結論
オーシャンシステムは、新潟を本拠に食品スーパーを営む会社だ。売上の半分は、神戸物産の「業務スーパー」を新潟など 9 県で直営・サブ FC 展開する事業が占める。弁当給食と食材宅配も持つ。
筆者の結論は、10 年で見ても割高ということだ。売上は物価と出店で伸びるが、営業利益率は 2% 前後と薄い。最低賃金の上昇と競合の出店で、利益の伸びは売上の伸びに追いつかない。
足元は増収増益が続き、会社は中期計画で売上 1,000 億円と ROE 15% を掲げる。出店も続くので、悪い会社ではない。ただ、業務スーパーのブランドは神戸物産のもので、契約は 1 年ごとの自動更新だ。堀はオーシャンシステム自身のものではない。
純現金 18 億円は時価総額の 13% ほどあるが、毎年 17 億円規模の出店投資が要り、そのまま株主の取り分とは言えない。10 年の中立の価値は今の時価総額を下回る。悪い会社ではないが、払ってよい値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず利益の質を見る。食品スーパーは需要が安定しているが、営業利益率が 2% なので、客数や人件費の小さな変化で利益が大きく動く。
次に堀だ。業務スーパーは強い看板だが、所有者は神戸物産だ。長く持つ株主が頼りにできるのは、自社が持つ看板と土地建物である。ここではそれが弱い。
3 つめは資本の使い方だ。利益の 8 割を内部に残し、出店に回している。出店ごとの投資の回収が資本コストを上回るかが勝負になるが、ROE は 7% 台にとどまり、資本コストの 8% に届かない。
最後に安全域。10 年の中立の価値は今の時価総額を下回る。純現金と神戸物産株の存在が下値を支えるが、それは悲観の床にすぎず、割安とまでは言えない。筆者は、安全域は足りないと見る。配当の 2 割という低い分け前も、その見立てを変えない。
何で稼ぐ会社か
事業は 5 つに分かれ、業務スーパーが売上の 54%、スーパーマーケットが 29% を占める。残りは弁当給食、食材宅配、旅館などだ。
業務スーパーは神戸物産とのエリアライセンス契約で、新潟、福島、宮城、茨城、群馬、山形、長野、富山、秋田の 9 県を担当する。直営は期末 80 店。サブ FC 11 社・54 店には商品を卸し、ロイヤルティも受け取る。2026 年 3 月期は売上 522 億円、セグメント利益 17.7 億円だった。
スーパーマーケットは「チャレンジャー」の名で、燕三条を中心に 10 店ほどを運営する。売上は 275 億円と大きいが、利益は 7.6 億円と薄い。生鮮と総菜が強みだ。
弁当給食は法人・施設向けで、フレッシュランチ 39 の FC 76 店も持つ。食材宅配はヨシケイ新潟で、売上 50 億円ほどだが利益は出ていない。旅館ほかも 1.4 億円の赤字だ。
本社費などの調整が約 8 億円あり、全社の営業利益は 17.9 億円。純利益は 11.4 億円である。売上は 5 年で 4 割増えたのに、営業利益は 1.4 倍にとどまる。
優良さと弱いところ
強みは、業務スーパーという売れる看板を、独占に近い形で 9 県に持つことだ。神戸物産の PB 商品は価格が安く、集客力が高い。新店を出せば客が来るので、投資の回収が読みやすい。
弱みも、その看板が借り物であることだ。契約の期限は 2026 年 8 月から 2027 年 6 月に順次来て、満了後は 1 年ごとの自動更新になる。更新条件が悪くなれば、利益の柱が揺らぐ。
もう 1 つの弱みは、薄い利益率だ。営業利益率は過去 12 年で 1.5〜2.2% に収まり、人件費が上がれば簡単に消える。ROE は過去 10 年の中央値が 9.2% だが、純現金を除いた事業の資本は大きくなく、この数字は出店ペースが続く間だけ保てる。
経営は小型のオーナー系で、出店と配当に慎重だ。配当は利益の 2 割弱にとどまる。バリュー投資家の目では、還元の薄さと投資の重さは、割安とは言いにくい理由になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
食品スーパーは、人口減少で客数が増えない業界だ。物価が上がっても、買い物かごの点数は減る。新潟県の人口は年 1% 前後のペースで減り、県央の商圏は特に厳しい。
一方で、ディスカウントの業態は物価高の追い風を受けている。業務スーパーは加工食品や冷凍食品の安さで集客し、全国で店舗が 1,100 を超えた。神戸物産は 2026 年 10 月期も過去最高の業績を見込む。オーシャンシステムはその地域ライセンシーとして、出店の勢いに乗る立場だ。
課題は人手である。パートの時給は最低賃金に連動して年 3〜5% 上がり、セルフレジなどの省力化で吸収する競争になる。トライアルなどの大型ディスカウントや、食品を売るドラッグストアも新潟・北関東へ入ってくる。
弁当給食と宅配は、人手不足が直撃する。配達員と調理員の確保が、売上の上限を決める。食材宅配は、夕食の宅配を担うヨシケイのネットワーク全体で再編が進み、固定費の重さが赤字の原因になっている。人口の少ない地方ほど、配達の密度が下がって不利になる。拡大する業務スーパーを除けば、地場の食品流通は先細りの色が濃い。
