結論
ICDAホールディングスは、三重県北部でホンダの新車を売る販売店を芯に、輸入車と中古車、車の解体と部品の再利用までを手がける会社だ。筆者の結論は適正の範囲である。稼ぎは安定し、資本コストを少し上回る利益を出しているが、利益の 9 割を社内にためる。ためた利益が株主に戻る道は細い。
強みは地域の厚みだ。車を売ったあとの車検と整備、下取りした車を中古車として売り、売れない車は自社で解体して部品と金属にする。1 台の車から何度も稼ぐ流れを、三重の北部で作り上げた。営業利益率は 5% 前後で、販売店としては高い水準を保ってきた。
一方で、三重の人口は減り、車は電気に変わり、メーカーがネットで直接売る動きもある。筆者は 10 年後の営業利益を 27 億円ほどと見る。利益は伸びるが、ためた利益で自己資本が膨らみ、自己資本利益率(ROE)は 7% 台に下がる。創業家が株の半分超を持ち、配当性向は 1 割と低い。株主にとっての価値は、稼ぎの伸びと、ためた現金がいつ戻るかの両方で決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ICDA は「地味だが手堅い地域の商売」だ。車を売り、直し、買い取り、最後は解体して部品にする。その流れを一つの地域で押さえ、毎年きちんと利益を出してきた。オーナーとして持つ事業としては、悪くない。
筆者がいちばん気にしているのは、ためた利益の行き先だ。配当性向は 1 割で、残りの 9 割は会社の中にたまる。店を建て、周りの販売店を買うのに使えば価値は増えるが、使い道がなければ現金として眠る。創業家が株の半分超を持つ会社では、その現金が株主に戻るかは創業家しだいだ。
今の値段は、稼ぎに比べて高くない。利益の 6〜7 倍ほどで、安定した販売店としては控えめな値付けだ。ただ、ためた利益の価値を割り引いて考えると、安全域は大きくない。還元の方針が変われば、評価は上に動く。創業家の考え一つで、株主の取り分の価値が大きく変わる会社だ。
何で稼ぐ会社か
事業は 2 つに分かれる。1 つは自動車販売関連で、売上 375 億円と全体の 96% を占める。ホンダの正規販売店「ホンダカーズ三重北」が芯で、フォルクスワーゲンとアウディの輸入車、複数のブランドを扱う中古車の店も持つ。新車を売るだけでなく、車検、点検、保険、下取りまで、車の一生に付き合う形で稼ぐ。
販売店の利益の源は、新車の値引きの外にある。新車は同じホンダの販売店どうしで値段を競うので、粗利は薄い。厚いのは整備と車検、中古車、保険の手数料だ。客を一度つかめば、数年ごとに車検と買い替えで戻ってくる。
もう 1 つは自動車リサイクルで、売上 14 億円。子会社のマーク・コーポレーションが鈴鹿で使い終わった車を解体し、部品を国内外に売り、鉄や希少金属を取り出して売る。中古車の輸出もここで行う。売上は小さいが利益率は 1 割を超え、鉄の値段で利益が振れる。
店の土地と建物は多くを自社で持つとみられ、有形固定資産は 116 億円ある。在庫の車は 74 億円で、借入 22 億円で一部を賄う。従業員は約 400 人だ。
優良さと弱いところ
強みは、三重の北部で車の一生を囲い込んだことだ。新車、整備、中古車、解体までを自社でつなぐ販売店は多くない。下取りした車を自社の中古車の店で売り、売れない車は部品と金属にする。どの段階でも利益を取れる。営業利益率は 2015 年の 2.3% から 5% 前後に上がり、2010 年以降は赤字がない。
弱さは 3 つある。第 1 に、値段を決める力はメーカーにある。ホンダの新車の値段と販売の条件はメーカーが決め、販売店は従う。第 2 に、地域が一つだ。三重の人口と景気に稼ぎが縛られる。第 3 に、資本の使い方だ。利益の 9 割を社内にためるので、自己資本が膨らみ、ROE は下がっていく。
経営は創業家の向井家が担い、株の半分超を持つ。堀、つまり他社がまねしにくい強みは、地域の客の名簿と整備の網にある。広くはないが、簡単には崩れない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の新車の販売は、年 450 万台前後で頭打ちだ。人口が減り、若い人の車離れもある。地方では車は生活の足なので台数は急には減らないが、増えもしない。三重の北部は製造業が多く、人口の減り方は全国より緩やかだ。
販売店の業界では再編が進む。後継ぎのいない地場の販売店を、上場の大手や地域の有力な販売店が買う。ICDA も 10 年で売上を 1.6 倍にしてきた。中古車では、ネットの買取と大手の買取店が値段を押し上げ、仕入れの競争が厳しい。
構造の変化は 2 つある。1 つは電気自動車だ。電気の車は部品が少なく、整備の稼ぎが減る。ただ、日本で電気の車が主流になるのは遅く、ホンダもハイブリッドを長く売る。もう 1 つはメーカーの直販だ。テスラのようにメーカーがネットで直接売れば、販売店の役割は納車と整備に細る。ホンダも国内でネット販売を試している。
