結論
ダイイチは、帯広・旭川・札幌で食品スーパー 26 店を営む北海道の会社だ。売上は 586 億円、営業利益は 13 億円。利益率は 2.2% と、スーパーとしては普通だが、前の期より 3 割減った。大株主はイトーヨーカ堂で、議決権の約 3 割を持つ。
筆者の結論は、今の値段は割高、である。事業は堅い。食料品は景気で売れなくなりにくく、財務は無借金に近い。ただ、この会社の稼ぐ力は、道内の競争と賃上げで年々削られている。しかも 10 年後の中立でも、営業利益は 17 億円前後と今よりやや増える程度で、資本コストを上回る ROE には届かない。
2025 年 9 月期は、千歳店とアリオ札幌店を開き、売上が 13% 伸びた。ところが出店費用と人件費で、営業利益は 3 割減った。2026 年 9 月期は営業利益 15.6 億円の予想で、回復途上にある。ただ、減損損失 13 億円の計上で、最終利益は 2 億円まで落ちる見込みだ。
現金は 70 億円で、時価総額の 4 割近い。ただ、スーパーは日々の仕入れの支払いに現金が要る。事業に要らない余りは、その半分ほどだ。資本コストは 7%、10 年後の中立の ROE は 5% 台。株主優待は年 1 億円強の費用で、受け取る分を還元に足した。計算の総合は約 −42% の割高だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ダイイチは「堅いが、深い堀のない地域スーパー」だ。食料品は生活に欠かせず、景気に強い。財務も堅く、現金が厚い。安心して持てる事業ではある。
ただ、稼ぐ力に比べて、資本が重い。ROE は 5% 台で、自己資本の4割近くが現金に眠る。経営は、この現金を新店や自社株買いに回す姿勢が弱い。株主が自由に使える利益は、設備投資と賃上げのあとに残るわずかな額だ。
堀は、小さな商圏の知名度に宿る。人口が減る商圏では、その堀自体が縮む。札幌では大手と安売り勢が待ち構える。価格を決める力は弱く、値上げは客数に響く。
安全域は、現金と自己資本の厚さにある。悲観の筋書きでも、今の値段の2割は残る。ただ、中立の価値でも今の値段に届かない。優待や増配が続いても、払う値段に見合う安全域とは言えない。
何で稼ぐ会社か
事業は食料品を中心とするスーパー 1 本で、セグメントは単一だ。2025 年 9 月期末の店舗は 26。帯広に 10、旭川に 7、札幌に 9。生鮮食品と総菜に力を入れ、自社の総菜工場(プロセスセンター)も持つ。従業員は 437 人の正社員に加えて、準社員・パートが 8 時間換算で約 1,400 人いる。人手に頼る事業で、賃上げが利益に直結する。
帯広・旭川は、地元で長く商売をしてきた強みで、札幌は新規の出店で拡げている途中だ。2025 年 9 月期は千歳店とアリオ札幌店を新設し、設備投資は 15 億円、減価償却は 10 億円だった。今後は旭川地区での出店を優先して検討する。
店の土地は、全体の約 12.5 万㎡のうち 8.4 万㎡が賃借だ。借地が多いため、賃料は売上が落ちても減らない固定費になる。リース債務は 12 億円で、これとは別に店舗用地の賃料を毎年払う。
収益の構造は、売上総利益率が 26% 前後、販売費・一般管理費が 24% 前後。差が営業利益率の 2% だ。人件費、光熱費、新店の開業費が、この差を簡単に動かす。
優良さと弱いところ
堀は、帯広・旭川という地元の商圏での知名度と、鮮度と品揃えへの信頼にある。商圏の小さな町では、スーパーは地域のインフラに近く、顧客が離れにくい。札幌でも、駅前や商業施設の中という立地で差をつける。
ただし堀は狭い。道内ではイオン北海道、アークス、コープさっぽろの大手 3 社が厚い。さらにロピアなど道外の安売り勢の進出が続き、既存の競合も低価格へ寄せている。価格を決める力は弱く、売上総利益率は 26% 前後で動かない。2025 年 9 月期は、売上が 13% 増えたのに営業利益が 3 割減った。
資本効率は低い。ROE は直近 5.7%、過去 10 年の中央値は 8.1% だ。自己資本比率は 63% と高く、現金が使われずに眠る分、ROE は薄まる。借入金はほぼなく、財務は堅い。営業利益は支払利息の 20 倍を超える。
経営は穏当で、配当は安定を基本に、2025 年 9 月期は前期より増配した。大株主のイトーヨーカ堂は、ヨーク・ホールディングスを通じて米ベインの投資ファンドの傘下にある。この親会社が長期の株主として残るか、売却を考えるかは、少数株主にとって大きな論点だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北海道の食品スーパーは、人口減と、道外資本の進出という二重の圧力にさらされている。道内の人口は減り続け、帯広・旭川の商圏は縮む。札幌は人口が保たれるが、競争が最も激しい。
