結論
WDIは、カプリチョーザを軸に、米国や海外のレストランブランドを日本で運営する外食会社だ。2026年3月期の売上は345億円と8%増え、営業利益は13億円と7割伸びた。ただ、純利益は2億円まで落ちた。店の減損や閉店の損失が重なったからだ。筆者の結論は、本質価値は今の値段を大きく下回る、というものだ。
稼ぎ頭は国内である。国内の売上は264億円で、セグメントの利益は22億円ある。一方、北米は赤字が続き、子会社は債務超過だ。北米のティム・ホー・ワンは、2026年10月に手放す。欧州への新店も、立ち上げの費用が先に出る。
財務は薄い。自己資本比率は27%で、現預金58億円と借入約61億円がほぼ釣り合う。店舗の家賃は年に約29億円と、営業利益の2倍を超える。売上が落ちても家賃は減らない。
会社の予想は、2027年3月期に営業利益15億円、純利益3.5億円だ。今の時価総額は純利益の50倍を超える水準で、回復をかなり織り込んでいる。2026年から続く優待は、財務の体力に見合った小さな規模にとどまる。
2027年3月期の第1四半期は、売上が13%増え、営業利益が5.8億円と2倍を超えた。足元は悪くない。ただ、通期の営業利益15億円のうち、海外の整理と新店の費用がどこまで出るかは見通せない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「ブランドの運営力はあるが、堀は浅く、土台が薄い」会社だ。国内のカプリチョーザは息の長い事業で、国内の利益を支える。ただ、他社のブランドを借りて営む店が多く、使用許諾の更新がいつも課題になる。
オーナーの手に残るお金は少ない。営業利益は13億円だが、設備投資は18億円、家賃は29億円かかる。減損や閉店の損失が毎年のように出て、純利益は営業利益の2割にしか届かなかった。
安全域は無い。自己資本比率は27%と薄く、売上が落ちても家賃は固定で残る。景気の谷では、利益が一気に赤字へ転ぶ。2021年3月期は営業損失が14億円だった。
今の時価総額は、純利益の50倍を超える水準にあり、回復の相当部分を織り込む。利益が3倍に育ってはじめて、並みの倍率になる。値段が今より大きく下がるなら、検討に値する会社である。
経営の資本配分は、まだ整理の途上にある。赤字の海外から資金を引き揚げ、国内のブランドへ集中する判断は評価できる。それでも、これまでの海外投資の損失は大きく、取り戻すには時間がかかる。
何で稼ぐ会社か
WDIは、レストランの運営を主業とする会社だ。2026年3月末に157店を持ち、直営は97店、フランチャイズ(FC)が60店である。国別では日本が140店、北米が9店、ミクロネシアが2店、アジアが6店だ。
中心はカプリチョーザで、93店を数える。直営38店とFC55店で、生パスタのカジュアルイタリアンとして、駅ビルや商業施設に多い。そのほか、米国発のブランドを日本に持ち込む形が多い。ウルフギャング・ステーキハウスが8店、サラベスが8店、トニーローマが6店、ハードロックカフェが6店、エッグスンシングスが5店、ババ・ガンプ・シュリンプが4店だ。ティム・ホー・ワンは日本に7店ある。ハードロックカフェの日本での独占展開権は2033年末までとされている。
売上の76%は日本、19%は北米だ。連結の従業員は2,386人で、大半が日本の運営会社に属する。FC店には食材なども売る。
2026年は新店が続いた。東京の商業施設や千葉の複合施設に、カプリチョーザやティム・ホー・ワン、ウルフギャングなどを出した。一方、北米の赤字店を整理し、ティム・ホー・ワンの北米の権利は手放す。欧州では、ロンドンに新店を準備している。
売上のしくみは、直営店の飲食収入と、FC店への食材などの販売、ライセンスにもとづく運営に分かれる。直営店は人件費と家賃が重く、FC店は少ない資本で広がる。そのため、カプリチョーザはFC比率が高く、ハードロックカフェやウルフギャングは直営が中心だ。連結の子会社は16社で、日本の運営会社だけで約2,000人を抱える。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、ブランドを日本で育てる運営力だ。カプリチョーザは長くFCと直営の双方で広げ、日本の利益の土台になっている。国内のセグメント利益率は8%台で、同業の中では悪くない。ブランドの数が多く、一つが崩れても全体が傾きにくい。
弱点は、ブランドが借り物であることだ。ハードロックカフェなど、多くの業態は使用許諾の契約で営む。契約の更新や条件が変われば、店は続けられない。海外では、北米の営業損失が続き、子会社は24.5億円の債務超過に陥った。店の減損も大きく、2026年3月期は9.7億円を計上した。
家賃も重い。年に約29億円を払い、売上の1割近い。賃借料は固定の約束で、売上が落ちた年に利益を削る。コロナ禍の2021年3月期には、営業損失が14億円に達した。
経営は、整理に動いている。赤字の海外店を絞り、国内で出店を続ける。ただ、海外の再建は道半ばだ。筆者は、国内は堅実だが、全体の質は中位以下と評価する。
財務の面でも、2026年3月期は営業活動の現金収支が17億円と改善した一方、設備投資に18億円を使い、借入を増やした。成長のための投資が先に出て、利益が後から付いてくる形だ。投資の効率が低いと、減損として戻ってくる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人件費と食材費の上昇を値上げで吸収できるかが分かれ目の業界だ。日本フードサービス協会によると、2023年の外食産業の市場規模は24兆円台で、コロナ前の水準へ戻る途上にある。人手不足が賃金を押し上げ、物流費や建築費も上がった。
値上げが通りやすいのは、人気チェーンやブランド力のある店だ。WDIのような中価格帯のレストランは、客が選ぶ理由を作れれば価格を上げられるが、景気が悪ければ客足が真っ先に落ちる。リーマン後には、既存店の売上が2〜3割減った例がある。
