結論
髙島屋は、大阪・日本橋・横浜・京都・新宿に大型店を構える百貨店の老舗である。筆者の結論は「割高」だ。稼ぐ力は戻ったが、今の値段はその先の伸びまで先に払っている。
利益の柱は国内の百貨店だ。外商(富裕層への訪問販売)と訪日客の高額消費が支える。2026年2月期は中国客の減少を国内の富裕層が埋め、営業利益は535億円を守った。最終赤字になったのは、転換社債の買い戻しで約720億円の特別損失が出たためで、本業が傾いたわけではない。
もう一つの柱が、子会社の東神開発が運営する商業施設と海外だ。利益率が高く、百貨店の波を和らげる。2027年秋のハノイ開業が次の材料になる。
それでも中立の10年後は、営業利益が約770億円、純利益が約470億円にとどまる。自己資本利益率は7%台で、資本コスト7.75%をわずかに下回る程度だ。この収益力に今以上の倍率は払いにくい。
帳簿に出ない不動産の含み益と、旧村上ファンド系の株主が促す資産売却は、下値を支える。悲観の床は厚い。ただ、確率をかけた本質価値は今の時価総額に届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、髙島屋は「良い土地と顧客を持つが、稼ぐ力は平凡な会社」だ。日本橋・大阪・新宿という立地と、外商の顧客という資産は本物だ。保有する不動産の含み益とともに、下値を支える。一方、10年後の自己資本利益率は7%台で、資本コスト7.75%を少し下回る程度だ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、見かけの純利益より小さい。店の改装、SCの開発、海外店の投資に毎年大きな資金が要るからだ。2027年2月期の成長投資は約1,500億円にのぼる。
資本の使い方の評価は割れる。転換社債の買い戻しで希薄化を止めたのは筋が通る。ただ、株価が上がった後に買ったので、約720億円の損失という高い買い物になった。ハノイなど未知の市場への投資は、成長の芽でも確信度は下がる。
今の値段は、含み益を税引後で足した純資産に対して1.2倍弱だ。安全域は薄い。筆者は、いま払ってよい値段は、市場の値段より2割ほど低いと見る。
何で稼ぐ会社か
髙島屋の稼ぎは三つの層でできている。まず国内の百貨店だ。大阪店が最大で、日本橋・横浜・京都・新宿が続く。グループの総額売上は約1兆300億円だが、百貨店は商品を預かって売る消化仕入れが多い。決算に出る営業収益は約4,900億円と、ほぼ半分になる。
客層は二つに割れる。国内の顧客は外商が支える。外商は担当者が自宅や職場を訪ねて売る仕組みで、一人当たりの購入額が大きい。もう一つが訪日客の免税売上で、中国客がインバウンド売上の約半分を占める。2025年度は中国客の減少でインバウンド売上が約2割減ったが、国内客が穴を埋めた。
第二の層は商業開発だ。子会社の東神開発が玉川・柏・立川・京都などのSC(ショッピングセンター)を運営し、賃料を稼ぐ。百貨店を核にする点が特徴で、日本橋や新宿でも百貨店と一体の運営を進めている。
第三の層が海外だ。シンガポールは百貨店とSCの両方を持つ。ベトナムのホーチミンは、改装とコスト改善で累積損失を解消した。上海とバンコクは赤字の立て直し中だ。2027年秋にはハノイで第1期(商業面積約3.5万平方メートル)が開き、高島屋は5つ目の海外店を出す。
このほか、タカシマヤカードを中心とする金融業(会員約500万人)と、内装工事の建装業がある。カードは顧客の囲い込みの仕掛けで、利益は年56億円ほどだ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、立地と顧客との関係にある。日本橋店は国の重要文化財の建物で、大阪店は難波の一等地に建つ。同じ場所に別の店は建てられない。外商の顧客との長い付き合いも、乗り換えにくい資産だ。
ただ筆者は、堀が三越伊勢丹ほど深くないと見る。伊勢丹新宿本店のように突出した旗艦店がなく、稼ぎが店ごとに分かれている。地方店の整理も続き、2026年1月には堺店が閉じた。
資本の効率は長く低かった。2020年2月期までは営業利益率が3%前後、自己資本利益率は4%前後にとどまった。いまの利益率は11%と高く見えるが、これは売上を純額で計上する形に変わった影響が大きく、実力が三倍になったわけではない。実力は営業利益の絶対額で測るのがよい。
財務は、純現金の同業とは違う。純有利子負債は2,040億円で、転換社債の買い戻しでふくらんだ。営業利益は支払利息の約7倍あり、すぐ困る水準ではないが、借り換えで利払いは重くなる。
経営は、還元と資産の整理で動き出した。ただ、これは外部の株主に促された面がある。自分で資本効率を上げ続ける会社かどうかは、まだ判断がつかない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
百貨店は、数量が増えない業態だ。国内の人口は減り、衣料はEC(ネット通販)や専門店に流れる。2025年の全国の百貨店売上は5兆6,754億円で、5年ぶりの減収だった。
