結論
やまやは、酒類のディスカウント店「酒のやまや」を356店持つ国内最大手の酒販会社だ。連結売上1,591億円の8割強が酒販で、残りは子会社のチムニーとつぼ八が営む居酒屋が占める。チムニーは東証に上場しており、やまやが5割強を持つ親会社だ。
筆者の結論は、おおむね適正だ。薄利の小売としては悪くない買い物、という程度の意味でもある。酒類の小売は利益が薄い。2026年3月期の営業利益は36億円で、売上に対する利益率は2.2%しかない。それでも純現金が72億円あり、今の時価総額は利益の10倍ほどにとどまる。
気になるのは、足元の勢いだ。2025年10月に今期の経常利益を4割下げ、2027年3月期の第1四半期の営業利益は前年より4割近く減った。人件費・光熱費・メーカーの値上げが利益を削っている。
中立では、10年後の純利益は35億円ほど。物価の分は利益が増えるが、酒類の消費が減る中で、小売の利益率は大きくは上がらない。時価総額は390億円ほどで、10年の還元を足して今の値段にほぼ並ぶ。
チムニーの上場も見逃せない。やまやの時価総額はチムニーの持分の価値と同じくらいで、親会社を買うことは、居酒屋の子会社と酒販の本業を同時に買うことになる。外食の不振が続けば、持分の価値は目減りする。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、やまやは「安く買えれば持てる」会社だ。事業の本質は、メーカーと消費者の間の薄い利ざやの仕事で、堀は広くない。利益率が2%台と薄く、人件費や光熱費の上昇で簡単に崩れる。
それでも評価できる点がある。第一に、純現金が厚い。借入に頼らず、金利が上がる世界でも利益が削られない。第二に、配当を増やす方向に動いている。優待を廃止して配当に一本化したのは、株主を公平に扱う姿勢の表れだ。第三に、今の時価総額は、純現金を除いた事業の価値が利益の7倍ほどと低い。
不安もある。外食は居酒屋の構造不況の影響を受け、チムニーを含む600店近い規模が、利益の足を引く。上場子会社のチムニーの少数株主との利害の違いも、将来の再編で表面化しうる。
安全域は、今の値段にはほぼ無いが、大きな割高でもない。確信度は中くらいだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は二つある。第一は酒販事業で、売上の8割強、2026年3月期で1,300億円を稼ぐ。「酒のやまや」は全国に356店あり、直輸入のワインやウイスキーを安く売る。店は東日本と関西の子会社が運営し、既存店の改装でダイソーを併設する店が増えている。通信販売と、仕入れ・卸・物流を担う子会社のやまや商流、宮城県の酒蔵の大和蔵酒造も持つ。
第二は外食事業で、売上は294億円、利益は8億円だ。チムニーが「はなの舞」「さかなや道場」などの居酒屋を460店、つぼ八が「つぼ八」などを138店、合計で約600店を持つ。FCが半分近い。やまやは2013年に約140億円でチムニーを子会社にし、2018年につぼ八を買収した。
酒の販売と居酒屋を組み合わせたのは、酒の仕入れ量を増やして買値を下げ、居酒屋でも使う狙いがあった。ただ、居酒屋の利益はいまも薄く、酒販のおまけの位置づけに近い。
利益の8割を酒販が稼ぐ構造で、利益率は酒販が2.1%、外食が2.8%と、ともに薄い。
店の運営は人手に頼る。酒販は商品の補充と接客、外食は調理と配膳で、最低賃金の上昇は両方の費用を押し上げる。仕入れを一本にまとめて原価を抑え、店ごとの利益は小さくても数でこなす。これが、国内最大手でも営業利益率が2%台にとどまる理由だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、仕入れの規模にある。国内最大手の酒類専門店として、メーカーからの仕入れ条件と直輸入の量で、他の酒屋より安く売れる。ただし、堀は広くない。ドラッグストアとスーパー、コンビニ、ネット通販が同じ酒を売り、販売数量では一般の酒屋をドラッグストアが上回った。
値段を決める力は弱い。メーカーが決める値上げを受け、消費者の節約志向に合わせて売る立場だ。2025年10月の下方修正でも、メーカー値上げと高額洋酒のインバウンド減が理由に挙がった。
資本の効率は低い。過去10年のROEの中央値は8.3%だが、直近は5.6%に落ちた。営業利益率は2018年3月期の4.4%が山で、直近は2.2%。
財務は強い。純現金は72億円、自己資本比率は57%。ただし店舗は賃借が多く、家賃は固定の約束だ。純現金は見かけほど余裕がない。大株主は創業家の資産管理会社2社とイオンで、上位3者で6割を超える。経営は安定するが、少数株主の意見は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
