結論
マルシェは、居酒屋「八剣伝」「酔虎伝」「居心伝」などを直営 80 店・フランチャイズ 185 店で展開する大阪の外食会社だ。2026 年 6 月に、厨房機器のテンポスホールディングスが第三者割当増資で議決権の過半を握り、子会社になった。筆者の結論は、10 年で見ても今の値段は大きく割高だというものだ。
理由は利益の薄さにある。売上は 48 億円あるが、2026 年 3 月期は営業赤字で、会社予想でも次の期の純利益は 0.6 億円にすぎない。時価総額は 29 億円で、利益の 50 倍近い。
親会社は新規出店 15 店と既存店 20 店の業態転換を掲げ、増資の手取り 9.9 億円を投じる。物件情報と厨房機器の調達力という実利があり、再建の道筋は以前より太くなった。
それでも居酒屋は人手と家賃の固定費が重く、利益が出るまでの距離が長い。筆者は、10 年で利益が数倍になっても、今の時価総額を支えるには足りないと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ちたいとは思わない。
第一に、利益が出ない。売上 48 億円の会社が、赤字と薄い黒字を行き来する。第二に、固定費が重い。居酒屋は人件費と家賃の比率が高く、客が少し減るだけで赤字になる。第三に、少数株主の立場が弱い。親会社が付いた今、資本の使い道は親の戦略に沿い、配当で戻る期待は小さい。
一方、親会社が付いて資金繰りの不安は消えた。テンポスの物件情報と調達力は、出店のコストを下げる実利がある。倒産の恐れが小さいことは、悲観の床を引き上げる。
安全域は、今の値段にない。時価総額は純利益の 50 倍近くで、10 年で利益が 5 倍になっても、時価総額を支えきれない。筆者は、再建の成否よりも、今の値段が先走っていることを重く見る。経営の資本配分は、増資で食いつなぐ歴史が長く、評価しにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 3 つある。直営の居酒屋は 80 店あり、売上の約 7 割を占める。主力は「八剣伝」で、串焼きと低めの客単価が特徴だ。ほかに「酔虎伝」「居心伝」「ハッケン酒場」「餃子食堂マルケン」などの業態を持つ。
商品部門は、売上の約 2 割を占める。食材や備品を直営店とフランチャイズ店に供給する仕事で、利益率は低い。
フランチャイズ部門は、加盟店 185 店からロイヤリティを受け取る。売上は 3.4 億円と小さいが、店を持たないため利益率が高い。ただし加盟店は 1 年で 14 店減った。
2026 年 3 月末の店舗数は 265 店。直営は増え、フランチャイズは減っている。2020 年 3 月期は売上が 84 億円あったが、コロナで 2023 年 3 月期には自己資本が 1 億円まで減り、店の整理と増資で立て直してきた。2025 年 6 月にテンポスが 2 割を出資し、2026 年 6 月に子会社になった。ほかに、居酒屋以外のラーメンやすしなど新しい業態も試している。店は大阪を中心に、関西・関東の繁華街や駅前の雑居ビルに入る小型店が多い。
優良さと弱いところ
強みは、八剣伝という長い歴史のブランドと、フランチャイズを通じた全国の店舗網だ。串焼きを中心にした低価格の居酒屋は、一定の固定客がいる。直営の店舗運営と、食材の供給をまとめて担う体制もある。
堀は弱い。居酒屋は競合が多く、客単価の低い業態では、客は値段と立地で選ぶ。鳥貴族のような単一価格の強いチェーンや、大手のワタミ、三光マーケティングなど、規模の大きい競合が多い。
収益の質は低い。営業利益率は過去 10 年で、黒字の年も 1% 前後だ。コロナ期は 3 年連続の大赤字で、自己資本はほぼ消えた。直近の 2026 年 3 月期も営業赤字に戻った。
新しい強みは親会社だ。テンポスは厨房機器の販売で、飲食店の開業・出店の物件情報と調達力を持つ。出店費用を下げ、居抜きの物件を探せる。ただ、これで利益が自動的に増えるわけではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
居酒屋は、人口減と若者の飲酒離れで、客数が長く細ってきた業態だ。コロナで一気に落ち、戻りも途中にある。いまは人手不足と最低賃金の上昇、食材高が重なる。居酒屋は人手を多く使う商売なので、人件費の上昇がそのまま利益を削る。
低価格居酒屋は、客単価を上げにくい。値上げで客が離れる懸念が強く、食材高と人件費を吸収しきれない。鳥貴族のように単一価格で規模を作った会社は例外だ。
競合は、鳥貴族、ワタミ、三光マーケティング、串カツ田中、さらにチェーンでない地元の店など。大手が駅前の一等地を押さえ、中小は路面や雑居ビルの 2 階に回る。
フランチャイズ事業は、加盟店の採算が命だ。採算が悪ければ撤退が増え、本部のロイヤリティも縮む。マルシェのフランチャイズは 1 年で 14 店減った。
追い風は、訪日客の夜の外食と、チェーンの再編だ。テンポスのように、飲食店の仕入れと出店を支える会社が親になる動きは、業界の再編の一例と言える。コロナ後の宴会需要は、以前の水準に戻っていない。会社単独の決算で、連結の子会社はない。
資本政策と M&A
