結論
Joshin(旧・上新電機)は、関西を地盤とする家電量販店だ。売上は 4,400 億円弱、直営店は 217 店ある。ただ、稼ぎは薄い。2026 年 3 月期の営業利益は 54 億円で、利益率は 1.2% にとどまる。
筆者の結論は「割高」だ。いちばんの理由は、稼ぐ力に対して今の値段が高いことにある。純利益は 33 億円で、時価総額 1,090 億円の 3% ほどしかない。自己資本は 1,050 億円あるのに、ROE は 3% 台だ。
新しい中期経営計画は、営業利益 100 億円以上と ROE 7% を掲げる。前の計画は営業利益 110 億円を狙い、実績は半分にも届かなかった。不採算店の撤収、自前商品(PB)、リフォームという処方は筋が通る。だが、成果が出るまでには時間がかかる。
財務は堅い。純有利子負債は 334 億円で、営業利益は利払いの 14 倍ある。行き詰まる心配は小さい。ただ、堅さと割安は別の話だ。
中立の筋書きでは、10 年後の時価総額は今の 5 割ほどにとどまる。計画どおりに進む強気の筋書きでも、今の値段に届く程度だ。今の値段は、回復をかなり先取りしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、Joshin は「安全だが、安くない会社」だ。
良い事業の条件は、少ない資本で多く稼ぐことだ。Joshin は 1,050 億円の自己資本で、33 億円しか稼いでいない。稼ぐ力が資本コストを下回る限り、資産が厚いことは強みにならない。
見るべきは、ならした稼ぐ力だ。筆者は営業利益で 70〜100 億円、純利益で 40〜60 億円と考える。今の 33 億円は平常より少し低い。それでも、時価総額 1,090 億円に対しては小さい。
経営の資本配分には注文がある。前の中計は営業利益 110 億円を狙って、半分に届かなかった。新計画の 100 億円も、同じ道をたどるかもしれない。
評価できる点もある。借金は穏やかで、撤収や政策保有株の縮減のように、資産を軽くする動きは筋が通る。DOE という下限を置いた配当も、株主のほうを向いている。
オーナーとして持ち続けたいかを問えば、答えは「条件つき」だ。会社は消えにくく、配当も続く。だが、資本を増やす力が乏しい。時間がたって価値が増える会社ではない。
安全域は、今の値段にはない。PBR は 1 倍を超え、帳簿の価値より高い。稼ぎが資本コストに届かない会社に、帳簿より高い値段は払いにくい。営業利益 100 億円が実際に出るのを確かめてから考えたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、店舗とネット通販だ。冷蔵庫・エアコン・テレビなどの家電を売る。店頭の売上は 3,549 億円、ネット販売は 790 億円で、ネットは売上の 18% を占める。
品ぞろえは家電だけではない。携帯電話、パソコン、ゲームやホビー、キッズ用品が厚い。家電の売上は 2,000 億円を下回る水準が 3 年続き、過去最高の 7 割ほどにとどまる。その穴を、携帯やエンタメ、ネットで埋めてきた形だ。
店は関西に集中する。店舗数・売上とも、リアル店舗事業の 6 割以上を関西が占める。大阪・日本橋の「スーパーキッズランド」のように、趣味の売り場で客を呼ぶ店もある。阪神タイガースのスポンサーで、優勝セールが商売になる地元色も強みだ。
店の運営は、狭い地域に店を集めるドミナントが基本だ。配送や設置の拠点を密にでき、客との距離も近い。反面、関西で負ければ全社が傾く作りでもある。
ネットは自社サイトに加え、楽天やヤフーの店でも売る。楽天のショップ・オブ・ザ・イヤーでは、総合グランプリを 4 度とった。会社は自社サイトの比率を 44% から 2029 年 3 月期に 50% へ上げる考えだ。自社サイトなら出店料を払わず、客の情報も手元に残る。
新しい柱がリフォームだ。2026 年 2 月に「DOのリフォーム」を完全子会社にし、社名を「ジョーシンリフォーム近畿」へ改めた。まず関西で、注文型のリフォームを広げる。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは堀、つまり他社がまねできない強みだ。Joshin の堀は浅い。関西での知名度と、阪神タイガースに代表される地元とのつながりは本物だ。だが、冷蔵庫もエアコンも、ヨドバシやビックカメラ、アマゾンで買える。値段を自分で決められる事業ではない。
利益率がそれを物語る。営業利益率は過去 10 年で 0.9〜3.7% に収まり、最高の 2021 年 3 月期でも 3.7% だった。直近は 1% 前後まで下がっている。人件費は 1 年で 18 億円増えた。粗利の改善がそれに追いつくかが焦点だ。
