結論
吉野家ホールディングスは、牛丼の「吉野家」を日本で1,290店、うどんの「はなまる」を418店、海外を1,035店持つ外食グループだ。ラーメンの買収で第三の柱も狙っている。
筆者の結論は割高である。足元の利益は確かに戻っている。営業利益は81億円から今期予想の100億円まで上がる。それでも売上に対する利益は4%前後と薄く、牛肉・米・人件費の波にいつも削られる。
10年の中立では、営業利益はおよそ170億円、純利益は100億円ほどにとどまる。ROEは8%台で、資本コストをわずかに超えるだけだ。10年先の時価総額は、今の時価総額の半分にも届かない。
強気の材料は2つある。国内の値上げと省人化が効いて、吉野家の利益が48%も伸びていること。ラーメンと海外を伸ばす中計の数字がまだ生きていること。筆者はこの2つを織り込んでも、今の値段には届かないと見る。
悲観側の確率を厚めに置いた。過去10年で、赤字になった年が2回ある(2019年2月期と2021年2月期)。牛丼は利益率が上下に大きく振れる事業だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「利益率が薄く、値決めを市場に握られた事業」だ。オーナー、つまり株主として持ち続けたい会社の条件は、10年後も今より強く、稼いだ利益を賢く使うことだ。吉野家は前者に疑問が残る。
牛丼の1杯の価格は、牛肉と米の相場と、すき家・松屋との横並びで決まる。堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるのは、店の数と、「吉野家」という名前の認知くらいだ。
資本の使い方は評価できる面もある。無配から連続増配に戻し、買収も1件ずつは小さい。ただ、投資の見返りの大きさは、まだ数字に出ていない。ROICの目標が7%で、資本コストと同じ水準にすぎない。
払う値段の安全域はない。今の時価総額は、今期予想の純利益の45倍近い。10年の中立の純利益に今の時価総額を割り戻しても、26倍を超える。事業が悪いのではなく、値段が先に行っている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は4つに分かれる。いちばん大きいのが国内の吉野家だ。売上は約1,500億円で全体の3分の2を占める。
牛丼の1店は1店当たり1.2億円前後を売る。店の数は期末1,290店、中間期末1,287店とほぼ横ばいで、増やしているのは新サービスモデル、つまりタブレット注文と券売機で人手を減らす店舗だ。590店まで増え、全店導入が予定されている。人手を減らせば、深夜の人員が足りなくなる問題にも効く。
2つ目は「はなまる」だ。セルフ式のうどんで、売上は330億円、利益率は7%台と吉野家より高い。値ごろ感が強く、物価高でも客が離れにくい。都市部の小型店「ずずず」を伸ばしている。
3つ目は海外で、売上は約290億円。米国と中国が中心で、米国は食材を自前の工場から送る体制に変え、原価が下がり始めた。
4つ目はラーメンなどの「その他」だ。せたが屋やキラメキノ未来などを買い、麺とスープを作る宝産業も持つ。ラーメンは1店の売上が小さく、数を増やして初めて利益が出る事業だ。2026年7月には、米国のキズキ(シアトルを中心に17店)を、約47億円で70%取得すると発表した。
優良さと弱いところ
吉野家の強みは「早い・安い・うまい」の看板とその認知だ。ただ筆者は、これを他社がまねできない堀とは見ない。牛丼の並盛は、吉野家が競合より4%ほど高いだけだ。客は数%の差で動く。
値決めは市場が決める。牛肉と米の相場が上がれば、値上げで追いかけるしかない。値上げをするたびに客数が揺れる。過去10年に、2019年2月期と2021年2月期の2回、赤字を出している。
効率の面では前進がある。新サービスモデルの店は590店まで増え、人手が減る。海外の食材工場も回り始めた。利益は戻ってきたが、これは「構造が変わった」のか「相場が追い風なだけ」なのか、まだ区別がつかない。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で4%台、今は7%弱にすぎない。経営には、10年で利益率をじわじわ上げてきた実績がある。ただ、買収したラーメンの利益はまだ小さく、再建の途中にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は人口が減る国内で、店の数が頭打ちになった。そのなかで牛丼は、すき家(ゼンショー)、松屋、吉野家の3社がほぼ同じ価格帯で競う。最近は牛肉の高騰を受けて、すき家が2026年7月に並盛を上げ、松屋も10月に上げた。吉野家は据え置いており、競合との価格差は4%ほどまで縮まった。
人件費も重い。最低賃金は毎年上がり、24時間営業の牛丼は夜間の人手に頼る。吉野家は券売機・タブレット・配膳で人手を減らそうとしているが、同じ手は競合も打っている。
