結論
買取王国は、名古屋を地盤に郊外で中古品の買取と販売をする会社だ。古着、ホビー、ブランド品を扱う総合店に加え、ここ数年は職人の工具を扱う「工具買取王国」を急いで増やしてきた。筆者の結論は「適正からやや割安」だ。売上は48か月続けて過去最高を更新し、ROEは10%台で資本コストを上回る。
稼ぎの仕組みは単純だ。客から品物を買い取り、手入れをして店に並べる。仕入れの値段を自分で決められるので、粗利は売上の半分を超える。工具は職人が道具を買い替える時に売りに来るので、フリマアプリに流れにくい。この専門店の型を店の数で積めるかが、10年の価値を決める。
弱みは二つある。店のほとんどを借りていて、家賃は売上が落ちても減らない。そして創業家の資産管理会社が3分の1超を持ち、配当性向は1割にとどまる。それでも、出店で利益を伸ばす力は値段に十分には織り込まれていない。
10年の中立の姿で積み上げると、今の時価総額を1割ほど上回る価値になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすく良い事業だ。中古品の買い取りと販売は、景気が悪いほど客が増える。工具の専門店は、同じ型を何十店と増やせる単純な仕組みで、1店ごとの稼ぎも確かめやすい。
オーナーとして見ると、再投資の筋は良い。利益のほとんどを新しい店に入れ、その店が資本コストを上回って稼ぐ限り、価値は積み上がる。今の会社はその段階にある。ROEが10%台を保ちながら売上が年1〜2割伸びているのは、再投資がうまく回っている証拠だ。
気になるのは二つだ。一つは家賃で、店がほぼ借り物なので、悲観の年にも固定費が残る。もう一つは創業家の支配で、利益の使い道は少数株主の声では決まらない。
値段については、出店が続く限り安全域は少しある。筆者が見方を変えるのは、既存店の売上が前年を割り続けた時か、新しい店の利益率が今の店を大きく下回り始めた時だ。
何で稼ぐ会社か
事業はリユースの店の一本だ。2026年2月期の売上93億円のうち、古着などのファッションが38億円、工具が19億円、ホビーが15億円、ブランド品が9億円だった。
店は2026年2月末で直営78店ある。総合リユースの「買取王国」が27店、工具の専門店「工具買取王国」が30店で、ほかに家具や家電の「良品買館」、古着の「マイシュウサガール」、貴金属の「買取七福」などがある。工具買取王国には別にフランチャイズが6店ある。店は愛知、岐阜、三重など東海が中心で、関西や関東へも少しずつ広げている。
稼ぎ方は、買い取りの値段を店で決め、手入れをして売る差額だ。ファッションやホビーは流行で値段が変わるので、店ごとに仕入れの目利きが要る。工具は電動ドリルや測定器など職人の道具で、型番で値段が決まり、品質も確かめやすい。建設や設備の職人が多い郊外では、仕入れも買い手も安定している。
費用の柱は人件費と家賃で、年間の家賃は約7.8億円だ。店はほぼすべて借りており、家賃は売上の8%を超える。
買い取った品の一部はネットでも売り、店の在庫を全国の客に見せている。
優良さと弱いところ
優良さの芯は仕入れの力にある。中古品の商売は、売るより買うほうが難しい。地域で長く店を構え、買い取りの客を集め続けてきたことが、この会社の強みだ。粗利率は5割を超える。
工具の専門店は、とくに筋が良い。職人の工具は値段が高く、壊れにくく、型番で相場が決まる。フリマアプリでは送料と手間がかかり、すぐ現金にしたい職人は店に持ち込む。同じ型の店を短い期間で何十店と開けるのも強みだ。
ROEはこの3年、10%を超えている。ただし営業利益率は5%台で、過去の山の9%には届かない。売上の伸びに比べて、利益の伸びは出店の費用で鈍る。
堀、つまり他社がまねできない強みは普通の水準だ。ブックオフやトレジャー・ファクトリー、ハードオフも工具や専門店に手を広げている。地域での知名度と仕入れの目利きは本物だが、全国の大手を寄せつけない壁ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のリユース市場は2024年に3兆円を超え、15年続けて伸びた。物価が上がる中で、新品より安く買いたい人と、使わない物を現金にしたい人の両方が増えている。政府も2030年に4兆円台を目指す。中古品は不況でもむしろ売れやすく、景気の波に強い商売だ。
一方で、最大の競争相手は店ではなくフリマアプリだ。メルカリは衣料やホビーで個人どうしの売買を広げ、店の買い取りの一部を奪った。店の側は、すぐ現金になる手軽さと、査定の安心感で対抗している。大型の家具や工具のように、送るのが面倒な品は店の出番が残る。