酒類の小売は、構造的に縮む市場だ。成人1人当たりの酒類消費量は、1992年の101.8リットルから2022年の75.4リットルへ、30年で26リットル減った。2023年度は75.6リットルと2年連続でわずかに増えたが、長い減少の流れは変わっていない。
小売の形も変わった。国税庁の統計では、一般の酒販店は事業者数が約4.4万から約2.8万へ減り、販売数量ではホームセンター・ドラッグストアに抜かれた。コンビニは販売場が5万を超える。やまやのような大型ディスカウントは、この中で数少ない勝ち組だが、利益率は薄い。
追い風もある。訪日客が洋酒を買い、物価高で家飲みが増える。逆風は、人件費の上昇、メーカーの値上げ、消費者の節約志向だ。
競合は、ドラッグストア(ウエルシア・ツルハなど)、スーパーの酒売り場、カクヤスのような宅配に強い酒販、ネット通販である。酒類の小売は参入規制が緩み、免許を持つ店が増えた。品ぞろえと直輸入の安さで差をつける専門店の強みは、価格比較が簡単な時代には揺らぎやすい。
居酒屋の側は、飲酒機会の減少と人手不足に苦しむ。チムニーの客数は2026年3月期の上期に前年比4%減った。
数量は、酒販はほぼ横ばいか微減、外食は店舗数が緩やかに減るとみる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。やまやは2025年3月期で株主優待を廃止し、配当に一本化した。優待に充てていた原資を配当に回したためで、年間配当は2025年3月期から2026年3月期に3割近く増えた。2027年3月期も前期の水準を保つ計画だ。配当の総額は年8億円ほどで、純利益の4割ほどにあたる。自社株買いは行っていない。
資本政策の注目点は三つある。第一に、純現金が72億円まで積み上がった点。出店や買収に使うのか、さらに還元に回すのかが焦点だ。第二に、チムニーとの関係。チムニーは上場しており、やまやが50.5%を持つ。チムニーの少数株主は、チムニーの利益の半分を持つ。第三に、再編の可能性。チムニーを完全子会社にする選択肢や、イオンとの関係を含めた再編は、検討の余地がある。
大株主は山内コンサルタント22.8%、山内エンタープライズ20.0%、イオン19.1%。支配株主が明確で、買収される可能性は低い。やまやが親会社として動く立場にある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
やまやは、国内の酒類専門店で最大手の規模を持つ。仕入れ条件と直輸入の量では、他の酒屋が及ばない。ドラッグストアが酒を売る時代でも、品ぞろえと価格で選ばれる専門店の位置は残る。ワインとウイスキーの直輸入は、他の小売が簡単にまねできない。
2024年3月期と2025年3月期の営業利益は、それぞれ63億円と54億円あった。2026年3月期の36億円は、メーカーの値上げやまとめ買いの反動という一時的な要因が重なった結果で、元に戻る余地は大きい。ダイソー併設の改装が進めば、客の来店頻度も上がる。
純現金は72億円あり、金利が上がる世界でも利益が削られない。優待を廃止して配当を大きく増やした姿勢は、株主還元に前向きなことを示す。2027年3月期も前期の水準の配当を保つ計画だ。ただ、配当性向の明確な目標は示していない。
今の時価総額は利益の10倍ほどと低く、純現金と合わせれば下値は固い。居酒屋は薄利でも、チムニーののれん償却が2030年ごろに終わり、外食の利益が戻る。
さらに、イオンが2割近くを持つ安定株主として控え、創業家と合わせた支配が経営を安定させる。長期の視点で出店と改装に投資できる環境は、短期の業績に追われる競合にない強みだ。
慎重な見方
酒類の市場は縮んでいる。成人1人当たりの酒類消費量は、30年で26リットル減った。小売では一般の酒屋が約1.6万者減り、ドラッグストアとコンビニが数量を奪った。やまやも例外ではない。
利益は薄く、人件費と光熱費の上昇で簡単に消える。2026年3月期の営業利益は34%減り、2027年3月期の第1四半期もさらに4割近く減った。通期の営業利益は38億円の会社予想だが、第1四半期が5億円に届かず、達成は難しい。
外食は居酒屋の構造不況の中にいる。598店のうち半分近くがFCで、直営店も客数が減る。上場子会社のチムニーは、少数株主の取り分があり、やまやの手元には利益の半分しか残らない。
純現金は多いが、イオンと創業家の資産管理会社で6割を握っており、現金の使い方は少数株主には決められない。利益が薄い小売に、10年にわたる固定の家賃の約束も重い。
