結論
近鉄百貨店は、あべのハルカス近鉄本店を旗艦に、奈良・上本町など近畿の駅に近い店を営む百貨店だ。近鉄グループホールディングスが 63% を持つ上場子会社である。筆者の結論は、割高だ。
2026 年 2 月期の営業利益は 67 億円で、過去最高の 2006 年 2 月期に次ぐ。ただし中身は割り引いて見る必要がある。大阪・関西万博の会場内の店という一回限りの商いが乗っている。会社自身も、次の期は 54 億円へ下がると言う。名古屋店は 2026 年 2 月に閉じた。
10 年先を考えると、本店への依存と客数の細りが効いてくる。中立では営業利益は名目で 66 億円前後にとどまる。物価の上昇は価格で取り込めるが、人件費はそれ以上に重い。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。
稼ぎが資本コストに届かない会社に、払える倍率の天井は低い。筋書きの中心でも、10 年後の時価総額は今の 6 割強にとどまる。純現金がわずかにある財務の堅さは評価するが、それは倍率を上げる理由にはならない。総合では本質価値が今より 6割強低く、割高と判断する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない会社だが、資本を増やす会社ではない」と見る。
百貨店という事業は、人口が増えず、ネットに分け前を取られる。堀と呼べるものは、あべの・天王寺の立地と近鉄沿線の固定客くらいだ。これは長く続く強みではあるが、広がる強みではない。ROE が資本コストに届かないのは、そのためだ。
一方で、経営は堅実だ。借金は少なく、全店黒字を掲げ、不採算店は減損して整理する。利益を無理に大きく見せる買収もしない。この堅さは、悲観の筋書きでも会社が倒れないという意味で、安全域になる。
ただし、安全域は払う値段で決まる。利益が過去最高圏にある今は、その利益が続くと織り込むのは危うい。万博の分が抜け、名古屋店が消えれば、稼ぎは 2 割近く減る。筆者は、本業の稼ぐ力が資本コストに届かない会社に、高い値段を払う理由を見つけられない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの大半は百貨店業だ。連結の営業収益の 8 割強、営業利益の 8 割強を占める。旗艦のあべのハルカス近鉄本店は、同じビルの Hoop や and と合わせて、総額売上の半分強を稼ぐ。ここに食品売場や外商の拠点が集まる。
地域店は上本町、奈良、橿原、生駒、東大阪、和歌山、四日市、草津の 8 つだ。名古屋店は駅の再開発で 2026 年 2 月末に閉じた。地域店は上層階に家電量販店や行政施設を入れて、低層階で稼ぐ形に変えている。人手と家賃を抑える狙いだ。
売上の数字には癖がある。百貨店は売場を貸して売上の一部だけを収益に計上するため、連結の売上は総額売上の半分以下になる。2026 年 2 月期の個別の総額売上は約 2,445 億円、連結の営業収益は 1,254 億円である。比べる時は同じ基準でそろえる必要がある。
百貨店のほかに三つの事業がある。内装は店舗の改装工事を請け負い、営業利益の約 1 割を稼ぐ。卸・小売は輸入車やフランチャイズなどで、利益は薄い。不動産は小さいが、利益率が高い。これらは本体の改装投資と連動して動く。
優良さと弱いところ
強みは立地と食品だ。あべの・天王寺は大阪南部の乗換拠点で、近鉄の沿線客が毎日通る。食料品は総額売上で約 895 億円と、全体の 4 割近くを占める。食品は景気に強く、来店の頻度を支える。
外商も底堅い。富裕層向けの接客は、人が人に売る商いで、ネット通販に奪われにくい。会社は外商売上を 2 割増やす計画を持つ。
弱みは三つある。一つ目は、本店への集中だ。本店周りの売上が全体の半分強を占めるため、天王寺の客の流れが変われば全体が揺れる。二つ目は、衣料と身回品の細りだ。2026 年 2 月期は衣料が約 6% 減、身回品が約 15% 減だった。三つ目は、資本の使い方だ。ROE は直近で 8% 前後と資本コストに届かず、過去 10 年の中央値も 6% 台にとどまる。
財務は堅い。純現金で、有利子負債は 22 億円しかなく、自己資本比率は 37% ある。この堅さが、悲観の筋書きでも会社を守る。ただし、それは資本が稼いでいないことの裏返しでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
百貨店は成熟産業だ。全国の売上高は 2025 年に約 5.7 兆円で、5 年ぶりに前年を下回った。免税売上も 12.7% 減った。人口が減り、衣料の買い方が変わり、ネット通販が分け前を取っていく。数量が増えない中で、値上げと高額品の取り込みが利益の主戦場になる。
近畿には強い競合が多い。阪急うめだ本店、大丸梅田店と大丸心斎橋店、髙島屋大阪店が、梅田と難波・心斎橋で大きな客を集める。あべの・天王寺は梅田や心斎橋とは別の商圏で、近鉄沿線という固定客が強みだ。同時に、高額品の客を競合に取られやすい弱みでもある。