10 年の流れでは、筆者は台数を今よりやや多く、値段を物価並みに置く。地域の台数は細るが、周りの販売店を買う再編で補う。整備の稼ぎは電気の車で少し減るが、10 年の内には大きくない。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、2026 年 3 月期の配当性向は 11.6% と低い。自己資本に対する配当の比率(DOE)も 1.3% だ。自社株買いは行っていない。株主優待も見当たらない。
利益の多くは店と在庫、周りの販売店の買収に回ってきた。借入は 22 億円と軽く、自己資本比率は 5 割を超える。
株主は創業家が中心で、資産管理会社のエム・エフと向井家で 5 割を超える。社員持株会も 7% ほど持つ。2026 年にはアクティビストのフラクタル・ビジネスが共同保有で 9.5% まで買い増した。還元を厚くするよう求める声が強まる可能性はあるが、創業家の同意がなければ方針は変わらない。創業家が株を手放して大手の販売店グループに売る道も、長い目では考えられる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ICDA は地域の勝ち組だ。三重の北部で新車、整備、中古車、解体をつなぎ、営業利益率は 5% 前後と販売店として高い。2010 年以降は赤字がなく、売上は 10 年で 1.6 倍になった。後継ぎのいない地場の販売店は多く、これを買えば台数は伸びる。
電気自動車の普及は日本では遅く、ホンダはハイブリッドを長く売る。整備の稼ぎは 10 年の内には大きく減らない。中古車の輸出と希少金属の回収は、リサイクルの事業に新しい稼ぎを足す。
株主の面でも変化がある。アクティビストが 9.5% まで買い増し、還元を厚くするよう求める可能性が高い。配当性向を 3 割に上げるだけで、株主の受け取りは 3 倍になる。利益の 6〜7 倍という値段は、安定した稼ぎと財務の厚さに比べて低い。
店の土地と建物の多くを自社で持つので、家賃の重さに苦しむ販売店とは違う。景気が落ちても固定費が軽く、整備の稼ぎで利益を保てる。ビッグモーターの不正のあと、地域で信頼される販売店の価値はむしろ上がった。
慎重な見方
地域が一つで、その地域は縮む。三重の人口は減り、若い人の車離れも進む。中古車ではネットの買取と大手の買取店が仕入れの値段を押し上げ、利益が薄くなる。新車の値段と条件はメーカーが決め、販売店に決める力はない。
メーカーの直販も脅威だ。ホンダは国内でネット販売を試しており、広がれば販売店の役割は納車と整備に細る。電気の車は部品が少なく、整備の稼ぎも減る。
資本の使い方も問題だ。配当性向は 1 割で、利益の 9 割を社内にためる。自己資本が膨らめば ROE は下がっていく。創業家が株の半分超を持つので、アクティビストの声も届きにくい。低い値段は、ためた利益が株主に戻らないことへの値付けでもある。
同じ領域の上場の販売店も、営業利益率は 3〜4% で、ROE は資本コストに届かない会社が多い。ICDA の 5% は地域の強さの表れだが、それが 10 年続く保証はない。リサイクルの利益は鉄の値段しだいで、景気の谷では消える。
どちらに重みを置いたか
2 つの見方は拮抗している。地域の厚みと安定した稼ぎは本物で、再編で台数を補う力もある。一方で、地域の縮みと還元の薄さは構造の話だ。中立を厚くし、楽観と悲観をほぼ同じ重みにした。ためた利益の戻りは、創業家の支配を理由に半分の価値で数えている。アクティビストの動きで還元が変われば、確率と戻り方を見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 11,878 円249 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 933 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 6,413 円135 億円、今との差 +57.4%、 期待の年率 +12.1%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 19,147 円402 億円 | 1,191 円25 億円 | +399.1% | +17.4% | 1,627 円34 億円 |
| やや楽観 | 22% | 16,445 円345 億円 | 1,048 円22 億円 | +329.3% | +15.7% | 3,848 円81 億円 |
| 中立 | 38% | 14,392 円302 億円 | 953 円20 億円 | +276.6% | +14.2% | 5,831 円122 億円 |
| やや悲観 | 22% | 4,963 円104 億円 | 857 円18 億円 | +42.8% | +3.6% | 1,281 円27 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,672 円35 億円 | 572 円12 億円 | −45.0% | −5.8% | 224 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 11,878 円249 億円 | 933 円20 億円 | +214.4% | +12.1% | 12,811 円269 億円 |