それでも利益は伸びてきた。高額品の値上がりと富裕層の消費、訪日客の高額買いが客単価を押し上げたからだ。髙島屋は国内の百貨店で三越伊勢丹ホールディングスやJ.フロント リテイリングと並ぶ上位に入る。全国の売上に占める割合は、筆者の推計で15%前後になる。
足もとの焦点は二つある。一つは中国客だ。2025年後半は渡航自粛で免税売上が落ち、2026年に入って戻りはじめた。もう一つは制度で、2026年11月から免税の方式が「リファンド方式」に変わる。いったん税込みで売り、出国時に税関で確認してから返金する仕組みだ。現場の手間と買い控えの度合いは、まだ読めない。
競争の形は、百貨店同士の統合がほぼ終わっている。残る相手は、ネット通販、ユニクロなどの専門店、郊外のモールだ。髙島屋は百貨店の外にも出て、SCと金融で収益の柱を増やす道を選んだ。
国内の需要は、数量が減り、物価で価格が上がる世界だ。店を絞って1店舗当たりの収益を上げた会社が勝ち、絞れない会社は規模が縮む。髙島屋は、その分かれ目に立っている。
資本政策と M&A
還元は強まっている。2026年度は配当性向を30%に上げ、200億円規模の自社株買いも打ち出した。2026年2月期には転換社債(額面600億円)を買い入れて消した。株価が転換価格を上回り、株が増える恐れがあったためだ。その代わり約720億円の特別損失が出た。
成長投資は大きい。2027年2月期は約1,500億円を投じ、うち510億円が海外の商業開発だ。ハノイや次世代SCに向かう。筆者が気にするのは、投資の稼ぎが資本コストを超えるかだ。会社は2031年に利益750〜800億円、ROIC(投下した資本に対する稼ぎ)7%を掲げる。資本コストをわずかに超える程度で、大きな余裕はない。
株主の面では、旧村上ファンド系が2025年に5%超を取得し、のち8%台まで買い増した。2026年2月に5%を下回ったと報じられたが、その間に非中核の不動産を売る方針が示された。賃貸等不動産の含み益は約1,270億円とされる。TOB(株式公開買い付け)の確率は、kabufuの試算で10年以内に約16%だ。
株主優待は年約3.5億円(会社の費用ベース。10%割引カード。株主約23万人の年間割引1,500円の仮定の下限(売上値引処理で開示なし))。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+35億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
髙島屋は、割安な資産と成長の芽が同居する会社だ。まず含み益が大きい。賃貸等不動産だけで約1,270億円、本業用の土地建物まで含めれば3,000億円超との見方もある。非中核の不動産を売る方針は決まり、代金は成長投資と還元に回る。
次に、利益の質が上がる。会社は2027年2月期の営業利益を590億円と見込み、期中に上方修正した。外商の新規入会は上期に前年同期比で2割増え、中国客の比率が下がっても、他の地域の訪日客が補い始めている。
そして海外だ。ベトナムは累積損失を解消し、ハノイの開業で東南アジアの柱が育つ。商業開発と金融は利益率が高く、百貨店が弱い年も全体の利益を支える。2031年に750〜800億円という会社の目標が実現すれば、純利益は600億円に迫り、今の時価総額は割安に変わる。
さらに、旧村上ファンド系が見ている会社であり、資本効率の改善や再編の動きは上振れの要因になる。10年以内にTOBが起きる確率も、無視できない大きさだ。
慎重な見方
今の値段は、良い話を先に払いすぎている。第一に、利益の波が大きい。百貨店は景気に敏感で、2021年2月期は営業赤字に落ち、PBRは0.27倍まで下がった。訪日客は中国が半分近くを占め、外交関係が悪化すれば免税売上は一気に崩れる。2026年11月の免税制度の変更も、買い控えを生みかねない。
第二に、稼ぐ力が資本コストをわずかに上回るだけだ。10年後の自己資本利益率は7%台で、ここに高い倍率は付けられない。成長投資は約1,500億円と大きく、投資の稼ぎが資本コストを超えなければ価値は増えない。
第三に、借金だ。純有利子負債は2,040億円に増え、借り換えで利払いは今より重くなる。含み益は本物でも、売れば税を払い、売った後は賃料収入が消える。アクティビストの保有比率は5%を割り、外圧は弱まった。
国内の百貨店は、人口減とネット通販で数量が増えない。地方店の閉鎖は続き、会社が掲げる2031年の目標も、成長投資が思うように稼がなければ届かない。
どちらに重みを置いたか
確率は、慎重な見方へやや寄せた。強気の見方の核である含み益と資産売却は、悲観の床を厚くするが、中立の利益を押し上げはしない。中立の10年後は純利益が約470億円、自己資本利益率が7%台で、払える倍率に上限がある。
