結論
カルラは、東北6県と栃木県で和風レストラン「まるまつ」などを109店営む外食チェーンだ。筆者の結論は割高。外食の中では中堅の堅実な会社だが、今の値段は、利益が減る見通しにしては高い。
理由は三つある。まず、客数が減っている。直近の月次では、既存店の売上は上がっても、客数は前年を下回る。値上げの力が支えているだけだ。次に、人件費と家賃が固定費として重く、利益の伸びしろが薄い。2027年2月期の純利益は、会社の予想で3割以上減る。最後に、借入が23億円ある。自己資本比率は4割ほどで、金利が上がれば利払いも増える。
良い点もある。地域に根付いた常連客、とんかつや蕎麦という日常の食、筆頭株主のアセットシステムが約4割を持つ安定した経営だ。株主優待の食事券も、地元の株主に支持されている。
それでも、10年後の中立は純利益が1.5億円ほど。成長で今の値段を正当化するのは難しく、安全域も見当たらない。株主優待や小さな配当で報いる姿勢は誠実だが、価値を押し上げる力にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堅実だが、安くない」。時価総額は28億円で、前期の純利益2.4億円の12倍。今期の予想純利益1.5億円なら、18倍になる。
外食は、店を維持するだけで設備投資が要り、人件費は上がり続ける。純利益のうち、株主が自由に使える分は小さい。借入が23億円あり、金利が上がれば利益はさらに削られる。
経営の資本の使い方は、保守的だ。無理な出店は避け、借入の返済を優先する。配当は小さいが、財務を厚くする姿勢は評価できる。ただ、成長の道が見えないまま、利益が横ばいになる。
払う値段に安全域があるかと問えば、否だ。自己資本の1.3倍という値段は、利益が減る見通しに対して高い。楽観の筋書きでも、10年後の価値は今の値段を超えにくい。待つ価値のある会社ではあるが、買う価値は今の値段にはない。
何で稼ぐ会社か
カルラは、宮城県富谷市に本店を置く外食企業だ。設立は1972年。和風レストラン「まるまつ」を中心に、そば処丸松、かつグルメ、かに政宗など109店を営む(2026年5月)。まるまつが88店で、売上の大半を占める。
看板は、とんかつ・そば・定食といった日常の和食だ。客は家族連れと高齢者が中心で、郊外のロードサイドに店を構える。東北6県と栃木県に集中して出店している。
売上は直近の2026年2月期が75億円。営業利益は3億円で、営業利益率は4.1%だった。コロナ禍の2021年2月期には売上が53億円まで落ち、大きな赤字を出したが、その後は2024年2月期に黒字へ戻した。
事業別の売上や客数は開示を確かめられなかった。ここでは、まるまつを売上の84%、その他の業態を16%と推定して使う。客単価も推定だ。資産除去債務を計上しており、店舗の賃借や設備の原状回復の約束がある。各店に調理場を置く形で、大きな中央工場は持たない。仕入は食材問屋との取引が中心で、特定の仕入先への依存度は開示を確かめられなかった。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の優良さを「中くらい」と見る。堀は薄いが、地域の信頼は厚く、経営は堅実だ。
強みは地域密着にある。東北の郊外で、とんかつとそばを手頃に提供する店は、近所の常連が支える。直近の月次で客単価が5%上がっても、売上は前年を上回った。値上げが通る素地はある。
弱みは三つある。まず、業態が単一で、まるまつに依存している。次に、出店地域が東北に偏り、人口減が直撃する。最後に、他の外食チェーンのように、海外展開や多業態の広がりという成長の道が見えない。
財務は並みだ。自己資本比率は約4割、純有利子負債は12億円で、営業利益の10倍の利息負担にとどまる。コロナ禍で自己資本は31億円から13億円まで減り、そこから22億円まで戻した。
配当は小さく、配当性向は1割ほどにすぎない。株主よりも財務の回復を優先してきた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食は、人件費と食材費の上昇が直撃する業種だ。最低賃金は年3%前後で上がり、物価も上がる。値上げが客数を落とさずに通るかが、利益率を決める。
和風ファミレスは、競合が多い。ゼンショーのなか卯、くら寿司の回転寿司、サイゼリヤやすかいらーくのファミレスが、東北の郊外にも広がる。そば・とんかつの専門店も、チェーンと個人店がひしめく。
人口減は東北で特に速い。10年で人口は1割以上減る地域も多く、客数は構造的に減る。そこに、配膳ロボットやセルフレジなどの省人化投資が必要になる。大手は投資の余力があるが、中堅は負担が重い。
中食や宅配との競争も続く。外食は、コロナ禍で需要が落ち、その後は戻ったものの、客数は元の水準には届かない。直近の月次でも、客数は前年を下回る。
外食の中立は、客数の緩やかな減りを客単価の上昇で補い、売上が名目で年1〜3%増える姿が目安になる。ただし、店を維持する設備投資と改装の費用が営業キャッシュフローの大半を食うため、利益が増えても株主に回る分は少ない。東北の郊外は車が前提で、燃料費や出店用地の賃料の動きも客足に響く。
資本政策と M&A