強気の見方は、2024年3月期の利益に戻ると言うが、その年は洋酒の大容量品の値上げ前のまとめ買いなど、一時的な追い風が重なっていた。
どちらに重みを置いたか
どちらも一理あるが、足元の減益は人件費と光熱費の構造的な上昇によるもので、慎重な見方がやや強い。一方で、純現金と配当の増額が下値を支え、今の値段は利益に対して高くない。確率は中立を38%に厚く、やや悲観を26%、悲観を13%とし、やや楽観を17%、楽観を6%に置いた。結果として、10年の本質価値は今の時価総額に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,278 円355 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 961 円104 億円)。 今の値に割り戻すと 2,010 円218 億円、今との差 +1.5%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,101 円661 億円 | 1,660 円180 億円 | +292.2% | +14.6% | 466 円50 億円 |
| やや楽観 | 17% | 4,793 円520 億円 | 1,402 円152 億円 | +213.0% | +12.1% | 1,053 円114 億円 |
| 中立 | 38% | 3,809 円413 億円 | 1,098 円119 億円 | +148.0% | +9.5% | 1,865 円202 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,987 円215 億円 | 701 円76 億円 | +35.8% | +3.1% | 699 円76 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,027 円111 億円 | 184 円20 億円 | −38.8% | −4.8% | 157 円17 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,278 円355 億円 | 961 円104 億円 | +114.2% | +7.9% | 4,240 円460 億円 |
今の株価時価総額 1,979 円215 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 6% 出店とダイソー併設が広がり、酒販の利益率が戻る 利益 57 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 6,101 円661 億円
筆者が描く最良の姿は、酒販が出店と改装で伸び、外食も立ち直る道だ。酒のやまやは400店まで増え、ダイソー併設で買い物のついでに酒を買う客が増える。1店当たり売上は、物価に加えて高単価の洋酒とワインの比率が上がり、10年で1.40倍になる。酒販の営業利益率は3.6%と、2024年3月期の全社の3.9%に近い水準に戻る。
外食は560店を保ち、チムニーは魚星の専門業態が育つ。利益率は6%に上がる。
営業利益は97億円、純利益は57億円になる。チムニーの少数株主の取り分を引いたあとの数字だ。自己資本は640億円ほどに積み上がるが、ROEは9%弱。配当と自社株買いを合わせて約180億円を株主に返す。
- 酒販事業(酒のやまや・通販・卸):数量 400(酒のやまや店舗数(店))× 価格 5.12(1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む))→ 売上 2,047 億円・営業利益 74 億円。営業利益率3.6%
- 外食事業(チムニー・つぼ八):数量 560(店舗数(直営・FC、店))× 価格 0.68(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 380 億円・営業利益 23 億円。営業利益率6%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.26 倍、時価総額 661 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:酒販の利益率が2024年3月期の水準を上回って保たれ、外食も回復する必要がある。直近の下方修正と1Qの減益を考えると、確率は低い。
やや楽観 17% 利益率が戻り、増配が続く 利益 45 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,793 円520 億円
