結論
ブックオフグループホールディングスは、国内の中古品の買取と販売を手がける最大手の一つだ。2026年5月期の売上は1,301億円で、営業利益は44億円。2期続けて過去最高を更新した。筆者の結論は、事業は健全だが今の値段は先を織り込みすぎており、本質価値は3割強下回るというものだ。
稼ぎの源は、客から安く買い取った品を検品し、店で売る粗利である。国内のリユース市場は15年連続で広がり、環境意識と節約志向が追い風になっている。同社の既存店売上は前期比で約8%伸び、インバウンドの売上も約25%増えた。
ただし、利益の取り分は薄い。営業利益率は3%台で、売上が10%伸びても利益は数十億円しか増えない。人件費と家賃は物価で上がり続ける。フリマアプリに客と品が流れる構造もある。2024年には買取をめぐる不正が発覚し、2026年10月には最大約643万件の会員情報が漏れた可能性も公表された。
10年後の中立は、売上が約2,000億円、営業利益が約68億円、純利益が約40億円である。倍率は13倍とした。この水準で10年かけて育っても、今の時価総額456億円は先を織り込みすぎている。筆者は、事業の良さと値段の高さは別の話だと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業を、少し高めの値段で買う」ことになる。買取と再販という仕組みは堅く、不況でも需要が減りにくい。経営が不正の再発防止に取り組み、営業キャッシュフローも過去最高になった。
問題は、取り分の薄さである。営業利益率が3%台の小売は、売上が少し落ちるだけで利益が大きく振れる。人件費や家賃が物価で上がる世界では、価格を上げられなければ利益率はむしろ下がる。堀は店の網と買取の認知だが、フリマという代替がある。筆者は、この堀を「広い」とは見ない。
資本の使い方は、成長投資に偏る。それ自体は悪くないが、投資が実を結ぶまで株主への還元は薄い。経営の管理体制は、2024年の不正と2026年の情報流出で、信頼を取り戻す途中にある。
安全域は、ほとんど無い。中立でも10年後の時価総額は今と同程度で、還元を足しても資本コストに届かない。事業がうまくいくことと、今の値段が妥当なことは別だ。
何で稼ぐ会社か
事業は、中古品を買い取って売る小売である。国内の「BOOKOFF」「BOOKOFF PLUS」「BOOKOFF SUPER BAZAAR」などの店で、本・CD・DVD・ゲームのほか、衣料、家電、ホビー、トレーディングカードまで扱う。直営店とフランチャイズ店を合わせて、店は800を超える。
2026年5月期の売上は、国内ブックオフ事業が約1,127億円、プレミアムサービス事業が約85億円、海外事業が約72億円である。国内の利益は約64億円で、全体の利益の大半をここが稼ぐ。プレミアムサービスは、ブランド品や貴金属を扱う「hugall」などの店で、仕入高が前期比で2割を超えて伸びた。
海外は、米国の「BOOKOFF USA」が20店、東南アジア向けに「Jalan Jalan Japan」が8店ある。本やアニメグッズに加え、日本から輸出した中古品の需要が伸びている。会社は米国を2028年5月期に30店、将来は100店にする方針を示している。
成長のために、大型の複合店の出店とITへの投資を続けている。会員アプリ、販売の仕組み、ネット通販、生成AIの活用、サイバー対策が主な投資先だ。2027年5月期は、大型店の先行費用で国内の利益が前期並みにとどまる計画である。
優良さと弱いところ
堀は、全国に張った店の網と、買取の集客力である。中古品商売の利益は、安く仕入れられるかで決まる。「ブックオフに持ち込めば値がつく」という認知が、買取の入口になっている。競合は多い。ハードオフ、トレジャー・ファクトリー、ゲオ、コメ兵、そしてメルカリなどのフリマアプリである。筆者は、堀の強さを「普通」と置く。
収益の質は改善してきた。営業利益率は2019年3月期の1.9%から、2026年5月期の3.4%へ上がった。前期の既存店売上は約8%伸び、本以外の品目が増えた効果も出ている。営業キャッシュフローは約49億円と過去最高だった。
一方、課題もある。ROEは過去8年の中央値で約10%と、資本コストをわずかに上回る程度だ。純有利子負債は約148億円で、時価総額の3割を超える。店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年からの新リース会計では、この約束が貸借対照表に載り、自己資本比率の34.7%は下がる。
