結論
クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、全国のショッピングセンターやアウトレット、高速道路のサービスエリアに、約200のブランドで1,100店余りを出す外食グループだ。フードコートから居酒屋、ベーカリー、ラーメンまで、立地に合わせて店を入れ替えるのが得意技になっている。
筆者の結論は、事業はよいが値段が先走りすぎている、というものだ。10年後の中立の純利益は80億円ほど。今の時価総額はその40倍近い利益を前提にしており、成長の果実を何年も先に払ってしまっている。
強みは立地と機動力だ。商業施設の運営会社から好立地の区画を任され、売れない店はすぐ別のブランドに替える。M&A(企業買収)で買った専門店を、グループの出店網に載せて増やす仕組みも回り始めた。
弱みは3つある。主力の磯丸水産が客数を落としていること。北米のレストランが苦戦していること。そして、店の家賃という固定の約束が約430億円分も積み上がっていることだ。売上が落ちても家賃は落ちない。
2026年7月にはSFPホールディングスを吸収合併し、親子上場を解消した。本社機能の重複は減るが、利益の源が増えるわけではない。
この会社は優良な外食グループだが、堀(他社がまねできない強み)が深いとは言えない。10年先の価値は、今の時価総額の2割ほどとみる。
バリュー投資の観点から
この会社を、バリュー投資の観点で、10年持ち続けたいかと問われれば、事業は好ましいが値段が合わない、というのが答えだ。
好ましい点は2つある。1つは、店を選ぶ規律が高いこと。調整後ROICが24%あり、悪い店を早く閉じる。もう1つは、買収した専門店を自社の網で増やす力があることだ。
気になる点は3つある。第1に、家賃という固定の約束が大きい。第2に、利益を株主に戻す割合は半分に届かず、残りは借入と合わせて店と買収に回る。再投資の収益が資本コストを超え続ければよいが、居酒屋と北米では、それが怪しい。第3に、外食には、競争の中で値段を決める力が乏しい。
オーナー利益、つまり再投資を引いたあとに株主に残る利益は、見かけの純利益より薄い。営業キャッシュ230億円のうち、リース返済と設備投資で約8割が出ていく。
安全域の目で見ると、今の時価総額は、10年後の中立の利益を土台にした価値の数倍になる。楽観の筋書きでも、今の値段には届かない。わからない部分が多い事業ではないが、値段が先に走っている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、人が集まる場所に、その場所に合う店を置くことだ。会社は事業を4つに分けて開示している。
1つ目はCRカテゴリーで、約520店。郊外・都市の商業施設のフードコートやレストランを、しゃぶ菜、はーべすと、デザート王国などで運営する。ゴルフ場や水族館、高速道路のサービスエリアから運営を請け負うコントラクト事業も約130店あり、ここは設備投資が軽い。
2つ目は居酒屋で、約210店。磯丸水産を中心に、2次会や宴会で稼ぐ業態だ。2026年2月期は客数が落ち、原価の上昇も重なって利益が細った。
3つ目は専門ブランドで、約335店。ベーカリーのサンジェルマン、一幻などのラーメン、いっちょう、2025年以降に買収した新しい店が並ぶ。毎日食べる定番の商品が多く、いまのグループで最も伸びが読みやすい。
4つ目は海外で、約60店。ロサンゼルス周辺のイタリア料理イル・フォルナイオ、同じくワイルドフラワー、東南アジアのフランチャイズ展開などがある。
連結の売上は1,654億円で、営業利益は79億円。営業利益率は5%前後と、外食としては普通の水準だ。店は直営が中心なので、利益は店の数と1店当たりの売上に素直に連動する。
国際会計基準(IFRS)で決算を出しているため、店の家賃は「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に載っている。リース負債は約430億円と推定され、これは借金に近い固定の約束だ。
優良さと弱いところ
堀は、商業施設の運営会社との関係と、ブランドを素早く入れ替える運営力にある。これは本物だが、他社にまねできないほど深くはない。
強い点から言う。立地を選ぶ目と、売れない店の見切りが速い。2026年2月期は、新規出店56店に対し、退店54店だった。投資の収益率を示す調整後ROIC(EBITDAを元手で割った数字)は24%と高く、会社はこの基準で厳しく店を選ぶ。
次に、1ブランドに頼らない。約200のブランドがあり、1つの業態が傷んでも全体は崩れにくい。コロナ禍の2021年2月期は赤字になったが、翌期には黒字に戻した。
弱い点は、値段を自分で決める力が乏しいことだ。フードコートや居酒屋は、客がほかの店と比べやすい。値上げが通りにくく、人件費や食材費の上昇を吸収する力は強くない。
もう1つ気になるのは、資本の効率が会計の形に支えられている点だ。ROEは10〜14%だが、リース負債を借金と見れば実質の負債は重い。家賃は毎年約140億円払う。
