結論
ハイデイ日高は、首都圏の駅前で「日高屋」を直営で 440 店あまり運営する中華食堂チェーンだ。ラーメンと餃子を安く出し、夜は酒とつまみの「ちょい飲み」で客を取る。2026 年 2 月期の売上は 622 億円、営業利益は 66 億円。借金はなく、手元には純現金がある。
筆者の結論は、よい会社だが今の値段は高い、である。稼ぐ力は本物だ。値上げをしても客が増え、営業利益率は 10% を超えている。だが店は首都圏の駅前に偏り、10 年で出せる数には天井がある。会社は 2034 年 2 月に 700 店を掲げるが、筆者は中立で 575 店ほどと見る。
中立の 10 年後は、営業利益が約 106 億円、純利益が約 76 億円、自己資本利益率(ROE)が約 14% だ。時価総額は約 1,100 億円で、今とほぼ変わらない。10 年待って今の値段に追いつくだけでは、資本コストを取り返せない。強気の筋書きを加えても、確率で重みづけした本質価値は今の 3 分の 2 に届かない。安心して持てる会社だが、安く買える会社ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日高屋は「優れた事業だが、値段が合わない」会社だ。
事業の質は高い。1 店ごとの稼ぎが安定し、新しい店を出すたびに同じ型で利益を積める。借金はなく、利益のほとんどを株主に戻す。経営者は資本を粗末にしない。こうした会社を長く持ちたいという気持ちは、筆者にもある。
ただし堀は、ブランドが他社を寄せつけないというより、立地と工場と運営の巧さで築いた現場の強さである。人手の不足、原価の上昇、王将など強い競合の関東進出といった外からの圧力に、毎年勝ち続けなければ守れない。10 年先に今の利益率が残るとは言い切れない。
成長には新店が要り、稼いだ利益の相当部分は出店に消える。株主が手にできる自由な利益は、帳簿の利益より小さい。
今の値段は、600 店から 700 店への出店が計画どおり進み、利益率も保たれる前提に近い。うまくいっても、10 年後の中立で時価総額は今と同じ水準だ。安全域は見当たらない。値段が下がってくるなら、話は変わる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、駅前の店に来る勤め帰りと一人客だ。昼はラーメンと定食、夜は生ビールと餃子で「ちょい飲み」。1 店の年売上は約 1.3 億円で、これに店の数をかけたものが会社の売上になる。
2026 年 2 月末の直営は 472 店。東京 210 店、埼玉 109 店、神奈川 73 店、千葉 59 店と、首都圏に集中する。ほぼ全店が直営で、関東の外に出るのは新潟の FC(加盟店)契約が初めてだ。2026 年 8 月末には 476 店となり、日高屋 444 店、焼鳥日高 28 店、その他 4 店。上期の新店 7 店のうち 6 店はロードサイド型で、駅前だけだった出店先が郊外の家族客にも広がっている。
強みの土台は、埼玉県行田市の自前の工場だ。麺や餃子などを工場で作って各店に運び、店の厨房の手間と原価を抑える。店ではタッチパネルが約 95% の店に入り、配膳ロボットも 70 店あまりで動く。人手が足りず賃金が上がる時代に、この仕組みが利益率を守っている。
セグメントは日高屋と、焼鳥日高・その他の 2 つに分ける。売上の大半は日高屋で、焼鳥日高は小さく、利益率もずっと低い。数字の上では「日高屋の店の数」がほぼすべてを決める会社である。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、安さと立地と工場を一つにまとめた店の経済性だ。駅前の人通りに頼り、狭い店で回転を上げ、原価と人手は自前の工場と機械で抑える。営業利益率は 10% 台と、外食では高い。値上げをした 2025 年 2 月期以降も、既存店の客数は増えた。夜の酒とつまみが客単価と客数を同時に押し上げた形だ。
財務も強い。自己資本比率は 7 割を超え、借金より現金が多い。2021 年 2 月期からの 2 期は営業赤字に沈んだが、財務は崩れなかった。これはコロナ禍で通勤と飲み会が止まったためで、駅前の店は人の流れが止まると弱い。ここが最大の弱点だ。
ほかに気になる点が 3 つある。原価率は上がっており、2026 年の上期は 31.2% と前年から約 1 ポイント悪化した。米・豚肉・小麦粉の値上がりが重い。店は首都圏に集中するため、地域の需要が弱れば逃げ場がない。店は賃借が中心とみられ、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束になる。
経営は株主を意識している。創業者の神田会長は 2023 年に保有株の一部を従業員に無償で渡した。増配と自社株買いにも積極的だ。ただし、その会長の持ち分の売却は、次の経営のかたちを問う動きでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は大きいが、数量の伸びは期待しにくい。日本フードサービス協会の集計では 2023 年が約 24 兆円で、コロナ前への回復途上にある。日高屋の売上は約 600 億円で、市場の 0.3% に満たない。市場の大きさが天井なのではなく、駅前という立地と人手が天井になる。