うどんはなかなか値上げが通らないが、競合の丸亀製麺(トリドール)が強く、はなまるは価格の安さで差をつけている。うどん店は店ごとの売上が小さく、麺の自家製造とセルフ方式の省人化で利益を守る業態だ。
ラーメンは店が多く、1店の売上が小さい。吉野家の計画する500店は、買収を重ねないと届かない数字だ。街のラーメン店は個人店も多く、チェーン化の余地はあるが、味を保ったまま増やすのは難しい。海外は米国と中国の店が増えているが、現地の競合と人件費の上昇は避けられない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、配当性向は30%前後。2021年2月期の無配から、毎年少しずつ増えてきた。自社株買いは、2026年夏に25億円の枠を置いたが、目的の一部は第三者への自己株の処分に充てることで、純粋な還元とは見にくい。
大きな資本政策は、2011年に伊藤忠商事が持っていた約20%の株を、会社が約140億円で買い取った件だ。以後は支配株主がいない。
中計(2025〜2029年度)では、5年で1,300億円を投資し、うち400億円を買収に使う計画だ。ラーメンの買収が続く見込みだ。買収は、買う値段を間違えると自己資本が減る。筆者はここを一番気にしている。
借金は少なく、純有利子負債は約マイナス40億円(実質無借金)。ただし店は賃借が中心で、家賃は毎年必ず払う約束ごとだ。見かけの財務の強さは、そのぶん割り引いて見る必要がある。
点検済み(2026-10-19):起点の利益、家賃の約束、株数を確かめた。割高に見せる見落としは見つからなかった。
株主優待(現物の還元):年およそ6億円を会社の費用ベースで見込む(500円券を100株で年8枚×優待株主約6万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
吉野家の利益は、国内の値上げと省人化で確かに構造が変わった。国内の吉野家の利益は、2027年2月期の中間決算で48%増、利益率は6.8%まで上がった。新サービスモデル(タブレット注文)は618店まで広がり、全店導入が決まっている。店が省人化すれば、人件費の上昇が続いても利益率は守れる。
はなまるは利益率7%台で、直近は増益が続く。海外は米国のロイヤルティプログラムと食材の自前供給で原価が下がり、利益が6割増えた。
ラーメンは、中計の目標が売上400億円・利益40億円(2029年度)。宝産業の麺とスープを自社で作れる強みがあり、店を増やすほど利益が残る。米国のキズキの買収で、海外のラーメンにも足がかりができた。
中計の最終目標、営業利益150億円は、足元の予想100億円から見て、あと3年で5割増えるだけだ。上方修正の流れを見れば、前倒しもありうる。経営の資本効率の意識は高く、ROIC7%という目標を掲げて、買収も絞っている。
慎重な見方
牛丼は相場の事業だ。牛肉と米が上がれば、値上げで追うしかなく、値上げのたびに客数が落ちる。実際、6月の吉野家の客数は前年の98%、3月の105%から鈍っている。この先の利益の伸びは、値上げが通るかどうかで決まる。
過去を見れば、ここ10年の営業利益率は2%前後で、4%を超えたのは2024年2月期だけ。それが続く保証はない。2019年2月期と2021年2月期には赤字になった(2021年はコロナの影響)。
ラーメンの買収は、買う側の規律が試される。2026年7月のキズキは、17店で47億円。1店当たり約2.8億円と、高い買い物だ。利益が出ないまま、のれんの減損になる恐れがある。
中計の営業利益150億円は、利益率5%。吉野家の歴史で、5%を超えたのは1990年代の話だ。海外の食材工場や省人化の効果は、まだ1年しか確認できていない。
そして今の時価総額は、今期予想純利益の45倍。10年後の利益をどれだけ強く見ても、この値段に届かない。
どちらに重みを置いたか
強い見方は足元の利益の戻りに根拠がある。ただ、10年の中立でも営業利益率は5%に届かず、ROEは8%台。値決めを市場に握られた事業という性格は変わらない。慎重な見方のほうが強いと判断し、やや悲観・悲観の確率を合わせて3割台半ばに置いた。
強い見方の「ラーメンと海外が柱になる」筋書きも、楽観とやや楽観に3割強の確率で入れてある。ただ、その筋書きでも10年後の時価総額は今の水準で、割高をひっくり返すほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,921 円1,245 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 467 円303 億円)。 今の値に割り戻すと 1,184 円767 億円、今との差 −72.3%、 期待の年率 −5.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 4,305 円2,791 億円 | 686 円445 億円 | +16.6% | +1.6% | 449 円291 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,770 円1,796 億円 | 578 円375 億円 | −21.8% | −2.4% | 770 円499 億円 |
