結論
ゲオホールディングスは、いまや「レンタル屋」ではない。稼ぎの柱は中古品を買い取って売るリユースで、売上の6割を占める。2026年10月には社名を「セカンドリテイリング」に変えた。
筆者の結論は、今の時価総額は10年後の価値とおおむね釣り合う、というものだ。ただし割安と言い切れるほどの余裕はない。理由は単純で、利益が薄いからだ。営業利益率は3%、規模が増えても家賃と人件費が同じ速さで増える。
強みは出店の速度にある。今期は国内で100店を開ける計画で、衣料の中古売上は前期に2割近く伸びた。海外は米国・台湾などで100店を超え、2035年度に1,000店という大きな目標を掲げる。ここがうまくいけば、利益は今の2倍を超える。
弱みは、成長の代金を先に払う体質だ。今期は出店と賃上げで営業利益が減る計画で、純利益は3割減を見込む。創業家のオーナー社長が4割強を握り、配当は利益の15%ほどと控えめだ。少数株主の取り分は、会社が育った分だけ増える形になる。
中立の10年後は、売上が8,500億円前後、純利益が160億円前後、ROEは9%弱。そこから割り戻した価値は、今の値段をわずかに上回る程度だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10年後にこの店が客を呼べているか」を考える。古着の流行が去っても、中古で買う習慣は残る、というのが筆者の読みだ。物価が上がる世界では、中古の値打ちはむしろ上がる。この点では、事業の土台は悪くない。
ただし、オーナーとして持ち続けたいかというと、答えは微妙だ。利益率が3%と薄く、資本の稼ぎ(ROE)が資本コストをやっと超える程度だからである。成長の代金を先に払うので、株主に残る利益は見た目より少ない。出店をやめれば利益は一気に増えるが、それは同時に成長の終わりを意味する。
安全域という点では、今の値段は事業の稼ぐ力に近い。10年の見通しを確率で並べても、割安と呼べるだけの余白は小さい。逆に、海外の出店が想定の半分でも、割高とは言えない。
見るべきは、1店あたりの利益と、増えたお金が配当と自社株買いで株主に戻るかどうかだ。ここが変われば評価は動く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、衣料・服飾雑貨を扱う「セカンドストリート」だ。売上は1,552億円で、国内に約900店、海外に100店余りある。買い取った品に手を入れて売るので、新品よりも粗利が厚い。
ゲオの店舗では、中古スマホ、ゲーム、DVD・CDなどを売る。ここにブランド品を扱うラグジュアリー事業を足すと、リユース全体の売上は3,006億円になる。ラグジュアリーは米国の関税で前期にわずかに減った。
新品も売る。Nintendo Switch 2やトレカなどの新品商材が1,243億円ある。新品は定価に近く、利益は薄い。客を店に呼ぶための柱と見るのが実態に近い。
レンタルは251億円まで縮んだ。それでも市場が小さくなる中で、ゲオのシェアは6割を超える。残ったものを独り占めする形で、利益はまだ出ている。ただし毎年1割ほど減っており、主役の座はとうに退いた。
創業から40年。会社は2035年度に連結売上1兆円、5,000店を掲げる。リユースを最重要の事業とし、国内外でセカンドストリートを増やすほか、おお蔵ホールディングスなど傘下の会社で扱う品種を広げる計画だ。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、一言でいえば「出店の腕」だ。中古品は仕入れも値付けも店ごとの目利きが要る。それを1,000店規模の流れ作業に落とし込んだのが、セカンドストリートの強みである。品を買い取るために客が来て、そこで買った客がまた売りに来る。この循環が一度回ると、後発はなかなか追いつけない。
一方で、堀は深くない。古着の流行は移ろいやすい。ブックオフ、トレジャーファクトリー、コメ兵、それにメルカリのような個人間取引が、同じ客を取り合う。競争の相手は店舗ではなく、客の財布と時間だ。
資本効率も光らない。過去10年のROEの中央値は7.6%で、資本コストをやや下回る。営業利益率は3%前後で、景気が少し悪くなるだけで利益が大きく動く。2021年3月期は赤字だった。
経営は創業家のオーナー社長が握る。城蔵屋を通じた持ち分は約4割に及び、共同保有者を含めると46%台になる。意思決定が速く、長期の出店に踏み込める利点がある。半面、少数株主の意向は届きにくい。筆者は、この会社を「よく育つが、少数株主の取り分は薄い会社」と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリユース市場は3兆3千億円前後で、前年比4%台で伸びている。物価高で節約志向が強まり、訪日客が「日本の中古」を目当てに買う。追い風は当面続く。
