結論
丸千代山岡家は、豚骨ラーメンの「ラーメン山岡家」を全国に約200店、すべて直営で営む会社だ。国道沿いの大きな駐車場、24時間営業、濃厚なスープ。この三つで、長距離ドライバーと深夜の客をつかんでいる。
筆者の結論は割高だ。いちばんの理由は、稼ぎの大半が一つのブランドに乗っていることにある。直近の営業利益率は約11%と外食では高いが、24時間店は人手が頼りで、賃上げが利益をいちばん削りやすい。
事業そのものは良い。既存店は46か月続けて前年を上回り、客数も客単価も伸びた。ただ、中期計画の出店は年8〜20店と堅実で、10年で店は300店前後、売上は2倍強が筆者の中立の見立てだ。そこから出る利益に、成熟した外食の倍率をかけても、今の時価総額には届かない。
今の値段は、この成長が途切れず、利益率も落ちないことを前提にしている。強い会社であることと、安く買えることは別の話だ。筆者が見ているのは、その差を埋める安全域が今の値段にあるかどうかである。
創業者の山岡正氏が今も筆頭株主で、経営は安定している。一方、還元は配当性向が低く、稼ぎの多くを出店に回す。株主の手元に戻る現金は少ない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の事業は「持ちたい」と思える質がある。一つのことに集中し、利益率が高く、自前で店を増やす。ただ、買うかどうかは値段で決まる。
筆者がいちばん気にするのは、再投資の質だ。出店のたびに店が増え、1店あたりの売上が物価並みに伸びれば、利益は10年で2倍を超える。だが、店が300を超えるあたりから、よい立地は減る。新しい店の稼ぎは今より薄くなる。
次に、オーナー利益、つまり再投資のあとに株主に残る利益を考える。出店に年30億円台の資金がいる。稼ぎの多くは店に消え、配当は少ない。持ち続けても現金は返ってこない。
安全域はどうか。今の値段は、利益の20倍超だ。成長がうまく続くことと、利益率が高いまま保たれることの両方を前提にしている。10年先の利益に成熟した倍率をかけると、今の値段を下回る。事業は優れているが、値段に安全域がない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。ラーメン一杯の売上が全体の大部分を占め、店はほぼすべて直営である。フランチャイズ(加盟店)に任せず、本部が店の利益を丸ごと取る。その分、出店の資金も自分で背負う。
看板は「ラーメン山岡家」。豚骨を長く煮込んだ濃いスープで、味噌や煮干しなど周辺の業態も少し持つが、規模はごく小さい。2026年1月末で31都道県に195店ほどあり、北海道と本州の幹線道路沿いに多い。
強みは立地と営業時間にある。国道沿いの広い駐車場に、24時間・年中無休で構える。トラックや営業車の運転手が昼夜を問わず入れるので、夜の売上が他店より厚い。創業は1988年、茨城県牛久市の1号店で、元は弁当店のフランチャイズだった。
出店は直営で自前の資金を使うため、速さには限りがある。中期計画では今期8店、次期15店、3期目20店と、ゆるやかに加速する見込みだ。2030年1月期までに47都道府県すべてに店を出すことを目標にしている。
客単価は物価に沿って上がり、既存店の客数も伸びている。月次では客単価が前年比で2〜3%上がるなか、客数もそれ以上に増えた時期がある。値上げが客離れにつながっていないことが、足元の強さの中身だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは「ロードサイドの深夜帯」にある。ここは家系や町中の人気店と客層が重ならない。スープの濃さと量のわりに値段が手頃で、値上げのあとも客数が伸びた。ブランドの力が値上げを通したと筆者は見る。
資本効率も高い。自己資本利益率(ROE)は直近で36%と、外食でも図抜けている。ただ、これは自己資本がまだ小さいせいで、そのまま続くとは考えない。稼いだ利益を店に再投資しても、店の数が増えるほど新しい店の稼ぎは薄まる。
弱みは三つある。一つ目は、売上のほぼ全部が一つのブランドだということだ。ブームが去れば逃げ場がない。二つ目は、24時間営業の人手だ。深夜帯の賃金は上がり続ける。三つ目は、直営の借り店舗が多いとみられることで、家賃が固定の約束として残る。純現金が少しあるが、これを見かけほど強いとは言えない。
経営は、創業者の山岡正氏が今も筆頭株主である。長く続く創業家の目線は、無理な拡大より店の質を守る方向に働いてきた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ラーメン店の市場は、帝国データバンクの推計で2025年度に約8,900億円と過去最高になった。10年前の約1.6倍で、早ければ2027年度にも1兆円に届くとされる。ただ、中身は値上げの積み重ねで、店数は大きくは増えていない。数量は横ばい、価格が名目で伸びる市場だ。
