利益は 23 億円、純利益は 16 億円。システムの混乱が長引き、会員の離脱も出る。配当性向は 5 割台に下がり、自社株買いは止まる。優良な専門店という評価から、利益の振れる普通の小売へ後退する。\カメラは新製品の発売が少ない年に売上が落ち込み、在庫の入れ替えのための値引きが粗利を削る。時計はブランド側の値上げと関税で、需要が細る。経営は費用の削減で応じるが、システムと広告の固定費が重い。
- カメラ事業:数量 32.2(年間販売点数(万点、推定))× 価格 15(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 495 億円・営業利益 19 億円。数量 0.95 倍 × 値段 1.28 倍、営業利益率 3.8%
- 時計事業:数量 1.3(年間販売本数(万本、推定))× 価格 88(1 本あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 4 億円。数量 0.85 倍 × 値段 1.25 倍、営業利益率 3.8%
- 筆記具ほか:数量 2.2(年間販売点数(万点、推定))× 価格 2.56(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 0.55 倍 × 値段 1.28 倍、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 9% 前後で k 7.75% をわずかに上回る。RONIC=8%+1/2×(9.1%−8%)=8.6%、g 4% から正当化 PER=約 13.3 倍。構造の負けの筋書きなので、上限の 7 割強の 9.5 倍に置いた。
確率:相場と為替の振れ、免税売上の減少、システムの混乱の長引き、フリマとの競争という具体的な懸念が重なる筋書き。
悲観 10% 仕入れの競争と相場の下落で、利益がほぼ消える 利益 5 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 189 円40 億円
フリマアプリとメーカーの下取りへ品が流れ、買取の入口が細る。カメラの数量は 10 年で 2 割減り、時計は 3 割減る。価格は物価に届かず、1.15〜1.20 倍。売上は 480 億円まで縮む。
営業利益率は 1.5% に落ち、営業利益は 7 億円。在庫の評価損が出て、自己資本は 20 億円ほど目減りする。それでも赤字には落ちず、配当は性向 5 割で続ける。会員基盤は残るが、買取の主導権を失い、小さな専門店として静かに続く。\カメラと時計の在庫を絞り、取扱品目を減らして回転を保つ。システムへの投資も縮小するが、品ぞろえが細ると客が離れる悪循環になる。財務は堅く、借入は返済に回る。
- カメラ事業:数量 27.2(年間販売点数(万点、推定))× 価格 14(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 391 億円・営業利益 6 億円。数量 0.80 倍 × 値段 1.20 倍、営業利益率 1.5%
- 時計事業:数量 1.0(年間販売本数(万本、推定))× 価格 81(1 本あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 1 億円。数量 0.70 倍 × 値段 1.15 倍、営業利益率 1.5%
- 筆記具ほか:数量 1.8(年間販売点数(万点、推定))× 価格 2.40(1 点あたり平均単価(万円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 0.45 倍 × 値段 1.20 倍、営業利益率 1.0%
倍率:ROE 3% 台で k 7.75% を大きく下回る。RONIC=8%+1/2×(3.6%−8%)=5.8%、g 3.5% から正当化 PER=約 8.7 倍。稼ぐ力の弱った会社なので、8.0 倍に置いた。
確率:フリマとメーカーの下取りへの流出、相場と為替の下落、システムの混乱が同時に来る複合の筋書き。実現すれば深いが、財務の堅さと会員基盤で 1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
カメラ事業
マップカメラの名で、新品と中古のカメラ・レンズを売り、買い取る。売上の 78%。
| 数量年間販売点数(万点、推定) | 価格1 点あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 33.9 | 12 | 407 | 20 |
| 10 年後 中立 | 37.3 | 16 | 600 | 32 |
取り方:カメラ事業の売上 407 億円を、本体・レンズ・小物を合わせた 1 点あたり平均約 12 万円とみて約 34 万点に分けた(推定。開示は無い)。点数は実質の数量で、物価の 3% と新製品の値上がりは単価に入れる。営業利益は開示が無く、全社の営業利益率 4.9% を売上比で配分した。
時計事業
