結論
サツドラHDは、北海道で196店を持つドラッグストアだ。道内ではツルハに次ぐ2位で、共通ポイントカード『EZOCA』の会員は230万人を超える。筆者の結論は、10年の中立でも今の時価総額の半分に届かない、というものだ。
理由は稼ぐ力の薄さにある。売上は1,000億円あるのに、営業利益は15億円で、利益率は1.5%にとどまる。同業大手の4〜5%には遠い。2026年5月期は人件費・電気代・販促費が重く、純利益は4億円まで落ちた。
借入は137億円で、営業利益の9倍を超える。金利が3.5%まで上がると、利払いだけで営業利益の3割強が消える。
2026年6月には経営陣による買収(MBO)が公表された。買い手は丸の内キャピタル傘下のテラで、買付価格は時価総額に直すと約168億円。買付けは成立し、株式併合を経て上場廃止となる見込みだ。少数株主が受け取る値段は、この買付価格に近いと見られる。
分析上の価値はそれより低い。利益率が10年かけても2%に届かない筋書きを、筆者は重く見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、サツドラは『安く買えれば良い会社』とは言えない。利益がほとんど出ないからだ。
事業は10年後も残る。ドラッグストアは生活に要る店で、景気に左右されにくい。だが堀、つまり他社がまねできない強みは浅い。道内2位でも、首位との差を利益に変えられていない。
株主が自由に使える利益は小さい。営業利益15億円から利払いと税を引くと、残りは4〜8億円ほどだ。店の改装や新設にもお金が要るので、余りはさらに少ない。
資本の使い方は、借入で店を支える形だ。借入137億円は自己資本を上回る。金利が上がれば、利益の取り分が株主から貸し手へ移る。
安全域は無い。中立でも10年後の価値は今の時価総額の半分に届かない。買付価格が分析上の価値より高いのは、買い手が利益率の改善に賭けているからだろう。賭けが外れた時の下値を支えるのは、在庫と敷金、店の設備だ。
何で稼ぐ会社か
サツドラHDは、札幌に本社を置くドラッグストアの持株会社だ。2026年5月期の売上は1,006億円。うち985億円がリテール事業で、中身はほぼ店の売上である。
店は196ある。ドラッグストア形式が177、中国・台湾などの観光客向けのインバウンド形式が10、調剤専門が9だ。調剤を併設する店は22店にとどまり、調剤で稼ぐ同業大手とは形が違う。
残りの事業は小さい。マーケティング事業は、EZOCAの会員基盤を使った販促支援で、売上は21億円。アセット事業は不動産の賃貸などで、売上は2億円、利益は1.6億円だ。
店の多くは賃借で、敷金・保証金が60億円ある。家賃は売上が落ちても払う約束になる。
EZOCAは提携店が300社を超え、自治体が住民への還元に使う型(ひだかEZOCAなど)も出てきた。ただし販促の収入はまだ小さく、稼ぎの大半は店の粗利だ。
2026年5月期は1店を新設し、収益性の低い4店を閉じた。店を増やす局面ではなく、整理しながら質を上げる局面だ。
2028年5月期からの新リース会計では、賃借の店舗がリース債務として貸借対照表に載る。借金が重く見える形に変わる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、道内での知名度と会員基盤にある。ただし、それが利益にまだ結びついていない。
強みは二つ。第一に、道内2位の店舗網。札幌圏に店が密集し、物流と販促を共有できる。第二に、EZOCAの230万人の会員。道内の人口500万人の半分近くに当たる数字で、他社にはない購買データがある。
弱みは三つ。第一に、営業利益率が過去12年で最高でも1.7%と、同業大手の4〜5%を大きく下回る。第二に、ツルハ(イオン傘下)をはじめ全国チェーンが道内で競い、値引きが続く。第三に、借入が重く、自己資本比率は22%と低い。
資本効率も弱い。過去10年のROEの中央値は3.9%で、資本コストの半分ほどだ。会社は2021年の中期計画を達成できず、2025年に計画を作り直した。
筆者は、顧客基盤は本物でも、それを利益率に変えた実績はまだ無いと見る。経営は富山浩樹社長CEOが率いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストア市場は広がり続けるが、北海道は条件が厳しい。
全国の2024年度の売上は10兆円を超え、食品と調剤が伸びを支えた。店は2万3,700を超えて飽和が近く、上位への集約が進む。イオンはツルハを連結子会社にした。
北海道は人口が毎年減る。札幌圏への集中は進むが、道内全体の客数は細る。筆者は、店の数量(実質)は10年で横ばいか微減が普通と見る。
値段は上がる。物価が年3%上がれば客単価は名目で伸びる。ただし人件費・電気代・物流費も同じように上がる。2026年5月期は客単価が堅調でも利益が減った。値上げでは費用増を吸収し切れなかったということだ。
競争相手は、道内首位のツルハ、進出する全国チェーン、食品を強める食品スーパー、ネット通販だ。調剤は薄いので、調剤報酬の改定の打撃は小さい。だが調剤という安定した収益も持たない。
インバウンド形式は観光客の波に左右される。2026年は中国からの来店が減った。
道内の全国チェーンの出店はまだ続いており、店の数が減るのは弱い店の閉鎖が先に起きた時になる。