競争は激しい。倒産は2024年に72件、2025年も59件と高止まりした。小さな個人店が、材料費と人件費の上昇に耐えきれず消えている。逆に、チェーンは出店と値上げで市場の伸びを取っている。
同じ「ロードサイド・豚骨」では、町田商店や家系の大手、九州系の豚骨チェーンが競合になる。幸楽苑のような醤油系の大手や、天下一品の店舗網も、客を取り合う相手だ。ただ、24時間営業を軸にした直営の大型店は、山岡家のほかに目立つ相手が少ない。
10年のカギは人手だ。最低賃金は物価を上回って上がる。券売機・配膳・セントラルキッチン(調理の集中工場)で吸収できる会社と、できない会社の差が開く。山岡家は店が大きく、運営が単純なぶん有利だが、深夜帯の人員は薄くできない。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当性向は20%前後と低く、稼いだ利益の多くを出店に回している。自社株買いの方針は確認できなかった。
今後3年で約100億円の設備投資を予定する。店を直営で建てて回すためで、手元資金はそれに使われる。純現金はあるが、時価総額の1割に届かず、余った現金として切り分けるほどではない。
M&Aは、これまで目立った動きがない。中期計画も、新業態や海外の数値目標を置いていない。一つのブランドを深く掘る方針だ。
大株主は山岡正氏が約18%、MYコーポレーションが約13%と、上位二者で3割を超える。自社株が分散していないぶん、買収を仕掛けられる余地は小さい。経営は安定するが、少数株主にとっては、還元が少ない状態が続くことを意味する。
株主優待は年およそ 0.4 億円(推定)で、利益から引かれ済み。還元に足しても 1 億円に届かず、差は 1 ポイント未満のため数字は変えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
山岡家の勢いは、数字で確かめられる。既存店の売上は46か月続けて前年を上回り、客数と客単価が両方とも伸びた。値上げをしても客が減らないのは、ブランドの力だ。
国道沿いの大型店と24時間営業の組み合わせは、他社がまねしにくい。夜の客は、昼の競争とは別の市場にいる。
出店余地もまだある。2030年1月期までに47都道府県すべてに店を出す計画で、未出店の地域が残っている。店が200から300、350と増えても、1店あたりの売上が物価並みに伸びれば、売上は2倍から2.5倍になる。
利益率にも伸びしろがある。店が増えれば食材の仕入れと、セントラルキッチンの効率が上がる。券売機と配膳の自動化も進み、賃上げの一部を吸収できる。
財務も軽い。純現金で、金利の上昇に利益を削られない。創業者が今も大株主で、短期の数字に流されない経営が続く。これほど稼ぐ会社が10年で規模を倍にすれば、利益は2倍を超え、倍率も評価される。
慎重な見方
一本足の怖さを見るべきだ。売上のほぼ全部が「ラーメン山岡家」にあり、ブームでも、味の飽きでも、食材の高騰でも、全部が同じ店に響く。
24時間営業は、強みであり、弱みでもある。深夜帯の人員は最低賃金の上昇でじわじわ高くなる。人手が確保できず、営業時間を絞らざるを得なくなれば、売上の厚みが削られる。
中期計画の出店計画は、前年版より下げられた。2027年1月期は213店から195店へと大きく絞った。出店の勢いが鈍ったことを会社自身が認めた形だ。よい立地が減り、新しい店の稼ぎも薄くなっているのではないか。
直営ゆえに店ごとに家賃と人件費が固定費として残る。売上が1割落ちれば、利益は半分近く減る。いまの営業利益率11%は、その実力というより、人気が続いている間の姿だ。
加えて、豚骨の濃いスープは好みが分かれ、客層がロードサイドの男性に偏る。広がりに限りがある。今の値段はこれらをすべて「うまくいく」前提で払っている。
どちらに重みを置いたか
事業の質については強い見方に分がある。既存店の伸びとブランドの力は本物で、10年で売上が2倍強になる中立を置いた。
ただ、値段の面では慎重な見方が強い。一つのブランドに依存し、深夜の人手が最大の弱点で、出店計画も前年より絞られた。10年の中立の利益は今の1.5倍ほどで、成熟した外食の倍率をかけても、今の時価総額を下回る。
そこで確率は、やや楽観と同じ重さにやや悲観を置き、悲観はわずかに厚くした。単一ブランドの寿命の不安は資本コストにも少し入れ、確率では二重に数えていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 5,754 円1,125 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 700 円137 億円)。 今の値に割り戻すと 3,209 円627 億円、今との差 −40.3%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 11,671 円2,281 億円 | 1,059 円207 億円 | +136.6% | +9.0% | 1,146 円224 億円 |
