結論
サンマルクホールディングスは、サンマルクカフェと鎌倉パスタを軸に、牛カツの京都勝牛・もと村を買い足してきた外食グループだ。筆者の結論は、事業は悪くないが今の値段は先を見すぎている、というものだ。
稼ぎの柱は 3 つある。喫茶のサンマルクカフェは 289 店で、利益率は 1 割を超える。鎌倉パスタなどのレストランは堅実だが、伸びは小さい。牛カツは 2024 年に 2 社を約 217 億円で買い、売上の押し上げ役になった。2026 年 9 月には、うどんのつるとんたんを 128 億円で買うと発表した。
問題は買い方にある。買収の値段は売上の 2 倍前後と重く、借入で賄っている。のれん、つまり買収で上乗せして払った分の償却が利益を削る。しかも牛カツ・うどんは流行に左右されやすい業態で、稼ぎが 10 年続くかは読みにくい。
中立では、10 年後に売上が 1,300 億円台、営業利益が 80 億円台になる。伸びの中身は物価と出店と買収の積み上げで、1 店あたりの稼ぎが目立って増えるわけではない。資本の稼ぎ(ROE)が資本コストにわずかに届かず、倍率は 9 倍台に収まる。
今の時価総額は約 550 億円、利益の 20 倍にあたる。10 年後の価値は、配当を足しても今の値段を大きく下回る。筆者は割高と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サンマルクカフェと鎌倉パスタが生む安定した現金は評価できる。これを主役にしたまま、割安に買える時だけ買い足す会社なら、長く持ちたい。
だが現実の資本配分は逆だ。事業の稼ぎがまだ戻りきらないうちに、売上の 2 倍の値段で買収を重ねている。買った牛カツは、流行に乗った業態で、10 年後の稼ぎを予想しにくい。予想しにくいものに高い値段を払うのは、安全域を自分で削る行為だ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、会計上の純利益より薄い。店の改装・出店・のれんの償却に利益が吸われ、さらに家賃という固定の約束がある。借入も 128 億円分が増える。
一方、不採算の約 180 店を閉じて、ここ 2 年で利益率を 4% から 6% 近くまで戻した経営の実行力は本物だ。買収後の統合で原価率と人件費を抑えられれば、評価は変わる。
値段の面では、今の時価総額は 10 年先の稼ぎの成長まで先取りしている。安全域は乏しい。事業は悪くないが、この値段で持つ理由は見つからない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 3 本立てだ。第一は喫茶のサンマルクカフェで、ショッピングセンターや路面に 289 店を持つ。焼きたてのチョコクロが看板で、売上は約 285 億円、営業利益率は 1 割強と、グループでいちばん収益性が高い。
第二はレストランだ。鎌倉パスタが約 210 店で中核をなし、サンマルクグリル(神戸元町ドリア)や備長扇屋などが加わる。祖業の郊外型レストランは店が古く、不採算店の閉店が続いてきた。
第三が牛カツだ。2024 年に京都勝牛(約 112 億円)と牛かつもと村(約 105 億円)を買い、2025 年度は両社がフルに利益へ入った。国内は約 140 店、海外は 9 カ国 27 店。電気で加熱する機械を開発し、固形燃料を使えない商業施設にも出せるようにした。国内にはまだ 150〜200 店の余地があると会社は見ている。
2026 年 12 月には、うどんのつるとんたんの事業を 128 億円で引き継ぐ予定だ。直営 14 店と海外 2 店で売上は約 61 億円。1 店あたりの売上が大きい大型店で、インバウンドの取り込みを狙う。
全社の売上は 2026 年 3 月期に 884 億円まで増えた。2 年前の 640 億円台から、買収で一気に積み上がった形だ。店舗はほとんどが賃借で、家賃は毎年必ず払う固定の約束になる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、はっきり言って深くない。サンマルクカフェは焼きたてパンという個性を持つが、客を呼ぶ力はコメダ珈琲店やドトールほど強くない。店数は 289 店と、スターバックスの約 2,100 店、ドトールの約 1,075 店、コメダの約 1,035 店に比べて小さい。
それでも収益性は悪くない。立地を選んだ出店と、パンの自社製造で、喫茶の営業利益率は 1 割を超える。これは価値のある事業だ。
一方、買って増やした牛カツは別の問題を抱える。牛カツは国内で流行して競合が増えた業態で、先行者の利益は薄れる。原価率も既存業態より高い。電気加熱の機械と海外の観光客需要で差をつけようとしているが、同じ手を打てる競合が出てくる。
資本の使い方は評価が割れる。2021〜22 年の赤字から立ち直り、不採算の 180 店ほどを閉じて身軽にした点は評価できる。だが回復の次の一手が、売上の 2 倍で買う M&A だった。ROE は 8% 台で、買収の払いすぎが利益に表れてくるかはこれからだ。
過去 10 年の ROE は赤字期を含めて中央値 4.7% と低い。足元の 8% 台は、売上の増えた牛カツの寄与が大きい。優良企業の水準には届いていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
カフェの国内市場は成熟している。客数は人口に沿って横ばいか微減だ。値上げは通りやすいが、客はコメダ・ドトール・スターバックス・コンビニのコーヒーとの間で動く。サンマルクカフェが伸ばせるのは、空きテナントへの出店と、既存店の改装を通じた分だけだ。会社は 2029 年度に 370 店を目指すが、これまでは閉店が出店を上回ってきた(2025 年度に初めて純増)。