今の株価時価総額 4,075 円86 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編で台数を伸ばし、三重の外にも広がる 利益 23 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 19,147 円402 億円
販売店の再編の波に乗る筋書きだ。後継ぎのいない地場の販売店を次々に買い、三重の北部から南部や隣の県へ広がる。台数は 2 割強増え、整備の網も厚くなる。中古車は輸出と自社の解体をつないで、仕入れの競争に負けない。
営業利益率は 5.5% と過去の山の水準を保ち、営業利益は 35 億円に届く。アクティビストの声もあり、配当性向は少しずつ上がる。ROE は 8% 台で資本コストをわずかに上回る。創業家が大手の販売店グループと組む話も出て、地域の厚みに値段が付く。リサイクルも希少金属の回収で稼ぎを増やし、車の一生を囲い込む形がさらに強まる。
- 自動車販売関連:数量 16,750(販売と整備をならした車の台数(台・推定))× 価格 383(1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分))→ 売上 642 億円・営業利益 35 億円。1.675 万台(1.25 倍)× 383 万円(1.37 倍)、営業利益率 5.5%
- 自動車リサイクル:数量 25,000(使用済み車の処理台数(台・推定))× 価格 9.60(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。2.5 万台(1.25 倍)× 9.6 万円(1.37 倍)、営業利益率 12%
倍率:ROE 8.5% は k 7.5% とほぼ同じ。g 4% の正当化 PER は (1−g÷k)÷(k−g)=1÷k の 15.84 倍で、ROE が k に並ぶ会社の下限でもあるので 15.84 倍。
確率:周りの販売店の買収で売上を伸ばしてきた実績はあるが、台数を 2 割超増やすには三重の外への進出が要る。8% とした。
やや楽観 22% 地域の縮みを買収で補い、利益は 1.5 倍 利益 20 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 16,445 円345 億円
地域の縮みを、周りの販売店の買収で補って余る筋書きだ。台数は 2 割弱増え、値段は物価並みより少し上がる。整備と車検の客が増え、中古車は自社の解体と輸出で値段の競争をかわす。
営業利益率は 5.2% と今とほぼ同じで、営業利益は 31 億円ほどになる。配当性向は 1 割台のままで、利益の多くは店と買収にたまる。ROE は 7% 台後半で、資本コストに少し届かない。株主の価値は利益の伸びに沿って増えるが、ためた現金は会社の中に残る。アクティビストの声で配当は少し増えるが、方針を大きく変えるには至らない。
- 自動車販売関連:数量 15,800(販売と整備をならした車の台数(台・推定))× 価格 378(1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分))→ 売上 597 億円・営業利益 31 億円。1.58 万台(1.18 倍)× 378 万円(1.35 倍)、営業利益率 5.2%
- 自動車リサイクル:数量 23,000(使用済み車の処理台数(台・推定))× 価格 9.50(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。2.3 万台(1.15 倍)× 9.5 万円(1.36 倍)、営業利益率 11%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.35 倍、時価総額 312 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年で売上を 1.6 倍にした実績があり、再編の相手も多い。利益率を保って台数を少し伸ばす筋として 22% とした。
中立 38% 台数は少し増え、利益率を保つが ROE は下がる 利益 18 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 14,392 円302 億円
台数が少し増え、利益率を保つ筋書きだ。三重の北部の台数は細るが、周りの販売店を 1〜2 社買って 1 割増やす。値段は物価並みに上がり、整備と中古車の稼ぎも物価に沿って増える。電気の車の整備の減りは 10 年の内には小さい。
