結論
トリドールは、セルフうどん「丸亀製麺」で稼ぐ会社だ。国内の直営約 900 店が利益の大半を生む。筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額の半分にも届かず、割高というものだ。いちばんの理由は、海外が資本を食い続けていることにある。
丸亀製麺の売上は約 1,370 億円、利益率は 16% ある。注文を受けてから麺を打ち、茹でたてを出す手間が、他社のまねしにくい強みだ。国内 2 位のはなまるうどんは売上が約 330 億円で、差は 4 倍に開いている。
海外は重荷だ。売上は約 1,020 億円あるが、利益率は 5% にとどまる。2025 年 3 月期と 2026 年 3 月期の減損は合わせて約 180 億円になった。英国では買収した Real Greek を、2026 年 5 月に倒産手続きへ入れた。
会社は 2028 年 3 月期に売上 3,330 億円、ROE 9% 以上を掲げる。達成しても、ROE は資本コストのすぐ上でしかない。成長のために積んだ資本は、まだ株主に利益として返っていない。
10 年後の中立は、営業利益が約 310 億円、純利益が約 150 億円だ。国内の堀は残り、海外も黒字が定着する。それでも、この利益に払える値段は今の時価総額の半分に満たない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、丸亀製麺は「持ち続けたい事業」だ。値上げしても客が逃げにくく、再投資の先も国内に残っている。ただ、会社全体としては、オーナーの手元に残る利益が小さい。
株主が受け取れる利益は、見かけの営業利益よりずっと薄い。店と設備に毎年 370 億円ほど投じ、減価償却費は約 300 億円ある。国内の丸亀が稼いだ現金を、海外の店と買収に使う構図が続いてきた。
資本の配分には厳しい目を向けたい。2 年続けて 100 億円規模の減損を出し、買収した英国事業を倒産手続きへ入れたのは、買った値段が高かったことの表れだ。会社が ROE の低さを認めたのは評価できるが、改善はこれからだ。
安全域は乏しい。2027 年 3 月期の会社予想でも純利益は 70 億円だが、時価総額はその 50 倍を超える。国内の堀が 10 年先も健在で、海外も立て直しが成功するとしても、10 年後の利益に払える値段は今の半分に満たない。
わかりやすい事業を長く持つという点では魅力がある。ただし、払う値段が合わない。
何で稼ぐ会社か
トリドールの稼ぎ方は 3 本柱だ。
第一は国内の丸亀製麺で、約 900 店はすべて直営である。粉から麺を打つ工程を店内に置き、できたてを出すのが売り物だ。1 店の売上は年約 1.5 億円で、セグメント利益率は 16% 前後を保つ。売上は 1,370 億円と全体の半分を占める。
第二は国内その他で、約 300 店ある。焼鳥の「とりどーる」、豚カツの「豚屋とん一」、コナズ珈琲などだ。売上は約 400 億円、利益率は 10% ほどになる。創業の焼鳥居酒屋を出発点に、新しい業態を試す場でもある。
第三は海外事業で、882 店のうち直営は 396 店、残りはフランチャイズなどだ。インドネシアと台湾の丸亀製麺、香港の譚仔(Tam Jai)、英国の Franco Manca などが並ぶ。売上は約 1,020 億円、利益率は 5% 台だ。
つまり、利益の質は国内に偏っている。国内 2 本柱が生む利益を、海外の店舗網づくりと M&A が使っていく構図だ。海外は店数こそ増えたが、1 店当たりの売上は国内の 4 分の 3 ほどにとどまる。フランチャイズ店が増えると、取り分は店の売上ではなく手数料になり、1 店の売上はさらに小さく見える。
数字は国際会計基準だ。店の賃借料はすでに借金に近い形で貸借対照表に載っている。2026 年 3 月末の有利子負債は約 1,740 億円で、リース負債を含む。現金は約 700 億円ある。
優良さと弱いところ
丸亀製麺の強みは、手間を売り物にしたことだ。店で麺を打つ作業は、店員の技能と設備を要する。ほかのチェーンが同じことをするには、店ごとに人と機械を置かなければならない。この手間が客の来店理由になり、ロードサイドや商業施設で安定した客数を生んできた。
国内の規模も強みだ。直営約 900 店で、うどん専門のチェーンとしては 2 位の約 2 倍の店数がある。出店の立地選びや店長の育成を、同じ型で回せる。値上げの余地も他社より大きい。2026 年 1 月の値上げでも、釜揚げうどん(並)は 5% ほどの引き上げにとどまった。
弱みは二つある。一つは、利益が丸亀製麺に偏り過ぎていることだ。国内の丸亀が崩れれば、会社全体が崩れる。2026 年 6 月は丸亀の客数が約 1 割減ったと報じられ、天候や値上げの影響を見極める必要がある。
