結論
みのやは、菓子専門店「おかしのまちおか」を関東・中京・関西で220店舗展開する会社である。筆者の結論は「やや割安」だ。現在の時価総額約45億円に対し、10年後の利益と株主還元を確率で評価した本質価値は約57億円となる。ただし、店を増やせば自然に儲かる会社ではなく、割安さを実現できるかは新店の採算にかかっている。
この会社の魅力は、菓子を買うという日常的な行為に根差していることだ。流行する技術が変わっても、手頃な菓子を選ぶ楽しさは残る。約1,500品目の品揃え、大手メーカーとの直接取引、独自の特売品調達、地域に合わせた売場づくりには、小規模店にはまねしにくい強みがある。菓子専門店として220店舗を束ねる規模も、仕入れと物流を支えている。
一方、規模の拡大はまだ利益の拡大につながっていない。売上高は2024年6月期から2026年6月期にかけて225億円から257億円へ増えたが、営業利益は約10億円から約7億円へ減った。2026年6月期の営業利益率は2.6%にすぎず、新店の販売不振による減損も続いた。家賃と人件費が先に出ていく小売業では、この薄さを軽視できない。
会社は2027年6月期に230店舗、売上高約272億円、営業利益約7億円を見込む。筆者は10年後の中立を295店舗とし、菓子の数量が国内全体では伸びにくいなか、出店によるシェア獲得と物価に沿う客単価上昇を主な成長源と考える。新店の基準を厳しくし、営業利益率を3%前後へ戻せれば、利益は着実に積み上がる。
もっとも、事業の強みは価格を自由に決められるほど厚くない。現時点の価値の上振れは店舗展開の成功に相当程度依存するため、長く持つ株主にとっては、時価総額の安さよりも、出店に投じた資金が十分な利益を生むかを継続して確かめることが大切である。
バリュー投資の観点から
長く持つ株主が最初に確かめるべきなのは、店を増やすほど、株主が自由に使える利益も増えるかどうかだ。みのやは、菓子という分かりやすい商品を売り、繰り返し利用してもらう商売をしている。この事業の存在自体が10年で不要になるとは考えにくい。流行の技術に多額の研究開発費をかけ続けなくてもよく、商品の需要も一つの新製品に依存しない。
しかし、事業が分かりやすいことと、高い収益を長く守れることは別である。顧客はスーパーやドラッグストアへ気軽に移れ、家賃の高い商業施設では客が減っても固定費が残る。2024年から2026年にかけて売上が伸びながら利益が減った事実は、店舗数という見栄えのよい成長指標だけでは株主価値を測れないと教えている。新しい店の投資回収期間や開業後の営業利益が開示され、改善していることが望ましい。
資本配分の面では、創業以来の物流網やメーカーとの取引関係を生かして店舗を増やす方針は合理的だ。未知の事業を高値で買収するよりも、自分たちが理解する立地と商品に投資する方が失敗を管理しやすい。ただし、すでに不採算店の減損が生じている以上、今後は出店件数より投下資本利益率を優先しなければならない。採算の悪い出店をやめ、既存店の売場と物流を磨いて残った資金を還元する経営なら、同じ売上規模でも価値は高くなる。
現時点の時価総額には一定の安全域があると判断するが、非常に厚いとはいえない。中立の10年後には今より大きな利益を生む見通しが立つ一方、利益率がわずかに下がるだけで株主利益が大きく減るからだ。株価の安さを信じて持つのではなく、既存店の客数、出店後の採算、家賃負担、資本の戻り方が見通しどおりに進むかを見ながら保有する会社である。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は、菓子専門店「おかしのまちおか」の直営販売である。会社の報告セグメントは菓子小売事業の一つだけだが、店の収益構造を理解するには駅前・商店街の路面店と、商業施設に入るショッピングセンター店を分けて考える必要がある。2026年6月末の店舗は路面店80店、ショッピングセンター店140店である。最近の新規出店は後者に集中している。
商品は森永製菓、明治、ロッテ、江崎グリコ、不二家、亀田製菓などの定番菓子が中心である。定番品は繰り返し買う需要を取り込み、メーカーの余剰品や期間限定品などをまとめて仕入れるスポット商品は、安さと発見の楽しさを生む。メーカーとの共同開発による限定品や輸入菓子も扱い、約1,500品目を組み合わせて来店動機をつくっている。2026年6月期の売上内訳は菓子247.43億円、飲料8.95億円、その他0.28億円であり、菓子が約96%を占める。
路面店は駅前や商店街の通行客を捉える商売で、目に入りやすく気軽に寄れることが強みだ。その反面、猛暑や雨天によって来店数が落ちやすい。ショッピングセンター店は施設そのものが集客を担い、家族連れにも届くが、施設運営会社との賃貸借条件や館内の競争に左右される。直近の会社資料では路面店の年間平均売上高は約1.20億円、ショッピングセンター店は約1.14億円で、店の形態による違いは大きい。
仕入れた商品を各地の物流拠点から店舗へ届ける仕組みも収益の土台である。さいたま、横浜、鈴鹿、茨木に物流センターを構え、関東・中京・関西に店舗を集中させることで、配送の効率と仕入れ規模を追求している。自社で菓子を製造する事業ではないので、大規模な製造設備への投資は不要だが、店舗の内装、陳列什器、敷金、物流設備には継続的な資金が必要となる。
実際の販売は菓子の個数だけでなく、年間に何回会計が行われ、一回の会計でいくら買われるかで決まる。会社は既存店の客数と客単価の前年比を公表しており、2026年6月期は客数が1.8%減る一方、客単価は3.1%増えた。売上高が伸びても来店の勢いが弱まる場合があることを、この数字は示している。店舗形態別の会計件数と絶対的な客単価は非開示であり、数量と単価の絶対値は推定を明示して評価する。
