結論
魚力は、首都圏の駅ビルや百貨店に鮮魚と寿司の店を出す小売チェーンだ。東京・立川に本社を置き、店は141。魚力が90、九州・中国地方の最上鮮魚が51を受け持つ。筆者の結論は割高。理由は、時価総額の4割を現金が占めるのに、その現金が株主に戻りにくい構造だからだ。
本業は薄利である。2026年3月期は売上436億円、営業利益15.5億円で、利益率は3.6%。2027年3月期の会社予想は営業利益12.1億円と、さらに下がる。仕入れ値の魚価は上がり続け、パートの賃上げも重い。値上げで取り返せない分が利益を削る。
財布は厚い。現金は113億円で、借金はほぼない。ただし筆頭株主の山桂が36.7%を持ち、配当は性向50%を目安に出すが、自社株買いは見えない。利益のうち配当に出さない分は現金に積み上がり、株主の手には渡らない。
10年後の中立は、営業利益18.5億円、純利益15億円。売上は6割ほど増えるが、ほとんどが物価の分だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を5割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は『よい現金を持つが、現金の持ち主が株主ではない会社』だ。
商売の質は並みである。駅ビルに店を持ち、豊洲で買う力はあるが、値決めは弱く、人件費の上昇を吸収する力も薄い。利益率3%台の事業は、魚価が10%上がるだけで半分近くが飛ぶ。ROEは過去10年の中央値で6%、足元7%と、資本コストに届かない。
資本の使い方は、守りに寄っている。配当は気前がよいが、余った現金をどう使うかの方針は示されない。筆頭株主が36.7%を持ち、少数株主が動かせない以上、現金の価値を満額で見ることは難しい。
安全域は、現金そのものにある。有利子負債がほぼなく、悲観の筋書きでも、現金と売れる資産が時価総額の3割弱を支える。ただし、それは悲観の床であって、中立の価値を押し上げない。筆者が知りたいのは、この現金を最上鮮魚や海外へ投じて何を得るかだ。得られる稼ぎが資本コストを超えると示されるまで、評価は上げられない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの9割は小売だ。首都圏のターミナル駅の商業施設、百貨店、スーパーにテナントとして入り、鮮魚と寿司のテイクアウトを売る。1店で常時200〜300品を並べ、客の過半数は女性。仕入れは豊洲市場の卸売業者が中心で、埼玉県魚市場にも一部を移した。養殖のヨンキュウとは資本・業務提携を結んでいる。
2025年3月、持分法の会社だった最上鮮魚の出資を55.8%に高め、連結に入れた。福岡を軸に九州・中国で約50店を持ち、2026年3月期の売上は約62億円。ただし経常利益は0.7億円と薄く、純損益は赤字だ。2025年2月には魚力が福岡・天神の百貨店に2店を出した。
飲食は売上17億円で、寿司店や海鮮居酒屋を営み、2025年12月に丼と定食の『とと市場』を始めた。卸売は子会社の魚力商事が担い、売上36億円。食品スーパー、荷受、商社に売り、ドバイ向けの輸出が伸びている。
海外は、タイの合弁CP-Uorikiが24〜32店を展開する。2024年10月にドバイで水産小売店『The Fishmonger』が開業し、ドバイの食品企業にも1,000万ドルを出資した。
優良さと弱いところ
堀は、あるが薄い。駅ビルの好立地に店を持ち、豊洲で長年の仕入れ関係を築いた。2月のお花見、5月の連休、年末の需要を逃さず取り込む販売の勘は、簡単にまねできない。2025年3月期の既存店売上は前年比102.5%と伸びた。
弱いのは値決めだ。魚価は仕入れ側で決まり、水産物の卸値は今後も上がると会社自身が見ている。2025年3月期の第4四半期は魚価高で客単価が前年を割った。人件費も重い。連結の従業員は708人に対し、臨時雇用が年平均962人と多く、時給の上昇がそのまま利益に響く。
財務は堅い。自己資本比率は77%、有利子負債は2千万円ほど。営業利益率は過去12年で3.2〜4.5%の帯にある。
資本の使い方には疑問が残る。純現金が時価総額の4割に達するのに、事業に回す先は慎重で、ドバイへの出資に16億円近くを充てた一方、最上鮮魚の収益改善は道半ばだ。筆頭株主が36.7%を持つため、少数株主の声が届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
