結論
フェリシモは、神戸に本社を置く通販の会社だ。服や雑貨、手芸のキットを、毎月1つずつ届ける「定期便」で売る。筆者の結論はやや割高である。本業がほとんど稼いでおらず、厚い現金も株主に戻ってこないからだ。
売上は約290億円あるが、営業利益は2億円ほどで、利益率は1%に満たない。のべの顧客数は毎年数%ずつ減り、単価の値上げでそれを埋めている。カタログで客を集め、毎月届けるという仕組みは、スマホで何でも買える時代に少しずつ古くなっている。
一方で、手元には現金と有価証券が124億円あり、借金は無い。今の時価総額の2倍に近い額だ。数字だけ見れば大きな割安に見える。
だが、この現金は10年以上ほとんど株主に戻っていない。創業家と財団が2割を持ち、使い道は会社が決める。筆者は、戻ってこない現金を額面では数えない。半分の価値と見て本業の稼ぎに足しても、今の値段に1割ほど届かない。
割安に変わる道は2つある。定期便の客数が下げ止まるか、会社が現金を株主に戻す決断をするかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フェリシモは「現金の箱に、細る事業が付いた会社」だ。時価総額は60億円で、手元の現金と有価証券は124億円ある。教科書どおりなら、現金より安く事業が買える割安株に見える。
だが、現金が株主のものになるかは、別の問題だ。この会社は10年以上、現金を積んだまま本業の赤字と黒字を行き来してきた。少数株主には、現金の使い道を決める力が無い。戻ってこない現金は、額面の価値を持たない。
本業も強くない。定期便という仕組みは独特だが、客は細り、利益率は1%に満たない。オーナーとして持ち続けたい事業かと問えば、筆者の答えは否である。
それでも、値段に安全域が無いわけではない。借金が無く、悲観の筋書きでも会社がすぐに消えることはない。現金の半分を数えれば、今の値段の大半は説明がつく。上値は、経営が資本の使い方を変えるかどうかにかかっている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの9割は定期便だ。カタログやウェブで商品を選ぶと、毎月1回、シリーズの1つが届く。手芸のキット、雑貨、服、猫やアートを主題にした小物などが多い。毎月少しずつ集める楽しさが売りで、自社で企画した商品が大半を占める。売上総利益率は55%近くあり、商品そのものの粗利は厚い。
その粗利を、カタログの印刷と郵送、広告、物流、人件費が食う。2026/02期は広告とダイレクトメールの効率を上げ、営業利益をようやく2億円に戻した。のべ顧客数は3.8%減り、平均の購入単価は2.5%上がった。客は減り、残った客が少し多く払う形だ。
残りの1割は新しい事業だ。取引先が出品する「フェリシモ パートナーズ」、自治体の子育て支援の受託、2024年から運営する神戸ポートタワーなどがある。売上は31億円で2割伸びたが、利益の柱にはまだ遠い。
本社は神戸の三宮にあり、物流の拠点は須磨にある。従業員は400人ほどで、創業家の資産管理会社とみられる目神山事務所と、フェリシモ財団が大株主だ。
稼ぎ方の要は、一度ついた客に長く買い続けてもらうことだ。新しい客を得る費用は重く、続けて買う客の厚みが利益を決める。
優良さと弱いところ
優良さは低い。商品の企画の力と、毎月届ける仕組みへの客の愛着はある。だが、それが利益になっていない。過去12年の営業利益率は最高でも4.5%で、赤字の年も4回あった。ROEは10年の中央値で3%ほどにとどまり、資本コストの3分の1しかない。
客の数は長く減り続けている。カタログの通販は、紙で商品を選ぶ世代とともに縮む。ウェブとアプリに移る客もいるが、そこでは大手の通販サイトや手芸のアプリと並べて比べられる。値上げで単価は上がっても、客が減る速さを埋めきれない。
財務は極めて堅い。借金は無く、現金と有価証券が124億円ある。ただ、堅さは株主の利益にはなっていない。現金は2%の利息しか生まず、それが本業の利益とほぼ同じ額になっている。
経営はROE5%以上を目標に掲げ、資本コストを下回っていると自ら認める。認識はあっても、現金を戻す具体的な手は打っていない。資本の配分は、この会社のいちばんの弱点である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の通販の市場は伸びているが、伸びているのはネットの大手だ。物販のネット通販は年に15兆円を超え、アマゾンや楽天、ゾゾタウンが客を集める。カタログを起点にした通販は、ベルーナやスクロール、千趣会が同じ土俵にいて、どこも客の高齢化と紙の費用の上昇に苦しむ。
フェリシモの定期便は、その中でも独特だ。商品を1度に売り切るのでなく、毎月1つずつ届ける。手芸や雑貨の熱心な客がつきやすく、毎月の売上の見通しが立つ。だが新しい客を集めるにはカタログと広告がいる。紙と郵送の値段が上がるほど、1人の客を得る費用は重くなる。
