結論
ワタミは、居酒屋の会社から、高齢者向けの宅配弁当を稼ぎ頭とする会社へ姿を変えた。2026 年 3 月期の営業利益 48 億円のうち、宅食が 43 億円を占める。国内外食は 23 億円で、サブウェイや焼肉、唐揚げの店が回復を支える。
筆者の結論は、今の値段はほぼ適正で、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。稼ぐ力は戻った。ただし利益の一部は優先株の配当 4.8 億円に先に出ていく。賃上げは年 7% を掲げ、費用の伸びは物価を上回る。
追い風は高齢化だ。75 歳以上の人口は 2030 年代まで増え、宅食の食数は前期も 1.6% 増えた。低価格の新商品「好い日の御膳」を足がかりに、新しい客を取り込む。
逆風は人手と競争だ。宅食の利益は広告の先行投資で 9% 減った。海外は利益が 6 割減り、居酒屋は市場が縮んでいる。
10 年で見る中立は、営業利益が 80 億円ほどに伸びる姿だ。それでも普通株の取り分は、優先株と低い配当性向に挟まれる。現金は厚いが、優先株を引くと時価総額の 1 割も残らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「人の力を借りて稼ぐ事業」の典型で、堀は広くない。
良い点は、宅食が毎日の習慣を握ることだ。注文は定期で、景気に左右されにくい。拠点を全国に持ち、食数の規模で首位に立つ。小さな利益率でも、利益が積み上がる。
心配な点は三つある。一つは賃金だ。人手が利益の源で、年 7% の賃上げは物価を超える。二つめは優先株で、請求権が先に付いている。三つめは居酒屋の弱さで、事業の半分が縮む市場にいる。
経営は、危機をはね返した実績がある。2021 年 3 月期の営業赤字 97 億円から 3 年で 38 億円の黒字まで戻した。ただし配当は薄い。資本は店舗と買収へ回り、普通株主には届きにくい。
本質価値は、10 年後の営業利益 80 億円と、そこから優先株の配当を引いた普通株の取り分で測る。筆者は、そこに十分な安全域はないと見る。今の値段は、中立の価値にほぼ重なる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 3 つある。高齢者向けの宅配弁当の「宅食」、居酒屋やサブウェイなどの「国内外食」、アジアを中心にした「海外」だ。
宅食は前期に 410 億円を売り、利益は 43 億円だった。全国に 506 の拠点を置き、配達員が毎日、手渡しで届ける。累計の届け数は年間 5,878 万食で、1 食あたりの売上は千円に満たない水準。握っているのは安否確認を兼ねた毎日の顔なじみの関係だ。
国内外食は 377 億円を売り、利益は 23 億円だった。店舗は 517 で、サブウェイが 229、鳥メロとミライザカが合わせて約 190 を占める。前期は 42 店を出して 17 店を閉めた。
サブウェイは 2024 年にマスターフランチャイズ契約を結んだ。契約は 10 年で、ロイヤリティを払って日本の店を増やす。2025 年には直営の 1 号店も出した。
海外は香港、フィリピン、韓国などに 81 店ある。売上は 115 億円だが、利益は 0.6 億円しかない。米国の寿司加工事業の買い取りや、おにぎり店の 51% 取得契約など、手を広げている。
ほかに電力小売と風力の環境、農業がある。売上は合わせて 28 億円、利益は 3 億円。全社の本部費は 21 億円かかる。
優良さと弱いところ
優良さを分けるのは、宅食の持続力と、全体の資本の重さだ。
宅食の強みは、16 年連続で食数の首位という規模と、毎日顔を合わせる配達員の網にある。注文は定期で入り、景気に左右されにくい。居酒屋の客は景気とともに動く。両者の違いが、この会社の質を決める。
弱みは三つある。一つめは人件費だ。年 7% の賃上げを掲げ、物価の上昇を上回る。二つめは居酒屋の市場の縮小で、前期は店を 17 閉めた。三つめは優先株だ。2021 年に政策投資銀行系のファンドへ 120 億円を出し、配当が年 4.8 億円かかる。契約では、資産売却や組織再編に事前の承諾が要る。
財務は見かけより薄い。現預金は 436 億円で、有利子負債 290 億円を引くと 146 億円残る。優先株を引くと 26 億円しか余らない。
経営は、危機を乗り越えた強さと、賃上げに寄せる思い切りを持つ。ただし配当性向は 11% と低く、普通株主への還元は薄い。株主優待は手厚いが、元は会社の費用だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、コロナ前の水準を回復して拡大に戻った。ただし居酒屋は、飲酒人口の減少と宴会の縮小で、構造的に小さくなっている。回復の中心は、焼肉、唐揚げ、ファストフードのように、客単価が低めで回転の速い業態だ。
宅配弁当の市場は、高齢化で厚みが増す。75 歳以上は 2030 年代まで増える。一人暮らしの高齢者が買い物や調理をしにくくなる分だけ、配食の出番が広がる。ワタミは病者や高齢者向け食宅配の売上で 16 年連続の首位だと自称している。
