結論
力の源ホールディングスは、豚骨ラーメンの「一風堂」を国内外で展開する会社だ。国内に約 180 店、海外に約 145 店を持つ。海外は売上の約 4 割を占める。
筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額を 5 割ほど下回る「割高」だ。一番の理由は、今の PER 約 24 倍が、店数も客単価も大きく伸び続ける姿を前提にしていることにある。会社の実力は、そこまで届かないと見る。
営業利益率は 2024 年 3 月期に 10% を超えたが、足元は 6% 台に下がった。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が半分になった。原材料と人件費が上がり、値上げが追いついていない。値上げは 2023 年 10 月から止まっている。
中立の 10 年後は、営業利益 42 億円、純利益 29 億円、PER 11 倍で、時価総額は約 320 億円になる。今の約 7 割だ。資本コストは 7.5%。
強気の筋書きでも、時価総額は約 850 億円と今の 2 倍にとどまる。慎重な筋書きが起きた時の下振れの方が大きい。海外と国内の店数は伸びるが、利益は店数ほど伸びないと見る。
事業そのものは悪くない。一風堂という名前は、日本のラーメンで世界に通じる数少ないブランドだ。問題は、その価値が今の値段にすでに入っていることである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、力の源ホールディングスは「ブランドの価値は高いが、財布は薄い」会社だ。一風堂は、世界で通用する数少ない日本のラーメンブランドだと評価する。新型コロナの谷から立て直した経営の体力も、この数年は改善した。
一方で、店を借りて営む商売は、家賃と人件費が固定の約束だ。客が減ると利益はすぐに削られる。足元の営業利益率は 6% 台で、安全域は薄い。値上げが止まり、原価と人件費の上昇を吸収できていない点が気になる。
資本の使い方は、出店と少額の還元が中心だ。海外の新店は、閉店と並行して進む。投じた資金の稼ぎは、国内の旗艦店ほど高くない。
10 年後も一風堂のブランドは残るだろう。ただし、残る利益は店数ほどには増えない。今の PER 約 24 倍は、強気の筋書きを織り込んだ値段だ。中立で測ると、払う値段に安全域はない。確信は中くらいで、判断の重みは軽くしている。
経営の資本配分は、改善の途上と見る。無配だった時期を経て、配当性向約 4 割まで還元を引き上げた点は評価できる。一方で、2025 年の出店目標が届かなかった記憶は消えていない。出店を急ぐより、既存店の利益率を戻す方に資本を使う姿勢が見えれば、評価は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は「一風堂」の店だ。九州・博多の豚骨ラーメンから始まり、今は国内外で約 320 店になった。ほかにフードコート向けの「RAMEN EXPRESS」、名島亭、因幡うどんなどを持つ。
国内は 178 店で、直営が 151 店、ライセンス(暖簾分けなど)が 27 店だ。売上は約 186 億円。訪日客が売上を支え、第 1 四半期の客のうち 18.8% が訪日客だった。
海外は 145 店で、直営が 75 店、ライセンスが 70 店だ。米国、台湾、シンガポール、オーストラリア、英国、中国、フィリピンなどに店がある。売上は約 148 億円。米国では現地企業との合弁を使う。
商品販売は、店や小売、通販、輸出向けにラーメンやうどんの食材を売る事業で、売上は約 29 億円だが利益率が高い。第 1 四半期は輸出などが伸び、売上が 2 割以上増えた。
創業者の河原成美氏が 1985 年に福岡で始めた店が原点で、2008 年にニューヨークへ出て海外の一歩を踏んだ。2017 年に東証へ上場している。
2026 年 3 月期の売上は 363 億円、営業利益は 23 億円で、営業利益率は 6.4%。純現金は 50 億円ある。今期は年 16 店を出す計画だが、不採算店を閉めるため純増は 3 店だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、世界で知られた「一風堂」というブランドだ。博多の豚骨ラーメンを、洗練された店と接客で売る。創業から約 40 年の積み重ねで、訪日客の目当てにもなる。海外の十数の国と地域に店を出した実績も、他のラーメン店にはほとんどない。
ただし、値段を自分で決める力は強くない。国内にはハイデイ日高、丸千代山岡家、王将などの競合が多く、ラーメン店は全国に約 3.5 万店ある。2023 年 10 月から値上げをしておらず、原材料と人件費の上昇を転嫁できていない。
2025 年に国内 300 店・海外 300 店とした目標は、実績が国内 178 店・海外 145 店で届かなかった。海外は、新店と閉店が同時に起きている。
資本効率は悪くない。ROE は 15% で、自己資本比率は 62%。純現金も 50 億円ある。ただし、これは 2021 年 3 月期の大きな赤字から立て直した結果で、自己資本が一度ほぼ消えた経験がある。安定した水準とは言えない。