資本政策と M&A
資本政策は大きな転機にある。2026年6月、経営陣による買収(MBO)が公表された。
買い手は、三菱商事系の丸の内キャピタルが全額出資するテラだ。買付価格は時価総額に直すと約168億円。発表前日の終値に45.76%を上乗せした額で、9回の提案を経て決まった。買付けは成立し、テラの所有割合は52.9%となった。
今後は株式併合で、テラとトミーコーポレーションの2社だけが株主になる予定だ。出資比率は丸の内キャピタル66.6%、トミーコーポレーション33.4%。上場廃止の日付と併合の価格は、まだ開示されていない。
期末配当は無配、株主優待は廃止と報じられた。配当はもともと年1.4億円ほどと小さかった。
筆者は、買付価格は分析上の価値を上回ると見る。少数株主にとっては、分析上の価値より高い値段で手放せる形だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
MBOで道が開ける。上場のままでは短期の利益を気にして、荒利率の改善や経費の見直しに踏み込みにくかった。非公開になれば、赤字の店を閉じ、自社ブランドと調剤併設を増やし、EZOCAの会員データを使った販促で客単価を上げられる。
同業大手は営業利益率4〜5%を出している。その半分の2.5%でも、営業利益は今の2倍近くになる。
EZOCAは230万人の会員と300社超の提携店を持つ。自治体と組む型も増えている。北海道に根を張ったこの基盤は、全国チェーンが簡単にまねできない。
物価が毎年3%上がる中、客単価が名目で伸びれば、固定費の重い店舗網は増収だけで利益率が上がる。丸の内キャピタルの資金と経営の助けも加わる。
最終的に、買い手が高い値段を払った事実が、改善の余地の大きさを示している。
仮に利益率が2%に乗れば、純利益は今の3倍を超える。薄利の会社ほど、利益率の1ポイントが利益を大きく動かす。
借入の返済が進めば、利払いの重さも和らぐ。
慎重な見方
利益率は12年間、1%台前半から動いていない。2021年の中期計画は未達で、2025年に作り直したが、2026年5月期はまた利益が減った。EZOCAの会員基盤は、店が売れていなければ利益に変わらない。
道内の人口は毎年減る。ツルハ(イオン傘下)をはじめ全国チェーンが、値下げと出店で攻めてくる。賃上げと電気代は毎年重くなる。
借入は137億円ある。金利が3.5%に上がれば、利払いは年5億円近くになる。営業利益15億円の3割強が消える計算だ。
店は賃借が中心で、売上が落ちても家賃は落ちない。インバウンド形式は、中国の旅行自粛で減速したばかりで、波が大きい。非公開化の後も、この構造は変わらない。
会社が自分でMBOを選んだこと自体、上場のままでは業績を立て直せないという見立ての表れだ。
賃上げは一度上げると戻せず、電気代も下がる保証がない。薄利の会社ほど、費用の1ポイントが利益を大きく削る。
改善の約束は何度もあったが、数字には出ていない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。利益率を1%台から押し上げた実績が12年間ないこと、金利上昇で利払いが重くなること、賃上げと家賃が固定費として残ることが決め手だ。強気の見方の核はMBO後の改善策だが、実行された証拠はまだ無い。中立の利益率は1.6%ほどにとどめ、悲観側の確率を36%、楽観側を26%として、悲観側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 944 円130 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 96 円13 億円)。 今の値に割り戻すと 482 円66 億円、今との差 −61.4%、 期待の年率 −1.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 2,639 円364 億円 | 232 円32 億円 | +130.1% | +8.7% | 172 円24 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,622 円224 億円 | 174 円24 億円 | +44.0% | +3.7% | 359 円50 億円 |
| 中立 | 38% | 968 円133 億円 | 102 円14 億円 | −14.3% | −1.5% | 407 円56 億円 |
| やや悲観 | 25% | 295 円41 億円 | 36 円5 億円 | −73.5% | −12.4% | 83 円11 億円 |
| 悲観 | 11% | 181 円25 億円 | 0 円0 億円 | −85.5% | −17.5% | 20 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 944 円130 億円 | 96 円13 億円 | −16.6% | −1.8% | 1,041 円143 億円 |
今の株価時価総額 1,248 円172 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 非公開化後の改善が進み、営業利益率が3%に近づく 利益 22 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,639 円364 億円