客の数は人口と通勤の流れで決まる。人口は減るが、首都圏はほぼ横ばいだ。インバウンドは日高屋の客層とあまり重ならない。伸びを決めるのは、新しい店の数と、既存店で夜の客をどこまで取れるかである。
競合は 3 つの層がある。まず中華系の専門店だ。餃子の王将は 2023 年 7 月に 731 店と日高屋の 408 店を上回り、関東での出店を強めている。リンガーハットは 567 店、幸楽苑は 385 店で、ロードサイド型が得意だ。次に低価格の昼食を争う牛丼やハンバーガーのチェーン。最後に夜の「ちょい飲み」で当たる居酒屋とコンビニだ。日高屋は、駅前の立地と、昼も夜も使える店の多面性で戦っている。
費用は物価より速く上がる。最低賃金は毎年上がり、パートとアルバイトは集めにくい。米や豚肉、小麦粉も高い。これを値上げで吸収できる低価格チェーンと、できない店とで差がつく。日高屋はこの 2 年で値上げが通ったが、下げ止まらない原価と人件費の上昇を吸収し続けられるかが問われている。
資本政策と M&A
株主への戻し方は厚い。配当は純利益の半分近くを出し、純資産に対する配当率(DOE)で 4% 以上を目標に置く。2026 年 10 月には年間の配当を増やし、上限 35 億円の自社株買いを発表した。
買い入れは 10 月 2 日と 5 日の市場外取引で、発行済み株式の 3.27% が上限だ。背景は、筆頭株主で代表取締役会長の神田正氏が保有株の一部を売る意向を示したことにある。会長の保有割合は 18.19% から 14.33% に下がった。創業者の持ち分がさらに動けば、支配の形が変わりうる。
投資の中心は新店と工場だ。年に 20 店ほどを新たに出し、1 店ごとに内装と敷金などが要る。買収は多くなく、成長は自前の出店で積む会社だ。この点は、買収で失敗しやすい外食の中では評価できる。
現金は 112 億円の純現金があるが、自社株買いで 77 億円に減る。さらに家賃の約束と出店の投資が先にある。見かけほど余ってはいない。
株主優待(現物の還元):年およそ3億円を会社の費用ベースで見込む(食事券(100株で年数千円)×優待株主約3万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日高屋の出店余地は、まだ会社の計画よりも広い。首都圏には人の集まる駅がまだ多く、ロードサイド型は郊外の家族客という別の客層を開く。行田工場の配送の届く範囲は、北関東と隣県にも広がる。新潟では FC が動き出した。直営で 600 店、広げて 700 店という目標は、近年の純増が年 15 店前後であることから見ても、無理な数字ではない。
店の稼ぎにも伸びしろがある。夜のちょい飲みの需要は、客数を押し上げて客単価も高めた。席数の増設や営業時間の延長といった手を打つ余地もある。タッチパネルや配膳ロボットで人手を減らせば、売上が増えても利益は逃げない。販管費率は下がり続けている。
値上げの力もある。2024 年の 2 回の値上げのあとで、客数は減るどころか増えた。物価が年 3% で上がる世界では、安く見せながら安く作れる会社が勝つ。強い競合が来ても、駅前の立地は簡単には取られない。
うまくいけば 10 年後の売上は 1,200 億円に届き、営業利益は 150 億円に近づく。ROE は 17% に達し、利益を株主に戻しながら成長できる。
慎重な見方
日高屋は、首都圏の駅前という限られた場所で、人手不足と原価高に毎年勝ち続けなければならない会社だ。出店は増えても、新しい店の質は落ちる。駅前の一等地は埋まり、次はロードサイドや隣県で、1 店あたりの売上は小さい。1 店の売上が物価ほど伸びないことは、すでに数字に出始めている。
費用は先に上がる。最低賃金は年々上がり、原価率は 2026 年の上期で約 1 ポイント悪化した。値上げは客数に響く。2026 年 9 月の既存店客数は前年を割った。値上げと客の戻りが止まれば、利益率は 10% を割り込む。
競合も動く。餃子の王将は関東での出店を強め、日高屋の客を取りにきている。コンビニの弁当や牛丼チェーンの安い定食も、昼の客を奪う。ちょい飲みは、景気や飲酒習慣の変化に弱い。
コロナ禍の 2 期は営業赤字だった。駅前の通勤客と夜の客に頼る型は、次の人の流れの変化にも弱い。店は賃借が中心で、家賃は売上が落ちても減らない。会長の持ち分の売却で経営の形が変わる可能性も、安心材料ではない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、出店の余地と店の稼ぐ力という事業の中身を正しく突いている。慎重な見方は、原価と人件費、競合の関東進出、立地への依存という、毎年の努力が必要な弱点を突いている。
筆者は、慎重な見方がやや強いと判断した。理由は、日高屋の強さが現場の運営に支えられており、ブランドや規制のような時間が味方する堀ではないからだ。どちらも言い分はもっともだが、10 年先の中立は、会社の計画より店が少なく、1 店の売上の伸びは物価に届かない、という置き方になる。
