結論
ジンズは、眼鏡を企画から販売まで自社で回す専門店チェーンだ。筆者の結論は「事業は良いが、今の値段は少し払いすぎ」である。
稼ぎの源は単純だ。店が増え、1店舗の売上が伸びれば利益が増える。国内は約600店でほぼ打ち止めに近く、伸びは単価の上昇と少しの出店による。眼鏡の市場は10年ほぼ4,000億円で横ばいなので、成長は同業のシェアを奪えるかで決まる。
もう一つの柱が海外だ。中国は不採算店の整理を終え、2026年8月期は海外の利益が前の期の約3倍に増えた。台湾は堅調で、米国やベトナムにも出始めた。海外の店は10年で倍以上に増える余地がある。ここは強気の見方を支える。
一方で、2026年8月期は売上が初めて1,000億円を超えながら営業利益は減った。旗艦店とシステムへの先行投資が重く、来期の会社予想も利益はほぼ横ばいだ。拡大の局面ほど利益率は削られやすい。
事業の質は高いが、倍率を押し上げるほどの強い堀とは言いにくい。眼鏡は他社も同じ価格帯で戦う。中立で10年後の純利益は今の1.7倍ほどになるが、それでも今の時価総額を資本コストで割り戻した水準には届かない。総合では割り戻した本質価値が今よりおよそ2割低く、やや割高とみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ジンズは「良い事業だが、堀は普通で、市場は伸びない」会社だ。眼鏡は10年先も必要とされ、需要が消える心配は小さい。この安定が、利益を長く残す土台になる。
一方で、強い堀がない以上、成長にお金を入れるほど稼ぎの質は下がりやすい。新しい店を出して稼げるのは、競争が緩い間だけだ。残る利益の割合は半分と見て、倍率は控えめに置いた。
資本の使い方は評価できる。借金に頼らず、出店と旗艦店を自前の利益で賄っている。ただ、2026年8月期のように売上が増えて利益が減る局面は、投資の効きを疑う材料になる。
安全域の面では、今の値段は利益が10年かけて2倍近くになる筋書きを、すでにかなり織り込んでいる。海外が計画どおり伸び、国内の利益率も保たれる強気の筋書きでようやく今の値段に届く。安全域は薄い。
何で稼ぐ会社か
ジンズは、眼鏡の企画・製造委託・販売までを自社で一貫して行うSPA(製造小売)だ。国内アイウェア事業が売上の約8割、利益の大半を稼ぐ。2025年8月期の売上は972億円、うち国内が767億円、海外が約205億円だった。
店は駅ビルや商業施設の中が中心で、検眼からレンズ加工までを店で完結させる。価格を明快に示し、短時間で渡す仕組みが、安さと手軽さを求める客を取り込んできた。サングラス、PC用の眼鏡、子ども向けなど商品の幅も広い。2026年春には銀座に初のグローバル旗艦店、新宿に世界最大の店を開いた。銀座の来店客の約8割は訪日客だという。
海外は中国・台湾・香港が中心で、米国・ベトナム・フィリピンなどにも広げている。2026年8月期末の国内は591店、グループ全体は878店だ。2027年8月期の計画では、純増124店で初の1,000店規模になる。海外店舗の比率は約35%に上がる。
中国は不採算店の閉鎖を進めて構造改革を終え、2026年8月期は海外の営業利益が約22億円と約3倍になった。まだ連結の約2割にすぎないが、利益の質が変わり始めている。
優良さと弱いところ
ジンズの強みは、価格の分かりやすさと、企画から販売までを握る運営の速さだ。国内の眼鏡チェーンでは2位に位置する。ブランドの認知は高く、直営店の運営ノウハウも蓄積している。
ただ、筆者は堀、つまり他社がまねできない強みを「普通」と見ている。眼鏡の価格帯はZoffや眼鏡市場も近く、客が店を替える費用はほとんどない。値決めの力は、旗艦店と高付加価値レンズで少し高められる程度だ。
資本の面では良好だ。純現金で、自己資本比率は約55%、ROEは直近で26%に上がった。ただ、この数字は2025年8月期の利益が突出して良かった面が大きい。過去10年のROEの中央値は約16%で、2022年8月期には4%まで落ちた。景気や出店の失敗に利益が振れやすい事業である。
店舗を借りて営むため、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。見かけの純現金の厚みほど、悲観の局面は余裕がない。2028年3月期以降の新リース会計基準で、数字の見え方も変わる。