配当は期末のみで、小さい。配当性向は1割ほどだ。コロナ禍の赤字から自己資本を戻すことを優先し、株主への還元は後回しにしてきた。
株主優待は、自社店舗の食事券だ。100株で千円相当から、1,000株で1万円相当まである。自社店舗で使うため、会社の費用は額面の3割台にとどまり、年1億円を大きく下回る見込みだ。株主数の開示は確かめられなかった。差は1ポイント未満とみて、価値には入れていない。
筆頭株主のアセットシステムが約37%を持つ。2026年5月には「支配株主等に関する事項」の開示があった。公開買付けや非公開化の発表は、確かめられた範囲ではない。
借入は23億円。1年以内の返済が7億円ある。金利が3.5%に借り換わると、利払いが増える。新店の出店は慎重で、M&Aの実績も見当たらない。2027年2月期の第1四半期には、役員退職慰労金0.8億円を特別損失に計上した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
カルラは、東北の郊外で、とんかつとそばという日常の食を手頃に出し続けてきた。常連が多く、直近の月次でも客単価は5%上がって、売上は前年を上回った。値上げが通る素地がある。
コロナ禍の大赤字から、2024年2月期には黒字に戻し、自己資本も13億円から22億円まで回復した。借入の返済は進み、自己資本比率は4割に届く。経営は堅実で、無理な出店や買収を避けてきた。
筆頭株主のアセットシステムが約4割を持つ安定した体制で、経営の方針がぶれにくい。株主優待の食事券は地元の株主を引きつける。人件費の上昇も、値上げと省人化で吸収できれば、営業利益率4%台は保てる。
時価総額は28億円と小さく、売上75億円に対して0.4倍。外食の中堅が再評価されれば、値段の見直しも十分ありうる。会社が出店を絞り、財務の改善を優先する方針も、金利が上がる局面では安心材料になる。さらに、客単価の上昇が続く限り、人件費の上昇を値上げで吸収できる余地は残っており、省人化の投資が回れば利益率の改善も見込める。
慎重な見方
客数が減っている。直近の月次でも、既存店の客数は前年を3.5%下回り、売上は値上げで保っているだけだ。東北は人口減が速く、客数の減りは構造的に続く。値上げは客離れを招き、どこかで頭打ちになる。
利益も細る。2027年2月期の純利益は、会社の予想で3割以上減る。営業利益は2.9億円と前期より小さい。人件費と食材費は物価で上がり、家賃は固定で残る。省人化の投資も要る。
借入が23億円ある。1年以内の返済が7億円で、金利が3.5%に借り換わると利払いが増える。自己資本比率は4割を切っている。業態は単一でまるまつに依存し、海外展開や多業態という成長の道が見えない。
配当は小さく、配当性向は1割ほどで、株主への還元は薄い。筆頭株主が4割近くを持ち、少数株主の声は届きにくい。今の値段は、前期の利益の12倍、今期予想の18倍。減っていく利益に対して高い。優待や小さな配当は下支えにならず、株価が戻るには値上げと省人化が同時に当たる必要があるが、その確率は高くない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。値上げは通っているが、客数が減り、借入があり、成長の道が見えない。確率は、楽観側に28%、やや悲観と悲観に36%を置いた。堅実な経営と地域の信頼は、悲観を11%にとどめた理由とした。ただし、東北の人口減が進み続ける以上、客数の減りは止まりにくい。値上げの余地は無限ではなく、人件費の上昇を吸収する省人化の効果も、中堅の規模では限られる。そのため、安全域がない今の値段では、慎重に見るのが妥当と判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 373 円21 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 61 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 201 円12 億円、今との差 −57.9%、 期待の年率 −1.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 827 円48 億円 | 139 円8 億円 | +102.1% | +7.3% | 77 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 562 円32 億円 | 104 円6 億円 | +39.4% | +3.4% | 133 円8 億円 |
| 中立 | 36% | 430 円25 億円 | 69 円4 億円 | +4.4% | +0.4% | 180 円10 億円 |
| やや悲観 | 25% | 134 円8 億円 | 17 円1 億円 | −68.3% | −10.9% | 38 円2 億円 |
| 悲観 | 11% | 56 円3 億円 | 0 円0 億円 | −88.4% | −19.4% | 6 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 373 円21 億円 | 61 円4 億円 | −9.2% | −1.0% | 434 円25 億円 |