免税売上は、近鉄百貨店では 111 億円で、全体の 4.6% しかない。都心の店ほど免税に依存しない点は、反動が小さいという意味で守りになる。ただし 2026 年 2 月期に 3 割以上減ったように、日中関係と為替で大きく動く。
会社の中期計画は、2028 年度に営業利益 65 億円と ROE 9% 以上を掲げた。営業利益は 2025 年度に前倒しで達成した。しかし万博と名古屋の分を除けば、次の期は 54 億円へ戻る。食品売場の改装で 2028 年度に食品売上 400 億円を狙うが、この目標の達成が次の山場だ。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向 30% を目安とする。2025 年度から方針を明文化した。足元の配当は利益の 2 割台にとどまり、増配を目指すとしている。自社株買いの実績は乏しく、貯まる利益を使う先は主に店の改装投資だ。4 年で 350 億円を投じ、うち 100 億円をあべの・天王寺に入れる。
政策保有株は少しずつ売っており、2026 年 2 月期には売却益が特別利益に入った。株式需給緩衝信託の自己株は 2026 年 3 月に売り終えた。流通株式比率は 26.6% で、スタンダード市場の基準を満たしている。
親会社の近鉄グループホールディングスは、中期計画で資産と事業の入れ替え、バランスシート重視の経営を掲げる。近鉄百貨店は、きんえいなどと並ぶ上場子会社の 1 つだ。完全子会社化の公表はなく、時期も読めない。もし TOB があれば、少数株主に有利な値段が付く可能性があるが、その確率を価値に織り込むことはしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
あべのハルカス近鉄本店の改装は、会社が 4 年で 100 億円を投じる大きな賭けだ。食品売場を 3 割作り替え、食品売上 400 億円を目指す。食品は景気に強く、来店の頻度が高い。ここが当たれば、本店の集客力は雑貨や衣料にも波及する。
外商は富裕層の新規開拓で、会社は 2 割増を見込む。ネット通販に奪われにくい商いで、利益率も高い。免税売上は 2026 年 2 月期に 3 割以上減ったが、全体の 5% 弱にすぎず、傷は浅い。
2026 年 2 月期の営業利益 67 億円は、中計の最終年度の目標を 3 年早く達成した水準だ。名古屋店の閉店は駅の再開発に伴うもので、補償金も入った。万博で得た新規客の一部は定着する。さらに近鉄グループは資産と事業の入れ替えを進めており、百貨店への投資は継続される。
財務は純現金で、借金がない。この体力があるから、地域店の低層階の入れ替えや、新事業の立ち上げに攻めの投資ができる。10 年で物価が 3 割以上上がる中、価格を転嫁できる食品と外商を持つ会社は、利益を実質でも守れる。
慎重な見方
利益の質を疑うべきだ。2026 年 2 月期の営業利益 67 億円には、万博の会場内の店が乗っていた。この商いは再現しない。会社自身も、次の期は 54 億円に下がると言う。一時の利益に高い倍率を付けると、後で痛い目を見る。
本店への依存も重い。本店周りの売上が総額の半分強を占め、本店単独は前の期に 3.9% 減った。増えたのは周辺の Hoop など別の施設だ。会社が言う改装の効果は、まだ数字になっていない。
地域店は、四日市と奈良で減損を計上した。社長は閉店しないと言ったが、減損は退店の前触れになりうる。人件費は物価より速く上がり、百貨店のような人手の多い商売では利益率が削られる。
資本の使い方も物足りない。ROE は過去 10 年の中央値で 6% 台、資本コストを下回り続けている。貯まる利益は店の改装に回すが、新しく投じたお金が資本コスト以上に稼いだ実績はない。親会社の選択と集中の方針は、売却や再編の可能性も含む。少数株主の取り分がどう扱われるかは、読めない。
どちらに重みを置いたか
強気の論拠は、本店の改装と外商という具体的な打ち手と、堅い財務だ。慎重な論拠は、一回限りの利益と、資本コストに届かない稼ぎだ。筆者は後者がやや強いと見る。
そのため確率は中立に 38%、やや悲観に 23% と置き、楽観側は 28% にとどめた。会社自身が減益を見込む事実が重い。悲観は 11% で、全店黒字と純現金の守りがある分、他の百貨店並みに置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,502 円606 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 346 円140 億円)。 今の値に割り戻すと 931 円376 億円、今との差 −50.5%、 期待の年率 −0.2%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,413 円974 億円 | 575 円232 億円 | +58.8% | +4.7% | 209 円84 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,914 円773 億円 | 446 円180 億円 | +25.5% | +2.3% | 496 円200 億円 |