優良さと弱いところ
最大の競争上の強みは、菓子専門店という狭い領域で築いた店舗網と仕入れ関係である。会社は菓子専門店として最大規模の店舗数をうたい、メーカーと直接取引を続けてきた。地域ごとの物流網があるため、単独の菓子店より多くの商品を機動的に仕入れて売場へ届けやすい。メーカーの余剰品をまとめて仕入れられることも、独特の品揃えと価格訴求につながる。
ただし、この強みを独占的な堀と呼ぶのは難しい。扱う商品の大半は他の店にも並ぶ有名メーカーの菓子であり、消費者はスーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウント店へ容易に移れる。店舗を替える費用はほとんどなく、定番品を大幅に値上げしても客が残るとは考えにくい。2026年6月期に客単価が上がったのも、主としてメーカーの価格改定や購入商品の構成によるもので、自社の独占的な価格決定力を示すものではない。
収益力にも弱さが表れている。2024年6月期の営業利益率は4.3%だったが、2025年6月期は2.8%、2026年6月期は2.6%へ低下した。新店の売上不足、店舗家賃、人件費、キャッシュレス決済費用などが利益を圧迫し、直近2期では収益力の低下した店舗に減損損失を計上している。既存の調達力や商品構成を生かしながら、利益率を改善できるかが堀の実力を測る試験になる。
過去6年のROE中央値は15.7%だが、2026年6月期は5.9%まで落ちた。直近は上場時の増資で自己資本が厚くなり、減損も重なっているため、この低さが永久に続くとは限らない。しかし、店舗の拡大に必要な資本も増え続ける。利益率の回復を伴わずに純資産だけが増えるなら、株主の資金の使い方は上手とはいえない。
長期の堀は「普通」と判断する。ブランドと仕入れ網は残るが、供給者と消費者を強く囲い込む力はない。独自商品の売上比率、既存店客数、開店後の採算が改善し続ければ評価を上げられる一方、売上だけを追う出店が続くなら競争優位はむしろ薄まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の菓子市場は、金額では成長しても販売数量が大きく伸びる市場ではない。全日本菓子協会の推計によれば、2025年の菓子小売金額は4兆996億円で前年比5.7%増だった。一方、生産数量は約196.8万トンで0.8%減っている。金額の増加は値上げによるところが大きく、物価を取り除いた需要の伸びは弱い。人口減少と高齢化を考えると、この構図を10年先にも引き継ぐのが自然だ。
みのやの2026年6月期の菓子売上約247億円を、この全国小売市場と比較した広義のシェアは約0.60%となる。決算期と統計の対象期間が異なるため概算だが、専門店として店舗数が多くても、菓子全体の流通ではまだ小さな存在だと分かる。全国市場にはスーパー、コンビニ、ドラッグストアなどの菓子売場が含まれ、同社と完全に一致する菓子専門店だけの市場規模ではない。
直接の専門店競合には二木の菓子などがあり、さらに大きな競争相手はイオンをはじめとする食品スーパー、セブン‐イレブンなどのコンビニ、ドラッグストアやディスカウント店である。これらの企業は菓子だけの売上を同じ定義で十分に開示していないため、競合ごとの厳密な菓子販売シェアは比較できない。市場全体の何割をどの大手が持つと断定するより、生活圏の買い物動線で、みのやが来店を選ばれるかを見るべきである。
成長の余地は市場全体の消費量増加より、専門店ならではの売場体験と出店による販路の獲得にある。会社は関東165店舗、中京27店舗、関西28店舗に集中しており、中京・関西には追加出店の余地がある。ただし、魅力的な商業施設の区画は有限であり、同じ地域で店を増やせば自社店舗同士で客を奪い合う可能性もある。新しい商業施設に出店すれば必ず既存店並みの売上が得られるわけではない。
原材料のカカオ、砂糖、包装材、物流費が上がればメーカーの出荷価格も上がる。小売価格への転嫁は名目売上を押し上げる一方、消費者は購入個数を減らしたり、価格の安い商品へ移ったりする。会社の2026年6月期の客数減少は、この綱引きの現実的な出発点だ。長期の中立では市場全体の実質数量をやや減少と見込み、同社は店舗網を広げることでシェアをおよそ0.8%台へ引き上げる。
AIエージェント代替の指定類型には該当しない。顧客が買っているのは人月、ソフトの操作画面、広告運用ではなく、実物の菓子だからである。ただし、メーカーがAIによる需要予測を高度化して余剰在庫を減らせば、同社の特売用スポット商品の仕入れ機会は細る可能性がある。これは直接の業務代替ではなく、調達構造の変化として評価する。
資本政策と M&A
経営が資金を優先して投じているのは新規出店と既存店の改装である。2026年6月期は16店舗を出店し、4店舗を退店した。店舗内装や敷金などを含む設備投資は約5.11億円で、営業キャッシュフロー約6.19億円に近い規模である。出店が続く限り、会計上の利益のすべてを配当に回せるわけではない。上場による新株発行で約8.57億円を調達したことも、現在の財務基盤を評価する際に区別しておきたい。
2026年6月末の自己資本は39.1億円で、自己資本比率は41.9%である。ただし、現金及び預金約16.82億円に対して有利子負債も約16.7億円あり、純現金が豊富な会社ではない。さらに、店舗などの年間賃借料は約21.05億円に上る。借入残高だけを見て財務が極めて安全だとはいえず、売上減少時に家賃をすぐ削れないことが本当の財務上の弱さである。