同業ではブックオフ、トレジャー・ファクトリー、ハードオフ、ゲオのセカンドストリートが全国に店を広げる。どこも専門店の型を増やしており、工具でもハードオフや専門のチェーンとの競争がある。10年の中立では、市場の数量は年1〜2%伸び、値段は物価並みに上がると見る。買い取りの値段も物価で上がるので、利益の額は数量と店の数で決まる。人件費の上昇は、手入れや値付けの仕事を軽くする仕組みで吸収できるかが分かれ目だ。
資本政策と M&A
配当は年1回で、2027年2月期も少し増やす予定だ。配当性向は1割で、利益の大半は出店と在庫に回る。株主優待はアプリのポイントと買い取りの上乗せ券で、額は小さい。
財務は手堅い。現金15億円に対し借入は18億円で、借金はほぼ現金と見合う。新しい店の出店は利益と借入でまかなっている。自社株買いの実績はほとんど無い。
大株主は有限会社カルチャービジネスで、持株は36%だ。長谷川姓の個人の持分を合わせると4割を超え、経営の行方は創業家の側が決める。買収の標的にはなりにくいが、同業の大手との資本提携や、創業家による非公開化が選択肢に上る可能性はある。少数株主にとっては、還元が薄いまま利益が社内にたまる点が弱みだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
成長の型ができている。工具買取王国は30店まで増え、2027年2月期も7店を出す。職人の工具は値段が高く、型番で相場が決まり、フリマアプリに流れにくい。全国の郊外には職人が多い町がいくらでもあり、店を100店に増やす余地は十分ある。
既存店も伸びている。2026年度の上期は既存店の売上が前年を5%余り上回った。物価が上がるほど、中古品を買う人と売る人の両方が増える。売上は48か月続けて過去最高を更新した。
利益率にも伸びしろがある。会社は売上高経常利益率10%を長期の目標に掲げる。新しい店が育てば、本社の費用は売上に対して軽くなる。今の利益率5%台が7%台に上がるだけで、利益は1.5倍になる。
それでいて、時価総額は会社予想の純利益の10倍に満たない。ROEが10%を超える成長企業の値段としては安い。
景気が悪くなっても、節約の客と現金が欲しい売り手が増えるので、店はむしろ忙しくなる。下値の固い成長企業だ。
慎重な見方
利益は売上ほど伸びていない。売上は3年で6割増えたが、営業利益率は2024年2月期の7%台から5%台に下がった。出店の費用と人件費が先に出て、新しい店の稼ぎがそれを追いかけている。
家賃は重い。78店のほぼすべてを借りており、年間の家賃は7.8億円で営業利益を上回る。売上が1割落ちても家賃は変わらず、利益は一気に消える。
競争も強まっている。ブックオフ、トレジャー・ファクトリー、ハードオフ、セカンドストリートは全国で店を広げ、工具にも手を出している。メルカリは衣料やホビーで個人の売買を広げ、店の買い取りの一部を奪う。東海の外では知名度も無い。
そして創業家の支配だ。配当性向は1割で、自社株買いの実績もほとんど無い。たまった利益が株主に戻る道は細い。
今の値段は、出店がこの先も順調に続くことをある程度前提にしている。成長が鈍った時の下値は浅くない。会社予想の利益の10倍という値段は、利益率が下がり続ける会社にとって決して安くない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。工具の専門店という勝ちパターンができ、既存店も伸び、ROEは資本コストを上回る。家賃の重さと利益率の低下は本物の懸念だが、店を増やす力そのものを否定するものではない。確率は中立に3.6割、楽観側に3.2割、悲観側に3.2割を置いた。景気に強い商売なので、悲観の深さは小売の中では浅めに見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,525 円93 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 174 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 1,233 円45 億円、今との差 +15.1%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,663 円172 億円 | 271 円10 億円 | +360.7% | +16.5% | 493 円18 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,687 円136 億円 | 271 円10 億円 | +269.6% | +14.0% | 871 円32 億円 |
| 中立 | 36% | 2,782 円103 億円 | 163 円6 億円 | +174.9% | +10.6% | 1,060 円39 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,132 円42 億円 | 109 円4 億円 | +15.8% | +1.5% | 261 円10 億円 |