衣料の中古は、いまいちばん熱い領域だ。ゲオの衣料・服飾雑貨は前期に19.7%増えた。競合のトレジャーファクトリーも売上が4期続けて2割超えで伸びている。ブックオフは売上1,192億円でゲオの規模には及ばない。市場が伸びているので、今は奪い合いにならず、各社が店を増やしている。
ただし店舗数には天井がある。国内のセカンドストリートは1,000店に届きつつあり、その先は1店あたりの売上を伸ばせるかにかかる。同じ街に店を増やせば客を食い合う。だから会社は海外に目を向けた。
海外は、日本のブランド品や古着に値打ちが付く。米国の売上は2022年の約6倍になった。客単価も日本の倍以上という報道がある。ただし関税、人件費、為替で利益はぶれる。
ゲーム・DVD・CDの縮む領域は10年で小さくなる。レンタルは、2017年の市場1,510億円が2022年に562億円まで減った。この領域を守る必要はなく、利益の柱はリユースへ移りきる。
資本政策と M&A
配当は控えめだ。配当性向は15%前後で、自社株買いの実績も見当たらない。稼いだ利益のほとんどを出店に回し、海外の店と在庫に投じている。
財務は、純有利子負債が269億円、自己資本比率は33%。純負債は自己資本の0.3倍で、利息は営業利益で十分まかなえる。ただし店は借りる前提で、家賃は毎年必ず出ていく固定費だ。新リース会計基準が2028年3月期から始まると、貸借対照表に載る負債が膨らんで見えるが、利益の実力は変わらない。
買収は、おお蔵ホールディングスなどブランド品の専門会社を取り込む形で進めてきた。大型の買収で価値を壊した過去は目立たない。
筆頭株主は、遠藤結蔵社長がオーナーの資産管理会社・城蔵屋で、2024年には400万株の公開買付けを発表した。共同保有を含む保有比率は46%台に達する。創業家が自分の持ち分を厚くしてきた形だ。非公開化の確率は、別の推計で10年で2割ほどある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
リユースは、構造的に追い風が吹く数少ない小売りだ。物価が上がるたびに中古の値打ちが増し、環境意識も後押しする。セカンドストリートの衣料は前期に2割近く伸び、新規店が立ち上がるたびに売上が積み上がる。国内は1,000店に届き、客単価も上がっている。
本当の山は海外だ。米国の売上は3年で約6倍になった。日本のブランド品や古着は、現地では日本の3〜5倍の値が付いても売れるという。関税や運賃を引いても十分に利益が出る。出店が今期の国内100店・海外38店からさらに加速すれば、2035年度に海外1,000店は射程に入る。会社が掲げる売上1兆円は、その延長にある。
もう一つは、ゲオの店をリユースの入口に変えることだ。中古スマホ、ゲーム、トレカは、新品の客をそのまま中古の売り手に変えられる。レンタルの縮小は痛いが、全体の1割に満たない。縮む分は新品とリユースの伸びで十分に埋まる。
創業家のオーナー社長は、短期の利益よりも店の数を優先してきた。この姿勢が続けば、利益率が1ポイント上がるだけで純利益は倍になる。今の値段は、その可能性をほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
この会社は、成長のために利益を食いつぶしている。今期は営業利益が減り、純利益は3割減る計画だ。出店が増えるほど、賃上げと家賃が先に出ていく。利益率は3%と薄く、少し客足が鈍るだけで赤字に近づく。2021年3月期の赤字は、その危うさを示している。
競争も厳しくなる。トレジャーファクトリーやコメ兵は同じ客を狙い、メルカリは店を介さずに売り買いを成立させる。古着の流行が一巡すれば、店を増やした分だけ客を食い合う。国内の店はすでに900店を超え、天井が近い。
海外の数字も割り引くべきだ。売上は伸びても、利益が出ているかは開示が乏しい。関税、為替、人件費の高い米国では、日本流の高値売りが続く保証はない。出店先行で、投資が回収できるかの確認はこれからだ。
株主還元は薄い。配当性向は15%前後で、自社株買いもない。持ち分の4割強を握る創業家が、会社の資金をどう使うかは少数株主に決められない。ROEが資本コストをやっと超える会社に、成長の期待だけで高い倍率を付けるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
勝っているのは、慎重な見方だ。リユースの追い風と出店の速度は本物だが、利益率の薄さと家賃・人件費の重さは、今の数字にも将来の数字にも残る。強気の見方が描く「海外1,000店・売上1兆円」は、成長の代金を払い続けた先にある大きな賭けだ。