今の株価時価総額 478 円28 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:値上げが通り、郊外ロードサイドで客を保つ 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 827 円48 億円
東北の郊外で、家族連れと高齢者に支持される「まるまつ」は、とんかつ・そば・定食という日常の食を担い続ける。客数は 10 年で 5% しか減らず、客単価は物価を少し上回る 1.40 倍まで上がる。
人件費の上昇は値上げで吸収し、セルフレジや配膳ロボットなどの省人化でさらに抑える。まるまつの営業利益率は 6% に乗る。
そば処やかつ専門店の小型業態も、不採算店を整理して黒字になる。純利益は 3 億円台。配当は利益の 25% 前後まで増える。それでも、外食の 1 店あたりの稼ぎは頭打ちで、倍率は式の上限を超えない。
- まるまつ(和風レストラン):数量 430(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,960(客単価(円・推定))→ 売上 84 億円・営業利益 5 億円。客数 0.95 倍・客単価 1.40 倍・営業利益率 6%
- その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など):数量 82.6(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,890(客単価(円・推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。客数 0.95 倍・客単価 1.36 倍・営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.1 倍、時価総額 40 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客単価は直近で 5% 上がり、値上げは通っている。客数の減りを 5% にとどめる筋書きは難しいが、地域密着で常連が多いなら起こりうる。
やや楽観 20% やや楽観:値上げで利益率を守り、省人化が実を結ぶ 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 562 円32 億円
客数は 10 年で 1 割減る。東北の人口減が効くが、店の整理と接客の質で、減りは緩やかにとどまる。客単価は 1.36 倍まで上がる。
人件費の上昇は値上げと省人化で吸収する。まるまつの営業利益率は 4.8% で、今の水準を保つ。小型の業態は整理が進み、小さな黒字になる。
純利益は 2 億円強。配当はゆるやかに増える。借入は返済が進み、自己資本比率は 5 割に近づく。会社が出店を抑え、財務を厚くする方針をとるのが前提になる。外食の人手不足は続くが、省人化への投資が回り、店ごとの人時生産性が上がることで、利益率を守る形だ。
- まるまつ(和風レストラン):数量 408(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,904(客単価(円・推定))→ 売上 78 億円・営業利益 4 億円。客数 0.90 倍・客単価 1.36 倍・営業利益率 4.8%
- その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など):数量 74.0(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,863(客単価(円・推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。客数 0.85 倍・客単価 1.34 倍・営業利益率 3%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の月次では既存店売上が前年を上回り、客単価が上がっている。値上げが続けば、利益率が今の水準で保たれる筋書きは十分ありうる。
中立 36% 中立:客は 1 割台半ば減り、値上げと店の整理で利益は横ばい 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 430 円25 億円
東北・栃木の人口減で、客数は 10 年で 16% 減る。直近の月次でも、客数は前年を下回り、客単価の上昇が売上を支えている。客単価は物価並みの 1.34 倍に上がる。
人件費と食材費は物価で上がり、家賃は固定費として残る。値上げで追いつくのがやっとで、まるまつの営業利益率は 4.0% と、今より少し下がる。その他の小型業態は 2.5%。本社費は物価で増える。
減価償却は今の水準のままで、新店と改装の分だけ増える。借入の金利は 3.5% に借り換わり、利払いが増える。純利益は 1.5 億円ほど。配当は小さく、自己資本はゆっくり積み上がる。