競争も強い。コンビニの宅配、自治体の配食、通販の冷凍弁当が、同じ客層を狙う。ワタミは 2025 年に宅配料込みで千円を大きく下回る低価格商品を出し、客層を広げに行った。値段で勝負する局面に入った、とも読める。
費用の側は逆風が続く。最低賃金の上昇と人手不足で、配達員も店舗の従業員も確保しにくい。食材や電気代も物価で上がる。
海外は、東南アジアと韓国が中心だ。店舗の入れ替えが続き、利益はまだ薄い。サブウェイ事業は、日本で出店を増やす局面にある。
人口は減るが、市場の中身は入れ替わる。外食の消費額はコロナ前を超えたものの、客数は戻りきっていない。値上げで客単価を上げた店が利益を伸ばし、値上げに耐えられない店が退く。この選別が、10 年を通じて続く。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、成長への再投資と財務の立て直しだ。配当は前期 4 億円ほどで、普通株の純利益の 11% にあたる。方針は 20% 以上で、増配の余地は残る。自社株買いはしていない。
財務の中心は優先株だ。2021 年に、政策投資銀行系の飲食・宿泊支援ファンドへ 120 億円で出した。配当は年率 4.0% で年 4.8 億円。普通株への転換権はなく、返済の条件は外から見えない。契約で、資産売却や新たな出資に事前の承諾が要るため、自由度が下がっている。
M&A は積極的だ。2024 年に日本サブウェイを子会社化し、同年に米国の寿司加工事業を買い取った。2026 年 5 月には Onigilly 社の 51% の取得契約を結んだ。いずれも額は開示が少なく、成果はこれからだ。
株主優待は、100 株以上で年 2 回、外食店と宅食で使える割引券を出す。費用は開示されず、筆者は年 2 億円ほどと見積もる。
筆頭の株主は、創業者の資産管理会社で 24.39% を持つ。筆頭株主の持分が大きく、TOB が起きても成立の鍵はこの資産管理会社が握る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ワタミは崖から戻った会社だ。2021 年 3 月期に 97 億円の営業赤字を出しながら、直近は 48 億円の黒字で、来期は 55 億円前後との見方もある。宅食は高齢化の最前線で、75 歳以上は 2030 年代まで増える。
低価格の新商品は、客を広げる武器になる。広告の先行投資が終われば、宅食の利益率は 11% 台に戻る。サブウェイは出店余地が大きく、10 年契約の期間中に店を増やせる。
居酒屋の店も、焼肉や唐揚げに切り替えることで、利益が 4 割伸びた。海外は薄利だが、店の入れ替えが済めば利益に変わる。
現金は 436 億円と厚く、有利子負債を引いても 146 億円ある。優先株の配当は利益の一割にすぎず、残りの利益は成長へ回る。
賃上げで人が集まり、他社より早く配達員と店員を確保できる。人手不足の時代に、先に賃金を上げた会社が勝つ。
筆頭株主が創業者の資産管理会社で、意思決定は速い。危機でも事業の入れ替えをやり切った実績が、次の成長への信頼になる。サブウェイや海外の買収も、軌道に乗れば利益の柱になる。
慎重な見方
利益の質は見かけより弱い。前期の経常利益 64 億円は、営業利益 48 億円に 16 億円の営業外収益が乗った数字だ。内訳が見えず、続く保証はない。
宅食の利益は広告で 9% 減った。低価格の商品に頼れば、1 食あたりの利益は削られる。賃金は年 7% 上げると言い、物価の 3% を大きく超える。10 年で賃金が 2 倍になるなら、それを価格に乗せられるか疑わしい。
居酒屋は市場そのものが小さくなり、店を閉める構造は変わらない。海外は利益が 6 割減り、新しい買収の成果も見えない。
優先株は、普通株より先に配当を受け、契約で会社の動きを縛る。返済の条件が見えず、償還の時期に現金を取られる心配もある。
過去 10 年の ROE の中央値は 4.5% にすぎず、直近の改善は短い。配当性向は 11% で、普通株主に利益が届かない。
創業者の資産管理会社が 24% を持ち、少数株主の声は届きにくい。成長のための資金は、配当ではなく店舗と買収へ回り、成果が出る保証はない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、宅食の需要と、店の回復という足元の事実に支えられている。慎重な言い分は、賃上げの重さと優先株の先取りに支えられている。利益率は今の水準を超えないと置き、強気に傾きすぎないようにした。
確率は中立に最も厚く置いた。やや悲観はやや楽観とほぼ同じ厚さにし、悲観は構造的な負けとして 1 割にした。
結論は、強気にも慎重にも倒れない。だから適正な水準で釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,017 円809 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 316 円127 億円)。 今の値に割り戻すと 1,174 円471 億円、今との差 +34.0%、 期待の年率 +10.3%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,482 円1,397 億円 | 476 円191 億円 | +351.8% | +16.3% | 396 円159 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,091 円1,240 億円 | 424 円170 億円 | +301.2% | +14.9% | 773 円310 億円 |