| 中立 | 34% | 2,041 円1,323 億円 | 501 円325 億円 | −40.6% | −5.1% | 864 円560 億円 |
| やや悲観 | 23% | 805 円522 億円 | 347 円225 億円 | −73.1% | −12.3% | 265 円172 億円 |
| 悲観 | 11% | 157 円102 億円 | 201 円130 億円 | −91.6% | −22.0% | 39 円26 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,921 円1,245 億円 | 467 円303 億円 | −44.2% | −5.7% | 2,388 円1,548 億円 |
今の株価時価総額 4,279 円2,774 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 計画どおり進み、ラーメンと海外が第三・第四の柱になる 利益 191 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 4,305 円2,791 億円
中計の絵が前倒しで実現する10年だ。吉野家は新サービスモデル(タブレット注文・券売機の省人化)を全店に広げ、1店当たりの人員が減って利益率は7%台に乗る。国内の店数は1,450店まで戻り、値上げも客数を落とさず通る。
はなまるは都市部の小型店「ずずず」で出店を重ね、海外は米国・中国に加えて東南アジアで店を2,400店まで増やす。食材の自前調達(カミッサリー)が効き、海外の利益率は8%を超える。
ラーメンは買収した店を横展開し、800店規模まで伸びる。麺とスープを自社で作る強みで、単品の店より利益が残る。経営は資本効率を意識した買収を続け、買う価格を間違えない。ここまで噛み合えば、売上は4,700億円台に乗る。
株主優待は現物の還元で、年およそ6億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に60億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内の吉野家(牛丼):数量 1,450(国内の吉野家の店数(店))× 価格 1.62(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,345 億円・営業利益 176 億円。店数1450・1店売上の指数1.38・営業利益率7.5%
- はなまる(讃岐うどん):数量 480(はなまるの店数(店))× 価格 1.09(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 523 億円・営業利益 47 億円。店数480・1店売上の指数1.38・営業利益率9.0%
- 海外(吉野家・はなまる):数量 2,400(海外の店数(店))× 価格 0.38(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 911 億円・営業利益 77 億円。店数2400・1店売上の指数1.34・営業利益率8.5%
- ラーメンほか(その他):数量 800(ラーメンほかの店数(店))× 価格 1.19(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 955 億円・営業利益 86 億円。店数800・1店売上の指数1.40・営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 191 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.61 倍、時価総額 2,790 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の2029年度目標(営業利益150億円)を前倒しで超え、その後も店と利益率が伸び続ける必要がある。飲食の利益率7%近くは吉野家の歴史にない水準で、連続して当たる確度は高くない。
やや楽観 23% 値上げと新サービスモデルが効き、利益率が5%台に乗る 利益 133 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,770 円1,796 億円
値上げと省人化が利益率を押し上げる10年だ。国内の吉野家は店数を1,380店とやや増やし、値上げは物価並みに通る。新サービスモデルとタブレットで、客数が細っても人件費の増えを抑えられる。利益率は6%台半ばまで上がる。