資本政策は、増資で食いつないできた歴史だ。2024 年 3 月期に希薄化があり、2025 年 6 月にテンポスが議決権の約 2 割を取得した。2026 年 6 月には、600 万株を第三者割当で引き受けて議決権の過半に達し、子会社になった。手取りは 9.9 億円で、新規出店と業態転換に 6 億円、EC に 1.5 億円、人材採用に 1 億円、小規模の買収に 1.3 億円を充てる。
配当は出していない。親会社が付いた今、余った利益が少数株主に配当で戻る期待は小さい。自社株買いの実績もない。
テンポスは上場のまま独立性を保つと説明している。完全子会社化や非上場化の発表はない。ただし、親子上場の少数株主は、親会社の利益が優先されうる点に注意が要る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
親会社がテンポスになり、再建の条件が整った。飲食店の物件情報、厨房機器の調達力、内外装のコスト削減という具体的な支援が付く。増資の手取り 9.9 億円は、新規出店 15 店と既存店 20 店の業態転換を動かすのに十分だ。
2026 年 3 月期は、既存店の売上が前の年より 2% 増え、全店売上は 9% 増えた。コストの先行投資で営業赤字になったが、2027 年 3 月期は営業利益 1 億円を予想する。直営が増える局面では、店が育つまで赤字が先行するが、育てば店の利益が積み上がる。
フランチャイズの再構築も課題だ。加盟店の採算が改善すれば、ロイヤリティの利益率が高いこの部門は、本社費を超える稼ぎになる。
テンポスは外食売上 500 億円を掲げている。マルシェが核になれば、規模の経済が働き、利益率が数ポイント改善する余地がある。
筆者は、この強気の見方が成り立つ条件は、新店の黒字化が 1 年以内に定着することだと考える。
慎重な見方
売上 48 億円の会社が、コロナ前から黒字でも営業利益率が 1% 前後にすぎない。2026 年 3 月期は営業赤字で、2027 年 3 月期の第 1 四半期も営業赤字だった。会社予想の営業利益 1 億円も、第 1 四半期の出遅れから見て達成は簡単ではない。
人件費の上昇と食材高が続き、客単価を上げにくい居酒屋には逆風だ。フランチャイズは 1 年で 14 店減り、ロイヤリティの利益が縮んでいる。
増資で調達した 9.9 億円の使い道は、新規出店と業態転換が中心で、出店には敷金と内装の資金が先に出ていく。育たなければ、資金が減るだけだ。
親会社が付いたことは、少数株主には必ずしも好材料ではない。配当は出ず、資本の使い道は親の意向に沿う。時価総額は純利益の 50 倍近く、再建が成功しても高い。売上の 3 分の 2 は直営の居酒屋で、客が戻っても人手不足で店が回らない。
居酒屋は人件費の上昇に値上げで追いつけるかが、すべてを決める。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、親会社の支援と資金だ。弱気の根拠は、居酒屋の固定費の重さと、利益の水準の低さだ。筆者は、倒産の恐れが消えた点は評価するが、今の値段を支えるには利益が足りないと見る。
確率は、中立に 4 割弱、やや悲観に 4 分の 1 を置いた。楽観は、親会社の支援で出店が成功する筋書きで 7% とした。
悲観は、出店が失敗して赤字が続き、親会社の支援も縮小する筋書きだ。確率は 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 85 円14 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 0 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 37 円6 億円、今との差 −78.7%、 期待の年率 −6.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 275 円44 億円 | 6 円1 億円 | +61.4% | +4.9% | 20 円3 億円 |
| やや楽観 | 20% | 149 円24 億円 | 0 円0 億円 | −14.3% | −1.5% | 30 円5 億円 |
| 中立 | 38% | 79 円13 億円 | 0 円0 億円 | −54.5% | −7.6% | 30 円5 億円 |
| やや悲観 | 25% | 20 円3 億円 | 0 円0 億円 | −88.7% | −19.6% | 5 円1 億円 |
| 悲観 | 10% | 11 円2 億円 | 0 円0 億円 | −93.5% | −24.0% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 85 円14 億円 | 0 円0 億円 | −50.8% | −6.8% | 86 円14 億円 |
今の株価時価総額 174 円28 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 親会社の支援で出店が当たり、利益が 8 倍になる 利益 4 億円 · PER 11.7 倍 · 株価時価総額 275 円44 億円
