結論
SANKO MARKETING FOODSは、居酒屋「アカマル屋」を営みつつ、豊洲の水産卸で稼ぐ会社だ。売上は106億円で、うち水産流通が6割を占める。かつての低価格居酒屋チェーンは、いまや魚の商社に近い。
筆者の結論は割高だ。2026年6月期の営業損失は6億円を超え、13期連続の赤字になった。純資産は0.6億円しかない。時価総額27億円は、事業の稼ぐ力を大きく先取りしている。
問題は赤字だけではない。資金は、ファンドに社債と新株予約権を出して調達している。転換が進むたびに株数は増え、既存株主の取り分は薄まる。現にファンドの持株は3割近い。
会社は漁業を絞り、飲食に集中する。10年の中立では営業利益が3億円ほどに戻る。それでも希薄化の分を引けば、時価総額は今の半分に届かない。会社の存続自体も、まだ安泰とは言えない。売上の規模はあるが、利益が伴わない状態が続く。店と卸のどちらが稼ぎ頭になるのかも、まだ見えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、手を出せない会社だ。13期続けて稼げず、利益で自己資本を積み上げた実績がない。資本は、増資と転換社債でつなぐだけだ。
払う値段に安全域があるか。ここが決定的だ。純資産は0.6億円しかなく、資産の裏づけがない。現預金は借入と社債でほぼ消える。事業が稼ぐ力に戻らなければ、株主に残る価値は小さい。
経営は、水産6次産業を掲げて店と船を増やしたが、先行投資が収益に変わらなかった。方針を見直す今が、むしろ分かれ目だ。
筆者は、10年先に事業が残る確率は高いとみる。だが、株主の取り分は、増資による希薄化で削られる。事業が黒字になっても、株主が報われるとは限らない。安く買えない限り、この会社に資本を預ける理由は見当たらない。同じ水産系の外食でも、自己資本が厚く黒字を続ける会社は他にある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は2つある。1つは、居酒屋やすし店を直営する店舗事業で、売上は42億円。もう1つは、豊洲市場の大卸と、自社で魚を獲る漁業をつなぐ水産流通で、売上は61億円ある。会社はこれを水産6次産業化と呼ぶ。
店は直営が57で、うち15は運営を受託する店だ。1店の月商は600万円ほど、粗利率は3割台前半である。2026年6月期には12店を出し、10店を閉じた。出店が先行し、人手不足や立地の読み違いで不採算になった店も多い。
水産流通は薄利の卸だ。紙の伝票が多く、2026年1月にRPAを入れて手作業を減らし始めた。漁業と沼津の水産加工は、変動が大きいため、縮小か撤退に向かう。
そのほか、官公庁の食堂の受託運営や、2026年6月に譲り受けたうどん店がある。社長は、70〜80店まで増えれば利益が安定すると語る。ただ、直近は店数が増えても赤字が続いてきた。出店には内装と保証金が要り、閉店すればその一部が損失になる。成長のための投資が、そのまま負担として残りやすい業態である。店の賃借料は、売上が落ちても減らない固定の支払いだ。
優良さと弱いところ
強みは、仕入れの川上までつなぐ仕組みだ。自前の卸と船団があれば、鮮魚を安く仕入れ、居酒屋に回せる。この循環を会社は売りにしてきた。
弱みは多い。1つ目は、利益が出ていないことだ。営業利益が最後に黒字だったのは2016年6月期で、13期連続の赤字である。2つ目は、予想の外れ方だ。2026年6月期は営業黒字を見込んだが、実績は6億円の赤字だった。3つ目は、資本の薄さである。自己資本比率は2.5%まで落ちた。
財務は、現預金6億円に対して、有利子負債が6億円ある。うち2億円超は1年以内に償還する社債だ。借り換えの余地は小さい。
経営は、代表取締役が交代する。水産6次産業の見直しも示唆された。筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みを弱いと見る。事業の柱が、1年ごとに入れ替わる印象も拭えない。居酒屋、船団、卸、うどんと手を広げ、どれも利益が定着していない。資本の薄い会社が、広く手を出すことのリスクは大きい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は、コロナ禍で一度壊れた業態だ。客足は戻ったが、会社の宴会は減り、夜の外食はスマートフォン時代に回数が減った。人件費、食材、光熱費の上昇が重なり、低価格の居酒屋ほど苦しい。
同じ低価格居酒屋の上場企業を見ても、営業利益率は2〜3%が上限で、赤字も珍しくない。値上げは客数を減らす。従業員の確保も難しく、閉店が増える構図だ。
水産の卸は、また別の世界である。外食や小売の店頭に魚を届ける役割は、なくならない。豊洲の市場は、取引量が長期で減る一方、外食と小売に魚を回す役割は残る。仲卸や商社と競り合い、利益率は1〜2%と薄い。魚の価格は、漁獲量と為替で大きく動く。
今後の鍵は2つ。店舗の質を保って出店を続けられるか。そして、水産の卸を薄利でも安定した黒字にできるか。国内の外食市場は、人口の減少とともに、数量は10年で1割前後縮むと筆者は見る。仕入れを川上に伸ばす戦略は、魚価が安定していれば強いが、不漁や為替で簡単に崩れる。外食の需要が戻っても、人手を確保できない店は、営業時間を短くするしかない。
資本政策と M&A
資本政策は、赤字を資本の調達で埋める形が続いている。2026年6月に、ファンドを相手に転換社債3億円と新株予約権を出した。転換の価額は株価に連動して動く条項が付き、株価が下がれば、同じ金額でより多くの株が増える。