経営は創業者の田中仁氏が会長CEOとなり、2025年11月から田中亮氏が社長COOを務める。執行は社長が担い、ブランド作りは会長が担う分担だ。世代交代の途中であり、資本配分の規律が保たれるかは見ておきたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の眼鏡市場は、1990年代初めの約6,000億円から2009年に4,000億円を割り、ここ10年は4,000億円前後で横ばいだ(眼鏡光学出版)。人口は減るが、スマホによる眼精疲労と高齢化による老眼・遠近両用の需要が下支えしている。市場が増えないので、成長は同業の客を奪うことでしか得られない。
首位はメガネトップ(眼鏡市場)、2位がジンズだ。Zoffを運営するインターメスティックは2025年10月に老舗のメガネスーパーを約190億円で買収し、グループの売上は約775億円、店は617店になる見込みだ。再編が始まり、大手三つどもえの構図が強まっている。
この構図では、規模の大きい会社ほど仕入れと広告で有利になり、小さな会社は統合の対象になる。ジンズは旗艦店と海外で差をつけにいく一方、価格競争が激しくなれば利益率が削られる側にも立つ。高齢者の取り込みとコンタクトレンズの強化が、次の分かれ目になる。
海外は市場がまだ育つ途中だ。中国は個人消費の鈍化と現地チェーンとの競争が続く。台湾は地方出店で伸び、米国は立ち上げ期だ。国内と違い、数量で伸ばせる余地が残っている点が、この事業の最大の強みである。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025年8月期の1株配当は前の期から大きく増え、利益の約3割を配当に回した。自社株は約63万株を保有している。大型の買収で膨らむ会社ではなく、出店とシステムへの内部投資を優先する。
借金はほぼなく、純現金が65億円ある。利益が大きく伸びる局面でも、積み上がった現金は出店と旗艦店の投資に回りやすい。還元の比率が低いままだと、自己資本が膨らんでROEが下がる。この点は資本配分の課題になる。
M&Aは、買う側としては眼鏡チェーンの再編がきっかけになりうる。逆に買われる側になる可能性もあるが、創業者の持ち分が大きく、すぐに動く話ではない。フィリピンの店舗を直営に切り替えるなど、海外の運営を自前に寄せる動きは続いている。
株主優待は年約2.9億円(会社の費用ベース。買物優待券9,000円×株主約3.2万人の推計(契約負債に含まれ開示なし))。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+29億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内は旗艦店と高付加価値レンズで客単価を上げられる段階に入った。2026年8月期の国内既存店は5%強伸び、銀座は訪日客が来店の約8割を占める。眼鏡が日本で買える価値のある土産になれば、客数の天井は高くなる。
海外は構造改革を終えた中国が黒字化を主導し、利益が約3倍に増えた。台湾は地方まで店が広がり、米国・ベトナムの出店は始まったばかりだ。海外の店は今の約250店から700店まで増やせる余地があり、1店舗当たりの利益も国内並みに近づけば、利益の柱が2本になる。
同業はZoffとメガネスーパーの統合で、価格競争より運営の効率に力が移りつつある。規模のある2位として、仕入れと出店で有利に動ける。純現金で借金はなく、投資の余力も大きい。10年かけて利益が2倍以上になる筋書きは十分ありうる。
加えて、高齢化は強い味方だ。老眼や遠近両用の眼鏡は単価が高く、買い替えの周期も短い。ジンズが高付加価値レンズで高齢の客を取り込めれば、客数が増えなくても客単価が伸びる。店の裏側ではシステム刷新が進んでおり、投資が一巡すれば販管費の伸びは落ち着き、利益率は戻る。
慎重な見方
市場は10年4,000億円前後で横ばいだ。国内の伸びは、他社から客を奪うか、単価を上げるかしかなく、どちらも限界がある。Zoffとメガネスーパーのグループがジンズとメガネトップに迫り、価格と出店で消耗戦になれば、利益率は先に削られる。
2026年8月期は売上が14%増えたのに営業利益は5%減った。旗艦店とシステムへの先行投資が重く、高単価レンズの供給停止や販促の値引きで粗利率も落ちた。来期の会社予想も利益はほぼ横ばいだ。拡大のわりに利益が増えない状態が続くなら、倍率は縮む。
海外はまだ利益の約2割にすぎない。中国は個人消費の鈍化と現地チェーンの低価格攻勢が続き、構造改革で店を減らした後の再成長が確かではない。米国は店数が一桁の段階で、事業として成り立つかは未知だ。店舗の家賃は固定の約束で、需要が落ちた時は利益が一気に減る。
さらに、2025年8月期のROE26%は利益が突出した年の数字で、過去の平均ではない。2022年8月期には利益が一桁億円まで落ちた。景気や訪日客の減少、為替の変化に利益が振れやすい事業を、今の高い利益水準のまま10年先まで延ばして評価するのは危うい。