もう一つは、海外の資本の使い方だ。ROE は直近で 2.5% と、資本コストをはるかに下回る。会社自身も、前期の決算で ROE が株主の求める水準を下回ったと認めている。買収と出店で規模を広げたが、稼ぐ力はそれに追いついていない。
創業者の粟田氏は、焼鳥店から世界展開まで一代で築いた。拡大の決断は速いが、失敗した事業の撤退も、この 2 年でようやく動き出した段階だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の外食は、人手不足と物価高の間に挟まれている。人件費は毎年 3〜5% 上がり、食材も上がる。値上げが通る店と、客を失う店とに分かれる局面だ。
うどん専門店は、その中でも勝ち組に近い。丸亀製麺の国内店数は 870 店を超え、はなまるうどんは約 420 店、資さんうどんは約 100 店だ。売上は丸亀が約 1,370 億円、はなまるが約 330 億円である。2 位との差は大きく、国内の「首位」は当面揺らがない。
ただし、国内の店数は 1,000 店あたりで頭打ちになる。丸亀の出店先は、人口の多い地域ではおおむね埋まってきた。伸ばせるのは、1 店の客数と客単価だけになる。客数は人口の減少で増えにくく、値上げの積み重ねに頼る構図だ。
新しい競争相手も出てきた。資さんうどんは、すかいらーくが買収し、全国展開を加速させている。九州の味を持ち込み、うどんの 2 番手争いが再び動く可能性がある。
海外は、国ごとに事情が違う。アジアは、日本食への好感と所得の伸びで追い風だ。インドネシアと台湾で丸亀は 300 店を超えた。一方、英国の外食は人件費が高く、店舗の入れ替わりも激しい。ここで 2 つの業態が立ち行かなくなったのが、今の局面だ。
外食全体の見立てとして、筆者は「店は増やせても、1 店の利益は物価ほど伸びない」と考える。人件費の上昇を、値上げと自動化で吸収し切れるかが、10 年の分かれ目だ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、この会社のいちばんの論点だ。
過去 10 年、成長のために店と M&A へお金を回してきた。丸亀の出店、香港の Tam Jai、英国の Franco Manca と Real Greek がその代表だ。借金も使い、2025 年 3 月期末の純有利子負債は EBITDA の約 2 倍になった。CB(転換社債)や永久劣後ローンなど、資金の出所も多様だ。
結果は芳しくない。直近の ROE は 2.5%で、過去 10 年の中央値は約 5% だ。2025 年 3 月期と 2026 年 3 月期の減損は合わせて約 180 億円にのぼる。会社は 2028 年 3 月期に ROE 9% 以上を目標に置き、海外の不採算事業を選別する。英国の丸亀事業はフランチャイズ先へ譲る方針で、Real Greek は倒産手続きに入った。Tam Jai は 2025 年に完全子会社化し、上場を廃止した。
配当は、純利益の約 2 割を目安とする累進配当だ。2026 年 3 月期の配当総額は約 10 億円にとどまる。自社株買いに積極的ではない。
M&A の枠は 1,000 億円とされ、中計の数字には入れていない。再び買収に動けば、資本効率はまた悪化しうる。筆頭株主は創業者の粟田氏と資産管理会社とされ(比率は未確認)、他社からの TOB は現実味が薄いと筆者は見る。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の営業利益 106 億円に対し中立は物価と出店で伸ばし、純利益÷営業利益は 0.48(少数株主・利払い・税を引いた)、株数は台帳と一致、倍率は ROE と k の式に合っている。
株主優待は株主に渡る現物の配当なので、還元に足した。年の費用は約 2.5 億円(株主約 176,031 人×100 株の年額面 6,000 円×単元以上の割合 0.7×大口の上乗せ 1.3×使われる割合 0.85×原価率 0.3。推定)。10 年で中立 25 億円(続く見込み 1.0)、悲観は 0.5 で 12 億円。費用は販管費に入って利益を既に下げているので、自己資本の流れには足していない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
丸亀製麺は、国内で再現のきかない店舗網をすでに築いた。1 店の売上は約 1.5 億円、利益率は 16% だ。物価が年 3% 上がる世界では、値上げが通る店の利益は名目で自然に伸びる。国内は 10 年で 1.4 倍の売上が見込める。