訪日客の増加は追い風だ。駅ビルや都心の商業施設に出店するWDIには、観光客の需要が届く。海外の観光地で営む北米やミクロネシアの店も、同じ恩恵と為替の影響を受ける。
同業には、ゼンショーやトリドール、ロイヤルホールディングスなどの大手が並ぶ。WDIは規模が小さく、調達力で劣る。そのぶん、ブランドの個性と立地で戦う。
国内の店舗数は飽和に近く、成長は海外と新ブランドが頼りだ。ただし、WDIの海外は赤字が続いており、このままでは成長の柱にならない。
外食は参入の壁が低く、新しいブランドが次々に現れる。ブランドを借りる運営会社は、本部への支払いが利益を削る面もある。独自ブランドを持つ会社と比べて、利幅は伸びにくい。
中価格帯のレストランは、物価の上昇局面で客単価を上げやすい一方、節約志向が強まると、低価格チェーンへ客が流れる。WDIの国内の客単価が上がるかは、ブランドごとの競争力に左右される。
資本政策と M&A
配当は期末に年1回、1株あたり同じ額を続けている。総額は1億円ほどで、2026年3月期は純利益が薄かったため配当性向は45%に上がった。自社株買いは、ほとんど行っていない。
資金は借入で賄う。有利子負債は約61億円で、総資産の25%にあたる。2026年3月期は、長期借入で29億円を調達し、19億円を返した。現預金は58億円あり、差し引きの純負債は3億円だ。自己資本比率は27%と薄い。
店の家賃は年に約29億円で、国内が20.8億円、海外が8.3億円だ。敷金・保証金は18.9億円ある。解約不能のリース料の残高は有報に無いが、この家賃が毎年続く約束である。2028年3月期から、新リース会計で家賃が貸借対照表に載り、純負債が見かけ上増える。
株主優待は、3月末と9月末に、100株以上で額面3千円分、500株以上で2万円分、最大で6万円分を、自社の店で使える形で贈る。受け取る株主数は開示が無く、筆者は原価ベースで年に0.15億円と推計した。10年で1.5億円、利益の2%に満たない小さな額だ。
大量保有の届け出には、Soken Corp.と個人の名前がある。続柄などは確認できる出典が無いので書かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内のブランドが伸び、海外の赤字が消える。これが上振れの核心だ。国内のセグメント利益率はすでに8%台で、新店が育てば9%に近づく。訪日客の増加で、駅ビルや観光地の店の客数が増える。ハードロックカフェやウルフギャングなど、強いブランドは値上げも通りやすい。
海外の整理が済めば、利益は一気に改善する。北米の営業損失は3億円、欧州の立ち上げ費用は1億円弱だ。北米の赤字店を閉じ、ティム・ホー・ワンの権利を手放した後は、残る店が黒字化する。損失が消えるだけで、全体の営業利益は4億円ほど増える。
家賃や人件費の上昇は、客単価の引き上げで吸収できる。中価格帯のレストランでも、ブランドの個性があれば、客は値上げを受け入れる。
この道筋では、10年後の営業利益は38億円ほどに増え、純利益は19億円を超える。減損が減り、税負担が普通の水準へ戻るからだ。今の値段は、この回復の途中までを織り込んでいる。
北米の整理は、すでに動き出した。2026年10月に、ティム・ホー・ワンの北米の権利を手放す。赤字の元を断てば、国内の利益がそのまま全体に出る。
第1四半期の営業利益が2倍になったように、新店の効果も出始めている。ブランドを育てる力が戻れば、利益は大きく伸びる余地がある。
慎重な見方
家賃と人件費が先に上がり、利幅が戻らない。これが慎重な見方の核心だ。家賃は年に約29億円と、営業利益の2倍を超える。売上が落ちても減らない固定の約束で、客足が鈍ると、利益が一気に消える。2021年3月期の営業損失は14億円だった。
海外の再建は終わっていない。北米の営業損失は、2026年3月期も3億円ある。北米の子会社は債務超過で、親会社の支えなしには成り立たない。ティム・ホー・ワンの北米事業を譲渡しても、残る店の赤字が続けば、同じことの繰り返しになる。欧州の新店は、立ち上げの費用が先に出る。
ブランドの使用許諾も心配だ。ハードロックカフェの独占展開権は2033年末までで、更新が条件次第になる。契約が打ち切られれば、店は続けられない。
さらに、減損や閉店の損失が毎年のように出る。2026年3月期は、純利益が営業利益の2割に届かなかった。自己資本比率は27%と薄く、不況の谷では財務が一気に傷む。優待は小さく、配当も増えない。株主の取り分は、ほとんど積み上がらない。
第1四半期の増益も、新店と値上げによるもので、海外の整理の費用はこれから出る。
さらに、使用許諾に頼るブランドが多く、条件の悪化に対して交渉力が弱い。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠があるが、慎重な指摘がやや強い。国内の運営力と海外の整理の効果は、確かな上振れ要因だ。ただ、純利益が営業利益の2割にしか届かず、減損が毎年出る事実は重い。確率は、中立に3割台半ば、やや悲観に2割台半ばを置いた。悲観は、不況で客足が落ち、固定の家賃が利益を食う姿として12%を置いた。楽観とやや楽観は合わせて3割弱とした。借り物のブランドと海外の赤字が、評価を押し下げる。 筆者は、国内の実力を認めつつ、固定の家賃と海外の赤字を重く割り引いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,284 円143 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 229 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 1,162 円73 億円、今との差 −62.6%、 期待の年率 −2.1%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,050 円317 億円 | 414 円26 億円 | +75.7% | +5.8% | 437 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,776 円237 億円 | 319 円20 億円 | +31.7% | +2.8% | 819 円51 億円 |