資本の使い方にも課題がある。自己資本は 1,050 億円あるが、ROE は 3% 台だ。過去 10 年の中央値でも 6% 台で、資本コストには届かない。前の中計は 2026 年 3 月期に営業利益 110 億円を掲げたが、実績は 54 億円だった。計画を外す経営が続いている。
地元の客をポイントで囲っている点は、見落とせない。ただ、関東系の大手が同じ仕組みを持ち込み、差は縮まった。
評価できる点もある。過去 20 年に赤字の期はなく、財務は堅い。店舗網と、配送・設置の仕組みはすぐには作れない。ネット販売は過去最高を更新し、自社サイトの比率も上げている。不採算店の撤収にも踏み込んだ。「店を増やして売上を稼ぐ」から「利益の出る店だけを残す」へ変わるなら、方向は正しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の家電量販店市場は 10 兆円を超え、近年は横ばいから微増だ。2024 年は 10.3 兆円だった。人口は減るが、省エネ家電への買い替えと物価の上昇が売上を支える。10 年後の客数は、微減と筆者は見る。
競争は上位への集中が進む。ヤマダが 1.7 兆円で、ビックカメラ、エディオン、ケーズデンキ、ノジマが続く。Joshin は 4,400 億円弱で、上場の大手では下位にあたる。仕入れの規模では勝てない。
関西は、競争がもっとも激しい地域の一つだ。大阪・日本橋には、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ、エディオンが並ぶ。郊外のロードサイドにも、ヤマダなど関東勢が進出した。エディオンも関西に本社を置く。「地元資本」という看板は、昔ほど効かない。
外からの圧力は EC だ。家電 EC の比率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。ヨドバシは EC の比率が Joshin より高く、先を走る。
人件費の上昇も重い。店の運営費は物価より速く増えやすい。景気の影響も受ける。家電は買い替えを先延ばしにできる耐久財で、リーマン・ショックのときは業界の既存店売上が 2 割ほど落ちた。
携帯電話の販売は、通信各社の方針で収益が動く。Joshin は携帯が過去最高の売上だが、手数料の水準は自社で決められない。好調が長く続く保証はない。
再編の圧力もある。中堅の Joshin は、規模を求めて統合や提携の対象になりうる。
資本政策と M&A
還元は安定を重んじる。2026 年 3 月期の配当性向は 79% で、利益の大半を配当に回した。新しい中計は、配当性向 40% 以上に加え、自己資本に対する配当(DOE)2.5% 以上を目安にする。利益が落ちても、配当は減らさない構えだ。自社株買いは確認できなかった。
問題は、この約束が重いことだ。純利益が 35 億円ほどの会社が、DOE の下限だけで毎年 26 億円ほどを払う。手元に残る金は薄く、成長投資に回す余力は小さい。
資産の整理は進める。不採算店を最大 15 店ほど撤収し、政策保有株も減らしている。浮いた金は、安定配当と M&A に回す方針だ。リフォーム会社の買収は、その第一歩になる。
借金は穏やかで、純有利子負債は 334 億円だ。ただ、店舗の多くは借りており、家賃は売上が落ちても払う固定の約束になる。家賃の額は開示で確認できず、売上の 2% 前後(80〜100 億円)と筆者は推定する。2028 年 3 月期からは新しいリース会計が始まり、BS の借金は見かけ上ふくらむ。
大株主には信託銀行と社員持株会が並び、創業家や親会社のような支配株主はいない。経営の独立性は高いが、買われる側になったときに守ってくれる株主もいない。
TOB・買収の可能性は、kabufu の見立てでは 10 年以内に 17% ほどだ。外国人の持株比率は 13% 台まで上がった。
株主優待は年約1.5億円(会社の費用ベース。優待券の額面約3億円(単元株主約2.5万人×12,200円)の使われ率5割の推計)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+15億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026 年 3 月期の営業利益 54 億円は、まだ底に近い。売上は過去 2 番目の高さで、粗利は 56 億円増えた。それでも利益が小さいのは、人件費の増加と店舗の撤収損が重なったためだ。
手は打たれている。不採算店を 15 店ほど減らせば、家賃と人件費の固定費が軽くなる。売上が少し減っても、利益はむしろ増える。
自前商品(PB)は粗利が厚い。2027 年 3 月期に売上の 4.6%、2029 年 3 月期に 10% へ上げる計画だ。10% に届けば、利益率を 1 ポイント近く押し上げうる。
ネットも強い。ネット販売は過去最高を更新し、楽天の総合グランプリを 4 度とった。自社サイトの比率が 50% になれば、出店料が減る。店とネットの両方を使う会員は購入額が大きく、この循環が回れば他社より強い。
