結論
ケーユーホールディングスは、メルセデス・ベンツや BMW などの正規ディーラーを南関東で営む自動車販売会社である。売上の 7 割が輸入車、3 割が国産中古車だ。筆者の結論は、今の値段は事業の稼ぐ力に比べて安いが、資本の使い方が変わらなければ割安は埋まりにくい、というものだ。
事業は堅い。営業利益は過去 10 年で一度も赤字がなく、利益率は 5〜6% で安定してきた。自己資本比率は 72% と厚く、借金に追われる心配はほぼ無い。
ただ、その厚さは裏返せば資本の持て余しである。自己資本は 690 億円、ROE は 8% 台で、時価総額は自己資本の半分ほどにとどまる。店舗の土地建物など設備が 480 億円あるが、それに見合う利益は出ていない。
足元の利益は下り坂だ。2026 年 3 月期の営業利益は 9% 減った。人件費と中古車の仕入れ値の上昇が重い。会社は今期も 3% 減を見込む。
一方、初めての自社株買い(約 21 億円)を実施し、還元は動き出した。BMW の販売契約が 2026 年末に満了を迎える点は気がかりだが、10 年先の価値は今の時価総額を上回ると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「儲かっていて、堅く、資本が余っている」会社に見える。事業の安定は本物で、赤字の期が無く、借金も重くない。問題は稼いだ利益の使い道だ。
持ち主の手元に残る利益で考えると、数字は見た目より小さい。利益の大半は店舗の土地建物と在庫に再投資され、その投資の収益性は ROE で 8% 台にとどまる。資本コストの 8.5% をわずかに割る。つまり、利益をためても価値はそれほど増えない。
堀は中程度だ。インポーターとの契約が守りの源だが、契約は 1 年更新のものも多く、メーカーの意向ひとつで条件が変わる。これは経営が自分では決められない弱さである。
安全域はそれなりにある。時価総額は自己資本の半分で、店舗の土地だけでも相当の価値がある。ただし、土地を売って返すわけではなく、そこから取り出せる価値は限られる。
筆者は、財務の堅さを評価しつつ、資本の使い方が変わらない限り割安は埋まりにくい銘柄だと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、新車と中古車の販売益に、整備・修理と保険などの手数料が乗る形である。2026 年 3 月期の売上は 1,691 億円。内訳は商品の売上が約 1,440 億円、修理が約 180 億円、手数料が約 70 億円だ。営業利益は 84 億円、営業利益率は 5.0%。
輸入車ディーラー事業は売上の 69% で、営業利益は約 49 億円。メルセデス・ベンツ(AMG・EQ・smart を含む)、BMW と MINI、ジープ、キャデラック、シボレーを扱う。フォルクスワーゲンは 2025 年 7 月に事業を譲渡した。従業員は約 900 人と、会社の主力である。
国産車販売事業は売上の 31% で、営業利益は約 22 億円。国産の中古車が中心で、整備も手がける。関東の外にも新店を出し、今後の設備投資の中心になる。
2 つの事業の利益を足すと 71 億円で、連結の営業利益 84 億円との差は 13 億円ある。この差は前の年とほぼ同じで、安定した収益だが、内訳は開示に無い。
店舗は自社の土地建物が多く、有形固定資産は 480 億円ある。賃借料は年 14 億円ほど。連結の従業員は約 1,460 人。為替は 1 ドル 150 円で置くので、円安による輸入車の値上げの影響は織り込まない。
優良さと弱いところ
堀は中程度で、主な源泉はメーカー(インポーター)との販売契約である。契約は店舗の立地・投資・人材を守る一種の参入障壁になる。メルセデス・ベンツ日本は 1 年ごとの更新、BMW は 2026 年末までの契約、GM ジャパンは 2027 年末まで、ステランティスは自動更新だ。
強みは財務の堅さと安定である。過去 10 年、営業利益率は 5〜6% 台で、赤字の期は無かった。リーマン危機の谷でも営業利益率は 3% 台を保った。借金への依存が小さく、景気の悪化で資金繰りに窮する姿は想像しにくい。
弱みは 2 つある。1 つは、値段をメーカーの設定価格に縛られ、自分で決められる幅が狭いことだ。もう 1 つは、人手がかかる事業で、営業利益率が人件費の上昇に直撃されることだ。2026 年 3 月期の国産車事業の利益が 18% 減ったのも、この組み合わせによる。
資本の使い方には課題が残る。ROE は過去 10 年の中央値が 9.6% と悪くないが、直近は 8% 台に下がった。自己資本の厚さがそのまま ROE を押し下げている。
店舗数や出店の方針、主要ブランドの更新は、これから最も効く判断になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の新車市場は年約 450 万台で、人口減とともに横ばいから微減に向かう。ただし輸入車は年約 23 万台と小さく、高価格帯のため景気に強い。ケーユーのような正規ディーラーは、このニッチの中で台数より単価で稼ぐ。