一方で、国内の富裕層とハノイの上振れは確かにある。楽観とやや楽観にも3割ほどの確率を残した。悲観は、中国客の急減と景気後退が重なる場合を見て、10年では少し厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,056 円6,023 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 727 円2,129 億円)。 今の値に割り戻すと 1,475 円4,321 億円、今との差 −30.6%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,119 円9,141 億円 | 1,002 円2,935 億円 | +93.9% | +6.8% | 330 円966 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,707 円7,931 億円 | 899 円2,635 億円 | +69.6% | +5.4% | 721 円2,113 億円 |
| 中立 | 38% | 2,350 円6,886 億円 | 797 円2,335 億円 | +48.1% | +4.0% | 1,196 円3,504 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,330 円3,896 億円 | 555 円1,626 億円 | −11.3% | −1.2% | 415 円1,215 億円 |
| 悲観 | 12% | 660 円1,934 億円 | 347 円1,018 億円 | −52.6% | −7.2% | 121 円354 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,056 円6,023 億円 | 727 円2,129 億円 | +30.9% | +2.7% | 2,782 円8,152 億円 |
今の株価時価総額 2,126 円6,228 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 次世代SCと海外が育ち、百貨店は富裕層の砦として残る 利益 619 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 3,119 円9,141 億円
10年のうちに、国内の旗艦店は外商と観光客の取り込みで強さを保つ。地方店の整理は進むが、残した店の収益は物価以上に伸びる。商業開発は次世代SCへの転換が当たり、二子玉川や柏、京都、日本橋が稼ぐ。ハノイの第2期が2030年以降に開き、海外の開発が利益の柱になる。非中核の不動産を売った資金を成長と還元に回し、営業利益は960億円前後、純利益は約620億円に届く。自己資本利益率は10%近くまで上がり、倍率も上がる。資産の整理と還元が両立し、1株当たりの価値が着実に増える。会社の2031年の目標を5年早く超え、2036年2月期まで伸び続ける姿が描ける。
- 国内百貨店業:数量 10.5(国内百貨店の店舗数(店))× 価格 424(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 4,448 億円・営業利益 423 億円。国内百貨店。店舗数は実質、1店舗当たり収益は物価込み
- 海外百貨店業:数量 5.0(海外百貨店の店舗数相当(店))× 価格 115(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 575 億円・営業利益 152 億円。海外百貨店。ベトナム中心、上海・タイの改善
- 国内商業開発業:数量 11.0(国内の運営施設数(施設))× 価格 77(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 852 億円・営業利益 115 億円。東神開発の国内SC・賃貸
- 海外商業開発業:数量 3.6(海外の運営施設数相当(施設))× 価格 110(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 396 億円・営業利益 135 億円。シンガポール・ベトナムの開発、ハノイ
- 金融業:数量 590(カード会員数(万人))× 価格 0.68(会員1万人当たり営業収益(億円))→ 売上 398 億円・営業利益 101 億円。カード会員と取扱高
倍率:事業の純利益 619 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.12 倍、時価総額 8,740 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:投資が当たり、百貨店の縮小も最小限で済む筋書き。会社の2031年の目標を上回る水準で、実現には複数の条件が要るため1割弱に置いた。
やや楽観 20% 海外と開発が伸び、利益の質が上がる 利益 546 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 2,707 円7,931 億円