筆者は、堀を普通(強くも弱くもない)と見る。経営の規律は高いが、事業の構造は外食の平均から大きく外れていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は24兆円ほどあり、会社の売上はそのうち0.7%にすぎない。国内の店舗数は飽和に近く、人口も減る。数量の伸びは、新しい店と新しい業態でしか作れない。
客単価は、物価が年3%で上がる前提なら、10年で1.34倍になる。ただし、人件費と食材費も同じ速さで上がるため、値上げは利益の伸びではなく、利益を守るための動きになる。
この会社が置かれた領域は、場所ごとに状況が違う。商業施設のフードコートは、買い物客が増える施設では堅いが、施設の力が落ちれば店も傷む。駅前と繁華街の居酒屋は、構造的に厳しい。居酒屋とバーの客数は、2019年の6割ほどにとどまる。若者が酒を飲まなくなり、会社の宴会が減り、2次会需要が減ったためだ。
競合は業態ごとに違う。居酒屋ではワタミ、鳥貴族、コロワイドが重なる。ラーメンやベーカリーでは、地域の専門店やパン屋が相手だ。フードコートでは、丸亀製麺のトリドールやサガミ、物語コーポレーションなどが同じ施設に出店する。商業施設の区画を「複数ブランドで、まとめて運営する」会社は、国内では珍しい。
海外は成長の余地が大きいが、収益の質はまだ低い。北米は物価高で客が高単価の店を避けはじめ、イル・フォルナイオは苦戦した。アジアはフランチャイズが中心で、1店当たりの利益は小さい。
10年で見ると、国内は数量が横ばいから微増、居酒屋は減、専門ブランドが増、海外が増という構図になる。全体の増収は年4〜5%ほどで、物価の上昇分を少し上回る程度だ。
資本政策と M&A
資本政策は「借入で攻め、利益は中程度に配る」というものだ。成長投資の主な財源は借入で、配当と借入返済は店が生む調整後EBITDAで賄う。2026年2月期は、設備投資47億円と配当20億円に対し、借入を52億円返した。
配当は6期連続の増配予想だが、純利益に対する割合は4割前後で、自社株買いはほとんどしていない。株主優待の手厚さも特徴で、2026年7月の合併を機に、優待が使える店は国内900店超に広がる。
M&Aは成長の柱だ。2025年以降に、一幻・狼煙などのラーメン、ベーグルのTecona Bagel、洋食のロンを取り込んだ。会社は国内と北米で年2件以上の買収を目標にしている。小さい店を買って、グループの出店網に載せるのが得意な型だ。
2026年7月にSFPホールディングスを吸収合併した。SFP側の株主は、1株につき3.2株のクリエイト・レストランツ株を受け取った。親子上場を解消し、本社機能と上場の費用を一本化するのが狙いだ。
筆頭株主は創業者の資産管理会社G&Companyで、議決権の4割を握る。創業者の後藤仁史氏は代表取締役会長(Executive Chairman)、川井潤氏が社長CEOだ。支配株主がいるため、TOBで買われる可能性は低い。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):株数は SFP 合併前の持分の利益に合わせた基準日の株数、中立の利益は会社の目標を超えず、悲観の筋書きは減損とのれんを入れた。倍率は式の 9 割。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 4.7 億円(株主約 273,235 人×100 株の年額面 6,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 1.6×使われる割合 0.85×原価率 0.3。推定)。10 年で中立 47 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 23 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
計画どおりに事が進むなら、利益は想像以上に伸びる。2030年2月期の営業利益160億円、純利益95億円という会社の目標は、未確定の買収分を含まない置き方だ。実際に年2件の買収を10年続ければ、さらに上積みできる。
専門ブランドの伸びは本物だ。毎日食べるパンやラーメンは景気に左右されにくく、グループの出店網に載せると店が早く増える。ベーカリーとヌードルは好調で、2026年2月期の既存店前年比は専門ブランドが約103%だった。
居酒屋も底を打つ。2027年2月期の第1四半期は、連結の営業利益率が前年の7.3%から7.8%に上がった。磯丸水産の改装と、低価格業態への切り替えが効けば、居酒屋の利益率は5〜7%に戻る。
海外も、アジアのフランチャイズ展開と欧州進出で店が増える。北米のイル・フォルナイオは経営者が代わり、不採算店を閉じれば、利益が出る体質に戻せる。
合併でSFPの人材と物件情報がグループで使えるようになり、ラーメンの出店先に居酒屋の路面物件が使える。商業施設でも路面でも出せる店を増やせば、立地の選択肢が広がる。10年で店数が1.5倍近く、営業利益率が7%台に乗れば、純利益は150億円を超える。