配当は2026年6月期に総額約0.89億円となり、配当性向は44.0%だった。2027年6月期の会社計画は年間配当総額約1.08億円に相当し、予想純利益に対する配当性向は31.2%である。2026年には200株以上の保有者を対象とする株主優待も導入した。2026年6月期に計上された優待引当金約0.04億円を年間原価の目安として、10年間の株主還元にも含めている。額面の優待券を全株主分の現金配当と同じように計上することはしていない。
会社は向こう3年間の中期計画を毎年更新する方式を採るが、公表資料から確認できる中期の売上高・営業利益・ROE・DOE・総還元性向・自社株買い額の数値の約束はない。確認できるのは2027年6月期の売上高271.83億円、営業利益7.07億円、当期純利益3.46億円、期末230店舗という単年度の計画と、年間約10店舗の純増を目指す方針である。
正木氏と関係先の保有比率が高く、上位株主への株式集中も大きい。短期的な売却圧力には左右されにくい反面、少数株主が余剰資産の処分や自社株買いを主導することは難しい。2026年6月期末には政策保有株式を約1.96億円保有しているが、直近にその大幅な売却を進めた事実は確認できない。大型買収で利益を増やした実績も確認できず、10年の中立には買収益や買収による相乗効果を織り込まない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
菓子は景気の良し悪しを問わず買われ、毎日の買い物のなかで小さな楽しみを提供する。国内人口が減っても、4兆円を超える菓子市場そのものが消えるわけではない。みのやの市場シェアは広い菓子小売市場の1%にも満たず、既存の需要を奪い合う余地は十分にある。専門店として220店舗を持つ仕入れ規模と、メーカーとの長年の取引関係を使えば、他の店では見つからない商品を継続的に集められる。
成長の中心となるのはショッピングセンター店だ。関東以外の出店余地は大きく、地域ごとに物流と店舗をまとめる方式は新しい市場へも展開できる。現在の年間10店舗前後の純増を10年以上続けることも、立地の確保と採算管理が改善すれば不可能ではない。商業施設の集客に乗りながら、客単価が物価以上に上がり、販管費を店数よりゆっくり増やせれば営業利益率は過去の良好期に近づく。
直近の低収益をそのまま将来へ延ばすのも適切ではない。2026年6月期の純利益には減損損失が重なり、上場による増資でROEも一時的に薄まった。会社はすでに出店基準の見直しと既存店の改装を進めている。2027年6月期には減損負担の一巡などによって純利益の回復を計画しており、ここから店ごとの採算を改善できれば、現在の利益は将来の稼ぐ力を過小評価している。
さらに、菓子の購買はAIエージェントが代わりに提供できるサービスではない。実店舗で見て選ぶ楽しさ、季節の限定商品、通りがかりの衝動買いという需要が残る。デジタル施策で販促と在庫管理の効率を高められれば、人件費や廃棄の増加を抑える余地もある。大きな買収に頼らず、既存事業の改善と配当を組み合わせて利益を株主に届けられる可能性を評価したい。
慎重な見方
最大の問題は、店を増やしても利益がついてこなかったという事実である。2024年6月期から2026年6月期にかけて、売上高は増えたのに営業利益は約3億円減った。2026年6月期には、新店の売上が計画を下回ったことを会社自身が説明し、店舗資産の減損も計上している。今後の成長をさらにショッピングセンターへの出店に求めるなら、その前に新店の採算が回復する証拠が必要だ。
商業施設側には立地と集客の支配力がある。みのやは菓子専門店として規模が大きくても、全国のスーパーやドラッグストアと比べれば交渉力は限られる。商品はメーカーの定番品が中心なので、値上げによって店舗の魅力が低下すれば客は簡単に移ってしまう。2026年6月期の既存店客数が減少したことも、値上げによる増収が必ずしも健全な数量成長ではないことを示している。
メーカーが生産と流通を効率化すれば、安く仕入れられる余剰品自体が減るかもしれない。スポット品の魅力が弱まれば、客にとって一般の食品売場と違う理由も減ってしまう。物価が上がる局面では、メーカーの仕入れ価格に加えて店舗家賃、配送費、最低賃金、キャッシュレス決済費用が同時に上がる。薄い営業利益率の会社にとって、この負担は小さくない。
財務の安全性にも限界がある。現預金が増えたのは確かだが、2025年の上場時には新株発行で資金を調達しており、借入金も残る。店舗家賃は毎年20億円を超え、撤退には原状回復や違約金の可能性が伴う。自己資本39億円をそのまま現金で回収できるわけではない。新店の失敗が何年も続けば、株主に帰属する資産と将来の稼ぐ力は同時に失われる。
株式の保有が創業家周辺に集中していることにも注意が要る。株主還元は改善しているが、配当を増やすか、不採算店を閉じるか、手元資金をどう使うかを少数株主が決めることはできない。売上の拡大を優先する経営が続くなら、純資産が増えてもその資産が資本コストを上回る利益を生むとは限らない。
どちらに重みを置いたか
10年後も菓子の実店舗需要が残るという見方は強いが、新店の採算については慎重な判断を優先する。直近の減損、営業利益率の低下、既存店の客数減少は、会社固有の下振れ要因である。そのため、やや悲観と悲観の確率を合わせて39%とし、上側の25%より厚くした。ただし、出店余地とメーカーとの取引関係は実在するため、中立の36%も十分に確保した。現在の価値はやや割安となるものの、その差は厚い競争上の堀から生じるのではなく、出店戦略が立て直される余地から生じている。今後は売上高よりも、出店一店当たりの利益と客数の改善を優先して評価する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 2,720 円98 億円(+ 還元の換算額還元の合計 516 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 1,611 円58 億円、今との差 +28.9%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,794 円245 億円 | 1,359 円49 億円 | +552.2% | +24.1% | 652 円24 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,379 円158 億円 | 915 円33 億円 | +323.5% | +17.9% | 900 円32 億円 |