海外は、悪い数字を出し切る局面に入った。2 年で約 180 億円の減損を計上し、英国の不振な事業を整理した。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、海外の事業利益が過去最高になった。アジアは丸亀の出店余地が大きく、韓国のような新しい国も加わる。
フランチャイズを増やせば、店の投資は取引先が負担し、利益率は上がる。海外の店数が 2,000 店を超えれば、利益率は 10% を超える。
加えて、Tam Jai の完全子会社化で、少数株主に流れていた利益が自社に残る。1,000 億円の M&A 枠は、新しい業態を取り込む余力にもなる。国内の丸亀が稼ぎ、海外が育てば、ROE は 14% に達し、利益の質は大きく変わる。
慎重な見方
この会社の海外投資は、過去に何度も失敗している。2025 年 3 月期と 2026 年 3 月期で、海外の減損は約 180 億円に達した。英国の Real Greek は、買収から日が浅いのに倒産手続きに入った。海外の売上は 2026 年 3 月期に前の期を下回り、利益率は 5% しかない。
国内の丸亀も盤石ではない。2026 年 6 月は客数が約 1 割減り、売上は約 7% 落ちたと報じられた。人件費は毎年 3〜5% 上がり、値上げが客を遠ざけると、粗利は削られる。2027 年 3 月期の第 1 四半期は、営業利益が 3 割以上減った。
店の賃借料はすべて固定費で、借金と同じ重さがある。売上が落ちても家賃は減らない。外食は景気の谷で、国内の客数がさらに落ちやすい。
加えて、1,000 億円の M&A 枠は、また高値の買収に使われるおそれがある。海外の店数を増やしても、1 店の利益が国内の 4 分の 1 では、ROE は上がらない。過去 10 年の ROE の中央値は約 5% で、資本コストを割る年のほうが多い。
どちらに重みを置いたか
強いのは、慎重な見方だ。国内の堀は本物だが、海外の損失と減損が稼ぎを削ってきた。10 年の中立でも、ROE は資本コストをわずかに上回るだけで、倍率は上がらない。
楽観の確率は 8%、やや楽観は 20% に抑えた。悲観とやや悲観は合わせて 4 割とした。海外の立て直しが続くかを、2 年分の減損と倒産手続きが疑わせるからだ。国内の丸亀が崩れる確率は、そこまで高く置いていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,020 円1,776 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 251 円221 億円)。 今の値に割り戻すと 1,083 円952 億円、今との差 −76.4%、 期待の年率 −6.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,954 円5,236 億円 | 483 円425 億円 | +40.1% | +3.4% | 515 円453 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,726 円3,276 億円 | 404 円355 億円 | −10.2% | −1.1% | 826 円726 億円 |
| 中立 | 32% | 2,120 円1,864 億円 | 279 円245 億円 | −47.8% | −6.3% | 768 円675 億円 |
| やや悲観 | 27% | 370 円325 億円 | 134 円118 億円 | −89.0% | −19.8% | 136 円120 億円 |
| 悲観 | 13% | 158 円139 億円 | 48 円42 億円 | −95.5% | −26.7% | 27 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,020 円1,776 億円 | 251 円221 億円 | −50.6% | −6.8% | 2,271 円1,997 億円 |
今の株価時価総額 4,596 円4,041 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 海外が育ち、丸亀の堀も広がる 利益 340 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 5,954 円5,236 億円
国内の丸亀製麺は 1,050 店まで増え、値上げも客数を落とさずに通り続ける。売上は 2,300 億円を超え、利益率は 17% を超える。海外はアジアが主役になり、インドネシアや台湾に韓国が加わって丸亀が広がる。フランチャイズを増やして店の投資を軽くし、海外の店数は 2,200 店に届く。Tam Jai を中心に海外の利益率は 10% を超える。
