結論
綿半ホールディングスは、長野県を地盤にスーパーセンターを営む小売と、立体駐車場や鉄骨を手がける建設、医薬品原料を輸入する貿易を束ねた会社だ。売上は1,350億円を超え、営業利益は36億円で過去最高に近い。
筆者の結論は「割高」だ。稼ぐ力は着実に上がっている。建設の受注残は2割以上増え、利益の半分近くを稼ぐ柱になった。だが、10年で見ると、数量は人口とともに細り、物価の分の値上げで名目が支えられる形に収まる。自己資本利益率(ROE)は資本コストに届かず、利益の4分の3を内部にためる方針が、資本効率をさらに下げる。
財務の重さも気になる。純有利子負債は242億円と、時価総額と同じ規模だ。借り換えで金利が上がる分、利益は6億円ほど削られる。
会社の中期計画は、経常利益45億円、売上1,500億円の目標を2029年3月期へ延ばした。筆者は、この計画を達成しても、今の値段を支えるには足りないと見る。
一方で、建設の受注と、貿易の高い利益率という強みは本物だ。小売が横ばいを保てば、悲観に落ちる確率は高くない。
数字で言えば、10年中立の純利益は25億円ほどで、今より2割近く増えるにとどまる。物価が3割以上上がる世界では、実質では減る計算だ。配当は増えているが、株主に返るのは利益の4分の1にすぎない。残りの4分の3が資本コストを上回って働くかどうかが、この会社の価値を決める。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、綿半は「着実だが、資本の使い方が物足りない会社」である。事業は堅い。建設の受注は積み上がり、貿易は利益率が高い。経営も誠実で、増配を続けている。
筆者が最も気にするのは、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益だ。営業キャッシュフローは9億円しかなく、利益の36億円との差が大きい。小売の店舗や物流への投資に現金が吸われ、借金が減らない。利益の4分の3を内部にためても、その稼ぎが資本コストを下回れば、ためるほど価値は薄まる。
堀の幅と持続は、建設に限れば10年先も続くと見る。ただし、利益の伸びは、人口と産業の縮みで頭打ちになる。
払う値段の観点では、今の時価総額は、純有利子負債を含めた企業の値段としては安く見えない。借金が時価総額と同じ規模ある会社は、利益が少し崩れただけで、株主の取り分が大きく動く。安全域は、ほとんどない。値段が大きく下がるか、還元の方針が変わるまでは、保有を続けたい会社とは言いにくい。
経営者が資本をどう使うかを見る目では、東陽興業のように、事業に近い小さな買収を重ねる姿勢は堅実だ。大きな賭けはしない。それは評価できる。ただし、資本効率を上げる意欲が、数字にはまだ表れていない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は三本立てである。小売は、長野県を中心に約23店のスーパーセンターを営む。食品、日用品、ホームセンターの商品を一つの店で売り、毎日低価格をうたう戦略を取る。売上の57%を占めるが、利益率は2%ほどと薄い。
建設は、売上の37%、利益の半分近くを稼ぐ。自走式の立体駐車場、建築鉄骨、工場や商業施設の屋根・外壁の改修工事、木造住宅向けの資材供給が柱だ。鉄骨は焼津と高森の2工場で作り、設計の一部はミャンマー、中国、ベトナムで行う。2026年3月期の受注は562億円と3割近く増え、受注残も245億円に積み上がった。
貿易は、医薬品や化粧品の原料を輸入して売る。アセトアミノフェンなどの医薬品原料や、不妊治療薬の原薬の精製も手がける。売上は65億円と小さいが、利益率は10%を超え、利益全体の中で存在感が大きい。
このほか、建物管理と不動産売買がある。全社の費用は年に10億円ほどで、事業の利益から差し引かれる。2026年9月には電気設備工事の東陽興業を子会社にした。連結の従業員は1,549人で、小売では臨時の働き手が多い。
小売の売場は、食品、日用品、園芸、DIY、ペット用品など幅が広い。昼神温泉の宿を取得し、南信州の観光にも踏み出した。観光はまだ小さいが、地元に根ざした総合型を目指す姿勢が見える。建設の木造住宅は、加盟する工務店500社以上に資材を供給する卸の役割で、住宅メーカーとして売るわけではない。
優良さと弱いところ
強みは、建設の受注の勢いと、貿易の利益率だ。立体駐車場と改修工事は、工場や商業施設の老朽化という、景気に左右されにくい需要を受ける。福岡では商業施設向けの6層7段の大型駐車場を受注した。貿易は、仕入先との長い取引と、原薬の精製という付加価値で、高い利益率を保つ。
小売の強みは、長野県での地盤の強さだ。県内に集中して出店するため、物流の効率が高い。ただし、競争は激しい。カインズやコメリ、ドラッグストア、スーパーが同じ客を取り合う。既存店売上は2026年4〜9月に前年の97.5%と、前年を割っている。
