結論
サンドラッグは、ドラッグストアとディスカウントストアの二本柱で稼ぐ小売りだ。全国に約 1,600 店を持つ。筆者の結論は、利益で測ると今の値段はやや割安というものだ。理由は、地味でも崩れにくい利益が 10 年かけて積み上がることにある。
稼ぎの半分以上はドラッグ事業だ。調剤を併設し、店を改装して客単価を上げている。残りの 4 割弱は、食品と日用品を安く売るダイレックスが稼ぐ。物価が上がる局面で、安さを売る店は強い。2026 年 3 月期の営業利益は 468 億円で、前の期より 5% 増えた。
財務は堅い。借金より現金が多く、自己資本比率は 60% だ。ただし店の多くは借り物で、家賃は売上に関係なく払う固定の約束になる。純現金 223 億円は、その約束を考えれば厚い余裕とは言えない。筆者は現金を上乗せして値段をつけていない。
懸念は二つある。イオン傘下で統合したウエルシアとツルハが、規模を武器に価格で攻めてくる。調剤報酬の改定も利益率を削る。それでも必需品の商売で、赤字の期はない。中立の見立てでは、10 年後の純利益は 520 億円ほどになる。資本コスト 7.0% で今に割り戻すと、今の時価総額を 1 割強上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味な良い事業を、安全域がやや見込める値段で買える会社だというのが筆者の見立てだ。
事業の質は高くはないが、崩れにくい。必需品を扱い、赤字の期はない。ドラッグとダイレックスという二本の足があり、景気が悪くても片方が支える。経営は無理な大型買収をせず、利益の半分を株主に返している。オーナーとして持ち続けたいと思える資本の使い方だ。
気をつけたいのは、帳簿の見かけで安全を測らないことだ。店の多くは借り物で、家賃は毎年払う固定の約束になる。純現金が小さいのは、そのためでもある。筆者は現金を上乗せして値段をつけていない。
中立の筋書きで、10 年後の純利益は 520 億円ほどになる。利益の伸びは年に 5% 台で、物価と店の増加を素直に写した数字だ。ここに平凡な倍率を掛けても、今の時価総額を 1 割強上回る。期待値がここまで高くなるのは、今の値段が、地味な会社の利益の積み上がりを織り込んでいないからだ。
反対に、悲観の筋書きでも、元本が大きく傷むわけではない。安全域は、この会社の長所だが、厚いとまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は二つある。一つはドラッグストア事業で、期末の店は 1,155 店だ。サンドラッグの直営が 886 店、新潟の星光堂薬局が 84 店、サンドラッグプラスが 76 店、四国の大屋が 72 店、残りがフランチャイズ等になる。医薬品・化粧品・日用品に調剤と通販を重ね、2026 年 3 月期の事業の営業利益は 275 億円だった。
もう一つは子会社ダイレックスのディスカウントストア事業だ。店は 439 店あり、食品と日用品を安く売る。売上は 3,641 億円と前期比 6.4% 増え、営業利益は 194 億円と 8.4% 増えた。1 店あたりの売上は、ドラッグの 2 倍近い。ダイレックスは 2009 年に買収した会社で、今ではグループの利益の 4 割を稼ぐ。
新しい中期経営計画は 2026 年 5 月に始まった。最終年度の 2031 年 3 月期に、売上 1 兆 2,500 億円と ROE(自己資本に対する利益の割合)12.4% を目指す。営業利益率の目標は、ドラッグ 6.0%、ダイレックス 5.7% だ。年にドラッグ 60 店、ダイレックス 40 店を出し、重点は食品、自社ブランド、通販、調剤に置く。電子棚札やセルフレジも入れて、人手を減らす。
前の計画は、2026 年 3 月期に売上 1 兆円・1,750 店を掲げていたが、実績は 8,425 億円・1,594 店にとどまった。目標が届かなかった経緯は、新計画を読む時の物差しになる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、二つの業態で稼ぐ形にある。ドラッグだけの会社は、薬と化粧品の値引き競争に巻き込まれやすい。サンドラッグは、食品を軸に安さで勝負するダイレックスを抱え、景気が悪い時の客を受け止められる。同じ客層を二つの店で取る形は、他社にない。
収益力は並の上だ。営業利益率は 5% 台で、化粧品に強いマツキヨココカラよりは低い。だが ROE は 11% 前後で、資本コストを 5 ポイントほど上回る。2015 年から 2026 年まで赤字の期は無く、ROE は 10% 台を保ってきた。派手さはないが、続けることには強い会社だ。
経営の資本の使い方は堅実だ。買収は四国の大屋や関西のキリン堂など、足元を固める小さな案件が中心になっている。高値づかみの大型買収はない。配当性向は 5 割近くで、利益の半分を株主に返している。
弱点もある。調剤や化粧品では、都市型のマツキヨココカラのような際立った強さは持たない。ダイレックスは食品の比重が高く、スーパーやコスモス薬品のような安売りの専業と正面からぶつかる。店の家賃が固定の約束である点も、見かけの財務の強さを割り引く理由になる。経営は旧計画の 1 兆円を逃しており、新計画の実行力はまだ試されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ドラッグストア業界は、売上が 2024 年度に初めて 10 兆円を超えた。店は 2 万 3,700 店あり、新しい店を置く場所は減っている。成長の主役は、出店から、食品と調剤による客単価の上昇に移りつつある。業界団体は 2030 年度に 13 兆円を目標にするが、数量の伸びは小さく、値段の上昇が成長の中身になる。