鮮魚の小売は、量が増えない市場だ。国民1人あたりの魚の消費は細り、肉に押されてきた。そこへ魚価の上昇が重なる。温暖化や乱獲で漁獲が不安定になり、輸入も円安で割高になる。客は買う量を減らす。魚力は『売上は増えても客数や買上点数が減る』という小売共通の構図に、魚の事情が上乗せされている。
強みになりうるのは、食卓の外食離れ、つまり内食・中食の需要だ。寿司や刺身の総菜は、スーパーや専門店の中で付加価値が高い。出店先の駅ビルの人流は戻っており、テナント契約の更新が続けば、立地の優位は続く。
競争は2方向からくる。大手スーパーは鮮魚売場に自社の産地直送ルートを持ち、価格で勝負する。もう1つは回転寿司やテイクアウト寿司だ。魚力は店舗網の広さと鮮度で勝負するが、規模の力は大手に及ばない。
M&Aは地方の鮮魚店の後継者難を背景に起こりうる。魚力は最上鮮魚で初めて大きな連結子会社を持った。東都水産との資本提携は2025年3月に解消した。株主構成が安定しているため、買収の対象になる可能性は低い。むしろ、後継者難の鮮魚店を買って店舗網を広げる側に回る場面が増えるかもしれない。
資本政策と M&A
還元は、配当が柱で、配当性向50%を目途に年2回払う。2026年3月期は性向55.7%で、2027年3月期も同額の予想だ。自社株買いの実績は開示から見えない。株主優待は9月末に海産物を送るもので、費用は読めないが年1億円に届かないとみて、10年の還元には別枠で足していない。
現金は113億円。事業に要るのは、買掛金や未払金などの総負債54億円から、売掛金と在庫の約14億円を引いた約40億円とみて、残る約70億円を余った現金として扱う。ただし筆頭株主が3割を超えて持ち、現金は配当に出さない分が積み上がる構造だ。戻り方は半分とみた。
政策保有株は4銘柄で、ヨンキュウ11億円、みずほFG5億円、三菱UFJFG4億円。2026年3月期は投資有価証券の売却収入が73億円と、運用の入れ替えが大きい。ドバイ企業への出資は16億円。
M&Aは最上鮮魚が初の大きな案件で、成果はこれから出る。10年の還元は配当性向52%で置き、自社株買いは見込まない。余った現金は積み上がるものとして、10年後の額を筋書きごとに置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金113億円は、時価総額約300億円の4割弱に当たり、借金はほぼない。この財布の厚さは、不況でも配当を守る力になる。連結化した最上鮮魚は、まだ薄利だが、店舗網を整理すれば利益率が上がる余地が大きい。九州・中国に約50店の足場を手に入れたのは、魚力の首都圏だけでは届かない成長だ。
2027年3月期の4〜6月は、営業利益が18%増え、経常利益は33%増えた。新業態『とと市場』、卸売のドバイ向け輸出、タイの合弁などの種が育てば、中計の売上440億円を超える。魚の需要は健康志向にも支えられ、寿司・刺身の総菜は付加価値が高い。
配当性向は50%を超えており、2年連続で配当を守った。ヨンキュウ、みずほFG、三菱UFJFGなど政策株の売却で現金はさらに厚くなる。支配株主の山桂は、長期の安定株主として経営の継続性を保つ。ドバイへの出資が成功すれば、海外の高い成長を取り込める。人口が減る国内に偏らない収益源を持つことは、中長期の安定にもつながる。
慎重な見方
営業利益は2027年3月期に12.1億円と、前期比で2割減る予想だ。魚価の高騰とパートの賃上げが利益を削り、値上げで取り返すと客単価と客数が合わせて落ちる。2025年3月期の第4四半期にはすでにその兆しが出た。売上436億円のうち、最上鮮魚の62億円は経常利益が0.7億円で、純損益は赤字だ。連結の19%増収は、利益の裏づけが薄い。
現金113億円は、株主の財布ではない。筆頭株主が36.7%を握り、自社株買いは見えず、配当に出さない分は積み上がる。ROEが資本コストに届かないまま現金を抱えるのは、資本の効率が悪いということだ。ドバイへの1,000万ドルの出資は、イラン情勢のリスクがある地域で、本業から遠い。
鮮魚は人口減と魚離れで、構造的に数量が細る。大手スーパーと回転寿司に挟まれ、駅ビルのテナント料や賃上げに耐えられない店は減損の対象になる。2025年3月期にも店舗の減損損失が見通しを上回った。
どちらに重みを置いたか