追い風は、輸入車の高価格化と、中古車の需要の底堅さだ。国内の中古車は年約 650 万台が流通し、新車の納期や値上がりを避けた買い替えが続く。
向かい風は、電動化と人手である。中国メーカーなどの電気自動車が日本市場に入り、ブランドの序列が揺らぎ始めた。メーカー系の直販やサブスクリプションも広がり、ディーラーの取り分を削る可能性がある。整備の現場では人手不足で、賃金が上がり続ける。
競合は、各ブランドの正規ディーラー同士で、ヤナセ(メルセデス・ベンツ)やBMW 系列の大手がいる。さらに、中古車大手のネクステージやガリバーも国産中古車で競う。
業界の再編も進む。ビッグモーターの不祥事以降、上位の販売会社が店舗を取り込んでおり、ケーユーも国産車を中心に出店を続ける。輸入車の分野では、正規ディーラーの数がメーカーの方針で絞られ、残った店が顧客を取り込む流れも見える。
資本政策と M&A
資本政策は、動き始めたばかりである。配当性向 30% を当面の目途とし、2026 年 3 月期は配当が約 21 億円、初めての自社株買いが約 21 億円で、合計 42 億円を株主に返した。純利益 57 億円の 7 割を超える水準だ。
自社株は過去に積み上げてきており、自己株式は 60 億円ある。厚い自己資本と低い PBR(自己資本の半分ほどの時価総額)を考えれば、さらなる自社株買いの余地は大きい。ただし、次の実施を示す方針は無い。
投資は店舗中心だ。2025 年度は 21 億円で、輸入車の店舗が 15 億円。今後は国産車の新設と、輸入車の改装などに約 33 億円を自己資金で充てる計画で、大型の買収は見当たらない。
大株主は有限会社ヤマサンが 28.5%、ラグナが 11.2%、社長が 3.2% で、安定株主が厚い。TOB で買われる側としては、時価総額が小さく自己資本が厚いため、買い手には魅力的に映る。
10 年の還元は、配当性向 30% に自社株買いを足し、純利益の 45% ほどで置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
これほど堅い会社が、自己資本の半分の値段で売られているのは行き過ぎだ。過去 10 年、赤字は一度も無く、営業利益率は 5〜6% で安定してきた。自己資本比率は 72% と厚く、景気が悪化しても生き残る力がある。
資本の使い方が変わり始めた。初めての自社株買いを実施し、配当と合わせて純利益の 7 割を返した。自己株式 60 億円を持つ会社が、さらに買い進める余地は大きい。ROE は自己資本を減らせば改善する。
輸入車の価格は上がり続ける。高価格帯は景気に強く、台数が増え、単価も上がっているという会社自身の説明を信じてよい。国産中古車は関東の外へ出店し、成長の余地が大きい。
足元の下り坂も一時的だ。第 1 四半期は経常利益が 25% 伸びた。人件費の上昇は価格に転嫁され、中古車オークションの相場も落ち着く。
大株主が安定しているので、敵対的な買収はまず無い。同時に、PBR が 0.5 倍台の会社は、東証の要請で資本の見直しを迫られる。
慎重な見方
安定は資本の持て余しの裏返しだ。自己資本 690 億円のうち、480 億円が店舗の土地建物に固定され、ROE は資本コストを割る水準にある。PBR が低いのは、資本を使いこなせていないという市場の判断だ。
利益は下り坂にある。2026 年 3 月期の営業利益は 9% 減り、今期も 3% 減の予想だ。人件費と中古車の仕入れ値の上昇が、物価並みの値上げで取り返せていない。国産車事業の利益は 18% 減った。
メーカー契約が最大の弱点だ。BMW の契約は 2026 年末に満了し、メルセデス・ベンツは 1 年ごとの更新だ。ディーラーは契約を失えば売るものがなくなる。電動化の波で、メーカーが直販に傾く可能性もある。
自社株買いは 1 回きりで、方針も示されていない。配当性向 30% は据え置きで、資本の使い方を改める意思は見えない。筆頭株主が 28% を持つ体制では、少数株主の声は届きにくい。
中計に数値目標が無いのも、変える気が薄い証拠だ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、財務の堅さと還元の動き出しを正しく捉えている。慎重な見方は、ROE の低さと契約への依存、利益の下り坂を冷静に見ている。
勝つのはわずかに慎重な見方である。事業は壊れにくいが、価値が増えにくい会社だと判断し、確率は中立を中心に置いた。悲観の厚みは 12%、やや悲観を 25% とした。10 年は契約の失効と景気後退が重なる構造的な負けを意識して、悲観側をやや厚めにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,692 円853 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 887 円281 億円)。 今の値に割り戻すと 1,924 円609 億円、今との差 +61.4%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,729 円1,498 億円 | 1,358 円430 億円 | +410.6% | +17.7% | 426 円135 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,741 円1,185 億円 | 1,121 円355 億円 | +307.9% | +15.1% | 972 円308 億円 |