弱みは、資本の使い方だ。ROEは9%ほどで、経営目標の8%は超えるが、資本コストには届いていない。自己資本比率は29%で、借金への依存が高い。営業キャッシュフローは9億円と、利益に比べて弱い。
筆者は、堀、つまり他社がまねできない強みは「普通」に置く。建設の技術は評価するが、入札で決まる工事が多く、価格を自社で決められない。小売も、競合との値下げ競争から自由ではない。
経営の方向は明快だ。毎日低価格と毎日低コストの両輪で小売を磨き、建設で稼ぎを積み、貿易で利益率を補う。ただし、事業の幅が広いぶん、各事業の資本の効率にばらつきがある。小売は店舗の投資が重く、建設は軽い。資本を軽い事業へ傾ける判断が、ROEを上げる近道になる。今の配分はその方向に十分には向いていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホームセンターの市場は、日本DIY・ホームセンター協会の推計で、2024年度に4兆円規模である。ただし、名目の伸びは年0〜2%と鈍く、数量は住宅着工とリフォームに連動する。人口が減る地方では、店舗の数も客数も頭打ちである。
業界は再編の途上にある。上位のカインズ、コメリ、DCM、コーナンは共同購買と独自商品の開発を進め、規模で優位に立つ。綿半は地域に密着した中堅で、単独で規模を取りにいくのは難しい。
スーパーセンター業態は、食品を含むため生活必需品の比率が高く、不況に比較的強い。一方で、ネット通販への客の流出と、人手不足による人件費の上昇が、利益を削る。
建設は別の景気で動く。工場や物流施設の建て替え、駐車場の更新、屋根の改修といった需要が、2026年3月期は好調だった。ただし、職人不足と資材の値上がりは、不採算工事のリスクになる。公共と民間の建設需要は、国内の人口減で長期には縮む。
貿易は、医薬品の薬価改定という制度の影響を受ける。次の期は、一部の原薬の製造工程を見直す影響で、利益が減る見通しだ。
ホームセンターの上位は、プライベートブランドの開発と共同購買で原価を下げている。地方の中堅は、その規模の差を店舗の地盤と品ぞろえで埋めるしかない。新店の出店余地も限られ、既存店の改装が投資の中心になる。改装中の店は一時的に売場が減り、売上が落ちる。綿半の2026年4〜9月の既存店売上が前年を割ったのは、その影響が大きい。
資本政策と M&A
株主への戻し方は控えめだ。配当は安定的に増やし、12期連続の増配を予定するが、配当性向は25%前後と低い。利益の4分の3は内部にとどまる。自己株式は発行済株式の6%ほどあり、これを活用した機動的な還元は可能だが、積極的な買い入れの方針は示されていない。
中期経営計画は、経常利益45億円、売上1,500億円の目標を、2029年3月期へ延ばした。目標指標はROE8%以上で、中長期に売上高経常利益率を5%以上にするとしている。PBR1.5倍以上も掲げる。
M&Aは小さな買収を重ねる方針で、東陽興業や、観光の宿の取得がその例だ。のれんの減損は、事業等のリスクとして挙げられている。政策保有株は、上場71銘柄で15億円ほどあり、メガバンク株は売却済みである。配当は利益に含まれるので、価値には別に足さない。
設備投資は、低温倉庫に約10億円、松本の事務所の建替えに約4億円を見込む。店舗の新設もある。建築費の上昇で、更新投資は償却を上回って膨らみ、借入金で賄えば利払いが増える。店舗の一部は賃借で、新しいリース会計の基準で借金の見かけが増える。
株主への還元を厚くする余地は十分にある。自己資本比率が3割弱でも、営業利益は無理なく出ている。ただし、借金の返済と店舗投資を優先する以上、総還元性向を大きく上げるのは難しい。筆者は、配当性向25%という水準が、10年続くと置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建設は、今の綿半の最大の稼ぎ手になった。2026年3月期の受注は3割近く増え、受注残も3割以上増えて245億円に積み上がっている。次の期の会社予想は、建設の営業利益が19%増の26億円だ。立体駐車場は福岡の大型案件に加え、リニューアル分野が順調で、改修需要は老朽化した工場と商業施設が続く限りなくならない。東陽興業の子会社化で、電気設備工事という新しい領域も広がる。
貿易の利益率は10%を超え、安定した稼ぎを持つ。小売も、改装で売場を入れ替えている最中で、一時的に売上が減っているだけだ。調剤薬局や食品の拡充、ネット通販、新しい基幹システムが効き始めれば、小売の利益率は2%台から3%台へ上がる。
増配は12期続き、ROEは9%で目標の8%を超える。建設が5%を超える利益率を保てば、営業利益は50億円を超える。中期計画の延期は、不確実な環境への慎重な姿勢で、計画そのものは崩れていない。