業界の形も変わった。イオンの主導でウエルシアとツルハが統合し、売上 2 兆円を超える最大手が生まれた。仕入れと自社ブランドで規模の差を出し、3 年で 500 億円の効果を狙う。サンドラッグは、規模では上位 3 社の一角を占めるが、この連合とは立地が重なる地域も多い。価格で攻められる場面は増えるだろう。
ダイレックスの戦場は、ドラッグより激しい。食品スーパーやコスモス薬品のような低価格の専業が、同じ客を取り合う。物価高の今は安さが追い風になるが、物価が落ち着けば差は縮む。出店余地はドラッグより大きい一方、1 店あたりの売上は新しい店ほど小さい。
景気の波には強い。医薬品と日用品、食品は、不況でも売れる。リーマンの時でも、ドラッグストアの既存店売上の落ち込みは 1 割に届かなかった。10 年先の本当のリスクは、不況ではなく、調剤報酬の引き下げと、規模の差が価格に出る構造的な負けだ。
資本政策と M&A
還元は、利益の半分を返す形だ。2026 年 3 月期の配当性向は 48.8% で、自社株買いは 2017 年を最後にしていない。新しい中期経営計画も、還元の数字目標を示していない。筆者は、配当は続くが、大きく積み増す材料は見当たらないと見る。
手元の現金は厚くない。純現金は 223 億円で、時価総額の 5% にすぎない。家賃の約束と店舗投資を考えれば、余っている現金は無いと置く。年に 100 店近い出店と改装に、利益の半分が回る。
資本の持ち方で目を引くのは、筆頭株主のイリュウ商事が 37.42% を握っていることだ。売り手が現れなければ、買収は成立しにくい。外から買収される確率は低いとみる。
買収の実績は堅い。2022 年に四国の大屋を、2009 年にダイレックスを取り込み、2024 年 2 月には、ベインキャピタルが助言する投資ファンドから、関西のキリン堂ホールディングスの間接持分 33.4% を取得して持分法の会社にした。再編が進む業界で、買う側に回れる財務は持っている。ただ、割高な値段で買う癖がつけば、今の堅実さは失われる。
株主優待は年約1.2億円(会社の費用ベース。優待券2,000円+PB商品引換約1,500〜2,000円相当×株主約4.2万人。額面約1.5億円を原価ベースに直した推計)。優待の費用は販管費として利益から引き済みなので、株主が受け取る分として10年の還元に「年額×10年×続く見込み(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)」を足した(中立+12億円)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の質は高い。二つの足で稼ぐ会社は、景気がどちらに振れても崩れにくい。不況ではダイレックスの安さが客を呼び、好況ではドラッグの化粧品と調剤が伸びる。長く赤字の期が無いのは、その結果だ。
物価が上がる世界は、この会社に向いている。食品と日用品の値段が上がると、売上は自然に増える。人件費は上がるが、電子棚札とセルフレジで吸収できる。新しい計画は営業利益率でドラッグ 6.0%、ダイレックス 5.7% を掲げる。今の 5% 台からの上積みは、無理のない水準だ。
出店余地もある。年に 100 店近い出店は、現在の店数の 6% にあたる。キリン堂との提携は、関西で新しい足場になる。再編の波の中で、東日本のチェーンを買う余地も残る。
配当性向は 5 割近いのに、財務は健全だ。成長と還元の両方を回せるのは、利益が安定している証拠だ。この会社を、成長が鈍い成熟企業とだけ見るのは、安く見すぎている。
10 年先を見ても、必需品の需要は消えない。人口が減る国でも、薬と食品と日用品の購入量は急には減らない。
慎重な見方
規模の差が、じわじわと効く。イオン傘下で統合したウエルシアとツルハは、売上 2 兆円超の規模で仕入れと自社ブランドの効果を出してくる。価格で追われれば、営業利益率 5% 台の薄い利益は、すぐに削られる。
ダイレックスは安さが売りだが、安さは真似されやすい。スーパーもコスモス薬品も、同じ客を狙っている。物価が落ち着けば、追い風は止まる。年 40 店という出店は、新しい店ほど売上が小さいことを考えると、利益より店数を増やしている面もある。
調剤報酬の引き下げは、確実に続く。マツキヨココカラのような化粧品の強さは持たず、調剤と通販の伸びに頼る度合いが大きい。前の計画の 1 兆円を逃した実行力を見れば、新計画の 1 兆 2,500 億円も疑ってかかるべきだ。
足元でも兆しがある。2027 年 3 月期の第 1 四半期(4〜6 月)は、売上が増えても営業利益は 1.5% 減った。人件費と家賃の上昇は止まらない。店の借り物は、不況の時に重荷になる。純現金も薄く、財務の余裕を言うほどではない。
どちらに重みを置いたか
利益の質と安全域では、強気の見方に分がある。赤字の期がなく、家賃を引いても財務は堅い。だが成長の力は、慎重な見方が指摘するとおり、突出していない。そこで中立を厚く置き、楽観は 10 年 8% に抑えた。