| 中立 | 36% | 3,179 円1,007 億円 | 916 円290 億円 | +243.5% | +13.1% | 1,474 円467 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,587 円503 億円 | 726 円230 億円 | +94.0% | +6.9% | 578 円183 億円 |
| 悲観 | 12% | 596 円189 億円 | 474 円150 億円 | −10.3% | −1.1% | 128 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,692 円853 億円 | 887 円281 億円 | +200.3% | +11.6% | 3,579 円1,134 億円 |
今の株価時価総額 1,192 円378 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 出店と買収が当たり、ROE が 10% 近くに 利益 99 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 4,729 円1,498 億円
10 年後のケーユーは、首都圏の輸入車ディーラーとして頭ひとつ抜けた存在になっている。高価格帯の輸入車は景気に強く、単価の上昇が台数の減少を補う。電動化に合わせて充電設備と整備の技術を早く整え、メルセデス・ベンツと BMW の契約を更新して店舗数を増やす。国産車は関東圏外の新店が当たり、中古車の取扱高が 1.5 倍になる。営業利益率は 5% 台を保ち、営業利益は 150 億円近くになる。厚い自己資本の一部が自社株買いに回り、ROE は 10% に近づく。市場はこの会社を、資本の使い方を改めた優良な販売会社として評価する。
- 輸入車ディーラー事業:数量 1,403(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,880 億円・営業利益 86 億円。取扱高の実質 1403 億円、営業利益率 4.6%(輸入車の正規ディーラー)
- 国産車販売事業:数量 783(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,049 億円・営業利益 47 億円。取扱高の実質 783 億円、営業利益率 4.5%(国産中古車と整備)
倍率:事業の純利益 99 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.13 倍、時価総額 1,498 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸入車の高価格化が続き、国産の新店が育ち、余った資本が自社株買いに回る強気の道。ただし自動車は景気とメーカーの方針に左右されるので、確率は 1 割に届かない。
やや楽観 20% 輸入車が堅調で、国産が地方へ広がる 利益 85 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 3,741 円1,185 億円
輸入車は台数が 1 割ほど増え、単価も物価並みに上がる。国産中古車は新店が育ち、取扱高が 3 割増える。人件費の上昇は価格に転嫁でき、利益率は 4% 台前半を保つ。営業利益は 125 億円ほどで、今の 1.5 倍になる。配当性向 30% に加えて自社株買いが定期的に入り、自己資本の積み上がりが抑えられる。ROE は 8% 台で、資本コストと並ぶ。大きな成功ではないが、堅実に伸びる筋書きである。主要ブランドの契約は更新され、BMW の契約も予定どおり延びる。国産車の新店は 3 年ほどで黒字になり、整備の売上が利益を支える。店舗の改装投資は自己資金で賄え、借金は増えない。
- 輸入車ディーラー事業:数量 1,309(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,754 億円・営業利益 75 億円。取扱高の実質 1309 億円、営業利益率 4.3%(輸入車の正規ディーラー)
- 国産車販売事業:数量 679(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 909 億円・営業利益 38 億円。取扱高の実質 679 億円、営業利益率 4.2%(国産中古車と整備)