リフォームも新たな柱になる。関西で注文型のリフォームを広げ、家電の客に住まいの改装まで提案できる。
財務にも余裕がある。フリーキャッシュフローは 96 億円で、借金は減っている。この改善が続けば、中計の営業利益 100 億円と ROE 7% は射程に入る。10 年後に営業利益が 180 億円、利益率 3% に乗れば、純利益は 100 億円を超える。
慎重な見方
営業利益率が 3% を超えたのは、過去 10 年で巣ごもり需要の 2021 年 3 月期だけだ。平時の力は 2% 前後にすぎず、直近は 1% 前後まで下がった。この低さは、計画の弱さでなく事業の構造から来る。
前の中計は、2026 年 3 月期に営業利益 110 億円を掲げた。結果は 54 億円で、半分にも届かない。新計画の 100 億円は、実績の 2 倍近い。同じ外れ方を繰り返さないと言える根拠は乏しい。
今期の増益も中身は限られる。エアコンの猛暑特需があっただけだ。前の期の純利益 34 億円も、30 億円の売却益に支えられていた。
EC の圧力は強まる。家電の EC 比率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。関西は大手が集まる激戦区で、地元色だけでは客を守れない。ネットが伸びても、利益率は店頭より薄い恐れがある。
配当の約束も重い。純利益 35 億円の会社が、DOE の下限だけで毎年 26 億円ほどを払う。成長に回す金が残らない。
自己資本の 1,050 億円は、稼ぎを生まなければ価値が目減りする。ROE は 3% 台で、資本コストの半分にも届かない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強いと筆者は判断した。理由は 2 つある。計画を外し続けた経営の実績と、資本コストに届かない稼ぎが長く続いていることだ。
強気の見方は、計画が実現した姿として筋が通る。ただ、実績が乏しい。確率は中立に 4 割弱を置き、やや悲観と悲観を合わせて 4 割弱とした。強気側は 2 割台前半にとどめた。
財務は堅く、会社が行き詰まる確率は小さい。ただし、稼ぎが細ければ、堅さは値段を支えない。深い谷では、売れる資産から借金を引いた分が床になるが、その額は薄い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,497 円646 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,232 円319 億円)。 今の値に割り戻すと 1,995 円516 億円、今との差 −52.6%、 期待の年率 −1.2%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,135 円1,329 億円 | 1,681 円435 億円 | +62.1% | +4.9% | 409 円106 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,831 円992 億円 | 1,526 円395 億円 | +27.4% | +2.5% | 964 円250 億円 |
| 中立 | 38% | 3,058 円792 億円 | 1,372 円355 億円 | +5.4% | +0.5% | 1,683 円436 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,050 円272 億円 | 1,009 円261 億円 | −51.0% | −6.9% | 535 円139 億円 |
| 悲観 | 12% | 529 円137 億円 | 611 円158 億円 | −72.9% | −12.2% | 137 円35 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,497 円646 億円 | 1,232 円319 億円 | −11.3% | −1.2% | 3,729 円965 億円 |
今の株価時価総額 4,205 円1,088 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 計画が当たり、営業利益 180 億円の小売になる 利益 104 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,135 円1,329 億円
計画が当たり、10 年後の営業利益は 180 億円に届く。PB の比率が 1 割を超え、粗利が 1 ポイント近く上がる。不採算店の撤収で固定費が軽くなり、店舗の利益率は 2% 台へ戻る。
ネットは自社サイトが売上の過半を占め、出店料の負担が減る。店とネットを併用する会員が増え、1 会計の金額も上がる。リフォームは関西に根づき、家電の客に住まいの改装まで売る形ができる。