メーカーの値上げと人件費の上昇が価格転嫁で吸収され、酒販の営業利益率は3.0%まで戻る。2025年3月期の全社の3.4%を少し下回る水準だ。店は380店で、新店はダイソー併設の改装と合わせて少しずつ増える。1店当たり売上は10年で1.36倍。
外食は555店で下げ止まり、利益率は5%。チムニーののれん償却が終わり、つぼ八も落ち着く。
営業利益は75億円、純利益は45億円となる。ROEは7〜8%と資本コストをやや下回る。配当は利益に連れて増え、10年の還元は約152億円。
この姿は、メーカーの値上げが一巡し、店の改装が実を結んだ上振れの中心だ。酒類の消費量が減る中で、客単価の高い洋酒とワインの比率が上がることが、利益率を支える。
- 酒販事業(酒のやまや・通販・卸):数量 380(酒のやまや店舗数(店))× 価格 4.97(1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む))→ 売上 1,889 億円・営業利益 57 億円。営業利益率3.0%
- 外食事業(チムニー・つぼ八):数量 555(店舗数(直営・FC、店))× 価格 0.66(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 366 億円・営業利益 18 億円。営業利益率5%
倍率:事業の純利益 44 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 520 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024年3月期と2025年3月期は営業利益が50億円台だった。メーカー値上げの影響が一巡すれば戻る余地は大きい。ただし酒類の消費量は長期で減っており、全部は戻らない。
中立 38% 酒販は薄利のまま、外食の整理が利益を支える 利益 35 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 3,809 円413 億円
中立の姿は、薄利を重ねる酒類小売と、小さくなりながら守る外食の組み合わせだ。酒販は365店と少しずつ増え、1店当たり売上は10年で1.27倍と物価に届かない。酒類の消費量が減り、ドラッグストアなど他業態との競争が続くためだ。酒販の営業利益率は2.5%で、直近の2.1%から少しだけ戻る。
外食は548店に減り、チムニー(3178)は、その分析の中立と同じ姿をたどる。外食の利益率は4.4%。
営業利益は58億円、純利益は35億円となる。チムニーの少数株主の取り分を引いている。配当は純利益の4割とみて、10年の還元は約119億円。自己資本は550億円ほどで、ROEは6%台と資本コストを下回る。
- 酒販事業(酒のやまや・通販・卸):数量 365(酒のやまや店舗数(店))× 価格 4.65(1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む))→ 売上 1,699 億円・営業利益 43 億円。営業利益率2.5%
- 外食事業(チムニー・つぼ八):数量 548(店舗数(直営・FC、店))× 価格 0.65(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 356 億円・営業利益 16 億円。営業利益率4.4%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)26 億円。全体の PER 11.11 倍、時価総額 413 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の減益は人件費・光熱費・メーカー値上げという構造的な重しで、1年で解消するとは言いにくい。ただし2024年3月期の水準まで戻る余地も残り、中間に最も厚みを置く。
やや悲観 26% 酒類の消費減と人件費増で、利益が伸びない 利益 21 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,987 円215 億円
酒類の消費量の減少が続き、店の1店当たり売上は10年で1.20倍と物価に大きく届かない。ドラッグストアやネット通販に客が流れ、酒販の営業利益率は1.8%にとどまる。店は350店で横ばい。
外食は500店まで減り、利益率は2%。チムニーは客数減が続き、つぼ八も苦戦する。