- まるまつ(和風レストラン):数量 381(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,876(客単価(円・推定))→ 売上 71 億円・営業利益 3 億円。客数 0.84 倍(人口減)・客単価 1.34 倍・営業利益率 4%
- その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など):数量 69.6(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,835(客単価(円・推定))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。客数 0.80 倍・客単価 1.32 倍・営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期予想(営業利益 2.9 億円)は、特別損失を除けば横ばいを見込む。人口減と人件費の上昇を値上げが追いかける、今の姿に最も近い。
やや悲観 25% やや悲観:客数が 2 割超減り、値上げが頭打ちになる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 134 円8 億円
客数は 10 年で 22% 減り、値上げも客離れを招くため、客単価は 1.28 倍にとどまる。人件費は物価並みに上がる一方で、家賃は下がらない。
まるまつの営業利益率は 2.5% まで下がり、小型の業態は赤字になる。不採算店の閉鎖が続き、特別損失が出る。本社費は削れず、利益を食う。
借入の金利が 3.5% に上がり、利払いも重くなる。純利益は 0.4 億円まで落ちる。配当は最低限にとどまり、新規出店は止まる。会社は店の整理と借入の返済に追われる。値上げをすれば客がさらに離れ、しなければ利益が出ない板挟みが続く。筆頭株主は支援を続けるが、成長の原資は乏しく、10年の終わりには店の数も2割ほど減っている。
- まるまつ(和風レストラン):数量 353(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,792(客単価(円・推定))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。客数 0.78 倍・客単価 1.28 倍・営業利益率 2.5%
- その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など):数量 60.9(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,738(客単価(円・推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。客数 0.70 倍・客単価 1.25 倍・営業利益率 0%
倍率:ROE は 2% 前後で k に遠く届かず、自己資本の 0.29 倍で置く。EV(時価総額+純有利子負債)でも営業利益の 15 倍前後で、借入を含めて割安とはいえない。店舗と用地を持つ会社で、利益が細っても資産の売却価値が下支えするが、稼ぐ力は弱く、自己資本の半分に届かない。
確率:客数は直近で減っており、客単価の上昇だけに頼る形は長く続かない。人件費の上昇が値上げを上回る筋書きの確率は高い。
悲観 11% 悲観:人件費の上昇を吸収できず、赤字の店が増え続ける 利益 −2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 56 円3 億円
客数は 4 割減り、客単価は 1.15 倍にとどまる。人件費は物価で増え、家賃は固定で残る。まるまつも赤字になり、店の閉鎖が続く。
小型の業態は撤退する。閉鎖費用と減損で、自己資本は 13 億円まで減る。借入の返済と金利の負担が重く、銀行との交渉で財務特約が足かせになる。
筆頭株主のアセットシステムが支えるが、増資や債務の整理で、既存株主の取り分は薄まる。店は閉めても原状回復の費用が残り、従業員への補償も重く、資産を売っても借入を返すとほとんど残らない。10年のあいだに、客も人も戻らない最悪の形だ。10 年後の価値は、店の設備と土地の売却見込みから借入を引いた残りに近い。
- まるまつ(和風レストラン):数量 272(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,610(客単価(円・推定))→ 売上 44 億円・営業利益 −1 億円。客数 0.60 倍・客単価 1.15 倍・営業利益率 −2%
- その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など):数量 43.5(年間来店客数(万人・推定))× 価格 1,529(客単価(円・推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。客数 0.50 倍・客単価 1.10 倍・営業利益率 −5%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。この筋書きの自己資本 13 億円の 0.25 倍。稼ぐ力はなく、店舗の設備と用地の売却見込みから借入を引いた残りに近い。純現金を下回ってよい(清算されない限り使い道は経営者が決める)。