また、小売の地盤は強い。長野県で長年の信頼があり、同じ県に集中して出店しているため、物流と人材の効率が高い。観光への参入も、地域の客との接点を増やす。人口が減る地方でも、店が減る中で生き残った店が、客を取る形になる。建設の技術も、資材の高騰を価格へ転嫁できる強みがある。
慎重な見方
建設の好調は、受注が一時的に積み上がった結果だ。次の期の貿易は、原薬の製造工程の見直しで利益が減る。小売は、第1四半期の営業利益が前年の4分の3に落ちた。既存店売上は2026年4〜9月に前年を割った。中期計画の延期も、目標が遠ざかった証拠である。
数量は人口とともに細る。長野県は人口減が続く地方で、スーパーセンターの客数が増える余地は小さい。ネット通販や新しいドラッグストアに客を奪われる中で、毎日低価格という戦略は、利益率をさらに削る。人件費は毎年上がる。
財務が重い。純有利子負債は242億円、自己資本比率は29%、営業キャッシュフローは9億円で、借金を返す力が弱い。借り換えで金利が上がれば、利払いが6億円ほど増える。
資本効率も低い。利益の4分の3を内部にためても、その稼ぎは資本コストを下回る。貯めるほど、1株の価値は薄まる。増配とはいえ、配当性向は25%で、株主への戻りは小さい。
さらに、事業が三つに分かれていることは、強みであると同時に、弱みでもある。それぞれの事業に経営の目が行き届くか、資本が効率よく配分されるかは、外からは見えにくい。複合企業が、個々の専業の競合に劣る例は多い。小売はカインズやコメリに規模で劣り、建設は大手ゼネコンや専業の鉄骨会社に劣る。
どちらに重みを置いたか
建設の受注の勢いと貿易の利益率は、強気の主張が正しい。だが、10年の価値を決めるのは、数量の縮みと、資本効率の低さと、財務の重さだ。この三つは慎重な見方が的を射る。
中立の筋書きは、名目の利益が緩やかに増えるものの、ROEが資本コストを下回る形である。確率は、中立を最も厚くし、楽観とやや楽観に2割強、やや悲観と悲観に3割強を置いた。建設の勢いを考え、悲観は1割にとどめた。 中立の筋書きは、名目の利益が緩やかに増えるものの、実質では細り、今の時価総額を下回る。強気の指摘が当たるのは、建設が5%を超える利益率を保ち、小売が横ばいを守る場合に限られる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,658 円311 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 336 円63 億円)。 今の値に割り戻すと 1,017 円190 億円、今との差 −18.7%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,155 円591 億円 | 497 円93 億円 | +191.9% | +11.3% | 292 円55 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,326 円436 億円 | 427 円80 億円 | +120.1% | +8.2% | 551 円103 億円 |
| 中立 | 38% | 1,986 円372 億円 | 352 円66 億円 | +86.9% | +6.5% | 888 円166 億円 |
| やや悲観 | 24% | 708 円133 億円 | 246 円46 億円 | −23.8% | −2.7% | 229 円43 億円 |
| 悲観 | 10% | 156 円29 億円 | 176 円33 億円 | −73.4% | −12.4% | 33 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,658 円311 億円 | 336 円63 億円 | +59.3% | +4.8% | 1,993 円373 億円 |
今の株価時価総額 1,251 円234 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 建設が伸び、小売が3%近くまで戻る 利益 40 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 3,155 円591 億円
建設は、駐車場と改修工事の需要が10年途切れず、工事量は今より1割強増える。鉄骨と電気設備の領域が広がり、利益率は5%に上がる。小売は、改装した店で売場が戻り、調剤とネット通販が加わって、客数が保たれる。利益率は2.6%に上がる。
貿易は、原料の取扱を広げて数量が伸び、10%の利益率を保つ。営業利益は64億円と、今の1.8倍になる。