レストランは人口減と人手不足の逆風が最も強い領域だ。最低賃金は上がり続け、パート・アルバイトの確保にも費用がかかる。鎌倉パスタのようなカジュアルなパスタ業態は、サイゼリヤ、ジョリーパスタ、ロイヤルホストなど多くの競合に囲まれている。
牛カツは今のところ業界の追い風を受ける数少ない分野だ。観光客が日本食を食べに来る流れは続いており、もと村と京都勝牛の海外出店(9 カ国 27 店)も増えている。ただし、先行者は 2 社で、ほかにも専門店が増えている。ブームが落ち着けば国内の既存店売上は下がる。
外食全体では、物価の分は値上げで転嫁できるが、人件費と食材の値上がりを完全には吸収できない。自動化投資で差をつけた会社だけが利益率を守る。サンマルクはこの投資の規模では大手に劣る。
M&A は買う側にとって追い風でもある。後継者難の中小チェーンが増え、売り手の数は多い。だが買収の値段が上がれば、買い手に残る利益は薄くなる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。連結の配当性向 35% を目安に、DOE(株主資本配当率)も見て決める。2026 年 3 月期は増配で、増配基調(下限あり)の方針は続くとされる。株主優待もある。自社株買いは大きな方針としては示されていない。
資本の使い道は M&A が最優先だ。2025 年 11 月の中期経営計画の更新で、2029 年 3 月期の売上目標を 800 億円から 1,000 億円へ引き上げた。理由は、牛カツ 2 社の買収で旧目標を前倒しで超えたからだ。資金の配分は、既存ブランドの投資に約 110 億円、牛カツに約 45 億円、M&A の借入返済と利息に約 220 億円を置いた。
この返済計画に 2026 年 9 月のつるとんたん(128 億円)が加わる。買収は売上の約 2 倍という高い値段で、借入が先に増える。純有利子負債は 2026 年 3 月末の約 57 億円から、100 億円台後半へ増える見込みだ。
経営は M&A を成長の主軸に置いている。買収のたびに、のれんと借入が積み上がる。TOB など買われる側になる確率は、参考値で 16% ほどある。時価総額が 550 億円と小さく、買い手が現れうる大きさだ。
株主優待は年およそ 0.3 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サンマルクカフェは 2025 年度に初めて純増へ転じた。会社は 2029 年度に 370 店を目指し、2027 年 3 月期だけで 309 店まで増やす見通しを示す。路面店とショッピングセンターの両方に出せる形ができ、既存店の改装も進むため、店ごとの稼ぎも伸びる。喫茶の利益率は 1 割を超えており、店が増えればそのまま利益になる。
牛カツは、観光客が日本食を食べに来る流れの中心にある。もと村と京都勝牛は 9 カ国 27 店に出ており、今期だけで 10〜20 店が増える見込みだ。国内は 150〜200 店の出店余地がある。電気加熱の機械で、固形燃料を使えず出せなかった商業施設にも店を出せるようになった。
つるとんたんは 1 店あたりの売上が大きく、観光客の多い都市部で稼ぐ。ここに牛カツの運営ノウハウを重ねれば、買収で払った分は数年で取り戻せる。
買収で売上が増えたのは、約 2 年前に始めた M&A の成果だ。不採算店を閉じて利益率を戻した実行力があり、買ったブランドの統合も進められる。中期経営計画の売上 1,000 億円は、つるとんたんの上乗せも入れれば前倒しで届く。
物価の上昇を値上げで通せる業態でもある。家賃・人件費が上がっても、客単価で受け止められる。業績は増収増益の流れの中にあり、成長が続く間は倍率も維持される。
慎重な見方
買収の値段が重すぎる。牛カツ 2 社で約 217 億円、つるとんたんで 128 億円。売上の 2 倍という値段は、買った事業が長く高い利益を出し続けることを前提にしている。だが牛カツは流行の業態で、競合が増える。実際、原価率は既存業態より高く、利益率は低い。
喫茶の営業利益率が高くても、買収で増えるのは利益率の低い事業だ。全社の営業利益率は 2 年前の 4% から 6% 弱に戻ったが、10 年前の 12% には遠い。人手と食材の値上がりは、値上げでは吸収しきれない。
のれんの償却は毎年利益を削る。業態が思うように稼げなければ、減損で一気に自己資本が減る。借入は先に増え、利払いは金利の上昇で重くなる。店舗はほぼ賃借で、家賃という固定の約束は売上が落ちても残る。
2025 年度は出店 40 に対して閉店が 47 と、いまも不採算店の整理が続いている。喫茶の店数は 289 店で、コメダやドトールの 3 割に満たない。立地の優位だけでは差がつかず、新しい店ほど稼ぎが落ちる。
会社の目標は売上 1,000 億円だが、買収で売上を買っても、1 店あたりの稼ぎが増えなければ株主の利益は増えない。成長の質を見ると、今の値段は高すぎる。
どちらに重みを置いたか
喫茶と鎌倉パスタの安定した稼ぎと、赤字から戻した実行力は強い見方が優勢だ。ただし牛カツ・うどんの稼ぎは流行の影響が大きく、払った値段も重い。この点は慎重な見方が的を射ている。承継や統合の実行リスクは資本コストに足さず、確率の分け方で表した。やや悲観と悲観の確率を厚めに置き、合わせて 4 割弱にした。中立でも、ROE が資本コストにわずかに届かないため、10 年後の時価総額は今を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,580 円554 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 539 円116 億円)。 今の値に割り戻すと 1,588 円341 億円、今との差 −38.1%、 期待の年率 +2.0%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,425 円1,164 億円 | 806 円173 億円 | +143.0% | +9.3% | 498 円107 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,146 円890 億円 | 694 円149 億円 | +88.8% | +6.6% | 1,065 円228 億円 |