| 中立 | 36% | 2,946 円106 億円 | 499 円18 億円 | +175.7% | +11.8% | 1,240 円45 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,054 円38 億円 | 250 円9 億円 | +4.3% | +0.5% | 339 円12 億円 |
| 悲観 | 13% | 749 円27 億円 | 55 円2 億円 | −35.6% | −4.4% | 105 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,720 円98 億円 | 516 円19 億円 | +158.9% | +11.1% | 3,236 円117 億円 |
今の株価時価総額 1,250 円45 億円(2026-11-02)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 出店と品揃えがかみ合い、専業チェーンとして存在感を高める 利益 17 億円 · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6,794 円245 億円
出店基準の見直しが成功し、商業施設の好立地を確保する能力が高まる。中京・関西で店舗の密度が増し、物流の効率が改善することで、メーカーの定番商品とスポット商品を組み合わせた品揃えが一層充実する。二木の菓子などの専門店だけでなく、スーパーやドラッグストアの菓子売場からも顧客を獲得し、国内菓子小売市場での存在感が高まる。
2036年には路面店75店舗、ショッピングセンター店280店舗の合計355店舗となる。路面店は店数を減らしながら好立地に集約し、ショッピングセンター店は新規出店と既存店改装によって一店当たりの来客数を改善する。購入単価は物価上昇に加えて限定品の増加とまとめ買いの定着で上がる。店舗の規模拡大が仕入れ・物流・販促の効率化につながり、営業利益率は過去の良好期に近い水準を回復する。
大型買収は必要とせず、既存事業への再投資を中心に成長する。十分な利益が出るようになった段階で、配当の増額に加えて適正な価格での自社株買いも実施する。競争上の強みは依然として商品調達と売場づくりが中心だが、地域で店舗を束ねる効果が広がり、店舗網全体として資本コストを大きく上回る利益を生む。
- 路面店:数量 1,178(年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,130(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 133 億円・営業利益 6 億円。75店舗×年間15.7万会計。物価上昇に加えて購入点数が増え、平均会計単価1130円。商圏の強い路面店へ集約し、営業利益率4.5%。
- ショッピングセンター店:数量 4,060(年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,300(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 528 億円・営業利益 22 億円。280店舗×年間14.5万会計。2036年にかけて高採算立地を獲得し、平均会計単価1300円、営業利益率4.2%。
倍率:営業利益約28.16億円に対して純利益16.61億円で、税引き後利益への転換率は約59%。2036年のROEは16.61÷90.0=18.46%、資本コストkは8.0%。堀は普通とし超過ROEの残存割合を1/2にすると、RONIC=8.0%+(18.46%−8.0%)÷2=13.23%。2036年以降の名目成長率gは2.5%。正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=約14.75倍であり、利益の上限をさらに恣意的に割り引かない。高い成長は2036年までの利益額に入れ、2036年以降の倍率では二重に評価しない。
確率:2026年時点で新店の販売不振と減損が発生しているため、出店の加速、客単価の上昇、過去の好調期並みの営業利益率を同時に実現する確率は高くしない。ただし、専門店としての知名度、既存の仕入れ網、関西・中京での出店余地があるため、実現可能性は残す。
やや楽観 17% ショッピングセンターへの出店が安定収益に育つ 利益 11 億円 · PER 14.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4,379 円158 億円
新規出店はショッピングセンターを中心に続き、2036年には335店舗になる。路面店は採算の低い立地から撤退し、主要な駅前と商店街に絞る。関西・中京での出店が物流拠点の稼働率を高め、地域のメーカーや施設運営会社との取引関係が深まる。
既存店ではメーカーとの共同企画、売場の入れ替え、限定商品の拡充が来店を支える。全社の客単価は物価の上昇におおむね沿って増え、ショッピングセンター店では一会計当たりの購入点数も少し増える。スーパーやドラッグストアとの価格競争は続くが、訪れる楽しさを保つことで専門店としての顧客を維持する。