| 中立 | 38% | 2,241 円899 億円 | 334 円134 億円 | +194.0% | +11.4% | 979 円393 億円 |
| やや悲観 | 20% | 654 円262 億円 | 202 円81 億円 | −2.3% | −0.2% | 171 円69 億円 |
| 悲観 | 10% | 60 円24 億円 | 82 円33 億円 | −83.8% | −16.6% | 14 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,017 円809 億円 | 316 円127 億円 | +166.3% | +10.3% | 2,333 円936 億円 |
今の株価時価総額 876 円351 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 宅食が伸び、サブウェイが定着する 利益 79 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 3,482 円1,397 億円
75 歳以上の人口増と低価格の新商品で、宅食の食数は 3 割弱増える。1 食あたりの売上は物価に近く上がり、利益率は 11% に戻る。
サブウェイは 10 年契約のうちに店を大きく増やし、国内の店舗は 700 になる。居酒屋は焼肉と唐揚げへの転換が進み、利益率は 7% に上がる。
海外は店の入れ替えが済み、黒字化する。本部費は生産性の向上でわずかに減る。
営業利益は 114 億円、普通株の取り分は 79 億円。ROE は 14% を超え、配当性向は 3 割に上がる。
優先株の配当は変わらないが、利益に対する重さは小さくなる。株主優待も続き、普通株主への還元は今より厚くなる。賃金が年 7% 上がっても、価格と食数の伸びで吸収できる姿だ。
- 宅食(高齢者向け宅配弁当):数量 7,510(年間の届け数(万食))× 価格 907(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 681 億円・営業利益 75 億円。食数 1.28 倍、1 食 1.30 倍(低価格商品で値上がりを抑える)
- 国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか):数量 700(期末の店舗数(店))× 価格 10,054(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積))→ 売上 704 億円・営業利益 49 億円。店 700、1 店 1.38 倍(客数の増を含む)
- 海外(飲食店・寿司加工):数量 130(期末の店舗数(店))× 価格 19,880(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 258 億円・営業利益 10 億円。店 130、1 店 1.40 倍
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.4 倍、時価総額 1,369 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:宅食の食数増、サブウェイの出店、海外の黒字化が重なる必要がある。賃上げの重さも考え、1 割に置いた。
やや楽観 22% 宅食と外食の回復が続き、利益は 100 億円規模へ 利益 71 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 3,091 円1,240 億円
宅食の食数は 3 割増え、広告の効果が出て利益率は 10% に戻る。75 歳以上の人口増と低価格商品の定着が支えになり、1 食あたりの売上も物価に近く上がる。国内外食の店は 650 まで増え、利益率は 7% 近くに上がる。
海外は店の整理が進み、小さな黒字になる。サブウェイは出店が順調に進み、日本の店舗網の核になる。居酒屋は縮む市場の中で、転換した業態が利益を支える。
営業利益は 104 億円、普通株の取り分は 71 億円。ROE は 13% に近い。配当性向は 3 割に近づく。
賃金の上昇は価格でほぼ吸収できるが、利益率を押し上げるほどの余裕はない。M&A は小さな案件にとどまり、海外が利益の柱になるのは先送りになる。優先株の条件は変わらず、返済の動きも出ない。
- 宅食(高齢者向け宅配弁当):数量 7,760(年間の届け数(万食))× 価格 921(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 715 億円・営業利益 73 億円。食数 1.32 倍、1 食 1.32 倍
