結論
ハニーズホールディングスは、女性向けの低価格な衣料を売る全国 864 店の専門店チェーンだ。売上は 562 億円、営業利益は 46 億円である。
筆者の結論は割高である。10 年後の利益に妥当な倍率を掛けて今に引き直すと、本質価値は今の時価総額の 6 割台にとどまる。
理由は二つある。一つは、利益率の低下に歯止めが見えないことだ。営業利益率は 2023 年 5 月期の 14%から 8%台まで落ち、会社は中期計画の営業利益を 70 億円から 46 億円に引き下げた。来期の予想は 40 億円で、その水準も下回る。節約志向で客数が伸びず、値上げは客を減らし、セールで埋めるため粗利が戻らない。
もう一つは、現金が使われない点だ。純現金は 151 億円と時価総額の 4 割近くあるが、10 年で 2 倍強に積み上がっただけで、自社株買いは見当たらない。筆頭株主の持分は 33%を超え、少数株主は現金の使い道を決められない。
救いもある。借金がなく、自己資本比率は 85%と厚い。店の整理が進めば、利益率は 7%台で落ち着く。ただし、衣料は気温と流行で売上が振れ、競合は強い。
財務の安全は確かだが、払う値段に余裕はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「財務は堅いが、事業が資本を食い始めている」。
粗利率の高い SPA の形は良い。ただし、客数が戻らず、値上げとセールで粗利が削られている。同じ売上で利益だけが減るのは、堀が浅い会社の典型である。
経営の資本配分は評価が割れる。借金をせず、現金を厚く持つ姿勢は安全だが、純現金が 10 年で 2 倍に積み上がり、自社株買いの実績が見当たらない。ROE は 13%から 5%台に下がった。資本を寝かせると、株主の取り分が薄まる。
筆頭株主の持分が 33%を超える点は、経営が安定する利点と、少数株主の発言力が弱い欠点を併せ持つ。
安全域の目で見ると、時価総額の 4 割近くが純現金で、一見割安に見える。しかし、現金の使い道は少数株主が決められず、事業の稼ぐ力は細っている。払う値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは、全国の商業施設に入る衣料店の売上が約 9 割、EC が約 1 割である。売上の大半は国内の個人客で、一人ひとりの買い物は小さい。
店は「ハニーズ」を中心とする女性向けのカジュアル衣料の専門店だ。2026 年 5 月末で 864 店あり、この 1 年で赤字の店など 8 店を閉じた。商品は自社で企画し、海外の工場で作らせて自社で売る SPA の形をとる。粗利率は 58.9%と高いが、販管費率が 50.7%あり、営業利益率は 8%台まで落ちている。
EC は 70 億円で、売上の 12.6%を占める。店の商品を補う形で、店にない大きいサイズなどを置いている。2026 年 5 月期は前の期から 1.2%の増加にとどまり、期初の計画 72 億円にも届かなかった。
内訳の利益は開示されない。店で約 41 億円、EC で約 5 億円と筆者が推定した。
配当は利益の 5 割強を払う。商品は海外の工場で作らせるため、円安は仕入れ値を押し上げる。
株主優待として、100 株以上を 1 年以上持つ株主に店で使える券を贈る。
優良さと弱いところ
優良さは「普通より下。財務は堅いが、稼ぐ力は細っている」と見る。
強みの第一は、粗利率の高さだ。商品を自社で企画して海外で作るため、粗利率は 58.9%ある。低価格の衣料としては高い水準だ。
第二は、財務の厚さだ。借金がなく、自己資本比率は 85%。純現金は 151 億円ある。不況が来ても、店を閉じて立て直す余力がある。
第三は、全国 864 店という店の網と、EC の基盤だ。商業施設への出店の交渉力と、店が EC の入口になる点は、新規の参入者にない強みである。
弱みは三つある。第一に、利益率の低下だ。営業利益率は 14%から 8%台まで落ち、来期は 7%台の予想である。第二に、需要の読みが外れやすい。気温と流行で売れ筋が変わり、春物の在庫調整に追われた。第三に、客を奪う競合が強い。しまむら、ユニクロ、GU が低価格で支持を集めている。
全体として、堀は浅く、10 年先に利益率が戻る確度は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の衣料品の小売市場は、矢野経済研究所によると 2024 年に約 8 兆 5,000 億円で、前年から 1.7%伸びた。ただし伸びは値上げの分が大きく、買う量は増えていない。ハニーズの売上は、その 0.7%弱にあたる。
競合は、しまむら、ユニクロ、GU、ワークマンなどだ。しまむらは自社開発の商品を増やしてインフルエンサーと組み、客を集めている。ユニクロは世界で店を増やす。ハニーズと同じ、若い女性の低価格な衣料を売る領域で、重なる客は多い。
物価が年 3%で上がる世界では、衣料の仕入れ値は円安で上がる。ただし、客は節約志向を強め、値上げをすると客数が減る。ハニーズは値上げとセールの増加を繰り返し、粗利が戻っていない。
EC は、店にない商品や大きいサイズで客を取るが、広告費と手数料がかさむ。EC 化率は 12.6%で、会社は中計で 15.9%を目指していたが、売上目標は 100 億円から 76 億円に下げた。
業界の分かれ目は、客数が戻るか、値上げが通るか、店の整理が利益率を支えるかである。