そのため確率は、中立を最大に置きつつ、やや悲観側に厚めにした。楽観は6%と控えめにし、やや悲観を27%、悲観を11%にした。結果として、10年の価値は今の時価総額とほぼ釣り合う。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,658 円1,853 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 455 円181 億円)。 今の値に割り戻すと 2,414 円961 億円、今との差 +22.4%、 期待の年率 +10.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 10,394 円4,135 億円 | 754 円300 億円 | +465.0% | +18.9% | 669 円266 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,752 円3,084 億円 | 578 円230 億円 | +322.2% | +15.5% | 1,666 円663 億円 |
| 中立 | 36% | 5,110 円2,033 億円 | 478 円190 億円 | +183.2% | +11.0% | 2,012 円800 億円 |
| やや悲観 | 27% | 2,126 円846 億円 | 352 円140 億円 | +25.6% | +2.3% | 669 円266 億円 |
| 悲観 | 11% | 633 円252 億円 | 251 円100 億円 | −55.2% | −7.7% | 97 円39 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,658 円1,853 億円 | 455 円181 億円 | +159.1% | +10.0% | 5,113 円2,034 億円 |
今の株価時価総額 1,973 円785 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外が育ち、売上1兆円の計画に近づく 利益 284 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 10,394 円4,135 億円
海外のセカンドストリートが米国を中心に800店まで増え、1店あたりの売上も物価に沿って伸びる。日本の古着とブランド品が現地で高く売れる構図が10年続き、海外の利益率は6〜7%に乗る。国内は1店あたりの客数を保ったまま店が1,200店台に増え、客単価も物価に沿って上がる。ゲオの店では中古スマホ・ゲーム・トレカの買い取りが定着し、新品の客がそのまま中古の売り手に変わる。レンタルの縮小は新品と中古の伸びで埋まる。売上は1兆円に届き、営業利益率は5%近くに上がる。出店は主に自己資金で賄え、配当と自社株買いも増やせる。
- セカンドストリート(国内):数量 5,312(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.55(客単価(万円))→ 売上 2,932 億円・営業利益 205 億円。件数+70%・客単価+38%
- セカンドストリート(海外):数量 805(年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定))× 価格 3.65(1店あたり年商(億円))→ 売上 2,938 億円・営業利益 191 億円。店舗800・1店あたり年商3.65億円
- ゲオ店の中古・ラグジュアリー:数量 1,017(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 2.07(客単価(万円))→ 売上 2,105 億円・営業利益 88 億円。件数+5%・客単価+38%
- 新品販売・レンタル・その他:数量 6,020(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.40(客単価(万円))→ 売上 2,420 億円・営業利益 44 億円。件数横ばい・客単価+34%
倍率:事業の純利益 284 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.56 倍、時価総額 4,135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の目標(2035年度に売上1兆円・海外1,000店)に近い水準まで海外の出店が進み、利益率も1ポイント改善する筋書き。出店の資金が借入に頼らず賄え、前例の少ない海外出店が続くため、確率は低めの6%に置いた。