そしてガバナンスである。2024年には国内26店舗などで架空の買取による横領が見つかり、業績への影響は約6億円に上った。再発防止は進んでいるが、2026年10月には子会社の会員システムへの不正アクセスも公表された。内部の管理と情報の守りは、まだ弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリユース市場は、15年連続で伸びてきた。環境省の調べでは、自動車を除く2024年度の市場は約1.3兆円で、2030年に4.6兆円(自動車等を含む)を目指す道筋が示されている。環境意識の高まりと物価高で、中古品を選ぶ人は増えている。
ただし、価格は物価とともに動く。中古品の相場も上がるが、買取の仕入れ値も同じだけ上がる。粗利の額は、数量でほぼ決まる。10年の中立では、市場の数量は実質で1割ほどの増加と置き、物価の分は価格に入れた。人口が減る国内でも、中古品を選ぶ人が増えるため、数量は微増にとどまると筆者は見る。
競合の形は二つある。店舗型は、ハードオフやトレジャー・ファクトリー、コメ兵などの専門チェーンが品目ごとに分かれて競う。ネット側では、メルカリなどのフリマアプリが最大の競合だ。個人どうしが直接売り買いすると、店の買取に入る品が減る。
10年の構造的な負け筋は三つある。フリマへの客と品の流出、人手による検品と出品のコストの上昇、新品メーカーによる下取りや再販事業への参入だ。逆に、不況期には節約需要が増えるため、中古品は景気に強い。リーマン後も市場は広がった。
資本政策と M&A
資本政策は、成長投資を優先しつつ、配当を少しずつ増やす形だ。配当性向は2027年5月期の予想で25%程度と低い。中期の目標は、2028年5月期に売上1,350億円以上・経常利益50億円以上、ROA(総資産利益率)9%以上である。2030年代には売上2,000億円以上・経常利益100億円以上を掲げる。
財務は、営業キャッシュフローで投資と借入返済をまかなう形だ。2026年5月期は営業キャッシュフローが約49億円、投資キャッシュフローが約30億円だった。自己資本比率は34.7%まで上がった。
M&Aは、新規事業の開発と合わせて「種まき」の段階にとどめている。大型の買収は、直近では見当たらない。経営の焦点は、プレミアムサービスと海外の拡大、大型店の出店である。
株主は個人が約6割を占める。大株主の名前と持株比率は、確かめられなかった。kabufuの推定では、10年以内のTOBの確率は19.2%である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内のリユース市場は15年連続で広がり、環境意識と物価高がその勢いを支えている。同社の既存店売上は前期に約8%伸び、インバウンドの売上は約25%増えた。本の売り場を縮め、衣料・家電・ホビー・トレーディングカードを増やした品揃えの転換が、客層を広げている。
成長の芽も複数ある。プレミアムサービスは、仕入高が前期比2割超で伸びた。米国は20店から30店へ、将来は100店を目指す。台湾には現地法人を設立した。会社は、2028年5月期の経常利益50億円の目標を、1年前倒しで今期達成する見通しを示している。
利益率の改善も続いている。営業利益率は1.9%から3.4%まで上がった。大型の複合店で効率が上がり、IT投資が定着すれば、さらに上がる余地がある。2030年代に売上2,000億円、経常利益100億円という目標が実現すれば、純利益は今の2倍を超える。不況に強い事業で、この成長が10年続くなら、今の値段にも意味がある。
慎重な見方
取り分の薄さが、この会社のすべてだ。営業利益率は3.4%で、売上が1割伸びても利益は十数億円しか増えない。人件費と家賃は物価で上がり続け、価格を転嫁できなければ利益率は下がる。2027年5月期の計画では、国内の利益は前期並みにとどまる。
成長事業の収益は、まだ小さい。海外の利益は約7億円で、前期は売上が15.8%増えたのに利益は微減だった。プレミアムサービスの利益は約1.6億円にすぎない。出店は費用を先に食い、回収には時間がかかる。
構造の問題もある。フリマアプリは、個人どうしの売買で店の買取を細らせる。新品メーカーの下取りや再販への参入も、仕入れ競争を激しくする。さらに2024年には架空の買取などの不正で約6億円の影響が出た。2026年10月には最大約643万件の会員情報が漏れた可能性も公表された。ブランドと客の信頼が傷つけば、集客力という堀が削られる。
そのうえ純有利子負債は約148億円で、時価総額の3割を超える。借り換えで利払いが増える。成長が思ったほど利益に出ない場合、今の値段は高すぎる。
どちらに重みを置いたか
市場の追い風と既存店の勢いでは、強気の見方に分がある。しかし、利益率の薄さ、物価で上がる固定費、フリマとの競争、不祥事の続きという要素は、利益率が山を超えて伸びる筋書きの確率を下げる。このため中立は営業利益率を過去の山(3.4%)にとどめ、倍率も資本コストに近い水準で置いた。