テンポスの物件情報と調達力で、直営が 150 店近くまで増える。出店費用が下がり、新店の黒字化が早まる。業態転換した 20 店も客数が伸び、直営の利益率は 7% に届く。
商品部門は供給先の増加で 4 割伸びる。フランチャイズは再構築が進み、加盟店の撤退が止まる。
純利益は今の 8 倍近くになる。ただし、居酒屋の資本効率は資本コストに届かない水準にとどまる。
筆者は、この筋書きの確率を小さく置く。居酒屋の出店で、親会社の支援が思い通りに実を結んだ例は多くない。ただ、起こりえない筋書きではない。出店のコストが下がり、新店の立ち上がりが早まる。親会社の外食売上 500 億円の目標にとって、マルシェは核の 1 社になる。
- 直営店の飲食:数量 188(年間客数(万人))× 価格 0.41(客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円))→ 売上 78 億円・営業利益 5 億円。客数+70%・単価+38%(直営 150 店)
- 商品部門(食材・備品の供給):数量 371(供給先の店舗数(店))× 価格 0.05(1 店あたりの供給額(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。供給先+40%・単価+35%
- フランチャイズ部門:数量 185(FC 店舗数(店))× 価格 0.02(1 店あたりの収入(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。FC 店数±0・単価+35%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.7 倍。全体の PER 11.67 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:テンポスの出店支援が全面的に効き、直営が倍近くに増える筋書き。居酒屋の出店で利益が出る確率は小さい。
やや楽観 20% 出店が緩やかに進み、利益が 4 倍になる 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 149 円24 億円
直営が 110 店ほどまで増え、業態転換した店の客数も上向く。直営の利益率は 6% に届く。フランチャイズは再構築が進むが、加盟店は小幅に減り続ける。
人手不足にも居抜きの物件と設備コストの削減で対応するが、人件費は物価並みに上がる。本社費も物価で増える。
純利益は今の 4 倍ほどに伸びる。それでも配当は出ず、増資後の利益は出店に回る。
この筋書きでは、会社がすでに掲げている新規出店と業態転換が、計画に近い形で進む。大きな新規投資は要らない。親会社の資金と物件情報があり、新規出店の失敗が減る。本社費を物価並みに増やしても、利益は黒字を保つ。
- 直営店の飲食:数量 154(年間客数(万人))× 価格 0.40(客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。客数+40%・単価+33%
- 商品部門(食材・備品の供給):数量 318(供給先の店舗数(店))× 価格 0.05(1 店あたりの供給額(億円))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。供給先+20%・単価+32%
- フランチャイズ部門:数量 176(FC 店舗数(店))× 価格 0.02(1 店あたりの収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 3 億円。FC 店数-5%・単価+32%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:親会社の支援で新規出店と業態転換が進み、フランチャイズの撤退は続く筋書き。
中立 38% 出店は進むが、固定費に利益が食われ、薄い黒字が続く 利益 1 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 79 円13 億円
直営は 15 店の出店と 20 店の業態転換で 100 店ほどになり、客数は 10 年で 25% 増える。客単価は物価をやや下回る 1.3 倍で、人件費の上昇と相殺される。
フランチャイズは再構築が進まず、加盟店が 8% 減る。商品部門は店舗数の増加でやや伸びる。本社費は物価で増え、営業利益率は 2% 台にとどまる。
営業利益は 1.5 億円前後で、今の赤字から黒字に転じる。配当は出ない。親会社の戦略に沿って、利益は出店に回る。
大きな追い風も逆風もなく、10 年が過ぎる。親会社の支援で倒産は避けられるが、利益は固定費に吸われ、配当は出ない。
- 直営店の飲食:数量 138(年間客数(万人))× 価格 0.39(客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。客数+25%・単価+30%
- 商品部門(食材・備品の供給):数量 285(供給先の店舗数(店))× 価格 0.05(1 店あたりの供給額(億円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。供給先+7.5%・単価+30%