はなまるは都市部の小型店を軸に出店を続け、海外は米国のロイヤルティプログラムと食材の自前供給が効いて、店数は1,900店まで増える。ラーメンは買収した店を伸ばすが、中計の計画(2029年度に売上400億円)には少し届かない。
全体の営業利益率は5%台半ば。今の4%前後からの改善は、足元の上方修正と中計の延長で十分説明できる範囲だ。大きな買収の失敗はなく、配当を増やしつつ自己資本が積み上がる。
株主優待は現物の還元で、年およそ6億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に60億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内の吉野家(牛丼):数量 1,380(国内の吉野家の店数(店))× 価格 1.55(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,135 億円・営業利益 139 億円。店数1380・1店売上の指数1.32・営業利益率6.5%
- はなまる(讃岐うどん):数量 450(はなまるの店数(店))× 価格 1.06(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 476 億円・営業利益 38 億円。店数450・1店売上の指数1.34・営業利益率8.0%
- 海外(吉野家・はなまる):数量 1,900(海外の店数(店))× 価格 0.38(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 715 億円・営業利益 54 億円。店数1900・1店売上の指数1.33・営業利益率7.5%
- ラーメンほか(その他):数量 600(ラーメンほかの店数(店))× 価格 1.14(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 686 億円・営業利益 55 億円。店数600・1店売上の指数1.34・営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 133 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.5 倍、時価総額 1,796 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の営業利益が上方修正で100億円まで上がり、国内の値上げ・タブレット導入・海外の原価低減が効いている。中計の延長線上に進む現実的な上振れとして置いた。
中立 34% 国内は横ばい、海外とラーメンが少しずつ積み上がる 利益 102 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 2,041 円1,323 億円
国内は横ばい、海外とラーメンが少しずつ積み上がる10年だ。国内の吉野家は1,320店でほぼ現状を維持し、客数は人口とともに緩やかに細る。値上げは物価を少し下回る程度でしか通らず、1店当たり売上は物価の7割ほどの伸びにとどまる。
はなまるは小型店で430店まで増やし、利益率は7%台半ばを保つ。海外は店を1,500店まで増やすが、1店当たりの稼ぎは国内より小さい。ラーメンは買収で450店まで広がるが、利益率は一桁の前半にとどまる。
営業利益率は5%近くまで上がる。中計の目標(2029年度に営業利益150億円)に近い水準に、10年かけてたどり着く見方だ。それでも自己資本は厚くなり、ROEは8%台にとどまる。
株主優待は現物の還元で、年およそ6億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に60億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内の吉野家(牛丼):数量 1,320(国内の吉野家の店数(店))× 価格 1.52(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,011 億円・営業利益 121 億円。店数1320・1店売上の指数1.30・営業利益率6.0%
- はなまる(讃岐うどん):数量 430(はなまるの店数(店))× 価格 1.06(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 455 億円・営業利益 34 億円。店数430・1店売上の指数1.34・営業利益率7.5%
- 海外(吉野家・はなまる):数量 1,500(海外の店数(店))× 価格 0.37(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 552 億円・営業利益 39 億円。店数1500・1店売上の指数1.30・営業利益率7.0%