現金の厚さと配当の安定は強気の見方の足元を固めるが、薄利の本業と、現金が株主に戻らない構造は、慎重な見方を上回る。確率は中立を最も重く置き、強気側と慎重側はほぼ同じにした。計算の結論は割高で、鍵は余った現金を配当や自社株買いで戻すか、成長に投じて資本コストを超えるかだ。魚価の転嫁がどこまで通るかも、確率の動かし方に直結する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,231 円311 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 449 円63 億円)。 今の値に割り戻すと 1,424 円199 億円、今との差 −33.9%、 期待の年率 +2.2%(資本コスト 7.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,530 円493 億円 | 623 円87 億円 | +92.8% | +6.8% | 332 円46 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,945 円411 億円 | 537 円75 億円 | +61.7% | +4.9% | 731 円102 億円 |
| 中立 | 38% | 2,460 円343 億円 | 473 円66 億円 | +36.1% | +3.1% | 1,114 円156 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,529 円214 億円 | 372 円52 億円 | −11.7% | −1.2% | 418 円58 億円 |
| 悲観 | 11% | 537 円75 億円 | 222 円31 億円 | −64.7% | −9.9% | 84 円12 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,231 円311 億円 | 449 円63 億円 | +24.4% | +2.2% | 2,680 円374 億円 |
今の株価時価総額 2,154 円301 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 魚価を価格に載せ、海外と新業態が利益を押し上げる 利益 21 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 3,530 円493 億円
魚価が落ち着き、値上げが客数を落とさずに通る。最上鮮魚の不採算店を畳んで利益率が上がり、福岡など九州の店が根づく。新業態『とと市場』が当たり、ドバイへの輸出は卸売の売上を倍以上に押し上げる。タイとドバイの出資も利益に結びつき、営業利益は27億円、利益率は4%に近づく。余った現金には新しい使い道が示され、評価は資本の効率を認める方向へ変わる。ただ、配当に出さない現金は積み上がり続け、戻り方の不透明さは残る10年になる。
(名目の前提)客単価と賃料以外の費用は物価並みに上がるものとして置き、数量(客数・取扱量)は実質で置いた。減価償却は店舗の設備が小さく、投資は償却と同程度として扱った(設備の更新が建築費の上昇で膨らむ影響は小さい)。
(自己資本の流れ)2026年3月期の純利益13.0億円は投資有価証券の売却益を含むため、起点には2027年3月期の会社予想10.8億円を使った。今の自己資本188億円に純利益の合計を足し、還元(配当性向)を引いて流した。配当に出さなかった分は現金として積み上がるものとして、余った現金の額を筋書きごとに置いた。
- 小売(鮮魚・寿司):数量 1,559(購入客数(万人、推定))× 価格 0.36(万円/人(客単価))→ 売上 553 億円・営業利益 24 億円。数量 1.02 倍・価格 1.42 倍(名目)・営業利益率 4.3%
- 飲食:数量 98.0(来店客数(万人、推定))× 価格 0.32(万円/人(客単価))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。数量 1.40 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 1.2%
- 卸売:数量 0.6(取扱量(万トン、推定))× 価格 138(万円/トン(魚介の混合単価))→ 売上 85 億円・営業利益 3 億円。数量 1.70 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)132 億円。全体の PER 18.94 倍、時価総額 493 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魚価が安定し、最上鮮魚の再編、新業態、ドバイが連続して当たる筋書き。営業利益率が過去の最良(4.5%)に近づく必要があり、重ならないと届かないので 8% に置いた。