英国は、丸亀のフランチャイズ化と Franco Manca の再建が進み、損失を出さなくなる。1,000 億円の M&A 枠は、丸亀に続く新しい業態の取り込みに使われ、買収後の立て直しも、これまでより早く進む。
結果として売上は 6,500 億円、営業利益は 600 億円に迫る。ROE は 14% に達し、会社の掲げる 9% を大きく超える。創業者の拡大路線が、初めて資本効率を伴って実を結ぶ 10 年になる。
- 丸亀製麺(国内):数量 1,050(国内の丸亀製麺の店数(店))× 価格 2.20(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,310 億円・営業利益 404 億円。営業利益率 17.5%
- 国内その他:数量 420(国内その他の店数(店))× 価格 1.95(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 819 億円・営業利益 90 億円。営業利益率 11%
- 海外事業:数量 2,200(海外の店数(直営+フランチャイズ、店))× 価格 1.55(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 3,410 億円・営業利益 358 億円。営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 340 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 5,188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の値上げが客数を落とさず通り、海外が黒字を保ったまま 2,000 店を超える、という連続した成功が要る。2 年続けて減損が出ている会社では、確度は高くない。
やや楽観 20% 海外が黒字化し、ROE が 11% へ 利益 235 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 3,726 円3,276 億円
国内の丸亀は 1,000 店まで緩やかに増え、1 店当たり売上は物価並みに伸びる。利益率は 16.5% で安定し、人件費の上昇は値上げと省力化でほぼ吸収する。
海外は 1,750 店まで増える。損失を出していた英国の事業を整理して、アジアを中心とした黒字の店が積み上がる。利益率は 9% 台に上がるが、国内に並ぶほどではない。フランチャイズの比率が高まり、店の投資は軽くなる。
M&A は新しい業態を 1 つ取り込む程度で、規模は小さい。減損は出るが、年数十億円の範囲に収まる。売上は 5,400 億円、営業利益は 440 億円、ROE は 11% になる。会社の目標を数年遅れで達成した形だ。
- 丸亀製麺(国内):数量 1,000(国内の丸亀製麺の店数(店))× 価格 2.14(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,140 億円・営業利益 353 億円。営業利益率 16.5%
- 国内その他:数量 380(国内その他の店数(店))× 価格 1.85(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 703 億円・営業利益 74 億円。営業利益率 10.5%
- 海外事業:数量 1,750(海外の店数(直営+フランチャイズ、店))× 価格 1.48(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 2,590 億円・営業利益 238 億円。営業利益率 9.2%
倍率:事業の純利益 235 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.9 倍、時価総額 3,266 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計に近い想定で、海外の減損が止まり、国内の丸亀が物価並みの値上げを続ける。ただし過去の実績からは、やや楽観でも楽な数字ではない。
中立 32% 国内の堀は残るが、資本効率は平凡 利益 150 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 2,120 円1,864 億円
国内の丸亀製麺は 940 店と、店数がほぼ横ばいで成熟する。1 店当たり売上は物価並みの 1.34 倍に伸び、人件費の上昇は値上げと自動化で追いつく。利益率は 15.5% と、今より少し下がる。