競合の動きは速い。西友の北海道の店舗は、イオン北海道が全部引き継いだ。イトーヨーカドーが 6 店を閉めたあとの空き地には、ダイイチやロピアが出た。ロピアは札幌で出店を重ねており、近隣の店は差別化を迫られている。ダイイチはセブン&アイ・ホールディングスとの関係で、情報の共有など協力関係にあると報じられる。
コスト面では、最低賃金の上昇と、パート・アルバイトの人手不足が続く。セルフレジなどの省力化と、総菜・自社ブランド商品で粗利を厚くする動きが各社に共通する。物価上昇のもとで客単価は上がるが、買上点数は減る傾向にある。
分かれ目は 3 つ。札幌と旭川で出店した新店が育つか。賃上げを価格や省力化で吸収できるか。そして道外資本の安売りとどう向き合うかだ。
数字で見ると、道内の食品スーパー各社の営業利益率は 2〜4% に収まり、2% 台のダイイチは平均的な位置にある。人口減のなかで売上を伸ばせるのは出店で商圏を取りに行く会社だけで、ダイイチの 2025 年 9 月期の売上増 13% もほぼ新店の寄与だ。既存店で稼ぐ力が伸びているかは、今後の月次で確かめる必要がある。
資本政策と M&A
還元は、安定配当を基本とする。2025 年 9 月期の配当性向は 4 割ほどで、前期から増配した。2026 年 9 月期も増配を予定し、配当性向は 4 割台を保つ。自社株買いは小さい。
株主優待がある(毎年 9 月末)。100 株で数千円相当、1,000 株以上で 1 万円前後のギフトカードか自社商品券、北海道の特産品を選べる。優待の費用は開示がなく、株主数から年 1.2 億円ほどと推定した。費用は既に販管費に入って利益を下げている。株主が受け取る分として、10 年の還元に 12 億円(中立)を足した。
成長投資は、新店が中心で、年 12〜15 億円を投じる。2026 年 9 月期は減損損失 13 億円を見込む。利益が出ない店舗の資産を見直した形で、現金の流出はない。現金は 70 億円あり、借入金はほぼない。
親会社はイトーヨーカ堂(約 3 割)で、ヨーク・ホールディングスとベインの投資ファンドを介している。TOB や持株の売却の可能性は否定できないが、時期も条件も不明なので、価値の数字には入れていない。
減価償却は物価で増やさない。今ある店舗の償却は取得した値段のままで、新店・改装の分だけ今の値段で積む。償却は今の 10 億円が 10 年後に約 11 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
出店が実を結ぶ。2025 年 9 月期に開いた千歳店とアリオ札幌店は、まだ立ち上がりの途中で、通年の寄与はこれからだ。2026 年 9 月期の第 3 四半期までの累計で営業利益は前年から 27% 増えており、回復の勢いは本物だ。旭川での出店も続き、札幌の店が利益を稼ぐ段階に入れば、利益率は 2.2% から 3% 台へ戻る余地がある。
物価上昇は、スーパーに味方する。客単価が上がり、総菜・自社ブランドの比率が増えれば、粗利率も上がる。賃上げはセルフレジと省力化で吸収できる。
財務は強い。現金 70 億円、借入金はほぼゼロで、自己資本比率は 63%。新店の資金は自前で賄える。増配が続く余地が大きい。優待もあり、個人株主の層は厚い。
親会社の動きも前向きに働きうる。ベイン傘下のイトーヨーカ堂が持株を売却するなら、事業会社への売却や TOB という形で、少数株主にも相応の価格が付く可能性がある。
配当についても、現金の厚さを背景に、利益が戻れば配当性向を引き上げる余地がある。株主優待を目当てにした個人株主が多く、株価の下支えにもなる。2026 年 9 月期の営業利益予想 15.6 億円が達成されれば、減損を除く稼ぐ力の回復が数字で確認できる。
慎重な見方
競争は一段と厳しくなる。ロピアなど道外の安売り勢が札幌に出店を重ね、イオン北海道は西友の店舗を吸収して規模を増した。ダイイチは小さく、仕入れの力で勝てない。値下げに付き合えば粗利率が削られ、付き合わなければ客が逃げる。
賃上げは止まらない。最低賃金が上がり、パートの確保には時給を上げ続けるしかない。人件費の増加を価格に転嫁できる範囲は限られ、2025 年 9 月期の減益がその前触れだ。売上が 13% 伸びても利益が 3 割減ったことが、構造の厳しさを示している。