資本政策と M&A
還元は、配当が中心だ。業績に応じて決める方針で、2026 年 5 月期は利益の 5 割強を払った。減益でも同額に近い水準を保っている。
自社株買いは、今の株数にほとんど表れていない。純現金は 10 年で 64 億円から 151 億円へ、2 倍強に積み上がった。ためた現金は、新店や改装、システムに回るが、10 年を通せば使い切れていない。
筆頭株主は株式会社 E・E・Y で、33.4%を持つ。ハニーズ財団が 3.6%、江尻姓の個人も上位に並ぶ。支配的な持分があるため、現金の使い道は少数株主が決められない。純現金のうち運転資金を除く 100 億円を余った現金として分け、戻り方は 0.5 と置いた。
中期計画は 2028 年 5 月期が最終年度で、売上 580 億円・営業利益 46 億円・ROE 5.7%に下げた。EC は 76 億円を目指す。
10 年以内の TOB の確率は、kabufu の参考値で 24.6%。
株主優待は、100 株以上を 1 年以上持つ株主に 100 株で 3,000(円)分から 1,000 株以上で 10,000(円)分までの店舗の券を贈る。単元株主約 3.9 万人、平均 3,300(円)、利用 9 割、原価率 4 割とみて、年に約 4.5 億円と推定した。配当の約 3 割にあたるため、10 年の還元に 10 年分を上乗せした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ハニーズは、低価格の衣料を自社で企画して海外で作る SPA で、粗利率が 58.9%ある。この粗利を、需要予測の改善とセールの縮小で守れる。
店の整理は進んでおり、不採算店が減る分、利益率は上がる。会社は 2026 年 5 月期にも 8 店を閉じ、スクラップアンドビルドを続けている。改装した店は売上が伸びる。粗利率が高いため、客数が戻れば利益は大きく増える余地がある。EC は店の客を広げ、中計で 76 億円を目指す。
借金がなく、自己資本比率は 85%。純現金は 151 億円あり、新店と改装、システムに回せる。筆頭株主が経営を安定させ、長期の視点で投資できる。
客を奪う競合は強いが、価格帯と品ぞろえで棲み分けられる。物価が上がる中、低価格の店は客に選ばれやすい。
営業利益率は 2023 年 5 月期の 14%に近づき、配当も増える。ROE は資本コストに並び、物価の上昇も価格に転嫁できる。純現金の余りが株主に回る可能性も広がる。
慎重な見方
利益の落ち込みが止まらない。営業利益は 77 億円から 46 億円まで下がり、来期の予想は 40 億円で、中計の目標も 1 年で下方修正された。
節約志向で客数が伸びず、値上げは客を減らす。セールで埋めるため、粗利率は 58.9%に下がった。人件費、広告費、手数料は物価並みに増える。
需要予測が外れ、春物の在庫調整に追われた。気温と流行に左右される商売で、10 年の間に同じことが繰り返される。
しまむら、ユニクロ、GU が低価格で客を集め、重なる客は奪われる。
純現金は 151 億円あるが、10 年で積み上がっただけで、自社株買いは見当たらない。筆頭株主が 33%を超え、少数株主は使い道を決められない。
商品を自社で作る SPA は、仕入れの責任を自社が負う。見込みを外せば在庫の値引きで粗利が崩れる。
時価総額の 4 割近くが現金に見えるが、事業が縮めばその現金も店の閉鎖や穴埋めに消える。店は賃借が多く、家賃は固定の約束で、売上が落ちる年は利益が大きく振れる。
どちらに重みを置いたか
粗利率の高さと財務の厚さは、強い見方に説得力がある。一方で、利益率の低下、中計の下方修正、現金が使われない点という慎重な見方の指摘は、数字の裏づけが厚い。
確率は、中立よりやや悲観側に寄せた。直近の減益と来期の予想が、慎重な見方を支えているからだ。
中立の営業利益率は 7%台にとどめ、店は 1 割減らした。純現金のうち 100 億円は余った現金として別に足したが、戻り方は半分に置いた。計算の結果、10 年後の中立でも今の時価総額を下回り、総合では割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 1,501 円418 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 676 円188 億円)。 今の値に割り戻すと 1,199 円334 億円、今との差 −15.6%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,058 円853 億円 | 1,001 円279 億円 | +185.9% | +11.1% | 325 円91 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,231 円622 億円 | 857 円239 億円 | +117.5% | +8.1% | 618 円172 億円 |
| 中立 | 34% | 1,732 円483 億円 | 725 円202 億円 | +73.0% | +5.6% | 835 円233 億円 |
| やや悲観 | 26% | 688 円192 億円 | 538 円150 億円 | −13.7% | −1.5% | 319 円89 億円 |