| 中立 | 38% | 1,680 円678 億円 | 354 円143 億円 | +8.2% | +0.8% | 773 円312 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,093 円441 億円 | 315 円127 億円 | −25.2% | −2.9% | 324 円131 億円 |
| 悲観 | 11% | 374 円151 億円 | 50 円20 億円 | −77.5% | −13.8% | 47 円19 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,502 円606 億円 | 346 円140 億円 | −1.7% | −0.2% | 1,848 円746 億円 |
今の株価時価総額 1,881 円759 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 旗艦店の改装が当たり、外商と食品で稼ぎが太る 利益 66 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,413 円974 億円
あべのハルカス近鉄本店の改装が当たる。食品売場は計画どおり 400 億円規模に育ち、雑貨も伸びて、買い物の目的地として天王寺・阿倍野の人の流れを取り込む。外商は富裕層の新規開拓で厚みを増し、免税売上も無理のない水準で戻る。地域店は低層階を専門店と家電量販店に貸し、少ない人手で稼ぐ形に変わる。新事業が 2030 年に 70 億円規模の増収をもたらし、利益率の薄い卸・小売のてこ入れも進む。人件費の上昇を値上げと生産性で吸収し、営業利益率は 5% 台を保つ。ROE は 9% 近くまで上がる。それでも資本コストを少し超える程度で、百貨店という事業の限界は変わらない。
- 百貨店業:数量 4,200(来店客数(万人、推定))× 価格 8.40(客単価(千円、総額売上÷客数。推定))→ 売上 1,488 億円・営業利益 82 億円。百貨店 営業利益率5.5%
- 内装業:数量 125(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.47(1 件当たり工事高(億円、推定))→ 売上 59 億円・営業利益 11 億円。内装 営業利益率18.0%
- 卸・小売・不動産・その他:数量 64.0(取引件数(千件、推定))× 価格 40(1 件当たり売上(万円、推定))→ 売上 257 億円・営業利益 8 億円。卸小売・不動産ほか 営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 910 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:旗艦店の改装が実を結び、外商が伸び、親会社の方針も追い風になる条件が重なる必要がある。実現すれば強いが、重なる確率は高くない。
やや楽観 21% 中計の線で定着、本店が支えて利益は今の水準 利益 53 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,914 円773 億円
万博の反動と名古屋店の閉店で一度は利益が下がるが、本店の改装と外商の伸びで埋め、利益は今の水準へ戻る。来店客数は人口減の分だけ細り、客単価は物価並みに上がる。食品は伸び、衣料は細る。地域店は閉店に追い込まれず、低層階の入れ替えで黒字を保つ。親会社は上場子会社として使い続け、完全子会社化も売却もない。配当は増えるが、貯まる利益を使い切る場面は少なく、ROE は 7% 台で資本コストに届かない。会社が掲げる営業利益率 5% は、人件費の上昇に押されて達成が遠のく。近畿の駅に近い立地と食品の底堅さが、百貨店としての地位を保たせる。強い成長はないが、崩れもしない、静かな 10 年になる。
- 百貨店業:数量 4,035(来店客数(万人、推定))× 価格 8.04(客単価(千円、総額売上÷客数。推定))→ 売上 1,369 億円・営業利益 66 億円。百貨店 営業利益率4.8%
- 内装業:数量 118(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.47(1 件当たり工事高(億円、推定))→ 売上 55 億円・営業利益 10 億円。内装 営業利益率17.5%