資本政策と M&A
配当は中間と期末で年 2 回、2026 年 3 月期の総額は約 1.9 億円。純利益の 17% ほどにとどまる。自己株式の取得は方針も実績も開示されていない。
投資は積極的だ。2026 年 3 月期の設備投資は 17.6 億円で、減価償却費の 10.9 億円を上回る。2027 年 3 月期も、業務スーパーを 4 店ほど新設・移転する計画がある。この投資が営業キャッシュを食うので、純現金 18 億円は余ったお金とは見ない。
政策保有株は神戸物産の 16 万株(5.5 億円)で、取引関係の維持が目的だ。株主優待は 200 株以上が対象だが、費用は開示されず、年 1 億円未満と推定される。還元への影響は 1 ポイントに満たないため、payout には足していない。
M&A は、ヨシケイ両毛の吸収合併(2024 年)など小型にとどまる。TOB の観測は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
業務スーパーは今も伸びている。神戸物産は 2026 年 10 月期も増収増益で、店舗数は全国で 1,137 まで増えた。オーシャンシステムの直営は 80 店で、9 県の担当地域にはまだ空白商圏が多い。新店は集客が強く、投資の回収が速い。冷凍食品や PB の品ぞろえで、スーパーより客単価の高い買い方を引き出している。
足元の売上は 960 億円で、5 年で 1.4 倍になった。会社計画の 2028 年 3 月期の営業利益は 24 億円で、今より 3 割多い。ROE も 12〜13% に上がる見通しだ。物価高は低価格路線に追い風で、他のスーパーから客が流れ込む。純現金もあり、財務に不安はない。2028 年 3 月期に ROE 13% という計画は、すでに足元の増益の延長にある。10 年かけて出店を続ければ、営業利益 30 億円台も見えてくる。株主にとっても、利益が伸びれば配当を増やせる余地は十分にある。経営は出店の速度を落とさず、新潟での存在感を高めている。
慎重な見方
利益の柱は借り物の看板だ。契約は 1 年ごとの自動更新で、神戸物産が自社直営や別の FC を増やせば、条件はいつでも変わる。1 店あたりの売上は新店が増えるほど薄まり、すでに近隣で食い合いが始まっている。
営業利益率は 2% 前後で、過去 12 年で一度も 3.5% を超えていない。会社計画の 2.5% 超も、足元では届いていない。最低賃金の上昇はパート比率の高いこの業態に重い。臨時従業員は正社員の 3 倍もいて、時給の上昇がそのまま原価を押し上げる。弁当給食と宅配は人手不足で赤字に近く、旅館も赤字だ。本業以外の事業が足を引っ張り、全社の利益率を押し下げている。
純現金は設備投資に消える。減価償却を上回る年 17 億円の投資を続けても、ROE は資本コストに届かない。配当性向も 2 割弱で、自己株式の取得もなく、株主への分け前は薄い。建築費も上がるので、新店 1 店あたりの投資額は年々重くなる。10 年で見ると、売上の伸びほど株主の取り分は増えない。
どちらに重みを置いたか
出店の勢いは本物だが、利益率の薄さと看板の借り物という構造は変わらない。慎重な見方を取る。足元の業績は強気の主張どおりに良いが、10 年の利益率は薄さと契約の弱みで抑えられる。そこで中立を 4 割、やや悲観と悲観で 3 割強に置いた。楽観側は出店が続く前提で 3 割にとどめた。業務スーパーの契約が揺らぐ悪い筋書きは 1 割だが、一度起きると影響が大きいため軽く扱わない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,386 円222 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 358 円33 億円)。 今の値に割り戻すと 1,349 円126 億円、今との差 −10.0%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,002 円466 億円 | 483 円45 億円 | +266.1% | +13.9% | 439 円41 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,575 円333 億円 | 429 円40 億円 | +167.3% | +10.3% | 801 円75 億円 |
| 中立 | 40% | 2,575 円240 億円 | 386 円36 億円 | +97.7% | +7.1% | 1,185 円110 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,000 円93 億円 | 300 円28 億円 | −13.2% | −1.4% | 286 円27 億円 |