確率は、楽観に 9%、やや楽観に 23%、中立に 33%、やや悲観に 24%、悲観に 11% を置いた。悲観に厚めにしたのは、2 期続いた営業赤字が、駅前の店の脆さを実際に示したからである。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 3,612 円1,301 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 959 円345 億円)。 今の値に割り戻すと 2,470 円889 億円、今との差 −20.5%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 6,314 円2,274 億円 | 1,152 円415 億円 | +140.5% | +9.2% | 672 円242 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,181 円1,866 億円 | 1,072 円386 億円 | +101.4% | +7.3% | 1,438 円518 億円 |
| 中立 | 33% | 4,263 円1,535 億円 | 1,022 円368 億円 | +70.2% | +5.5% | 1,744 円628 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,698 円612 億円 | 922 円332 億円 | −15.6% | −1.7% | 629 円226 億円 |
| 悲観 | 11% | 342 円123 億円 | 458 円165 億円 | −74.2% | −12.7% | 88 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,612 円1,301 億円 | 959 円345 億円 | +47.2% | +3.9% | 4,571 円1,646 億円 |
今の株価時価総額 3,105 円1,118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 9% 700 店体制に届き、利益率も過去の最高水準に迫る 利益 107 億円 · PER 20.6 倍 · 株価時価総額 6,314 円2,274 億円
会社の計画どおり、いやそれ以上に進む筋書きだ。
首都圏の駅前を埋めたあと、行田工場から配送できる北関東と隣県のロードサイドへ、年 20 店台のペースで出し続ける。新潟の FC に続き、直営でも関東の外へ踏み出す。10 年で日高屋は 650 店、焼鳥日高などを加えて 700 店に近づく。
店の稼ぎも落ちない。値上げは物価並みに通り、夜のちょい飲みの客が増え、1 店の売上は物価の伸びに沿って上がる。タッチパネルと配膳ロボットで人を減らし、営業利益率は 12% と、過去の最高水準(12.5%)に近づく。
筆者が引っかかるのは、この筋書きが人手と原価の逆風をすべて避けた場合だという点だ。連続で成功する確率は高くない。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 日高屋(中華食堂):数量 650(日高屋の店舗数(店))× 価格 1.86(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,207 億円・営業利益 145 億円。店 650・物価並みに値上げ・利益率 12%
- 焼鳥日高・その他:数量 52.0(焼鳥日高・その他の店舗数(店))× 価格 1.26(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 5 億円。店 52・利益率 7%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.6 倍。全体の PER 20.61 倍、時価総額 2,205 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店が計画どおり進み、利益率も 10 年間伸び続け、人手と原価の逆風も避ける連続成功が要る。事業の質は高いが、連続成功の確度は高くないので 1 割を切る確率にした。
やや楽観 23% 600 店台に乗り、店の稼ぎも保つ 利益 90 億円 · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 5,181 円1,866 億円
出店は計画に近い速さで進み、店の稼ぎも保つ筋書きだ。
10 年で日高屋は 610 店あまりになり、会社が掲げる 600 店の目標にほぼ届く。ロードサイド型は郊外の家族客を開き、駅前の店は夜の客でにぎわう。FC は新潟に続いて少しずつ広がるが、数は小さい。