借金は利益で返し、利払いの負担も軽くなる。ROEは9%近くに上がる。会社の中期計画の延長線上にある、最良の10年だ。
ネット通販と調剤の売上が加わり、小売の客単価は物価を上回って伸びる。総還元性向も少しずつ上がり、自己資本の増加が抑えられる。借金の返済が進めば、金利が上がっても利払いの負担は軽くなる。
- 小売事業(スーパーセンター・ホームセンター):数量 2,963(来店客数(万人・年。推定))× 価格 0.35(客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目))→ 売上 1,048 億円・営業利益 27 億円。客数は横ばい、客単価36%増、利益率2.6%
- 建設事業:数量 2,240(完成工事の件数(件・年。推定))× 価格 0.35(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 782 億円・営業利益 39 億円。工事量12%増、単価40%増、利益率5.0%
- 貿易事業:数量 683(輸入販売のロット数(ロット・年。推定))× 価格 0.13(1ロットあたり売上(億円・名目))→ 売上 92 億円・営業利益 9 億円。数量5%増、単価34%増、利益率10%
- その他(建物管理・不動産):数量 100(取扱件数(件・年。推定))× 価格 0.27(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。横ばい、利益率9%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.23 倍、時価総額 568 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の受注増が続き、小売の改装と調剤が効き、貿易も安定という好条件が重なる必要がある。それでも、10年間の人口減とROEの低さを考えると、1割未満が妥当。
やや楽観 20% 建設の勢いが続き、小売は横ばいを保つ 利益 31 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,326 円436 億円
建設は、受注残が積み上がり、利益率が4.7%に上がる。工事量は今より5%増える。小売は客数が4%ほど減るが、客単価が物価並みに上がり、利益率は2.2%を保つ。
貿易は、薬価改定の影響を受けつつも、利益率9.5%を保つ。営業利益は52億円で、今の4割増だ。
ROEは7%台に上がるが、資本コストには届かない。借金は少しずつ減る。
小売は、改装した店で売場が戻り、調剤薬局とネット通販が客数の減りを一部補う。貿易は、原薬の製造工程の見直しが終われば、利益が元の水準に戻る。東陽興業の取り込みで、建設の電気設備の領域が広がる。会社の中期計画の目標には届かないが、方向は同じだ。
- 小売事業(スーパーセンター・ホームセンター):数量 2,844(来店客数(万人・年。推定))× 価格 0.35(客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目))→ 売上 984 億円・営業利益 22 億円。客数4%減、客単価33%増、利益率2.2%
- 建設事業:数量 2,100(完成工事の件数(件・年。推定))× 価格 0.34(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 718 億円・営業利益 34 億円。工事量5%増、単価37%増、利益率4.7%
- 貿易事業:数量 650(輸入販売のロット数(ロット・年。推定))× 価格 0.13(1ロットあたり売上(億円・名目))→ 売上 81 億円・営業利益 8 億円。数量横ばい、単価25%増、利益率9.5%
- その他(建物管理・不動産):数量 100(取扱件数(件・年。推定))× 価格 0.26(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。横ばい、利益率8.5%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.13 倍、時価総額 407 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:建設の受注残が積み上がっている点は確かで、2027年3月期の会社予想も増益。計画が延期されても、方向は同じ。重みを置く。
中立 38% 数量は細り、物価の値上げで名目の利益が緩やかに増える 利益 25 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,986 円372 億円
小売は、客数が8%ほど減る。長野県の人口減と、競合とネット通販の侵食が効く。一方で、客単価は物価の分を完全には転嫁できず、3割増にとどまる。利益率は2.0%で、今とほぼ同じだ。