営業利益率は 5% 前後を保ち、営業利益は 27 億円ほどになる。配当性向は 1 割台のままで、利益の 9 割が社内にたまる。自己資本は倍になり、ROE は 7% 台に下がる。稼ぎは堅いが、ためた現金は創業家の判断で眠ったままになりやすい。リサイクルは鉄の値段に振れながらも、1 割前後の利益率を保つ。
- 自動車販売関連:数量 14,740(販売と整備をならした車の台数(台・推定))× 価格 375(1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分))→ 売上 553 億円・営業利益 28 億円。1.474 万台(1.10 倍)× 375 万円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 5.0%
- 自動車リサイクル:数量 22,000(使用済み車の処理台数(台・推定))× 価格 9.40(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。2.2 万台(1.10 倍)× 9.4 万円(1.34 倍)、営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.9 倍、時価総額 265 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:地域の縮みと再編による上積みが打ち消し合う落としどころ。過去 10 年の利益率の安定から、最も起こりやすい筋として 38% とした。
やや悲観 22% 地域の縮みと直販で、利益率が細る 利益 9 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 4,963 円104 億円
地域の縮みとメーカーの直販が重なる筋書きだ。三重の北部の台数は 1 割減り、周りの販売店の買収も値段が高くて進まない。ホンダがネットで直接売る形を広げ、販売店の取り分は納車と整備の手数料に細る。
中古車はネットの買取と大手の買取店に仕入れを奪われ、利益が薄くなる。店の土地と建物、人件費は固定で残るので、営業利益率は 3.5% に下がる。営業利益は 14 億円ほどで、ROE は 4% 台に落ちる。株主の価値を支えるのは、自社で持つ店の土地と、細くなった整備の稼ぎだ。配当は細り、ためた現金の多くは店の維持に消える。
- 自動車販売関連:数量 12,060(販売と整備をならした車の台数(台・推定))× 価格 364(1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分))→ 売上 439 億円・営業利益 15 億円。1.206 万台(0.90 倍)× 364 万円(1.30 倍、値段が物価に届かない)、営業利益率 3.5%
- 自動車リサイクル:数量 18,000(使用済み車の処理台数(台・推定))× 価格 8.50(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。1.8 万台(0.90 倍)× 8.5 万円(1.21 倍)、営業利益率 6%
倍率:ROE 4.2% は k 7.5% を下回る。稼ぐ力(純利益÷k ≒ 104 億円)で見て、1÷k の 11.8 倍の 7 割の 8.23 倍。
確率:三重の人口の減りとネットの買取の競争は確かに進む。ホンダの直販が広がる筋を含めて 22% とした。
悲観 10% 販売店の役割が細り、稼ぎがほぼ消える 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,672 円35 億円
販売店の役割そのものが細る筋書きだ。ホンダは直販とネットの販売を本格的に広げ、販売店は納車と整備の下請けに近くなる。電気の車が想定より早く広がり、整備の稼ぎも減る。三重の北部の台数は 4 分の 1 減る。
店の土地と建物、人件費は固定で残り、営業利益率は 1% 台に沈む。リサイクルも鉄の値段の下落で稼げない。配当は細り、還元の話どころではなくなる。株主の価値は、自社で持つ店の土地と在庫の車を売って借入を返した残りに近づく。地域の販売店グループに安く買われる道も現実味を帯びる。整備の網と客の名簿だけが、最後まで値段を保つ。
- 自動車販売関連:数量 10,050(販売と整備をならした車の台数(台・推定))× 価格 350(1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分))→ 売上 352 億円・営業利益 5 億円。1.005 万台(0.75 倍)× 350 万円(1.25 倍)、営業利益率 1.5%
- 自動車リサイクル:数量 15,000(使用済み車の処理台数(台・推定))× 価格 8.00(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。1.5 万台(0.75 倍)× 8 万円(1.14 倍)、営業利益率 0%