| 中立 | 34% | 2,590 円163 億円 | 239 円15 億円 | −9.0% | −0.9% | 962 円60 億円 |
| やや悲観 | 26% | 754 円47 億円 | 159 円10 億円 | −70.6% | −11.5% | 237 円15 億円 |
| 悲観 | 12% | 398 円25 億円 | 80 円5 億円 | −84.6% | −17.1% | 57 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,284 円143 億円 | 229 円14 億円 | −19.2% | −2.1% | 2,513 円158 億円 |
今の株価時価総額 3,110 円195 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 国内ブランドが伸び、海外の赤字が消える 利益 19 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 5,050 円317 億円
売上は10年で1.7倍の580億円ほどになる。国内は客数が2割ほど増え、客単価は名目で4割近く上がる。北米は店の整理が済み、残る店が黒字になる。アジアと欧州の新店も立ち上がる。
営業利益率は6%台になる。国内のセグメント利益率が9%に上がり、海外の損失が消える。営業利益は38億円ほど、純利益は19億円ほどになる。減損が減り、税負担も普通の水準に戻る。
還元は10年で26億円と、配当が少しずつ増える。優待も続く。
家賃は年に約29億円から物価に合わせて増えるが、売上の伸びが上回り、売上に占める比率は下がる。借入は返済が進み、財務の薄さも和らぐ。
訪日客の増加が、駅ビルと観光地の店を押し上げる。
- 日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど):数量 0.0(国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.38(客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1))→ 売上 455 億円・営業利益 41 億円。数量 1.25 倍・価格 1.38 倍、営業利益率 9.0%
- 北米(ハワイ・米国本土):数量 0.0(北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 88 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 5.0%
- ミクロネシア:数量 0.0(ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 8.0%
- アジア・欧州:数量 0.0(アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。数量 4.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.04 倍、時価総額 287 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内ブランドが伸び、海外の赤字が消える姿として、1割弱を置いた。
やや楽観 20% 国内が育ち、海外の損失が縮む 利益 15 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,776 円237 億円
売上は10年で1.5倍の530億円ほどになる。国内は客数が2割弱増え、客単価は物価をやや上回って上がる。北米は店を絞り、赤字が縮む。
営業利益率は5%台後半になる。国内のセグメント利益率は8.5%を保ち、海外の損失は小さくなる。営業利益は31億円ほど、純利益は15億円ほどになる。
還元は10年で20億円。優待は続き、配当は小幅に増える。
家賃の負担は売上に対して少しずつ軽くなる。借入は増えず、自己資本比率は3割台に戻る。ただし、強いブランドは限られ、全体の押し上げは中程度にとどまる。
新店は商業施設の再開発に合わせて出し、既存店の客単価は物価に合わせて上げる。ティム・ホー・ワンなど日本の新ブランドも、少しずつ店数を増やす。
- 日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど):数量 0.0(国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.36(客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1))→ 売上 423 億円・営業利益 36 億円。数量 1.18 倍・価格 1.36 倍、営業利益率 8.5%
- 北米(ハワイ・米国本土):数量 0.0(北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 3.0%
- ミクロネシア:数量 0.0(ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 6.0%