確率は、慎重な側にやや寄せた。やや悲観を24%、悲観を11%とし、中立を35%に置いた。強気側は合わせて30%である。それでも本質価値は今の時価総額を大きく下回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 3,488 円612 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 506 円89 億円)。 今の値に割り戻すと 1,919 円337 億円、今との差 −20.4%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,330 円1,462 億円 | 929 円163 億円 | +283.9% | +14.4% | 741 円130 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,548 円974 億円 | 706 円124 億円 | +159.3% | +10.0% | 1,376 円242 億円 |
| 中立 | 35% | 3,646 円640 億円 | 541 円95 億円 | +73.6% | +5.7% | 1,466 円257 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,104 円194 億円 | 319 円56 億円 | −41.0% | −5.1% | 342 円60 億円 |
| 悲観 | 11% | 543 円95 億円 | 97 円17 億円 | −73.5% | −12.4% | 70 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,488 円612 億円 | 506 円89 億円 | +65.6% | +5.2% | 3,994 円701 億円 |
今の株価時価総額 2,412 円423 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 需要と海外が伸び、利益率が山を超える10年 利益 86 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 8,330 円1,462 億円
リユース市場は環境意識と物価高で広がり続け、実質で3割ほど大きくなる。同社は買取の入口を守り、シェアを少し伸ばす。大型複合店が各地に広がり、本以外の品目の比率が高まる。客の来店も増え、買取点数も販売点数も伸びる。
海外では、BOOKOFF USAが100店近くまで増え、現地の本とアニメグッズ、日本の中古品の輸出が柱になる。プレミアムサービスも、ブランド品の買取網が全国に広がる。成長事業の店は10年で2倍以上になる。
営業利益率は、規模の効果とITの定着で5%近くまで上がり、会社が掲げる経常利益100億円を超える。不正の再発もなく、会員情報の問題も早く収まる。
- 国内ブックオフ事業(消去・その他を含む):数量 3.6(年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く))× 価格 621(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 2,230 億円・営業利益 134 億円。市場1.3倍×シェア9.7%に拡大。価格は物価を少し上回る
- 成長事業(海外・プレミアムサービス):数量 220(店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定))× 価格 2.40(1店舗あたりの年間売上(億円))→ 売上 529 億円・営業利益 42 億円。店舗220店。米国とプレミアムの出店が計画を上回る
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.11 倍、時価総額 1,386 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:リユース市場が環境省の道筋どおりに育ち、米国と国内の大型店が計画を上回る必要がある。既存店の勢いは本物だが、利益率が山を超える条件が重なるので、確率は1割弱に置く。
やや楽観 22% 出店が計画どおり進み、国内もシェアを守る10年 利益 59 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 5,548 円974 億円