悲観側には 10% を置いた。イオン連合の規模の差と調剤報酬の引き下げが重なる筋書きは、10 年では無視できない。それでも、必需品を扱う二本足の会社に、これ以上の確率は寄せられない。家賃の固定費は悲観の利益率に反映し、現金は上乗せしなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,766 円7,916 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,781 円2,084 億円)。 今の値に割り戻すと 4,709 円5,510 億円、今との差 +30.4%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,037 円1.29 兆円 | 2,221 円2,599 億円 | +267.1% | +13.9% | 1,061 円1,241 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,139 円1.07 兆円 | 1,957 円2,290 億円 | +207.2% | +11.9% | 2,441 円2,856 億円 |
| 中立 | 36% | 7,714 円9,025 億円 | 1,810 円2,118 億円 | +163.7% | +10.2% | 3,429 円4,011 億円 |
| やや悲観 | 24% | 3,977 円4,653 億円 | 1,675 円1,960 億円 | +56.5% | +4.6% | 1,357 円1,587 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,413 円1,653 億円 | 1,187 円1,389 億円 | −28.0% | −3.2% | 260 円304 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,766 円7,916 億円 | 1,781 円2,084 億円 | +136.6% | +9.0% | 8,547 円10,000 億円 |
今の株価時価総額 3,612 円4,226 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 二本足が育ち、収益力トップクラスに届く 利益 692 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 11,037 円1.29 兆円
10 年かけて、新計画の姿が実現する。ドラッグは 1,600 店に増え、調剤併設と食品の強化で 1 店あたりの売上が物価以上に伸びる。ダイレックスは 700 店に届き、食品と自社ブランドで利益率が 5.8% まで上がる。省人化の投資が効いて、人件費の上昇を吸収する。イオン連合とは立地をすみ分け、規模の差が価格に出る構図にはならない。キリン堂との協業や中堅チェーンの買収も実を結び、売上は 1 兆 6,000 億円を超える。収益力トップクラスという会社の目標が、数字で確かめられる 10 年になる。還元は利益の半分を保ちながら、自己資本も厚くなる。
- ドラッグストア事業:数量 1,600(ドラッグストア店舗数(店))× 価格 5.55(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 8,880 億円・営業利益 568 億円。営業利益率 6.4%
- ディスカウントストア事業(ダイレックス):数量 700(ダイレックス店舗数(店))× 価格 11(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7,780 億円・営業利益 451 億円。営業利益率 5.8%
倍率:事業の純利益 692 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.66 倍、時価総額 12,913 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新計画の利益率を 10 年かけて上回り、出店余地も使い切るには、連続した成功が要る。実現すれば強いが、確率は低く置く。
やや楽観 22% 計画を上回るペースで出店と改装が実る 利益 599 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 9,139 円1.07 兆円
年 100 店近い出店を続け、10 年でドラッグは 1,540 店、ダイレックスは 650 店になる。調剤併設と食品の強化で、ドラッグの利益率は 6.0% に定着する。ダイレックスは自社ブランドと省人化で 5.4% を保つ。ウエルシア・ツルハ連合との競争は続くが、立地の差で共存できる。キリン堂との関係が深まり、関西でも売上が伸びる。純利益は 600 億円に近づき、利益の半分の配当が続く。成長はあるが、驚くほどではない、堅実な 10 年になる。人手を減らす投資も回収が進み、人件費の上昇の影響は小さくなる。