| 悲観 | 11% | 81 円3 億円 | 54 円2 億円 | −87.3% | −18.7% | 15 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,525 円93 億円 | 174 円6 億円 | +152.1% | +9.7% | 2,700 円100 億円 |
今の株価時価総額 1,071 円39 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 工具の専門店が全国の型になる 利益 13 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,663 円172 億円
工具買取王国は関西と関東の郊外で当たり、10年で直営100店になる。職人の町はどこにでもあり、同じ型の店を年7店ずつ開け続ける。1店あたりの売上も、品ぞろえの厚みで物価を少し上回って伸びる。
総合店も古着とホビーで専門化が進み、70店まで増える。ネットで買い取りを受け付け、店で受け取る仕組みが根づく。本社の費用は売上に対して軽くなり、営業利益率は会社の目標に近い7%台に乗る。
売上は今の2.5倍を超え、営業利益は18億円に達する。ROEは12%台に上がる。配当は少しずつ増えるが、利益の多くは出店に回る。同業の大手が提携や買収を持ちかける可能性も高まる。
- 工具の専門店:数量 100(直営店の数(店))× 価格 0.90(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 8 億円。100店×1店あたり1.39倍、利益率8.5%
- 総合・ファッションなどの店:数量 70.0(直営店の数(店))× 価格 2.15(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 151 億円・営業利益 11 億円。70店×1店あたり1.4倍、利益率7%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.69 倍、時価総額 171 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工具の専門店が東海の外でも同じ稼ぎを出し、総合店も伸びる姿。出店の速さと利益率の両方がそろう必要があるので1割。
やや楽観 22% 出店が続き利益率も少し戻る 利益 10 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 3,687 円136 億円
工具買取王国は年5〜6店ずつ増え、10年で直営85店になる。東海で固めた後、関西と関東の郊外に広げる。総合店は古着やホビーの専門店に入れ替えながら62店まで増える。1店あたりの売上は物価並みに伸びる。
新しい店が3〜4年目に入って稼ぎ始め、営業利益率は6%台後半に戻る。2024年2月期の7%台に近い水準だ。売上は今の2倍を超え、営業利益は14億円台になる。
配当性向は1割余りのままで、利益は出店と在庫に回る。ROEは11%前後で資本コストを上回り続ける。家賃は増えるが、売上の伸びがそれを吸収する。
- 工具の専門店:数量 85.0(直営店の数(店))× 価格 0.88(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 75 億円・営業利益 6 億円。85店×1店あたり1.36倍、利益率8%
- 総合・ファッションなどの店:数量 62.0(直営店の数(店))× 価格 2.10(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 130 億円・営業利益 8 億円。62店×1店あたり1.36倍、利益率6.5%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.35 倍、時価総額 132 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今の出店の速さが続き、新しい店が育って利益率が過去の良い年に戻る姿。既存店も伸びているので中立の次に厚い。
中立 36% 工具の店を積み、利益率は横ばい 利益 8 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,782 円103 億円
工具買取王国は年4店ずつ増え、10年で直営70店になる。東海の外では知名度が無く、新しい店の立ち上がりは東海より遅い。総合店は入れ替えを重ね、55店で落ち着く。1店あたりの売上は実質で横ばいで、値段は物価並みに上がる。