物価3%の世界では、商品の値上げは通しやすい。粗利が厚いので、仕入れの値上がりは単価に移せる。逆に、カタログの印刷と配送、物流の人件費は物価以上に上がりやすい。
筆者は、定期便の客数は10年で2割ほど減ると見る。単価は物価並みに上がり、売上はほぼ横ばいだ。新しい事業がその差を埋められるかが、10年の分かれ目になる。
神戸ポートタワーのような場の運営や、自治体の仕事は、通販とは別の稼ぎ方だ。小さいが、客数の減少に左右されない収入として育つ余地はある。
資本政策と M&A
配当は累進か維持を方針とし、今期は年25で、前期より5増やす。利益の5割を超える配当で、性向は高い。自社株は発行済の4分の1ほどを金庫に持ち、2026/02期に50万株を消却した。ただし新たな自社株買いはしていない。
株主優待は、8月末の株主に買い物のeクーポンを贈る。100株で1千円分、1年以上の保有で3千円分、10年以上で8千円分だ。費用は開示が無く、原価で年0.6〜0.7億円と推定する。10年で約6.5億円の還元として数えた。
現金と有価証券は124億円で、借金は無い。退職給付の負債22億円と運転の資金を除いても、75億円ほどが事業に要らない。創業家と財団で約2割を持ち、使い道は会社が決める。過去10年、この現金は赤字で減ったことはあっても、株主に戻ったことはほとんど無い。
筆者は、この現金の戻り方を半分と見る。大きな自社株買いや特別配当が出れば、それだけで今の値段の何割分かが株主に渡る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額60億円の会社が、現金と有価証券を124億円持ち、借金は無い。退職給付と運転の資金を引いても75億円が余る。本業の価値をゼロと見ても、今の値段は現金の8割でしかない。
本業も底を打った。2026/02期は営業利益を前期の3倍に戻し、粗利率は55%近くまで上がった。のべ顧客数は減ったが、単価は上がり、広告とダイレクトメールの効率も良くなった。今期は増収増益を常態にすると経営が言い切っている。
新しい事業も2割伸びる。神戸ポートタワーの運営、自治体の子育て支援の受託、取引先の商品を売るパートナーズは、客数の減少に左右されにくい。10年で売上の2割を新しい事業が占めれば、会社の形は変わる。
株主への姿勢も変わり始めた。配当は累進か維持を掲げ、今期は5増やす。ROE5%以上を目標にし、資本コストを下回ると自ら認めた。資本の使い方を問う株主の声が強まれば、自社株買いや特別配当が出る日は近い。その時、現金の価値はそのまま株価に移る。
慎重な見方
現金が多いことは、株主の利益を約束しない。この会社は10年以上、現金を積んだまま株主に戻してこなかった。現金は2017/02期の大きな赤字や2024/02期の赤字で減っただけで、自社株買いで減ったわけではない。創業家と財団が2割を持ち、少数株主に使い道を決める力は無い。
本業は細っている。のべ顧客数は毎年減り、カタログの通販はスマホの時代に古くなる。単価の値上げで売上を保っても、紙と郵送、物流の費用は物価以上に上がる。過去12年の営業利益率は最高でも4.5%だ。利息の収入が本業の利益と同じ額というのは、事業として危うい。
新しい事業も利益の柱ではない。ビジネスプロデュースは粗利率が大きく下がった。ポートタワーは話題にはなるが、規模が小さい。
今の値段は帳簿の3割だが、ROEが資本コストの3分の1しかない会社では、帳簿は床にならない。現金を半分しか数えず、本業を細る事業と見れば、今の値段は安くない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。現金の厚さと本業の底入れは本物だが、現金が戻らない限り、その価値は半分しか株主に届かない。本業の客数の減少も止まっていない。中立に4割弱、やや悲観と悲観に合わせて4割弱を置き、楽観は1割未満にした。大きな自社株買いか特別配当が出れば、戻り方の割引を小さくし、楽観側に寄せる。結論がやや割高にとどまるのは、現金の厚さが本業の弱さを大半まで打ち消すからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,420 円101 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 391 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 906 円65 億円、今との差 +8.1%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,856 円203 億円 | 680 円48 億円 | +321.9% | +15.5% | 247 円18 億円 |
| やや楽観 | 18% | 2,176 円155 億円 | 539 円38 億円 | +224.0% | +12.5% | 489 円35 億円 |
| 中立 | 37% | 1,636 円117 億円 | 428 円31 億円 | +146.3% | +9.4% | 764 円54 億円 |