- ドラッグストア事業:数量 1,540(ドラッグストア店舗数(店))× 価格 5.43(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 8,356 億円・営業利益 501 億円。営業利益率 6.0%
- ディスカウントストア事業(ダイレックス):数量 650(ダイレックス店舗数(店))× 価格 11(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7,062 億円・営業利益 381 億円。営業利益率 5.4%
倍率:事業の純利益 599 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.85 倍、時価総額 10,692 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店と改装を 10 年回し続け、利益率が 6% 近辺に定着する筋書き。業界の成長の中心値より少し上で、会社の計画に近い。
中立 36% 中立:物価と店の増加を素直に写す 利益 525 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 7,714 円9,025 億円
ドラッグは 1,500 店、ダイレックスは 620 店まで増える。店の増加は年を追うごとに鈍り、成長の中身は物価が中心になる。1 店あたりの売上は、新店の小ささが響いて物価より 6% ほど低い伸びにとどまる。営業利益率は、人件費・家賃の上昇を値上げと省人化で打ち消して、ドラッグ 5.6%、ダイレックス 5.0% に落ち着く。イオン連合との競争は続くが、価格で押し切られる場面は少ない。純利益は 520 億円ほど。目立たないが、続くことに価値がある 10 年になる。出店の速度が落ちる分、改装と調剤併設に回る投資が増え、利益の半分を配当に回す方針は変わらない。 株主優待の費用は利益から引き済みで、還元には受け取り分(年約1.2億円×10年)を足している。
- ドラッグストア事業:数量 1,500(ドラッグストア店舗数(店))× 価格 5.30(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7,953 億円・営業利益 445 億円。営業利益率 5.6%
- ディスカウントストア事業(ダイレックス):数量 620(ダイレックス店舗数(店))× 価格 11(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 6,582 億円・営業利益 329 億円。営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 525 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.19 倍、時価総額 9,025 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店の増加は鈍り、物価の上昇と客単価の伸びが成長の中心になる。利益率は今よりわずかに低いまま。業界見通しの中心値に近く、最も重みを置く。
やや悲観 24% 規模の差が価格に出て、利益率が下がる 利益 391 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,977 円4,653 億円
イオン連合の仕入れと自社ブランドが浸透し、価格の差が客数に表れる。ドラッグは調剤報酬の引き下げも重なり、利益率が 4.6% に下がる。ダイレックスは食品の安売り競争で 4.2% になる。出店は鈍り、店数はドラッグ 1,420 店、ダイレックス 580 店にとどまる。店を絞っても家賃の約束は残る。必需品の事業は崩れないが、利益は 390 億円ほどで伸びない。配当は利益の 55% に膨らむが、減配は避ける。価格で勝てない分は、改装と自社ブランドで補おうとするが、取り戻すには足りない。調剤併設の出店も採算の合う場所が減り、成長の速度は物価の上昇に追いつくのがやっとになる。
- ドラッグストア事業:数量 1,420(ドラッグストア店舗数(店))× 価格 5.05(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 7,176 億円・営業利益 330 億円。営業利益率 4.6%(家賃は売上が落ちても残る)
- ディスカウントストア事業(ダイレックス):数量 580(ダイレックス店舗数(店))× 価格 10(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 5,869 億円・営業利益 246 億円。営業利益率 4.2%
倍率:(家賃を営業費用に入れた今と同じ形・余った現金は 0)ROE 8.8%(純利益 391 億円 ÷ 自己資本 4,457 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.0% + 残る割合 1/2 ×(8.8 − 7.0)= 7.9%、長期の成長率 g 3.5% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 15.9 倍。規模の差が価格に出て堀の持ちを低く見て、やや悲観は上限の 7.5 割 の 11.9 倍に置いた。