| やや楽観 | 24% | 8,801 円1,720 億円 | 875 円171 億円 | +79.9% | +6.0% | 2,322 円454 億円 |
| 中立 | 32% | 6,580 円1,286 億円 | 721 円141 億円 | +35.7% | +3.1% | 2,336 円457 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,937 円379 億円 | 553 円108 億円 | −53.7% | −7.4% | 597 円117 億円 |
| 悲観 | 11% | 189 円37 億円 | 281 円55 億円 | −91.3% | −21.6% | 52 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,754 円1,125 億円 | 700 円137 億円 | +20.0% | +1.8% | 6,454 円1,261 億円 |
今の株価時価総額 5,380 円1,051 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 9% ロードサイドの定番に育つ 利益 101 億円 · PER 21.3 倍 · 株価時価総額 11,671 円2,281 億円
出店は計画を上回って進み、全国47都道府県に店を持つ。10年後は店が400に届く。北海道と本州の幹線道路沿いに加え、九州・四国に面で広がる。店が増えても、1店あたりの売上は物価を少し上回って伸びる。客数が落ちず、値上げも通る。
人手の確保にも成功する。券売機・配膳・調理の自動化と、本部の仕入れの力で、賃上げの多くを吸収する。営業利益率は11%前後を保つ。味噌や煮干しなどの周辺業態も少し育つが、主役は変わらない。
創業者の目線を引き継いだ経営が続き、出店の資金は内部で賄う。配当も少しずつ増える。ラーメンの外食チェーンとして、国内で別格の存在になる10年だ。
- ラーメン山岡家(直営):数量 400(店舗数(店))× 価格 3.20(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,279 億円・営業利益 141 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 101 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.2% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.3 倍。全体の PER 21.32 倍、時価総額 2,153 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年のあいだ出店が計画より速く、利益率も保たれる、という二つがそろう必要がある。出店は前年版より下げられた実績もあり、確度は高くない。
やや楽観 24% 出店が順調に進み、利益率を守る 利益 77 億円 · PER 20.9 倍 · 株価時価総額 8,801 円1,720 億円
出店はほぼ計画どおり進み、10年後に店は350になる。新しい地域の店は、立ち上がりに時間がかかるが、ブランドの認知が広がると売上が追いつく。1店あたりの売上は物価をわずかに上回る。
人件費の上昇は、自動化と仕入れの力で大半を吸収できる。ただ、深夜の人員の確保にはコストがかかり、利益率は11%から10%へ少し下がる。
創業者の経営方針は続き、出店は自前の資金で賄う。配当は緩やかに増える。ロードサイドの豚骨ラーメンで、確かな地位を築く10年になる。
新しい地域では、立地の選び方と人の採用が成否を分ける。ここを外さない限り、既存店の勢いは新店にも移る。
- ラーメン山岡家(直営):数量 350(店舗数(店))× 価格 3.07(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 1,073 億円・営業利益 107 億円。営業利益率10%
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 29.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 18.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.9 倍。全体の PER 20.87 倍、時価総額 1,607 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の延長線上で、47都道府県への出店がほぼ予定どおり進む現実的な上振れ。足元の既存店の勢いが裏づける。
