結論
うかいは、八王子の「うかい鳥山」から始まった、値の張る会食料理と洋菓子の会社だ。和食と洋食のレストランを 13 店、洋菓子店を 5 店持つ。筆者の結論は「割高」。稼ぐ力に対して、今の時価総額は大きすぎる。
まず、稼ぎの土台が痩せた。売上の 19% を占めた旗艦店「東京芝とうふ屋うかい」が、土地の契約満了で 2026 年 3 月末に閉店した。会社は今期の売上を 119 億円と、1 割以上減る前提で、営業損失 6 億円を見込む。前の期の営業利益 8 億円から、一気に赤字へ落ちる形だ。
次に、立て直しの道具が小さい。八王子の新工房(投資 22 億円)で菓子を第 2 の柱に育て、新宿の京王プラザホテルに新店を出す。ただ、会社が掲げる 2030 年 3 月期の目標は、売上 140 億円・営業利益 8.5 億円・ROE 5% にとどまる。芝店を失う前の水準を、4 年かけて取り戻す計画にすぎない。
強みもある。ブランドの力は本物で、値上げが通りやすい。自己資本比率は 48% で、定期預金と有価証券を含めた現金は 54 億円ある。創業家の持株会、京王電鉄、キッコーマンが安定株主として並び、急に崩れる会社ではない。
それでも、10 年後の中立の営業利益は 9 億円ほどで、今の時価総額を支えるには足りない。数字が良く出るまで待つ会社だと、筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、外食は資本の重い事業だ。店を建て、改装し、人を育てなければならない。それでも十分に稼げるのは、他社がまねできない看板を持つ会社だけだ。
うかいは、看板は持つが、稼ぎは十分ではない。営業利益率は直近で 6% 台。過去 10 年の 5 期で赤字を出し、2020〜2022 年は 3 期続けて大きく損を出した。この 10 年の ROE の中央値は 3.6%。資本のコストを下回る水準が、通常運転だったのである。
株主が自由に使える利益は、ほとんどない。新工房と新店で、営業キャッシュフローの何倍も使う局面が続く。ためた現金は、これらの投資に消え、株主に戻る額は小さい。
経営への評価は、二面ある。コロナ禍で赤字を出しても、増資に頼らず、店の入れ替えと財務の維持で乗り切った。一方、旗艦店の土地の契約が切れるという重大な事実に、長く手を打てなかった面は否めない。後継の拠点づくりは、これからだ。
安全域は、今の値段にはない。稼ぎの 10 年の見通しに対して、時価総額が大きすぎる。筆者は、売上の穴が埋まり、営業利益が 10 億円を超える道筋が見えるまで、買う理由はないと考える。
資本の使い方で気になるのは、閉店の時期だ。旗艦店の土地の契約が切れることは、早くから分かっていたはずだ。その穴を埋める新店と新工房が、2026 年にそろって動き出すのは、遅れた対応に見える。ただ、新工房を自己資金と借入で建て、増資に頼らなかった点は、評価できる。
何で稼ぐ会社か
うかいは、レストラン事業と物販事業の 2 本で稼ぐ。2026 年 3 月期の売上は 136 億円で、レストランが 110 億円、物販が 20 億円、残りが文化事業だった。
レストランは、和食 5 店・洋食 8 店の計 13 店だ。銀座・表参道・六本木・あざみ野の「うかい亭」、鉄板焼きの「グリルうかい」、豆腐会席の「とうふ屋うかい」などが主力で、客単価が 1 万円を超える高級業態に寄っている。創業の地は、東京・八王子の高尾山のふもとだ。
物販は、洋菓子の「アトリエうかい」を中心に、東京駅のグランスタや、大阪・京都の髙島屋など 5 店で売る。売上は 11% 増え、利益率も上がった。2026 年 9 月には、八王子に新工房「Cafe & Factory HACHIOJI」を開いた。生産能力は既存の工房の 3 倍で、投資は 22 億円。会社はこれを、レストランに続く第 2 の収益の柱と位置づける。
文化事業は、箱根ガラスの森の運営だった。2025 年 10 月に、子会社へ事業ごと承継して手放した。
従業員は 589 人で、臨時雇用を含めても少人数だ。台湾では、現地企業との提携で、高雄と台北に「うかい亭」を出す。自社で資金を出さない、提携型の出店である。2025 年には、新規事業を担う子会社も作った。
売上の稼ぎ方にも癖がある。客は法人の会食、顔合わせ、記念日の個人客、訪日客が混ざる。店は都心型と郊外型に分かれ、八王子の大和田の「とうふ屋うかい」は庭のある郊外の店だ。都心の店は賃借が中心とみられ、家賃が固定費として重い。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいえば、「ブランドは強いが、体の小さい会社」だ。強みと弱みがはっきり分かれる。