- 卸・小売・不動産・その他:数量 60.0(取引件数(千件、推定))× 価格 40(1 件当たり売上(万円、推定))→ 売上 241 億円・営業利益 7 億円。卸小売・不動産ほか 営業利益率2.7%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.82 倍、時価総額 678 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い線が実現する、業界の上位レンジの想定。名古屋店の閉店と万博の反動を、本店の改装と外商で埋める。
中立 38% 中立:名古屋と万博の分が抜け、本店頼みの百貨店に落ち着く 利益 44 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,680 円678 億円
名古屋店が消え、万博の一回限りの商いも終わる。10 年後に残るのは、あべの・天王寺の本店と、近畿に散らばる 8 つの地域店だ。来店客数は 10 年で 1 割弱減り、物価の分だけ客単価が上がる。外商は伸びるが、免税は日中関係と為替に振られて戻りは鈍い。衣料と身回品の細りを、食品と雑貨が埋める。人件費は物価より速く上がり、営業利益率は今の 5% 台から 4% 台前半へ下がる。内装と卸・小売は本体の改装に引きずられ、横ばいにとどまる。親会社との関係は変わらず、配当は利益の 3 割台を保つ。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。
- 百貨店業:数量 3,750(来店客数(万人、推定))× 価格 8.04(客単価(千円、総額売上÷客数。推定))→ 売上 1,272 億円・営業利益 55 億円。百貨店 営業利益率4.3%
- 内装業:数量 110(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.47(1 件当たり工事高(億円、推定))→ 売上 52 億円・営業利益 9 億円。内装 営業利益率17.0%
- 卸・小売・不動産・その他:数量 58.0(取引件数(千件、推定))× 価格 40(1 件当たり売上(万円、推定))→ 売上 233 億円・営業利益 6 億円。卸小売・不動産ほか 営業利益率2.5%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 555 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社自身が次の期の減益を見込んでいる。本店に頼る構造と地域店の細りは続くが、全店黒字という実績もあり、中心はここに置く。
やや悲観 23% 客数の細りと日中関係で、本店の稼ぎが痩せる 利益 27 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,093 円441 億円
梅田と心斎橋の百貨店に高額品の客を奪われ、本店の食品以外が細る。免税売上は日中関係の悪化で回復せず、外商の伸びも富裕層の取り合いで頭打ちになる。地域店のうち四日市・奈良・和歌山は減損と業態転換を繰り返し、一部は閉店に至る。閉店しても家賃の約束と人員整理の費用が残り、利益を削る。内装の仕事は改装投資の縮小で減る。営業利益率は 3% まで下がるが、食品と外商という底は残り、黒字は保つ。ROE は 4% 前後で、配当はわずかに増えるだけだ。親会社が上場を続ける理由も薄れ、完全子会社化の話が出ても不思議ではないが、その値段が少数株主に有利になる保証はない。
- 百貨店業:数量 3,350(来店客数(万人、推定))× 価格 7.80(客単価(千円、総額売上÷客数。推定))→ 売上 1,102 億円・営業利益 33 億円。百貨店 営業利益率3.0%
- 内装業:数量 100(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.45(1 件当たり工事高(億円、推定))→ 売上 45 億円・営業利益 7 億円。内装 営業利益率15.0%
- 卸・小売・不動産・その他:数量 52.0(取引件数(千件、推定))× 価格 37(1 件当たり売上(万円、推定))→ 売上 192 億円・営業利益 4 億円。卸小売・不動産ほか 営業利益率2.0%
倍率:ROE 4.1%(純利益 26 億円 ÷ 自己資本 649 億円)。事業の ROE が資本コスト 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍。客数と利益率の細りで稼ぐ力が落ち、ROE は資本コストを大きく下回る。上限の 8 割 の 9.4 倍に置いた。
確率:本店の客数が細り、免税が日中関係で冷え込む。梅田や心斎橋の競合に買い物客を奪われるという懸念は十分にありうる。