海外は 1,350 店まで増える。アジアの丸亀は伸びるが、フランチャイズ店の割合が増えて、1 店当たり売上は物価ほど上がらない(価格は今の 1.2 倍とした)。英国の整理は終わり、海外の利益率は 8% に改善する。ただし、国内の水準には届かない。
国内その他は 340 店まで増え、新しい業態は 1 つか 2 つ育つ。本社費と、毎年出る小さな減損を引いた営業利益は約 310 億円、純利益は約 150 億円になる。ROE は 8% 台で、資本コストをわずかに上回る。国内の堀は残るが、会社全体の資本効率は平凡なままだ。 株主優待は年およそ 2.5 億円(会社の費用ベースの推定)。続く見込み 1.0 で 10 年 25 億円を還元に足した(費用は利益から引き済み)。
- 丸亀製麺(国内):数量 940(国内の丸亀製麺の店数(店))× 価格 2.08(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,955 億円・営業利益 303 億円。営業利益率 15.5%
- 国内その他:数量 340(国内その他の店数(店))× 価格 1.80(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 612 億円・営業利益 58 億円。営業利益率 9.5%
- 海外事業:数量 1,350(海外の店数(直営+フランチャイズ、店))× 価格 1.40(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,890 億円・営業利益 151 億円。営業利益率 8%。フランチャイズ店が増え、1 店当たり売上は物価ほど伸びず、今の 1.2 倍にとどまる
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.27 倍、時価総額 1,840 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の丸亀が物価並みに伸び、海外が黒字に戻る落としどころ。ただし海外の失敗が 2 年続いた事実を重く見て、やや楽観より厚くは置かなかった。
やや悲観 27% 国内の頭打ちと海外の低採算が続く 利益 50 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 370 円325 億円
国内の丸亀は 900 店と店数が増えず、値上げが客数を削る。1 店当たり売上は物価ほど伸びず、利益率は 12% まで下がる。うどんの 2 番手争いが厳しくなり、資さんうどんなどが商圏を奪う。
海外は店数が 1,000 店に増えるが、利益率は 5% 台にとどまる。英国の整理後も、新しい国の出店が思ったほど利益を生まない。M&A で買った業態は、のれんの減損を毎年のように出す。
店の賃借料と借金の利息は固定費として残り、営業利益は約 130 億円にとどまる。純利益は 50 億円、ROE は 3.5% と資本コストを大きく割る。配当は純利益の 2 割を保つが、成長の資金は借入に頼る。結果として、10 年間の株主の利益は、名目でもほとんど伸びない。
- 丸亀製麺(国内):数量 900(国内の丸亀製麺の店数(店))× 価格 1.95(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,755 億円・営業利益 211 億円。営業利益率 12%
- 国内その他:数量 300(国内その他の店数(店))× 価格 1.65(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 495 億円・営業利益 30 億円。営業利益率 6%
- 海外事業:数量 1,000(海外の店数(直営+フランチャイズ、店))× 価格 1.30(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,300 億円・営業利益 72 億円。営業利益率 5.5%
倍率:ROE 3.5%(純利益 50 億円 ÷ 自己資本 1,424 億円)。RONIC = k 8.25% + 残る割合 1/2 ×(3.5 − 8.0)= 5.75%、g 4.0% から正当化 PER = 7.6 倍。ROE が k を割る会社の PER は 1÷k が上限。海外の稼ぎが低いうえ、堀の持ちも弱く見て、やや悲観は 6.5 倍に置いた。
確率:客数の落ち込み、人件費上昇、海外の減損の連続という、すでに起きている事実の延長にある筋書き。実際に近い現実的な下振れとして、中立に近い確率を置いた。
悲観 13% 丸亀の堀が崩れ、海外も撤退する 利益 −55 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 158 円139 億円