| 中立 | 32% | 3,063 円657 億円 | 596 円128 億円 | +42.7% | +3.6% | 1,171 円251 億円 |
| やや悲観 | 26% | 892 円191 億円 | 424 円91 億円 | −48.7% | −6.5% | 342 円73 億円 |
| 悲観 | 12% | 186 円40 億円 | 172 円37 億円 | −86.0% | −17.9% | 43 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,580 円554 億円 | 539 円116 億円 | +21.7% | +2.0% | 3,119 円669 億円 |
今の株価時価総額 2,564 円550 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% カフェの純増と牛カツの海外展開が当たる 利益 70 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 5,425 円1,164 億円
サンマルクカフェは 370 店の目標に届き、路面店の出店も順調に増える。喫茶の営業利益率は 1 割強を維持する。牛カツは国内の出店余地を使い、海外も 100 店近くまで広げる。電気加熱の機械で出せる商業施設が増え、つるとんたんも都市部の観光需要を取り込む。
買収した業態の原価率も、仕入れの一括化で下がる。営業利益率は牛カツ・うどんで 1 割を超える。のれんの償却もほぼ終わり、利益が素直に残る形になる。
鎌倉パスタは改装と出店で数を保ち、利益率は 7% 台に上がる。経営は買収ごとに統合を進め、借入も計画どおりに返す。
10 年後には、国内の喫茶・パスタの堅い稼ぎを土台に、和の専門業態が第二の柱として定着している。
- 喫茶(サンマルクカフェ):数量 350(サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.32(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 462 億円・営業利益 53 億円。370 店・利益率 11.5%
- 牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん):数量 390(牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店))× 価格 1.41(1 換算店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 551 億円・営業利益 61 億円。牛カツ・うどん 390 換算店・利益率 11%
- レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか):数量 420(レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.29(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 543 億円・営業利益 41 億円。利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.81 倍、時価総額 1,107 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:喫茶の純増・牛カツの高い出店余地・買収の値段の回収がすべて続く必要があり、連続成功の確度は高くない。
やや楽観 22% 喫茶の純増が続き、牛カツも出店が進む 利益 56 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 4,146 円890 億円
サンマルクカフェは 335 店前後まで増え、店ごとの稼ぎも物価並みに伸びる。牛カツは国内で 200 店近くまで広がり、海外も増える。つるとんたんは都市部で安定して稼ぐ。
人件費の上昇は自動化投資でほぼ吸収できるが、牛カツの原価率の高さは残り、利益率は 1 割に届かない。鎌倉パスタは数を保つが、伸びは小さい。
M&A は続くが、新たな買収の値段は慎重に見られ、規模より稼ぎを優先する。借入は計画どおり減り、のれんの償却も進む。
10 年後には会社の目標に近い売上規模に届き、利益も今より 2 倍近くまで増える。ただし店あたりの稼ぎは物価並みの伸びにとどまる。
- 喫茶(サンマルクカフェ):数量 335(サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.32(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 442 億円・営業利益 49 億円。335 換算店・利益率 11%