- アジア・欧州:数量 0.0(アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 3.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.2 倍、時価総額 210 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内が育ち、海外の損失が縮む姿として、2割を置いた。
中立 34% 国内は物価並みに伸び、海外の赤字は薄く残る 利益 11 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 2,590 円163 億円
売上は10年で1.4倍の480億円ほどになる。国内の客数は1割増にとどまり、客単価は物価の分だけ3割強上がる。北米はティム・ホー・ワンなどを手放して店が減り、売上は横ばいに近い。
営業利益率は4%台後半と、足元の3.7%から少し上がる。国内のセグメント利益率は8%を保ち、海外の損失は薄く残る。営業利益は24億円ほど、純利益は11億円ほどになる。
家賃は年に約29億円から、物価に合わせて増える。借入が増え、利払いが今の3倍になる分が純利益を削る。還元は10年で15億円。
減損や店舗閉鎖の損失は年に2億円ほど出続ける。自己資本は140億円近くに増えるが、営業利益の伸びは物価並みで、資本の稼ぎ方は大きくは変わらない。
- 日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど):数量 0.0(国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1))→ 売上 389 億円・営業利益 31 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 8.0%
- 北米(ハワイ・米国本土):数量 0.0(北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。数量 0.75 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 1.0%
- ミクロネシア:数量 0.0(ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 4.0%
- アジア・欧州:数量 0.0(アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.34(客単価の指数(今を1))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 2.00 倍・価格 1.34 倍、営業利益率 -3.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.01 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内が物価並みに伸び、海外の赤字が薄く残る最も確からしい姿として、3割台半ばを置いた。
やや悲観 26% 家賃と人件費が重く、利幅が戻らない 利益 4 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 754 円47 億円
売上は10年で1.15倍の400億円ほどにとどまる。国内の客数は横ばいで、客単価は物価を少し下回る。北米は店を絞り、売上が減る。
営業利益率は3%前後に下がる。人件費と家賃が先に上がり、値上げが追いつかない。営業利益は11億円ほど、純利益は4億円ほどになる。
還元は10年で10億円に落ち、優待も縮む。自己資本は110億円ほどにとどまる。
減損や閉店の損失が続き、特別損失は営業利益の3割を超える年も出る。借入の返済が重く、新店を絞るため、成長の勢いは弱まる。
国内の新店は商業施設の家賃の条件が厳しく、出店の数が限られる。海外の店は整理が長引き、損失が残る。
- 日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど):数量 0.0(国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.25(客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1))→ 売上 330 億円・営業利益 20 億円。数量 1.00 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 6.0%
- 北米(ハワイ・米国本土):数量 0.0(北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.20(客単価の指数(今を1))→ 売上 48 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.60 倍・価格 1.20 倍、営業利益率 -2.0%
- ミクロネシア:数量 0.0(ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.25(客単価の指数(今を1))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 2.0%
- アジア・欧州:数量 0.0(アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.25(客単価の指数(今を1))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 1.50 倍・価格 1.25 倍、営業利益率 -5.0%