| 悲観 | 12% | 352 円98 億円 | 316 円88 億円 | −53.0% | −7.3% | 80 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,501 円418 億円 | 676 円188 億円 | +53.3% | +4.4% | 2,177 円607 億円 |
今の株価時価総額 1,420 円396 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 客数が戻り、利益率が過去の山に近づく 利益 53 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 3,058 円853 億円
物価が上がる中でも、買い回りの安さと品ぞろえの新鮮さが支持され、客数が戻る。店は 840 店ほどで踏みとどまり、改装した店の売上が伸びる。1 店の売上は物価並みに上がる。EC は店の商品を補う形で広がり、取扱いは今の 1.8 倍になる。需要の読み違いが減って、セールの比率が下がり、粗利率は 60%台に戻る。営業利益率は 9%台後半に上がり、2023 年 5 月期の 14%には届かないが、今の 8%台からは改善する。配当は利益の 6 割を保ち、自己資本の利益率は資本コストに並ぶ。ただし、これは節約志向が 10 年の途中で和らぎ、競合に客を取られない前提で、確度は低い。
- 店舗(ハニーズ):数量 840(年平均店数(店))× 価格 0.75(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 628 億円・営業利益 63 億円。年平均 840 店・1 店売上の指数 1.32
- EC(自社通販):数量 420(年間受注点数(万点))× 価格 3,900(1 点あたり単価(円))→ 売上 164 億円・営業利益 15 億円。EC の年間受注点数 420 万点・1 点の単価の指数 1.30
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 15.07 倍、時価総額 853 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客数が戻り、粗利率が 60%台に回復するには、節約志向の和らぎと需要予測の改善が重なる必要がある。直近の流れと逆で、確度は低いとみて 1 割未満にした。
やや楽観 20% 店の整理と EC が効き、中計の水準を超える 利益 42 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,231 円622 億円
店の入れ替えが進み、不採算店が減る。店は 815 店ほどに落ち着き、1 店の売上は物価よりやや低い伸びで増える。EC は取扱いが今の 1.5 倍になり、店の商品を補う。粗利率は少し戻り、セールの比率も下がる。営業利益率は 8%台後半に上がり、中計の営業利益 46 億円を超えて 60 億円台に届く。配当は利益の 6 割弱を保ち、自己資本は緩やかに積み上がる。ただし、気温や需要予測の外れが 10 年の間に何度かあり、利益の伸びは一直線にはならない。売上の伸びは物価に届かず、実質では縮む。それでも店の数が絞られる分、利益が残る形になる。
- 店舗(ハニーズ):数量 815(年平均店数(店))× 価格 0.74(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 601 億円・営業利益 53 億円。年平均 815 店・1 店売上の指数 1.30
- EC(自社通販):数量 360(年間受注点数(万点))× 価格 3,840(1 点あたり単価(円))→ 売上 138 億円・営業利益 11 億円。EC の年間受注点数 360 万点・1 点の単価の指数 1.28
倍率:事業の純利益 41 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.47 倍、時価総額 622 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の整理と EC の寄与で、中計の営業利益を超える筋書き。ただし中計は 1 年で大きく下方修正されており、達成の信頼度は低い。2 割にとどめた。
中立 34% 中立:店は 1 割減り、利益率は 7%台で落ち着く 利益 32 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,732 円483 億円
店は 10 年で 790 店ほどに減る。毎年 1%弱ずつ、赤字の店を整理する形だ。1 店の売上は物価の 1.34 倍には届かず、1.25 倍に置く。値上げをすると客数が減り、セールを増やして埋めてきたからだ。EC は取扱いが今の 1.35 倍になる。営業利益率は 7%台に収まる。粗利率は円安の仕入れと値引きで戻らず、人件費と広告費、手数料は物価並みに増える。配当は利益の 55%前後を保ち、優待も続く。営業利益は 50 億円ほどと、今より少し増えるが、物価の伸びには届かない。自己資本は積み上がるが、純現金が事業で使われないため、自己資本の利益率は 5%台と資本コストに届かない。
- 店舗(ハニーズ):数量 790(年平均店数(店))× 価格 0.71(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 560 億円・営業利益 42 億円。年平均 790 店・1 店売上の指数 1.25