- 牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん):数量 330(牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店))× 価格 1.41(1 換算店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 466 億円・営業利益 47 億円。330 換算店・利益率 10%
- レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか):数量 405(レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.29(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 524 億円・営業利益 37 億円。利益率 7%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.87 倍、時価総額 833 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の上位レンジに近い、現実的な上振れ。会社の中計に近い歩みで、買収の統合が順調に進む。
中立 32% 中立:喫茶は堅調、牛カツは流行が落ち着いて安定する 利益 44 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 3,063 円657 億円
サンマルクカフェは 320 換算店ほどで落ち着き、店あたりの売上は物価並みに伸びる。喫茶の営業利益率は 1 割強で安定する。鎌倉パスタ・グリルなどのレストランは、閉店と出店を繰り返しながら数を保つ。
牛カツは国内で 170 店前後、海外は 50 店ほどまで広がる。流行は落ち着き、ブームのころの高い客数は続かないが、専門店としての地位は保つ。つるとんたんは観光客と都市部の客で安定して稼ぐ。牛カツ・うどんの営業利益率は 9% 程度とみる。
人件費の上昇は自動化でほぼ相殺できる。ただしのれんの償却と借入の利払いが利益を削り、全社の営業利益率は 6% 台にとどまる。
10 年後には、売上は買収と物価で 1,300 億円台に増える。利益は今より 6〜7 割増えるが、増えた資本に見合う稼ぎにはならず、ROE は 8% 前後にとどまる。
- 喫茶(サンマルクカフェ):数量 320(サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.32(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 422 億円・営業利益 44 億円。320 換算店・利益率 10.5%
- 牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん):数量 280(牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店))× 価格 1.41(1 換算店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 396 億円・営業利益 36 億円。280 換算店・利益率 9%
- レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか):数量 400(レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.29(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 517 億円・営業利益 34 億円。利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 603 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心値に、買収の値段の重さと流行の落ち着きを組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 26% 牛カツの流行が去り、借金と家賃が重くなる 利益 23 億円 · PER 6.3 倍 · 株価時価総額 892 円191 億円
牛カツは国内で競合が増え、既存店の客数が落ちる。電気加熱の機械でも差がつかず、原価率の高さが利益率を押さえて 6% にとどまる。つるとんたんも、観光客の伸びが鈍れば、大型店の固定費が重く残る。
喫茶は店数を保つが、人件費の上昇で利益率が 1 割を割る。鎌倉パスタは競合に押され、利益率は 5% 程度に落ちる。
のれんの償却と借入の利払いが続き、純利益は今の半分近くまで減る。買収の再開は難しくなり、会社は借入の返済を優先する。
家賃は売上が落ちても減らないため、固定費の重さが利益率を押し下げる。10 年後は、事業は残るが、買収で買った成長の分は、利益に結びついていない。
- 喫茶(サンマルクカフェ):数量 300(サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.28(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 384 億円・営業利益 36 億円。300 換算店・利益率 9.5%
- 牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん):数量 215(牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店))× 価格 1.37(1 換算店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 18 億円。215 換算店・利益率 6%
- レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか):数量 375(レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.24(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 463 億円・営業利益 23 億円。利益率 5%
倍率:ROE 4.8%(純利益 23 億円 ÷ 自己資本 484 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.8% + 残る割合 1/2 ×(4.8 − 8.3)= 6.5%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 9.0 倍。牛カツの利益率が落ち、借金の利払いと家賃の固定費が重く、新しい店の稼ぎは資本コストを割る。やや悲観は上限の 7 割、上限の 7 割の 6.3 倍に置いた。
確率:買収の値段の重さと流行の剥落が、10 年かけて利益率を押し下げる想定。
悲観 12% 買収の失敗で優良さを失い、減損が重なる 利益 8 億円 · PER 5.0 倍 · 株価時価総額 186 円40 億円
牛カツのブームが去り、国内の既存店が大きく落ち込む。海外出店も採算が合わず、店の閉鎖が続く。つるとんたんも、観光客の減少と人手不足で稼げず、買った値段に見合わない。
のれんは減損で消え、自己資本は大きく減る。借入の利払いは金利の上昇で重くなり、返済を急ぐために配当を減らす。
喫茶は競合に押されて利益率が落ち、店舗数も減る。鎌倉パスタも客が戻らず、不採算店の整理が続く。家賃は固定費として残り、売上が落ちた分だけ利益を削る。
それでも喫茶とパスタの店という資産は残るため、事業の売却や再編で価値が戻る可能性はある。10 年後は、優良な外食企業の面影はなく、稼ぐ力は今の 3 分の 1 以下になる。
- 喫茶(サンマルクカフェ):数量 270(サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.23(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 332 億円・営業利益 23 億円。270 換算店・利益率 7%
- 牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん):数量 150(牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店))× 価格 1.21(1 換算店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 2 億円。150 換算店・利益率 1%
- レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか):数量 330(レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む))× 価格 1.14(1 店あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 376 億円・営業利益 11 億円。利益率 3%
倍率:ROE 2.3%(純利益 8 億円 ÷ 自己資本 343 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 6.3 倍より低い 5.0 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:買収の値段が重く、流行業態の稼ぎの持続が読めないため、個社の優位を失う筋書きとして無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
喫茶(サンマルクカフェ)
ショッピングセンターと路面に出す焼きたてパンのカフェ「サンマルクカフェ」。直営中心で、客層は幅広い。
| 数量サンマルクカフェの店舗数(客数の増減は換算店で織り込む) | 価格1 店あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 289 | 0.98 | 285 | 31 |
| 10 年後 中立 | 320 | 1.32 | 422 | 44 |
取り方:喫茶事業の売上 284.6 億円を期末の 289 店で割った。営業利益は第 3 四半期累計の利益率 10.9% を通期に当てはめた筆者の推定(本社費・のれん償却の前)。1 店あたり売上は物価で 10 年 1.34 倍が中立。客数の減少は店数でなく換算店の数量側に入れた。
牛カツ・和専門(京都勝牛・もと村・つるとんたん)
2024 年に買った牛カツ 2 ブランドと、2026 年 12 月に承継予定のうどん「つるとんたん」。インバウンドと海外展開の担い手。
| 数量牛カツ換算店舗数(つるとんたんの大型店は 1 店=約 4 店分、海外 FC は 1 店=1 店) | 価格1 換算店あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 166 | 1.05 | 175 | 17 |
| 10 年後 中立 | 280 | 1.41 | 396 | 36 |