建設は、工事量が5%減るが、価格は物価並みに上がり、利益率は4.5%を保つ。貿易は、薬価の抑制で単価が2割増にとどまる。
営業利益は42億円で、今より17%増えるが、物価の上昇を考えれば実質では減る。全社の費用は物価の分だけ増える。純利益は25億円で、利益の4分の1を配る。自己資本は400億円を超え、ROEは6%台に下がる。借金は返すが、利払いの増加が相殺する。
10年の間に、景気の後退が一度はあり、建設の受注が1〜2年落ち込む。小売は生活必需品が下支えし、赤字には落ちない。貿易の原料は薬価の抑制で単価が伸びにくい。配当は増え続けるが、配当性向は25%台を保つ。
- 小売事業(スーパーセンター・ホームセンター):数量 2,726(来店客数(万人・年。推定))× 価格 0.34(客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目))→ 売上 921 億円・営業利益 18 億円。客数8%減、客単価30%増、利益率2.0%
- 建設事業:数量 1,900(完成工事の件数(件・年。推定))× 価格 0.33(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 635 億円・営業利益 29 億円。工事量5%減、単価34%増、利益率4.5%
- 貿易事業:数量 618(輸入販売のロット数(ロット・年。推定))× 価格 0.12(1ロットあたり売上(億円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 7 億円。数量5%減、単価20%増、利益率9%
- その他(建物管理・不動産):数量 100(取扱件数(件・年。推定))× 価格 0.26(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。横ばい、利益率8%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 326 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想(次の期は営業利益38億円)と、受注残の積み上がりを踏まえ、数量の縮みを人口の縮みに合わせた、最も自然な筋書き。
やや悲観 24% 小売の競争と金利の上昇で、利益が4割減る 利益 12 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 708 円133 億円
小売は、客数が15%減る。競合の出店とネット通販の侵食で、値下げ競争が続き、利益率は1.4%に下がる。建設は、受注の山が一巡し、職人不足と資材高で不採算工事が増え、利益率は3.5%に下がる。
貿易は薬価の抑制で単価が1割増にとどまり、利益率は7%に下がる。営業利益は23億円と、今の6割だ。借金の金利は3.5%に上がり、純利益は12億円まで減る。
配当は守るが、増配は止まる。ROEは3%台に下がる。
建設の入札で価格競争が強まり、利益率の高い改修工事の比率が下がる。貿易の原薬の取扱量も、薬価の抑制で減る。小売の店舗を減らす判断が必要になり、減損が出る年もある。それでも、会社の存続は揺らがない。
- 小売事業(スーパーセンター・ホームセンター):数量 2,519(来店客数(万人・年。推定))× 価格 0.33(客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目))→ 売上 819 億円・営業利益 11 億円。客数15%減、客単価25%増、利益率1.4%
- 建設事業:数量 1,700(完成工事の件数(件・年。推定))× 価格 0.32(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 552 億円・営業利益 19 億円。工事量15%減、単価30%増、利益率3.5%
- 貿易事業:数量 553(輸入販売のロット数(ロット・年。推定))× 価格 0.11(1ロットあたり売上(億円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。数量15%減、単価10%増、利益率7%
- その他(建物管理・不動産):数量 90.0(取扱件数(件・年。推定))× 価格 0.24(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。1割減、利益率6%
倍率:事業ROE 3.2%は資本コストを大きく下回り、上限は1÷k=11.4倍。小売の競争と金利上昇で稼ぎが細るため、上限の約65%の7.5倍に置いた。