会社は配当性向を 5 割前後に高め、自社株買いも使う。ROE は 8% 近くまで戻るが、資本コストにはわずかに届かない。市場は、優良な小売としてではなく、ようやく普通の収益力に戻った会社として評価する。
関西の客は、ヨドバシ・ビックカメラ・ヤマダへ流れず、Joshin のポイントと設置サービスに残る。
- 店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど):数量 20.6(年間の会計件数(百万件))× 価格 22,080(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 4,540 億円・営業利益 118 億円。客数は撤収で減るが、PB と高付加価値品で単価が上がる。利益率は山の水準へ
- ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど):数量 13.2(年間の注文件数(百万件))× 価格 12,060(1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 1,588 億円・営業利益 64 億円。自社サイト比率が過半に。出店料が減り、利益率が上がる
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,300 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の営業利益 100 億円を大きく超え、利益率が 3% に乗る筋。前の計画を半分も満たせなかった実績があるので、1 割に届かせない。
やや楽観 18% 遅れて回復し、計画を数年遅れで超える 利益 77 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,831 円992 億円
計画は遅れるが、方向は正しかった。不採算店の撤収が済み、PB は売上の 7〜8% まで伸びる。店舗の利益率は 2% に近づき、ネットは 3% 台を保つ。
営業利益は 140 億円ほどで、中計の 100 億円は数年遅れて超える。リフォームは小さな黒字の柱になるが、会社全体を変えるほどではない。
ROE は 6% 台で、資本コストには届かない。稼ぎが資本コストを下回る限り、倍率は伸びない。配当は DOE の下限を守りつつ、少しずつ増える。
競合の出店や EC の値下げは続くが、PB と自社サイトで粗利を守れる。景気の悪化や猛暑の反動が時おり利益を削る。ただ、固定費が軽くなった分、谷は浅くなる。借金も減り、金利の上昇は吸収できる。
- 店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど):数量 19.9(年間の会計件数(百万件))× 価格 21,440(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 4,267 億円・営業利益 85 億円。客数は撤収で微減、単価は物価並み、利益率は回復途中
- ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど):数量 12.3(年間の注文件数(百万件))× 価格 12,060(1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 1,483 億円・営業利益 52 億円。自社サイトの比率が上がる
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 962 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益が 100 億円を超えるのは数年遅れる筋。PB と撤収が効く。実績の乏しさを踏まえ、2 割弱とした。
中立 38% 営業利益 110 億円にとどまり、効率は低いまま 利益 61 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,058 円792 億円
家電の客数は、人口減と店の撤収で 1 割ほど減る。価格は物価に沿って上がる。ネットは自社サイトを中心に伸び、注文件数は 3 割増える。
営業利益は 110 億円ほどだ。利益率は 2% に届かず、過去の平常の水準にとどまる。人件費の上昇を粗利の改善が吸収する、ぎりぎりの均衡になる。
ROE は 5% 台で、資本コストを下回る。配当は DOE の下限を守り、自己資本はゆるやかに増える。会社は中計の途中で、目標を何度か引き直す。