強みは三つある。一つ目は、ブランドと値上げの力だ。60 年を超える歴史と、自家製豆腐・特選牛という看板で、客単価の高い会食を維持している。旗艦店の客数は前の期にほぼ横ばいだったが、売上は 13.5% 伸びた。値上げが通った証拠である。二つ目は、財務が堅いことだ。自己資本比率は 48% で、借入は 21 億円と軽い。三つ目は、株主の安定感だ。創業家の持株会が 24%、京王電鉄が 14%、キッコーマンが 9% を持つ。
弱みも三つある。一つ目は、店数が少なく、1 店の影響が大きいことだ。芝店 1 店で、全社売上の 19% が消えた。二つ目は、景気への弱さだ。2020〜2022 年の 3 期で、純損失の合計は 31 億円に達し、自己資本は 51 億円から 28 億円まで細った。三つ目は、資本の効率の低さである。過去 10 年の ROE の中央値は 3.6% で、資本コストに届かない。
店舗の多くは賃借だ。家賃は、売上が落ちても減らない固定の約束である。現金が厚く見えても、その分は賃借料の約束と、これからの設備投資に回る。見かけの財務は、実際より強くない。
稼ぎの質を見ると、コロナ前の 2016〜2019 年の営業利益率は、1.4〜3.6% と薄かった。コロナ後の 2023 年 3 月期から 6% 台に上がったのは、値上げと、不採算店の整理(2022 年に阪急うめだ店、2024 年にうかい竹亭とたまプラーザ店を閉店)の成果である。ただ、この水準が景気の波を越えて続くかは、まだ確かめられていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、コロナ禍からの回復で 2023 年に約 24 兆円まで戻った。その中で、うかいの属する高級会食は、観光客と法人需要に支えられる、波の大きい分野である。
追い風は、2 つある。1 つ目は、訪日客の増加だ。東京の高級業態は、富裕な旅行者を取り込みやすい。2 つ目は、物価上昇の下での値上げの通りやすさだ。ブランド力のある店は、客数を落とさずに客単価を上げられる。
向かい風は、3 つある。1 つ目は、人件費だ。最低賃金の上昇と、調理・接客の人手不足で、店の運営費は毎年、物価を超えて上がる。高級業態は人手をかけるため、特に響く。2 つ目は、食材の高騰だ。国産大豆、和牛、輸入の食材は、円安で上がりやすい。3 つ目は、景気の波だ。会食と接待は、不況の最初に削られる。リーマン後の外食は、既存店売上が 2〜3 割落ちた。
10 年先を見ると、国内の客数は人口減で伸びない。数量は店の数と席の稼働で決まり、1 店ごとの量はほぼ横ばいになる。伸びを生むのは、客単価と、菓子・通販・提携といった、店の外の売上だ。
勝ち残るのは、ブランドで値を決められ、少人数で回せる店だ。うかいは前者に強いが、後者の自動化では、大手に比べて資金も規模も小さい。
競争の形も押さえておく。高級会食では、ホテルの料亭や専門の料理店、老舗の会席が競う。差を生むのは、立地、庭や建物の雰囲気、料理人の腕、予約の取りにくさだ。うかいは、豆腐と特選牛、庭のある店構えで独自性を保つが、同じ客層をホテルや外資系の高級店も狙っており、価格だけでは勝てない。
資本政策と M&A
資本政策は、守りが中心だ。配当は年 1 回で、前の期は性向が 28.5%。今期は赤字の予想でも、配当は据え置く計画だ。自社株買いの実績は確かめられなかった。方針は「配当の継続と、財務の健全性のバランス」とされる。
投資は、いま重い局面にある。新工房に 22 億円、新宿の京王プラザホテルの新店(2026 年 12 月予定)にも投資する。前の期は、営業キャッシュフローの 6 億円に対し、投資に 23 億円を使った。足りない分は、定期預金と有価証券を崩して賄った。
現金の見方に注意が要る。現金同等物は 31 億円だが、定期預金 13 億円と有価証券 10 億円を足すと、現金類は約 54 億円になる。借入 21 億円を引いても、実質で 33 億円ほど残る。ただ、この中から、閉店の損失の支払い(2 億円)、新工房の残りの支出(約 15 億円)、京王の新店の投資、今期の赤字の穴埋めが出ていく。したがって、事業に要らない余った現金は、今はないものとして扱った。
賃借の約束も重い。家賃の額は開示で確かめられなかったが、外食の通例から、年に 9〜11 億円の規模と推定した。残り 8 年で 70〜90 億円となり、純現金を大きく上回る。新リース会計基準では、2028 年 3 月期から、この賃借が貸借対照表に載る。
株主優待は、9 月末の株主に、100 株で優待券 3 枚(1 枚 0.3 万円分)から贈る。費用の年額は開示で確かめられなかったので、額面から原価と利用率を見て、年 1 億円ほどと推定した。この分は、10 年の還元に、続く見込みを掛けて足した。
株主は、創業家の持株会、京王電鉄、キッコーマンが約 47% を持つ。親会社はいないが、安定株主が厚く、現金が増えても還元が進みにくい。TOB の可能性は、ほかの会社より低いとは言えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