上位 10 株主が 65% を持つ。筆頭は海外の法人で 23%。個人筆頭の創業者は 18% を持つ。優良さは「ブランドは強いが、利益は不安定」と筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人件費の上昇を最も受けやすい業種だ。国内の市場は、コロナ前の水準に戻ったが、人口は減る。店を増やしても、客数は伸びにくい。一風堂のようなラーメン専業の会社が国内で稼ぐには、客単価を上げるしかない。
追い風は、訪日客の増加と円安だ。国内の客単価を押し上げ、第 1 四半期は訪日客が客の約 2 割になった。ただし、これは為替と景気に左右される。10 年で見れば、訪日客の伸びは鈍ると置く。
海外は、日本食ブームで店が増えた。ただ、物価と人件費が先に上がり、消費マインドが弱い地域もある。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、海外の営業利益が約 8 割減った。
外食全体の市場は、日本フードサービス協会によると 2023 年に約 24 兆円まで戻った。富士経済は 2030 年に外食が約 27 兆円まで伸びると見る。ただし、この伸びの大半は物価の上昇分で、客数は人口とともに細る。ラーメンは参入しやすく、全国に約 3.5 万店あるため、一風堂が国内で店を増やすほど、既存店と食い合うことになる。
10 年の構造的な負け筋は 2 つある。ひとつは、人件費が値上げの速度を上回って上がり続けること。もうひとつは、訪日客が減り、海外の店が採算割れで閉まることだ。
外食全体の谷は深い。リーマン級の不況では、既存店売上が 2〜3 割減るのが外食の経験則だ。一風堂はラーメンの中では価格帯が高めなので、不況での下方シフトの恩恵は受けにくいと筆者は見る。
資本政策と M&A
資本政策は、成長に使いながら、還元を増やし始めた段階だ。2022 年 3 月期まで無配だったが、その後配当を出し、2027 年 3 月期は増配して配当性向約 4 割を見込む。自社株買いの実績はない。会社は、役員向けの株式給付信託を終了し、自己株式を消却する方針だ。
M&A は目立たない。成長の手段は、出店とライセンス、合弁だ。米国ではパンダ・レストラン・グループとの合弁を使う。
店舗の賃借は、固定の約束だ。家賃は売上の 1 割前後と置く。純現金は見かけほど余裕がない。
株主優待は、100 株から「ご賞味券」などを出す。年の費用は 0.3 億円ほどと推定し、少額なので還元の額には入れていない。大株主は、海外の法人 23%、創業者 18%、麻生 10% だ。kabufu の推定では 10 年以内の買収確率は 20%。創業者の保有が厚い分、買収は動きにくい。
中期経営計画の数値は、文字のページでは確認できていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
一風堂は、世界で通用する日本のラーメンブランドとして、他に代わりがいない。国内は訪日客が増え、客単価が上がり続けている。第 1 四半期の客の約 2 割が訪日客で、値上げをしなくても単価が押し上げられた。
値上げの余地は大きい。2023 年 10 月から止まっており、原材料と人件費の上昇を転嫁できる局面が必ず来る。国内の店舗の利益率は、10% 台に戻れる。
海外の成長は構造的だ。直営、合弁、ライセンスの 3 つの手法で、米国と東南アジアを中心に店を増やしている。ライセンス店は資本を使わずにロイヤリティが入るので、利益率が高い。海外の営業利益率は、立ち上がりのコストが終われば 8% 台に乗る。
商品販売も伸びる。輸出と通販が第 1 四半期に 22% 増え、利益は 67% 増えた。ブランドの価値を食材に広げる、利益率 20% の事業になる。
2025 年の出店目標には届かなかったが、足元の店舗網は国内外で 320 店あり、手元の現金も 50 億円ある。配当性向約 4 割を維持しながら出店を続けられる体力がある。
経営の立て直しも実績がある。2021 年 3 月期に大きな赤字を出したが、翌年に黒字へ戻し、2 年後には営業利益率が 8% を超えた。同じ速さで、今回の利益率の低下も戻せる。
慎重な見方
利益の質が低い。2024 年 3 月期の営業利益率 10% は、新型コロナ明けの反動需要と円安が重なった山だった。足元は 6% 台で、2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が半分に落ちた。会社は原材料と人件費の上昇と猛暑を理由に挙げたが、これらは来年もまた来る。
値上げが止まっている。2023 年 10 月から実施しておらず、客単価は訪日客の比率が支えている。訪日客は為替と景気に左右され、いつまでも続かない。
海外は店が増えても利益が出ない。2026 年 3 月期の中間期は、海外の売上が 7% 減り、利益が 38% 減った。第 1 四半期は利益が 8 割減。新店と閉店が同時に起き、現地のインフレと消費の弱さが重なる。
2025 年に国内 300 店・海外 300 店とした目標は、半分しか届かなかった。計画の信頼性が低い。
財務は借金がなく安全に見えるが、店の家賃は固定の約束だ。売上が落ちれば、家賃が利益を食う。今の PER 約 24 倍は、店数も客単価も伸び続ける前提で、下振れの余地が大きい。