PB は売上の 5〜6% にとどまり、リフォームも小さな事業のままだ。借金は少しずつ減る。大きな買収に走ることもなく、堅さを保つ。ただし、稼ぎの細さは変わらない。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.5億円×10年)を足している。
- 店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど):数量 19.7(年間の会計件数(百万件))× 価格 21,440(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 4,217 億円・営業利益 67 億円。客数 12% 減、単価は物価並み、利益率は平常
- ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど):数量 11.4(年間の注文件数(百万件))× 価格 12,060(1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 1,377 億円・営業利益 43 億円。注文件数 3 割増、利益率は店頭より少し高い
倍率:事業の純利益 61 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 762 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率が 2% に届かず、数量は微減、価格は物価並み。実績に最も近い筋。
やや悲観 26% EC に押され、値上げが通らない 利益 29 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 1,050 円272 億円
EC への流出が続き、店の客数は 2 割近く減る。値上げが通りにくく、価格は物価ほど上がらない。店の維持には家賃と人件費がかさみ、店舗の利益率は 1% を割る。
ネットは伸びるが、価格競争と送料の負担で利益率が下がる。リフォームも思うように育たず、買収の効果は出ない。営業利益は 60 億円ほどで、今とほぼ同じ名目額にとどまる。
物価で費用は増える一方、利益は増えない。配当は DOE の下限を守るため、利益のほとんどを払うことになる。
携帯電話の手数料も下がり、これまで支えてきた売上の柱が弱くなる。関西では大手の出店が相次ぎ、Joshin は売上を守るためにポイントを厚くする。値引きとポイントで粗利が削られ、利益の回復は先送りになる。
- 店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど):数量 18.0(年間の会計件数(百万件))× 価格 21,000(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 3,780 億円・営業利益 30 億円。客数は 2 割近く減り、値上げが通らず、利益率は薄い
- ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど):数量 10.3(年間の注文件数(百万件))× 価格 11,700(1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 1,205 億円・営業利益 27 億円。価格競争と送料で利益率が下がる
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形)ROE 2.6%(純利益 29 億円 ÷ 自己資本 1,120 億円)。事業の ROE が資本コスト 8% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍。EC に押され値上げが通らず、ROE も資本コストを大きく下回る。構造的な負けの途中にあたるので、7 割へ引き上げず、上限の 7 割の 8.2 倍に置いた。
確率:EC への流出と大手の出店で、営業利益が今の名目額のまま動かない筋。構造の弱さが現れる筋で、強気側より厚く置いた。
悲観 12% 家電が汎用品になり、構造的に負ける 利益 −12 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 529 円137 億円
家電が完全に汎用品になり、店は価格競争に飲み込まれる。客数は 3 分の 1 ほど減り、店の閉鎖と減損が続く。家賃と人件費が固定費として残り、店舗は赤字になる。
ネットも利益が出ない。楽天やアマゾンの価格に合わせ、出店料と送料で粗利が消える。リフォームへの転換も実らず、買収した会社の減損が出る。
営業利益は赤字に沈み、自己資本は減損で 2 割ほど減る。配当は借入と資産の売却で維持するが、やがて減らさざるを得ない。
配当の下限を守る約束が、最後まで足かせになる。借金の返済と家賃が重く、再建のために店舗網を大きく縮める。もはや優良な会社ではなくなる。