慎重な見方
事業は悪くないが、収益の構造がもろい。居酒屋は、飲酒の減る流れが止まらない。磯丸水産の客数は、2026年2月期に前年を下回り、原価の上昇も重なって、SFPカテゴリーの営業利益は予想を大きく外した。2027年2月期の第1四半期も、磯丸水産を中心に既存店は前年割れだ。
海外は、期待が先走りすぎている。北米のイル・フォルナイオは、物価高で客が高単価の店を避け、2026年2月期の第4四半期に悪化した。海外の営業利益は、会社の見立てより低いと見るのが妥当だ。
決算の数字は、2026年2月期の営業利益が79億円と前年を下回り、予想の8割強にとどまった。M&Aで規模を追う会社に多い、買ったあとの手直しの手間と、のれんの減損が静かに積み上がる姿に近い。
最も重いのは、家賃だ。リース負債は約430億円で、毎年約140億円を払う。売上が1割落ちれば、営業利益はほぼ消える。外食は固定費の重い商売で、悪い年に傷が深い。
配当は純利益の4割にあたり、借入で成長投資を続ける形は、景気の悪い年に資金繰りの余裕を削る。創業者支配の下で、買収を急ぎすぎる恐れも残る。
どちらに重みを置いたか
事業の質と経営の規律は高く評価できるが、固定費の重さと居酒屋・北米の不調は、慎重な見方の指摘がより強い。利益が伸びるのは確かだが、伸びを織り込んだ値段が、中立の10年後の価値を大きく上回る。
そのため確率は中立を中心に置き、やや悲観を少し厚くした。悲観を11%にしたのは、家賃の固定費が景気後退で利益を消す形が、外食の中でも起こりやすいと見たからだ。
合併による本社費の節約は、中立の利益率にすでに含めた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 299 円1,261 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 64 円269 億円)。 今の値に割り戻すと 186 円783 億円、今との差 −76.0%、 期待の年率 −7.3%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 657 円2,768 億円 | 85 円357 億円 | −4.1% | −0.4% | 74 円313 億円 |
| やや楽観 | 23% | 443 円1,867 億円 | 76 円318 億円 | −32.9% | −3.9% | 119 円503 億円 |
| 中立 | 32% | 312 円1,314 億円 | 68 円286 億円 | −50.9% | −6.9% | 122 円512 億円 |
| やや悲観 | 24% | 129 円544 億円 | 61 円255 億円 | −75.5% | −13.1% | 46 円192 億円 |
| 悲観 | 11% | 7 円29 億円 | 16 円68 億円 | −97.0% | −29.7% | 3 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 299 円1,261 億円 | 64 円269 億円 | −53.1% | −7.3% | 363 円1,530 億円 |
今の株価時価総額 774 円3,259 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 買収と専門店が回り、グループが一回り大きくなる 利益 158 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 657 円2,768 億円
専門ブランドのベーカリーとラーメンに買収が重なり、10年で店が1,700店近くまで増える。年2件の買収を続け、買った店をグループの出店網で増やす型が定着する。商業施設の運営会社との関係も深まり、好立地の区画が優先的に回ってくる。
居酒屋は磯丸水産の改装と低価格業態への切り替えで底を打つ。海外は、北米の経営体制が整い、アジアのフランチャイズが増え、欧州にも小さく入る。人件費の上昇は自動化とAI発注で吸収できる。
営業利益率は7%台まで上がり、純利益は150億円台に乗る。コロナ後の外食で最も成功した多ブランド企業として評価される10年になる。
- CR(フードコートと商業施設の主力ブランド):数量 620(店舗数(店))× 価格 1.54(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 956 億円・営業利益 67 億円。営業利益率7.0%
- 居酒屋(旧SFP):数量 220(店舗数(店))× 価格 1.99(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 437 億円・営業利益 31 億円。営業利益率7.0%
- 専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか):数量 680(店舗数(店))× 価格 2.01(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 1,366 億円・営業利益 116 億円。営業利益率8.5%