さらに、株主構成が偏っている。上位 10 株主が 65% を握り、市場で自由に売買される株は 3 分の 1 ほどだ。大株主が売れば、需給が崩れる。
どちらに重みを置いたか
ブランドの強さと訪日客・海外の追い風では強気の見方に分がある。ただし、値上げが止まり、利益率が 6% 台に下がり、過去の出店目標が半分しか届かなかった事実は、慎重な見方を裏づける。そこで中立の営業利益率を、過去の山 10.4% より大きく低い 7.2% に置き、倍率も上限の 8 割にとどめた。確率は、慎重な筋書き(やや悲観と悲観)に厚めに置いた。結果は、強気の筋書きでも今の時価総額の約 2 倍にとどまり、本質価値は今の約 5 割になる。割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,584 円476 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 312 円94 億円)。 今の値に割り戻すと 986 円297 億円、今との差 −31.9%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,998 円1,202 億円 | 539 円162 億円 | +213.1% | +12.1% | 272 円82 億円 |
| やや楽観 | 19% | 2,770 円833 億円 | 409 円123 億円 | +119.4% | +8.2% | 604 円182 億円 |
| 中立 | 37% | 1,857 円559 億円 | 313 円94 億円 | +49.8% | +4.1% | 803 円241 億円 |
| やや悲観 | 28% | 422 円127 億円 | 249 円75 億円 | −53.6% | −7.4% | 188 円57 億円 |
| 悲観 | 10% | 121 円36 億円 | 170 円51 億円 | −80.0% | −14.9% | 29 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,584 円476 億円 | 312 円94 億円 | +30.9% | +2.7% | 1,896 円570 億円 |
今の株価時価総額 1,449 円436 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 訪日客と値上げが効き、海外のライセンスが広がる 10 年 利益 58 億円 · PER 20.5 倍 · 株価時価総額 3,998 円1,202 億円
値上げが 2027 年に始まり、客数を落とさず通る。訪日客も高い水準を保ち、国内の客単価は物価を上回って上がる。国内は 215 店に増え、営業利益率は 10.5% と過去の山に近づく。
海外はライセンスで広がる。直営の閉店が止まり、米国と東南アジアで店が 260 店になる。ライセンス店のロイヤリティが積み上がり、利益率は 8.5% に乗る。
商品販売は、通販と輸出で 10 年に 4 倍近くになる。全体の営業利益率は 10.2% と過去の山に並び、配当性向 4 割台で還元も厚くなる。会社の描く姿にほぼ近い、うまくいった 10 年である。
- 国内店舗運営:数量 215(国内店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 15,588(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 335 億円・営業利益 35 億円。国内 215 店 × 1.56 億円。訪日客と値上げで単価が上がり利益率 10.5%
- 海外店舗運営:数量 260(海外店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 14,389(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 374 億円・営業利益 32 億円。海外 260 店 × 1.44 億円。ライセンス店が増え利益率 8.5%
- 商品販売:数量 480(グループ全店舗数(店、需要の目安))× 価格 2,302(1 店あたり商品販売額(万円))→ 売上 111 億円・営業利益 22 億円。食材・通販・輸出。全店 480 店分の需要 × 2,302 万円、利益率 20%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.5 倍。全体の PER 20.5 倍、時価総額 1,181 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げ、訪日客、海外ライセンスの拡大が同時に効く必要があり、重なる確率は低い。ブランドの世界的な強さがあるので 5% 以上は置く。
やや楽観 19% 値上げが通り、利益率が 9% 近くに戻る 10 年 利益 41 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 2,770 円833 億円
値上げが 2028 年ごろから通り始め、人件費の上昇を吸収する。国内は 202 店になり、利益率は 9.5% まで戻る。訪日客は高水準だが、増加は鈍る。