人件費と家賃も物価で上がるので、営業利益率は6%前後で横ばいだ。売上は今の1.9倍、営業利益は11億円前後になる。フリマアプリは衣料とホビーで買い取りの一部を奪うが、工具と大型品が穴を埋める。
配当性向は1割で、利益の大半は出店に回る。ROEは9%台で、資本コストをわずかに上回る。株主の価値は、店の数が増える分だけ着実に積み上がる。
- 工具の専門店:数量 70.0(直営店の数(店))× 価格 0.87(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。70店×1店あたり1.34倍、利益率7%
- 総合・ファッションなどの店:数量 55.0(直営店の数(店))× 価格 2.06(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 113 億円・営業利益 7 億円。55店×1店あたり1.34倍、利益率5.8%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.79 倍、時価総額 96 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は続くが速さは落ち、利益率は今の水準に少し上乗せする程度の姿を中心に置いた。
やや悲観 21% 出店が鈍り利益率が下がる 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,132 円42 億円
工具の専門店は大手のチェーンも手がけるようになり、新しい店の買い取りが思うように集まらない。出店は年2店に落ち、工具買取王国は50店で止まる。総合店は衣料とホビーの買い取りがフリマアプリに流れ、採算の悪い店を閉じて45店に減る。
1店あたりの売上は物価に届かない。人件費と家賃は物価で上がるので、営業利益率は4%前後に下がる。売上は今の1.3倍、営業利益は5億円前後で、今とほとんど変わらない。
会社は残り、配当も続くが、利益は伸びない。ROEは5%台に下がり、資本コストに届かない。たまった利益は帳簿に積もるだけになる。
- 工具の専門店:数量 50.0(直営店の数(店))× 価格 0.82(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円。50店×1店あたり1.27倍、利益率5%
- 総合・ファッションなどの店:数量 45.0(直営店の数(店))× 価格 1.85(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 83 億円・営業利益 3 億円。45店×1店あたり1.2倍、利益率3.5%
倍率:ROE5.2%がk8.5%を下回るので、PERの上限は1÷kの12.5倍。稼ぐ力(純利益÷k)を基本に、伸びの無い利益の質を見て10倍。
確率:大手の専門店とフリマアプリに押され、新しい店が育たない姿。利益率がすでに下がっているので2割を置いた。
悲観 11% 買い取りが細り家賃が残る 利益 0 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 81 円3 億円
フリマアプリが工具や大型品の配送まで手軽にし、職人も個人で売るようになる。大手のリユースチェーンは東海にも店を増やし、買い取りの値段を競り上げる。仕入れが細り、店に並ぶ品が薄くなる。
会社は出店をやめ、採算の悪い店を閉じる。それでも家賃は契約の残る間払い続け、閉店の費用もかさむ。1店あたりの売上は物価を下回り、営業利益率は1%台に沈む。
赤字ではないが、利益はほとんど残らない。創業家は非公開化や同業への売却を考えるが、伸びない会社に高い値段は付かない。
株主に残るのは、細った稼ぎと小さな配当だけだ。
- 工具の専門店:数量 35.0(直営店の数(店))× 価格 0.78(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。35店×1店あたり1.2倍、利益率2%
- 総合・ファッションなどの店:数量 40.0(直営店の数(店))× 価格 1.70(1店あたりの年間売上(億円))→ 売上 68 億円・営業利益 0 億円。40店×1店あたり1.1倍、家賃が残り収支とんとん
倍率:ROE1%未満で資本コストに遠く届かない。帳簿は床にならないので稼ぐ力(純利益÷k)で置き、やや悲観と同じ10倍以下に抑えた。在庫と敷金は家賃の約束と閉店の費用で目減りし、少数株主が清算の値段を受け取れるわけでもないので、売れる資産の床は置かない。