- 国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか):数量 650(期末の店舗数(店))× 価格 9,909(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積))→ 売上 644 億円・営業利益 44 億円。店 650、1 店 1.36 倍
- 海外(飲食店・寿司加工):数量 120(期末の店舗数(店))× 価格 19,312(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 9 億円。店 120、1 店 1.36 倍
倍率:事業の純利益 71 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.03 倍、時価総額 1,207 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の改善が続く姿。賃上げの重さがあり、確率は中立より薄く置いた。
中立 38% 中立:宅食が支え、利益率は今の水準にとどまる 利益 54 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 2,241 円899 億円
宅食の食数は 25% 増える。75 歳以上の人口増が支えるが、競争が増えを抑える。1 食あたりの売上は 30% 上がり、物価の 34% に届かない。低価格商品への移りと、競争で値上げを抑えるためだ。
国内外食は店が 600 に増える。サブウェイの出店が居酒屋の整理を補う。
営業利益は 80 億円で、全体の利益率は 5% 台とほぼ今のまま。賃金は年 7% 上がっても、価格と数量で吸収する計算だ。
普通株の取り分は 54 億円。配当性向は 25% ほど。ROE は 10% 台。
優先株の配当は 4.8 億円のまま。普通株主への還元は、配当性向 2 割台と株主優待にとどまる。サブウェイの出店や買収に資金が回り、現金は積み上がらない。
- 宅食(高齢者向け宅配弁当):数量 7,348(年間の届け数(万食))× 価格 907(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 667 億円・営業利益 63 億円。食数 1.25 倍、1 食 1.30 倍。物価 1.34 倍に届かないのは、低価格商品の比率が上がり競争で値上げを抑えるため
- 国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか):数量 600(期末の店舗数(店))× 価格 9,763(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積))→ 売上 586 億円・営業利益 35 億円。店 600、1 店は物価 1.34 倍。客数は横ばい
- 海外(飲食店・寿司加工):数量 110(期末の店舗数(店))× 価格 19,028(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 209 億円・営業利益 6 億円。店 110、1 店は物価 1.34 倍
倍率:事業の純利益 54 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.98 倍、時価総額 861 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:宅食の高齢化の追い風と、賃金・競争の逆風が打ち消しあう。最も起こりやすい形として最も厚く置いた。
やや悲観 20% 賃上げが重く、利益は半分近くに 利益 26 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 654 円262 億円
宅食の食数は 1 割しか増えず、競争で値上げは 25% にとどまる。賃金の伸びを吸収できず、利益率は 8% に下がる。
国内外食は店が 540 まで減り、客数も細る。利益率は 4% になる。海外は赤字を抜けられない。
営業利益は 43 億円と今の水準を割る。優先株の配当を引くと、普通株の取り分は 25 億円。
ROE は 6% 台。配当は続けるが、増配は止まる。
店舗の減損が出て、自己資本の伸びも鈍る。人手を確保するために賃金を上げても、価格に乗せきれない状態が続く。株主優待は縮小の議論になりうる。
- 宅食(高齢者向け宅配弁当):数量 6,467(年間の届け数(万食))× 価格 872(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 564 億円・営業利益 45 億円。食数 1.10 倍、1 食 1.25 倍
- 国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか):数量 540(期末の店舗数(店))× 価格 9,472(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積))→ 売上 512 億円・営業利益 21 億円。店 540、1 店 1.30 倍