- ラーメンほか(その他):数量 450(ラーメンほかの店数(店))× 価格 1.10(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 495 億円・営業利益 35 億円。店数450・1店売上の指数1.29・営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.65 倍、時価総額 1,290 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標は取り込みつつ、客数の細りと牛肉・米の価格の波を織り込んだ中心の筋書き。国内は成熟、伸びは海外とラーメンの店数が受け持つ。
やや悲観 23% 牛肉・米・人件費の上昇に値上げが追いつかない 利益 57 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 805 円522 億円
牛肉・米・人件費の上昇が値上げを上回り続ける10年だ。国内の吉野家は店数が1,250店に減り、並盛の値上げは客離れを呼ぶ。すき家・松屋との価格差が小さくなり、値上げのたびに客数が落ちる。利益率は4%台半ばから動かない。
はなまるは安いうどんの競争に押されて店数は横ばいで、利益率は6%台に下がる。海外は現地の人件費と原価に押されて店数が1,200店で止まり、利益率は5%にとどまる。ラーメンは買収した店の再建に時間がかかり、のれんの重みが残る。
営業利益率は3%台に落ち、自己資本は積み上がっても稼ぐ力はついてこない。ROEは5%前後と、資本コストに届かない状態が続く。
株主優待は現物の還元で、年およそ6億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に45億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内の吉野家(牛丼):数量 1,250(国内の吉野家の店数(店))× 価格 1.48(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,846 億円・営業利益 83 億円。店数1250・1店売上の指数1.26・営業利益率4.5%
- はなまる(讃岐うどん):数量 410(はなまるの店数(店))× 価格 1.01(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 414 億円・営業利益 27 億円。店数410・1店売上の指数1.28・営業利益率6.5%
- 海外(吉野家・はなまる):数量 1,200(海外の店数(店))× 価格 0.35(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 425 億円・営業利益 21 億円。店数1200・1店売上の指数1.25・営業利益率5.0%
- ラーメンほか(その他):数量 350(ラーメンほかの店数(店))× 価格 1.02(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 358 億円・営業利益 18 億円。店数350・1店売上の指数1.20・営業利益率5.0%
倍率:ROE 5.6%(純利益 57 億円 ÷ 自己資本 1020 億円)。ROE が k 8.25% を下回るので、先に出す新しい店の稼ぎは k に届かず、RONIC = k + 1/2 ×(5.6 − 7.75)= 6.7%、g 4.0% から正当化 PER = 10.7 倍。構造的に利益率が下がる筋書きなので、7 割へは引き上げず、上限の 8.0 割 の 8.5 倍に置いた(1÷k は 12.9 倍で、それより低い)。
確率:牛丼は値上げのたびに客数が揺れ、過去10年に、利益が消えて赤字になった年が2回ある(2019年2月期・2021年2月期)。中心より少し重く、1割台後半〜2割台前半の確率を置いた。
悲観 11% 牛丼の稼ぎ頭が崩れ、買収した店も減損で重荷になる 利益 15 億円 · PER 6.8 倍 · 株価時価総額 157 円102 億円
牛丼という稼ぎ頭が崩れる10年だ。牛肉・米の高騰と最低賃金の上昇が重なり、値上げは客数を直撃する。吉野家は不採算店の閉鎖で1,100店まで減り、利益率は3%台に沈む。すき家・松屋・コンビニ弁当との価格競争が続き、値決めの余地がなくなる。
海外は現地競合と原価高で赤字店が増え、店数は800店まで縮む。ラーメンの買収も収益化せず、のれんの減損が自己資本を削る。はなまるも安いうどんチェーンに押されて利益率は4%台に下がる。
株主還元も細り、財務に余裕があるうちに店を畳んで立て直す時間が続く。それでも牛丼とうどんという日常の需要は残るため、事業が消えるわけではなく、小さな利益を出す会社として生き残る。