既に転換は進み、2026年8月までに社債の残りは約1.6億円になった。9月には債務を株に替える増資もあり、株数は期末より200万株以上増えた。ファンドの持株は3割近い。
配当は無配だ。株主優待は、自社店舗の割引券と水産品を6月と12月に出す。費用は開示がなく、小さいとみる。
M&Aは、うどん店の事業譲受など小粒である。大きな買収に回す資金はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
転換点は来ている。会社は漁業と沼津の加工を絞り、飲食と卸に集中する。利益の変動が大きい事業を手放せば、損益は読みやすくなる。2027年6月期は、営業損失を0.3億円まで縮める計画だ。
店舗は、70〜80店で利益が安定するとされる。出店した店が3年目に入れば、先行コストは剥がれ落ちる。1店の月商は600万円で、粗利率も3割台前半を保つ。水産卸も、紙伝票のRPA化で人手が減る。
資金調達も、見方を変えれば事業の延命に必要な資金が確保されたということだ。ファンドが持株の3割近くを持つのは、再建への後押しでもある。資金が尽きる心配が薄れた分、経営は店と卸の改善に集中できる。売上は100億円を超え、規模はある。営業利益率が2%に届けば、時価総額に見合う稼ぎが生まれる。水産6次産業の見直しは、無理な拡大を正す機会にもなる。新しい社長が、卸の黒字化に集中できる体制ができれば、利益の変動も小さくなる。船団を縮めれば、魚価の変動を直接かぶらずに済む。
慎重な見方
赤字の体質は変わっていない。13期連続の営業赤字で、2026年6月期も6億円の損失だった。会社予想は毎年外れ、今期の黒字予想も一転して大幅な赤字に終わった。新しい計画を信じる根拠は乏しい。
資本は枯れている。純資産は0.6億円で、自己資本比率は2.5%だ。次に大きな減損や赤字が出れば、債務超過になる。1年以内に償還する社債が2億円超あり、借り換えも難しい。
増資は、既存株主の取り分を削る。転換価額が株価に連動する社債は、株価が下がるほど新株が増える。9月には債務を株に替える増資もあった。ファンドの持株は3割近く、経営の主導権は変わりうる。事業が黒字になるまでに、株数が数割増える可能性は十分にある。それでも水産卸の利益率は1〜2%で、店の利益が乏しければ全体を支えられない。新しい社長が来ても、人手と立地の問題は変わらない。ファンドが売却に動けば、需給も悪化する。経営の方針が揺れる中で、現場の店長の入れ替わりも激しい。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。13期の赤字と薄い自己資本は事実で、増資による希薄化が続く点も確かだ。中立は、営業利益が3億円ほどまで戻る姿とし、確率は3割台に置いた。
悲観側の確率を厚くした。債務超過や、さらなる増資で株主の取り分が大きく削られる姿に4割強を割いた。強気の再建の筋書きは、2割強にとどめた。店を増やしても利益が出ない過去が続くため、再建の成否は2027年6月期の下期の数字が一つの目安になる。それまでは、確率を厳しい側に置く。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 63 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 26 円11 億円、今との差 −58.0%、 期待の年率 −0.1%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 236 円97 億円 | 0 円0 億円 | +274.1% | +14.1% | 12 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 131 円54 億円 | 0 円0 億円 | +108.3% | +7.6% | 22 円9 億円 |
| 中立 | 33% | 81 円34 億円 | 0 円0 億円 | +29.3% | +2.6% | 27 円11 億円 |
| やや悲観 | 25% | 6 円2 億円 | 0 円0 億円 | −91.1% | −21.5% | 1 円1 億円 |
| 悲観 | 20% | 1 円1 億円 | 0 円0 億円 | −97.8% | −31.9% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 63 円26 億円 | 0 円0 億円 | −0.6% | −0.1% | 63 円26 億円 |
今の株価時価総額 63 円26 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 5% 再建が当たり、80店で黒字が定着する 利益 5 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 236 円97 億円
店舗が80に増え、1店の売上は物価を上回って伸びる。漁業の撤退が済み、水産流通は薄利でも黒字で安定する。
営業利益率は4%に届き、営業利益は6億円を超える。純利益は5億円ほどに戻り、増資に頼る必要はなくなる。ファンドの転換も、高い株価で進むため株数の増え方は小さい。