どちらに重みを置いたか
国内の利益力と海外の改善は本物だが、市場が横ばいで堀が普通という慎重な見方のほうが強い。強気の筋書きでようやく今の値段に届く。
確率は、中立に最も重みを置き、やや悲観の割合を楽観よりわずかに厚くした。理由は、2026年8月期の利益率の悪化と同業の再編という、慎重な見方を裏付ける事実がすでに出ているからだ。海外の黒字化は、やや楽観側に重みを残す根拠として評価した。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 10,669 円2,491 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,751 円409 億円)。 今の値に割り戻すと 6,134 円1,432 億円、今との差 −0.6%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 19,298 円4,506 億円 | 2,488 円581 億円 | +253.1% | +13.4% | 2,179 円509 億円 |
| やや楽観 | 22% | 15,810 円3,691 億円 | 2,090 円488 億円 | +190.1% | +11.2% | 3,938 円919 億円 |
| 中立 | 34% | 12,392 円2,893 億円 | 1,773 円414 億円 | +129.6% | +8.7% | 4,816 円1,124 億円 |
| やや悲観 | 22% | 4,302 円1,004 億円 | 1,371 円320 億円 | −8.1% | −0.8% | 1,248 円291 億円 |
| 悲観 | 12% | 848 円198 億円 | 1,152 円269 億円 | −67.6% | −10.7% | 240 円56 億円 |
| 加重平均 | 100% | 10,669 円2,491 億円 | 1,751 円409 億円 | +101.3% | +7.2% | 12,421 円2,900 億円 |
今の株価時価総額 6,170 円1,441 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 国内の単価上昇と海外の拡大がともに実現 利益 216 億円 · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 19,298 円4,506 億円
国内は旗艦店と高付加価値レンズで客単価が伸び、店は740店まで増えても1店舗当たりの売上が保たれる。銀座・新宿の訪日客が定着し、眼鏡が日本の買い物の定番になる。海外は中国で再び出店が進み、台湾は地方まで広がり、米国とベトナムも黒字になる。海外の店は700店に増える。
ZoffとメガネトップがM&Aで規模を競う一方で、ジンズは自社の利益で投資を回し、2位の地位を固める。利益率は国内15%、海外15%まで上がり、自己資本が増えてもROEは18%前後を保つ。創業者から社長への世代交代も円滑に済む、最も理想的な10年になる。
- 国内アイウェア事業:数量 740(国内店舗数(店))× 価格 1.85(1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み))→ 売上 1,366 億円・営業利益 205 億円。国内の営業利益率15.0%。1店舗の売上は物価1.34倍に届かず(共食いと人口減で客数が減る)
- 海外アイウェア事業:数量 700(海外店舗数(店))× 価格 1.11(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 774 億円・営業利益 116 億円。海外の営業利益率15.0%
倍率:事業の純利益 216 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.7 倍。全体の PER 19.72 倍、時価総額 4,260 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が700店まで広がり、国内も旗艦店で単価を上げ続ける必要がある。同時に実現する確度は高くない。
やや楽観 22% 海外が主軸になり、国内も堅い 利益 179 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 15,810 円3,691 億円