やや楽観 20% 国内は着実、海外は半分の出店ペース 利益 223 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 7,752 円3,084 億円
国内は店が1,100店台まで増え、既存店の売上も物価に沿って伸びる。海外は米国と台湾を中心に700店弱まで増えるが、出店の速度は目標を下回る。利益率は国内で6%台、海外で5%台に乗り、全体の営業利益率は4%を超える。ブランド品は米国の関税が落ち着いて回復し、ゲオの中古スマホも新店の併設で伸びる。レンタルは縮み続けるが、全体への影響は小さい。配当性向は少し上がるものの、利益の大半は出店に回る。売上は9,700億円前後、純利益は220億円を超える。国内の客数を支える中古スマホ・ゲームの併設店と、伸びが続く衣料が全体を押し上げる。ただし海外の黒字化が遅れる年は利益が計画より細り、投資の回収は一直線には進まない。
- セカンドストリート(国内):数量 4,750(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.54(客単価(万円))→ 売上 2,584 億円・営業利益 165 億円。件数+52%・客単価+36%
- セカンドストリート(海外):数量 690(年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定))× 価格 3.55(1店あたり年商(億円))→ 売上 2,450 億円・営業利益 135 億円。店舗690・1店あたり年商3.55億円
- ゲオ店の中古・ラグジュアリー:数量 1,182(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 2.04(客単価(万円))→ 売上 2,411 億円・営業利益 92 億円。件数+22%・客単価+36%
- 新品販売・レンタル・その他:数量 5,719(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.40(客単価(万円))→ 売上 2,299 億円・営業利益 34 億円。件数-5%・客単価+34%
倍率:事業の純利益 223 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.83 倍、時価総額 3,084 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の出店は計画どおり進み、海外は目標の6〜7割の速度に落ち着く筋書き。現時点の勢い(衣料の中古が前期に2割近く増収)が数年続く確率を、中立の次に厚く見て20%。
中立 36% 国内は店の数と物価で伸び、海外は着実に育つ 利益 162 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,110 円2,033 億円
国内のセカンドストリートは1,100店台まで店が増え、1店の客数は保ったまま、客単価が物価に沿って上がる。出店の余地が減るにつれ、増え方は年率3%台に落ちる。海外は500店まで増え、米国と台湾が柱になる。国内より利益率は低く、10年後の営業利益率は4%台半ばにとどまる。ゲオの店では中古スマホとゲームが安定して伸び、ブランド品は関税が一巡して戻る。新品は物価並みの価格で数量が少し減り、レンタルは10年で3分の1以下になる。全体の営業利益率は3.5%前後で、今より少し上がるだけだ。配当性向は15〜20%台で、利益の大半は出店と在庫に回る。
- セカンドストリート(国内):数量 4,375(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.54(客単価(万円))→ 売上 2,345 億円・営業利益 141 億円。件数+40%・客単価+34%
- セカンドストリート(海外):数量 500(年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定))× 価格 3.40(1店あたり年商(億円))→ 売上 1,701 億円・営業利益 77 億円。店舗500・1店あたり年商3.4億円
- ゲオ店の中古・ラグジュアリー:数量 1,114(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 2.01(客単価(万円))→ 売上 2,239 億円・営業利益 78 億円。件数+15%・客単価+34%
- 新品販売・レンタル・その他:数量 5,418(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.40(客単価(万円))→ 売上 2,178 億円・営業利益 24 億円。件数-10%・客単価+34%