水産の卸は、紙伝票のRPA化で人手が減る。ただ、国内の外食は数量が縮み、居酒屋は人件費が重い。利益率4%は、低価格居酒屋の中でも上位の水準だ。会社の再建が最も良い形で進んだ姿であり、実現する確率は低い。設備の償却は取得した値段のままで、新しい店の内装だけが高い値段で足される。
- 店舗事業(居酒屋・すし):数量 80.0(店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円)× 価格 0.99(1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計))→ 売上 79 億円・営業利益 5 億円。80店・1店売上1.36倍
- 水産流通(6次産業):数量 6,059(取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定)× 価格 0.01(1トンあたり売上(億円、名目))→ 売上 82 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい・価格1.36倍
- その他(官公庁食堂の受託など):数量 28.5(受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円)× 価格 0.13(1件あたり売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 124.0% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 47.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.31 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の質が上がり、水産卸の利益も安定する姿。13期の赤字の実績があり、5%に置いた。
やや楽観 17% 出店が実り、利益率が3%近くまで戻る 利益 3 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 131 円54 億円
店舗が74に増え、出店3年目の店が利益を出し始める。値上げは物価並みに通り、客数の減りも小さい。
水産流通は、漁業を縮めたことで損益が読みやすくなり、わずかな黒字になる。営業利益は4億円弱で、純利益は3億円ほどだ。
転換社債の残りは株に替わり、借入は返せる。株数は1割ほど増える。配当は出せないが、赤字は止まる。成長のための出店資金は、自己資金と借入でまかなう。ここまで戻れば、増資の連発は止まる。店の賃借の約束は固定費として残り、売上が落ちると利益を削る。店ごとの月商が小さいため、1店の失敗が全体に響きにくいのは救いだ。再建の途中で、閉店を急ぎすぎれば売上も細る。
- 店舗事業(居酒屋・すし):数量 74.0(店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円)× 価格 0.96(1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。74店・1店売上1.32倍
- 水産流通(6次産業):数量 5,877(取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定)× 価格 0.01(1トンあたり売上(億円、名目))→ 売上 78 億円・営業利益 1 億円。数量-3%・価格1.32倍
- その他(官公庁食堂の受託など):数量 28.5(受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円)× 価格 0.13(1件あたり売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 81.8% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 33.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.59 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:70店台に増え、先行コストが剥がれる姿。強気の見方が当たる部分として2割弱に置いた。
中立 33% 70店に届くが、利益率は2%に満たない 利益 2 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 81 円34 億円
店舗は70まで増えるが、閉店も続き、純増は緩やかだ。1店の売上は物価に届かず、10年で1.3倍にとどまる。
水産流通は、漁業を縮めて薄利の卸に近づく。数量は5%減り、価格は物価並みに上がるが、利益率は1%に満たない。
営業利益は3億円弱で、純利益は2億円ほど。借入は返済が進むが、借り換えの金利は3.5%まで上がる。ファンドの転換は進み、株数は1割ほど増える。店の賃借の約束が固定費で残り、新規の内装投資は建築費の上昇で膨らむ。会計の利益は伸びても、現金は細る。出店のたびに保証金と内装の支出が先に出るので、利益が出ても資金繰りは楽にならない。
- 店舗事業(居酒屋・すし):数量 70.0(店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円)× 価格 0.95(1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。70店・1店売上1.30倍