確率:既存店売上が前年を割る流れが続き、金利の上昇が重なる。建設の受注の山が一巡する要素もある。複数の逆風が重なるが、事業が崩れるわけではない。
悲観 10% 小売が赤字に近づき、借金が株主を圧迫する 利益 2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 156 円29 億円
小売は、競合の大型店とネット通販に客を奪われ、客数が2割減る。値下げで利益率は0.8%まで落ち、店舗の減損が出る。建設は、不採算工事と職人不足で工事量が3割減り、利益率は2.5%に下がる。貿易は、薬価の引き下げと原薬の取扱減で、数量が4割減る。
営業利益は6億円まで減り、金利の上昇で純利益は2億円にとどまる。配当は維持が難しくなる。借金の返済が遅れ、財務の余裕が消える。
会社は赤字にこそならないが、株主の価値は細り、構造的に優良さを失った会社になる。
借金の金利が上がる中で、配当を守るか、返済を優先するかの判断を迫られる。株主は、小さな配当と、細った利益に挟まれる。
- 小売事業(スーパーセンター・ホームセンター):数量 2,370(来店客数(万人・年。推定))× 価格 0.31(客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目))→ 売上 740 億円・営業利益 6 億円。客数2割減、客単価20%増、利益率0.8%
- 建設事業:数量 1,400(完成工事の件数(件・年。推定))× 価格 0.31(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 437 億円・営業利益 11 億円。工事量3割減、単価25%増、利益率2.5%
- 貿易事業:数量 390(輸入販売のロット数(ロット・年。推定))× 価格 0.10(1ロットあたり売上(億円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。数量4割減、単価据え置き、利益率5%
- その他(建物管理・不動産):数量 80.0(取扱件数(件・年。推定))× 価格 0.22(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。2割減、利益率4%
倍率:事業ROE 0.6%は資本コストを大きく下回り、稼ぐ力は純利益2億円÷k=約24億円と小さい。構造的に負けた会社なので、利益の倍率ではなく、売れる資産の床(約30億円)に近い値として、今の自己資本の0.12倍(約29億円)に置いた。EV ÷ 営業利益で見ても約46倍と高く(EV は時価総額+純有利子負債)、利益の倍率で割安とは言えない。借金が重く、売却益は返済に回る。
確率:小売の競争力が崩れ、建設の不採算工事が重なる複合的な筋書き。借金が時価総額と同じ規模あるため、起きると株主の取り分は急に細る。建設の受注の勢いを考え、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小売事業(スーパーセンター・ホームセンター)
長野県中心の約23店のスーパーセンターで、食品・日用品・ホームセンター商品を売る。調剤・ネット通販も。
| 数量来店客数(万人・年。推定) | 価格客単価(億円/万人=1万人あたり売上・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,963 | 0.26 | 770 | 16 |
| 10 年後 中立 | 2,726 | 0.34 | 921 | 18 |
取り方:小売の売上770.3億円を、年間の来店客数2,963万人と、1人あたりの売上(客単価)に分けた推定。店舗は約23店、1店あたり年約130万人、1日約3,500人の計算。客数は開示がなく、客単価はスーパーセンターの食品と日用品の構成から置いた(1人あたり数千円の水準)。客数は実質の数量、物価は客単価の側に入れた。
建設事業
自走式立体駐車場、建築鉄骨、内外装の改修工事、木造住宅向け資材の供給。
| 数量完成工事の件数(件・年。推定) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 0.25 | 499 | 22 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 0.33 | 635 | 29 |
取り方:建設の売上499.0億円を、年2,000件の工事(駐車場、鉄骨、改修、木造資材の小口を含む)と、1件あたり約2,500万円に分けた推定。工事件数は開示がなく、受注残と受注額から置いた粗い推定。受注残は245億円。
貿易事業
医薬品原料(アセトアミノフェンなど)、化粧品原料、食用サボテンの輸入販売と、HMG原薬の精製。