まず、ブランドの力が本物だ。芝店は、客数が横ばいのまま、売上を 13.5% 伸ばした。値上げが通る客層を持つ会社は、物価が上がる時代に強い。
次に、穴の埋め方が見えている。新宿の京王プラザホテルに、約 316 坪の大型店を出す。ホテルの宿泊客と法人需要を取り込める立地で、朝食まで出して稼働を上げる。八王子の新工房は、生産能力が 3 倍で、洋菓子の売上を伸ばす土台になる。物販は、すでに 11% 増収で、利益率も上がっている。
さらに、今期の赤字予想は保守的だ。前の期は、会社予想の経常利益 4.9 億円に対し、実績は 8.5 億円と大きく上回った。第 1 四半期の営業損失も 0.5 億円にとどまった。
最後に、財務の余裕と安定株主だ。現金類は 54 億円あり、倒産の心配はない。京王電鉄やキッコーマンが持つので、乱暴な動きは起きにくい。長く続く店は、景気が戻れば利益が一気に戻る。
もう一点、時間をかけて磨いた店は、資産として残る。庭と建物を作り込んだ店は、簡単にまねできない。ブランドの看板が効く間は、立地の悪さや人手不足を、値上げと稼働の工夫で補える。
慎重な見方
まず、穴が大きすぎる。芝店は、売上の 19% を占め、利益率も会社の平均を上回っていたはずだ。代わりの京王の店は、賃料の重いホテルの中にあり、同じ利益は出にくい。会社の今期予想は営業損失 6 億円、来期もコンセンサスは赤字だ。
次に、稼ぐ力の履歴が弱い。過去 10 年の営業利益率は、直近の 6% 台が最高で、2020〜2022 年は 3 期続けて赤字だった。ROE の中央値は 3.6% で、資本のコストに届かない。
さらに、投資が回収できるか分からない。新工房の 22 億円は、年間の営業キャッシュフローの 3 倍以上だ。菓子の売上が 3 倍の生産能力を埋められなければ、減価償却だけが残る。
最後に、固定費の重さだ。賃借料と人件費は、客が減っても減らない。人手不足で賃金は物価を超えて上がり、高級業態は人手をかけるため、利益が削られやすい。時価総額は、この見通しに比べて高すぎる。
最後に、安定株主の存在は、買い手にとって両刃だ。創業家と取引先で約 47% を持つため、株式の需給は軽くなく、TOB のような還元の機会も出にくい。値段が上がる理由が、事業の稼ぎ以外にはない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。ブランドと財務の厚さは本物だが、芝店という最大の稼ぎ頭を失い、10 年先の営業利益も今の時価総額を支えられない。強気の見方が指摘する、今期予想の保守性と新工房の伸びは、中立と上振れの筋書きに反映した。ただ、それでも価値は今の時価総額を大きく下回る。悲観は、景気の波に弱い履歴と店数の少なさから、1 割台半ばに置いた。
数字で比べても、慎重な見方が勝つ。中立の価値は今の時価総額の 4 割にも届かず、強気の筋書きでも、価値は時価総額を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,252 円70 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 322 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 815 円46 億円、今との差 −74.4%、 期待の年率 −6.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 3,275 円184 億円 | 498 円28 億円 | +18.3% | +1.7% | 226 円13 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,459 円138 億円 | 445 円25 億円 | −9.0% | −0.9% | 494 円28 億円 |
| 中立 | 35% | 1,483 円83 億円 | 391 円22 億円 | −41.2% | −5.2% | 656 円37 億円 |
| やや悲観 | 28% | 290 円16 億円 | 231 円13 億円 | −83.7% | −16.6% | 146 円8 億円 |
| 悲観 | 14% | 269 円15 億円 | 107 円6 億円 | −88.2% | −19.3% | 53 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,252 円70 億円 | 322 円18 億円 | −50.6% | −6.8% | 1,574 円89 億円 |