倍率:事業の純利益4.0億円・事業 ROE 3.7% は k 8.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.1倍。家賃が重く稼ぎが細る姿で、上限の約7.2割の8.0倍に置いた。
確率:家賃と人件費の上昇に値上げが追いつかず、利幅が戻らない姿として、2割台半ばを置いた。
悲観 12% 不況で客足が落ち、固定の家賃が利益を食う 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 398 円25 億円
不況で客足が落ち、家賃は固定のまま残る。国内の客数が15%減り、客単価は物価を大きく下回る。北米は店を畳み、売上は3分の1近くに縮む。
売上は290億円ほどに減り、営業利益はほぼ消える。営業利益は2億円ほど、純利益は1億円に届かない。本社の費用を絞り、店舗を閉めても、固定の家賃が重く残る。
還元は10年で5億円に抑えられる。稼ぐ力は消え、土地と敷金・保証金などの資産が価値を決める。
客数が戻らず、減損と閉店の損失が続く。自己資本は取り崩され、借入の返済と家賃の支払いに現金が消える。ブランドの契約も更新が危うくなり、店は減っていく。
優待は縮小または廃止される。
- 日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど):数量 0.0(国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.10(客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1))→ 売上 247 億円・営業利益 11 億円。数量 0.85 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 4.5%
- 北米(ハワイ・米国本土):数量 0.0(北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.00(客単価の指数(今を1))→ 売上 26 億円・営業利益 −2 億円。数量 0.40 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 -8.0%
- ミクロネシア:数量 0.0(ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.10(客単価の指数(今を1))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍・価格 1.10 倍、営業利益率 -2.0%
- アジア・欧州:数量 0.0(アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円))× 価格 1.00(客単価の指数(今を1))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.00 倍、営業利益率 -10.0%
倍率:稼ぐ力(事業の純利益÷k)は小さく、価値は売れる資産の床で決まる。床は今の自己資本66億円に掛けた。土地と回収できる敷金・保証金から、純負債と閉店の費用を引いた約25億円で、今の自己資本の約0.4倍。EV でも見ると、営業利益がほぼ消えた局面なので、倍率は置かず、資産の床から置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.381 倍・時価総額 25 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:10年の悲観は、不況で客足が落ち、固定の家賃が利益を食う構造的な負け。2021年3月期に営業損失14億円を出した前例があるので、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(カプリチョーザ・ハードロックカフェ・ウルフギャング・サラベスなど)
日本国内の140店(直営83・FC57)。パスタのカプリチョーザ、米国発の複数のブランドを、駅ビル・商業施設・都心の路面で運営し、FC店へ食材も売る。売上の76%。
| 数量国内の売上の取扱量(今の売上基準・兆円) | 価格客単価と客数あたり売上の指数(値上げで上がる。今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 264 | 22 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 389 | 31 |
取り方:2026年3月期の日本の売上は263.6億円、セグメント利益は21.87億円(利益率8.3%)。開示に客数・店舗ごとの売上が無いので、取扱量は今の売上基準(0.02636兆円)の推計とする。数量は店数と客数の実質、価格は客単価の指数で今を1。
北米(ハワイ・米国本土)
ハワイと米国本土の直営9店。ババ・ガンプ、ウルフギャングなどのブランドで、現地の観光客と住民が相手。北米のティム・ホー・ワンは2026年10月に譲渡する。
| 数量北米の売上の取扱量(今の売上基準・兆円) | 価格客単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 66 | −3 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 66 | 1 |
取り方:2026年3月期の北米は売上66.0億円(前期比6.5%減)、営業損失2.87億円。子会社 WDI International は2025年12月に24.5億円の債務超過。開示に客数が無いので、取扱量は今の売上基準(0.0066兆円)の推計とする。