海外は閉店が止まり、新店と既存店の売上が回復する。店数は 220 店で、利益率は 7% になる。商品販売は輸出が伸び、利益率 19% を保つ。
全体の営業利益率は 8.7%。配当性向は 4 割強で、自己資本の膨らみは抑えられ、ROE は 14% 台で保たれる。本社費は物価並みに増えるが、店の稼働率が上がり、固定費の重さが軽くなる。ブランドの強さが利益に表れる、堅実な 10 年である。
- 国内店舗運営:数量 202(国内店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 14,835(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 300 億円・営業利益 29 億円。国内 202 店 × 1.48 億円
- 海外店舗運営:数量 220(海外店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 13,773(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 303 億円・営業利益 21 億円。海外 220 店 × 1.38 億円
- 商品販売:数量 430(グループ全店舗数(店、需要の目安))× 価格 1,860(1 店あたり商品販売額(万円))→ 売上 80 億円・営業利益 15 億円。全店 430 店分 × 1,860 万円
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.5 倍、時価総額 803 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが通り始め、海外の閉店が止まる現実的な上振れ。
中立 37% 店数は伸びるが、利益率は 7% 台で足踏みする 10 年 利益 29 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 1,857 円559 億円
国内は 173 店から 190 店に、海外は 144 店から 190 店に増える。国内の客単価は訪日客に支えられるが、値上げは遅れ、1 店あたり売上は 10 年で 1.3 倍にとどまる。物価の 1.34 倍に届かない。
営業利益率は 7.2% で、2027 年 3 月期の見通しより少し高い程度だ。国内は 8.5%、海外は 5.5%。本社費は物価並みに増える。
商品販売は通販と輸出で単価が 1.8 倍になり、利益率 17% を保つ。配当性向は 4 割で、自己資本は 263 億円に増える。ROE は 11% に下がる。ブランドは残るが、利益は店数ほど伸びない標準的な 10 年である。
- 国内店舗運営:数量 190(国内店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 13,975(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 266 億円・営業利益 23 億円。国内 190 店 × 1.40 億円。店数は 10% 増、単価は物価をやや下回る 1.3 倍
- 海外店舗運営:数量 190(海外店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 13,361(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 254 億円・営業利益 14 億円。海外 190 店 × 1.34 億円。閉店と新店が混在し、利益率は 5.5%
- 商品販売:数量 380(グループ全店舗数(店、需要の目安))× 価格 1,594(1 店あたり商品販売額(万円))→ 売上 61 億円・営業利益 10 億円。全店 380 店分 × 1,594 万円。通販と輸出で単価 1.8 倍
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍。全体の PER 18.14 倍、時価総額 524 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数は伸びるが、値上げが物価に追いつかず利益率が足踏みする標準的な姿。最も重みを置く。
やや悲観 28% 値上げが通らず、海外の閉店が続く 10 年 利益 13 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 422 円127 億円
値上げが通らず、原材料と人件費の上昇を吸収できない。国内は 172 店と縮み、利益率は 5% に下がる。訪日客の反動で、客単価が頭打ちになる。
海外は閉店が続き、160 店。現地のインフレと消費の弱さで、利益率は 2.5%。ライセンス店の質が落ち、ブランドの価値が傷つく。
全体の営業利益率は 3.7%。家賃は固定で、売上が落ちても減らない。店を閉めるにも、敷金の一部と原状回復の費用が現金を食う。配当性向を 5 割に引き上げても、自己資本は 195 億円にとどまり、ROE は 6.5% まで下がる。堀の薄さが表に出た 10 年である。