確率:イオン連合の共同調達と調剤報酬の引き下げが 10 年かけて効き、利益率が 4% 台に下がる筋書き。業界の再編が進む中で、起こりやすい。
悲観 10% 構造的に負けて優良さを失う 利益 174 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 1,413 円1,653 億円
規模の差が決定的になり、既存店の客数が継続的に減る。ドラッグは調剤報酬の引き下げで稼ぎが細り、1 店あたりの売上は物価に追いつかず、利益率は 2.5% まで落ちる。ダイレックスも食品の安売り競争で利益率が 2.8% になる。店数は伸びず、閉店が先行する。閉店には残りの家賃や違約金が要り、手元の現金は穴埋めに消える。配当は維持を試みるが、還元の累計は利益の 6 割に達する。再編の中で、買われる側として話が出る立場になる。ダイレックスは食品の安売りで客を保つが、利益は残らない。10 年後の姿は、いま優良とされる会社とは別物になる。
- ドラッグストア事業:数量 1,300(ドラッグストア店舗数(店))× 価格 4.35(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 5,654 億円・営業利益 141 億円。営業利益率 2.5%(家賃が固定費として残る)
- ディスカウントストア事業(ダイレックス):数量 480(ダイレックス店舗数(店))× 価格 8.71(1 店あたり年間売上高(億円・名目))→ 売上 4,180 億円・営業利益 117 億円。営業利益率 2.8%
倍率:ROE 4.6%(純利益 174 億円 ÷ 自己資本 3782 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 11.9 倍より低い 9.5 倍(その 8 割)に置いた。売って得る資産の床は、家賃の約束・借入・減損を引くと小さいので別に立てない(従来の判断のまま)。
確率:イオン連合の規模の差と、調剤報酬の引き下げ、安売り専業の台頭が同時に効く複合の筋書き。10 年で定着しやすいので、無視できない確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ドラッグストア事業
サンドラッグ・星光堂薬局・サンドラッグプラス・大屋などの店舗。医薬品・化粧品・日用品に調剤と通販(EC)を加えた事業。
| 数量ドラッグストア店舗数(店) | 価格1 店あたり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,155 | 4.14 | 4,784 | 275 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 5.30 | 7,953 | 445 |
取り方:2026 年 3 月期末のドラッグ事業の店舗数 1,155(直営 886・星光堂薬局 84・サンドラッグプラス 76・大屋 72・フランチャイズ等 37)。開示の事業別売上 5,394 億円とダイレックス 3,641 億円の合計は連結 8,425 億円を上回るため、事業間の取引を含むとみて、ドラッグの外部売上を 8,425 − 3,641 = 4,784 億円と推定した(営業利益は 275+194 で連結 468 と一致)。1 店あたりは新店が小さく、改装・調剤の上乗せはあるが医薬品は値上げが利きにくいので、中立の価格は 3 年 1.07 倍・10 年 1.28 倍と物価(1.09・1.34)よりやや低く置いた。数量(店数)は出店計画の年 60 店から閉店を引いた純増で置く。
ディスカウントストア事業(ダイレックス)
食品・日用品・季節家電などを安く売るロードサイド型のディスカウントストア。子会社ダイレックスが運営する。
| 数量ダイレックス店舗数(店) | 価格1 店あたり年間売上高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 439 | 8.29 | 3,641 | 194 |
| 10 年後 中立 | 620 | 11 | 6,582 | 329 |
取り方:2026 年 3 月期末の店舗数 439 に、事業の売上高 3,641 億円(前期比 6.4% 増)を割って 1 店あたりを出した。食品は物価で値段が上がるので、1 店あたりは中立で 3 年 1.07 倍・10 年 1.28 倍。新店は既存店より小さく、全体の平均を押し下げるため、物価(1.09・1.34)よりやや低めに置く。店数は年 40 店の出店計画から閉店を引いた純増で、10 年では出店余地が詰まって伸びが鈍る前提。
リスクと懸念
イオン連合(ウエルシア・ツルハ)の規模の差
イオン傘下で統合したウエルシアとツルハは、売上 2 兆円超の規模で、3 年で 500 億円の統合効果を狙う。仕入れと自社ブランドで差をつけられれば、サンドラッグの利益率は削られる。立地が重なる地域では、価格競争が直接ぶつかる。
調剤報酬の引き下げ
調剤は、サンドラッグが成長の柱に置く事業だ。国の薬価と調剤基本料の引き下げが続けば、収益性が細る。調剤併設を増やすほど、制度変更の影響を受ける割合も高くなる。サンドラッグは都市型ではなく、全国に店を広げているので、改定の影響は店数に比例して広がる。