中立 32% 出店が300店で一巡し、利益率は少し下がる 利益 58 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 6,580 円1,286 億円
10年後に店は300店になる。47都道府県に店を出し終えるが、よい立地は少なくなり、新しい店の売上は既存店より低い。出店の勢いは、年15〜20店から10店台へ落ち着く。
1店あたりの売上は、物価と同じくらい伸びる。客数は人口の減少で横ばいだが、値上げは通る。
賃上げは自動化で吸収しきれず、営業利益率は今の11%から9%に下がる。深夜の人員を確保するコストと、新しい店の立ち上がりの重さが効く。それでも、一つの業態として高い利益率を保つ。
配当は少しずつ増え、還元は純利益の3割ほどになる。国内で定着した外食チェーンとして、堅実に利益を積み上げる10年だ。
- ラーメン山岡家(直営):数量 300(店舗数(店))× 価格 2.95(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 886 億円・営業利益 80 億円。営業利益率9%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 17.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍。全体の PER 20.4 倍、時価総額 1,183 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通しの中心と、出店余地・賃上げ・利益率の落ち着き先を組み合わせた中心の筋書き。2人の議論の落としどころ。
やや悲観 24% 出店が250店で止まり、人手が利益を削る 利益 32 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,937 円379 億円
出店は250店あたりで止まる。よい立地が減り、新しい地域の店の売上が伸びない。既存店の客数は、新しい競合に分けられる。
深夜帯の人員コストは最低賃金の上昇で重くなる。営業時間を一部の店で短くせざるを得ず、24時間という強みが薄まる。営業利益率は6.5%まで下がる。
1店あたりの売上は、値上げを物価に届かせることができず、10年で1.26倍にとどまる。家賃と人件費の固定費が残るので、利益は売上の落ち込み以上に減る。
配当は維持するが、成長の物語は終わる。外食の中でも平凡な利益率の会社になる10年だ。
- ラーメン山岡家(直営):数量 250(店舗数(店))× 価格 2.78(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 695 億円・営業利益 45 億円。営業利益率6.5%
倍率:ROE9.1%(純利益32億円÷自己資本353億円)。今の利益は残り、先で薄れるのは新しい投資の稼ぎだけとみて、RONIC=k7.75%+1/2×(9.1−8.0)=8.6%、g4.0%から正当化PER=13.3倍。伸びと堀の持ちを低く見て、やや悲観は上限の7割の9.3倍に置いた。
確率:出店計画が前年版から下げられた実績と、深夜帯の人手の上昇が、慎重な見方の根拠。単一ブランドの弱さを見て、やや楽観と同じ重さを置いた。
悲観 11% 一本足が折れ、店を畳む 利益 5 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 189 円37 億円
人気が一巡し、ロードサイドの豚骨ラーメンの客が競合に流れる。人手が確保できず、24時間営業をやめる店が相次ぐ。夜の売上の厚みという強みが消える。
直営の固定費は重い。家賃と人件費は売上が落ちても減らず、利益は一気に消える。営業利益率は2%まで下がる。不採算店の閉鎖が進み、店は180店まで減る。
値上げは通らず、1店あたりの売上は物価に追いつかない。10年で1.05倍にとどまる。店の資産には減損が入る。
それでも、ラーメン店の需要が消えるわけではない。ブランドと立地が残るので、事業の売却や再編という形で一部の価値が出る可能性は残る10年だ。
- ラーメン山岡家(直営):数量 180(店舗数(店))× 価格 2.32(1店あたり年間売上(億円))→ 売上 417 億円・営業利益 8 億円。営業利益率2%
倍率:ROE 2.7%(純利益 5 億円 ÷ 自己資本 186 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 9.3 倍より低い 7.4 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:単一ブランド・24時間の人手・直営の固定費という三つの弱さが、同時に表に出る構造的な負けの筋書き。大手の外食より厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ラーメン山岡家(直営)