- 店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど):数量 14.5(年間の会計件数(百万件))× 価格 19,800(1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 2,871 億円・営業利益 −6 億円。客数が 3 分の 1 減り、家賃と人件費が固定費として残る
- ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど):数量 8.0(年間の注文件数(百万件))× 価格 10,800(1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる))→ 売上 864 億円・営業利益 9 億円。価格競争と送料で利益がわずか
倍率:谷の底で営業利益は赤字、純利益も赤字で、稼ぐ力(利益 ÷ k)はゼロに近い。家賃が固定費として残り、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた約 140 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 1,054 億円に対する PBR 0.13 倍で測った。EV÷営業利益は赤字で意味を持たない。借金の重さは床の薄さで見た。
確率:家電のコモディティ化と、リフォームへの転換の失敗が重なり、優良な会社ではなくなる筋。小さな会社で関西が激戦区なので、1 割強と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗(家電・携帯・ホビー・リフォームなど)
関西を中心に 217 店の直営店で、家電・携帯・パソコン・ゲーム・ホビーを売る。リフォームなどの子会社の売上も含む。
| 数量年間の会計件数(百万件) | 価格1 会計あたりの売上(円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.4 | 16,000 | 3,576 | 35 |
| 10 年後 中立 | 19.7 | 21,440 | 4,217 | 67 |
取り方:店頭 3,549 億円とその他 27 億円の合計 3,576 億円を、1 会計約 1.6 万円(推定。冷蔵庫・エアコンなど高額品と、携帯・小物の混在)で割った件数が約 2,235 万件。営業利益は店舗とネットを分けて開示していないため、全社 54 億円を店舗 35 億円・ネット 19 億円と推定して置いた。件数は人口減と不採算店の撤収(最大 15 店)で、中立は 10 年で 12% 減。1 会計の金額は物価並みの 1.34 倍。
ネット(自社サイト・楽天・ヤフーなど)
自社サイトと楽天・ヤフーなどの店で、全国に家電や小物を売る。店との併用(OMO)を進めている。
| 数量年間の注文件数(百万件) | 価格1 注文あたりの売上(円。物価の指数で伸びる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.8 | 9,000 | 790 | 19 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 12,060 | 1,377 | 43 |
取り方:ネット販売 790 億円(売上の 18%)を、1 注文約 0.9 万円(推定。小物とエアコン・冷蔵庫の混在)で割った件数が約 878 万件。営業利益 19 億円は推定(利益率 2.4%)。注文件数は EC 化の進行と自社サイト比率の引き上げで、中立は 10 年で 1.3 倍。1 注文の金額は物価並みの 1.34 倍。
リスクと懸念
計画を外してきた経営
前の中計は 2026 年 3 月期に営業利益 110 億円を掲げたが、実績は 54 億円だった。新計画は営業利益 100 億円以上と ROE 7% を掲げるが、足元の ROE は 3% 台だ。達成を前提に数字を置くのは危うい。外れたとき、配当や投資の方針がどう動くかも見ておきたい。
撤収と改革の実行
不採算店を最大 15 店ほど撤収し、PB を 150 品目で本格的に始め、リフォーム会社も取り込む。同時に 3 つを動かせば、現場の負担は重い。撤収の損失が先に出て、PB やリフォームの利益が遅れれば、純利益は数年にわたって計画を下回る。
EC による価格の透明化
家電 EC の比率は 4 割を超え、価格はすぐ比べられる。ヨドバシは EC の比率が高く、先を走る。店が商品を試す場所になり、買われるのは EC という構図が進めば、客数と粗利が同時に落ちる。Joshin のネットは伸びているが、利益率が店頭より薄ければ、売上が移っても利益は増えない。
配当の約束の重さ