新品と中古の高級時計の販売と買取。売上の 20%。
| 数量年間販売本数(万本、推定) | 価格1 本あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 70 | 104 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 94 | 146 | 8 |
取り方:時計事業の売上 104 億円を、1 本あたり平均約 70 万円(高級ブランドの中古・新品の平均)とみて約 1.5 万本に分けた(推定)。本数は実質、相場と物価は単価に入れる。営業利益は全社の利益率を売上比で配分した。
筆記具ほか
筆記具の販売。自転車は 2026 年 3 月末で撤退した。
| 数量年間販売点数(万点、推定) | 価格1 点あたり平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 2.00 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 2.68 | 7 | 0 |
取り方:筆記具と自転車の売上 7.9 億円を、1 点あたり約 2 万円とみて約 4 万点に分けた(推定)。自転車は撤退したので、先の筋書きでは筆記具だけに減らす。
リスクと懸念
在庫相場の下落と為替
カメラ・時計の中古相場は、為替や新製品の発売で動く。仕入れた在庫の値段が下がれば、粗利が削られ、評価損が出る。前期の時計事業は、為替と関税で粗利が減った。
ネット販売への依存とシステム障害
売上の大半がネットで、基幹システムが止まると売上も止まる。2026 年 4 月の入れ替えでネット販売が止まり、第 1 四半期のカメラ利益が 3 割減った。前期はソフトの減損 3.9 億円も出た。
中期計画の未達
2025 年に出した中期計画は、前期の営業利益を 34 億円としたが、実績は 25 億円だった。2028 年 3 月期の 44 億円も、同じ道をたどる恐れがある。会社の掲げる経常利益率 8% も、実績はこれを下回る。
フリマアプリとメーカーの参入
個人間取引で品が直接売られると、買取の入口が細る。メーカーが下取りと中古販売に乗り出せば、仕入れの競争も厳しくなる。値段を決める力は弱い。
免税売上と関税
訪日客向けの免税売上は、前期の上期に減って利益を押し下げた。米国の関税政策は、ブランド側の値付けや時計の需要に影響する。為替の変動も大きい。
事業の集中
売上の 8 割がカメラで、1 つの商材に偏る。カメラ市場の縮小や、新製品の発売ペースの鈍化があれば、全体の利益に直結する。時計と筆記具で分散しても、カメラの落ち込みを補えない。
今後の分かれ目
- 新システムが安定し、第 2 四半期以降のカメラの売上が前年を上回ったら
- 強気側の筋書きに確率を移す。営業利益率が 5% 台に戻るかを見る。
- システム障害が再発するか、ネット販売の停止が続いたら
- やや悲観側へ寄せる。会員の離脱とレビューの動きを見る。
- カメラの新型の発売が続き、免税売上が回復したら
- 数量の増加を上方に直す。ただし、新製品の反動を見て、持続するかを確認する。
- 中古相場が下落し、粗利益率が 18% を割ったら
- 在庫の評価損と利益の目減りを見て、悲観側の確率を上げる。
- 会社が自社株買いか配当性向の引き上げを発表したら
- 還元の厚みを、利益の水準と合わせて確認する。借入が増えるなら、評価は上げない。
- 買収の提案が出たら(推定確率は 10 年で 2 割)
- 提案の値段を、10 年の利益の価値と比べる。
見ておくもの
- 第 2 四半期(11 月ごろ)の営業利益率と、システム入れ替えの影響の収束
- カメラ・時計の売上総利益率(前期は 18.8%)
- 会員数の増え方(月 4,600 人ペース)
- 中古相場と為替(時計は特に)
- 自社株買いと配当性向の発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER や過去の PBR に寄せず、利益で測った。正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で、k は基本 7.5% に循環+0.25%・値決め力+0.25% を入れた 8.0%、g は 4%、RONIC は k を超える ROE の半分が残るとして置き、上限の 8 割に置いた。同領域の会社より高い ROE を稼ぐが、利益の振れが大きく、計画も未達なので、倍率は上限の内側に抑えた。減価償却は、新しい基幹システムで今期から増え、設備投資は小さいので物価では増やさない。店舗が少なく、新リース会計の影響は小さく、今と同じ形で置いた。今の株価を見て筋書きを変えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→19.27 倍・やや楽観 PER 13.2→18.69 倍・中立 PER 13→17.85 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。