| 数量輸入販売のロット数(ロット・年。推定) | 価格1ロットあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 650 | 0.10 | 65 | 7 |
| 10 年後 中立 | 618 | 0.12 | 74 | 7 |
取り方:貿易の売上65.0億円を、年650ロットの輸入販売と、1ロットあたり約1,000万円に分けた推定。医薬品・化粧品の原料で、開示は金額だけ。ロット数は粗い推定。
その他(建物管理・不動産)
建物総合管理と不動産売買。
| 数量取扱件数(件・年。推定) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.20 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.26 | 26 | 2 |
取り方:その他(建物管理、不動産売買)の売上20.1億円を、年100件の取扱と、1件あたり約2,000万円に分けた推定。開示は金額のみ。
リスクと懸念
財務の重さと金利上昇
有利子負債は295億円(リースを含む)で、純有利子負債は時価総額と同じ規模だ。借り換えで金利が3.5%に上がれば、利払いは10年で6億円ほど増える。自己資本比率は29%で、利益が崩れると余裕がない。
小売の既存店売上の減少
2026年4〜9月の既存店売上は前年の97.5%だった。長野県の人口減と、競合の大型店、ドラッグストア、ネット通販に客を奪われる。小売は売上の6割弱、利益率は2%と薄く、わずかな客数の減少が利益を大きく削る。
建設の受注の山と不採算工事
2026年3月期の受注は3割近く増えたが、一時的な山の可能性がある。職人不足と資材の値上がりで、不採算工事が出るリスクがある。入札で決まる案件は価格を自社で決められず、利益率が下がりやすい。
貿易の制度と取引先への依存
医薬品原料は薬価改定の影響を受け、次の期は一部の原薬の製造工程の見直しで利益が減る。植物原料やヒト由来原料の仕入が特定の国に偏る。売上は小さいが利益率が高く、崩れると全体への影響が大きい。
M&Aと海外拠点のリスク
小さな買収を重ねる方針で、のれんと関係会社株式の減損が起きうる。建築の設計業務を担う拠点がミャンマー、中国、ベトナムにあり、現地の政情の悪化で業務が止まる可能性がある。
資本の効率
利益の4分の3を内部にため、自己資本は10年で1.7倍近くに膨らむ。ためた資金の稼ぎは資本コストを下回り、ROEは6%台へ下がる見込みだ。還元の方針が変わらなければ、1株の価値は薄まる。
今後の分かれ目
- 総還元性向が5割を超える方針に変わった
- 資本のためすぎが解消されるため、ROEの低下が和らぎ、中立のPERを上げて見る。
- 建設の受注残が2期続けて減った
- 受注の山が過ぎたと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 小売の既存店売上が3期続けて前年を上回った
- 改装と調剤の効果が出たと見て、やや楽観の確率を上げる。
- 借入金の借り換え金利が、想定の3.5%を超えた
- 純利益の見通しを下げ、悲観側に重みを寄せる。
- 営業キャッシュフローが、利益の半分を超えて回復した
- オーナー利益の質が上がるため、中立の倍率を少し上げて見る。
- 貿易の原薬の製造工程の見直しが長引き、数量が戻らなかった
- 貿易の利益率の高さが崩れるため、全社の利益の見通しを下げる。
見ておくもの
- 建設の受注高と受注残、営業利益率
- 小売の既存店売上と客数、新しい基幹システムの効果
- 営業キャッシュフローと純有利子負債の推移
- 総還元性向の方針と、自己株式の活用
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEとk(8.75%)から、PERの上限1÷k=11.4倍を計算し、事業の質に応じて置いた。今の株価に寄せていない。今のPERは10倍ほどでPBRは1倍だが、それを根拠にせず、10年中立のPERは上限の約8割の9.2倍に置いた。純利益÷営業利益は、金利上昇の6億円と、返済による利払いの減少の両方を見て0.60とし、過去の中央値0.64に近い。数量は実質、物価は価格に入れた。減価償却は物価で増やさず、更新投資の上昇は借入と還元の減少で表した。店舗の一部の賃借は、新リース会計基準で2028年3月期から借金の見かけが増えるが、10年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.2→14.23 倍・やや楽観 PER 9.8→13.13 倍・中立 PER 9.2→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。