結論
あさくまは、名古屋発の郊外型ステーキ店「ステーキのあさくま」を営む外食企業だ。直営と FC を合わせて約 80 店を持ち、親会社のテンポスホールディングスが株の 6 割を握る。
筆者の結論は割高である。10 年後の利益に妥当な倍率を掛けて今に引き直すと、本質価値は今の時価総額の 1 割ほどにとどまる。楽観の筋書きでも今の値段に届かない。
理由は単純で、今の利益が小さいからだ。2026 年 1 月期は売上が 100 億円に届いたが、営業利益は 5 億円、純利益は 3 億円にとどまる。時価総額は 400 億円に迫り、利益の 100 倍を超える。成長の見込みを何年も先まで織り込んだ値付けだ。
中身は悪くない。既存店の売上は 40 か月以上、前年を上回り続けている。サラダバーの来店動機、肉の日の増量企画、店づくりに客を巻き込む工夫が効いた。営業利益率は 2%から 5%へ上がり、2027 年 1 月期は売上 123 億円を計画する。
ただし、ステーキは流行に左右されやすい。急成長した「いきなり!ステーキ」が店を畳んだことは、業態の波の大きさを示す。株主優待や株式分割で買いやすくなったが、親会社が支配するため、少数株主が価値を動かす余地は小さい。
財務は健全で、純現金がある。立て直しの実行力は評価するが、払う値段には余裕がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社は「良い立て直しだが、値段が先を行きすぎている」。
事業の本質は、郊外の大きな店で、肉とサラダバーを食べる楽しみを売ることだ。再投資の先は十分あり、新しい店は短期で採算に乗る。営業キャッシュフローは約 9 億円で、投資の資金は自前で賄える。
一方、株主に残る利益は薄い。営業利益は 5 億円で、純利益は 3 億円にとどまる。出店を続けるほど、手元の現金は店に変わる。親会社が 6 割を握るので、少数株主に戻る利益は親会社の判断次第になる。
経営は、コロナ後に現場の品質を立て直し、客の声を商品に反映して既存店を伸ばした。この実行力は評価できる。ただし、出店を加速する局面で、サラダバーのような手間のかかる運営を保てるかが問われる。
安全域の目で見ると、今の時価総額は、今の利益の 100 倍を超える。成長が 10 年続く楽観の筋書きでも、今の値段には届かない。ステーキの流行が去るリスクを考えれば、払う値段に余裕はない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は「ステーキのあさくま」だ。2026 年 1 月末で 68 店あり、64 店が直営、4 店が FC である。主に郊外のロードサイドにあり、家族連れが主力の客層になる。
店の特徴は、サラダバー、ホットバー、体験型のデザートといった来店の理由を増やしていることだ。肉の日にはサーロインを増量して、客単価を上げた。客を店づくりに巻き込む「お料理プランナー」などの制度もあり、会員アプリのアンケートで商品と接客を直す。
ほかに、都心の駅前でもつ焼きを出す「エビス参」が 8 店、インドネシア料理の「ワヤンバリ」が 1 店、名古屋の大須と栄に出す「カレーのあさくま」がある。通販サイトもある。
新しい動きは小型店だ。70 坪ほどの小さな店を、桑名、鈴鹿、大阪の西梅田に出した。西梅田は 21 年ぶりの大阪進出で、開店前から行列ができた。京都への出店もあり、都心や商業施設に出せるのが強みになる。
人材は、特定技能の外国人を 2026 年だけで 54 名採用し、一部は店長に引き上げた。人件費は売上の約 25%。
2027 年 1 月期は 11 店の出店を計画し、3 年後に売上 200 億円を目標に掲げる。配当は成長投資を優先して無配の予想だ。
優良さと弱いところ
優良さは「回復の勢いは本物だが、堀はまだ浅い」と見る。
強みの第一は、来店の理由を作る力だ。サラダバーと肉の日の企画が客を呼び、既存店は 40 か月以上、前年を上回った。直近の 3 か月は前年比 120%を超えた月もある。
第二は、親会社の後ろ盾だ。テンポスホールディングスは、厨房機器の調達と中古の流通で飲食店を支える会社で。2006 年の BSE で苦境に陥ったとき資本を入れ、2011 年に子会社にした。
第三は、財務の厚さだ。自己資本比率は 69%、純現金は 24 億円ある。コロナで売上が 50 億円台まで落ちても、持ちこたえた。
弱みも明らかだ。第一に、利益が薄い。営業利益率は 5%で、過去 8 年の ROE の中央値は 3.8%にとどまる。第二に、ステーキは流行の波が大きい。第三に、サラダバーは補充と清掃の手間が重く、人手不足で運営が崩れるおそれがある。第四に、親会社が 6 割を持つため、少数株主の発言力は小さい。