| 悲観 | 10% | 204 円19 億円 | 129 円12 億円 | −77.8% | −14.0% | 33 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,386 円222 億円 | 358 円33 億円 | +83.1% | +6.2% | 2,743 円256 億円 |
今の株価時価総額 1,498 円140 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 業務スーパーの出店が続き、新店の利益率も保たれる 利益 28 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 5,002 円466 億円
神戸物産の業務スーパーは全国で 1,100 店を超え、新潟や北関東でも出店がまだ続く。オーシャンシステムは 9 県のエリアライセンスを持ち、直営を 112 店まで増やす。
新店は自前の物流と総菜、冷凍食品の広い品ぞろえで他の食品スーパーと差をつけ、1 店あたり売上は物価を少し上回る。利益率は 3.8% まで上がる。
弁当給食は法人需要と値上げで伸び、宅配の赤字は縮む。本社費は物価で増えるが、売上の伸びで吸収する。会社の掲げる売上 1,000 億円は通過点にすぎない。10 年で営業利益は今の 2 倍に届く。株主への還元も厚くなる。
- 業務スーパー事業:数量 112(直営店舗数(店。期末))× 価格 9.10(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,020 億円・営業利益 39 億円。直営 112 店(1.4 倍)× 1 店あたり売上 1.39 倍(物価 1.34 × 実質 1.04)、利益率 3.8%
- スーパーマーケット事業:数量 10.0(店舗数(店))× 価格 37(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 11 億円。10 店のまま、売上 1.34 倍(物価どおり)、利益率 3.0%
- 弁当給食事業:数量 1,980(提供食数(万食・推定))× 価格 842(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 167 億円・営業利益 5 億円。食数 1.1 倍 × 単価 1.40 倍、利益率 2.8%
- 食材宅配・旅館ほか:数量 843(食数換算(万食・推定))× 価格 872(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 0 億円。宅配は黒字の入り口まで改善、利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.5 倍。全体の PER 15.5 倍、時価総額 431 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直営 112 店は年 3 店強の純増が 10 年続く水準で、出店余地と人手を同時に満たす必要がある。実績は 5 年で約 20 店増と速いが、商圏の重なりで 1 店あたり売上は削られやすい。確率は低めに置く。
やや楽観 20% 出店は今の勢いで続き、利益率は少し上がる 利益 21 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,575 円333 億円
業務スーパーの直営は 100 店になり、1 店あたり売上は物価並みに伸びる。サブ FC の卸も増え、利益率は 3.5% に上がる。
スーパーは新潟県央の商圏を守り、横ばいで物価分だけ伸びる。弁当給食は食数が減らず、値上げが通る。
本社費と最低賃金の上昇は重いが、店の大型化と物流の共同化でほぼ吸収する。人手不足は続くが、セルフレジと冷凍食品の比率の高さが人手の負担を軽くする。営業利益は今の 1.6 倍強。会社が掲げる経常利益率 2.5% には届かないが、近づく。ただし新店の食い合いと人手不足で、これ以上は伸びにくい。
- 業務スーパー事業:数量 100(直営店舗数(店。期末))× 価格 8.75(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 876 億円・営業利益 31 億円。直営 100 店(1.25 倍)× 1 店あたり売上 1.34 倍、利益率 3.5%
- スーパーマーケット事業:数量 10.0(店舗数(店))× 価格 36(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 364 億円・営業利益 10 億円。10 店のまま、実質わずかに減、利益率 2.8%
- 弁当給食事業:数量 1,800(提供食数(万食・推定))× 価格 806(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 145 億円・営業利益 3 億円。食数横ばい × 単価 1.34 倍、利益率 2.3%