株主優待は現物の還元で、年およそ6億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 国内の吉野家(牛丼):数量 1,100(国内の吉野家の店数(店))× 価格 1.41(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,547 億円・営業利益 46 億円。店数1100・1店売上の指数1.20・営業利益率3.0%
- はなまる(讃岐うどん):数量 380(はなまるの店数(店))× 価格 0.95(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 360 億円・営業利益 16 億円。店数380・1店売上の指数1.20・営業利益率4.5%
- 海外(吉野家・はなまる):数量 800(海外の店数(店))× 価格 0.33(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 260 億円・営業利益 5 億円。店数800・1店売上の指数1.15・営業利益率2.0%
- ラーメンほか(その他):数量 250(ラーメンほかの店数(店))× 価格 0.94(1店当たり年間売上(億円))→ 売上 235 億円・営業利益 0 億円。店数250・1店売上の指数1.10・営業利益率0.0%
倍率:ROE 2.7%(純利益 15 億円 ÷ 自己資本 560 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 8.5 倍より低い 6.8 倍(その 8 割)に置いた。店とのれんなど売って得る資産の床は別に立てていない(家賃の約束と減損の見込みを引くと残らない)。
確率:牛肉・米の高騰と最低賃金の上昇が重なり、ラーメンと海外の買収も収益化しない複合の筋書き。2019年2月期・2021年2月期に赤字を出した実績があり、1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の吉野家(牛丼)
牛丼の「吉野家」を日本で直営中心に展開する祖業。1,290店。利益の大半を稼ぐが、牛肉・米・人件費の波が直接かかる。
| 数量国内の吉野家の店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,290 | 1.17 | 1,512 | 76 |
| 10 年後 中立 | 1,320 | 1.52 | 2,011 | 121 |
取り方:2026年2月期のセグメント売上 1,512 億円・セグメント利益 76 億円(決算短信)を期末店数 1,290 店で割って、1 店当たり売上を出した。店数は実質の量で、1 店当たり売上は客数×客単価の名目。国内の店数はほぼ横ばい(期末 1,290 店・中間期末 1,287 店)で、中立では 10 年 1,320 店、1 店売上は物価 1.34 倍より少し低い 1.30 倍(人口が減って客数が細るため)に置いた。
はなまる(讃岐うどん)
セルフ式の讃岐うどん「はなまるうどん」。国内418店。吉野家より値ごろ感があり、利益率は7%台。
| 数量はなまるの店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 418 | 0.79 | 330 | 24 |
| 10 年後 中立 | 430 | 1.06 | 455 | 34 |
取り方:2026年2月期のはなまるのセグメント売上 330 億円・セグメント利益 24 億円(利益は前の年より 21% 増)を店数 418 店で割った。大都市圏の小型店「ずずず」で出店を伸ばす方針で、中立では 10 年 430 店。1 店売上は物価並みの 1.34 倍に置く。
海外(吉野家・はなまる)
米国・中国・東南アジアで吉野家とはなまるを展開する。決算は 1〜12 月。1,035店。米国は食材の自前供給で原価が下がっている。
| 数量海外の店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,035 | 0.28 | 293 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 0.37 | 552 | 39 |
取り方:海外セグメントの 2026 年 2 月期(1〜12 月の実績)の売上 293 億円・セグメント利益 20 億円(61% 増)を店数 1,035 店で割った。中立では店は 10 年で 1,500 店(年平均で純増 45 店。直近は出店 111・閉店 74 で純増 37 店)、1 店売上は物価より少し低い 1.30 倍(小型店・新興国の店が増えるため)に置いた。
ラーメンほか(その他)
「せたが屋」「キラメキノ未来」など買収したラーメン店と、麺・スープを作る宝産業、米国のキズキ。第三の柱に育てる計画で、まだ利益は小さい。
| 数量ラーメンほかの店数(店) | 価格1店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 143 | 0.85 | 122 | 6 |