倍率:事業の純利益 162 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.55 倍、時価総額 2,033 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の店は増え続けるが、1店あたりの客数は横ばい。海外は目標の半分の500店に届く。最近の勢いと、利益率の薄さ・競争が釣り合う筋書きとして、確率はもっとも厚い36%に置いた。
やや悲観 27% 競争と人件費で利益率が上がらない 利益 84 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,126 円846 億円
国内は店数がほぼ頭打ちになり、1店あたりの客数が少しずつ減る。トレジャーファクトリーやコメ兵、メルカリと客を取り合い、買い取り価格が上がって粗利が縮む。価格は物価に追いつかず、客単価は物価の伸びを下回る。海外は250店ほどまでしか増えず、米国の関税と人件費で利益率は2%台にとどまる。ブランド品とスマホは単価が上がらない。賃上げは続き、販管費の重さで全体の営業利益率は2%台半ばに下がる。純利益は100億円に届かず、ROEは5%台と資本コストを割る。配当性向は上がらず、増えた利益のほとんどが店と在庫に消える。
- セカンドストリート(国内):数量 3,688(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.52(客単価(万円))→ 売上 1,918 億円・営業利益 96 億円。件数+18%・客単価+30%
- セカンドストリート(海外):数量 253(年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定))× 価格 3.20(1店あたり年商(億円))→ 売上 810 億円・営業利益 20 億円。店舗253・1店あたり年商3.2億円
- ゲオ店の中古・ラグジュアリー:数量 969(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 1.95(客単価(万円))→ 売上 1,890 億円・営業利益 53 億円。件数±0・客単価+30%
- 新品販売・レンタル・その他:数量 4,816(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.39(客単価(万円))→ 売上 1,878 億円・営業利益 15 億円。件数-20%・客単価+30%
倍率:ROE 5.4%(純利益 84 億円 ÷ 自己資本 1,560 億円)。事業の ROE が資本コスト 8.25% 以下なので、伸びても価値は増えず、PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。ROE が資本コストを割る構造的な低収益のため、やや悲観は上限の 7.2 割の 9.0 倍に置いた。
確率:国内の店が増えた分だけ客を食い合い、家賃と人件費の上昇を売値に転嫁しきれず、利益率が上がらない筋書き。利益率3%・ROE7.6%という過去の実績から見て起こりやすく、確率はやや厚い27%に置いた。
悲観 11% 古着ブームが去り、海外は失敗に終わる 利益 36 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 633 円252 億円
若年層の古着ブームが去り、衣料の買い取りと販売の両方が冷える。店は在庫を値引きして処分し、国内の客数は減る。海外は関税と人件費で赤字が続き、拡大を止めて店の整理に入る。減損と撤退の費用が出て、自己資本は今の水準から減る。ブランド品は個人間取引に客を奪われ、新品ゲームの利益も細る。レンタルは最終的に採算の取れる店だけが残る。売上は4,500億円台で、いまと比べて増えない。営業利益率は1%台に落ち、純利益は40億円を割る。配当は横ばいで、増えるのは在庫の回転が遅くなる分だけだ。客を呼ぶはずの出店が、客を食い合う出店に変わる。創業家は構造を変える決断を迫られるが、配当を増やす余力はなく、株主に残る利益は細る。
- セカンドストリート(国内):数量 3,125(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.48(客単価(万円))→ 売上 1,500 億円・営業利益 60 億円。件数±0・客単価+20%
- セカンドストリート(海外):数量 115(年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定))× 価格 2.80(1店あたり年商(億円))→ 売上 322 億円・営業利益 −3 億円。店舗115・年商2.8億円