- 海外(北米・アジア):数量 170(店舗数(店))× 価格 5.61(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 954 億円・営業利益 76 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 158 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍。全体の PER 17.52 倍、時価総額 2,768 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:年2件の買収と専門ブランドの拡大が10年続き、居酒屋と北米も立ち直る。条件が重なる必要があり、起きにくい。
やや楽観 23% 中期計画どおりに進み、居酒屋は遅れて戻る 利益 110 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 443 円1,867 億円
中期計画に沿って進む筋書きだ。専門ブランドは買収の効果もあり、店数が560店ほどに増える。CRカテゴリーは、改装の効果で既存店が着実に伸び、フードコートと路面の両方で新店を出せる。
居酒屋は、改装と業態変更が効いて利益が戻るが、2019年までの水準には届かない。海外は北米の立て直しに時間がかかるが、アジアが先に増える。
SFPとの合併効果で本社費が減り、営業利益率は6%台前半に上がる。成長は堅いが、特別に強い堀があるわけではなく、伸びは外食の優等生の範囲にとどまる。
買収は年1〜2件のペースで続き、買った店は2〜3年でグループの水準に近い利益率に育つ。ただ、大型の買収は見送られ、規模の飛躍は起きない。会社の中期計画はおおむね達成できるが、その先の伸びは物価の上昇と小さな出店の積み重ねにとどまる。
- CR(フードコートと商業施設の主力ブランド):数量 590(店舗数(店))× 価格 1.52(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 897 億円・営業利益 58 億円。営業利益率6.5%
- 居酒屋(旧SFP):数量 205(店舗数(店))× 価格 1.94(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 398 億円・営業利益 22 億円。営業利益率5.5%
- 専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか):数量 560(店舗数(店))× 価格 1.98(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 1,108 億円・営業利益 83 億円。営業利益率7.5%
- 海外(北米・アジア):数量 120(店舗数(店))× 価格 5.30(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 636 億円・営業利益 41 億円。営業利益率6.5%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.46 倍、時価総額 1,816 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い成長で、買収が計画どおり進む。外食の中で現実的な上振れで、居酒屋の回復が遅れる分は織り込んだ。
中立 32% 店は増えるが、利益率は外食の平均にとどまる 利益 81 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 312 円1,314 億円
店は商業施設を中心にじわじわ増え、10年で1,300店ほどになる。専門ブランドは買収と新規出店で470店ほど、CRカテゴリーは560店ほどになる。居酒屋は、出店より退店が多くなり、200店を割る。
物価の上昇は価格に乗るが、人件費と食材費も同じ速さで上がり、営業利益率は5%台後半で安定する。買収は年1件ほど続くが、買った店が大きな利益を生むほどではない。
海外は店が85店ほどになり、北米は赤字を脱して小さな黒字になる。小型のフランチャイズ店が増えるため、海外の1店当たり年商は物価ほど上がらない(10年で1.15倍)。合併の効果は本社費の節約にとどまる。10年後の純利益は80億円ほどで、今の1.7倍だ。 株主優待は年およそ 4.7 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 47 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。