ミクロネシア
グアム・サイパンの直営2店。観光客向け。
| 数量ミクロネシアの売上の取扱量(今の売上基準・兆円) | 価格客単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 16 | 1 |
取り方:2026年3月期のミクロネシアは売上12.1億円、セグメント利益0.48億円。取扱量は今の売上基準(0.00121兆円)の推計とする。
アジア・欧州
アジア6店(直営3・FC3)と、欧州の英国で2026年4月に着手する新店。まだ立ち上げの費用が先行する。
| 数量アジア・欧州の売上の取扱量(今の売上基準・兆円) | 価格客単価の指数(今を1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.00 | 4 | −1 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 1.34 | 9 | 0 |
取り方:2026年3月期のアジアの売上は3.5億円で営業損失0.27億円、欧州は売上無しで営業損失0.62億円。まとめて売上3.5億円・営業損失0.89億円として置いた。取扱量は今の売上基準(0.00035兆円)の推計とする。
リスクと懸念
固定の家賃
店舗の賃借料は年に約29億円で、国内が20.8億円、海外が8.3億円だ。売上が落ちても家賃は減らない。客足が1割落ちれば、営業利益はほぼ消える。2028年3月期から新リース会計で貸借対照表に載り、純負債が増えて見える。国内の家賃はほとんどが定期借家で、更新時に増額を求められる例も多い。
海外の赤字と債務超過
北米の営業損失は2026年3月期も2.9億円で、子会社は24.5億円の債務超過だ。北米のティム・ホー・ワンを2026年10月に手放すが、残る店の赤字が続けば再建は進まない。欧州の新店も立ち上げの費用が先に出る。債務超過の子会社は、親会社の資金支援に頼る構図が続く。
ブランド契約の更新
ハードロックカフェの日本での独占展開は2033年末までだ。ほかにも、サラベス、ウルフギャング、ババ・ガンプなど多くのブランドが使用許諾にもとづく。更新の条件が悪化したり打ち切られたりすれば、店舗と利益が失われる。契約先の事情で条件が変わる点は、会社の手に負えない。
減損と閉店の損失
2026年3月期は減損損失9.7億円などを特別損失に計上し、純利益が営業利益の2割に届かなかった。設備投資は年18億円と重く、新店が育たなければ減損が毎年のように出る。出店は商業施設の再開発に左右され、立地の質が利益を決める。
人件費と食材費の上昇
連結の従業員は2,386人で、パート・アルバイトも多い。賃金の上昇と、食材・エネルギー・物流の高騰を、値上げで吸収できなければ利益率が下がる。建築費の上昇は、新店と改装の費用を押し上げる。人手不足でアルバイトの時給が上がれば、費用はさらに膨らむ。
財務の薄さと景気の谷
自己資本比率は27%で、借入は総資産の25%にあたる。外食は不況の谷で客足が真っ先に落ち、2021年3月期には営業損失が14億円だった。同じ谷が来れば、財務は一気に傷む。自己資本が薄いまま損失が続けば、借入の条件が悪化する恐れもある。
今後の分かれ目
- 北米の営業損失がなくなり、全社の営業利益率が5%台に乗った
- 海外の再建が進んだと判断し、楽観とやや楽観の確率を上げる。
- ハードロックカフェなど主要ブランドの契約が、条件を悪化させて更新された、または打ち切られた
- 店舗数と利益を下方に直し、悲観の確率を厚くする。
- 既存店の売上が前年を2期続けて下回った
- 値上げが通らなくなったと判断し、やや悲観と悲観の確率を厚くする。
- 特別損失(減損・店舗閉鎖)が営業利益の3割を超える年が続いた
- 出店の投資効率が悪いと見て、純利益÷営業利益の中立の置き方を下方に直す。
- 英国の新店が黒字化の道筋を示した
- 欧州の立ち上げ費用の見通しを上方に直す。ただし規模が小さいので、確率の変更は小さくとどめる。
- 配当の増額や自社株買いの方針が明示された
- 還元の合計を上方に直す。ただし稼ぐ力が変わらなければ、倍率は据え置く。
見ておくもの
- 既存店売上高・客数(月次)
- 国内のセグメント利益率(2026年3月期は8.3%)
- 北米の営業損益(2026年3月期は−2.9億円)とティム・ホー・ワン北米の譲渡(2026年10月)
- 特別損失(減損・閉店)の大きさ
- 家賃(国内20.8億円・海外8.3億円)と有利子負債
- 主要ブランドの契約更新(ハードロックカフェは2033年末まで)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価に寄せず、式と事業の経済性から置いた。資本コストは8.5%(基本7.5%、quality +1.5%)。中立の事業 ROE は k を下回るので、上限は 1÷k の11.1倍とし、その約9割弱の9.5倍に置いた。余った現金は立てていない。現預金58億円と借入約61億円が釣り合う。持ち合い株は小さい。家賃は営業費用で利益から引き済みで、年約29億円の固定の約束として悲観の利益率に入れた。新リース会計(2028年3月期から)で家賃が貸借対照表に載り、営業利益が少し増え、純負債がリース負債の分だけ増えるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。優待は年0.15億円と推計し、還元に10年分を足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→15.04 倍・やや楽観 PER 11.1→14.2 倍・中立 PER 9.5→13.01 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。