リユース市場は実質で2割ほど大きくなり、同社は既存店の勢いで少しシェアを上げる。大型店の出店が続き、国内の利益率は5%台半ばまで上がる。ここでは規模の効果が出て、本部の費用も売上ほどは増えない。
米国は30店に届き、その後も着実に増える。台湾にも広がる。プレミアムサービスは、仕入高の伸びが続く。成長事業の店は10年で2倍弱になる。
営業利益率は4%台に乗る。賃金の上昇は価格の上昇でおおむね吸収できる。不正の再発防止は進み、信頼は戻る。配当は性向30%近くまで少しずつ上がる。大型の買収は行わず、借入の返済を進める。
- 国内ブックオフ事業(消去・その他を含む):数量 3.1(年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く))× 価格 612(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,924 億円・営業利益 108 億円。市場1.2倍×シェア9.2%。価格は物価並み
- 成長事業(海外・プレミアムサービス):数量 170(店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定))× 価格 2.37(1店舗あたりの年間売上(億円))→ 売上 403 億円・営業利益 28 億円。店舗170店。海外とプレミアムが着実に増える
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.08 倍、時価総額 890 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2030年代に売上2,000億円・経常100億円という会社の目標に近い姿。既存店の実績と中期計画の達成ペースが裏づけになる、現実的な上振れである。
中立 35% 市場の伸びに乗るが、利益率は山を超えない10年 利益 40 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,646 円640 億円
リユース市場は実質で1割ほど大きくなる。同社は今のシェアを守り、国内売上は物価の分を含めて6割近く増える。大型複合店の出店は続くが、先行費用が利益を食う年も出る。
海外とプレミアムサービスの店は、10年で1.5倍ほどになる。海外の利益は小さいままで、会社全体の利益を押し上げるほどにはならない。
人件費と家賃は物価どおりに上がり、本社費もほぼ同じ率で増える。営業利益率は過去の山(3.4%)の手前で止まる。純利益は10年で4割ほど増え、配当は性向28%程度を保つ。借入は返済が進むが、利払いは今より増える。
- 国内ブックオフ事業(消去・その他を含む):数量 2.8(年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く))× 価格 603(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,687 億円・営業利益 88 億円。市場1.1倍×シェア8.9%(維持)。価格は物価並み
- 成長事業(海外・プレミアムサービス):数量 130(店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定))× 価格 2.33(1店舗あたりの年間売上(億円))→ 売上 303 億円・営業利益 18 億円。店舗130店。海外の利益は小さいまま
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 552 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の伸びに乗って規模は育つが、人件費と家賃の上昇で利益率は山を超えない、最も起こりやすい姿。FY27の会社予想(国内利益は前期並み)が出発点になる。
やや悲観 24% フリマに客を奪われ、人件費と家賃が利益を削る10年 利益 15 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,104 円194 億円
フリマアプリに衣料やホビーの品が流れ、店の買取が細る。市場の数量は伸びず、同社のシェアも少し下がる。大型店の出店で、近くの既存店と客を奪い合う共食いも起きる。若い客ほどフリマを使うので、客層も高齢に偏っていく。
賃金は物価どおりに上がるのに、販売価格は競争で上げきれない。価格の上昇は物価に届かない。家賃は固定費として残り、売上が伸びない分だけ利益率を削る。
海外とプレミアムサービスの出店は、費用が先に出て回収が遅れる。営業利益率は2%に届かず、純利益は今の半分ほどになる。配当は維持するが、還元の余力は小さい。借入の返済も進みにくい。