出店件数より採算を優先する運営が定着し、2026年に問題となった新店の減損は例外的なものになる。販管費は増えるものの、物流の効率化と店舗運営の標準化が増収効果を残し、営業利益率は3%台半ばへ改善する。大規模な買収は行わず、投資資金を残しながら安定配当を増やす。会社の競争上の強みは独占には至らないが、収益を生む地域店舗網として評価できる。
- 路面店:数量 1,065(年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,080(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 115 億円・営業利益 4 億円。75店舗×年間14.2万会計。路面店を集約し、平均会計単価1080円、営業利益率3.7%。
- ショッピングセンター店:数量 3,562(年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,220(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 435 億円・営業利益 15 億円。260店舗×年間13.7万会計。物価に近い客単価の増加と緩やかな集客改善を見込み、営業利益率3.4%。
倍率:純利益11.23億円÷自己資本80億円=ROE14.04%。資本コスト8.0%に対し普通の堀の残存割合1/2を適用するとRONICは11.02%。2036年以降の名目成長率g2.5%から正当化PER=(1−0.025÷0.1102)÷(0.08−0.025)=約14.06倍となる。営業利益19.03億円と純利益11.23億円の比率は約59%で、過去の中央値に沿う。市場のPERを根拠にはしていない。
確率:毎年10店舗程度の出店方針をおおむね継続し、既存店の採算が改善する筋書きである。メーカーとの仕入れ関係と地域の物流網は支えになるが、商業施設の賃料と新店の立ち上がりには不確実性があるため、楽観側全体の確率を過大にしない。
中立 36% 出店は続くが、利益率の改善は緩やか 利益 8 億円 · PER 13.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2,946 円106 億円
菓子は日常の消費財として買われ続けるが、国内市場全体の実質消費量は人口減少と節約志向によって緩やかに減る。みのやは関東に加えて中京・関西へ出店し、スーパーやコンビニが取り切れない品揃えと買い物体験によって顧客を集める。市場全体が大きくならなくても、専門店の浸透余地は残る。
2036年の店舗数は路面店65店、ショッピングセンター店230店の合計295店となる。路面店は天候や立地の影響を踏まえて減らし、ショッピングセンター店の増加が全社売上を伸ばす。既存店の来店回数は微減するものの、店舗数の増加によって全社会計数は増える。平均会計単価は10年間の物価上昇におおむね沿って上昇し、実質数量と名目価格を分けて売上を見込む。
出店基準を引き締めたことで減損は落ち着くが、賃料、人件費、キャッシュレス費用の増加が利益率の改善を抑える。メーカーとの直接取引と物流拠点の効率化は利益を支えるものの、競合に対して大幅な値上げを続けることはできない。大型買収による上振れは見込まず、毎期の利益の一部を配当で返しながら店舗と改装に資金を投じる。営業利益率は3%弱、ROEは10%程度という、規模は大きくなるが並外れた高収益ではない会社になる。
- 路面店:数量 943(年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,072(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 101 億円・営業利益 3 億円。65店舗×年間14.5万会計。店舗ごとの実質来店数は2026年推定より少し減少。平均会計単価は800円から1072円へ上がり、営業利益率3.2%。
- ショッピングセンター店:数量 2,875(年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,206(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 347 億円・営業利益 10 億円。230店舗×年間12.5万会計。2026年の推定12.75万会計より一店当たり数量はやや減少。平均会計単価は900円から1206円へ上がり、営業利益率2.9%。
倍率:営業利益13.29億円から税・金融収支などを反映した純利益7.71億円を見込む。純利益÷営業利益は約58%で、過去4年の中央値59%に近い。10年後のROEは7.71÷77.0=10.01%、資本コストは8.0%。普通の堀の残存割合1/2からRONIC=8.0%+(10.01%−8.0%)÷2=9.01%となる。名目長期成長率g2.5%を用いた正当化PERは(1−0.025÷0.0901)÷(0.08−0.025)=約13.13倍であり、上限そのものを採用する。自己資本77億円は現在の39.1億円に、10年間の純利益蓄積約56億円を加え、株主還元約18億円を控除した近似値である。
確率:物価3%の世界で菓子の実質需要は大きく伸びず、会社は商業施設への出店で市場シェアを獲得する。店舗数の伸びは会社が目指す年間純増10店より低くし、新店採算は2026年より改善するが過去最高の利益率には戻らない。実際の出店能力と足元の不採算店の双方を反映した中心見通しである。