- EC(自社通販):数量 315(年間受注点数(万点))× 価格 3,750(1 点あたり単価(円))→ 売上 118 億円・営業利益 8 億円。EC の年間受注点数 315 万点・1 点の単価の指数 1.25
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)75 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 483 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店を 1 割減らし、利益率は 7%台で落ち着く落としどころ。直近の減益と来期予想が示す水準で、慎重な言い分の裏づけが厚いので、確率の重心をやや下に置いた。
やや悲観 26% やや悲観:値上げが通らず、客数も戻らない 利益 17 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 688 円192 億円
値上げが通らず、客数も戻らない。物価が上がっても、客は節約を続けて買い控える。店は 720 店ほどに減り、1 店の売上の伸びは物価の半分以下にとどまる。EC は伸びるが、店の客を奪うだけで全体は増えない。粗利率はセールの増加で下がり、営業利益率は 4%台後半に落ちる。人件費と家賃は固定の約束として残る。純利益は今の 6 割まで細り、配当も利益に合わせて減る。純現金はあるが、事業が縮む中で使い道は定まらず、自己資本の利益率は 3%に落ちる。店を閉じる費用と、残る店の家賃の重さが利益を圧迫する。優待は 4 分の 3 に縮み、配当も削られる。
- 店舗(ハニーズ):数量 720(年平均店数(店))× 価格 0.65(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 469 億円・営業利益 24 億円。年平均 720 店・1 店売上の指数 1.15
- EC(自社通販):数量 260(年間受注点数(万点))× 価格 3,450(1 点あたり単価(円))→ 売上 90 億円・営業利益 4 億円。EC の年間受注点数 260 万点・1 点の単価の指数 1.15
倍率:ROE 2.9%(純利益 17 億円 ÷ 自己資本 585 億円)は k 7.5% に届かず、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。余った現金を抱えたまま自己資本が厚くなるため、事業の稼ぎに対する資本が過大で、ROE が k に届かない。値上げが通らず利益が細る構造的な負けの筋書きで、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。倍率は事業の純利益(現金の利息 1.1 億円を除く)に掛け、余った現金 75 億円は戻り方 0.5 を掛けて別に足した。
確率:値上げが通らず、客数も戻らない流れは今まさに起きている。物価高が続くなら続きうるので、4 分の 1 強に置いた。
悲観 12% 悲観:店の網が縮み、利益率が 3%まで落ちる 利益 8 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 352 円98 億円
若い世代がユニクロや GU、しまむらに流れ、店の網が縮む。店は 600 店ほどまで減り、1 店の売上は物価に追いつかない。EC は店の客を奪うが、広告費がかさんで利益は出ない。粗利率は下がり、営業利益率は 3%に落ちる。2016 年 5 月期のような赤字の年も混じる。家賃は店を閉じるまで払う固定の約束で、退店の費用もかかる。純現金は事業の穴埋めに使われ、少数株主には戻りにくい。配当は大きく削られ、優待も縮小される。営業利益は 12 億円ほどまで細る。それでも借金がなく、自己資本の厚さは残るため、倒産には向かわない。
- 店舗(ハニーズ):数量 600(年平均店数(店))× 価格 0.60(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 357 億円・営業利益 11 億円。年平均 600 店・1 店売上の指数 1.05
- EC(自社通販):数量 200(年間受注点数(万点))× 価格 3,000(1 点あたり単価(円))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。EC の年間受注点数 200 万点・1 点の単価の指数 1.00
倍率:悲観は赤字の年が混じり、稼ぐ力は細る。床は稼ぐ力で置き、純利益 8 億円 ÷ k 7.5% = 約 98 億円を、今の自己資本 491 億円に対する PBR 0.20 倍で測った。純現金 151 億円を戻り方 0.5 で数えた額(約 75 億円)を、稼ぐ力が上回る。現金は事業の穴埋めに使われ、少数株主には戻りにくい。EV ÷ 営業利益は純現金があるため意味を持たない水準で、床は稼ぐ力で置いた。
確率:若い世代の離反と店の網の縮小が重なる構造的な負け。2016 年 5 月期の赤字や 2015 年 5 月期の 3%台の利益率という前例があり、1 割は残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗(ハニーズ)