確率:外食は人件費の上昇を値上げで吸収できなければ、利益率が構造的に失われる。リーマン級の需要の谷が重なれば、赤字が続く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
まるまつ(和風レストラン)
とんかつ・そば・定食を出す郊外ロードサイドの和風ファミレス。東北6県と栃木県に88店。
| 数量年間来店客数(万人・推定) | 価格客単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 453 | 1,400 | 63 | 3 |
| 10 年後 中立 | 381 | 1,876 | 71 | 3 |
取り方:売上75.4億円の約84%をまるまつとした推定。客単価は和風ファミレスの水準からの推定で、年間客数は売上÷客単価から逆算した。営業利益3.1億円は全社の営業利益3.06億円から、その他の業態と本社費を調整した推定。直近の月次では客数が3.5%減、客単価が5.0%増。
その他の業態(そば処丸松・かつグルメ・かに政宗など)
そば・とんかつ・かにの専門店。計21店。
| 数量年間来店客数(万人・推定) | 価格客単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 87.0 | 1,390 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 69.6 | 1,835 | 13 | 0 |
取り方:売上の約16%をその他業態とした推定。客数・客単価・利益は開示を確かめられず推定。
リスクと懸念
東北の人口減と客数の減少
出店が東北と栃木に集中する。人口減は他の地域より速く、客数は構造的に減る。直近の月次でも、客数は前年を下回る。値上げで売上を保つ形は長く続かない。
人件費・食材費の上昇
最低賃金は年3%前後で上がる。食材費も物価で上がる。値上げが客離れを招けば、利益率は急に下がる。家賃は固定費として残り、悲観では重くのしかかる。
借入と金利の上昇
借入は23億円で、1年以内の返済が7億円。金利が3.5%に借り換わると、利払いが増える。自己資本比率は4割ほどで、赤字が続けば財務の余裕は薄れる。
業態が単一で、成長の道が見えない
売上の大半がまるまつだ。他の業態は小さく、海外展開もない。新業態の育成や買収が失敗すれば、資本が目減りする。
リース・原状回復の約束
店舗の賃借と資産除去債務(2億円)は、毎年必ず払う固定の約束だ。新リース会計基準(2028年2月期から)で貸借対照表に載ると、自己資本比率が下がって見える。
支配株主との利害
筆頭株主のアセットシステムが約4割を持つ。少数株主の声は届きにくく、非公開化の可能性は消えない。価格が本質価値を下回れば、少数株主には不利になる。
今後の分かれ目
- 月次の客数が3か月続けて前年を下回り、客単価の上昇が止まったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。値上げが頭打ちで、利益が大きく削られる。
- 省人化投資で人件費率が1ポイント以上下がったら
- 営業利益率の中立を上げて見直す。楽観の確率を増やしてよい。
- アセットシステムが公開買付けを発表したら
- 価格が本質価値を下回るなら応じる理由はない。この分析は公開買付け後は意味を失う。
- 借入を返済して純有利子負債が営業利益の2倍を切ったら
- 債務の負担が軽くなる。配当を増やす余地が生まれ、財務の安全域が上がる。
- 新業態や買収で成長する方針が発表されたら
- 資本配分の質を見る。失敗すれば悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- まるまつの月次(既存店売上・客数・客単価)
- 営業利益率と人件費率
- 純有利子負債と借入の返済・金利
- 店舗数の増減(出店・閉鎖)
- アセットシステムの保有と非公開化の開示
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROE が k に届かないため、上限は 1÷k とし、利益の質が低い外食の中堅として上限の5〜9.5割に置いた。同じ領域の中堅チェーンの物差しに揃えたが、今の株価の水準から逆算していない。リースは今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置き、2028年2月期から使用権資産が貸借対照表に載って自己資本比率が下がる点は価値に影響しない。減価償却は物価で増やさず、新店と改装の分だけ増やした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.86→12.1 倍・やや楽観 PER 10.29→11.43 倍・中立 PER 9.14→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25%。同じ領域の中堅チェーンの水準。