| やや悲観 | 24% | 691 円49 億円 | 277 円20 億円 | +15.5% | +1.5% | 232 円17 億円 |
| 悲観 | 14% | 407 円29 億円 | 157 円11 億円 | −32.6% | −3.9% | 79 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,420 円101 億円 | 391 円28 億円 | +116.1% | +8.0% | 1,811 円129 億円 |
今の株価時価総額 838 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 定期便が下げ止まり、新事業が柱になる 利益 13 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,856 円203 億円
ウェブとアプリで若い客が増え、定期便ののべ顧客数が10年で横ばいに戻る筋書きだ。手芸や猫の雑貨など熱心な客の集まりが、口コミで新しい客を呼ぶ。単価は物価をやや上回って上がり、カタログの費用は紙を減らして下がる。営業利益率は4%に戻る。神戸ポートタワーとパートナーズ、自治体の仕事が伸び、新しい事業は売上の2割を占める。配当は利益の5割を出し、優待も続く。それでもROEは資本コストに届かず、現金は会社に残る。経営の目標のROE5%は、この筋書きでようやく届く。優待の費用は増えるが、熱心な客を株主に変える効果もある。利益の質が上がり、値段は帳簿に近づく。
- 定期便事業:数量 651(のべ顧客数(万人・年・推定))× 価格 0.55(のべ 1 人あたり購入額(万円・名目))→ 売上 359 億円・営業利益 14 億円。推定 651 万人(横ばい)× 0.55 万円(1.38 倍)、利益率 4%
- 新規事業(B2B・B2G・ポートタワー):数量 1,080(取引先・受託・施設の件数(件・推定))× 価格 0.07(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。推定 1,080 件(1.8 倍)× 0.070 億円(1.34 倍)、利益率 4%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)56 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 203 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数が横ばいに戻り、新事業が売上の2割に育つ筋書き。過去12年の営業利益率の最高は4.5%で、4%は実績の上の方なので1割未満にした。
やや楽観 18% 客数の減りが緩み、利益率は3% 利益 9 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,176 円155 億円
定期便ののべ顧客数は減り続けるが、その速さは年1%未満に緩む筋書きだ。商品の企画と単価の上昇で、売上は物価並みに伸びる。広告とカタログの効率化が続き、物流の自動化で人手の費用も抑える。営業利益率は3%になり、2021〜2022年の水準に近い。新しい事業は1.5倍に育ち、黒字の柱になる。配当は累進で増え、優待も続く。現金は利息を生み続けるが、株主には大きくは戻らない。ROEは資本コストの半分ほどにとどまる。カタログの部数を絞り、ウェブで注文する客の比率が上がることが、この筋書きの前提になる。それでも、値段は帳簿の半分ほどにとどまる。
- 定期便事業:数量 599(のべ顧客数(万人・年・推定))× 価格 0.54(のべ 1 人あたり購入額(万円・名目))→ 売上 321 億円・営業利益 10 億円。推定 599 万人(0.92 倍)× 0.536 万円(1.34 倍)、利益率 3%
- 新規事業(B2B・B2G・ポートタワー):数量 900(取引先・受託・施設の件数(件・推定))× 価格 0.07(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。推定 900 件(1.5 倍)× 0.070 億円、利益率 3%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)56 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 155 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数の減少が年1%未満に緩み、費用の効率化が続く筋書き。2021/02期と2022/02期に4%前後を出した実績があり、3%はその手前として2割弱。
中立 37% 客数は2割弱減り、利益率は2% 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,636 円117 億円