- 水産流通(6次産業):数量 5,756(取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定)× 価格 0.01(1トンあたり売上(億円、名目))→ 売上 75 億円・営業利益 1 億円。数量-5%・価格1.30倍
- その他(官公庁食堂の受託など):数量 28.5(受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円)× 価格 0.13(1件あたり売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 58.3% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 25.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.86 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:赤字を脱するが、利益は薄い姿。2つの見方の落としどころで、最も厚く置いた。
やや悲観 25% 赤字は止まるが、稼ぐ力は戻らない 利益 0 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 6 円2 億円
店舗は58のまま、1店の売上は物価に届かず1.2倍にとどまる。人件費が上がり、値上げは客数を減らす。
水産流通は、数量が15%減り、粗利が薄いまま営業利益は0.3億円ほどになる。全社でも営業利益は0.5億円前後と、ほぼ損益トントンだ。
資本が薄いため、追加の増資と転換が続き、株数は2割近く増える。配当は出ない。減損が出れば債務超過に近づき、借入の返済も遅れる。会社は存続するが、株主の取り分はほとんど残らない。人材の確保も難しく、出店のペースは落ちる。店の閉鎖と減損が続き、事業の縮小が静かに進む。
- 店舗事業(居酒屋・すし):数量 58.0(店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円)× 価格 0.87(1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計))→ 売上 51 億円・営業利益 1 億円。58店・1店売上1.20倍
- 水産流通(6次産業):数量 5,150(取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定)× 価格 0.01(1トンあたり売上(億円、名目))→ 売上 62 億円・営業利益 0 億円。数量-15%・価格1.20倍
- その他(官公庁食堂の受託など):数量 25.7(受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円)× 価格 0.12(1件あたり売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:稼ぐ力は細く、利益の質は低い。ROE が k に届かないため上限は 1÷k の10倍で、その約6割の6倍に置いた。
確率:店を減らさず維持するだけで、利益が出ない姿。13期赤字の実績から、慎重な見方の本流として2割台半ばに置いた。
悲観 20% 債務超過に陥り、増資の連発で株主の取り分が消える 利益 −2 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 1 円1 億円
赤字が収まらず、店を35まで減らす。水産流通の取引も縮み、資金繰りのために株を出し続ける。
債務超過に陥り、金融機関との交渉に入る。ファンドの転換価額が下がり続けて、株数は大幅に増える。既存株主の取り分は大きく削られ、整理に近い形になる。取引先の仕入れ条件も厳しくなり、卸の資金繰りがさらに悪化する。
上場の維持も難しくなる。会社が残っても、株主に残る価値はごくわずかで、売れる資産から借入と社債を引いた分だけである。店の賃借の約束は退店費用として残る。ファンドや債権者との交渉が長引き、経営は守りに入る。新規の出店は止まり、既存店の維持だけが仕事になる。
- 店舗事業(居酒屋・すし):数量 35.0(店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円)× 価格 0.76(1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計))→ 売上 27 億円・営業利益 −1 億円。35店・1店売上1.05倍
- 水産流通(6次産業):数量 3,635(取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定)× 価格 0.01(1トンあたり売上(億円、名目))→ 売上 40 億円・営業利益 −1 億円。数量-40%・価格1.10倍
- その他(官公庁食堂の受託など):数量 14.2(受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円)× 価格 0.11(1件あたり売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:赤字で稼ぐ力はなく、売れる資産から借入と社債を引いた分が株主に残る前提。今の時価総額27億円の1割に満たない。