非公開化の後、不採算の店の整理と自社ブランドの拡大が進み、荒利率が上がる。調剤併設の店も増え、客単価が上がる。EZOCAの会員データを使った販促が広がり、自治体と組む型が道内に増える。
実質の店舗数は200まで戻り、1店あたりの売上は物価並みに伸びる。営業利益率は3%に近づき、営業利益は40億円ほどになる。金利が上がっても、利払いは営業利益に比べて小さくなる。
道内2位の店舗網と会員基盤が、はじめて利益に変わった形だ。配当も出て、ROEは資本コストを上回る。
店の整理で一時的な減損は出るが、その後は利益が積み上がる。借入は返済が進み、金利上昇の傷は浅くなる。
- リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門):数量 200(実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算))× 価格 6.73(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 1,346 億円・営業利益 35 億円。改善策が全て効き、実質の店舗数が200、利益率2.6%
- マーケティング・アセット・その他:数量 300(EZOCA会員数(万人・実質))× 価格 0.15(会員1万人あたり年売上(億円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。会員基盤からの販促収入が育つ
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.4% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍。全体の PER 14.78 倍、時価総額 330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が12年間動いていない事実が重い。MBOと丸の内キャピタルの関与で改善の余地はあるが、実行の証拠はまだ無い。そこで楽観は6%にとどめた。
やや楽観 20% 改善が一部効き、営業利益率が2%台になる 利益 15 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,622 円224 億円
荒利率の改善が進み、赤字の店を閉じる。ただし道内の競争は続き、値上げの余地は限られる。実質の店舗数は193、営業利益率は2%に乗る。
インバウンド形式は観光客の回復で安定し、EZOCAの提携は少しずつ増える。人件費の上昇は物価並みで、利益率を押し下げる分と改善の分がほぼ打ち消し合う。
営業利益は30億円ほどになり、金利が上がっても純利益は15億円ほど残る。配当は純利益の4割ほど出る。
改善が道半ばでも、借入の返済は進み、財務の余裕が戻る。道内2位の位置は守られる。
鍵になるのは、赤字の店をどこまで閉じられるかだ。閉店の判断が遅れれば、荒利率の改善が店の赤字に食われる。
- リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門):数量 193(実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算))× 価格 6.73(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 1,299 億円・営業利益 26 億円。実質の店舗数193、利益率2.0%
- マーケティング・アセット・その他:数量 270(EZOCA会員数(万人・実質))× 価格 0.15(会員1万人あたり年売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。提携が増え、販促収入が育つ
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 200 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:荒利率の改善と経費の見直しは、会社自身の計画でもある。全部は届かなくても、2%に乗せる筋書きは十分ありうる。そこで20%とした。
中立 38% 利益率は1%台にとどまり、薄利のまま増収が続く 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 968 円133 億円
道内の競争と人口減は変わらず、実質の店舗数は閉店を含めて186まで減る。1店あたりの売上は物価並みに伸び、売上は1,290億円ほどになる。
荒利率の改善は少し進むが、人件費・電気代・家賃の上昇と打ち消し合う。営業利益率は1.6%で、過去最高の1.7%を超えない。営業利益は21億円ほどだ。
借り換えで金利が上がり、利払いは年4億円前後に重くなる。純利益は10億円ほどで、配当は純利益の2割ほどにとどまる。ROEは6%台で、資本コストには届かない。
大きな成功も失敗もない、薄利の安定した姿だ。借入は横ばいで、返済より店の更新に回る。
- リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門):数量 186(実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算))× 価格 6.73(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 1,252 億円・営業利益 18 億円。実質の店舗数186、利益率1.45%
- マーケティング・アセット・その他:数量 240(EZOCA会員数(万人・実質))× 価格 0.15(会員1万人あたり年売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。会員基盤は広がるが収入は小さい
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 116 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が12年間1%台前半にとどまった事実が最も強い証拠だ。改善の余地は小さく見積もり、悪化も止まるとして、最大の38%とした。
やや悲観 25% 道内の競争で利益率が1%を割り、利益が細る 利益 3 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 295 円41 億円
全国チェーンが道内で出店と値引きを続け、実質の店舗数は175まで減る。値上げが通りにくく、1店あたりの売上の伸びは物価を少し下回る。
賃上げと家賃は毎年上がる。売上が落ちても家賃は落ちないので、営業利益率は0.7%まで下がる。営業利益は10億円を割り、利払いを引くと純利益は3億円ほどだ。
借入の返済に利益が回り、配当はほぼ出せない。店を閉じて借入を減らす道に入る。
減損も出て自己資本は伸びない。再編の対象として、他社との統合が話題に上る時期でもある。
店の更新投資は絞らざるを得ず、設備の老朽化が客離れを招く悪い循環に入る恐れもある。
- リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門):数量 175(実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算))× 価格 6.60(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 1,155 億円・営業利益 8 億円。実質の店舗数175、値上げが通りにくく利益率0.7%
- マーケティング・アセット・その他:数量 220(EZOCA会員数(万人・実質))× 価格 0.15(会員1万人あたり年売上(億円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。販促収入は伸び悩む
倍率:ROE2%は資本コスト8.5%を大きく下回る。稼ぎの力(純利益÷k)は約34億円と、売れる資産の税後を下回る。PBRは今の自己資本101億円に0.4倍を掛けた。
確率:ツルハ(イオン傘下)をはじめ全国チェーンの出店と賃上げが続けば、利益率は1%を割る。2023年5月期に0.3%まで落ちた実績もあり、4分の1とした。
悲観 11% 赤字に陥り、店を閉じながら借入を返す 利益 −9 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 181 円25 億円
全国チェーンに押され、客数が落ち続ける。実質の店舗数は150まで減り、閉店のたびに減損が出る。値上げは通らず、1店あたりの売上の伸びは物価を大きく下回る。
家賃と人件費は落ちない。営業利益は赤字になり、利払いが重なって純利益は9億円ほどの赤字になる。借り換えの金利が上がり、貸し手の目も厳しくなる。
配当は無く、成長投資もできない。自己資本は減損で減り、他社への事業譲渡や店舗の売却を迫られる。
最終的には、店舗網を他社に売る形で再編される。株主に残る価値は在庫と敷金、設備の売却益に近い。
その時点で、買い手が付くのは立地の良い店だけだ。残りの店は閉鎖され、敷金の回収も思うように進まない。
- リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門):数量 150(実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算))× 価格 6.26(1店あたり年売上(億円・名目))→ 売上 939 億円・営業利益 −3 億円。実質の店舗数150、値上げが通らず赤字
- マーケティング・アセット・その他:数量 180(EZOCA会員数(万人・実質))× 価格 0.15(会員1万人あたり年売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 0 億円。販促収入は縮む
倍率:赤字なのでPERは当てない。PBRは今の自己資本101億円に0.25倍を掛けた。店と在庫を急いで売る形で、買い手は地域の競合が中心になる。
確率:道内の人口減、全国チェーンとの値引き競争、金利上昇、家賃の固定費が重なる筋書きだ。リーマン級の谷ではなく構造的な負けで、11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