やや楽観 21% 最上鮮魚の再編と新業態が計画に近い形で働く 利益 18 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 2,945 円411 億円
最上鮮魚の再編が進み、とと市場は店数を増やす。魚価の上昇は値上げで7割ほど転嫁でき、客数も大きくは落ちない。卸売はドバイ向けで1.6倍に伸びる。営業利益は22億円で、中計の売上440億円は達成する。現金は配当と出資に使い、積み上がりは緩やかだ。ROEは事業の分で見て12%台に乗るが、現金を除かない全体では8%前後にとどまる。成長は物価の分が中心で、特別な伸びは出ない10年になる。
(名目の前提)客単価と賃料以外の費用は物価並みに上がるものとして置き、数量(客数・取扱量)は実質で置いた。減価償却は店舗の設備が小さく、投資は償却と同程度として扱った(設備の更新が建築費の上昇で膨らむ影響は小さい)。
(自己資本の流れ)2026年3月期の純利益13.0億円は投資有価証券の売却益を含むため、起点には2027年3月期の会社予想10.8億円を使った。今の自己資本188億円に純利益の合計を足し、還元(配当性向)を引いて流した。配当に出さなかった分は現金として積み上がるものとして、余った現金の額を筋書きごとに置いた。
- 小売(鮮魚・寿司):数量 1,497(購入客数(万人、推定))× 価格 0.35(万円/人(客単価))→ 売上 524 億円・営業利益 20 億円。数量 0.98 倍・価格 1.40 倍(名目)・営業利益率 3.8%
- 飲食:数量 91.0(来店客数(万人、推定))× 価格 0.32(万円/人(客単価))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。数量 1.30 倍・価格 1.35 倍(名目)・営業利益率 0.8%
- 卸売:数量 0.6(取扱量(万トン、推定))× 価格 136(万円/トン(魚介の混合単価))→ 売上 79 億円・営業利益 2 億円。数量 1.60 倍・価格 1.36 倍(名目)・営業利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)127 億円。全体の PER 17.73 倍、時価総額 411 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の売上 440 億円を達成し、利益率が過去の高めの帯(4%)に戻る筋書き。2024〜2025 年 3 月期に 4% 台を出した実績があり、2 割強に置いた。
中立 38% 売上は物価並みに伸びるが、利益率は3%前後のまま 利益 15 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 2,460 円343 億円
客数は人口減と魚離れで5%ほど減り、客単価は魚価高と値上げで物価を少し上回って上がる。最上鮮魚は店を絞って黒字化し、飲食は新業態で2割伸び、卸売は輸出で5割伸びる。営業利益は18.5億円、純利益は15億円。売上は6割増えるが、ほとんどが物価の分で、利益率は3%前後のままだ。配当性向は52%を保ち、配当に出さない現金は積み上がる。ROEは事業の分で見て10%台だが、全体では6%台。可もなく不可もない小売として、評価が落ち着く。
(名目の前提)客単価と賃料以外の費用は物価並みに上がるものとして置き、数量(客数・取扱量)は実質で置いた。減価償却は店舗の設備が小さく、投資は償却と同程度として扱った(設備の更新が建築費の上昇で膨らむ影響は小さい)。
(自己資本の流れ)2026年3月期の純利益13.0億円は投資有価証券の売却益を含むため、起点には2027年3月期の会社予想10.8億円を使った。今の自己資本188億円に純利益の合計を足し、還元(配当性向)を引いて流した。配当に出さなかった分は現金として積み上がるものとして、余った現金の額を筋書きごとに置いた。
- 小売(鮮魚・寿司):数量 1,452(購入客数(万人、推定))× 価格 0.35(万円/人(客単価))→ 売上 501 億円・営業利益 17 億円。数量 0.95 倍・価格 1.38 倍(名目)・営業利益率 3.3%