- フランチャイズ部門:数量 170(FC 店舗数(店))× 価格 0.02(1 店あたりの収入(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 2 億円。FC 店数-8%・単価+30%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 13 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新規出店と業態転換は進むが、人件費・家賃・本社費の上昇が重く、利益は薄い黒字にとどまる。いちばんありそうな筋書き。
やや悲観 25% 出店が育たず、フランチャイズも縮み、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 20 円3 億円
新規出店した店が採算に乗らず、既存の店の客数も減る。直営の客数は横ばいで、客単価は物価に追いつかず、10 年で 1.15 倍にとどまる。
フランチャイズは加盟店の採算割れで 25% 減り、ロイヤリティも縮む。本社費は物価で増える。営業利益は赤字に沈む。
増資の手取りは出店と閉店の損失で減り、親会社の追加支援が必要になる。
コロナ後の回復が、人手不足と食材高で崩れる筋書きだ。居酒屋は固定費が重く、需要が 1 割落ちると利益が消える。本社費は不採算店の整理で少し縮むが、利益は出ない。親会社は追加の支援を検討するが、少数株主への配当は出ない。
- 直営店の飲食:数量 110(年間客数(万人))× 価格 0.35(客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。客数±0・単価+15%
- 商品部門(食材・備品の供給):数量 239(供給先の店舗数(店))× 価格 0.04(1 店あたりの供給額(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。供給先-10%・単価+15%
- フランチャイズ部門:数量 139(FC 店舗数(店))× 価格 0.02(1 店あたりの収入(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。FC 店数-25%・単価+15%
倍率:稼ぐ力は赤字。評価は決算期末の自己資本 7 億円に 0.45 倍を掛けた(増資の現金は出店と閉店の損失でほぼ使い切る前提)。EV÷営業利益は意味を持たない。
確率:新規出店が採算に乗らず、フランチャイズの撤退が続く筋書き。居酒屋の再建には起こりやすい。
悲観 10% 出店が失敗し、親会社の支援も縮み、店を畳む 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 11 円2 億円
新規出店した店の多くが赤字で閉店し、既存店も人手不足で営業時間を縮める。客数は 3 割減り、フランチャイズも半分に減る。
営業赤字は 3 億円近くに達し、増資の手取りは食いつぶされる。親会社は追加の支援をせず、資産の整理に動く。
少数株主の立場は弱く、再び増資や整理の対象になる可能性がある。
筆者はこの筋書きの確率を 1 割とする。コロナ期に自己資本が 1 億円まで減った実績があり、同じ規模の谷が 10 年のあいだに繰り返される可能性は小さくない。本社費は店の閉鎖に合わせて縮めるが、赤字は止まらない。増資の手取りは出店と閉店の損失で使い切る。
- 直営店の飲食:数量 77.2(年間客数(万人))× 価格 0.32(客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。客数-30%・単価+5%
- 商品部門(食材・備品の供給):数量 186(供給先の店舗数(店))× 価格 0.04(1 店あたりの供給額(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。供給先-30%・単価+5%
- フランチャイズ部門:数量 92.5(FC 店舗数(店))× 価格 0.02(1 店あたりの収入(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。FC 店数-50%・単価+5%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0。値段の底は、決算期末の自己資本 7 億円に 0.25 倍を掛けた(増資の現金は出店と閉店の損失で使い切り、敷金・店舗設備は閉店で回収が限られる前提)。
確率:新規出店と業態転換が失敗し、赤字が続いて店を畳む筋書き。コロナ期の赤字は前例となる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
直営店の飲食
「八剣伝」「酔虎伝」「居心伝」「ハッケン酒場」など直営 80 店の居酒屋。
| 数量年間客数(万人) | 価格客単価(億円/万人。0.3 = 0.3 万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.30 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 138 | 0.39 | 54 | 3 |