国内は710店まで増え、旗艦店の効果で1店舗当たりの売上が物価の7割ほど上がる。中国は黒字のまま緩やかに出店し、台湾も堅調だ。米国は出店が続くが、黒字化は一部の店にとどまる。海外の店は620店になる。
価格競争は続くが、販促と値引きを抑えて粗利率を保つ。システム刷新と旗艦店の投資が一巡し、販管費の伸びが売上の伸びを下回って、利益率は2026年8月期の水準から戻る。同業の再編が進んでも、2位の規模を生かして仕入れと出店で互角に戦う。ROEは16%前後で、成長の勢いを保ちながら成熟に向かう10年になる。
- 国内アイウェア事業:数量 710(国内店舗数(店))× 価格 1.81(1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み))→ 売上 1,284 億円・営業利益 180 億円。国内の営業利益率14.0%。1店舗の売上は物価1.34倍に届かず(共食いと人口減で客数が減る)
- 海外アイウェア事業:数量 620(海外店舗数(店))× 価格 1.07(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 665 億円・営業利益 86 億円。海外の営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 179 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 27.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.29 倍、時価総額 3,453 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外が620店まで伸び、国内も利益率を保つ。多くの会社見通しの上限に近い想定。
中立 34% 中立:国内は堅く、海外は黒字で伸びるが利益率は平常化 利益 143 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 12,392 円2,893 億円
国内は680店に増え、1店舗当たりの売上は物価の増加ほどには伸びない。客数が共食いと人口減で減るためだ。眼鏡の需要は底堅いが、価格競争が続き、国内の営業利益率は12%台に落ち着く。
海外は550店まで増える。中国は再び出店し、台湾は堅調で、米国・東南アジアは小さい店が増える。1店舗の売上は国内ほど伸びず、営業利益率は11%に上がる。ROEは14%前後の普通に強い専門店になる。
ZoffとメガネスーパーのグループがM&Aで規模を伸ばしても、眼鏡の価格帯は大きく崩れない。ジンズは2位の位置を保ち、旗艦店とオンラインの併用で客を囲い込む。一方、高い利益だった2025年8月期の水準にはすぐ戻らず、投資の回収に時間がかかる10年になる。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約2.9億円×10年)を足している。
- 国内アイウェア事業:数量 680(国内店舗数(店))× 価格 1.75(1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み))→ 売上 1,191 億円・営業利益 149 億円。国内の営業利益率12.5%。1店舗の売上は物価1.34倍に届かず(共食いと人口減で客数が減る)
- 海外アイウェア事業:数量 550(海外店舗数(店))× 価格 1.05(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 578 億円・営業利益 64 億円。海外の営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 143 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.68 倍、時価総額 2,671 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中立(国内は横ばい、海外は店が増える)と、2026年8月期の利益率悪化が一巡して平常化するという想定を合わせた中心の筋書き。
やや悲観 22% 価格競争で国内の利益率が下がり、海外は伸び悩む 利益 78 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 4,302 円1,004 億円
Zoffとメガネスーパーの統合、眼鏡市場との競争で、国内の客数が奪われる。ジンズは店数の拡大で売上を保つが、販促と値引きで粗利が落ち、家賃の固定費も重い。国内の営業利益率は9%に下がる。