確率:赤字が続き、資金繰りのために増資が止まらない姿。13期赤字と自己資本比率2.5%から、2割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗事業(居酒屋・すし)
「アカマル屋」などの居酒屋、水産直結の業態を直営・受託で運営する。
| 数量店舗数(期中平均の店)。1店あたり売上0.73億円 | 価格1店あたり年売上(億円、名目。客数と客単価の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 58.0 | 0.73 | 42 | −5 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.95 | 66 | 2 |
取り方:店舗売上42.25億円は開示。店数は期末57店(受託15含む)と期中の出閉店から平均58店と推定。利益は単一セグメントで内訳がなく、全社の営業損失6.35億円を売上比と事業の性格から配分した推定(本社費込み)。
水産流通(6次産業)
豊洲市場の大卸(綜合食品)、船団・漁業、水産加工。仕入れた魚を外食・小売に卸す。
| 数量取扱量(トン)。1トンあたり売上0.01億円と置いた推定 | 価格1トンあたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 6,059 | 0.01 | 61 | −2 |
| 10 年後 中立 | 5,756 | 0.01 | 75 | 1 |
取り方:6次産業化の売上60.59億円は開示。取扱量は開示がなく、1キログラムあたり売上が千円前後の鮮魚卸と置いた推定。利益は全社損失の配分の推定。
その他(官公庁食堂の受託など)
官公庁の食堂の受託運営、うどん店など。小さい。
| 数量受託の規模(件換算)。1件あたり売上0.1億円 | 価格1件あたり売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 28.5 | 0.10 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 28.5 | 0.13 | 4 | 0 |
取り方:その他売上2.85億円は開示。件数は推定。利益は小さい黒字と置いた推定。
リスクと懸念
債務超過と資金繰り
純資産は0.6億円、自己資本比率は2.5%。次の赤字や減損で債務超過に近づく。1年以内に償還する社債が2億円超あり、借り換えが難しければ資金繰りが詰まる。
増資による希薄化
ファンド向けの転換社債と新株予約権には、株価に連動して条件が動く条項がある。株価が下がると新株が増え、既存株主の取り分が削られる。債務の株式化も行われた。
店舗の不採算
2026年6月期は12店を出して10店を閉じた。人手不足と立地の読み違いで不採算になる店が多い。賃借の約束は退店でも費用が残る。
予想の外れ方と経営の交代
2026年6月期の営業黒字予想は外れ、6億円の赤字に終わった。代表取締役の交代と水産6次産業の見直しもあり、戦略が定まらない。
魚価と水産卸の薄利
水産流通の利益率は1〜2%と薄い。漁獲量と為替で魚価が動き、少しの在庫の評価損で赤字になりうる。豊洲市場の取引量は長期で減っている。
人件費と食材費の上昇
低価格の居酒屋は値上げが難しい。最低賃金の上昇と人手不足で、店の利益率が削られる。
今後の分かれ目
- 半期の営業利益が黒字に転じる
- 先行コストの剥がれが本物とわかる。中立の利益率を上げ、やや楽観の重みが増す。
- 転換社債が全て株になり、新たな資金調達が出る
- 希薄化が続く。株数の増え方を厚く見て、悲観側の確率を上げる。
- 債務超過または継続企業の前提の注記が付く
- 悲観の筋書きに近づく。株主の取り分は大きく削られる。
- 店舗数が増えても1店の月商が600万円を保つ
- 出店が実る。店舗事業の利益率の見方を上げる余地が出る。
- 漁業・水産加工の撤退が損失なく終わる
- 損益の変動が小さくなる。水産流通の黒字が定着する可能性が高まる。
見ておくもの
- 半期ごとの営業利益と1店あたり月商
- 転換社債・新株予約権の月間転換と発行済株式数
- 自己資本比率・純資産と継続企業の前提の注記
- 漁業・水産加工の撤退の進み方
- 新しい代表取締役の方針と主要株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の稼ぐ力(利益率2%未満)と、資本が薄いための見かけのROEを分けて考え、式の上限を土台にした。今のPERやPBR、同業の倍率は見ていない。今の時価総額に合わせず、13期の赤字と希薄化の実績から確率を悲観側に寄せた。店の賃借は今の形(家賃を営業費用に入れる形)でそろえた。株数は、期後の転換と債務の株式化が基準に入っていないため、取り分の係数で扱った。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→18.31 倍・やや楽観 PER 9.5→17.59 倍・中立 PER 9→16.86 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+2.5%を足して10%。個別の懸念は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.00% → 9.00%。