新しい中計は DOE 2.5% 以上を目安にした。純利益が 35 億円ほどの会社で、下限だけで毎年 26 億円ほどの配当になる。利益が落ちても配当を守れば、手元の金が細り、改革に回す余力が減る。守れなければ、株主の信頼が揺らぐ。
家賃の固定費と新リース会計
店舗の多くは借りており、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。額は開示で確認できず、売上の 2% 前後(80〜100 億円)と推定する。2028 年 3 月期から新しいリース会計が始まり、BS の借金が見かけ上ふくらむ。今の自己資本比率 46% は、見た目ほど堅くない。
関西への集中
店舗数・売上とも、リアル店舗事業の 6 割以上が関西だ。ここはヨドバシ・ビックカメラ・ヤマダ・エディオンが集まる激戦区で、人口も先細る。地元で強いことは、勝ち続けられることを意味しない。関西の競争が一段と厳しくなれば、他の地域で補う余地は小さい。
人件費の上昇
2026 年 3 月期は、粗利が 56 億円増えたのに、人件費も 18 億円増えた。最低賃金は物価より速く上がりやすい。店の運営費が増える一方、競争の激しい家電では、値上げで転嫁しにくい。利益率が 1% 台の会社には、小さな費用増でも利益を大きく動かす。
今後の分かれ目
- PB の売上比率が 2027 年 3 月期に 4.6% を達成し、その後も毎年上がる
- 粗利が厚くなり、店舗の利益率が 2% に近づく。強気の筋書きの確率を上げ、10 年の見立ては上向く。
- 2027 年 3 月期の営業利益 60 億円を達成し、撤収損を除いても増益になる
- 改革が利益に結びつき始めたと判断する。70 億円台に乗れば、平常の力の見立てを引き上げる。60 億円に届かなければ、慎重な見方がさらに強まる。
- 家電 EC の比率がさらに上がり、既存店の客数が 2 年続けて減る
- 店舗の価値が崩れ始めたと判断し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 自社株買いを実行し、資本効率を改善する
- 自己資本が過大だった問題が和らぎ、ROE が 6% を超える。倍率を 1 倍ほど高く置ける。
- 配当を DOE の下限どおりに守れず、減配に動く
- 改革の資金が足りないという合図になる。利益の回復が遅れる筋として、慎重な見方を強める。
- ヨドバシ・ビックカメラ・エディオンなど他社が、関西で大型店の出店や再編に動く
- 関西の売上が削られる。規模を求める中堅として、統合や提携の可能性も出る。条件を見て評価する。
見ておくもの
- 営業利益(2027 年 3 月期 60 億円の達成)
- 既存店売上高と客数
- PB の売上比率(2027 年 3 月期 4.6%)と SKU 数
- 自社サイトの比率(2027 年 3 月期 46%)とネットの利益率
- 不採算店の撤収数と撤収損
- リフォーム子会社の売上と利益
- 配当(DOE 2.5%)と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価ではなく、その時点の ROE と資本コスト 8%(基本 7.5% に品質の調整 +1.0%)から置いた。ROE が資本コストを下回るので、PER の上限そのものが 1÷k = 11.8 倍と低い。中立は利益の質の低さを見て上限の 8 割、強気側は 9 割前後にとどめた。今の PER 33 倍は利益が落ちた年の数字で、根拠にしていない。
結果として中立は今より大きく低く、割高に出る。
純有利子負債は 334 億円で純現金ではないので、余った現金は立てていない。店舗の家賃は固定の約束で、悲観では売上が落ちても残るとして利益率に入れた。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた。2028 年 3 月期からの新リース会計で営業利益が少し増え、純有利子負債がリース負債の分だけ増える点は、比較のときに注意が要る。悲観は市場の倍率や過去の底でなく、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた床(概算 140 億円)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→12.5 倍・やや楽観 PER 10→12.5 倍・中立 PER 9.4→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。耐久財で循環 +0.25%、EC と大手に値段を比べられて値決め +0.5%、純有利子負債が EBITDA の約 3 倍で借金 +0.25%、寿命は 0。赤字や存続の疑いはないので上乗せは置かない。計画の外れやすさ、撤収の実行といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。