- 食材宅配・旅館ほか:数量 843(食数換算(万食・推定))× 価格 872(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 0 億円。宅配は収支トントン
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.41 倍、時価総額 301 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直営の増加ペースは足元と同じで、神戸物産の出店方針と、新潟・北関東の人口減が相殺する見立て。中立より少し良い結果を取る確率を 2 割とした。
中立 40% 出店は緩やかに続くが、新店が既存店を食い、利益率は横ばい 利益 16 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 2,575 円240 億円
業務スーパーは年 1〜2 店のペースで増え、10 年後は 94 店になる。1 店あたり売上は物価どおりには伸びず、近隣への出店で実質 3% ほど削られる。
スーパー事業は 10 店のまま、県央の人口減で実質は細る。値上げは通るが、客数の減りを埋めきれない。弁当給食は食数が 5% 減り、値上げで補う。宅配と旅館は赤字か収支トントンで、整理も視野に入る。
本社費は物価で 1.34 倍に増える。減価償却は今の店の分は据え置きで、新店の分だけ高い建築費で積み上がる。営業利益は 26 億円、純利益は 16 億円。ROE は 7% 台にとどまり、資本コストには届かない。
- 業務スーパー事業:数量 94.0(直営店舗数(店。期末))× 価格 8.49(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 798 億円・営業利益 26 億円。直営 94 店(1.18 倍)× 1 店あたり売上 1.30 倍(物価 1.34 × 実質 0.97。新店が既存店を食う)、利益率 3.2%
- スーパーマーケット事業:数量 10.0(店舗数(店))× 価格 35(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 350 億円・営業利益 9 億円。10 店のまま、実質 0.95 倍(県央の人口減)、利益率 2.5%
- 弁当給食事業:数量 1,710(提供食数(万食・推定))× 価格 806(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 138 億円・営業利益 3 億円。食数 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 2.1%
- 食材宅配・旅館ほか:数量 759(食数換算(万食・推定))× 価格 872(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 0 億円。宅配は縮小、旅館の赤字が残る
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.19 倍、時価総額 211 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直営 94 店は年 1〜2 店の純増で、足元の出店ペースの半分ほど。人口減と最低賃金の上昇は避けにくい一方、食品の需要は底堅い。業務スーパーの強い集客力が続く前提を中心に置いた。
やや悲観 22% 競合の出店と人件費の上昇で、利益率が 2% を割る 利益 9 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,000 円93 億円
トライアルなどのディスカウントと、食品を売るドラッグストアが商圏を削る。業務スーパーの新店は集客が伸びず、既存店の売上は物価に届かない。
最低賃金の引き上げで人件費が膨らみ、価格を上げると客が減る。業務スーパーの新店は出店コストが高く、回収が遅れて償却だけが増える。スーパー事業は 1 店を閉め、弁当給食の食数も減る。
営業利益は 1 桁の億円まで細り、会社が掲げる経常利益率 2.5% はかなわず、純利益は 8 億円ほど。投資を絞って配当は据え置くが、増配余地はなくなる。10 年で見ると、売上は伸びても利益は今から 1 割も増えない。
- 業務スーパー事業:数量 84.0(直営店舗数(店。期末))× 価格 8.32(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 699 億円・営業利益 20 億円。直営 84 店(1.05 倍)× 1 店あたり売上 1.27 倍、利益率 2.8%
- スーパーマーケット事業:数量 9.0(店舗数(店))× 価格 33(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 297 億円・営業利益 6 億円。不採算店を閉めて 9 店、売上 1.20 倍、利益率 2.0%