- 国内店舗運営:数量 172(国内店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 13,115(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 226 億円・営業利益 11 億円。国内 172 店 × 1.31 億円。値上げが通らず利益率 5%
- 海外店舗運営:数量 160(海外店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 12,128(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 194 億円・営業利益 5 億円。海外 160 店 × 1.21 億円。閉店が続き利益率 2.5%
- 商品販売:数量 340(グループ全店舗数(店、需要の目安))× 価格 1,240(1 店あたり商品販売額(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 6 億円。全店 340 店分 × 1,240 万円
倍率:ROE 6.5% は k 7.5% 以下なので、正当化 PER は 1÷k = 12.1 倍が上限。値上げが通らず海外の閉店が続く筋書きなので、やや悲観は上限の約 7 割(8.48 倍)に置いた。
確率:足元の傾向(原材料・人件費高で値上げが追いつかない、海外の閉店)が続く姿。2023 年 10 月から値上げが止まっており、厚く置く。
悲観 10% 訪日客の反動と人件費高で、国内外とも縮む 10 年 利益 3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 121 円36 億円
訪日客が減り、国内の客単価が下がる。人件費の上昇は止まらず、値上げは客を遠ざける。国内の店は 140 店まで縮み、利益率は 3% になる。
海外は赤字店を整理し、130 店まで縮小する。合弁の解消や撤退で、のれんと店舗の減損が出る。利益はゼロに近づく。
全体の営業利益は 3 億円。本社費は物価で増え続け、利益を食う。家賃が重く、配当を維持できなくなる。商品販売の通販と輸出は伸びるが、全体の穴を埋めるには小さい。純現金は店舗の閉鎖費用や家賃の約束で目減りする。店を増やしてきた路線が裏目に出て、整理に追われる。優良なブランドだった面影を失う 10 年である。
- 国内店舗運営:数量 140(国内店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 11,825(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 166 億円・営業利益 5 億円。国内 140 店 × 1.18 億円。訪日客の反動で閉店が続く
- 海外店舗運営:数量 130(海外店舗数(店、直営+ライセンス))× 価格 10,278(1 店あたり年間売上(万円))→ 売上 134 億円・営業利益 0 億円。海外 130 店 × 1.03 億円。撤退・縮小で利益ゼロ
- 商品販売:数量 280(グループ全店舗数(店、需要の目安))× 価格 974(1 店あたり商品販売額(万円))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。全店 280 店分 × 974 万円
倍率:ROE 1.9% は k 7.5% 以下で、稼ぐ力は純利益 2.7 億円と小さい。床は今の自己資本 121 億円に PBR 0.30 倍を掛けた約 36 億円で、純現金 50 億円に戻り方 0.75 を掛けた約 38 億円を下回る。家賃の固定費と閉店費用が現金を食い、少数株主は現金の使い道を決められないため、満額は見ない。やや悲観の PBR 0.55 倍より低い。
確率:訪日客の反動と人件費高、海外の撤退が重なる構造的な負け。確度は低いが、過去の出店目標の未達と固定費の重さを考えると無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内店舗運営
一風堂、RAMEN EXPRESS、名島亭、因幡うどんなど。直営とライセンス(暖簾分け)の店。
| 数量国内店舗数(店、直営+ライセンス) | 価格1 店あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 173 | 10,750 | 186 | 15 |
| 10 年後 中立 | 190 | 13,975 | 266 | 23 |
取り方:店舗数は 2026 年 3 月末の国内 173 店(2027 年 3 月期第 1 四半期末が 178 店で 5 店の純増)。売上 186 億円は、第 1 四半期と中間の開示から当社が通期に直した推定。営業利益 14.5 億円も推定で、全社 23.3 億円から海外・商品販売・本社費を引いた残り。
海外店舗運営
米国、台湾、シンガポール、オーストラリア、英国、中国、フィリピンなどの直営・合弁・ライセンス店。
| 数量海外店舗数(店、直営+ライセンス) | 価格1 店あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 144 | 10,278 | 148 | 7 |