海外は中国の再成長が遅れ、400店にとどまる。米国は店が増えても採算に乗らない。海外の利益率は5%程度で、拡大の割に利益が増えない。ROEは10%前後に下がり、成長株としての評価が後退する。
旗艦店は訪日客の波に左右され、投資の回収が遅れる。システム刷新の費用が重く、国内の販管費は売上の伸びより速く増え続ける。事業そのものは崩れず黒字を保つが、2025年8月期のような利益水準は戻らない10年になる。
- 国内アイウェア事業:数量 620(国内店舗数(店))× 価格 1.71(1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み))→ 売上 1,062 億円・営業利益 96 億円。国内の営業利益率9.0%。1店舗の売上は物価1.34倍に届かず(共食いと人口減で客数が減る)
- 海外アイウェア事業:数量 400(海外店舗数(店))× 価格 1.00(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 398 億円・営業利益 20 億円。海外の営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益77億円・事業 ROE 9.8%。RONIC=k 8.0%+1/2×(ROE−k)、g 4.0% から正当化 PER=13.7倍。国内の利益率の低下とROEの低下を反映し、上限の約8割の11.0倍に置いた。
確率:同業の再編で価格競争が激しくなり、中国の再成長も遅れる想定。2026年8月期の利益率悪化が定着する筋書き。
悲観 12% 価格競争で優良さを失い、海外も撤退に近づく 利益 22 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 848 円198 億円
眼鏡市場とZoff・メガネスーパーの大手2グループが価格を下げ続け、ジンズは単価を保てなくなる。国内の客数は人口減で細り、店は560店で止まる。家賃は固定費として残り、営業利益率は4%まで下がる。
海外は中国で店を減らして再び赤字に戻り、米国は撤退する。海外の店は280店にとどまり、営業利益はわずかに赤字になる。もう優良な専門店ではなく、普通の中小チェーンとして評価される10年になる。
創業者から次の世代への移行も、価格競争のさなかで投資判断が揺れ、出店と撤退の判断が後手に回る。眼鏡という事業は残るが、堀がないことが露わになる10年である。
- 国内アイウェア事業:数量 560(国内店舗数(店))× 価格 1.62(1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み))→ 売上 906 億円・営業利益 36 億円。国内の営業利益率4.0%。1店舗の売上は物価1.34倍に届かず(共食いと人口減で客数が減る)
- 海外アイウェア事業:数量 280(海外店舗数(店))× 価格 0.88(1店舗当たり年間売上高(億円))→ 売上 248 億円・営業利益 −5 億円。海外の営業利益率-2.0%
倍率:事業の純利益21億円・事業 ROE 3.8%は k 8.0% 以下なので、上限は 1÷k=12.5倍。国内の営業利益率4%・海外が赤字という構造的な負けの筋書きで、稼ぐ力が小さい。上限の約7割に置いた(9.0倍)。悲観の時価総額は稼ぐ力から出し、今を大きく割る。
確率:同業の再編で価格競争が構造的に定着し、中国・米国の海外展開も失敗に近づく複合の筋書き。確度は低いが無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内アイウェア事業
国内のJINS店舗とオンライン。眼鏡・サングラス・PC用眼鏡を企画から販売まで自社で回す。
| 数量国内店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円・オンライン込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 540 | 1.42 | 767 | 113 |
| 10 年後 中立 | 680 | 1.75 | 1,191 | 149 |
取り方:2025年8月期の国内アイウェア売上767億円を、期末の国内店舗数540店で割って1店舗当たり売上高を出した(オンラインを含む)。先は、店舗数(量)と、1店舗当たり売上高(物価3%が乗る名目)で置く。国内の眼鏡市場は実質で横ばいなので、中立は店が増える分と1店舗の客数の目減り(共食い・人口減)を差し引き、1店舗当たり売上は10年で1.23倍(物価1.34倍から客数分を引く)とした。