やや悲観 26% 店は増えるが利益を残せない 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1,054 円38 億円
出店は続くものの、好条件の商業施設を確保するのが難しくなる。立地を急いで確保した新店は当初の売上計画を下回り、既存店でもスーパーやドラッグストアとの価格競争が強まる。メーカーとの仕入れ関係は維持できるが、人気商品はどの小売店でも扱えるため、客がみのやを選ぶ理由は弱まる。
2036年の店舗は路面店60店、ショッピングセンター店205店の合計265店にとどまる。客単価は物価ほど上げられず、店当たり会計数も減る。売上高は名目では現在より増えるが、賃料の上昇や人員確保の費用が利益を吸収する。物流網は維持する必要があるため、閉店によって費用を比例的に減らすことも難しい。
採算の低い店舗の閉鎖や改装は進むが、以前の投資を十分に回収できず、新たな出店にも慎重になる。配当は維持を優先するものの、利益の伸び悩みに合わせて増配余地が小さくなる。会社は菓子専門店として残り続けるが、自己資本に見合う利益を得られず、規模だけが大きい低収益小売業としての姿が定着する。
- 路面店:数量 792(年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,040(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 82 億円・営業利益 1 億円。60店舗×年間13.2万会計。客数の減少と値上げ余地の制約を見込み、平均会計単価1040円、営業利益率1.8%。
- ショッピングセンター店:数量 2,296(年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,170(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 269 億円・営業利益 5 億円。205店舗×年間11.2万会計。集客不振と賃料上昇で、平均会計単価1170円、営業利益率1.7%。
倍率:ROEは3.21÷63.0=5.10%で資本コスト8.0%に届かない。新規投資による成長が価値を増やすとは判断せず、利益の永続価値1÷k=12.5倍を上限とする。やや悲観では、出店による資本の滞留と収益の不安定さを反映し、純利益の10.5倍を稼ぐ力の値とする。純利益÷営業利益は約53%であり、金利の借り換えと閉店関連費用を含む。現在や過去の市場PERは使わない。
確率:下に寄せる理由:2026年6月期の新店が計画を下回り、減損損失が続いたという会社固有の実績がある。商業施設への出店には家賃と人件費の固定負担があり、売上高の増加だけでは採算改善を保証できない。事業自体は存続するが、ROEが資本コストを下回る筋書きに相応の重みを与える。
悲観 13% 競争力と採算を失い、店舗網を縮小する 利益 −1 億円 · PBR 0.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 749 円27 億円
スーパー、ドラッグストア、ディスカウント店が菓子の安売りを強め、専門店としての品揃えの違いが小さくなる。メーカー側の需要予測が高度化して特売用の余剰商品が減り、まとめ仕入れによる割安感も薄れる。消費者は価格と利便性を優先し、かつてのように菓子を買うためだけに立ち寄らなくなる。
会社は不採算店を閉じるが、賃貸借契約の解約、原状回復、店舗設備の減損に費用がかかる。2036年の店舗は路面店50店、ショッピングセンター店155店の合計205店まで減少する。残った店も客数が減り、仕入れ価格や賃料を十分に販売価格へ転嫁できない。営業利益はほぼ消え、金融費用や閉店関連損失を含めた最終損益は赤字に転落する。
成長投資は止まり、経営は店舗の整理と借入の圧縮を優先する。配当は序盤の一部にとどまり、後半は停止する。大型買収で事業を立て直す前提は置かない。事業の稼ぐ力で価値を裏づけられないため、現存する不動産、投資有価証券、敷金などの回収可能性から、株主に残る資産価値を慎重に評価する。自己資本をそのまま全額現金化できるとは考えず、店舗内装の損失や賃貸借の終了費用も考慮する。
- 路面店:数量 570(年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 970(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。50店舗×年間11.4万会計。名目価格は10年間で約21%の増加にとどまり、客数減少と家賃の固定負担により営業赤字。
- ショッピングセンター店:数量 1,550(年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定))× 価格 1,100(1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む))→ 売上 171 億円・営業利益 1 億円。155店舗×年間10万会計。価格競争と出店余地の消失で平均会計単価1100円、営業利益率0.4%。
倍率:最終損益が赤字なのでPERを適用せず、稼ぐ力による価値をゼロに近いものと判断する。悲観時価総額27.0億円は、2026年6月期末の自己資本39.1億円に対する約0.6905倍であり、2036年まで積み上がるはずの利益を資産価値として掛けていない。倍率は市場の過去のPBRからではなく、繰延税金資産、店舗内装の回収不能分、閉店整理費を除いた回収可能資産から求めた。悲観の時価総額27億円と10年還元2億円の合計は現在の時価総額約45億円を下回る。