1 店の売上は物価をやや下回る伸びにとどまる。新しい店が駅前の一等地ほどは稼がないためだ。それでも販管費率の低下が続き、営業利益率は 11% に乗る。
ただし利益率は、米・豚肉・小麦粉の値上がりと賃金の上昇を毎年値上げでこなせた場合の数字である。強気ほど鮮やかではないが、現実に起こりうる上振れだと筆者は見る。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 日高屋(中華食堂):数量 612(日高屋の店舗数(店))× 価格 1.82(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,112 億円・営業利益 122 億円。店 612・利益率 11%
- 焼鳥日高・その他:数量 44.0(焼鳥日高・その他の店舗数(店))× 価格 1.24(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。店 44・利益率 6%
倍率:事業の純利益 90 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.1 倍。全体の PER 20.07 倍、時価総額 1,806 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 600 店目標にほぼ届き、店の稼ぎも保つ上振れ。行田工場とロードサイド型の実績があり、現実的な上位の筋書きとして置いた。
中立 33% 575 店まで増やし、利益率 10% を守る 利益 76 億円 · PER 19.5 倍 · 株価時価総額 4,263 円1,535 億円
出店は年 13 店ほどのペースで続き、利益率は今の 10% 台前半から少し下がって落ち着く筋書きだ。
日高屋は 10 年で 575 店になる。近年の純増は年 15 店前後だが、駅前の枠が埋まるにつれて鈍り、10 年平均は年 13 店ほどになる。退店も出る。会社の 700 店目標には届かない。
1 店の売上は物価の伸びにやや届かない。新しい店が郊外にも広がるため、平均が下がる。値上げは通るが、原価と人件費の上昇もあり、営業利益率は 10.2% にとどまる。
この筋書きでは、10 年後の営業利益は約 106 億円、純利益は約 76 億円だ。強い会社であり続けるが、10 年かけて利益が 6 割増える程度で、値段を押し上げる材料にはならない。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 日高屋(中華食堂):数量 575(日高屋の店舗数(店))× 価格 1.78(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 1,021 億円・営業利益 104 億円。店 575・利益率 10.2%
- 焼鳥日高・その他:数量 38.0(焼鳥日高・その他の店舗数(店))× 価格 1.22(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 46 億円・営業利益 2 億円。店 38・利益率 5%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.5% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.5 倍。全体の PER 19.53 倍、時価総額 1,484 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近年の純増(年 15 店前後)が駅前の枠の減少で年 13 店ほどに鈍る店数と、利益率 10% 前後の維持を組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 24% 出店は鈍り、費用高で利益率が 8% 台に落ちる 利益 53 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,698 円612 億円
出店が鈍り、費用高に利益率を削られる筋書きだ。
駅前の一等地は埋まり、新店はロードサイドと隣県が中心になる。1 店の売上は小さく、出店の効率が落ちて、年の出店は 8 店ほどに減る。日高屋は 10 年で 520 店になる。
最低賃金が毎年上がり、米や豚肉も高止まりする。値上げは客数に響き、物価並みには上げられない。1 店の売上は物価より遅く伸び、営業利益率は 8.3% に下がる。王将の関東進出で昼の客も一部を取られる。
それでも無借金の財務と工場の効率は守られ、会社が傾くわけではない。優良企業が平凡な外食チェーンに近づく過程だ。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に22億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 日高屋(中華食堂):数量 520(日高屋の店舗数(店))× 価格 1.72(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 896 億円・営業利益 74 億円。店 520・利益率 8.3%