全国の商業施設に入る女性向けのカジュアル衣料の専門店。自社企画の商品を海外の工場で作って売る。店は賃借が多く、家賃は固定の約束。
| 数量年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 868 | 0.57 | 492 | 41 |
| 10 年後 中立 | 790 | 0.71 | 560 | 42 |
取り方:2026 年 5 月期の売上 562 億円から EC の 70 億円を引き、期末 864 店と閉店 8 店から年平均を約 868 店と推定して割った。利益は営業利益 46 億円のうち店で 41 億円と推定(開示なし)。先の 1 店売上は物価の 1.34 倍に届かず、中立で 1.25 倍に置く。値上げが客数を減らし、セールで埋めてきた直近の流れによる。
EC(自社通販)
自社の通販サイト。店にない大きいサイズや限定商品を置き、店の商品を補う。
| 数量年間受注点数(万点) | 価格1 点あたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 233 | 3,000 | 70 | 5 |
| 10 年後 中立 | 315 | 3,750 | 118 | 8 |
取り方:2026 年 5 月期の EC 売上 70.1 億円を、1 点の単価を 3,000(円)ほどと筆者が推定して受注点数に直した(開示なし)。利益は営業利益のうち 5 億円と推定。先の点数は中立で 1.35 倍、単価は店と同じく物価の 1.34 倍に届かず 1.25 倍に置く。
リスクと懸念
利益率の低下
営業利益率は 14%から 8%台に落ち、来期の予想は 7%台。中計の営業利益も 70 億円から 46 億円に下げた。粗利の低下と販管費の増加が続けば、さらに下がる。
需要予測と天候
気温と流行で売れ筋が変わり、春物の在庫調整に追われた。セールの増加で粗利が削られ、10 年の間に同じことが繰り返される。
競合と客の流出
しまむら、ユニクロ、GU が低価格で客を集め、重なる客を奪う。節約志向の中で客数が伸びず、値上げが客離れにつながる。
家賃など固定の約束
店は商業施設の賃借が多く、家賃は店を閉じるまで払う固定の約束だ。売上が落ちる年は利益が大きく振れる。2028 年 3 月期からの新リース会計基準で、見かけの数字が変わる。
現金が使われない
純現金 151 億円は時価総額の 4 割近い。筆頭株主が 33%を超え、少数株主は使い道を決められない。10 年で 2 倍に積み上がり、自社株買いは見当たらない。
EC の採算
EC は広告費と決済手数料がかさみ、売上の伸びが利益に結びついていない。EC 売上の目標も 100 億円から 76 億円に下げた。
今後の分かれ目
- 既存店の客数が 2 年続けて前年を上回ったら
- 客数の戻りが確かめられた合図で、中立から強気側に重みを移してよい。
- 営業利益率が 2 年続けて 9%を超えたら
- 店の整理と粗利の回復が定着した証拠で、利益率の置き方を上げて見直す。
- 粗利率が 58%を割ったら
- セールの増加と円安の仕入れ高で粗利が削られている合図で、やや悲観側の確率を上げる。
- 自社株買いや特別配当が発表されたら
- 現金の戻り方を 1.0 に上げて見直す。
- 赤字の期が出たら
- 悲観側の確率を上げ、店の網の縮小を前提に見直す。
- 筆頭株主による TOB が発表されたら
- 買付価格を本質価値と比べて見る。支配株主の提示なので、少数株主に有利とは限らない。
見ておくもの
- 月次の既存店売上・客数・客単価
- 粗利率と販管費率(四半期)
- 店数と閉店数
- EC 売上と EC 化率
- 純現金・配当・自社株買い
倍率と資本コストの決め方
店舗と EC の 2 区分で、数量(実質)× 単価・1 店売上(名目)を積んだ。自己資本は今の 491 億円に期間の純利益を足して配当を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)から出した正当化 PER の範囲で置き、ROE が k 以下では上限を 1÷k にした。市場の倍率は使っていない。営業利益率は過去 12 年の山 16%以下に置いた。純現金は運転資金を除く 100 億円を別に足し、戻り方は半分とした。店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束で、未経過リース料の額は未確認である。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形にそろえ、2028 年 3 月期からの新リース会計基準で見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.07 倍・やや楽観 PER 11→13.47 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%に quality +0.75%を足した 8.25%。個別のリスク(気温と需要予測の外れ・競合・店の整理)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で自己資本比率も 85%と厚く、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.50%。