全体として、10 年先も利益が守られる確度は普通とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、日本フードサービス協会によると 2023 年に約 24 兆円まで戻った。人口が減るため客数は伸びず、伸びるのは客単価、つまり値上げの分だ。
ステーキ・ハンバーグ店の市場は、調査会社によると、2025〜2029 年の予測で年 0.3%の伸びにとどまる。つまり、あさくまの成長は市場の成長ではなく、競合から客を取る分だ。
競合は、すかいらーくのステーキガスト、ブロンコビリー、ビッグボーイ、いきなり!ステーキ、やっぱりステーキなどだ。いきなり!ステーキは 2026 年に国内 167 店まで減った。ロピア系の「ザ ビフテキ」のような新興も出てきた。ステーキ店の倒産は 2024 年に過去最多を記録している。
円安と物価の上昇で、輸入牛肉の仕入れは高くなる。150 円の世界では、牛肉のコストは物価以上に上がりやすい。ステーキ店は、値上げが通るかどうかで利益が決まる。
成長の領域は、都心と商業施設への小型店、東海から関西・関東への広がり、そしてカレーなど別の業態だ。3 年後に売上 200 億円という目標は、年に 10 店以上の出店と既存店の伸びが前提になる。
業界の分かれ目は、ステーキの需要が一過性のブームで終わらず、サラダバーのような体験で客を取り続けられるかどうかだ。
資本政策と M&A
還元は、今のところ配当を出さない。成長投資を優先する方針で、2027 年 1 月期の配当予想は無配だ。株主優待は、1 月末に食事券、7 月末に抽選で食事券やおせちを出す。2026 年 8 月の 1 株を 2 株に分ける株式分割にあわせ、優待の最低投資額は半分になった。
優待の年間の費用は 0.6 億円と推定する。株主数の開示を確認できず、優待の条件から推した数字で、2 倍程度のずれはありうる。優待は株主が受け取る現物の還元なので、10 年の還元に年額×10 年を、中立以上は 1.0、やや悲観 0.75、悲観 0.5 の係数で足した。費用は利益から引き済みで、自己資本の流れには入れない。
資本の履歴は、2006 年に BSE で業績が悪化して親会社のテンポスから第三者割当増資を受け、2011 年に子会社になった。2024 年 1 月にテンポスは非支配株主から株を買い増し、持分は 50%強から 61%に上がった。
親会社が 6 割を持つので、少数株主への現金の戻り方は親会社の判断に左右される。完全子会社化の TOB の可能性は、kabufu の参考値で 10 年以内に 16.7%。ただし、その時の価格が本質価値を超えるとは限らない。
買収は見られず、成長は自前の出店で進める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ステーキのあさくまは、サラダバーという来店の理由を作り、既存店を 40 か月以上伸ばし続けた。店づくりに客を巻き込む仕組みは、他のチェーンがすぐにはまねできない。
西梅田の店は開店前から行列ができ、小型店が都心でも通用することを示した。70 坪の小さな店は、家賃が軽く、投資の回収が早い。これを東海から関西、関東へ広げれば、出店の余地は大きい。2027 年 1 月期は 11 店を出し、3 年後に売上 200 億円を目指す。
他の業態も育つ。名古屋のカレー、都心のもつ酒場、インドネシア料理が、ステーキ以外の収益源になる。
親会社のテンポスは、厨房機器の調達と中古の流通で飲食店を支える会社だ。出店の費用を抑える助けになりうる。
人材も育っている。特定技能の外国人を 2026 年だけで 54 名採用し、一部は店長に上がった。人手不足が最大の制約でも、この仕組みが出店の速さを支える。
営業利益率は 2%から 5%に上がった。規模が 2 倍になれば、本部の費用の割合は下がり、利益率は 7%台に届く。
慎重な見方
今の時価総額は、利益の 100 倍を超える。営業利益は 5 億円、純利益は 3 億円で、成長を何年も先まで織り込んでいる。計画が少し遅れるだけで、期待が剥がれる。
ステーキは流行の波が大きい。いきなり!ステーキは急拡大のあと国内 167 店まで縮み、ステーキ店の倒産は 2024 年に過去最多を記録した。市場の成長率は 2025〜2029 年に年 0.3%にとどまる。つまり、あさくまの成長は競合から客を取る分で、いずれ限界が来る。
2027 年 1 月期の中間では、京都の出店コストで減益になった。下期は営業利益率 7%超が必要になる。出店を加速するほど、費用が先に出て利益を押し下げる。
サラダバーの運営は手間が重い。補充と清掃の負担が増え、人手不足の中で品質を保てない店が出る。輸入牛肉は円安で高くなり、値上げが通らなければ利益が削られる。
親会社が 6 割を持つので、少数株主に現金が戻るかは親会社の判断次第だ。配当は無配の予想で、優待が実質的な還元になっている。
財務は健全でも、事業の稼ぐ力が小さい。純現金が 24 億円あっても、時価総額の 6%にすぎない。