- 飲食:数量 84.0(来店客数(万人、推定))× 価格 0.32(万円/人(客単価))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 0.6%
- 卸売:数量 0.5(取扱量(万トン、推定))× 価格 134(万円/トン(魚介の混合単価))→ 売上 73 億円・営業利益 2 億円。数量 1.50 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)122 億円。全体の PER 16.53 倍、時価総額 343 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:魚価高とパートの賃上げが値上げと相殺し、利益率が 3% 台前半で動かない筋書き。過去 12 年の帯(3.2〜4.5%)のうち中央寄りで、最も重く置いた。
やや悲観 22% 魚価高と賃上げで利益率が2%台に沈む 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,529 円214 億円
魚価の高騰が続き、値上げは客数の減少を呼ぶ。パートの賃上げは物価を上回り、店の人手確保のために販管費が重くなる。最上鮮魚の再編は遅れ、減損が出る。営業利益は12億円と、足元の予想水準にとどまり、実質では後退する。卸売は輸出が伸びるが利益は薄い。配当性向は50%に下げ、現金は積み上がる。ROEは事業の分で見ても7%台まで落ち、資本コストを下回る。長く続く減益で、成長のない小売として扱われる10年になる。
(名目の前提)客単価と賃料以外の費用は物価並みに上がるものとして置き、数量(客数・取扱量)は実質で置いた。減価償却は店舗の設備が小さく、投資は償却と同程度として扱った(設備の更新が建築費の上昇で膨らむ影響は小さい)。
(自己資本の流れ)2026年3月期の純利益13.0億円は投資有価証券の売却益を含むため、起点には2027年3月期の会社予想10.8億円を使った。今の自己資本188億円に純利益の合計を足し、還元(配当性向)を引いて流した。配当に出さなかった分は現金として積み上がるものとして、余った現金の額を筋書きごとに置いた。
- 小売(鮮魚・寿司):数量 1,345(購入客数(万人、推定))× 価格 0.34(万円/人(客単価))→ 売上 451 億円・営業利益 11 億円。数量 0.88 倍・価格 1.34 倍(名目)・営業利益率 2.5%
- 飲食:数量 73.5(来店客数(万人、推定))× 価格 0.31(万円/人(客単価))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。数量 1.05 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 0.0%
- 卸売:数量 0.5(取扱量(万トン、推定))× 価格 130(万円/トン(魚介の混合単価))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。数量 1.25 倍・価格 1.30 倍(名目)・営業利益率 1.8%
倍率:事業の ROE 7.1%(余った現金を除く)は資本コスト 7.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る値打ち。PER は 1÷k=12.5 倍まで。薄利の小売で魚価と賃上げに左右されるため、上限の約 8.0 割の 11.12 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.5 で足した。
確率:魚価の高騰が続いて値上げが客数に響き、賃上げも重く、利益率が 2% 台に落ちる筋書き。2027 年 3 月期の会社予想がすでに 2.7% で、強気側と同じ程度に厚く置いた。
悲観 11% 魚離れと大手の攻勢で店が減り、赤字に近づく 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 537 円75 億円
魚離れが進み、大手スーパーの産直ルートと回転寿司に客を奪われる。駅ビルの賃料と賃上げに耐えられない店が次々に閉まり、客数は25%減る。最上鮮魚の再編は失敗し、飲食は赤字、営業利益は1.6億円まで落ちる。ドバイと東南アジアの出資は、情勢の悪化で減損する。配当は性向を守れず減る。残るのは、積み上げた現金と少しの有価証券で、事業の稼ぐ力は評価されなくなる10年になる。