今の株価時価総額 3,190 円179 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 京王の店と菓子が当たり、芝店の穴を超える 利益 11 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,275 円184 億円
京王プラザの新店は 2 年で軌道に乗り、ホテルの宿泊客と法人の会食を取り込む。八王子の新工房は菓子の販売を 2 倍近くに伸ばし、通販と百貨店の催事が増える。客単価は物価を上回って上がり、訪日客の取り込みも進む。
営業利益は 17 億円ほどに戻り、利益率は 8% 台と、過去 12 年の最高を超える。配当は性向を上げ、自己資本は 86 億円規模になる。
ただし、この姿には、人件費の上昇を値上げで吸収し続ける前提がある。会社の掲げる 2030 年の ROE 5% を、大きく超える筋書きだ。
芝店の穴が埋まっただけでなく、ブランドの広がりが新しい稼ぎを生む。この筋書きは、株主優待も続き、還元は大きく増える。
- レストラン:数量 70.0(年間の来客数(万人。実質))× 価格 2.27(客単価(万円・名目))→ 売上 159 億円・営業利益 25 億円。来客 70 万人 × 客単価 2.27 万円、セグメント利益率 16.0%(本社費の前)
- 物販(洋菓子):数量 253(販売点数(万点。実質))× 価格 0.21(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 7 億円。販売 252 万点 × 1 点 0.213 万円、セグメント利益率 13.0%
- 文化(箱根ガラスの森):数量 0.0(営業した月数(か月))× 価格 0.92(1 か月あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。承継済みで売上なし
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 16.38 倍、時価総額 184 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:京王の新店が早く黒字化し、菓子が 3 倍の生産能力を埋め、客単価の上昇も続く筋書き。利益率が過去の最高を超える必要があり、低く置いた。
やや楽観 17% 新店と菓子が順調に育ち、利益が戻る 利益 8 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 2,459 円138 億円
新店と菓子が順調で、芝店の穴は 3 年ほどで埋まる。物販は 1.7 倍に伸び、レストランも既存店の客単価が物価並みに上がる。台湾の提携店や通販が小さく上乗せをする。
営業利益は 13 億円ほどで、利益率は 6.8%。直近の最高に並ぶ水準だ。現金は積み上がり、配当も少しずつ増える。
景気の波は来るが、財務の余裕が効き、赤字の期は今期と来期にとどまる。10 年後の自己資本は 77 億円で、ROE は 15% 近くに戻る。
配当は少しずつ増え、株主優待も続く。営業利益は、2030 年 3 月期の会社の計画(8.5 億円)を物価の分も超えて伸びる。
- レストラン:数量 66.0(年間の来客数(万人。実質))× 価格 2.21(客単価(万円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 22 億円。来客 66 万人 × 客単価 2.21 万円、セグメント利益率 15.2%(本社費の前)
- 物販(洋菓子):数量 233(販売点数(万点。実質))× 価格 0.21(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 48 億円・営業利益 6 億円。販売 232 万点 × 1 点 0.207 万円、セグメント利益率 12.0%
- 文化(箱根ガラスの森):数量 0.0(営業した月数(か月))× 価格 0.92(1 か月あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。承継済みで売上なし
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 15.71 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新店と菓子が順調で、会社の中期目標を超える姿。ブランドの強さを考えれば有力な上振れで、2 割弱に置いた。
中立 35% 穴は埋まるが、利益は芝店の前に届かない 利益 6 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 1,483 円83 億円