ダイレックスの価格競争
ダイレックスは食品の比重が高い。食品スーパーやコスモス薬品のような安売り専業と同じ客を取り合う。物価高の追い風が止まれば、値引きがかさんで利益率が下がる。新しい店ほど売上が小さい点も、全体の効率を下げる。
店舗の家賃という固定の約束
店の多くは借り物で、家賃は売上に関係なく払う固定の約束になる。開示は確認していないが、年に数百億円規模と推定する。2028 年 3 月期からは新しいリース会計の基準で、この約束が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がって見える。不況では固定費として利益を削る。
新計画の実行力
前の計画は 2026 年 3 月期に売上 1 兆円・1,750 店を掲げたが、実績は 8,425 億円・1,594 店にとどまった。新計画も 2031 年 3 月期に売上 1 兆 2,500 億円と ROE 12.4% を掲げる。年率 8% の成長は、過去の実績を超える水準になる。
人件費の上昇
最低賃金とパートの時給は、年 3〜5% のペースで上がる。電子棚札とセルフレジで人手を減らす計画だが、効果が出る前に賃金が先に上がる。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が 1.5% 減っており、兆しは出ている。
物価の追い風が止まる危険
食品の値上がりは、ダイレックスの売上を押し上げてきた。物価が落ち着けば、この追い風は止まる。値上げに頼った増収が止まると、店の増加だけが成長を支えることになり、利益の伸びは鈍る。物価が 3% で続く前提でも、店ごとの客数が伸びなければ、増収の質は落ちる。
今後の分かれ目
- イオン連合の統合効果が計画どおり 500 億円規模で出て、価格攻勢が強まったら
- やや悲観側の筋書きに重みを移す。サンドラッグの営業利益率が 5% を割るかを確認する。
- 調剤報酬が大きく引き下げられたら
- ドラッグ事業の利益率を下げる。やや悲観・悲観の確率を上げ、調剤併設の出店を見直す。
- 営業利益率がドラッグ 6.0%、ダイレックス 5.7% に近づいたら
- 新計画の実現度が高いと見て、楽観・やや楽観側に重みを移す。
- ダイレックスの 1 店あたり売上が物価並みに伸び続けたら
- 二本足の強みが確かめられたと見て、10 年の利益の伸びを上方に修正する。
- キリン堂などへの出資を深めるか、中堅チェーンを買収したら
- 買収の値段と家賃の約束を含めて評価する。割高な買収なら資本配分の評価を下げる。
- 2028 年 3 月期に新リース会計基準を当て、リース負債の額が初めて示されたら
- 推定した家賃の約束と比べる。大きければ悲観側の利益率と床を下げる。自己資本比率の低下そのものは形の変化で、本質価値は変えない。
- 筆頭株主のイリュウ商事が持ち分を売る、または他社が提携を申し入れたら
- 再編の当事者になる可能性を見直す。買われる側なら、割安さを前提に価値を上方に修正する。
見ておくもの
- ドラッグ・ダイレックス別の営業利益率の四半期推移
- 既存店売上高・客数・客単価の月次
- 調剤報酬の改定とサンドラッグの調剤売上の伸び
- ダイレックスの出店ペースと 1 店あたり売上
- ウエルシア・ツルハ連合の統合効果の進み具合
- 地代家賃の年額と、2028 年 3 月期に載るリース負債の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は、数量×価格で積んだ利益とその時の ROE から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 7.0%)を出し、中立・楽観は上限の 8 割前後に置いた(今の値段には寄せていない。今の株価と比べたのは最後)。純現金は 223 億円で時価総額の 5% にすぎず、1 割に届かない。家賃の約束と運転資金を引くと余らないので excess_cash は 0。悲観は市場の倍率や床の PBR でなく、その筋書きの稼ぐ力(純利益 174 億円÷k)で置き、現金は上乗せしない。10 年後の数字は、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた日本基準の形)でそろえた。2028/03 期からの新リース会計基準で営業利益は少し増え、リース負債が載り自己資本比率は下がるが、形の変化で本質価値は変えない。同業 9 社は全て日本基準で、IFRS の会社はいない。純現金の利息は純利益に +4 億円入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.3→18.66 倍・やや楽観 PER 14.3→17.85 倍・中立 PER 13.8→17.19 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality −0.5% を足した 7.0%。必需性と二本足で循環を −0.5%、値決め・借金・寿命は普通の 0。事業は黒字で存続に疑いは無く、上乗せ(extra)は置かない。調剤報酬の改定や価格競争といった個別のリスクは k に足さず、利益率と確率で表した。