どちらに重みを置いたか
サラダバーを軸にした既存店の伸びと、小型店で都心に出せる出店の余地については、強い見方に説得力がある。一方で、今の利益が時価総額に比べて小さすぎること、ステーキの流行の波、親会社が 6 割を持つ構造という慎重な見方の指摘は、数字の裏づけが厚い。
確率は、中立よりやや悲観側に寄せた。出店の歩留まりと人手の確保が 10 年そろわなければ、強気の筋書きは崩れるからだ。
中立の営業利益率は 5%前後にとどめ、過去の山の 9.5%には届かないと置いた。計算の結果、楽観の筋書きでも今の時価総額を下回り、総合では大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 975 円102 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 161 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 550 円58 億円、今との差 −85.2%、 期待の年率 −11.2%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,165 円332 億円 | 343 円36 億円 | −5.4% | −0.6% | 316 円33 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,489 円156 億円 | 219 円23 億円 | −54.0% | −7.5% | 376 円39 億円 |
| 中立 | 33% | 840 円88 億円 | 171 円18 億円 | −72.7% | −12.2% | 334 円35 億円 |
| やや悲観 | 25% | 266 円28 億円 | 91 円10 億円 | −90.4% | −20.9% | 89 円9 億円 |
| 悲観 | 11% | 171 円18 億円 | 29 円3 億円 | −94.6% | −25.3% | 22 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 975 円102 億円 | 161 円17 億円 | −69.4% | −11.2% | 1,136 円119 億円 |
今の株価時価総額 3,710 円389 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 都心型が育ち、全国のステーキ専門店に 利益 21 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 3,165 円332 億円
都心向けの小さな店が当たり、ステーキのあさくまは東海・関西・関東の 210 店に広がる。カレーやもつ酒場も各地で育ち、他の業態は 70 店規模になる。客単価を上げても客が離れず、サラダバーの来店動機が続く。出店の歩留まりは高く、新しい店は 2 年で採算に乗る。営業利益率は 6%台に上がり、過去の山の 9.5%には届かないが、規模の利益が出る。人件費の上昇は特定技能の外国人の採用と、調理の標準化で吸収する。親会社のテンポスが持つ厨房機器の調達力も助けになりうる。配当は利益の 2 割ほどを払う。株主優待の受け取り(費用ベース年 0.6 億円×10 年)も還元に足した。優待の費用は利益から引き済み。
- ステーキのあさくま(直営・FC):数量 210(ステーキのあさくまの年平均店数(店))× 価格 1.87(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 394 億円・営業利益 37 億円。年平均 210 店・1 店売上の指数 1.32
- その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか):数量 70.0(その他の業態の年平均店数(店))× 価格 1.58(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 111 億円・営業利益 6 億円。年平均 70 店・1 店売上の指数 1.32
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.82 倍、時価総額 332 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:都心型の小型店が全国で当たり、規模の利益まで出るには、人手の確保と出店の歩留まりが 10 年そろう必要がある。強気の言い分の確度は高くなく 1 割未満にした。
やや楽観 22% 中計にほぼ届き、東海・関西で店が広がる 利益 11 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 1,489 円156 億円