営業利益は34億円、純利益は21億円と、今とほぼ同じ金額にとどまる。物価で3割増える費用を、同じ金額の利益でこなす厳しい姿だ。自己資本は500億円で、ROEは4%。配当は利益に連れて減り、10年の還元は約76億円。
店の出店は鈍り、改装も遅れる。人手不足で営業時間を短くする店が出て、売上の機会を逃す。外食は閉店が続き、少数株主の取り分を引いたあとの利益は小さい。
- 酒販事業(酒のやまや・通販・卸):数量 350(酒のやまや店舗数(店))× 価格 4.39(1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む))→ 売上 1,535 億円・営業利益 28 億円。営業利益率1.8%
- 外食事業(チムニー・つぼ八):数量 500(店舗数(直営・FC、店))× 価格 0.60(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 300 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2%
倍率:ROE 4.2%(純利益 21.2 億円 ÷ 自己資本 500 億円)が資本コスト 9% 以下なので、PER の上限は 1÷k = 11.8 倍。ためた利益は額面の価値に届かない。稼ぐ力が弱く、ためた自己資本も活用できないので、上限の 8.0 割の 9.4 倍に置いた。
確率:2026年3月期は営業利益が3割減り、2027年3月期の第1四半期もさらに4割減った。人件費と光熱費の重さが続けば、利益が戻らない姿に十分な根拠がある。
悲観 13% 酒類の小売が構造的に縮み、外食も赤字に沈む 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,027 円111 億円
酒類の消費が減り、安売りの競争が激しくなる。酒販は300店まで減り、1店当たり売上は10年でほぼ横ばい。利益はほぼゼロになる。
外食は420店に縮み、チムニーもつぼ八も赤字が続く。
営業利益は赤字に沈み、純損失が出る。ダイソー併設の効果も限られ、既存店の売上が落ち続ける。配当は大幅に減り、10年の還元は約20億円。自己資本は330億円ほどに減る。
純現金は厚いが、イオンと創業家の資産管理会社が6割を握り、現金の使い方は少数株主には決められない。清算されない限り、床は純現金の半分と棚卸資産の処分価値で測る。
外食の赤字を酒販が支える形になり、居酒屋の閉店費用と少数株主の取り分が重くのしかかる。
- 酒販事業(酒のやまや・通販・卸):数量 300(酒のやまや店舗数(店))× 価格 3.66(1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む))→ 売上 1,097 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%
- 外食事業(チムニー・つぼ八):数量 420(店舗数(直営・FC、店))× 価格 0.52(1店舗当たり年間売上(億円、名目))→ 売上 217 億円・営業利益 −4 億円。営業利益率-2%
倍率:稼ぐ力が赤字なので、床は売れる資産に近い。今の自己資本371億円に0.3倍を掛けて置いた(棚卸資産の処分損、店の閉鎖費、チムニーの少数株主の取り分を引くと、帳簿の自己資本の3割ほどになる)。
確率:アルコール離れとドラッグストアの台頭で、一般酒販店は事業者数も数量も大きく減ってきた。やまやは大手でも同じ流れに巻き込まれるおそれがあり、1割は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
酒販事業(酒のやまや・通販・卸)
酒類ディスカウント店「酒のやまや」356店、通信販売、卸、仕入れ・物流。連結売上の8割強を占める。
| 数量酒のやまや店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円、名目。通販・卸を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 356 | 3.66 | 1,302 | 27 |
| 10 年後 中立 | 365 | 4.65 | 1,699 | 43 |
取り方:2026年3月期の酒販事業の売上1,301.5億円、セグメント利益27.4億円(利益率2.1%)。店舗数356店で割ると1店当たり3.66億円。通販・卸の売上も店の数で割った形で、店ごとの売上ではない。先の1店当たり売上は、酒類の消費量の減少と他業態との競争で、中立で10年1.27倍(物価1.34倍より実質5%低い)。