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.94 倍、時価総額 1,185 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸入車の台数・単価が堅調で、国産中古車が地方でも広がる。還元も厚くなる道。起こりやすさは 2 割。
中立 36% 利益は物価並みに伸び、ROE は 7% 台 利益 74 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,179 円1,007 億円
契約は更新され、輸入車の台数は 5% 増にとどまる。単価は物価並みに 1.34 倍になる。国産中古車は新店で台数が 15% 増え、整備の売上も伸びる。ただし人件費と中古車の仕入れ値が上がり、利益率は今より少し下がる。営業利益は 110 億円で、売上の伸びほどには増えない。還元は配当性向 30% に自社株買いを足して純利益の 45% ほど。自己資本が厚いまま残り、ROE は 7% 台にとどまる。資本の使い方が変わらない限り、評価は上がりにくい。主要ブランドの契約は更新され、店舗も維持できるが、成長の勢いは乏しい。堅実だが、驚きの無い筋書きである。電動化は進むものの、輸入車の整備の仕事はまだ残り、売上を支える。
- 輸入車ディーラー事業:数量 1,228(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,645 億円・営業利益 66 億円。取扱高の実質 1228 億円、営業利益率 4.0%(輸入車の正規ディーラー)
- 国産車販売事業:数量 600(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 804 億円・営業利益 31 億円。取扱高の実質 600 億円、営業利益率 3.8%(国産中古車と整備)
倍率:事業の純利益 74 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 986 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:契約は更新され、台数はほぼ横ばい、単価は物価並みに上がる。人件費の上昇で利益率は少し下がる。最も起こりやすい道として 4 割弱を置く。
やや悲観 25% 契約更新は通るが、利益率が細る 利益 58 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 1,587 円503 億円
人件費と中古車の仕入れ値の上昇が重く、価格に転嫁しきれない。輸入車は中国メーカーの電気自動車などとの競争で台数が 5% 減る。国産中古車は横ばいにとどまり、新店の収益化が遅れる。営業利益は 85 億円で、今の水準をほぼ保つのがやっとだ。配当性向 30% は維持するが、自社株買いは細る。自己資本は積み上がり、ROE は 5% 台に下がる。資本コストを下回る状態が続き、評価は低いままになる。契約を失うことは無いが、投資の回収が遅れ、新店の一部は閉じることになる。株主から見れば、安全だが報われない会社として、長く放置される姿である。
- 輸入車ディーラー事業:数量 1,111(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,488 億円・営業利益 52 億円。取扱高の実質 1110 億円、営業利益率 3.5%(輸入車の正規ディーラー)
- 国産車販売事業:数量 522(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 699 億円・営業利益 21 億円。取扱高の実質 522 億円、営業利益率 3.0%(国産中古車と整備)
倍率:事業の純利益 約 57 億円・事業 ROE 約 5.6% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。新しく投じる資本の稼ぎが資本コスト未満になる筋書きのため、上限の約 6.5 割の 7.6 倍に置いた。
確率:人件費と中古車の仕入れ値の上昇を価格に転嫁しきれず、利益率が細る。電動化で輸入車の競争も激しくなる。慎重な見方がやや強いと見て 25% を置く。
悲観 12% ブランド契約を失い、人件費が重くなる 利益 32 億円 · PER 5.9 倍 · 株価時価総額 596 円189 億円
構造的に負ける筋書きである。BMW など主要ブランドの契約が更新されず、あるいは更新されても投資や販売目標の条件が重くなる。輸入車の台数は 2 割減り、店舗の固定費と家賃が重くのしかかる。国産中古車は競争が激しくなり、利益率が 1% 台に落ちる。営業利益は 47 億円と、今の 6 割に届かない。新店と改装の投資は回収できず、減損が 60 億円ほど出る。配当性向 30% は守るが自社株買いは止まる。保有する店舗の土地は残るものの、稼ぐ力は大きく細る。社員の流出も続き、整備の人手が足りなくなって、さらに売上が落ちる悪循環に入る。経営は店舗の売却と人員の整理に追われ、成長に回せる資金は無くなる。