確率:複数年にわたり新店の失敗、既存店の集客悪化、商品調達力の低下、家賃の固定負担が重なる厳しい筋書きである。菓子を売る業態そのものは残るので倒産を必然とはしないが、薄い営業利益率と過去の減損実績から、構造的な敗退の可能性を無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
路面店
駅前・商店街を中心とする直営の菓子専門店。通行客の立ち寄り需要を取り込む一方、天候や猛暑による来店数の変動を受けやすい。会社の報告セグメントではなく、店舗形態による分析上の区分である。
| 数量年間の購買会計数(万件、路面店数×1店当たり年間会計件数の推定) | 価格1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,200 | 800 | 96 | 3 |
| 10 年後 中立 | 943 | 1,072 | 101 | 3 |
取り方:会社の2026年6月期決算説明資料では期末路面店80店舗、1店舗当たり年間平均売上高約120百万円が示される。80店×1.20億円を路面店売上96.0億円の近似値とした。絶対的な客単価と年間会計件数は非開示なので、平均購入金額800円を分析用の仮定とし、96.0億円÷800円=年間1200万会計と逆算した。1店当たり年間15万会計、1日当たり約411会計に相当する。800円は会社が公表した実績値ではなく、異なる客単価を仮定すれば会計件数も変わる。営業利益3.07億円は路面店の採算がSC店よりやや高いとした分析上の配賦で、形態別営業利益は会社非開示。資料:https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20260813/20260810516915.pdf
ショッピングセンター店
大型商業施設などに入居する直営の菓子専門店。施設への来訪者と家族連れを取り込みやすく、出店の中心となっているが、賃料と集客を施設運営者に依存する。
| 数量年間の購買会計数(万件、SC店数×1店当たり年間会計件数の推定) | 価格1会計当たり平均購入金額(円、商品単価と購入点数の双方を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,785 | 900 | 161 | 4 |
| 10 年後 中立 | 2,875 | 1,206 | 347 | 10 |
取り方:2026年6月末のSC店は140店舗、会社開示の年間平均売上高は1店舗約114百万円である。期末店舗数に平均売上高を掛けた値は、期中の出退店や集計方法によって全社売上と一致しない。そこで全社実績256.66099億円から路面店推定96.0億円を差し引き、SC店と共通商品販売の売上を160.66099億円とした。絶対的な会計単価は非開示なので900円を仮定し、約1785.12万会計、1店当たり年間約12.75万会計と推定した。形態別営業利益3.66億円は推定配賦であり、路面店3.07億円との合計を実績営業利益約6.73億円に一致させた。菓子247.43億円、飲料8.95億円、その他0.28億円は両形態に含まれ、商品別売上を別セグメントとして二重計上していない。資料:https://edinetdb.jp/company/E40756/text
リスクと懸念
新店の採算と減損の再発
2026年6月期は直近に出店した店舗の売上が会社計画を下回り、固定資産の減損損失約2.09億円を計上した。前年にも減損が生じており、出店によって売上が増えても株主価値が増えるとは限らない。新店の年間売上が想定に届かなければ、家賃と人件費を回収できない期間が長くなる。出店後の利益、投資回収期間、閉店件数を重視する必要がある。
リース・店舗賃料の固定負担
店舗等の年間賃借料は2026年6月期に約21.05億円あり、営業利益約6.7億円に比べて大きい。家賃は既に営業費用に含まれるため価値評価で二重には引かないが、来店数が減ってもすぐに削れない固定の支払いである。2027年4月以後に始まる年度からの新リース会計基準の適用では、使用権資産とリース負債の計上によって財務指標の見え方が変わる。
菓子の値上げと客数減少
2026年6月期の既存店では客単価が3.1%上昇した一方、客数は1.8%減少した。商品単価が上がれば名目売上は増えるが、価格に敏感な消費者が購入個数を減らせば、数量面から利益が削られる。全国の菓子市場でも2025年は販売金額が伸びた一方で生産数量は減少した。名目の増収だけで需要の強さを判断できない。
スーパー・ドラッグストアとの競争
みのやの中心商品は広く流通するメーカーの定番菓子であり、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウント店でも購入できる。顧客の乗り換え費用はほとんどなく、近隣の大手小売店が安売りや品揃えを強化すると客足が変わりやすい。専門店の楽しさと調達力が売場での優位に結びつかなければ、価格競争だけが残ってしまう。
メーカーの余剰品供給減少
特価で仕入れるスポット商品は、来店する楽しさと割安感を生む重要な商材である。メーカー側の在庫管理や需要予測が高度化し、販売期限や規格変更に伴う余剰品が少なくなると、同社の仕入れ機会も減る可能性がある。AIエージェントによる本業の代替ではないが、AIを含むメーカーの生産・物流最適化は間接的に差別化商品の供給を細らせうる。
創業家支配と資本配分
創業家周辺の株式保有比率が高く、上位株主への集中も大きい。長期の経営方針がぶれにくい利点はあるものの、少数株主が不採算店の整理、余剰資産の売却、自社株買いを求めても、経営判断に直接反映させる力は限られる。2025年の上場時の新株発行による資本増加と、その後のROE低下を合わせて見れば、資本の使い方を監視する必要がある。
国内市場の成熟と出店余地の限界