- 弁当給食事業:数量 1,620(提供食数(万食・推定))× 価格 752(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 2 億円。食数 0.9 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 1.6%
- 食材宅配・旅館ほか:数量 700(食数換算(万食・推定))× 価格 814(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 −1 億円。宅配・旅館の赤字が続く
倍率:ROE 5% 前後で k を大きく下回り、上限 12.5 倍の 6 割。利益の質が薄く、出店投資の回収が遅れる分を織り込んだ。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 7.5 倍・時価総額 70 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:新潟・北関東でトライアルなどの大型ディスカウントとドラッグストアの食品販売が広がり、1 店あたり売上が伸びにくくなる筋書き。小売の薄利は人件費の増加に弱く、実現しやすい。
悲観 10% 神戸物産の販売戦略と競合に押され、業務スーパーの店ごと稼ぎが崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 204 円19 億円
エリアライセンス契約の条件が厳しくなる、または他社が同じ商圏にFCで出てきて、新潟の優位が崩れる。同時に大型ディスカウントとドラッグが食品の価格競争を仕掛け、1 店あたり売上が物価に追いつかない。
店舗数を 72 店に絞り、不採算店を閉じる費用も出る。弁当給食と宅配は人手が集まらず赤字になる。
営業利益はほぼゼロで、純利益も 1 億円を切る。一方で、財務は純現金で傷まず、赤字に沈むことはない。株主が頼れるのは、純現金と神戸物産株などの売れる資産だけになる。会社は閉店と整理を急ぐが、立て直しには数年かかる。
- 業務スーパー事業:数量 72.0(直営店舗数(店。期末))× 価格 7.88(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 567 億円・営業利益 10 億円。店を絞って 72 店、1 店あたり売上 1.21 倍、利益率 1.8%
- スーパーマーケット事業:数量 8.0(店舗数(店))× 価格 30(1 店あたり売上(億円・名目))→ 売上 242 億円・営業利益 2 億円。8 店、売上 1.10 倍、利益率 1.0%
- 弁当給食事業:数量 1,440(提供食数(万食・推定))× 価格 692(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 1 億円。食数 0.8 倍 × 単価 1.15 倍、利益率 0.8%
- 食材宅配・旅館ほか:数量 600(食数換算(万食・推定))× 価格 716(1 食あたり売上(円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 −2 億円。宅配・旅館は赤字拡大
倍率:稼ぐ力は営業利益ほぼゼロで、価値は純現金と売れる資産の床で決まる。今の自己資本 121 億円に 0.16 倍。
確率:業務スーパーの契約は満了後 1 年ごとの自動更新で、神戸物産の方針が変われば出店や仕入れの条件が変わる。ここに競合の大型化と人手不足が重なる構造的な負けを悪い筋書きにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
業務スーパー事業
神戸物産の業務スーパーを、新潟など 9 県のエリアライセンスで直営し、サブフランチャイズにも出す。冷凍食品や加工食品の大容量・低価格が売りの店。
| 数量直営店舗数(店。期末) | 価格1 店あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 6.53 | 523 | 18 |
| 10 年後 中立 | 94.0 | 8.49 | 798 | 26 |
取り方:売上 522.67 億円・セグメント利益 17.74 億円(有価証券報告書)。直営 80 店(期末)とサブ FC 54 店。売上にはサブ FC への卸も入るが、開示がないので売上÷直営店数を 1 店あたりとみなした推定。
スーパーマーケット事業
新潟県央を中心に「チャレンジャー」を運営する食品スーパー。生鮮と総菜が中心。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 27 | 275 | 8 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 35 | 350 | 9 |
取り方:売上 274.72 億円・セグメント利益 7.61 億円。店舗数は設備表の「燕三条店他 9 店舗」から 10 店と置いた推定。
弁当給食事業
事業所・施設向けの弁当と給食、フレッシュランチ 39 のフランチャイズ(34 社 76 店)。