取り方:レストラン事業の売上 599.7 億円のうち牛カツ 2 ブランド分を約 175 億円と筆者が推定(京都勝牛 103 店・もと村 36 店・海外 27 店で 166 店。業態別の売上は非開示)。営業利益はレストラン全体 44.7 億円の利益率より低い約 10% とみた。つるとんたん(売上 61 億円)は 2026 年 12 月の承継なので今の数字には入れず、先の数量に換算店で足す。 数量は実物(換算店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
レストラン(鎌倉パスタ・グリル・和食ほか)
パスタの鎌倉パスタ(約 210 店)を中心に、サンマルクグリル・神戸元町ドリア・備長扇屋などの洋食・和食。祖業の郊外型レストランを含む。
| 数量レストラン業態の店舗数(客数の増減は換算店で織り込む) | 価格1 店あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 440 | 0.97 | 425 | 28 |
| 10 年後 中立 | 400 | 1.29 | 517 | 34 |
取り方:レストラン売上 599.7 億円から牛カツ分を引いた約 425 億円を、グループ 868 店から喫茶 289 店と牛カツ 139 店を除いた約 440 店で割った。営業利益は同事業の 44.7 億円から牛カツ分を引いた約 28 億円と推定(利益率 6.5%)。
リスクと懸念
買収の値段とのれんの減損
牛カツ 2 社とつるとんたんで約 345 億円を払った。売上の 2 倍前後という値段は、買った事業が高い利益を長く出し続ける前提だ。稼ぎが期待に届かなければ、のれんの減損で自己資本が一気に減る。
牛カツ・うどんの流行の剥落
牛カツは国内で競合が増える途上の業態で、ブームが過ぎれば既存店の客数が落ちる。原価率も既存業態より高く、利益率の余裕は小さい。観光客の需要に頼る度合いが高い点も弱みだ。
借入の増加と利払い
つるとんたんの 128 億円で、純有利子負債は今の約 57 億円から 100 億円台後半へ増える見込み。借り換えのたびに金利が上がるため、利益に占める利払いの重さが増す。
人件費と家賃という固定の約束
店舗のほとんどは賃借で、家賃は毎年必ず払う固定の約束になる。最低賃金の上昇と人手不足も重なり、売上が落ちると利益が大きく振れる。2028 年 3 月期から新リース会計基準で、借入とリースの見かけの数字が変わる点にも注意が要る。
不採算店の整理の長期化
2025 年度は出店 40 に対して閉店 47 だった。今期も出店 40〜50、閉店 30〜35 の計画で、整理が終わっていない。祖業の郊外型レストランは店の老朽化が進み、改装費も重い。
カフェの競争
サンマルクカフェ 289 店に対し、スターバックスは約 2,100 店、ドトールは約 1,075 店、コメダは約 1,035 店。店数で劣り、焼きたてパンの個性だけでは客を呼べなくなる懸念がある。
買い手が現れる可能性
時価総額が 550 億円と小さく、TOB など買われる側になる確率は参考値で 16% ほどある。買われれば値上がりもあるが、本質価値の評価は変わらず、この点は筋書きには入れていない。
今後の分かれ目
- 牛カツの既存店売上と客数が 2 期続けて前年を割ったら
- 流行の剥落が始まったとみて、やや悲観・悲観に重みを移す。
- つるとんたんの承継後の営業利益率が 1 割を超え、海外 FC も順調に増えたら
- 買収の値段が回収できるとみて、中立・やや楽観の確度を上げる。
- サンマルクカフェの店数が 2029 年度の 370 店へ向けて毎年純増したら
- 喫茶の成長を高く見直し、楽観側の確率を上げる。
- 大型の M&A が続き、借入が純資産の半分を超えたら
- 資本配分の規律が崩れたとみて、やや悲観側に寄せる。
- のれんの減損が出たら
- 買収の価値を下方修正し、悲観側に重みを移す。利益への影響と自己資本の減りを見直す。
- 最低賃金の上昇が自動化投資の効果を上回り続けたら
- 利益率の下振れとみて、中立の利益率を下げる。
見ておくもの
- 牛カツ・もと村の既存店売上と客数、海外店舗数
- つるとんたんの承継後の売上・営業利益率(2027 年 3 月期の通期から)
- サンマルクカフェの店舗数の純増(2029 年度 370 店の進み具合)
- 純有利子負債と、のれん等の償却額・減損
- 出店と閉店の数(不採算店の整理の進み具合)
- 配当性向 35% の維持と、自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
喫茶・牛カツ・レストランの 3 つに分け、店舗数(実質)× 1 店あたり売上(名目)で 10 年を積み上げた。自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流し、ROE は結果として出した。倍率は式(正当化 PER)の 7〜9.5 割で置き、今の株価や過去の倍率は使っていない。悲観は稼ぐ力と今の自己資本で測った。今の時価総額と 10 年後の価値を最後に比べ、寄せていない。新リース会計(2028 年 3 月期から)で営業利益と純有利子負債の見かけが変わるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.9→15.81 倍・やや楽観 PER 11.3→14.87 倍・中立 PER 10.5→13.7 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足した 8.3%。承継や M&A の実行といった個別のリスクは k に足さず、確率と筋書きで表した。事業は黒字で傾いておらず上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.80%。