国内の菓子消費量は人口減少の影響を受け、長期に大きく伸びるとは考えにくい。成長を出店によるシェア獲得に頼ると、好立地の確保が進むほど新しい出店先の条件が悪くなる可能性がある。関東での店舗密度が上がれば自社店舗同士で需要を奪うこともある。2036年以降に同じ純増ペースが続くと期待するのは危険である。
今後の分かれ目
- 既存店客数が複数年度にわたり前年比100%以上となり、客単価も物価に沿って伸びたら
- 値上げに頼る増収から、数量と価格の両方が支える増収へ移ったと評価する。中立の一店当たり会計数と営業利益率を引き上げ、やや楽観の確率を増やす。
- ショッピングセンター店の新店売上が計画に届き、減損損失が実質的に解消したら
- 出店基準の見直しが成果を出したと判断する。店舗数の成長に対して追加の利益がどれほど生まれるかを確認し、中立と上側の収益予想を引き上げる。
- 年間10店舗前後の純増が続いても営業利益率が2.5%前後から改善しなかったら
- 成長に投じた資本の収益率が低いと判断する。単なる売上増加を評価せず、中立の利益とROEを下方修正し、やや悲観の重みを高める。
- 店舗賃料や人件費が売上高の伸びを継続して上回ったら
- 固定費を吸収できなくなる危険が高まるため、路面店とショッピングセンター店の営業利益率を別々に引き下げる。特に新店の賃貸借条件と退店費用を点検する。
- メーカー限定商品やスポット商品の調達が安定し、客数と粗利益率が同時に改善したら
- 単なる低価格販売ではない専門店の強みが強まったと評価する。ただし、解約できない契約や独占的な商品権利が確認されるまでは、強い堀への格上げは慎重に行う。
- 配当性向を継続的に50%以上へ高めるか、大規模な自社株買いによって株数を減らしたら
- 余った利益が少数株主にも届くという証拠になる。運転資金と店舗投資への必要額を確認したうえで、余剰資金が株主価値として戻る割合を0.75から1.0へ見直す。
- 新店の減損、閉店、資金調達が続き、出店投資を借入や増資で賄う状態になったら
- 出店による価値創造が成立していないと判断する。利益率、累積株主還元、将来の資本増加や既存株主の取り分を見直し、悲観側の確率を引き上げる。
見ておくもの
- 既存店月次の客数前年比と客単価前年比を分けて確認する。売上前年比だけでは数量の変化が分からない。
- 路面店とショッピングセンター店の期末店舗数、新店数、退店数、1店舗当たり年間平均売上高の推移。
- 新規出店後の売上計画達成状況と、店舗減損損失が再発するかどうか。
- 売上総利益率と販管費率の差である営業利益率が、2026年6月期の2.6%から回復するか。
- 店舗賃借料、パート・アルバイト人件費、キャッシュレス決済費用の増加率。
- 営業キャッシュフローから新店・改装投資、敷金の差入れを差し引いた後に残る資金。
- メーカーとの共同企画・限定商品・スポット商品の継続的な調達状況と品揃えの独自性。
- 2027年6月期会社計画の売上高271.83億円、営業利益7.07億円、純利益3.46億円、期末230店舗の達成状況。
- 配当性向、優待制度の実際の費用、自社株買いの有無と発行済株式数の変化。
- 中期経営計画の公開数値目標、出店投資回収期間、店舗形態別の営業利益の開示が始まるか。
倍率と資本コストの決め方
事業は菓子小売の単一報告セグメントだが、数量と価格の違いを明らかにするため、実際に公表されている路面店80店舗とSC店140店舗に分けた。会社開示の店舗数と1店舗当たり売上を出発点に、未開示の会計単価を800円、900円と仮定し、年間会計件数を推定した。したがって、この絶対会計数と単価は実績開示ではない。2036年の会計数には店舗増減と店当たり実質来店数を、価格には物価3%と購入商品の構成変化を反映し、物価を数量へ二重計上していない。
営業利益率は2024年の良好期4.3%と2026年の2.6%を踏まえ、中立では3%弱とした。販管費と家賃は名目で増える一方、既存設備の減価償却費を単純に物価と同じ割合で増やさず、新設・更新投資分の償却増を考慮する。2027年4月以後に始まる年度からの新リース会計基準で貸借対照表や営業利益の表示が変わっても、2036年の営業利益は現行と比較可能な家賃費用控除後の形としている。
倍率は現在や過去の株価、同業のPER・PBRを根拠とせず、k8.0%、2036年以降の名目成長率2.5%、各筋書きのROE、普通の堀の残存割合から算出した。楽観・やや楽観・中立のPERは正当化された上限そのものに置いた。赤字となる悲観は利益倍率を用いず、実際に売れる可能性のある資産から評価した。2026年6月期末の自己資本約39.1億円を無条件に清算価値とせず、繰延税金資産、店舗内装の損失、退店費用を控除した床を設けた。政策保有株や不動産を利益の値と資産の値に二重計上していない。
2026年10月23日の株価1248円と360万5000株から得られる現在の時価総額は44.9904億円である。5筋書きの確率加重後の2036年時価総額は約95.16億円、期間還元は約18.61億円となる。これを資本コスト8%で割り引くと現在価値は約56.74億円、差は約+26.1%で「やや割安」に該当する。株価に合わせて倍率や確率を動かしていない。AIエージェント代替の指定類型は本業には非該当であり、技術代替の理由で数量・長期成長率・資本コストを重複して引き下げていない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。無リスク金利3.0%と株式リスクプレミアム4.5%の合計7.5%を基本とし、値決め力の弱さによるquality上乗せ0.5%を加えた。会社固有の出店失敗や株主構成のリスクは資本コストではなく、利益率と各筋書きの確率に反映する。