- 国内ブックオフ事業(消去・その他を含む):数量 2.4(年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く))× 価格 576(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 1,361 億円・営業利益 57 億円。市場1.0倍×シェア8.3%に低下。価格は物価を下回る
- 成長事業(海外・プレミアムサービス):数量 100(店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定))× 価格 2.23(1店舗あたりの年間売上(億円))→ 売上 223 億円・営業利益 9 億円。店舗100店。収益化が遅れる
倍率:ROE 4.2% は k 8.25% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。利益が半減する構造的な負けの途中なので、上限の約 7 割(9.0 倍)に置いた。
確率:フリマへの流出と人件費の上昇は、すでに起きている構造。国内の利益が前期並みにとどまる会社予想や、成長事業の収益化の遅れも実例で、確率を厚めに置く。
悲観 11% 買取が細り、固定費だけが残る10年 利益 −7 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 543 円95 億円
フリマアプリと新品メーカーの下取りに客と品を奪われ、店の買取が細る。市場の数量は実質で縮み、同社のシェアも落ちる。不正や情報流出でブランドが傷つき、客離れも進む。
販売価格は競争で上がらず、物価を大きく下回る。賃金と家賃は物価で上がり続けるため、固定費が利益を食う。海外は採算が取れず、出店を絞る。
営業利益は赤字に近づき、純利益は赤字になる。配当は性向の方針を保てず、大きく減らす。借入はあるが、営業キャッシュフローで返せる範囲にとどまり、すぐに資金が尽きることはない。優良な小売ではなくなっている。
- 国内ブックオフ事業(消去・その他を含む):数量 1.8(年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く))× 価格 540(1点あたりの平均販売単価(円。物価込み))→ 売上 996 億円・営業利益 30 億円。市場0.9倍×シェア7.2%に低下。価格は物価を大きく下回る
- 成長事業(海外・プレミアムサービス):数量 70.0(店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定))× 価格 2.09(1店舗あたりの年間売上(億円))→ 売上 146 億円・営業利益 2 億円。店舗70店。海外は縮小
倍率:赤字になる筋書きなので PBR で測る。床は事業の稼ぐ力ではなく、商品在庫と敷金・保証金などの資産だが、家賃の約束と借入が残るため、今の自己資本 212 億円の約 0.45 倍(約 95 億円)に置いた。
確率:フリマ・新品メーカーの下取り・不祥事が重なり、買取の入口が細る構造的な負け筋。確度は低いが、不正と情報流出という実例があり、1割ほどは置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ブックオフ事業(消去・その他を含む)
国内の直営店とフランチャイズでの中古の本・衣料・家電・ホビーなどの買取と販売。大型複合店「BOOKOFF SUPER BAZAAR」を含む。
| 数量年間販売点数(億点。国内リユース市場の実質規模 × 当社シェアで増減を置く) | 価格1点あたりの平均販売単価(円。物価込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 2.5 | 450 | 1,144 | 64 |
| 10 年後 中立 | 2.8 | 603 | 1,687 | 88 |
取り方:全社売上1,301億円(2026年5月期)から、プレミアムサービス事業85億円と海外事業72億円を除いた約1,144億円(国内ブックオフ事業1,127億円に消去・その他を含む)を、年間の販売点数 × 1点あたりの平均単価で置いた。点数は約2.5億点、単価は4百数十円と当社が推定した(開示は無い)。将来の点数は、国内リユース市場(自動車を除く、環境省の2024年度調査で約1.28兆円、実質)の伸び × 当社シェア(今は約8.9%)で動かし、単価は物価の指数で動かす。営業利益は国内ブックオフ事業のセグメント利益63.7億円。
成長事業(海外・プレミアムサービス)