- 海外(飲食店・寿司加工):数量 90.0(期末の店舗数(店))× 価格 18,460(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 166 億円・営業利益 2 億円。店 90、1 店 1.30 倍
倍率:普通株の ROE 6.3% が k 7.75% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。利益率が下がる筋書きなので、上限の約 77% の 9.0 倍に置く。
確率:賃上げが物価を上回り続け、価格に乗せきれない姿。居酒屋の縮小も重なり、2 割に置いた。
悲観 10% 悲観:競争と賃金で宅食が崩れ、居酒屋も縮む 利益 3 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 60 円24 億円
コンビニと通販の低価格宅配が宅食の客を奪う。食数は 5% 減り、値上げもできず、利益率は 5% に落ちる。
居酒屋は市場の縮小が進み、店は 430 まで減る。減損も出る。海外は撤退が続く。
本部費を絞っても、営業利益は 13 億円まで落ちる。優先株の配当を払うと、普通株の取り分は 3 億円ほど。
自己資本は減損で 240 億円まで細る。優先株が先に請求権を持つため、普通株の価値はほとんど残らない。
賃上げは止められず、離職も増えて、拠点の運営が揺らぐ。株主優待は廃止され、配当も止まる。再建には新たな資金が必要になる。
- 宅食(高齢者向け宅配弁当):数量 5,584(年間の届け数(万食))× 価格 802(1 食あたりの売上(円・名目))→ 売上 448 億円・営業利益 25 億円。食数 0.95 倍、1 食 1.15 倍
- 国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか):数量 430(期末の店舗数(店))× 価格 8,743(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積))→ 売上 376 億円・営業利益 9 億円。店 430、1 店 1.20 倍
- 海外(飲食店・寿司加工):数量 60.0(期末の店舗数(店))× 価格 17,040(1 店舗あたりの年間売上(万円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 0 億円。店 60、1 店 1.20 倍
倍率:普通株の ROE は 1% 台で k 7.75% 以下。PER は 1÷k=11.8 倍までだが、取り分が薄く稼ぐ力(3 億円 ÷ k = 35 億円)の6〜7割に置く。やや悲観の 9.0 倍より低い 8.0 倍とした。自己資本 240 億円は店舗設備と差入保証金が中心で、優先株 120 億円が先に請求権を持つため、帳簿は床にならない。
確率:宅食でコンビニなどの低価格宅配が客を奪い、居酒屋と海外も傷む構造的な負け筋。優先株の先取りがあり、普通株の傷は深いので 1 割に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
宅食(高齢者向け宅配弁当)
調理済みの弁当と総菜を、全国の拠点から配達員が手渡しで届ける中核事業。16 年連続で食数の首位を名乗る。
| 数量年間の届け数(万食) | 価格1 食あたりの売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,878 | 698 | 410 | 43 |
| 10 年後 中立 | 7,348 | 907 | 667 | 63 |
取り方:数量は有報の調理済み商品の年間お届け数 5,878 万食(前期比 1.6% 増)、価格は宅食の売上 410.1 億円を食数で割った 697.7 円。広報の「1 日約 24 万食」は別の集計で、年換算すると有報の数字より多い。利益は宅食セグメント利益 43.1 億円(前期比 −8.7%、新商品の広告の先行投資を含む)。物価の分は価格に入れる。数量は食数(実質)。
国内外食(居酒屋・焼肉・サブウェイほか)
ミライザカ、鳥メロ、焼肉の和民、サブウェイ(日本のマスターフランチャイズ)などの国内の店舗。
| 数量期末の店舗数(店) | 価格1 店舗あたりの年間売上(万円・名目、客数と客単価の積) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 517 | 7,286 | 377 | 23 |
| 10 年後 中立 | 600 | 9,763 | 586 | 35 |
取り方:店舗数は期末の 517(サブウェイ 229・鳥メロ 98・ミライザカ 87 ほか。FC 含む)。価格は国内外食の売上 376.7 億円を店数で割った 1 店あたり 7,286 万円。サブウェイは FC のため 1 店あたり売上が低く、全体の平均を押し下げる。客数の増減は 1 店あたり売上(価格)の中に入る。利益は国内外食のセグメント利益 22.6 億円(前期比 +40.5%)。