中期計画の 3 年後の売上 200 億円に 2〜3 年遅れて届き、その後も出店が続く。ステーキのあさくまは 150 店、他の業態は 40 店になる。出店の歩留まりは普通で、1 店あたりの売上は新しい小型の店が混ざる分、物価の上昇より少なく伸びる。サラダバーの客はリピートが多く、既存店は物価並みに伸びる。営業利益率は 5%台に乗る。人手の確保が出店の速さを決める。立地が薄くなる後半の数年は、新しい店の売上が既存より小さく、本部の費用の割合は思ったほど下がらない。それでも、既存店の客数は保たれ、配当は利益の 2 割弱を払える。株主優待の受け取り(費用ベース年 0.6 億円×10 年)も還元に足した。優待の費用は利益から引き済み。
- ステーキのあさくま(直営・FC):数量 150(ステーキのあさくまの年平均店数(店))× 価格 1.82(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 273 億円・営業利益 23 億円。年平均 150 店・1 店売上の指数 1.28
- その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか):数量 40.0(その他の業態の年平均店数(店))× 価格 1.54(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。年平均 40 店・1 店売上の指数 1.28
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.21 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:3 年後に売上 200 億円という計画は足元の出店速度の延長で現実味があり、2 割余りを置いた。ただし 10 年続けて利益率が上がるとは限らない。
中立 33% 中立:郊外 120 店で成長が鈍り、利益率は 5%前後で定着 利益 7 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 840 円88 億円
出店は東海を中心に 120 店まで進むが、立地の好条件が減り、新しい店の売上は既存より小さくなる。他の業態は 25 店にとどまる。既存店の勢いは落ち着き、値上げは物価の 8 割ほどしか通らない。サラダバーの運営は手間が重く、人手の確保が出店の速さを決める。営業利益率は 5%前後で、過去の山の 9.5%には届かない。親会社のテンポスは 6 割の株を持ったまま、配当は利益の 2 割ほどに抑えられる。自己資本は利益の積み上げで厚くなるが、出店投資が続くため、自己資本の利益率は 9%台で止まる。株主優待の受け取り(費用ベース年 0.6 億円×10 年)も還元に足した。優待の費用は利益から引き済み。
- ステーキのあさくま(直営・FC):数量 120(ステーキのあさくまの年平均店数(店))× 価格 1.78(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 213 億円・営業利益 17 億円。年平均 120 店・1 店売上の指数 1.25
- その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか):数量 25.0(その他の業態の年平均店数(店))× 価格 1.50(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。年平均 25 店・1 店売上の指数 1.25
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.6 倍、時価総額 88 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店が続いても立地が薄まる、という落としどころ。慎重な言い分のほうが数字の裏づけが厚いので、確率の重心をやや下に置いた。
やや悲観 25% やや悲観:出店の歩留まりが落ち、利益が細る 利益 2 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 266 円28 億円
出店のペースは保たれても、新しい店の歩留まりが落ちる。ステーキのあさくまは 90 店、他の業態は 15 店で止まる。人件費の上昇と輸入牛肉の高騰を、値上げで吸収しきれず、1 店あたりの売上は物価の 15%増にとどまる。サラダバーの補充と清掃の負担が重く、品質を保てない店が増える。営業利益率は 2%台に戻り、自己資本の利益率は 3%ほどに落ちる。配当はほとんど出ない。親会社の判断で出店は止まり、手元の現金はそのまま積み上がるが、少数株主には戻りにくい。株主優待の受け取り(費用ベース年 0.6 億円×10 年×0.75)も還元に足した。優待の費用は利益から引き済み。