- CR(フードコートと商業施設の主力ブランド):数量 560(店舗数(店))× 価格 1.50(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 839 億円・営業利益 50 億円。営業利益率6.0%
- 居酒屋(旧SFP):数量 195(店舗数(店))× 価格 1.90(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 370 億円・営業利益 17 億円。営業利益率4.5%
- 専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか):数量 470(店舗数(店))× 価格 1.95(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 916 億円・営業利益 64 億円。営業利益率7.0%
- 海外(北米・アジア):数量 85.0(店舗数(店))× 価格 5.16(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 439 億円・営業利益 22 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 81 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.24 倍、時価総額 1,239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:商業施設の立地を生かして店が増え、居酒屋は縮み、海外は少しずつ伸びる中心の筋書き。同じ領域の会社と並ぶ確率に置いた。
やや悲観 24% 居酒屋と北米が足を引っ張り、利益が伸び悩む 利益 47 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 129 円544 億円
居酒屋の縮小が止まらず、磯丸水産を含めて店が170店ほどに減る。北米は経営体制を替えても客数が戻らず、海外の店は65店ほどにとどまる。専門ブランドも、新しい店の売上が伸びにくくなる。
人件費は年4%前後で上がり続け、値上げでは吸収しきれない。営業利益率は4%台まで下がる。家賃は固定費として残り、売上が伸びないぶん利益を削る。
買収は新しい案件が減り、既に買った店の手直しに手間が取られる。純利益は50億円前後で、今とほぼ同じ水準だ。物価の分だけ売上は増えるのに、利益は増えない10年になる。
商業施設の運営会社との関係は保たれるが、家賃の値上げ交渉では強い立場に立てない。会社は店を見切る規律を持つため、大きな赤字は避けられるものの、成長の余地は残らない。配当は維持され、自己資本は少しずつ積み上がる。
- CR(フードコートと商業施設の主力ブランド):数量 530(店舗数(店))× 価格 1.45(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 770 億円・営業利益 38 億円。営業利益率5.0%
- 居酒屋(旧SFP):数量 170(店舗数(店))× 価格 1.78(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 302 億円・営業利益 8 億円。営業利益率2.5%
- 専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか):数量 410(店舗数(店))× 価格 1.89(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 774 億円・営業利益 43 億円。営業利益率5.5%
- 海外(北米・アジア):数量 65.0(店舗数(店))× 価格 4.85(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 315 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE 6.7% は k 7.75% に届かず、ためた利益は額面を下回る価値になる。この場合の PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。居酒屋と北米で利益が実質で目減りし、家賃の固定費が利益の質を下げるので、上限の約 8 割の 10.5 倍に置いた。
確率:居酒屋の縮小が続き、北米が立ち直らず、人件費で利益率が下がる。2026年2月期は営業利益が予想の8割強にとどまった実績があり、やや厚く置いた。
悲観 11% 家賃の固定費に押され、優良さを失う 利益 3 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 7 円29 億円
家賃の固定費が重い中で、景気後退と若者の外食離れが重なる。居酒屋は赤字が続いて店が120店まで減り、北米と、買収で取り込んだ店で、のれんと店の減損が相次ぐ。
フードコートを入れた商業施設も、集客が落ちて閉鎖が増える。退店するには、残りの家賃を払う必要があり、傷が深くなる。営業利益率は1%台になり、純利益はほぼ消える。