海外(飲食店・寿司加工)
香港、フィリピン、韓国などの飲食店と、米国・シンガポールの食品事業。
| 数量期末の店舗数(店) | 価格1 店舗あたりの年間売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 81.0 | 14,200 | 115 | 1 |
| 10 年後 中立 | 110 | 19,028 | 209 | 6 |
取り方:店舗数は期末の 81。価格は海外セグメントの売上 115.0 億円を店数で割った 1 店あたり 1.42 億円で、米国の寿司加工など店舗外の売上を含む。為替は 150 円で固定。利益は海外セグメント利益 0.56 億円(前期比 −59%)。
リスクと懸念
賃上げが物価を上回り続ける
会社は年 7% の賃上げと、2034 年に賃金 2 倍を掲げる。物価の 3% を大きく上回る。人手を確保する力は上がるが、価格に乗せられなければ利益率が削られる。パート等の年換算は 4,467 人で正社員より多く、時給の影響も大きい。
宅食の競争と低価格化
コンビニの宅配、自治体の配食、通販の冷凍弁当が同じ客層を狙う。宅配料込みで千円を大きく下回る商品は客を広げるが、1 食あたりの利益を削る。広告の先行投資で宅食の利益は前期に 9% 減った。
優先株の先取りと契約の縛り
A 種優先株式 120 億円は配当が年 4.8 億円で、普通株より先に払う。償還の条件は外から見えず、時期が来れば現金が出ていく。契約で資産売却や新たな出資に事前の承諾が要るため、動きの自由度が下がる。
居酒屋市場の縮小と店舗の減損
宴会や飲酒の減少で、居酒屋の市場は縮む。前期も 17 店を閉めた。閉店と減損が続けば、利益と自己資本を削る。差入保証金の回収不能も心配だ。
海外とサブウェイの成果が見えない
海外は売上 115 億円に対して利益が 0.6 億円しかない。新しい買収やサブウェイの出店が成果を生まなければ、のれんや店舗の減損になる。為替と各国の規制にも左右される。
営業外収益が続くとは限らない
前期の経常利益は営業利益より 16 億円多い。この上積みの内訳が外から見えず、続くか分からない。利益の水準を営業利益で見ておかないと、持続力を誤る。
食の安全と人手不足による営業停止
食中毒や火災が起きれば、営業の停止や評判の悪化になる。宅食は配達員の確保が事業の土台で、人手不足で拠点の運営が揺らげば食数が落ちる。
今後の分かれ目
- 宅食の利益率が 11% 台に戻り、広告の先行投資が一巡する
- 楽観側の確率を上げる。宅食の質が確かめられる。
- 賃上げを価格に乗せられず、営業利益率が 4% を割る
- やや悲観の確率を上げる。10 年の利益の伸びは止まる。
- A 種優先株式の償還や条件変更が発表される
- 普通株の請求権が整理される。償還に現金 120 億円が出るなら、余力が下がるので慎重に見る。
- コンビニなどの低価格宅配が宅食の客を大きく奪う
- 悲観の確率を上げる。宅食の食数が減れば、利益の大半が崩れる。
- 配当性向を 20% 以上に引き上げ、増配が続く
- 普通株主への還元が増える。値付けが少し上がる。
- 創業者側が TOB や非上場化に動く
- TOB の値付けは本質価値と別の話になる。優先株の扱いと価格の差を見て判断する。
見ておくもの
- 宅食の食数の伸び(前期 1.6% 増)と利益率(11% 台)
- 国内外食の利益(前期 23 億円)と店舗数
- 営業利益と経常利益の差(前期 16 億円)
- 賃上げ率と売上高人件費率
- 優先株の償還の動き
- 新中期経営計画の発表(今は策定中)
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。k 7.75%(quality +1.0)、g 4%、堀は普通。普通株の ROE が資本コストを少し上回る中立は、正当化 PER 12.9 倍の約 78% の 10.0 倍とした。今の株価や PER は見ていない。下調べの純有利子負債は現金同等物を基にした+133 億円だが、会社の開示は現預金が有利子負債を 146 億円上回る。優先株 120 億円を引くと余りは薄いので、余った現金は分けない。優先株の配当 4.8 億円は普通株の純利益から引き、返済の約束は倍率の質に織り込んだ。純利益÷営業利益は 0.75 と置き、営業外の上積みを全部は織り込まない。店舗は賃借が中心で、日本基準の新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で数字の形が変わるが、本質価値は家賃を費用に入れた形で置いている。株主優待は年 2 億円と見積もり、10 年分を還元に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.4 倍・やや楽観 PER 12→17.03 倍・中立 PER 11.8→15.98 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。