米国「BOOKOFF USA」、「Jalan Jalan Japan」など海外店と、ブランド品や貴金属を扱う「hugall」などプレミアムサービスの店。
| 数量店舗数(海外・プレミアムの合計、当社推定) | 価格1店舗あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 90.0 | 1.74 | 157 | 9 |
| 10 年後 中立 | 130 | 2.33 | 303 | 18 |
取り方:海外事業(71.5億円)とプレミアムサービス事業(85.3億円)を合わせた約157億円を、店舗数で割って1店舗あたり約1.74億円と置いた。店舗数約90は、米国20店・Jalan Jalan 8店・加盟店・プレミアムの店を合わせた当社の推定で、会社は開示していない。営業利益は両セグメントの利益(6.9億円と1.6億円)の合計。全社の営業利益44.05億円との差(約28億円)は、本社費などの調整額。
リスクと懸念
利益率の薄さ
営業利益率は3%台で、売上が少し落ちるだけで利益が大きく振れる。人件費と家賃が物価で上がる中、販売価格に転嫁できなければ利益率は下がる。
フリマアプリへの流出
メルカリなどのフリマアプリが、個人どうしの売買で店の買取に入る品を細らせる。特に衣料やホビーなど、写真で売れる品目は影響が大きい。
不正と情報流出
2024年には国内26店舗などで架空の買取による横領が見つかり、業績影響は約6億円。2026年10月には子会社の会員システムへの不正アクセスで最大約643万件の漏えいの可能性が公表された。信頼を失うと、買取の集客力が落ちる。
成長事業の収益化の遅れ
海外とプレミアムサービスは、出店の費用が先に出る。前期は海外の売上が15.8%増えたのに利益は微減で、収益化には時間がかかる。
固定費と新リース会計
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年からの新リース会計では、賃借の約束が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がる。純有利子負債の約148億円は借り換えで利払いが増える。
相場物の在庫リスク
ブランド品や貴金属を扱うプレミアムサービスは、金などの相場の下落で在庫の評価損が出る。比率が高まるほど利益が相場に左右される。
今後の分かれ目
- 大型複合店の出店が計画どおり進み、1店あたりの売上が伸びれば
- 国内の利益率が上がり、本質価値は楽観の筋書きに近づく。
- BOOKOFF USAなど海外が採算に乗れば
- 成長事業の利益が数十億円に育ち、中期目標の経常利益100億円が現実味を帯びる。
- フリマアプリがさらに買取の入口を奪えば
- 国内のシェアが下がり、やや悲観〜悲観の筋書きに近づく。
- 会員情報の漏えいで客離れが起きれば
- 買取と来店が減り、利益率が崩れる。
- 中古品相場や金が大きく下がれば
- プレミアムサービスの在庫評価損が出て、利益が一時的に減る。
- 賃金が物価を上回って上がり続ければ
- 人件費の上昇が価格転嫁を超え、営業利益率が山を超えない。
見ておくもの
- 既存店売上高と買取点数、インバウンドの売上
- 国内ブックオフ事業と海外・プレミアムの営業利益率
- 大型複合店とBOOKOFF USAの出店数と採算
- 不正・情報流出の再発防止と客離れの有無
- 純有利子負債と借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER(約 16 倍)を見て筋書きを作ってはいない。先に国内リユース市場(実質)× シェア × 物価の指数で国内を、店舗数 × 1 店の売上で成長事業を積み、営業利益率は過去の山(3.4%)を上限に置いた。倍率は ROE と資本コスト 8.25% から出した正当化 PER の上限(約 13.7 倍)に近い 13 倍とした(ROE が資本コストを超えるので 1÷k の約 12.9 倍を下回らせない)。結果が大きく割高に出たのは、利益率が薄い小売の 10 年の利益の伸びが年 3〜4% にとどまるためで、今の株価に寄せた結果ではない。店の家賃は営業費用に入れた形で置いており、新リース会計(2028 年 5 月期から BS に載る)の後は営業利益が少し増え、純有利子負債にリース負債が加わるが、ここでは今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→16.11 倍・やや楽観 PER 13.2→15.08 倍・中立 PER 13→13.79 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。