| 10 年後 中立 | 190 | 13,361 | 254 | 14 |
取り方:店舗数は 2026 年 3 月末の海外 144 店(直営 75・ライセンス 70 に対し 145 店の期末表示と 1 店の差)。売上 148 億円と利益 6.5 億円は、中間と第 1 四半期の開示から当社が通期に直した推定。直営店の売上が中心で、ライセンス店は少額のロイヤリティ。
商品販売
店・小売・通販・輸出向けのラーメンなどの食材販売。
| 数量グループ全店舗数(店、需要の目安) | 価格1 店あたり商品販売額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 323 | 886 | 29 | 6 |
| 10 年後 中立 | 380 | 1,594 | 61 | 10 |
取り方:商品販売は店舗数に直接ひもづかないため、グループ全店舗 323 店を需要の目安にして、売上 28.6 億円(推定)を割った。通販・輸出の伸びは価格の欄に入れた。営業利益 5.5 億円は推定(利益率 19%)。全社の調整額(本社費)は −3.25 億円。
リスクと懸念
原材料・人件費の上昇と値上げの停止
2023 年 10 月から値上げをしておらず、2027 年 3 月期の第 1 四半期は原材料と人件費の上昇で営業利益が半減した。値上げが客数を減らせば、利益率はさらに下がる。
訪日客と円安への依存
国内の客単価を支える訪日客は第 1 四半期で客の約 19%。為替の反転や景気の悪化で訪日客が減れば、国内の売上と利益が大きく落ちる。
海外の収益性
海外は新店と閉店が同時に起き、2026 年 3 月期の中間期は売上が 7% 減、利益が 38% 減った。第 1 四半期の利益は約 8 割減。現地の物価・人件費の上昇と消費の弱さが続けば、赤字店の整理が必要になる。
店舗の家賃の固定費
店を借りて営むため、家賃は売上が落ちても減らない。新リース会計基準でも、家賃の約束の重さは変わらない。不況では固定費が利益を一気に削る。
出店目標の未達と計画の信頼性
2025 年に国内 300 店・海外 300 店とした目標は、実績が国内 178 店・海外 145 店にとどまった。今後の出店計画が達成できるかは、過去の実績からは強く言えない。
ブランド・経営の集中
一風堂という単一のブランドに利益が集中する。創業者の持ち分は 18% で、筆頭株主は海外の法人。承継や資本の動きが経営の方向を変える可能性がある。
景気後退時の外食の谷
外食は裁量的な消費で、リーマン級の不況では既存店売上が 2〜3 割減る。一風堂は価格帯がやや高く、下方シフトの恩恵を受けにくい。
今後の分かれ目
- 値上げが客数を減らさずに通り、営業利益率が 8% 台に戻れば
- 純利益の水準が上がり、中立から強気の筋書きに近づく。
- 訪日客が減り、為替が円高に振れれば
- 国内の客単価と来店数が下がり、やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
- 海外の既存店売上が回復し、閉店が止まれば
- 海外が利益の柱になり、本質価値が上振れる。
- 人件費の上昇が値上げを上回り続ければ
- 利益率が 5% を割り、10 年の価値はやや悲観の筋書きに近づく。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始めれば
- 自己資本の膨らみが止まり、ROE の低下が抑えられる。評価を改める。
- 創業者や大株主が持ち分を動かす、または TOB が出れば
- 買付価格しだいで少数株主が上振れる。ただし、価格が本質価値を上回るかは別に見る。
見ておくもの
- 国内・海外の既存店売上と客数・客単価(月次、四半期)
- 営業利益率と、原材料費・人件費の比率
- 値上げの実施と、その後の客数の動き
- 訪日客の比率と為替
- 海外の出店数・閉店数と、海外セグメント利益
- 配当性向と自社株買い、株主構成の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER を見て筋書きを作っていない。先に国内・海外・商品販売を「店舗数 × 1 店あたり売上」で 10 年分積み、そこから ROE と資本コスト 7.5% で倍率を決めた。中立の営業利益率は 7.2% で、過去の山 10.4% を大きく下回る。理由は、値上げが止まり原価と人件費が上がる足元の傾向と、訪日客の追い風が続かない可能性だ。
中立の倍率は、正当化 PER の 8 割に置いた。結果が割高に出たのは、今の PER が約 24 倍と高いからではなく、店数と単価の伸びを足しても、純利益が 10 年で 6 割増にとどまるためだ。
新リース会計基準(2028 年 3 月期から)は、今と同じ「家賃を営業費用に入れた形」に揃えて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.72→20.5 倍・やや楽観 PER 12.88→19.5 倍・中立 PER 11→18.14 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。