海外アイウェア事業
中国・台湾・香港・米国・東南アジアのJINS店舗。構造改革を終えた中国と台湾が柱。
| 数量海外店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上高(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 249 | 0.83 | 206 | 8 |
| 10 年後 中立 | 550 | 1.05 | 578 | 64 |
取り方:2025年8月期の海外売上約205億円(海外アイウェアの売上。2026年8月期の265億円が前年比29%増であることから逆算)を、海外店舗約249店で割った。海外の1店舗当たり売上は、新しい国の小さい店が増えるぶん物価の1.34倍より少し低い1.27倍を中立にした。数量は店舗数で、中立は10年で550店とした。
リスクと懸念
価格競争と同業の再編
ZoffがメガネスーパーのHorus HDを約190億円で買収し、眼鏡市場とあわせて三つどもえの構図が強まった。市場が横ばいの中で客の奪い合いが激しくなれば、値引きと販促費で営業利益率が削られる。2026年8月期の粗利率低下はその前触れとも読める。
先行投資が利益に効かない
旗艦店、システム刷新、出店加速で販管費は前期比18.8%増えた。売上は14%増えても営業利益は5%減った。投資が来期以降に利益へつながらなければ、拡大が利益を生まない局面が長引く。
中国の再成長が確かでない
中国は不採算店を整理して黒字化したが、個人消費の鈍化と現地チェーンの低価格競争が続く。減らした店の後に、再び伸ばせる確証はない。海外利益の約3倍化は、低い土台からの回復でもある。
家賃の固定費
店は借りて営むため、家賃は売上が落ちても減らない。店数を1,000規模まで増やす計画は、需要が落ちた時の固定費の重さも増やす。新リース会計基準でリース負債が貸借対照表に載ると、見かけの自己資本比率も下がる。
訪日客と為替への依存
銀座の来店客の約8割が訪日客という旗艦店は、為替と訪日客数に利益が左右される。円高や訪日客の減少が起きると、旗艦店への投資の回収が遅れる。
創業者からの世代交代
2025年11月に田中亮氏が社長COOになり、創業者の田中仁氏は会長CEOとして残る。ブランド作りは会長、執行は社長という分担が続く間は安定するが、投資判断の主導権がどちらにあるかで、資本配分の規律が変わりうる。
今後の分かれ目
- 国内の既存店売上が、客数の伸びを伴って2期以上続けて増えたら
- 旗艦店と高付加価値レンズの戦略が効いているとみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 2027年8月期の営業利益が会社予想の115億円を下回ったら
- 先行投資の効きが弱いとみて、やや悲観側に重みを寄せ、国内の利益率の置き方を下げる。
- 中国の既存店が黒字のまま増収を続け、出店を再開できたら
- 海外の店舗数と利益率の置き方を上げ、やや楽観側の確率を厚くする。
- 米国の出店が10店を超え、1店舗当たりの利益が黒字になったら
- 海外の成長が新しい国にも広がるとみて、楽観側の確率を上げる。
- Zoffとメガネトップの競争が値下げ合戦になったら
- 国内の利益率をやや悲観寄りに下げる。
- 還元を厚くする方針が示されたら
- 自己資本の膨らみが抑えられROEが保たれるため、倍率の置き方を見直す。
見ておくもの
- 国内既存店の売上・客数・客単価(月次)
- 海外の店舗数と、中国・台湾・米国の営業利益
- 販管費率と粗利率の推移(旗艦店・IT投資の効き)
- Zoff・眼鏡市場の店舗数と価格施策
- 配当・自社株買いの方針(還元性向)
倍率と資本コストの決め方
国内と海外を、店舗数(実質)と1店舗当たり売上(物価込みの名目)に分けて積み、利益率は物価で動かさず、自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流した(ROEは結果)。倍率は事業のROEと、普通の堀(残る割合1/2)から正当化PERを出し、中立を上限の約85%に置いた。今のPER(17倍前後)には寄せていない。純現金は65億円(時価総額の約5%)で別に足していない。新リース会計基準でBSの形は変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.5→19.72 倍・やや楽観 PER 14.6→19.29 倍・中立 PER 13.5→18.68 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。