- ゲオ店の中古・ラグジュアリー:数量 775(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 1.80(客単価(万円))→ 売上 1,395 億円・営業利益 28 億円。件数-20%・客単価+20%
- 新品販売・レンタル・その他:数量 3,612(年間の会計件数(万件、推定))× 価格 0.36(客単価(万円))→ 売上 1,300 億円・営業利益 5 億円。件数-40%・客単価+20%
倍率:ROE 3.3%(純利益 36 億円 ÷ 自己資本 1,100 億円)。事業の ROE が資本コスト 8.25% 以下なので PER の上限は 1÷k = 12.5 倍。構造的に負けた会社として、上限の 5.6 割の 7.0 倍に置いた。稼ぐ力(純利益÷k)より低い値で、売れる資産の下限は別に置かない。
確率:古着の流行が去り、国内の客数が減り、海外出店が採算割れで止まる、構造的な負けの筋書き。事業がすぐ消える形ではなく、利益が細る形にとどまるため、確率は11%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
セカンドストリート(国内)
衣料・服飾雑貨を中心に、国内約900店で中古品を買い取り販売する中核事業。
| 数量年間の会計件数(万件、推定) | 価格客単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,125 | 0.40 | 1,250 | 75 |
| 10 年後 中立 | 4,375 | 0.54 | 2,345 | 141 |
取り方:セカンドストリート事業の売上1,552億円(国内外)から、海外の推定300億円を引いた約1,250億円を国内とした。客単価は国内の衣料専門店の水準(0.4万円前後)を参考に0.40万円と置き、会計件数は逆算した推定。セグメント利益は開示を確認できていないため、全社の営業利益142億円を売上規模と業態の収益性から按分した推定(利益率6%)。
セカンドストリート(海外)
米国・台湾・マレーシアなどで展開する海外店舗。2035年度に海外1,000店が目標。
| 数量年間の稼働店舗数(店、期中平均の推定) | 価格1店あたり年商(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 115 | 2.61 | 300 | 4 |
| 10 年後 中立 | 500 | 3.40 | 1,701 | 77 |
取り方:海外店舗は2025年に100店を超えており、2026年3月期の期中平均を約115店と置いた。売上は米国の約119億円(2025年3月時点の報道)に台湾・マレーシアなどを足して約300億円と推定し、1店あたり約2.6億円とした。利益は出店費用が先に出るため薄いと見て営業利益率1.5%の推定。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
ゲオ店の中古・ラグジュアリー
ゲオ店舗で扱う中古スマホ・ゲーム・メディアと、ブランド品を扱うラグジュアリー事業の合計。
| 数量年間の会計件数(万件、推定) | 価格客単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 969 | 1.50 | 1,454 | 51 |
| 10 年後 中立 | 1,114 | 2.01 | 2,239 | 78 |
取り方:ゲオ事業の中古商材878億円とラグジュアリー事業576億円を合算した約1,454億円。スマホやブランド品は単価が高いため、加重した客単価を1.5万円と置いて会計件数を逆算した推定。ブランド品は米国の関税で2026年3月期は前期比1.1%減だった。営業利益率は3.5%の推定。
新品販売・レンタル・その他
新品のゲーム機・トレカ・スマホ、PB商品、DVD・CDのレンタルなど。
| 数量年間の会計件数(万件、推定) | 価格客単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,020 | 0.30 | 1,806 | 27 |
| 10 年後 中立 | 5,418 | 0.40 | 2,178 | 24 |
取り方:新品商材1,243億円とレンタル251億円ほか312億円の合計約1,806億円。客単価は0.3万円と置いた推定。レンタルは前期比12.3%減と縮み続ける一方、新品ゲームやトレカは伸びている。営業利益率1.5%の推定(薄利で、レンタルの利益が支える形)。