今期と来期は赤字で、新店と新工房の立ち上がりの費用が重い。3 年目に黒字へ戻り、その後は新店の稼働が上がって、利益が少しずつ積み上がる。
営業利益は 9 億円ほどで、利益率は 5%。芝店を失う前の 8 億円と近いが、物価が 3 割上がる間に実質では減っている。減価償却は、今の 4 億円から 11 億円ほどに増え、新工房・新店・更新の投資が利益を削る。
レストランの来客は 62 万人と、芝店のある今より減るが、客単価は物価並みに上がる。物販は 1.5 倍に伸びる。株主優待の費用は、利益から引き済みで、還元には受け取り分を足した。
会社の中期計画(2030 年 3 月期の営業利益 8.5 億円)とほぼ重なる筋書きだ。
- レストラン:数量 62.0(年間の来客数(万人。実質))× 価格 2.14(客単価(万円・名目))→ 売上 133 億円・営業利益 19 億円。来客 62 万人 × 客単価 2.14 万円、セグメント利益率 14.5%(本社費の前)
- 物販(洋菓子):数量 206(販売点数(万点。実質))× 価格 0.20(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。販売 206 万点 × 1 点 0.201 万円、セグメント利益率 11.0%
- 文化(箱根ガラスの森):数量 0.0(営業した月数(か月))× 価格 0.92(1 か月あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。承継済みで売上なし
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 13.99 倍、時価総額 83 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:芝店の穴を新店と菓子で埋め、利益は 10 億円弱に戻る標準的な姿。会社の中期目標とほぼ重なる。
やや悲観 28% 人件費と景気に押され、利益が薄いまま 利益 2 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 290 円16 億円
人件費と食材の上昇が値上げを上回り、新店の利益が出ない。景気が悪化する局面で会食が減り、レストランの来客は 54 万人まで細る。物販は伸びるが、新工房の減価償却と人手で利益は薄い。
営業利益は 3 億円ほどにとどまり、利益率は 2%。赤字の期が 4 年続き、自己資本は 44 億円へ減る。配当は据え置きから半減に下がる。
財務の体力は残るが、現金は賃借の約束と新規の投資に回り、株主には戻らない。株主優待も縮小に向かう。
芝店の穴は埋まらず、新工房の減価償却と京王の賃料が、稼ぎを食い続ける。これは、コロナ後に取り戻した利益率が、景気の波で再び下がる姿だ。
- レストラン:数量 54.0(年間の来客数(万人。実質))× 価格 2.00(客単価(万円・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 14 億円。来客 54 万人 × 客単価 2.00 万円、セグメント利益率 13.0%(本社費の前)
- 物販(洋菓子):数量 160(販売点数(万点。実質))× 価格 0.19(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 3 億円。販売 159 万点 × 1 点 0.188 万円、セグメント利益率 9.0%
- 文化(箱根ガラスの森):数量 0.0(営業した月数(か月))× 価格 0.92(1 か月あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。承継済みで売上なし
倍率:事業の ROE は 4.4% と資本コスト k 7.75% を下回るので、PER は 1÷k = 11.4 倍が上限。稼ぎが薄い局面で、式の値の 7 割 5 分の 8.6 倍に置いた。余った現金は 0。時価総額 = 純利益 × PER。
確率:人件費の上昇と景気の悪化で、新店の稼ぎが出ず、利益が薄いまま続く筋書き。赤字の履歴と固定費の重さから、中立に近い厚みで置いた。
悲観 14% 会食需要が細り、店を絞って縮小する 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 269 円15 億円
会食と接待の需要が構造的に細り、訪日客の取り込みも伸びない。京王の新店は賃料負担が重く、赤字が続く。会社は不採算の店を閉め、レストランの来客は 44 万人まで縮む。
営業利益は赤字が長く続き、10 年後もわずかな赤字だ。自己資本は 50 億円から 20 億円ほどまで減り、配当は 2 年で打ち切る。株主優待も半分に縮む。
財務は崩れないが、賃借の約束が重く残り、現金は事業の穴埋めに消える。優良な外食とは見られなくなり、再編の対象になる。