定期便ののべ顧客数は、10年で1割5分減る。紙で商品を選ぶ客が年を取り、ウェブの客の増え方はそれに追いつかない。単価は自社企画の値上げで物価よりやや速く上がり、定期便の売上はほぼ横ばいになる。広告とカタログの効率化で、営業利益率は2%に戻る。新しい事業は3割伸び、小さな黒字を出す。現金の利息は年2億円前後を生み、純利益の3分の1を占める。配当は利益の5割で、優待も続く。ROEは3%弱で、資本コストに遠く届かない。償却は年9億円前後で、ソフトと物流の更新に同じほどの投資を続ける。現金は大きく増えも減りもせず、株主に戻る分は配当と優待にとどまる。
- 定期便事業:数量 553(のべ顧客数(万人・年・推定))× 価格 0.52(のべ 1 人あたり購入額(万円・名目))→ 売上 288 億円・営業利益 6 億円。推定 553 万人(0.85 倍)× 0.52 万円(1.30 倍)、利益率 2%
- 新規事業(B2B・B2G・ポートタワー):数量 780(取引先・受託・施設の件数(件・推定))× 価格 0.07(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。推定 780 件(1.3 倍)× 0.070 億円、利益率 2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)56 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:カタログ通販の客の高齢化で客数は減り続け、単価の上昇でほぼ埋める筋書き。ここ数年の客数の減り方と費用の効率化をそのまま延ばした中立で、もっとも起こりやすいとみた。
やや悲観 24% 客数が3割減り、本業は収支とんとん 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 691 円49 億円
定期便ののべ顧客数は、ここ数年と同じ年3%余りの速さで減り、10年で3割減る。単価の値上げは客離れを招き、物価に届かない。紙と郵送、物流の費用は物価以上に上がり、本業の営業損益は収支とんとんに沈む。新しい事業も伸び悩む。純利益は現金の利息だけになり、配当は維持がやっとだ。優待は縮められる。現金は赤字の穴埋めと新しい事業への投資で少しずつ減り、株主には戻らない。値段は、稼ぐ力と戻らない現金の半分に見合う所まで下がる。経営は新しい事業に活路を探すが、それで本業の縮みを埋めることはできない。帳簿は厚くても、それを生かす稼ぎが無い。
- 定期便事業:数量 456(のべ顧客数(万人・年・推定))× 価格 0.50(のべ 1 人あたり購入額(万円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 0 億円。推定 456 万人(0.70 倍)× 0.50 万円(1.25 倍)、利益率 0%
- 新規事業(B2B・B2G・ポートタワー):数量 660(取引先・受託・施設の件数(件・推定))× 価格 0.07(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。推定 660 件(1.1 倍)× 0.066 億円、収支とんとん
倍率:本業はとんとんで利益は現金の利息が中心。値段は稼ぐ力(事業の純利益÷k)と戻らない現金の半分まで。PER は 1÷k の 7 割弱の 8.0 倍。PBR は 0.16 倍と低いが、少数株主は清算を決められず、現金は戻り方 0.5 でしか数えないため。床の資産(約 29 億)よりは上に置いた。
確率:客数の減少がここ数年の年3〜4%のまま続く筋書き。2024/02期に赤字、2025/02期に利益ほぼゼロだった実績から厚めに置いた。
悲観 14% 定期便が半分に縮み、赤字と現金の流出が続く 利益 −6 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 407 円29 億円
スマホの通販とフリマのアプリが、手芸と雑貨の熱心な客まで奪う筋書きだ。定期便ののべ顧客数は10年で半分になり、単価も物価に大きく遅れる。紙と物流の費用は固定費として残り、本業は毎年赤字を出す。新しい事業も縮み、ポートタワーの運営は採算に乗らない。会社は物流の拠点を畳み、人を減らすが、その費用もかさむ。現金は10年で4割近く減り、配当は細り、優待は半分になる。創業家と財団が残りの現金を握り、少数株主に清算を決める力は無い。値段は残った現金の半分ほどまで下がる。借金が無いので会社は消えないが、価値は年々少しずつ削られていく。
- 定期便事業:数量 325(のべ顧客数(万人・年・推定))× 価格 0.46(のべ 1 人あたり購入額(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 −6 億円。推定 325 万人(0.5 倍)× 0.46 万円(1.15 倍)、利益率 −4%