取り方:直営の料飲売上は全体 47.67 億円の 69.4%=33.1 億円(開示)。客単価 0.3 万円(居酒屋の標準的な水準の推定)なら客数は約 110 万人。利益は推定(利益率 2%)。
商品部門(食材・備品の供給)
直営店とフランチャイズ店に食材や備品を供給する。
| 数量供給先の店舗数(店) | 価格1 店あたりの供給額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 265 | 0.04 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 285 | 0.05 | 14 | 1 |
取り方:商品部門は売上の 21.3%=10.15 億円(開示)。店舗数 265 店は開示(直営 80・FC 185)。利益は推定(利益率 8%)。
フランチャイズ部門
加盟店 185 店からのロイヤリティなど。店を持たないため利益率が高い。
| 数量FC 店舗数(店) | 価格1 店あたりの収入(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 185 | 0.02 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 170 | 0.02 | 4 | 2 |
取り方:FC 部門は売上の 7.0%=3.36 億円(開示)。FC 店 185 は開示(前期末 199)。利益は推定(利益率 60%)。
リスクと懸念
新規出店の失敗
増資の手取り 9.9 億円のうち 6 億円は新規出店と業態転換に使う。新店が採算に乗らなければ、敷金と内装の資金が先に出ていき、自己資本が削られる。コロナ期にも出店資金の回収で苦しんだ。
人件費と家賃の固定費
居酒屋は人手と家賃が重い。直営 80 店の家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。最低賃金の上昇で人件費も年 3% 以上増え、客数が 1 割落ちるだけで赤字になる。
フランチャイズ店の減少
FC 店は 1 年で 14 店減り、185 店になった。加盟店の採算が悪化すれば撤退が続き、利益率の高いロイヤリティが縮む。商品部門の供給先も減る。
親子上場の少数株主の立場
テンポスが議決権の過半を握った。余った利益は親会社の戦略に沿って出店に回り、配当で戻る期待は小さい。将来、親会社の都合で非上場化や再編が行われる可能性もある。
居酒屋市場の縮小
若者の飲酒離れと人口減で、居酒屋の客数は長く細ってきた。コロナ後に戻ったが、宴会の需要は以前の水準に届かない。10 年で見れば、客数は緩やかに減る前提が自然だ。
業績予想の達成
2027 年 3 月期の営業利益 1 億円の予想に対し、第 1 四半期は営業赤字だった。2026 年 3 月期も営業赤字で、予想は 2 年続けて未達になる可能性がある。
今後の分かれ目
- 新規出店した店が 1 年以内に黒字化する割合が高い
- 出店支援の効果が確認され、楽観寄りに確率を寄せる。
- フランチャイズ店の減少が止まり増加に転じる
- 利益率の高い部門が回復し、中立の確率を上げる。
- 2027 年 3 月期の営業利益が予想の 1 億円に届かない
- 再建が計画より遅れていることを示し、やや悲観の確率を上げる。
- テンポスが完全子会社化や非上場化を発表する
- 少数株主は買付価格で決着する。10 年の筋書きは前提が変わるため見直す。
- 最低賃金が大きく上がる
- 人件費が客単価の上昇を上回り、赤字に戻る。悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 直営・FC の店舗数と新規出店の進み具合
- 既存店の売上・客数・客単価(月次)
- 四半期ごとの営業損益
- 増資の手取りの使途と残高
- テンポスとの取引・資本関係の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は正当化 PER の式(g 4%・k 8.75%・堀は弱いので残る割合 1/3)から置いた。ROE が k を下回り上限は 1÷k の 10.5 倍で、薄利と固定費の重さから 9.5〜10 倍にした。今の PER や PBR、過去の水準は根拠にしていない。今の時価総額は最後に比べただけ。新リース会計基準で営業利益・借入の形が変わる点は、10 年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.67 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 9.5→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.0%。親会社の支援で存続の疑いは小さく、上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.00%。