| 10 年後 中立 | 450 | 1.10 | 495 | 35 |
取り方:全社売上 2,257 億円から 3 つのセグメントの合計 2,135 億円を引いた約 122 億円をその他の売上とした(消去を含む推定)。グループの店数 2,886 店から 3 セグメントの店数 2,743 店を引いた 143 店で割った。利益は 2027 年 2 月期第 1 四半期の 1.4 億円・年換算を見て 6 億円と置いた推定。中計はラーメンを 2029 年度に売上 400 億円・利益 40 億円にするが、中立では 10 年で 450 店とその 7 割ほどの利益率で置いた。
リスクと懸念
牛肉・米の相場と値上げの限界
牛丼の原価は牛肉と米が大半を占める。相場が上がれば値上げで追うしかなく、客数が落ちる。競合との価格差が4%ほどに詰まり、これ以上は上げにくい。2026年2月期は原材料の上昇で吉野家セグメントの利益が2%減った。
人件費と人手不足
最低賃金の上昇と深夜の人手不足は、24時間営業の牛丼の利益を直接削る。省人化(タブレット・券売機)で吸収できるかが、利益率が5%に届くかの分かれ目になる。同じ手を競合も打っており、差がつきにくい。
買収の値段と減損
中計は5年で400億円を買収に使うとしている。2026年7月の米キズキは、17店で47億円と、1店当たり約2.8億円。買った店の利益が計画に届かなければ、のれんの減損が自己資本を削る。ラーメンの利益率は今は一桁前半にとどまる。
国内の客数の鈍化
2027年2月期の中間までは値上げと新サービスモデルで増益だったが、6月の吉野家の客数は前年の98%と鈍っている。値上げが通ったあとの客数の戻りが、来期以降の利益を決める。
店舗の賃借と固定費
店舗は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても払う固定の約束だ。純現金に近い財務でも、見かけほど強くはない。2028年2月期から新リース会計基準が始まり、貸借対照表の形が変わる。
海外の収益性
海外は利益が6割増えたが、売上に対する利益は7%弱。現地の競合と人件費の上昇で、閉店も74店出ている。米国の回復が続くかは、ロイヤルティプログラムの定着にかかる。
今後の分かれ目
- 吉野家の既存店客数が前年を数か月連続で割り込んだら
- 値上げの限界に達したとみて、やや悲観・悲観に確率を移す。
- 2027年2月期に営業利益が100億円を超え、2029年度の150億円を前倒しで達成したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。ただし10年で利益率が5%を超えて続くかは別に確かめる。
- ラーメンの利益率が1店ごとの再建で7%を超えたら
- 買収の質を再評価し、中立〜やや楽観に寄せる。
- 買収が高い値段で続き、のれんの減損が出たら
- 資本配分の規律を疑い、やや悲観に寄せる。
- 牛肉の相場が落ち着き、すき家・松屋が値下げに動いたら
- 価格競争が再燃するとみて、牛丼の利益率の前提を下げる。
- 新リース会計基準で貸借対照表が膨らんだら
- 家賃の固定の重さを数字で確かめ、悲観の利益率に反映する。
見ておくもの
- 吉野家の月次の既存店売上高・客数(値上げ後の客数の戻り)
- 中計(2029年度に売上3,000億円・営業利益150億円)の進捗と今期の営業利益
- 新サービスモデルの店数と1店の人員(タブレット全店導入後の人件費率)
- ラーメンの店数・利益率と、買収の値段(1店当たり)
- 海外の既存店売上と閉店数、米国のロイヤルティプログラムの効果
倍率と資本コストの決め方
国内の吉野家・はなまる・海外・ラーメンの4区分で、店数(実質)×1店当たり売上(名目)を積み上げ、自己資本は今の値+期間の純利益−還元で流し(ROEは結果)、RONIC=k 8.25%+1/2×(ROE−k)と長期g 4.0%から正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を出し、その上限の7〜8割に置いた。悲観側は市場の倍率や床のPBRでなく、その筋書きの稼ぐ力(純利益÷k)で置いた。今の時価総額は事業の純利益の45倍近いが、倍率の根拠には使っていない。店舗は賃借中心で、2028年2月期から新リース会計基準で貸借対照表が膨らむが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→14.61 倍・中立 PER 12.9→12.65 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +0.25% を足した 7.75%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。承継・買収・牛肉の相場といった個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.25%。