2026 年 9 月期は減損損失が 13 億円出る見込みで、新店と既存店の収益力に疑問が出た。借地が多く、賃料は売上が落ちても減らない。店が増えるほど、固定費の重さが効く。
人口減は北海道で特に速い。帯広・旭川の商圏は縮み、数量は押し下げられる。親会社が売却に動いたとしても、必ず少数株主に有利な条件とは限らない。
さらに、現金の厚さは強気の根拠にされるが、スーパーは日々の仕入れの支払いに現金が要り、全部が余りではない。余った分も、大株主の意向次第で自社株買いや特別配当になる保証はない。ROE が 5% 台にとどまるのは、この現金が使われずに眠っているからで、構造は簡単には変わらない。
どちらに重みを置いたか
出店が育てば回復するという強気の見方は、起こりうる。しかし、道内の競争と賃上げの構造という慎重な見方のほうが重い。確率は中立を中心に、楽観・やや楽観を 26%、やや悲観・悲観を 36% に置いた。中立でも営業利益は 17 億円前後で、ROE は 5% 台にとどまる。現金の厚さと優待が悲観の床を支えるが、中立の価値でも今の値段に届かない。総合は約 −42% の割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,551 円174 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 487 円55 億円)。 今の値に割り戻すと 1,136 円128 億円、今との差 −30.7%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 7.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,633 円408 億円 | 659 円74 億円 | +162.0% | +10.1% | 258 円29 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,835 円319 億円 | 605 円68 億円 | +110.0% | +7.7% | 688 円77 億円 |
| 中立 | 38% | 1,723 円194 億円 | 552 円62 億円 | +38.9% | +3.3% | 864 円97 億円 |
| やや悲観 | 25% | 352 円40 億円 | 365 円41 億円 | −56.2% | −7.9% | 179 円20 億円 |
| 悲観 | 11% | 214 円24 億円 | 231 円26 億円 | −72.8% | −12.2% | 49 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,551 円174 億円 | 487 円55 億円 | +24.4% | +2.2% | 2,038 円229 億円 |
今の株価時価総額 1,638 円184 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 新店が利益を稼ぎ、粗利率が上がる 利益 24 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 3,633 円408 億円
新店が通年で寄与し、札幌・旭川の店が利益を稼ぐ段階に入る。客数は 6% 増、客単価は物価並みに上がる。総菜と自社ブランドの比率が高まり、売上総利益率が 26.6% に上がる。賃上げはセルフレジなどの省力化で一部吸収できる。営業利益率は過去の山(4.4%)に近い 4% 弱まで戻る。現金は新店と増配に使われ、配当は利益に応じて増える。優待も続く。
(名目の前提)客単価は名目、客数は実質で置いた。人件費は物価(1.34 倍)より速い年 3.5% で上がるものとし(10 年 1.41 倍)、本社費やその他の費用も物価で増やした。減価償却は物価で増やさず、今ある店舗は取得原価のまま、新店と改装だけ新しい値段で 25 年に按分した。償却は今の約 10 億円が 10 年後に約 12 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は現金から出る。現金の利息は 2% で純利益に入れた。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足した。