- 新規事業(B2B・B2G・ポートタワー):数量 480(取引先・受託・施設の件数(件・推定))× 価格 0.06(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。推定 480 件(0.8 倍)× 0.060 億円、利益率 −3%
倍率:赤字なので PBR で置く。価値は床の資産(約 29 億、floor_assets_why)。今の自己資本 196 億に対し 0.15 倍。
確率:カタログ通販の客が大きく離れ、本業の赤字が続く構造的な負け。過去12年に赤字が4回あり、客数の減少が止まっていないので1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
定期便事業
服・雑貨・手芸キットなどを毎月 1 つずつ届ける通販。カタログとウェブで受注する。
| 数量のべ顧客数(万人・年・推定) | 価格のべ 1 人あたり購入額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 651 | 0.40 | 260 | 2 |
| 10 年後 中立 | 553 | 0.52 | 288 | 6 |
取り方:のべ顧客数の実数は開示が無い(増減率だけ。2026/02 期 −3.8%)。のべ 1 人の 1 回の購入を約 0.4 万円と見て、売上 260 億円から約 650 万人と推定。単一セグメントで利益の内訳は無いので、全社の営業利益を定期便に置いた。
新規事業(B2B・B2G・ポートタワー)
取引先が出品するパートナーズ、自治体の子育て支援の受託、神戸ポートタワーの運営など。
| 数量取引先・受託・施設の件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 600 | 0.05 | 31 | 0 |
| 10 年後 中立 | 780 | 0.07 | 55 | 1 |
取り方:件数の開示は無い。取引先・受託・施設を合わせて約 600 件、1 件あたり約 0.05 億円と置き、売上 31.5 億円から推定。利益は開示が無く、収支とんとんと置いた。
リスクと懸念
定期便の客数の減少
のべ顧客数は毎年数%ずつ減っている。カタログで商品を選ぶ世代が年を取り、ウェブでは大手の通販と並べて比べられる。単価の値上げで埋めきれなければ、売上と利益がともに縮む。
紙と郵送と物流の費用
カタログの印刷、郵送、倉庫と配送の人件費は、物価以上に上がりやすい。客を1人得る費用が重くなれば、薄い利益はすぐに赤字に変わる。2024/02期はこの形で赤字になった。
現金が株主に戻らない
現金と有価証券は124億円あるが、10年以上ほとんど株主に戻っていない。使い道は会社が決め、大きな買収や新しい事業に使って失敗すれば、価値は帳簿より小さくなる。
新しい事業の不確かさ
ポートタワーや自治体の受託、パートナーズは伸びているが、利益は小さい。ビジネスプロデュースの粗利率は大きく下がった。投資が実らなければ、本業の細りを埋められない。
在庫の負担
自社企画の商品が大半で、売れ残れば在庫を抱える。商品は44億円あり、流行が外れれば値引きと評価の損が出る。
今後の分かれ目
- 大きな自社株買いか特別配当を発表したら
- 現金が株主に戻る道が開く。戻り方の割引を小さくし、楽観側に寄せる。
- のべ顧客数が2年続けて前年を上回ったら
- 定期便の縮みが止まった印。中立の数量を上に見直す。
- 営業利益率が3%を超えたら
- 費用の効率化が利益に変わり始めた印。やや楽観の確率を上げる。
- 現金を使った大きな買収を発表したら
- 値段と中身しだいで価値が増えも減りもする。買収先の利益の質を見て確率を動かす。
- 再び営業赤字に戻ったら
- 客数の減少に費用が追いつかない印。やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 定期便ののべ顧客数・平均購入単価・購入頻度
- 広告費とカタログの費用の売上比
- 新規事業の売上と利益
- 現金と有価証券の残高
- 配当・自社株買い・優待の変更
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価から置いていない。10年後の事業のROEは中立で約2%とk 8.25%を大きく下回るので、正当化PERの上限は1÷k=11.8倍で、客数の減少と利益の薄さで7.5割の8.8倍とした。余った現金75億は戻り方0.5で足し、PERに混ぜていない。今のPBR約0.3倍は割安の根拠にしていない。悲観は現金から10年の赤字と撤退の費用を引いた残りに戻り方を掛けた床。2028/02期から新しいリースの会計で賃借が負債に載るが、本社と物流は自社の建物が主で影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 8.8→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。