国内の丸亀は、値上げに客が付いてこなくなる。人件費の上昇を転嫁できず、店数は 800 店に減り、利益率は 7% に落ちる。競合のうどんチェーンに加え、牛丼や回転寿司の値ごろ感に客が流れる。
海外は、アジアの店でも、現地の競合に押されて採算が悪化する。英国に続き、他の国でも撤退と減損が相次ぎ、店数は 700 店に縮む。国内その他の新業態も黒字に届かず、整理が進む。
本社費を切り詰めても、営業利益は赤字に沈む。のれんと店舗の減損で、自己資本は大きく削られる。ただし、国内の丸亀の店と麺の技術は残り、他社への事業売却や縮小で、会社は存続する。配当は大きく削られる。 株主優待は縮む前提(続く見込み 0.5)で、還元に 12 億円を足した。
- 丸亀製麺(国内):数量 800(国内の丸亀製麺の店数(店))× 価格 1.75(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 1,400 億円・営業利益 98 億円。営業利益率 7%
- 国内その他:数量 250(国内その他の店数(店))× 価格 1.45(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 362 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 1%
- 海外事業:数量 700(海外の店数(直営+フランチャイズ、店))× 価格 1.15(1 店当たり年間売上(億円))→ 売上 805 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0%
倍率:ROE は赤字でマイナス。稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k)はほぼ 0 とみて、今の自己資本 924 億円に対する PBR 0.15 倍で測った。店舗や設備を売っても、リース込みの純有利子負債約 1,040 億円を引くと残りが小さく、売れる資産の床は立てない。谷の年の利益で測る倍率は使っていない。
確率:国内の客数の落ち込みが構造的になり、海外の撤退が重なる複合の筋書き。事業が消えるわけではないが、個社の優位が失われる 10 年は、外食では珍しくない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
丸亀製麺(国内)
国内の丸亀製麺。直営約 900 店で、店内で麺を打つ、できたてのセルフうどん。
| 数量国内の丸亀製麺の店数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 885 | 1.55 | 1,372 | 220 |
| 10 年後 中立 | 940 | 2.08 | 1,955 | 303 |
取り方:2026 年 3 月期のセグメント売上 1,372 億円を、期末の店数(推定約 885 店。2025 年 3 月末 861 店、2027 年 3 月期第 1 四半期末 899 店)で割って 1 店当たり売上を出した。セグメント利益 220 億円は本社費と減損の前の数字。先の 1 店当たり売上は、物価の 1.34 倍に置いた。客数(1 店当たり)は人口に沿って横ばい。
国内その他
とりどーる・豚屋とん一・コナズ珈琲など、国内の丸亀以外の業態の集まり。
| 数量国内その他の店数(店) | 価格1 店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 295 | 1.34 | 396 | 42 |
| 10 年後 中立 | 340 | 1.80 | 612 | 58 |
取り方:2026 年 3 月期のセグメント売上 396 億円を、店数(推定約 295 店。2027 年 3 月期第 1 四半期末 299 店)で割った。新業態の出店が混ざるため、先の 1 店当たり売上は物価並みの 1.34 倍に置いた。
海外事業
インドネシア・台湾の丸亀製麺、香港の譚仔、英国の Franco Manca などの海外事業。
| 数量海外の店数(直営+フランチャイズ、店) | 価格1 店当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 870 | 1.17 | 1,019 | 53 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 1.40 | 1,890 | 151 |