- 食品スーパー(北海道):数量 25.9(年間の来店客数(百万人、推定))× 価格 33(客単価(百円 / 人、推定))→ 売上 844 億円・営業利益 33 億円。客数 1.06 倍(実質)・客単価 1.36 倍(名目)・粗利率 26.6%・営業利益率 3.9%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 16.32 倍、時価総額 408 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新店の立ち上がりと粗利の改善と省力化が全部実現する必要があり、揃う確度は低い。
やや楽観 20% 新店が育ち、利益率が 3% 台に戻る 利益 20 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 2,835 円319 億円
新店が育ち、客数は 5% 増。客単価は物価並みに上がり、粗利率は 26.5% に改善する。賃上げは省力化で少し吸収する。営業利益率は 3% 台前半。旭川での出店が進み、配当は増える。優待は続く。
(名目の前提)客単価は名目、客数は実質で置いた。人件費は物価(1.34 倍)より速い年 3.5% で上がるものとし(10 年 1.41 倍)、本社費やその他の費用も物価で増やした。減価償却は物価で増やさず、今ある店舗は取得原価のまま、新店と改装だけ新しい値段で 25 年に按分した。償却は今の約 10 億円が 10 年後に約 12 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は現金から出る。現金の利息は 2% で純利益に入れた。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足した。
- 食品スーパー(北海道):数量 25.6(年間の来店客数(百万人、推定))× 価格 32(客単価(百円 / 人、推定))→ 売上 830 億円・営業利益 27 億円。客数 1.05 倍(実質)・客単価 1.35 倍(名目)・粗利率 26.5%・営業利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 15.38 倍、時価総額 319 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新店の通年寄与と回復の延長線にある現実的な上振れ。
中立 38% 中立:数量は微増、利益率は 2% 前後で横ばい 利益 12 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,723 円194 億円
新店が育ち、既存店の客数は人口減で目減りするが、通算で 2% 増。客単価は物価並みに上がる。賃上げが人件費を 1.41 倍にするが、粗利率 26.3% を保って営業利益率は 2% 前後に落ち着く。旭川などで 2〜3 店を足す。現金は積み上がり、余りは戻りにくい。ROE は 5% 台。
(名目の前提)客単価は名目、客数は実質で置いた。人件費は物価(1.34 倍)より速い年 3.5% で上がるものとし(10 年 1.41 倍)、本社費やその他の費用も物価で増やした。減価償却は物価で増やさず、今ある店舗は取得原価のまま、新店と改装だけ新しい値段で 25 年に按分した。償却は今の約 10 億円が 10 年後に約 11 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は現金から出る。現金の利息は 2% で純利益に入れた。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足した。
- 食品スーパー(北海道):数量 24.9(年間の来店客数(百万人、推定))× 価格 32(客単価(百円 / 人、推定))→ 売上 801 億円・営業利益 17 億円。客数 1.02 倍(実質)・客単価 1.34 倍(名目)・粗利率 26.3%・営業利益率 2.1%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 14.29 倍、時価総額 194 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数微増と物価並みの客単価、賃上げの吸収で利益率は横ばいという中心の筋書き。
やや悲観 25% 安売り勢との競争で利益率が 1% を割る 利益 3 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 352 円40 億円
道外の安売り勢との競争で、客数は 4% 減。値上げは通りにくく、売上総利益率は 25.9% に下がる。人件費の増加に省力化が追いつかず、営業利益率は 1% を割る。減損が追加で出て、配当は据え置きにとどまる。優待は縮小される。余った現金は目減りする。