| 数量提供食数(万食・推定) | 価格1 食あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,800 | 602 | 108 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,710 | 806 | 138 | 3 |
取り方:売上 108.28 億円・セグメント利益 2.28 億円。食数は開示がなく、1 食の単価を 六百円前後と仮定して売上から逆算した推定。
食材宅配・旅館ほか
ヨシケイ新潟の食材宅配と、旅館などその他。どちらも赤字か収支トントン。
| 数量食数換算(万食・推定) | 価格1 食あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 843 | 651 | 55 | −2 |
| 10 年後 中立 | 759 | 872 | 66 | 0 |
取り方:食材宅配 49.60 億円(損失 0.07 億円)と旅館ほか 5.26 億円(損失 1.43 億円)の合計。宅配の食数が開示されないため、合計売上を 1 食あたり単価(六百五十円台と仮定)で割った便宜上の食数換算。
リスクと懸念
業務スーパーの契約
エリアライセンスは 2026 年 8 月から 2027 年 6 月に順次満了し、1 年ごとに自動更新される。条件が変われば利益の柱が揺らぐ。更新が続いてきた実績はあるが、今後は保証されない。
人件費と最低賃金
臨時従業員は年平均 3,216 人で、正社員の 3 倍にのぼる。最低賃金は毎年上がり、営業利益率 2% の事業では、時給 3% の上昇だけで利益が数億円削られる。省力化で吸収できるかが分かれ目になる。
競合の出店
トライアルなどの大型ディスカウントと、食品を売るドラッグストアが新潟・北関東へ広がる。商圏の食い合いで、1 店あたり売上が伸びなくなる。
新店の食い合い
直営 80 店のうち、近隣の既存店と商圏が重なる新店が増えている。1 店あたり売上が実質で下がれば、増収でも増益にならない。
弁当給食・宅配の赤字
食材宅配は損失 0.07 億円、旅館ほかは 1.4 億円の赤字だ。人手不足が続くと、弁当給食も利益が出にくくなる。撤退の判断が遅れるほど、会社全体の資本効率が下がる。
設備投資の重さ
設備投資は年 17.6 億円で、減価償却費 10.9 億円を上回る。建築費の上昇で新店の投資額は膨らみ、償却と利払いが後から効いてくる。営業キャッシュは出店に回り、配当は 2 割弱にとどまる。
新リース会計基準
2028 年 3 月期から、賃借する店舗が使用権資産とリース負債として貸借対照表に載る。家賃は固定の約束で、純現金や自己資本比率は見かけほど強くないと見る必要がある。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。
今後の分かれ目
- 業務スーパーのエリアライセンス契約の更新条件が変わる、または期間が短くなる
- 利益の柱の前提が崩れる。悲観の確率を 15% 以上に引き上げる。
- 業務スーパーの 1 店あたり売上が物価を上回って伸び続ける
- 新店の食い合いが小さいという証拠になる。やや楽観の確率を厚くできる。
- 営業利益率が 2.5% を超える
- 会社の掲げる経常利益率 2.5% が現実になる。中立の利益率を 0.3 ポイント上げる材料になる。
- 食材宅配・旅館の整理や売却が決まる
- 赤字の 1.5 億円が消え、全社の営業利益が約 8% 増える。資本効率の改善として評価できる。
- 配当性向の引き上げや自己株式の取得が出る
- 還元が厚くなる。10 年の payout の見通しを上げる。
- TOB の提案が出る
- 純現金と神戸物産株の価値にプレミアムがつく可能性がある。ただし取得側は看板の契約を見直す余地を持つ。
見ておくもの
- 業務スーパーの直営店数と 1 店あたり売上
- 神戸物産とのエリアライセンス契約の更新
- 営業利益率(スーパーと業務スーパーそれぞれ)
- 最低賃金の改定と臨時従業員の人数
- 設備投資額と減価償却費
- 配当性向と自己株式取得の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 8.0%(基本 7.5% に quality +0.5%)と、10 年後の ROE(中立で 7% 台)から式で置いた。ROE が k を下回るので上限は 1÷k=12.5 倍で、その 6〜7 割に置いた。今の株価や PER は見ていない。新リース会計基準で 2028 年 3 月期から数字の形が変わるが、10 年後も家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.5 倍・やや楽観 PER 10.5→14.41 倍・中立 PER 9→13.19 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.5% を足して 8.0%。