配当は減らし、買収は止まる。それでも、パンやラーメンなどの毎日食べる業態は残る。事業が消えるわけではないが、投資家が期待した優良な外食グループではなくなった10年になる。
創業者支配の下で買収を急いだ結果、買った店の再建に失敗する。借入が重くなり、金利の上昇で利払いが利益を食う。配当は早い段階で減らされ、減損で自己資本も目減りする。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 23 億円を足した。
- CR(フードコートと商業施設の主力ブランド):数量 470(店舗数(店))× 価格 1.36(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 641 億円・営業利益 16 億円。営業利益率2.5%
- 居酒屋(旧SFP):数量 120(店舗数(店))× 価格 1.63(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 196 億円・営業利益 −4 億円。営業利益率-2.0%
- 専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか):数量 340(店舗数(店))× 価格 1.80(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 612 億円・営業利益 18 億円。営業利益率3.0%
- 海外(北米・アジア):数量 40.0(店舗数(店))× 価格 4.49(1店舗当たり年商(億円))→ 売上 180 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率-3.0%
倍率:ROE 0.7%(純利益 3 億円 ÷ 自己資本 510 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 10.5 倍より低い 8.4 倍(その 8 割)に置いた。店とのれんなど売って得る資産の床は別に立てていない(家賃の約束と減損の見込みを引くと残らない)。
確率:家賃の固定費が重い中で景気が崩れ、買収した店と北米で減損が出る。外食の中でも固定費の重さが傷を深くするので、10%超を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
CR(フードコートと商業施設の主力ブランド)
商業施設のフードコートとレストランを多ブランドで運営する主力。ゴルフ場や水族館などから運営を請け負うコントラクトも含む。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 523 | 1.12 | 585 | 35 |
| 10 年後 中立 | 560 | 1.50 | 839 | 50 |
取り方:2026年2月期のCRカテゴリーの売上収益585億円を店舗数523店で割って1店舗当たりの年商を出した(コントラクト約130店を含む)。営業利益は、カテゴリーCFの利益率(約10%)から減価償却を除いた推定で35億円とした。先の1店舗当たり年商は、物価で10年1.34倍が中立。
居酒屋(旧SFP)
磯丸水産などの居酒屋。宴会と2次会の需要に依存し、客数が落ちている。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 210 | 1.48 | 311 | 8 |
| 10 年後 中立 | 195 | 1.90 | 370 | 17 |
取り方:SFPカテゴリー(磯丸水産ほか、2027年2月期から居酒屋カテゴリーに名称変更)の売上収益311億円を店舗数210店で割った。営業利益は推定で8億円(利益率2.6%)。客数が減る分は価格の指数に入れ、中立で10年1.28倍と物価(1.34倍)より低く置いた。
専門ブランド(ベーカリー・ヌードルほか)
ベーカリー、ヌードル、洋食など、毎日食べる定番に近い専門ブランドの集まり。買収で増える。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 335 | 1.50 | 502 | 36 |
| 10 年後 中立 | 470 | 1.95 | 916 | 64 |
取り方:専門ブランドカテゴリー(サンジェルマンなどのベーカリー、一幻などのヌードル、いっちょう、Tecona Bagel、ロン)の売上収益502億円を店舗数335店で割った。営業利益は推定で36億円(7.2%)。小型店の比率が上がるぶん、1店舗当たり年商は10年1.30倍と物価より低めにした。
海外(北米・アジア)
北米のレストラン(イル・フォルナイオ、ワイルドフラワー)と、アジアのフランチャイズ展開。