リスクと懸念
出店先行の利益圧迫
今期は国内100店・海外38店の出店を計画しており、新店の立ち上がり期間の赤字、家賃、賃上げが先に出る。今期の営業利益は減益計画で、出店の速度が利益の伸びを上回る局面が続くと、ROEは資本コストを割ったままになる。
海外事業の採算
米国・台湾・マレーシアなどで店は増えたが、海外の利益は開示が乏しい。関税、為替、人件費の高い米国で、日本流の高値売りが続くかは未確認だ。投資が回収できなければ、減損と撤退の費用が一度に出る。
古着の流行の転換
衣料・服飾雑貨のリユースが今の成長の中心で、前期は2割近く伸びた。若年層の古着ブームが一巡すれば、客数は減り、在庫の値下げが必要になる。仕入れの買い取り価格が高止まりすると、粗利が縮む。
競合とメルカリなど個人間取引
トレジャーファクトリーやコメ兵、ブックオフと客を取り合う。個人間取引は店を介さずに売買が成立するため、買い取りの供給元がそちらへ流れると、仕入れの量と質が落ちる。
レンタルの縮小
レンタル売上は前期に12.3%減り、251億円になった。市場が10年で5分の1ほどになり、ゲオのシェアは6割を超えるが、全体は縮む。固定費の高い店舗でレンタルの利益が減ると、ゲオ店舗の採算が悪化する。
創業家支配と少数株主
創業家が城蔵屋などで4割強、共同保有を含めると46%台を持つ。配当性向は15%前後で、自社株買いも見当たらない。資本配分は創業家の意向に従い、少数株主が口を出す余地は小さい。非公開化の提案があれば、価格の妥当性が問われる。
リースの固定費
店舗の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない。2028年3月期から新リース会計基準で負債が貸借対照表に載ると、見かけの自己資本比率は下がる。悲観では、固定費の重さが利益を直撃する。
今後の分かれ目
- 海外のセカンドストリートが、現地で営業黒字と報じられたり、開示で確認できた場合
- 海外の利益率が国内に近づく見通しが立ち、楽観側の筋書きに近づく。出店速度を上げる根拠にもなる。
- 国内の既存店の売上が前年を割るようになった場合
- 出店で数字を作っていた構図が崩れる。国内は900店を超えており、天井の議論が強まり、やや悲観側に寄る。
- 衣料のリユース市場が伸び悩み、ブックオフやトレジャーファクトリーの伸びが落ちた場合
- 古着ブームの転換が現実になる。買い取り価格の競争が収まれば粗利は戻るが、売上の伸びは止まる。
- 配当性向を30%超に上げる、または自社株買いを始めた場合
- 創業家が少数株主への還元に動いたことになり、株主に残る利益が増える。10年の価値は上向く。
- 創業家側から完全子会社化(非公開化)の提案があった場合
- 少数株主の受取額が、この分析の価値と比べてどうかが焦点になる。
- 米国の関税や為替が悪化し、ブランド品や海外店の採算が崩れた場合
- ラグジュアリー事業と海外事業の利益が同時に落ち、悲観側に近づく。
見ておくもの
- セカンドストリート国内の既存店売上と、国内店舗数の推移
- 海外の店舗数と売上、セグメント利益の開示
- 営業利益率(3%前後から上がるか)と、販管費の伸び
- レンタル売上の減少ペースと、ゲオ店舗の採算
- 配当性向・自社株買い・創業家の持ち分の変化
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額や今のPERは見ずに、セグメントごとに会計件数・店舗数と客単価・1店あたり年商を積み上げ、その時点のROEと資本コストから正当化PERを出した。中立のROEは9%弱で資本コスト(8.0%)をわずかに超えるだけなので、PERは1÷k=12.5倍を下限に、正当化PER13.2倍に近い12.6倍にした。倍率は今の13倍台(予想利益ベース)とたまたま近いが、式から出た値だ。セグメント利益は開示を確認できなかったため、全社の営業利益142億円を按分した推定で、ここが一番の弱点になる。新リース会計基準(2028年3月期から)で営業利益が少し増え、純負債がリース負債の分だけ増える。10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れる形)にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→14.56 倍・やや楽観 PER 12.8→13.83 倍・中立 PER 12.6→12.55 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まり v2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.25%。