(名目の前提)客単価は名目、客数は実質で置いた。人件費は物価(1.34 倍)より速い年 3.5% で上がるものとし(10 年 1.41 倍)、本社費やその他の費用も物価で増やした。減価償却は物価で増やさず、今ある店舗は取得原価のまま、新店と改装だけ新しい値段で 25 年に按分した。償却は今の約 10 億円が 10 年後に約 11 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は現金から出る。現金の利息は 2% で純利益に入れた。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足した。
- 食品スーパー(北海道):数量 23.4(年間の来店客数(百万人、推定))× 価格 31(客単価(百円 / 人、推定))→ 売上 737 億円・営業利益 3 億円。客数 0.96 倍(実質)・客単価 1.31 倍(名目)・粗利率 25.9%・営業利益率 0.4%
倍率:ROE 1.3%。k 7% 以下。ためた利益の価値は 1 を下回るので PER の上限は 1÷k = 13.8 倍。粗利の厚さと賃上げの吸収を見て、上限の 6.5 割の 9.0 倍に置いた。時価総額は(純利益 − 余った現金 26 億円 × 1.4%)× PER + 余った現金 × 戻り方 0.5。純現金が厚く、EV ÷ 営業利益は参考にとどめる。
確率:道外の安売り勢との競争が続き、賃上げの吸収が遅れる想定。北海道では既に起きている。
悲観 11% 競争と固定費の重さで赤字に沈む 利益 −8 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 214 円24 億円
競争の激化と人口減で客数は 1 割減。売上総利益率は 25.2% まで下がる。固定費の重い借地の店が足を引っ張り、営業赤字が続く。減損が積み上がり、自己資本が減る。配当は削られ、優待は廃止される。余った現金は半分に減る。値打ちは、現金の一部と保有する土地が支える床までになる。
(名目の前提)客単価は名目、客数は実質で置いた。人件費は物価(1.34 倍)より速い年 3.5% で上がるものとし(10 年 1.41 倍)、本社費やその他の費用も物価で増やした。減価償却は物価で増やさず、今ある店舗は取得原価のまま、新店と改装だけ新しい値段で 25 年に按分した。償却は今の約 10 億円が 10 年後に約 10 億円(物価で一律に増やすと約 13 億円)。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、足りない分は現金から出る。現金の利息は 2% で純利益に入れた。優待の費用は利益から引かれ済みで、還元には受け取り分を足した。
- 食品スーパー(北海道):数量 22.0(年間の来店客数(百万人、推定))× 価格 30(客単価(百円 / 人、推定))→ 売上 670 億円・営業利益 −12 億円。客数 0.90 倍(実質)・客単価 1.27 倍(名目)・粗利率 25.2%・営業利益率 -1.8%
倍率:営業赤字で稼ぐ力はない。余った現金 17.5 億円の戻り方 0.5 を掛けた 約 9 億円と、保有する土地と有価証券の税後 約 15 億円の合計 24 億円(floor_assets_oku)を時価総額に置いた。今の自己資本 173 億円に対する PBR は 0.14 倍。清算されない限り現金の使い方は少数株主に決められないため、純現金を下回ってよい。
確率:競争の激化と人口減が重なる構造的な負け。小さな地域チェーンで固定費が重く、起きたら戻りにくいため 11% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
食品スーパー(北海道)
帯広 10・旭川 7・札幌 9 店の食品スーパー。総菜工場を持つ。
| 数量年間の来店客数(百万人、推定) | 価格客単価(百円 / 人、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 24.4 | 24 | 586 | 13 |
| 10 年後 中立 | 24.9 | 32 | 801 | 17 |
取り方:売上 586 億円を、客単価 24 百円(客単価は 1 人 2 千円台前半、推定、開示なし)で割った来店客数。2025 年 9 月期は千歳店とアリオ札幌店の新設で売上が 13% 増えたが、出店費用と人件費で営業利益は 3 割減った。