悲観 11% 構造的に稼ぐ力を失い、不動産と現金だけが残る 利益 −12 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 374 円151 億円
梅田と心斎橋に高額品の客を奪われ、本店の売上が細る。免税は戻らず、外商も富裕層の高齢化で縮む。地域店は次々に減損し、閉店と整理が続く。営業利益は赤字に沈み、親会社は選択と集中の対象として売却や再編を考える。しかし店舗の入る建物の多くは借りたもので、閉店しても家賃の約束と人員整理の費用が残る。残る価値は、手元の現金、保有する建物の一部、投資有価証券を売って借金を返した後の分だけになる。近鉄沿線の固定客は残るが、その客を店に引き留める力が競合に比べて弱まり、百貨店としての優良さは失われる。再編の話が出れば、少数株主は帳簿の価値に近い値段を受け取るのがせいぜいだ。
- 百貨店業:数量 2,800(来店客数(万人、推定))× 価格 7.20(客単価(千円、総額売上÷客数。推定))→ 売上 850 億円・営業利益 −9 億円。百貨店 営業利益率-1.0%
- 内装業:数量 80.0(年間の工事件数(件、推定))× 価格 0.40(1 件当たり工事高(億円、推定))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。内装 営業利益率10.0%
- 卸・小売・不動産・その他:数量 45.0(取引件数(千件、推定))× 価格 30(1 件当たり売上(万円、推定))→ 売上 135 億円・営業利益 1 億円。卸小売・不動産ほか 営業利益率1.0%
倍率:百貨店が赤字になり、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後から有利子負債を引いた約 150 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 458 億円に対する PBR 0.33 倍で測った。谷の年の営業利益は赤字なので、EV÷営業利益は意味を持たず、資産の床で測った。
確率:百貨店の客数が構造的に細り、旗艦店が競合に負け、地域店の閉店が相次ぐ複合の筋書き。単独の百貨店は 10 年で優位を失いやすく、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
百貨店業
あべのハルカス近鉄本店と地域店 8 店の百貨店。食品・雑貨・衣料・外商・免税を扱い、連結の営業収益は売場を貸す分を差し引いた純額で計上する。
| 数量来店客数(万人、推定) | 価格客単価(千円、総額売上÷客数。推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,076 | 6.00 | 1,032 | 57 |
| 10 年後 中立 | 3,750 | 8.04 | 1,272 | 55 |
取り方:来店客数は会社が開示していない。個別の総額売上 2,445 億円を、客単価 6.0 千円(仮置き)で割って約 4,076 万人と推定した。純額の営業収益 1,031.7 億円との比(0.422)と単位換算を rev_factor(0.042185)に入れた。客数の増減を数量、客単価の上昇を価格(物価)として読むための置き方で、絶対の水準は確かめていない。2026 年 2 月期には万博の会場内の店と名古屋店が入っている。
内装業
店舗や施設の内装工事を請け負う事業。百貨店の改装が主な仕事で、利益率が高い。
| 数量年間の工事件数(件、推定) | 価格1 件当たり工事高(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 120 | 0.35 | 42 | 8 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.47 | 52 | 9 |
取り方:内装業の営業収益は約 42 億円(2025 年 2 月期は 40.4 億円、今期の営業利益は 7.88 億円)。件数は非開示のため、1 件 0.35 億円と仮置きして約 120 件と推定した。仕事は本体の改装に連動するので、件数は物価では増えない。
卸・小売・不動産・その他
輸入車やフランチャイズなどの卸・小売、小さな不動産賃貸、その他の事業。利益は薄い。
| 数量取引件数(千件、推定) | 価格1 件当たり売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 60.0 | 30 | 181 | 5 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 40 | 233 | 6 |
取り方:連結営業収益 1,254.5 億円から百貨店業と内装業を引いた約 181 億円を、卸・小売・不動産・その他とした(卸・小売は約 150 億円、不動産は約 3 億円、その他は約 28 億円と推定)。営業利益は卸・小売 2.0 億円、不動産 2.4 億円、その他を足して 4.7 億円。件数は非開示のため、1 件 30 万円と仮置きして約 6 万件と推定した。