コロナ禍で 3 期続けて赤字を出した記憶が、再び現実になる。不採算店を閉め、新工房の生産を絞り、賃借の約束だけが重く残る。
- レストラン:数量 44.0(年間の来客数(万人。実質))× 価格 1.73(客単価(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 8 億円。来客 44 万人 × 客単価 1.73 万円、セグメント利益率 11.0%(本社費の前)
- 物販(洋菓子):数量 120(販売点数(万点。実質))× 価格 0.16(1 点あたり売上(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。販売 119 万点 × 1 点 0.162 万円、セグメント利益率 4.0%
- 文化(箱根ガラスの森):数量 0.0(営業した月数(か月))× 価格 0.92(1 か月あたり売上(億円・名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。承継済みで売上なし
倍率:純損失の筋書きで PER は使えないため、今の自己資本 50.2 億円に PBR 0.3 倍を掛けた。構造的に稼げず、自己資本が 10 年で 20 億円ほどまで減る一方、賃借の約束が重く残る局面で、現金の分も含めて自己資本の 3 割とした。
確率:会食と接待の需要が細り、不採算の店を閉めて縮む筋書き。2020〜2022 年の 3 期連続の赤字の実績と、店数の少なさから、1 割台半ばに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
レストラン
値の張る和食・洋食のレストラン 13 店(うかい亭・グリルうかい・とうふ屋うかいなど)。2026 年 3 月末に旗艦の芝店が閉店。新宿の京王プラザ内に 2026 年 12 月、新店を出す予定。
| 数量年間の来客数(万人。実質) | 価格客単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 68.9 | 1.60 | 110 | 17 |
| 10 年後 中立 | 62.0 | 2.14 | 133 | 19 |
取り方:有報のセグメント売上 110.2 億円(2026 年 3 月期)。来客数は全社の開示が無く、芝店の来客 11.1 万人・売上 25.7 億円(客単価 2.3 万円)と、洋食の低めの単価を加重して、平均約 1.6 万円、来客約 69 万人と推定した。セグメント利益は 2025 年 3 月期の 14.4% を踏まえ 16.5 億円と推定した(本社費の前)。
物販(洋菓子)
洋菓子の製造販売(アトリエうかい)。5 店と催事・通販。2026 年 9 月に八王子の新工房が開業し、生産能力は 3 倍。
| 数量販売点数(万点。実質) | 価格1 点あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 133 | 0.15 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 206 | 0.20 | 41 | 5 |
取り方:有報のセグメント売上 19.95 億円。平均単価を 1 点 0.15 万円、販売 133 万点と推定した(開示は無く推定)。セグメント利益は 2025 年 3 月期の 11.2% から 2.2 億円と推定した。
文化(箱根ガラスの森)
箱根ガラスの森の運営(文化事業)。2025 年 10 月に子会社へ承継して手放した。今後の売上は 0。
| 数量営業した月数(か月) | 価格1 か月あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 0.92 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.0 | 0.92 | 0 | 0 |
取り方:有報のセグメント売上 5.5 億円(2025 年 10 月 1 日の承継までの 6 か月分)。数量は営業した月数、価格は 1 か月あたり売上。セグメント利益は 2025 年 3 月期の 8.7% から 0.48 億円と推定した。
リスクと懸念
旗艦店の穴が埋まらない
芝店は全社売上の 19% を占め、利益率も平均より高かったと推定される。代わりの京王プラザの店は、賃料の重いホテル内で、大型の 316 坪。席が埋まるまでは赤字が続く。今期は営業損失 6 億円、来期も赤字の予想で、穴が埋まる前に景気が崩れれば、傷は深くなる。この逆回転は、立地の良い店でも避けにくい。
景気と会食需要の落ち込み