国内の百貨店は店を絞りつつ、1店舗当たりの収益を物価以上に伸ばす。商業開発と海外が利益の4割を占めるようになり、百貨店の波が小さくなる。ベトナムの店は規模が育つ。営業利益は870億円前後、純利益は約550億円になる。会社が掲げる2031年の目標を達成し、その後も伸びる。ただ投資が大きく、自己資本利益率は8%台にとどまる。非中核の不動産の売却と還元が進み、資本効率も改善する。これが実現すれば、今の値段にも一定の正当性が出る。ただし、その場合でも倍率を大きく上げる余地は小さい。海外の開発は、ホーチミンとハノイを軸に利益の柱として定着する。
- 国内百貨店業:数量 10.3(国内百貨店の店舗数(店))× 価格 416(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 4,282 億円・営業利益 377 億円。国内百貨店。店舗数は実質、1店舗当たり収益は物価込み
- 海外百貨店業:数量 4.9(海外百貨店の店舗数相当(店))× 価格 115(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 563 億円・営業利益 141 億円。海外百貨店。ベトナム中心、上海・タイの改善
- 国内商業開発業:数量 10.5(国内の運営施設数(施設))× 価格 77(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 813 億円・営業利益 106 億円。東神開発の国内SC・賃貸
- 海外商業開発業:数量 3.3(海外の運営施設数相当(施設))× 価格 110(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 363 億円・営業利益 118 億円。シンガポール・ベトナムの開発、ハノイ
- 金融業:数量 570(カード会員数(万人))× 価格 0.68(会員1万人当たり営業収益(億円))→ 売上 385 億円・営業利益 92 億円。カード会員と取扱高
倍率:事業の純利益 546 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.49 倍、時価総額 7,366 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2031年目標を達成し、海外と開発が育つ流れ。実現の可能性は確かにあり、2割を置いた。
中立 38% 百貨店は小さくなるが、物価並みに稼ぎ続ける 利益 473 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,350 円6,886 億円
国内の店は11から10に減る。1店舗当たりの収益は物価で伸び、外商と観光客が支える。商業開発は施設の入れ替えで賃料を物価並みに伸ばし、金融も会員の厚みで増える。海外は上海とタイが黒字になり、ハノイの第2期も含めて少しずつ大きくなる。営業利益は770億円前後と、会社が掲げる2031年の目標(750〜800億円)の水準に収まる。純利益は約470億円、自己資本利益率は7%台。倍率は平常の水準にとどまる。2031年に利益750〜800億円という目標は、おおむね達成される。それ以降は物価を超える成長がなく、投資の稼ぎは資本コストをわずかに超える程度で止まる。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約3.5億円×10年)を足している。
- 国内百貨店業:数量 10.0(国内百貨店の店舗数(店))× 価格 408(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 4,079 億円・営業利益 334 億円。国内百貨店。店舗数は実質、1店舗当たり収益は物価込み
- 海外百貨店業:数量 4.7(海外百貨店の店舗数相当(店))× 価格 115(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 540 億円・営業利益 127 億円。海外百貨店。ベトナム中心、上海・タイの改善
- 国内商業開発業:数量 10.0(国内の運営施設数(施設))× 価格 77(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 775 億円・営業利益 97 億円。東神開発の国内SC・賃貸
- 海外商業開発業:数量 3.0(海外の運営施設数相当(施設))× 価格 110(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 330 億円・営業利益 102 億円。シンガポール・ベトナムの開発、ハノイ
- 金融業:数量 540(カード会員数(万人))× 価格 0.68(会員1万人当たり営業収益(億円))→ 売上 365 億円・営業利益 84 億円。カード会員と取扱高