(名目の前提)客単価と賃料以外の費用は物価並みに上がるものとして置き、数量(客数・取扱量)は実質で置いた。減価償却は店舗の設備が小さく、投資は償却と同程度として扱った(設備の更新が建築費の上昇で膨らむ影響は小さい)。
(自己資本の流れ)2026年3月期の純利益13.0億円は投資有価証券の売却益を含むため、起点には2027年3月期の会社予想10.8億円を使った。今の自己資本188億円に純利益の合計を足し、還元(配当性向)を引いて流した。配当に出さなかった分は現金として積み上がるものとして、余った現金の額を筋書きごとに置いた。
- 小売(鮮魚・寿司):数量 1,146(購入客数(万人、推定))× 価格 0.32(万円/人(客単価))→ 売上 367 億円・営業利益 3 億円。数量 0.75 倍・価格 1.28 倍(名目)・営業利益率 0.8%
- 飲食:数量 56.0(来店客数(万人、推定))× 価格 0.30(万円/人(客単価))→ 売上 17 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.80 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 -3.0%
- 卸売:数量 0.3(取扱量(万トン、推定))× 価格 125(万円/トン(魚介の混合単価))→ 売上 41 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.25 倍(名目)・営業利益率 0.5%
倍率:この筋書きは純利益 3 億円で、稼ぐ力を k 7.25% で割ると約 39 億円。売れる資産の税後(現金・有価証券から総負債を引いたもの)約 75 億円のほうが大きいので、床は売れる資産で置き、今の自己資本 188 億円に約 0.40 倍を掛けた。
確率:魚離れと大手スーパー・回転寿司の攻勢で数量が構造的に減り、最上鮮魚の再編も失敗する筋書き。現金の厚さが床になり事業が行き詰まる形は考えにくいため、1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小売(鮮魚・寿司)
首都圏の駅ビル・百貨店・スーパーのテナントで鮮魚と寿司を売る。魚力(90店)と最上鮮魚(51店)の合計。
| 数量購入客数(万人、推定) | 価格万円/人(客単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,528 | 0.25 | 382 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1,452 | 0.35 | 501 | 17 |
取り方:小売の売上 382 億円(2026/03 期)を、客単価 0.25 万円(推定。開示は無い)で割った購入客数 1,528 万人。営業利益 14.4 億円は、全社の営業利益 15.5 億円を小売・飲食・卸売に分けた筆者の推定(セグメント別の開示は読めなかった)。客数は人口減と魚離れで減り、客単価は魚価高と値上げで上がる。
飲食
寿司店、海鮮居酒屋、魚介メインの店、丼と定食の『とと市場』(2025年12月開店)。
| 数量来店客数(万人、推定) | 価格万円/人(客単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.24 | 17 | 0 |
| 10 年後 中立 | 84.0 | 0.32 | 27 | 0 |
取り方:飲食の売上 16.7 億円(2026/03 期)を、客単価 0.24 万円弱(推定)で割った来店客数 70 万人。営業利益 0.1 億円は筆者の推定。新業態の出店で客数は増える。
卸売
子会社の魚力商事が食品スーパー、荷受、飲食店、国内外の商社に販売。ドバイ向け輸出が伸びている。
| 数量取扱量(万トン、推定) | 価格万円/トン(魚介の混合単価) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 100 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 134 | 73 | 2 |
取り方:卸売の売上 36.3 億円(2026/03 期)を、魚介の混合単価 1 トン 100 万円(推定)で割った取扱量 0.363 万トン。営業利益 1.0 億円は筆者の推定。中計は魚力商事の売上 80 億円を目標とし、輸出の伸びで数量が増える。