高級会食と接待は、不況で最初に削られる。2020〜2022 年は 3 期連続で赤字、純損失の合計は 31 億円で、自己資本は 51 億円から 28 億円まで減った。店数が少なく、1 店の稼働が全社に響く。現金類は 54 億円あるが、賃借の約束と投資に回る分も大きい。
人件費と食材費の上昇
高級業態は、調理と接客に人手をかける。最低賃金と採用難で、人件費は物価を超えて上がる。国産大豆や和牛、輸入食材の価格も、円安と天候で動く。値上げが通る間は吸収できるが、客単価の限界に達すれば、利益率は一気に削られる。賃金の上昇は、価格に転嫁できなければ、そのまま利益率を削る。
新工房と新店の投資の回収
新工房は 22 億円、年間の営業キャッシュフロー 6 億円の 3 倍超を使う。生産能力は 3 倍だが、売上が伸びなければ、減価償却だけが残る。減価償却は今の 4 億円から、10 年で 10 億円ほどに増える見込みだ。物販の売上が計画に届かなければ、利益を直接削る。
賃借の固定費と、貸借対照表の見かけ
賃借料の額は開示で確かめられなかったが、年に 9〜11 億円と推定する。売上が落ちても減らない固定の約束で、残り 8 年で純現金を大きく超える。2028 年 3 月期からの新リース会計基準では、借地・借家が貸借対照表に載り、自己資本比率の見かけが下がる。
株主構成と還元の乏しさ
創業家の持株会、京王電鉄、キッコーマンで約 47% を持つ。安定した株主だが、現金が増えても還元の圧力は弱い。配当の性向は 28% で、赤字の期も据え置くが、自社株買いの実績は確かめられない。少数株主には、価値が出るまで待つしかない。安定株主の持株が、市場の評価を動かしにくくしている面もある。
今後の分かれ目
- 京王プラザの新店が、開業 2 年目に黒字化したら
- 芝店の穴を埋める道筋が確かめられたとして、上振れ側の確率を増やす。
- 物販の売上が、新工房の稼働後に 2 割以上伸びたら
- 第 2 の柱が育っているとして、物販の数量を上方に直す。
- 営業損失が、2028 年 3 月期も 4 億円を超えたら
- 立て直しが遅れているとして、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 既存店の客単価の上昇率が、物価を下回り始めたら
- ブランドの値決め力が落ちたと見て、利益率を下方に直す。
- 増配や自社株買いなど、現金を戻す方針が出たら
- 余った現金の戻り方を見直し、価値を引き上げる。
- 京王電鉄やキッコーマンが持株を増やすか、TOB の動きが出たら
- 価格の水準を確かめ、価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 芝店の閉店後の売上と、京王の新店の立ち上がり
- 物販の売上と、新工房の稼働状況
- 営業利益率と、人件費・原価の動き
- 現金類と、賃借の約束の大きさ
- 株主の持株比率と、配当・自社株買いの方針
- 中期計画(2030 年 3 月期の売上 140 億円・営業利益 8.5 億円)の達成度
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE(余った現金とその利息を除く)が資本コスト k 7.75%(基本 7.5% + quality 1.25%)を上回る筋書きで、堀は弱いとして残る割合を 1/3 に置き、式の正当化 PER の 8〜9 割を置いた。ただし ROE が k を上回る筋書きでは、PER は 1÷k を下限にした。ROE が k 未満の筋書きは PER を 1÷k までとした。10 年後の利益率は、過去 12 年の最高 6.7% より低い 5.3% を中立に置き、本社費は物価で 1.34 倍にした。減価償却は、今ある設備の分(約 4 億円)を取得時の値段のまま置き、新工房(22 億円)・新店・更新の投資で積み増して 10 年後に約 11 億円とした。更新の投資は、償却を上回る現金の支出として現金の流れに入れた。株主優待は年約 1 億円と推定し、10 年分に続く見込み(中立 1.0・やや悲観 0.75・悲観 0.5)を掛けて還元に足した。賃借料(年 9〜11 億円と推定)は固定の約束として利益率と悲観に入れ、2028 年 3 月期からの新リース会計基準の形は、今と同じ(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。ブリーフの純現金 10 億円は現金同等物だけで、定期預金と有価証券を足すと実質 33 億円だが、閉店の支払い・新工房・新店に回るため、余った現金は今は 0 とした。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。理由は quality_why。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.75%。