倍率:事業の純利益 473 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 6,102 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の店は減るが、物価の分は価格に転嫁でき、海外と開発が補う標準的な姿。中立に4割弱を置いた。
やや悲観 22% 百貨店の縮小が進み、不動産会社に近づく 利益 290 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,330 円3,896 億円
ネット通販と専門店への流出が続き、国内の店は9つに減る。外商は残るが若い客が育たず、客単価の伸びは物価に追いつかない。中国客の戻りは限られ、免税は細る。海外は上海とタイの撤退や縮小で、ベトナムとシンガポールに頼る形になる。商業開発と金融の利益は残るが、百貨店の落ち込みを埋めきれない。営業利益は520億円前後、純利益は約290億円。自己資本利益率は4%台に下がる。含み益のある不動産の売却と賃料収入で下値は支えられるが、本業の小売としての優良さは薄れる。同領域の他社と比べても、見劣りする水準だ。株主の取り分は、資産の売却と還元の巧拙で大きく変わる。
- 国内百貨店業:数量 9.0(国内百貨店の店舗数(店))× 価格 392(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 3,530 億円・営業利益 212 億円。国内百貨店。店舗数は実質、1店舗当たり収益は物価込み
- 海外百貨店業:数量 4.2(海外百貨店の店舗数相当(店))× 価格 109(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 458 億円・営業利益 87 億円。海外百貨店。ベトナム中心、上海・タイの改善
- 国内商業開発業:数量 9.0(国内の運営施設数(施設))× 価格 75(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 676 億円・営業利益 74 億円。東神開発の国内SC・賃貸
- 海外商業開発業:数量 2.6(海外の運営施設数相当(施設))× 価格 104(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 271 億円・営業利益 76 億円。シンガポール・ベトナムの開発、ハノイ
- 金融業:数量 500(カード会員数(万人))× 価格 0.64(会員1万人当たり営業収益(億円))→ 売上 321 億円・営業利益 58 億円。カード会員と取扱高
倍率:ROE 4.6%(純利益 290 億円 ÷ 自己資本 6,298 億円)。事業の ROE が資本コスト 7.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER は 1÷k = 11.8 倍。百貨店の縮小が進み不動産会社に近づく構造で、数量が増えないうえ、やや悲観は上限の 8 割 の 9.4 倍に置いた。
確率:数量が増えない業態で、10年の間に1割ほどの店が減り、顧客の世代交代に失敗する道は現実的。楽観側より厚い2割強とした。
悲観 12% 構造的に負け、含み益を取り崩して延命する 利益 76 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 660 円1,934 億円
百貨店の数量が構造的に落ち、店の数は8つに減る。ネット通販・専門店へ顧客が流れ、外商も世代交代に失敗する。中国との関係悪化で免税が細り、海外では上海・タイから撤退する。商業開発は一部の物件を売って借金を返す。店の減損が出て自己資本を削り、営業利益は240億円ほどにとどまる。会社は不動産を持つ会社に近づき、資産の含み益が値段を支える。会社は、百貨店を持つ不動産会社として評価される。倍率は純資産を基準にし、資産の売却益と含み益が株主の取り分を決める。店の数は減り続け、10年後の稼ぎは今の半分以下になる。
- 国内百貨店業:数量 8.0(国内百貨店の店舗数(店))× 価格 345(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 2,761 億円・営業利益 83 億円。国内百貨店。店舗数は実質、1店舗当たり収益は物価込み
- 海外百貨店業:数量 3.5(海外百貨店の店舗数相当(店))× 価格 98(1店舗当たり営業収益(億円、純額))→ 売上 342 億円・営業利益 41 億円。海外百貨店。ベトナム中心、上海・タイの改善
- 国内商業開発業:数量 8.0(国内の運営施設数(施設))× 価格 66(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 527 億円・営業利益 42 億円。東神開発の国内SC・賃貸
- 海外商業開発業:数量 2.2(海外の運営施設数相当(施設))× 価格 93(1施設当たり営業収益(億円))→ 売上 205 億円・営業利益 45 億円。シンガポール・ベトナムの開発、ハノイ