リスクと懸念
魚価の高騰と漁獲の不安定
水産物の卸値は今後も上がると会社自身が見ており、温暖化や漁獲制限、不漁で仕入れが不安定になる。値上げで取り返すと客数や買上点数が落ち、2025年3月期の第4四半期には客単価が前年を割った。利益率3%台の事業は、魚価10%の上昇で利益が半分近く飛ぶ。
賃上げと人手不足
連結従業員708人に対し、臨時雇用が年平均962人と多い。パートの時給上昇と採用難が続き、販管費が重くなる。2026年3月期の営業利益は微増にとどまり、2027年3月期の会社予想は12.1億円と2割減る。
最上鮮魚の再編の難航
2025年3月に連結した最上鮮魚は、売上62億円に対し経常利益0.7億円で、純損益は赤字。約50店の再編とガバナンス整備が課題で、減損が出る可能性がある。連結の19%増収は、利益の裏づけが薄い。
支配株主と現金の使い道
筆頭株主の山桂が36.7%を持つ。現金113億円は事業に要る分を超えて積み上がっており、配当に出さない分が株主に戻る保証はない。少数株主の声が届きにくい構造が、評価を下げる。
海外出資の不確実性
ドバイの食品企業への1,000万ドル(持分17.5%)、タイの合弁(持分40%)、ドバイの小売店など、海外の出資が増えている。会社自身がイラン情勢をリスクに挙げており、成果が出ないまま減損になる恐れがある。
出店先の条件と大手との競争
店の多くは駅ビルや百貨店のテナントで、賃料や契約条件が変われば採算が崩れる。賃料の金額は開示から読めない。大手スーパーの産直ルートや回転寿司との競争も強い。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の12.1億円を上回り、15億円に近づいたら
- 魚価の転嫁が進んでいるとみて、中立からやや楽観へ確率を寄せる。一時の魚価の安定による回復かを区別する。
- 最上鮮魚の経常利益が1億円を超え、純損益が黒字になったら
- 連結子会社の再編が働き始めたとみて、楽観・やや楽観の重みを上げる。逆に赤字が拡大すれば、減損の可能性を考える。
- 自社株買いや特別配当などで、余った現金を戻す方針が示されたら
- 戻り方を0.5から1.0に近づけて見直す。現金113億円の価値の半分が、株主の側に移る。
- 水産物の卸値が前年比で10%以上上がったら
- やや悲観・悲観の重みを上げる。値上げで客数が落ちるかを、既存店の客数と客単価の推移で確かめる。
- ドバイやタイへの出資で大きな減損が出たら
- 海外展開の失敗とみて、悲観側の確率を上げる。本業から遠い出資の判断を見直す。
- 山桂が持株を売却するなど、筆頭株主に動きがあったら
- 支配構造が変わる合図として、買収の可能性(kabufu の試算で10年内に約17%)と戻り方の見直しを考える。
見ておくもの
- 既存店売上と客数・客単価の月次の推移
- 水産物の卸値(豊洲市場)の前年比
- 最上鮮魚の店舗数と経常利益
- 余った現金(現金から事業に要る分を除く)の水準と、自社株買い・配当の方針
- ドバイ・タイへの出資の成果と減損
- 中計(2024〜2026年度)の売上440億円に対する進捗
倍率と資本コストの決め方
今の株価やPERから筋書きを作らず、客数と名目の客単価、取扱量と単価から売上を積み、部門ごとの営業利益率で利益を出した。倍率は利益ベースで、事業のROE(余った現金を除く)が資本コストを超える中立以上は正当化PERの9割強に置き、やや悲観はROEが下回るので上限の1÷kの8割に置いた。資本コストは基本7.5%に値決めと寿命の+0.5%を足した8.0%。食品スーパーより高いのは、魚価を仕入れ側に決められる点と、支配株主が厚く少数株主に不利な点を反映した。余った現金は事業に要る約40億円を除いた約70億円で、戻り方は支配株主が36.7%を持つので0.5にした。店舗の賃料は開示から読めないが歩合中心とみて、新リース会計の影響は軽いとした。結論は割高。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→18.94 倍・やや楽観 PER 14→17.73 倍・中立 PER 12.8→16.53 倍・やや悲観 PER 10→11.12 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.5% を足した 8.0%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。