リスクと懸念
万博の反動と本店の集客
2026 年 2 月期の営業利益には、大阪・関西万博の会場内の店が乗っていた。会社は次の期、本店周りの総額売上が 7.7% 減ると見る。改装で食品売場を 3 割作り替えるが、客の定着が数字になるまで時間がかかる。反動が想定より深ければ、減益は 54 億円で止まらない。
免税と日中関係
免税売上は 2026 年 2 月期に 33.8% 減り、111 億円になった。全体の 5% 弱にとどまるが、外商や高額品の客層とも重なる。日中関係の悪化や為替の振れで、高額品の売上が急に落ちる可能性がある。回復を前提にした改装投資は、読み違えると負担になる。
地域店の減損と閉店
四日市店と奈良店で、2026 年 2 月期に減損損失が出た。2024 年には社長が閉店しないと述べたが、客数の減少が続けば方針は変わりうる。閉店しても家賃の約束と人員整理の費用が残るため、利益への負担は閉店後も続く。
人件費の上昇
百貨店は人手の多い商売で、最低賃金の上昇とパート・アルバイト不足が販管費を押し上げる。2026 年 2 月期の販管費は万博関連を除いても増えた。物価を価格に転嫁しきれなければ、営業利益率は会社が掲げる 5% を維持できない。
親会社の方針と少数株主
近鉄グループホールディングスが 63% を持ち、資産と事業の入れ替えを掲げる。完全子会社化、売却、事業の移管のどれもありうる。少数株主にとって有利な値段で動く保証はなく、資本政策は親会社の都合で決まる。流通株式比率は 26.6% で、上場維持の基準の 25% に近い。
本店への集中
本店周りの売上は総額の半分強を占める。梅田や心斎橋の競合が投資を増やせば、高額品の客を奪われる。本店単独は 2026 年 2 月期に 3.9% 減っており、周辺施設の伸びで補った形だ。旗艦店の客の流れが変わると、全体が揺れる。
リースと新リース会計基準
店舗を借りて営む部分があるが、賃借の約束の大きさは確認できていない。家賃は固定の約束で、売上が落ちても減らない。新リース会計基準が 2028 年 3 月期から適用されると、営業利益は少し増え、純有利子負債と自己資本比率の見え方が変わる。数字を比べる時は同じ形にそろえる必要がある。
今後の分かれ目
- 本店の食品売場の改装後、食品売上が計画の 400 億円に向けて伸びたら
- 本店の客数の底が固く、中立から楽観側の確率を上げる。
- 万博の反動が想定より小さく、次の期の営業利益が 54 億円を上回ったら
- 利益の底が高いとみて、やや悲観の確率を下げる。
- 地域店のうち 1 店でも閉店が決まったら
- 構造改革の第二段階とみて、利益率の見方を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- 近鉄グループホールディングスが完全子会社化や売却に動いたら
- 少数株主への値段を読み直す。価値の計算には先に織り込まない。
- 免税売上が日中関係の悪化でさらに減ったら
- 高額品の売上が細り、外商の伸びも鈍るとみて、悲観側に寄せる。
- 自社株買いや配当性向の引き上げで、資本効率の改善が決算で確認できたら
- ROE の改善を価値に反映する。ただし資本コストを超えるまでは倍率を上げない。
見ておくもの
- 本店の食品売上と来店客数の四半期の推移
- 次の期の営業利益(会社予想 54 億円)の達成度
- 免税売上と外商売上の伸び
- 地域店(四日市・奈良・和歌山)の減損と閉店
- 近鉄グループホールディングスの上場子会社への方針
倍率と資本コストの決め方
百貨店は来店客数(実質)× 客単価(物価で名目)、内装と卸・小売は件数 × 単価で、10 年後の売上と利益を積み、先に利益の倍率を決めてから時価総額を出した。倍率は事業の ROE と資本コストから決め、今の株価や市場の倍率は使っていない。ROE が資本コストを下回る限り、PER の上限は 1÷k で、ためた利益は額面未満の価値にとどまる。悲観は売れる資産の税後を床にした。リースは、新リース会計基準で 2028 年 3 月期から数字の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。今の値段に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→13.79 倍・やや楽観 PER 10.6→12.82 倍・中立 PER 10.6→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。ガバナンスや親会社の方針といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。