リテール事業(ドラッグストア・インバウンド店・調剤専門)
北海道を中心に196店を運営する。医薬品・化粧品・日用品・食品を売り、一部で調剤も行う。
| 数量実質の店舗数(閉店・客数減を差し引いた店舗換算) | 価格1店あたり年売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 196 | 5.03 | 985 | 13 |
| 10 年後 中立 | 186 | 6.73 | 1,252 | 18 |
取り方:2026年5月期のリテール事業の売上985億円を、期末の店舗数196(ドラッグ177・インバウンド10・調剤専門9)で割り、1店あたり5.03億円と置いた。インバウンド店の売上は開示が無く、全店の平均に含めて推定した。セグメント利益11.2億円に、連結との差の調整額1.7億円を加え、営業利益を12.9億円とした。
マーケティング・アセット・その他
EZOCAの会員基盤を使った販促支援、不動産の賃貸などの小さな事業。
| 数量EZOCA会員数(万人・実質) | 価格会員1万人あたり年売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 230 | 0.11 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.15 | 35 | 3 |
取り方:マーケティング21億円・アセット2億円・その他2億円の売上計24.9億円を、EZOCA会員数230万人で割り、会員1万人あたり0.108億円と置いた。会員数と売上は直接つながる関係ではなく、規模を表す推定である。営業利益は3事業の合計1.7億円。
リスクと懸念
利益率が上がらない
営業利益率は12年間1%台前半にとどまる。荒利率の改善と経費の見直しを掲げた計画も、2026年5月期は減益で終わった。MBOで経営が変わっても、道内の競争と賃上げが利益を削るなら、改善は進まない。
借入と金利の上昇
借入は137億円で、営業利益の9倍を超える。借り換えのたびに金利が3.5%近くへ上がると、利払いは年5億円近くになる。自己資本比率は22%と低く、赤字が続けば財務の余裕は小さい。
北海道の人口減と競争
道内の人口は毎年減る。ツルハ(イオン傘下)をはじめ全国チェーンが出店と値引きで攻める。店の数量が実質で減り、客単価の上昇で補えなければ、固定費の重い店舗網の利益が落ちる。
インバウンド形式の波
観光客向けの10店は、中国からの旅行自粛で来店が減った。為替や外交の動きで客数が大きく振れる。台湾など他の地域で補えるかは確かではない。
家賃と賃上げが固定費として残る
店の多くは賃借で、敷金が60億円ある。売上が落ちても家賃と人件費は落ちない。2028年5月期からの新リース会計で、リース債務が貸借対照表に載り、借金が重く見える形に変わる。
非公開化の先の不確実性
株式併合の価格と上場廃止の日付はまだ開示されていない。非公開になれば、少数株主は決算の開示を受けられなくなる。MBOの資金の出し方も開示がなく、借入が増える形もありうる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2%を超えて定着する
- 荒利率の改善と経費の見直しが効いた形で、中立の筋書きを上回る。10年後の価値は大きく上がる。
- 既存店の客数が毎年減り続ける
- 人口減と競合の出店で数量が細っている。利益率は1%を割り、やや悲観の筋書きに近づく。
- 金利が想定より上がり、借り換えが3.5%を超える
- 利払いが営業利益の4割を超え、純利益はほぼ消える。配当の余地もなくなる。
- インバウンド形式を閉じる、または大きく縮める
- 利益の波は小さくなるが、客単価の高い売上も減る。差し引きの効果は店ごとの採算で決まる。
- 株式併合の価格が買付価格を上回る、または下回る
- 少数株主が受け取る額が変わる。裁判所に価格決定を求める動きも出うる。
見ておくもの
- 営業利益率(荒利率と販管費率)
- 既存店の客数と客単価
- 借入の残高と平均金利
- インバウンド形式の売上
- EZOCAの会員数と提携店数
- 株式併合の価格と上場廃止の日付
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後の中立のROE(約6%)が資本コスト8.5%に届かない点から、式の上限(約11倍)の7.5割にあたる8.6倍と置いた。今の株価や買付価格は見ていない。買付価格が分析上の価値を上回るのは、答えが出た後の比較である。家賃を営業費用に入れた今の形で10年後もそろえた。新リース会計(2028年5月期から)で営業利益は少し増え、純有利子負債はリース負債の分だけ増えるが、その形は使っていない。減価償却は取得時の値段のまま年15億円とし、新しい投資の分だけ新しい値段で足して、10年後は年18億円ほどと見積もった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→14.78 倍・やや楽観 PER 11→13.1 倍・中立 PER 8.6→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 8.50%。