リスクと懸念
道内の競争と道外資本の進出
道内にはイオン北海道、アークス、コープさっぽろの大手がいる。そこにロピアなど道外の安売り勢が札幌で出店を重ねている。価格で対抗すれば粗利率が削られ、対抗しなければ客が逃げる。小さな会社には仕入れの力で劣る弱みがある。
賃上げと人手不足
従業員は準社員・パートが多く、最低賃金の上昇が利益に直結する。2025 年 9 月期は出店費用と人件費の増加で、売上が 13% 増えたのに営業利益が 3 割減った。省力化が追いつかなければ、利益率はさらに下がる。
減損と新店の収益性
2026 年 9 月期は減損損失 13 億円を見込む。新店と既存店のうち、収益が見込みを下回る店舗の資産を見直した結果とみられる。新店の立ち上がりが遅れれば、減損は積み上がりうる。
借地の固定費
店の土地のうち 8.4 万㎡が賃借で、賃料は売上が落ちても減らない。リース債務は 12 億円。景気や競争で売上が落ちる局面では、固定費の重さが利益を直撃する。
人口減少
北海道の人口は全国より速く減る。帯広・旭川の商圏は縮み、客数は押し下げられる。札幌は人口が保たれるが、競争が厳しい。数量の前提は人口減を織り込んだ。
親会社の動きと少数株主
大株主のイトーヨーカ堂(約 3 割)は、ヨーク・ホールディングスとベインの投資ファンドの傘下にある。持株の売却や TOB の可能性はあるが、時期も条件も不明で、少数株主に有利とは限らない。
優待と配当の縮小
優待(ギフトカード・商品券)と増配は、利益が落ちれば縮められる。優待の費用は開示がなく年 1.2 億円と推定した。優待を目当てにした個人株主が多く、廃止すれば株主構成が変わる可能性がある。
今後の分かれ目
- 千歳店・アリオ札幌店の営業利益が黒字化し、通年で寄与したら
- 新店の収益性の前提を上方修正し、楽観・やや楽観に確率を寄せる。
- 営業利益率が 3% を超える期が出たら
- 粗利の改善と省力化の吸収を評価し、中立の利益率を引き上げる。
- ロピアなど安売り勢が帯広・旭川に出店したら
- 粗利率と客数の前提を下げ、やや悲観に寄せる。
- 減損が 2 期続けて出たら
- 新店の収益力の前提を下げ、悲観側に寄せる。
- イトーヨーカ堂が持株を売却する、または TOB が発表されたら
- 少数株主の取り分を、提示された条件と企業価値で見直す。
- 現金が積み上がり、自社株買いや大幅増配が決まったら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に引き上げ、価値を足し直す。
見ておくもの
- 既存店売上と客数、客単価(月次)
- 売上総利益率と販管費率(人件費・光熱費)
- 千歳・アリオ札幌など新店の収益
- 減損損失と追加の特別損失
- 大株主(イトーヨーカ堂)の動き
- 配当・優待と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 184 億円や PBR 1.1 倍には寄せていない。客数と客単価から利益を積み、倍率は式で置いた。中立は ROE 5% 台が k 7% に届かないので PER の上限 1÷k = 13.8 倍の 8.0 割、やや楽観 9.0 割、楽観は ROE が k を超えるので上限の 9.1 割とした。現金 70 億円のうち、日々の仕入れの支払いと賃借の約束に要る分を除いた 35 億円だけを余りとし、戻り方 0.5(配当性向 4 割台で現金が積み上がり、大株主の意向が読めない)を掛けた。優待は年 1.2 億円と推定し、10 年の還元に足した。リースは、賃借地が 8.4 万㎡あり、賃料は固定の約束なので、悲観では固定費として残した。新リース会計基準は 2028 年 9 月期から適用されるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。減価償却は物価で増やしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→16.32 倍・やや楽観 PER 12.5→15.38 倍・中立 PER 11→14.29 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality −0.25%(循環 −0.5・値決め力 +0.25・借金 0・寿命 0)= 7.25%。食料品は景気に強いが、道内の競争で値決め力は弱い。現金が厚くても借金の項は下げない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.00%。