豚骨ラーメンの「ラーメン山岡家」を、国道沿いの大型店で24時間営業する直営事業。味噌・煮干しなどの小さな業態も合算。
| 数量店舗数(店) | 価格1店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 195 | 2.21 | 430 | 47 |
| 10 年後 中立 | 300 | 2.95 | 886 | 80 |
取り方:2026年1月期の売上430億円を、期末の店舗数195店で割って1店あたり2.205億円を出した(期中の平均店舗数は少し少ないので、実際の1店の売上はこれ以上)。数量は店舗数で、実質の量。1店あたり売上は名目で、客数と客単価の両方が入る。中立では物価並みの10年1.34倍に置き、それ以上は積まない。店舗数は、中期計画の230店(2029年1月期)を足がかりに、よい立地が減ることを見て、中立で10年300店とした。 数量は実物(店数)で、伸びは出店計画など事業の事実による。市場の名目の伸びを数量に置いたものではなく、価格に物価を掛けても二重がけにならない。
リスクと懸念
深夜帯の人手と賃上げ
24時間営業は、人員を薄くできない。最低賃金は物価を上回って上がる。自動化で吸収しきれなければ、利益率を直接削る。人が集まらず営業時間を絞れば、強みの夜の売上が失われる。
一つのブランドへの集中
売上のほぼ全部が「ラーメン山岡家」にある。味の好みが分かれ、ブームが去るか、食材が高騰するかすれば、全店が同時に響く。ほかの業態は規模が小さく、逃げ場にならない。
出店計画の下方修正
今年の中期計画は、2027年1月期の店舗数を前年版の213店から195店へ下げた。よい立地が減っているか、出店の資金や人手が追いつかない兆しだ。出店が成長の源なので、止まれば利益の伸びも止まる。
固定費の重さ
直営店の家賃と人件費は、売上が落ちても減らない。売上が1割落ちれば利益は半分近く消える。新リース会計の基準(2028年1月期から)で、借りている店舗が貸借対照表に載り、純現金の見え方も変わる。
食材と為替
豚骨・チャーシュー・小麦・のりなどは、円安と国際相場で上がりやすい。値上げで追いつけなければ利益率が削られる。これまでは値上げの後も客数が伸びたが、客の我慢には限りがある。
創業家と大株主への依存
創業者の山岡正氏が約18%、MYコーポレーションが約13%を持つ。経営は安定するが、世代交代や持ち株の売却があれば、方針や株の需給が変わりうる。還元が少ない状態も続きやすい。
今後の分かれ目
- 2028年1月期までに210店の出店が計画どおり進み、既存店が伸び続けたら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。出店余地と客数の伸びが続いている証拠になる。
- 出店計画がさらに下げられ、既存店の客数が前年を割ったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。成長が一巡し、新しい店の稼ぎが薄くなっている。
- 深夜の営業時間を絞る店が増えたら
- 24時間という強みが崩れ始めたと見て、利益率の前提を下げる。
- 営業利益率が10%を割り込んだら
- 賃上げを吸収できていない。中立の利益率9%を下回る道筋を意識する。
- 配当性向や自社株買いなど、還元の方針が厚くなったら
- 資本の使い方が改善し、ROEの下がり方が緩やかになる。倍率の上限が少し上がる。
見ておくもの
- 中期経営計画の出店数(2027年1月期8店・次期15店・3期目20店)と店舗数の推移
- 既存店の売上・客数・客単価(月次)
- 営業利益率と人件費率、とくに深夜帯の人員
- 47都道府県への出店の進み具合
- 大株主の持ち株の動きと配当方針
倍率と資本コストの決め方
店舗数(実質)×1店あたり売上(名目)で積み上げ、自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流した。倍率は(1−g÷RONIC)÷(k−g)で出した上限の7〜8.5割に置いた。今の株価や同業の倍率からは置いていない。悲観は市場の倍率でなく、稼ぐ力と今の自己資本で置いた。今の時価総額は今の利益の20倍超だが、価値の数字はこれに寄せていない。なお、新リース会計基準(2028年1月期から)で貸借対照表の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.5→21.32 倍・やや楽観 PER 13→20.87 倍・中立 PER 12.6→20.4 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5%を足して8.0%。事業は黒字で傾いておらず、上乗せは置かない。創業者の持ち株や出店の失敗など個別のリスクは筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.75%。