倍率:利益がほぼ消えるので PBR で置く。床は自社で持つ店の土地と建物、在庫の車を売って借入を返した残りの税後で、今の自己資本 117 億円の 0.30 倍の約 35 億円。 EV(時価総額+純負債 18 億円)÷営業利益は 21 倍だが、利益がほぼ消える筋書きなので資産の床で見た。
確率:2010 年以降は赤字がなく、整備の稼ぎは残りやすい。ただ直販と地域の縮みが重なれば構造的に負けるので 10% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車販売関連
ホンダの新車、VW・アウディの輸入車、中古車の販売と、車検・整備・保険などのサービス。
| 数量販売と整備をならした車の台数(台・推定) | 価格1 台あたりの売上(万円。整備・保険・中古車を按分) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 13,400 | 280 | 375 | 20 |
| 10 年後 中立 | 14,740 | 375 | 553 | 28 |
取り方:台数の開示がないため推定。セグメント売上 375 億円を、新車・輸入車・中古車と整備をならした 1 台あたり約 280 万円で割った約 1.34 万台。営業利益はセグメント利益 20.2 億円(5.4%)。
自動車リサイクル
鈴鹿オートリサイクルセンターでの使用済み車の解体、リユース部品の国内外の販売、鉄・希少金属の回収、中古車の輸出。
| 数量使用済み車の処理台数(台・推定) | 価格1 台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20,000 | 7.00 | 14 | 2 |
| 10 年後 中立 | 22,000 | 9.40 | 21 | 2 |
取り方:処理台数の開示がないため推定。セグメント売上 14 億円を、部品・金属・輸出をならした 1 台あたり約 7 万円で割った約 2 万台。営業利益はセグメント利益 1.7 億円(11.9%)。
リスクと懸念
地域の縮み
稼ぎのほぼすべてが三重の北部にある。人口が減り、若い人の車離れが進めば、新車も整備も台数が減る。周りの販売店の買収で補ってきたが、相手の値段が上がれば続かない。
メーカーの直販
ホンダは国内でネット販売を試している。メーカーが直接売る形が広がれば、販売店の取り分は納車と整備の手数料に細る。新車の値段と条件を決める力は、もともとメーカーにある。
電気自動車と整備の稼ぎ
電気の車は部品が少なく、オイル交換などの整備が減る。日本での普及は遅いが、10 年の後半に早まれば、販売店の利益の芯である整備の稼ぎが細る。
中古車の仕入れの競争
ネットの買取と大手の買取店が、下取りの値段を押し上げている。中古車の利益が薄くなれば、車の一生を囲い込む強みも弱まる。
ためた利益の行き先
配当性向は 1 割で、利益の 9 割が社内にたまる。創業家が株の半分超を持ち、還元の方針は変わりにくい。ためた現金が眠れば、ROE は下がり、株主の価値も伸びない。
今後の分かれ目
- 配当性向を 3 割以上に上げるか、自社株買いを始めたら
- ためた利益が株主に戻る証拠として、戻り方を引き上げ、評価を上に直す。
- 周りの販売店を買って、台数が 2 期続けて 5% 以上伸びたら
- 再編の効果として、やや楽観の確率を上げる。
- ホンダが国内で直販を本格的に始めたら
- 販売店の取り分が細る筋として、やや悲観に重みを移す。
- 創業家が大手の販売店グループに株を売ると決めたら
- 地域の厚みに値段が付く。帳簿に近い値段か、それ以上での買収がありうる。
- 営業利益率が 2 期続けて 4% を割ったら
- 中古車と直販の競争が効き始めた証拠として、中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 新車と中古車の販売台数、整備の売上
- 周りの販売店の買収
- ホンダの国内の販売の形(直販・ネット販売)
- 配当性向と自社株買いの方針
- アクティビストの保有比率と提案
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER を見ずに、ROE と k 7.5% から決めた。中立の ROE は 7% 台で k をわずかに下回るので、PER の上限は 1÷k の 11.8 倍で、その 8 割を使った。利益率は過去 12 年の山(5.5%)以下の 5.0% に置いた。ためた利益の現金は、創業家の支配と低い還元から戻り方を 0.5 にした。PER 6〜7 倍の今の値段は割安の根拠にしていない。新しいリース会計(2028/03 期から)で店舗の賃借が負債に載っても、10 年後の数字は今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.76→15.84 倍・やや楽観 PER 10→15.35 倍・中立 PER 9.4→14.9 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。