- 焼鳥日高・その他:数量 32.0(焼鳥日高・その他の店舗数(店))× 価格 1.17(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。店 32・利益率 3%
倍率:ROE 12.1%(純利益 53 億円 ÷ 自己資本 439 億円)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.25% + 残る割合 1/2 ×(12.1 − 7.5)= 9.8%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 16.9 倍。出店が鈍り、費用高で利益率が落ちる筋書きで、伸びと堀の持ちを低く見て、上限の 6.5 割の 11.0 倍に置いた。
確率:原価と賃金の上昇を価格で吸収しきれず、出店も鈍る筋書き。外食の費用構造から見て起きやすく、慎重な見方がやや強いので厚めに置いた。
悲観 11% 駅前の強みを失い、構造的に優良さを失う 利益 14 億円 · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 342 円123 億円
駅前の強みを構造的に失い、優良さが消える筋書きだ。
餃子の王将などが関東で出店を強め、ロードサイドでも駅前でも日高屋は客を取られる。賃金と原価は上がり続け、値上げは客離れを招いて通らなくなる。ちょい飲みの需要が細り、夜の客の上積みも消える。
不採算の店を畳み、日高屋は 450 店に縮む。1 店の売上は物価の伸びに大きく届かず、営業利益率は 3% まで落ちる。家賃は売上が落ちても減らず、店を閉じる費用もかかる。焼鳥日高など小さな業態は赤字になる。
無借金と純現金が会社を守るが、稼ぐ力は大きく落ちる。配当は減り、新しい成長の筋書きは描けない。コロナ禍の 2 期と同じ、あるいはそれ以上に長い谷になる。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に15億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 日高屋(中華食堂):数量 450(日高屋の店舗数(店))× 価格 1.61(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 727 億円・営業利益 22 億円。店 450 に縮小・利益率 3%
- 焼鳥日高・その他:数量 24.0(焼鳥日高・その他の店舗数(店))× 価格 1.08(1店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。店 24・赤字
倍率:ROE 4.5%(純利益 14 億円 ÷ 自己資本 309 億円)の谷の利益。構造的に優良さを失う筋書きで、やや悲観の PER 11.0 倍より低い 8.8 倍(その 8 割)に置いた。店とのれんなど売って得る資産の床は別に立てていない(家賃の約束と減損の見込みを引くと残らない)。
確率:王将など強い競合の関東進出と、駅前の人の流れの変化が重なり、店の稼ぎが構造的に落ちる複合の筋書き。2 期続いた営業赤字で脆さが示されたので、1 割の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日高屋(中華食堂)
首都圏の駅前とロードサイドで展開する直営の中華食堂。ラーメン・餃子を安く出し、夜は酒とつまみの「ちょい飲み」で客単価を上げる。
| 数量日高屋の店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 440 | 1.35 | 592 | 64 |
| 10 年後 中立 | 575 | 1.78 | 1,021 | 104 |
取り方:日高屋は 2026 年 2 月末の店舗数 約 440 店(8 月末は 444 店)。全社の売上 622 億円のうち、焼鳥日高など約 30 億円(店の数 32 店 × 1 店 約 0.94 億円と推定)を除いた約 592 億円を日高屋とし、店の数で割って 1 店の年売上 約 1.35 億円を出した。営業利益は全社 66 億円から焼鳥日高分 1.8 億円を除いた。先の 1 店の売上は、物価(10 年 1.34 倍)をもとに、新店が隣県のロードサイドに広がる構成の変化で中立 1.32 倍と物価よりやや低く置く。
焼鳥日高・その他
焼鳥居酒屋「焼鳥日高」28 店と、その他の業態 4 店。日高屋より小さく、利益率も低い。
| 数量焼鳥日高・その他の店舗数(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 32.0 | 0.94 | 30 | 2 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 1.22 | 46 | 2 |