確率:店の買い取りがアプリと大手に大きく奪われる構造的な負け。景気に強い商売なので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工具の専門店
職人の電動工具・測定器などを買い取って売る「工具買取王国」。
| 数量直営店の数(店) | 価格1店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 30.0 | 0.65 | 19 | 1 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.87 | 61 | 4 |
取り方:直営30店と工具の売上19.4億円から1店あたり約0.65億円。利益は開示が無く、全社の利益率5.4%より新しい店が多い分を見て7%と推定。
総合・ファッションなどの店
総合リユースの買取王国、古着、家具家電、貴金属などの店。
| 数量直営店の数(店) | 価格1店あたりの年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 48.0 | 1.54 | 74 | 4 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 2.06 | 113 | 7 |
取り方:工具以外の直営48店と売上73.9億円(ECを含む)から1店あたり約1.54億円。利益は全社の営業利益から工具の推定分を引いた残り。
リスクと懸念
フリマアプリへの流出
メルカリなど個人どうしの売買が、衣料やホビーの買い取りを奪っている。配送の手軽さが増せば、工具や大型品も個人で売られるようになる。店に品物が集まらなければ、仕入れの力という強みが崩れる。
家賃の固定費
78店のほぼすべてを借りており、年間の家賃は約7.8億円で営業利益を上回る。売上が落ちても家賃は減らず、利益は一気に縮む。2027年度からの新しいリースの会計で、借入に近い約束として帳簿にも載る。
新しい店の立ち上がり
売上は3年で6割増えたが、営業利益率は7%台から5%台に下がった。東海の外では知名度が無く、新しい店が稼ぐまでの時間が延びれば、出店の費用が利益を食い続ける。
大手との競争
ブックオフ、トレジャー・ファクトリー、ハードオフ、セカンドストリートが全国で専門店を広げ、工具も扱う。買い取りの値段の競り合いになれば、粗利率が下がる。
創業家の支配と薄い還元
カルチャービジネスが36%を持ち、関係する個人を合わせると4割を超える。配当性向は1割で、自社株買いの実績もほとんど無い。利益の使い道に少数株主の声は届きにくい。
相場物の値動き
ブランド品や貴金属、トレカは相場で値段が動く。相場が急に下がれば、在庫の評価損と粗利の落ち込みが出る。
今後の分かれ目
- 工具買取王国が関東や関西で東海並みに稼ぐ
- 楽観側の筋書きに近づく。出店の余地が全国に広がり、利益の伸びが加速する。
- 営業利益率が7%台に戻る
- やや楽観の筋書きに近い。新しい店が育ったことの証拠になる。
- 既存店の売上が半年以上前年を割り続ける
- やや悲観の筋書きに寄る。アプリや大手に客が流れている。
- 配当性向を3割以上に上げる、自社株買いを始める
- 少数株主の取り分が見えやすくなり、溜まる現金の戻り方を見直す。
- 創業家が非公開化や同業との提携を打ち出す
- 少数株主は上乗せを受け取れる可能性がある。値段は条件しだいだ。
見ておくもの
- 既存店売上の前年比(月次)
- 工具買取王国の出店数と東海以外の店の売上
- 営業利益率と販管費に占める家賃・人件費
- 配当性向と自社株買い
- 大手リユースの工具の専門店の出店
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や過去のPER・同業の値付けから置いていない。中立のROE9%台はk8.5%をわずかに上回るので、普通の堀(残る割合1/2)の正当化PER約12.7倍の約90%の11.5倍に置いた。悲観側は稼ぐ力(純利益÷k)と、今の自己資本に掛けたPBRで置いた。数字は今と同じく家賃を営業費用に入れた形で、2028年2月期からの新しいリースの会計で営業利益と負債の形が変わる点は考えていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→13.69 倍・やや楽観 PER 12.3→13.35 倍・中立 PER 11.5→12.79 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ0.5%。同じ領域のトレジャー・ファクトリー(7.5%)より、地域の偏りと規模の小ささの分だけ高い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 8.50%。