- 金融業:数量 450(カード会員数(万人))× 価格 0.57(会員1万人当たり営業収益(億円))→ 売上 258 億円・営業利益 31 億円。カード会員と取扱高
倍率:構造的に負けて含み益を取り崩して延命する筋書きで、稼ぐ力(76 億円 ÷ k)は約 890 億円と小さい。店舗の家賃は固定の約束で残る。売れる資産の税後から純有利子負債を引いた約 1,950 億円(floor_assets_oku)を床とし、今の自己資本 4,498 億円に対する PBR 0.43 倍で測った。
確率:もう優良ではなくなる構造的な負けの筋書き。投資の失敗、中国依存、景気の悪化が同時に重なる必要があるが、百貨店業態の逆風を考え1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内百貨店業
大阪・日本橋・横浜・京都・新宿など国内11店の百貨店。外商(富裕層の訪問販売)と訪日客の高額消費が利益の中心。
| 数量国内百貨店の店舗数(店) | 価格1店舗当たり営業収益(億円、純額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 11.0 | 293 | 3,220 | 249 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 408 | 4,079 | 334 |
取り方:国内百貨店業のセグメント営業収益約3,220億円(2027年2月期計画3,285億円が前期比+2%と整合)を、会社概要の百貨店11店で割って1店舗当たり約293億円。営業利益は249億円(利益率7.7%)。店舗数は実質の数量、1店舗当たりの値は物価・外商・訪日客が乗る名目。
海外百貨店業
シンガポール・上海・ホーチミン・バンコクの4店。ベトナムとシンガポールが稼ぎ、上海とタイは赤字から立て直し中。
| 数量海外百貨店の店舗数相当(店) | 価格1店舗当たり営業収益(億円、純額) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4.0 | 86 | 343 | 85 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 115 | 540 | 127 |
取り方:海外百貨店業の営業収益343億円・営業利益85億円(会社サイト)を、シンガポール・上海・ホーチミン・バンコクの4店で割った。新店(ハノイ)や客数の実質的な伸びは「店舗数相当」を増やして表す。
国内商業開発業
子会社の東神開発が運営する玉川・柏・立川・京都などのSC(ショッピングセンター)と賃貸施設。収益は賃料。
| 数量国内の運営施設数(施設) | 価格1施設当たり営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 9.0 | 58 | 520 | 66 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 77 | 775 | 97 |
取り方:国内商業開発業の営業収益約520億円・営業利益66億円を、東神開発の国内9拠点で割って1施設当たり約58億円。施設数は開示が時点不明の拠点数による推定で、規模の違いは平均に混ざっている。
海外商業開発業
シンガポール(ニーアンシティの商業棟)とホーチミンの施設、2027年秋開業のハノイ高島屋S.C.。
| 数量海外の運営施設数相当(施設) | 価格1施設当たり営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2.0 | 82 | 164 | 58 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 110 | 330 | 102 |
取り方:海外商業開発業の営業収益約164億円・営業利益58億円を、稼働中のシンガポールとホーチミンの2施設で割った。ハノイは開業後の稼働に応じて施設数相当へ加える(推定)。利益率は賃貸中心で高い。 数量は実物(施設数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
金融業
髙島屋ファイナンシャル・パートナーズが発行するタカシマヤカードなど。百貨店の顧客囲い込みと一体。
| 数量カード会員数(万人) | 価格会員1万人当たり営業収益(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 500 | 0.50 | 252 | 56 |
| 10 年後 中立 | 540 | 0.68 | 365 | 84 |
取り方:金融業の営業収益約252億円・営業利益56億円を、カード会員約500万人(会社案内。時点は不明)で割った。会員数は実質の数量、1人当たり収益は物価で上がる名目。
リスクと懸念
中国客と免税制度