取り方:焼鳥日高 28 店とその他 4 店を合わせて 32 店。売上は 1 店 約 0.94 億円と推定(開示がなく、居酒屋型の小さな店として置いた)。営業利益率は日高屋より低い約 6% とした。先は店の数を緩やかに増やし、1 店の売上は物価より少し低く置く。
リスクと懸念
駅前の人の流れに頼る立地
通勤客と夜の飲み会に頼る駅前の店は、人の流れが変わると弱い。コロナ禍の 2021・2022 年 2 月期は営業赤字だった。在宅勤務の定着や飲酒習慣の変化が続けば、ちょい飲みの上積みが細り、客数と客単価を同時に落とす。
人件費と原価の上昇
最低賃金は毎年上がり、パート・アルバイトは集めにくい。2026 年の上期は原価率が約 1 ポイント上がり、米・豚肉・小麦粉の高値が続く。値上げで吸収できなければ、利益率は 10% 台から下がる。省人化の投資で相殺できるかが分かれ目だ。
関東での競合の強まり
餃子の王将は関東の出店を強め、日高屋の客を取りにきている。ロードサイドではリンガーハットや幸楽苑、昼には牛丼やハンバーガー、夜にはコンビニや居酒屋と競う。価格競争が強まると、安さが売りの日高屋は値上げ余地を失う。
出店の天井と新店の質
駅前の一等地は埋まりつつあり、次の出店はロードサイドと隣県が中心になる。1 店の売上は駅前より小さい。出店数が計画に届いても、1 店の稼ぎが落ちれば、利益の伸びは出店数ほどにならない。会社の 700 店目標が遠のくリスクもある。
創業者の持ち分の動き
筆頭株主で会長の神田正氏が保有株の一部を売る意向を示し、保有割合は約 18% から約 14% に下がった。会社の自社株買いで受け止めたが、さらに持ち分が動けば筆頭株主の入れ替わりや経営方針の変化もありうる。
家賃の固定費と新リース会計
店は賃借が中心とみられ、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。悲観の局面では利益率を大きく押し下げる。新リース会計基準は 2 月決算では 2029 年 2 月期から適用され、貸借対照表の負債と資産が増えるため、純現金が見かけ上減る。実力は変わらない。
今後の分かれ目
- 既存店の客数が前年を割る月が続き、客単価の上昇だけで売上が保たれる
- 客離れの始まりと見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。値上げの余地は尽きたと考える。
- 1 店あたり売上が物価並みに伸び、ロードサイドの新店が駅前の店に近い稼ぎを出す
- 中立から強気に寄せてよい。出店の効率が落ちないなら、700 店への道は見えてくる。
- 営業利益率が 11% を超え、原価率の上昇が止まる
- 省人化と値上げが費用高を上回った証拠だ。やや楽観の確率を上げる。
- 餃子の王将が関東の駅前に日高屋の近くで出店を増やし、日高屋の既存店客数が割れる
- 競合の影響が数字に出たと見て、慎重な見方を強める。
- 神田氏の持ち分がさらに動き、筆頭株主が変わる、または経営体制が変わる
- 新しい株主の方針(出店ペース・還元・M&A)を確かめるまで、確率の置き方を保留する。
- 在宅勤務の定着で、夜のちょい飲みの客数が前年を割る
- 駅前の型の寿命を見直し、悲観の筋書きの確率を上げる。
見ておくもの
- 既存店の客数と客単価(毎月の月次)
- 原価率と販管費率(四半期の決算)
- 新店の数と、ロードサイド型の 1 店あたり売上
- 自社株買いの結果と、筆頭株主の異動
- 王将・リンガーハットの関東の出店数
倍率と資本コストの決め方
店の数(実質)と 1 店の年売上(名目)で積み、自己資本は今の値に純利益を足して還元を引いて流した(ROE は結果)。倍率は新しく投じるお金の稼ぎ(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k))と長期成長率 g 4.0% の正当化 PER の 6.5〜8.5 割に置き、今の株価や PBR を見て決めていない。悲観は稼ぐ力(純利益 ÷ k)で置き、過去の谷の PBR は使っていない。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。新リース会計は 2 月決算では 2029 年 2 月期から入り、営業利益と負債の形が変わるが、本質価値は変わらないとみる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.3→20.61 倍・やや楽観 PER 14.9→20.07 倍・中立 PER 14.5→19.53 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本 7.5% に quality 0 を足した 7.5%。景気・値決め・借金・寿命の 4 つはいずれも普通とみて、純現金や高い ROE を理由に k を下げない。立地への依存や会長の持ち分の動きといった個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.25%。