- ステーキのあさくま(直営・FC):数量 90.0(ステーキのあさくまの年平均店数(店))× 価格 1.63(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 147 億円・営業利益 9 億円。年平均 90 店・1 店売上の指数 1.15
- その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか):数量 15.0(その他の業態の年平均店数(店))× 価格 1.38(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 0 億円。年平均 15 店・1 店売上の指数 1.15
倍率:稼ぐ力は純利益 2 億円 ÷ k 8.25% = 約 24 億円だが、ROE が k を大きく下回るので、売れる資産の税引き後(約 28 億円)のほうが大きい。今の自己資本 34 億円に対する PBR 0.82 倍で測った。店の内装は売れず、価値は手元の現金の戻り分と敷金の返還にある。親会社が 6 割を持ち、現金は少数株主には戻りにくい。純現金で、EV で見ても結論は変わらない。
確率:ステーキは流行の波があり、サラダバーの運営は手間が重い。出店の歩留まりが落ちる筋書きを 4 分の 1 に置いた。
悲観 11% 悲観:流行が去り、広げた店が重荷になる 利益 −5 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 171 円18 億円
ステーキの流行が去り、広げた店が重荷になる。出店を急いだ地域で既存店の売上が落ち、70 店まで縮む。サラダバーの品ぞろえで客を呼ぶやり方が、原価の上昇と人手不足で成り立たなくなる。店の固定資産の減損が出て、自己資本が削られる。家賃と人件費は固定の約束として残り、営業損益は赤字になる。親会社のテンポスが 6 割の株を持つため、少数株主は再建の判断に関われない。それでも手元の現金と店の敷金の返還で、一定の価値は残る。株主優待の受け取り(費用ベース年 0.6 億円×10 年×0.5)も還元に足した。優待の費用は利益から引き済み。
- ステーキのあさくま(直営・FC):数量 70.0(ステーキのあさくまの年平均店数(店))× 価格 1.49(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 104 億円・営業利益 0 億円。年平均 70 店・1 店売上の指数 1.05
- その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか):数量 8.0(その他の業態の年平均店数(店))× 価格 1.20(1 店あたり年間売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。年平均 8 店・1 店売上の指数 1.00
倍率:悲観は赤字で、稼ぐ力はゼロに近い。そこで売れる資産の税引き後(約 18 億円)を床とみて、今の自己資本 34 億円に対する PBR 0.53 倍で測った。店の内装は売れず、価値は手元の現金の戻り分と敷金の返還にしかない。親会社が 6 割を持つため、現金の使い道は少数株主には決められない。純現金で借金は無く、EV で見ても結論は変わらない。
確率:いきなり!ステーキの急拡大と縮小が示すように、ステーキの業態は波が大きい。構造的に負ける筋書きは 1 割を超える確率で残る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ステーキのあさくま(直営・FC)
郊外のロードサイドを中心に、サラダバーを備えたステーキ店。直営 64 店と FC 4 店。新しく 70 坪の小型店を都心や商業施設にも出している。店は賃借が多く、家賃は固定の約束。
| 数量ステーキのあさくまの年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 64.0 | 1.42 | 91 | 8 |
| 10 年後 中立 | 120 | 1.78 | 213 | 17 |
取り方:2026 年 1 月期の売上 100 億円から、他の業態を約 9.6 億円と推定して引いた約 91 億円を、期首と期末(68 店)の平均 64 店で割った。業態別の開示は無く推定。利益は店の営業利益率 8.4%と筆者が推定し、本社費を調整に分けた。先の 1 店売上は物価 1.34 倍を基に、小型の新しい店が混ざる分を引いて中立 1.25 倍に置いた。
その他の業態(もつ酒場・カレー・インドネシア料理ほか)
都心の駅前のもつ焼き「エビス参」、カレーのあさくま、ワヤンバリなど。