取り方:2026 年 3 月期のセグメント売上 1,019 億円を、店数(推定約 870 店。2027 年 3 月期第 1 四半期末 882 店で、直営 396・フランチャイズ等 486)で割った。フランチャイズ店は取り分が手数料中心で売上が小さく、店に占める比率が増えるため、先の 1 店当たり売上は物価並みの 1.34 倍より低く置いた。
リスクと懸念
丸亀製麺の客数の落ち込み
利益の大半を生む丸亀で、2026 年 6 月に客数が約 1 割減ったと報じられた。値上げの積み重ねが客を遠ざけているのか、一時的な要因なのかが見えない。国内の店数は頭打ちで、客数が戻らなければ利益は伸びない。
海外の損失と減損の連続
海外では 2025 年 3 月期と 2026 年 3 月期で減損が約 180 億円に達した。英国の Real Greek は 2026 年 5 月に倒産手続きに入った。立て直しが続かなければ、のれんと店舗の減損が再び出て、自己資本を削る。
人件費の上昇
外食は人件費の比率が高く、最低賃金は毎年上がる。丸亀は店内で麺を打つため、必要な人手が他社より多い。自動化と値上げで吸収し切れないと、利益率は 16% から削られる。
M&A での再びの資本の毀損
1,000 億円の M&A 枠は、中計の数字に入っていない。新しい業態の買収が、Franco Manca や Real Greek と同じ道をたどれば、ROE は再び資本コストを割る。買収の高値づかみは、この会社の繰り返してきたリスクだ。
固定費としての家賃と借金
店の賃借料は、リース負債として貸借対照表に載っている。2026 年 3 月末の有利子負債は約 1,740 億円で、現金は約 700 億円だ。売上が落ちても家賃は減らず、景気の谷では、この固定費が利益を一気に押し下げる。
創業者への依存
創業者の粟田氏の判断が、拡大の速度を決めてきた。意思決定が速い反面、失敗した事業の見直しが遅れやすい。経営体制の移行や後継の姿は、現時点で確かめられていない。
今後の分かれ目
- 丸亀製麺の既存店客数が 2 年続けて前年を下回るなら
- やや悲観・悲観の重みを上げる。値上げの限界か、競合の台頭かを見極める。
- 海外の事業利益が黒字を保ち、利益率が 8% に近づくなら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。減損の連続が止まった証拠になる。
- 2028 年 3 月期に売上 3,330 億円・ROE 9% 以上を達成するなら
- 中立の ROE を上げる材料になる。ただし、達成しても資本コストのすぐ上である点は変わらない。
- 1,000 億円の M&A 枠を使い、大きな買収が出るなら
- 資本効率の悪化を想定し、やや悲観側に寄せる。買収額と利益の見通しを確かめる。
- うどん 2 位以下(はなまる・資さんなど)が出店を加速するなら
- 丸亀の店当たり客数に下押し圧力がかかる。中立の客単価の伸びを見直す。
見ておくもの
- 丸亀製麺の既存店客数・客単価の月次(国内の頭打ちの確認)
- 海外の事業利益と減損の有無(2027 年 3 月期の通期)
- 中期経営計画(2028 年 3 月期)の進捗と ROE の目標(9% 以上)
- 英国事業の整理(Real Greek・丸亀英国のフランチャイズ化)の結末
- M&A 枠(1,000 億円)の使い方と、配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに店数(実質)× 1 店当たり売上(名目)を置き、利益率は国内の丸亀 15.5%・海外 8% と、構造から置いた。純利益は営業利益に金融費用と税の比(約 0.48)をかけて出し、自己資本は今の値に純利益の合計を足して還元を引いた。倍率は RONIC と g から正当化 PER を出し、上限の割合で置いた。中立は ROE が k を少し上回るため、PER の下限 1÷k に置いた。今の株価や過去の PER は使っていない。数字は IFRS の今と同じ形(家賃が借金に載る形)にそろえ、2028 年 3 月期の新リース会計の影響は受けない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→15.26 倍・やや楽観 PER 13→13.9 倍・中立 PER 12.5→12.27 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality 0.5% を足した 8.0%。同じ領域で借金のあるすかいらーくと並ぶ水準。海外 M&A の失敗や創業家主導の拡大は k に足さず、やや悲観・悲観の確率で表した。赤字は続いておらず、上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.25%。