外食事業(チムニー・つぼ八)
チムニー(はなの舞・さかなや道場・魚星)とつぼ八の居酒屋。直営とFCを含む。
| 数量店舗数(直営・FC、店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 598 | 0.49 | 294 | 8 |
| 10 年後 中立 | 548 | 0.65 | 356 | 16 |
取り方:2026年3月期の外食事業の売上294.0億円、セグメント利益8.3億円(利益率2.8%)。店舗数598店(チムニー460、つぼ八138)で割ると1店当たり約0.49億円。FC店は本部の収入だけが売上に入る。先の1店当たり売上は、チムニーの中立(客数の細りを反映)に合わせて10年1.32倍。
リスクと懸念
酒類の消費量の減少
成人1人当たりの酒類消費量は1992年から30年で約26リットル減った。人口も減る日本では、酒販の数量は構造的に縮む。小売は薄利なので、わずかな数量の減りが利益を直撃する。
人件費・光熱費とメーカー値上げ
2027年3月期の第1四半期は、酒販・外食とも人件費と光熱費の上昇で営業利益が減った。メーカーの値上げは仕入れ値に響き、消費者は節約で応じる。利益率2%台の会社には大きな重しだ。
外食事業の不振と少数株主の取り分
外食は居酒屋の客数減で苦しい。598店のうち半分近くがFCで、閉店が続く。チムニーは上場しており、利益の半分は少数株主のもの。やまやの株主に残るのは半分だけだ。
ドラッグストア・ネットとの競争
数量ベースでは、ホームセンター・ドラッグストアが一般の酒販店を上回った。ネット通販も加わり、価格競争が続く。大手のやまやでも利益率は薄い。
支配株主の資本配分
創業家の資産管理会社2社とイオンで6割を持つ。純現金72億円の使い方は、少数株主には決められない。再編や買収の局面でも、支配株主の判断が優先される。
店舗の家賃と新リース会計
店舗は賃借が多く、家賃は売上が落ちても出ていく固定の約束。2028年3月期から新リース会計基準でリース負債が貸借対照表に載り、純現金は見かけより小さくなる。
今後の分かれ目
- 2028年3月期までに営業利益が50億円台に戻ったら
- 中立から、やや楽観に重みを移す。メーカー値上げの一巡と人件費の吸収が確認できたと判断する。
- 酒販の1店当たり売上が前年を下回る期が続いたら
- やや悲観・悲観に重みを寄せる。酒類の消費減が価格転嫁を上回っている証拠になる。
- 純現金を使った大型のM&Aが発表されたら
- 資本配分の質を見直す。成功の確度が低い買収なら現金の価値を下げる。
- チムニーの完全子会社化が発表されたら
- 少数株主の取り分がやまやに移るため、利益は増えるが、買収価格が事業の稼ぐ力を上回らないか確認する。
- 配当がさらに増額され、総還元が純利益の5割を超えたら
- 現金の戻り方を厚く見直し、楽観・やや楽観の確度を上げる。
見ておくもの
- 酒販の既存店売上高と営業利益率(四半期)
- 外食の店舗数と営業利益率
- チムニーの業績と少数株主の取り分
- 配当の総額と純現金の推移
- ダイソー併設店の数
- 新リース会計基準の適用後の純負債
倍率と資本コストの決め方
酒販と外食を店数×1店当たり売上で積み、10年の利益率は過去12年の山(4.4%)を下回る2.8%に置いた。外食は3178チムニーの中立に合わせ、チムニーの少数株主の取り分を純利益から引いた。倍率はROEが資本コスト9%以下なので上限の1÷k=11.8倍で、その9割の10.6倍とした。今の株価や過去のPER・PBR、チムニーの時価総額には寄せていない。純現金のうち事業に要らない分35億円を分けて足し、創業家とイオンが6割を握ることから戻り方は0.5とした。悲観の床は純現金に戻り方0.5を掛けた額と棚卸資産の処分価値から置いた。新リース会計基準でBSが膨らむが、10年後は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。優待は2025年3月期に廃止済みなので、還元には足していない(チムニーの優待は子会社の費用で、やまやの株主には届かない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→11.26 倍・やや楽観 PER 10.4→11.11 倍・中立 PER 10.6→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.0%を足して8.5%。純現金で赤字も続いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。