訪日客の約半分を占める中国客は、外交や渡航自粛で急に減る。2026年1月は免税売上が前年比で約2割減った。2026年11月からはリファンド方式に変わり、買い控えや現場の負担が増える恐れがある。免税は利益率が高く、落ち込みは百貨店の利益に直結する。
景気と裁量消費
百貨店は高額品と衣料の比率が高く、景気の悪化で売上が大きく落ちる。店の人件費や維持費は減らしにくい。2021年2月期は営業赤字になり、PBRは0.27倍まで下がった。株高で富裕層の消費が支えられている今の姿は、株価の下落で反転しうる。
成長投資の稼ぎ
2027年2月期の成長投資は約1,500億円と大きい。次世代SC・ベトナム・金融に向かうが、会社の目標のROIC7%は資本コストをわずかに超える程度だ。投資が計画どおり稼がなければ、規模は増えても価値は増えない。投資の期間は減価償却が先に増え、利益を圧迫する。
借金と金利
純有利子負債は2,040億円で、転換社債の買い戻しでふくらんだ。借り換えが進むと利払いは、推定で3年後に約30億円、10年後に約50億円増える。賃借している店の家賃は固定の約束で、不況でも減らない。2028年3月期から新リース会計基準で数字の形が変わる点にも注意がいる。
海外の赤字と現地リスク
上海とバンコクは赤字が続き、立て直しが遅れれば撤退や減損になる。シンガポールも消費の停滞で小幅減益だった。ハノイは新しい市場への初めての大型出店で、現地の競合や規制、為替の影響を受ける。海外が柱になる前に失速する可能性がある。
資産売却と還元の実行
非中核の不動産の売却は、時期と価格が決まっていない。安く売れば含み益を取りこぼし、売った後は賃料収入が消える。株主の外圧は保有比率の低下で弱まっており、約束した還元や資産の整理が緩む恐れがある。市場はそこを織り込み済みで、期待が外れた時の下げは大きい。
今後の分かれ目
- 中国客が戻らず、他の地域の訪日客も伸びない
- 免税売上が細り、国内百貨店の利益が目減りする。やや悲観の確率を上げ、倍率の上限も下がる。
- 非中核の不動産の売却が早く進み、代金で自社株買いが続く
- 資本効率が上がり、1株当たりの価値が増える。やや楽観の側へ確率を寄せる。
- ハノイの第1期が計画どおり開き、稼働が早く立ち上がる
- 海外の開発の利益が柱に育ち、2031年の利益目標の確度が上がる。楽観の確率が増す。
- 景気後退で富裕層の消費が冷え込み、外商の売上が落ちる
- 百貨店の利益が急に減り、悲観の筋書きに近づく。純資産と含み益が下値を支える。
- 2026年11月のリファンド方式で免税売上が想定以上に落ちる
- 訪日客の寄与が小さくなり、中立の利益を下方に直す。
- 旧村上ファンド系などの株主が再び保有を増やし、再編やTOBが現実になる
- 含み益と資産の価値が評価され、上振れの要因になる。ただ、条件次第で買われる側の値段にとどまる。
見ておくもの
- 国内顧客売上と外商の新規入会(四半期の決算説明会資料)
- 免税売上と中国客の比率(百貨店協会・各社の月次)
- 非中核不動産の売却の規模と時期、自社株買いの実施額
- ハノイ高島屋S.C.の開業時期と稼働、上海・タイの損益
- 純有利子負債、ROIC、営業利益の2027年2月期予想との差
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとの数量(店舗数・施設数・会員数)と価格(1単位当たり収益)から利益を積み、今の値段には寄せていない。中立・やや楽観・楽観は正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 7.75%)の9割5分に置き(堀は普通=残る割合1/2)、ROEが資本コストを下回る中立は上限1÷k(11.8倍)の近くで置いた。悲観は市場の倍率や過去の底でなく、売れる資産の税後から純有利子負債を引いた床(含み益の税引後約890億円を含む概算1,950億円)で置いた。2026年2月期の純損失は転換社債の買い戻しの一時損失で、利益の基準は2027年2月期の会社予想とし、自己資本もその一時損失を除いた利益で流した(検査が基準年の純損失で流れを低く見積もるため、10年の自己資本に注意が出る)。新リース会計(2028年3月期から貸借対照表に載る)の前の形、つまり家賃を費用に入れた形で数字をそろえた。リースの未経過額は確認できていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→14.12 倍・やや楽観 PER 11.2→13.49 倍・中立 PER 11.2→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%。景気と免税の波で循環 +0.5%、純有利子負債が 3 倍に近く借金 +0.25%、百貨店の縮小で寿命 +0.25%、値決めは普通の 0。黒字化しており存続に疑いは無く上乗せ(extra)は置かない。次世代 SC・海外の実行といった個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。