| 数量店舗数(店) | 価格1店舗当たり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 58.0 | 4.49 | 260 | 5 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 5.16 | 439 | 22 |
取り方:海外カテゴリー(北米のイル・フォルナイオ・ワイルドフラワー、アジアのフランチャイズ)の売上収益260億円を店舗数58店で割った。営業利益は推定で5億円(1.9%、北米の苦戦で薄い)。小型のフランチャイズ店が増える構成の変化を価格に入れ、10年1.15倍と置いた。
リスクと懸念
家賃(リース)という固定の約束
リース負債は約430億円と推定され、家賃として毎年約140億円を払う。売上が落ちても家賃は落ちないため、景気後退や集客の悪い施設に出した店では、利益が一気に消える。2028年2月期から新しいリース会計基準で数字の形も変わる。
居酒屋カテゴリーの構造的な縮小
磯丸水産を中心に、既存店の客数が前年を下回っている。居酒屋の客数は2019年の6割ほどで、若者の飲酒の減少と宴会の減少が重なる。改装と低価格業態への切り替えで戻る見込みは、まだ数字で確かめられていない。
北米事業の収益性
イル・フォルナイオは物価高で客が高単価の店を避け、2026年2月期の第4四半期に悪化した。経営者を外部から招いたが、立て直しには時間がかかる。のれんの減損の恐れもある。
M&Aの買い過ぎ
会社は国内と北米で年2件以上の買収を目標にしている。値段が高くなれば、買収の収益は資本コストを割る。買った後の手直しに手間がかかる点も、これまでの実績で見えている。借入で買うため、金利が上がる局面では利益を削る。
人件費と食材費の上昇
最低賃金の上昇とパートの不足は、外食全体の逆風だ。会社は社員昇給ファンドを毎年5%増やす方針で、値上げで吸収できない部分は利益率を直接削る。フードコートは客が値段を比べやすく、転嫁が難しい。
創業者支配とガバナンス
創業者の資産管理会社が議決権の4割を握る。意思決定の速さは長所だが、買収や配当の判断が少数株主の利益と離れる恐れがある。合併で上場会社が1社減ったことで、市場の監視の目も少し減る。
今後の分かれ目
- 居酒屋カテゴリーの既存店が前年を上回り、利益率が5%台に戻ったら
- 居酒屋は底を打ったとみて、中立から楽観へ確率を寄せる。構造的な縮小という見方は弱まる。
- 磯丸水産の客数がさらに落ち、居酒屋カテゴリーの営業利益が赤字に近づいたら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。店の閉鎖と減損が先に来る。
- 北米のイル・フォルナイオが新体制で黒字化し、海外カテゴリーの利益率が5%を超えたら
- 海外の利益率を上方修正し、中立の利益を押し上げる。
- 年2件の買収が計画どおり進み、買った店の利益率が既存の専門ブランド並みに育ったら
- 専門ブランドの店数と利益率を上方修正し、楽観寄りの確率を厚くする。
- 買収の値段が高くなり、買った後に減損が出るようになったら
- 資本の使い方に疑問が生じるので、やや悲観側に寄せる。
- 最低賃金が物価を超えて上がり、既存店の客数が減り続けたら
- 営業利益率の前提を下げ、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 既存店前年比(カテゴリー別。特に居酒屋カテゴリー)と中計の営業利益の進捗
- 海外カテゴリーの営業利益率と北米の店舗数
- 年2件のM&Aの実績と、買収後の店舗の利益率
- リース負債の額と、新リース会計基準に伴う財務指標の見え方
倍率と資本コストの決め方
筆者はまず4つのカテゴリーごとに、店舗数(数量)と1店舗当たり年商(物価で上がる価格の指数)を置いて10年後の利益を積み上げ、そこからROEと資本コスト7.75%を計算して倍率を決めた。倍率は式の上限(正当化PER)の9割前後に置き、今の株価や同業の倍率は見ていない。純利益は、SFPの少数株主分を除いた合併前の持分の形で置き、基準日の株数と合わせた(合併で株数は増えるが、取り込む利益も増え、1株の価値はほぼ変わらない)。家賃を営業費用に入れた今の形で置き、新リース会計基準で営業利益が少し増え、純有利子負債(リース負債込み)が増える点は数字に入れていない。結果として今の値段は大きく割高になったが、計算に従った結果で、値段に寄せていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.9→17.52 倍・やや楽観 PER 13.6→16.46 倍・中立 PER 13→15.24 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.25% を足した 7.75%。値決め力の弱さだけを反映した。家賃の固定費や買収の失敗といった個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率と利益率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せは置かない。