| 数量その他の業態の年平均店数(店) | 価格1 店あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 8.0 | 1.20 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 1.50 | 38 | 1 |
取り方:エビス参 8 店、ワヤンバリ 1 店、カレー 1 店で、1 店あたりの売上を約 1.2 億円と筆者が推定した(開示は無い)。利益は新しい業態の開業費を引いて、ほぼ損益ゼロとみた。先の 1 店売上は中立で 1.25 倍に置いた。
リスクと懸念
ステーキの流行の波
ステーキは当たると急に店が増え、外れると一気に畳まれる業態だ。いきなり!ステーキの縮小が示すように、需要の山を追って出店すると、下りの局面で固定費が残る。
出店の歩留まりと人手
2027 年 1 月期は 11 店を出す計画で、費用が先に出て利益を押し下げる。京都の出店コストで中間期は減益になった。人手の確保が出店の速さを決め、特定技能の外国人への依存が高まる。
サラダバーの運営負担
サラダバーは来店の理由だが、補充と清掃の手間が重い。人手不足の中で品質を保てない店が増えれば、強みが弱みに変わる。
親会社の支配
テンポスホールディングスが株の 6 割を持つ。配当や現金の使い道、完全子会社化の時期と価格は親会社の判断に左右される。少数株主が価値を動かす余地は小さい。
牛肉の仕入れと為替
主力のステーキは輸入牛肉が中心で、円安で仕入れ値が上がる。値上げが通らなければ、利益率が削られる。150 円の世界では、牛肉のコストは物価以上に上がりやすい。
今の値付けの高さ
時価総額は利益の 100 倍を超え、成長を何年も先まで織り込んでいる。計画が少し遅れるだけで、期待が剥がれやすい。新リース会計基準(2028 年 1 月期以降)で賃借が貸借対照表に載り、見かけの負債と自己資本比率が変わる点にも注意が要る。
今後の分かれ目
- 既存店の売上が 2 年続けて前年を下回ったら
- 勢いが終わった合図で、やや悲観・悲観側に重みを移す。
- 3 年後の売上 200 億円の計画が、2 年目の段階で達成の見込みと言えたら
- 出店の歩留まりが高いと見て、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- 都心向けの小型店が、郊外店並みの売上を 2 年続けて出したら
- 出店の余地が広がる証拠で、中立の店数を引き上げる。
- サラダバーの運営の不具合や衛生の問題が出たら
- 強みが弱みに変わった合図で、悲観側に重みを移す。
- 親会社が完全子会社化の TOB を発表したら
- 提示価格を本質価値と比べる。少数株主の価値を引き出す機会になりうる。
- 営業利益率が 2 年続けて 7%を超えたら
- 規模の利益が出てきた合図で、中立の利益率を引き上げて見直す。
見ておくもの
- ステーキのあさくまの月次の既存店売上(前年比)
- 年間の出店数と、新しい店の初年度売上
- 営業利益率(2027 年 1 月期の計画 5.4%)
- 親会社テンポスの持分と、配当・完全子会社化の方針
- いきなり!ステーキなど競合の店数の動き
倍率と資本コストの決め方
ステーキのあさくまとその他の業態の 2 区分で、店数(実質)× 1 店売上(名目)を積んだ。自己資本は今の 34 億円に期間の純利益を足して配当を引いて流し、ROE は結果として出た。倍率は式(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k)、g 4.0%)から出した正当化 PER の 7〜10 割に置き、ROE が k を上回る筋書きは 1÷k を下限にした。市場の倍率は使っていない。営業利益率は過去の山 9.5%以下に置いた。悲観の床は現金の戻り分と売れる資産の税後で置いた。店は賃借が多く、家賃は毎年払う固定の約束で、未経過リース料の額は未確認である。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形にそろえ、2028 年 1 月期からの新リース会計基準で見かけが変わる点は価値の計算に入れていない。今の株価に寄せてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→15.82 倍・やや楽観 PER 12.6→14.21 倍・中立 PER 12.3→12.6 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5%に quality +0.75%を足した 8.25%。個別のリスク(親会社の支配・サラダバーの運営・出店の歩留まり)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で純現金もあり、上乗せ(extra)は置かない。