- 輸入車ディーラー事業:数量 935(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,253 億円・営業利益 28 億円。取扱高の実質 935 億円、営業利益率 2.2%(輸入車の正規ディーラー)
- 国産車販売事業:数量 470(取扱高(億円・今の値段の実質))× 価格 134.0%(値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 630 億円・営業利益 9 億円。取扱高の実質 470 億円、営業利益率 1.5%(国産中古車と整備)
倍率:事業の純利益 約 31 億円・事業 ROE 約 3.4% は k 7.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8 倍。構造的に負け、利益も薄いので上限の約 5 割の 5.9 倍に置いた。
確率:BMW など主要ブランドの契約を更新できないか、条件が厳しくなり、同時に景気後退で台数が落ちる。10 年は何が起きてもおかしくないので 1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
輸入車ディーラー事業
メルセデス・ベンツ、BMW・MINI、ジープ、キャデラックなどの正規ディーラー。新車・中古車・整備・保険。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,169 | 100.0% | 1,169 | 49 |
| 10 年後 中立 | 1,228 | 134.0% | 1,645 | 66 |
取り方:推定。取扱高 1,169 億円(実質)。開示は金額だけで台数は無い。国内の外国メーカー車の新車は年約 23 万台で、人口減でも高価格帯は崩れにくい。台数と単価がともに増えたと会社は説明している。
国産車販売事業
国産中古車の販売が中心。整備・車検も行う。関東圏外へ新店を出している。
| 数量取扱高(億円・今の値段の実質) | 価格値段の指数(今 = 1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 522 | 100.0% | 522 | 22 |
| 10 年後 中立 | 600 | 134.0% | 804 | 31 |
取り方:推定。取扱高 522 億円(実質)。国内の中古車は年約 650 万台が流通する。小売台数は増えたが、中古車オークション相場の高騰と人件費で利益率が下がった。
リスクと懸念
主要ブランドの販売契約
輸入車はメルセデス・ベンツ日本が 1 年更新、BMW が 2026 年末で契約満了、GM ジャパンが 2027 年末まで。契約を失えば売るものが無くなり、店舗が遊ぶ。更新条件が厳しくなれば、投資負担が重くなる。
電動化とメーカー直販
電気自動車では、メーカーが直販やサブスクリプションを広げやすい。ディーラーの口銭が削られ、整備の売上も減る可能性がある。中国メーカーの参入で、輸入車のブランドの序列も揺らぐ。
人件費と人手不足
整備と販売は人手がかかる事業で、賃金の上昇が利益率を直撃する。2026 年 3 月期は国産車事業の利益が 18% 減った。少子化で人材の取り合いが続く。
南関東への集中と災害
店舗は南関東に集まる。首都直下地震など大きな災害では、展示車と店舗の被害が一度に出る。保険でどこまで補えるかは災害の規模次第である。
資本の非効率
自己資本 690 億円のうち有形固定資産が 480 億円で、ROE は 8% 台と資本コストを割りかねない。資本の使い方が変わらなければ、評価は低いままになる。
中古車相場の変動と在庫
中古車オークションの相場が高騰すると、仕入れ値が上がり利益率が下がる。在庫は 226 億円と大きく、相場が急に下がれば評価損が出る。
今後の分かれ目
- BMW の販売契約が更新されなかったら
- 輸入車の台数が 2 割ほど減り、店舗の固定費と家賃が重くのしかかる。悲観の確率を引き上げる材料である。
- 2027 年以降も自社株買いを続け、ROE が 10% に近づいたら
- 資本の使い方が変わった証拠として、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益率が 4% を割ったら
- 人件費と仕入れ値の上昇を価格に転嫁できなくなった証拠で、やや悲観の確率を上げる。
- 輸入車の電動化でメーカーが直販を広げたら
- ディーラーの口銭と整備の収益が減る。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる材料になる。
- 国産車の新店が計画どおり黒字化し、取扱高が伸びたら
- 国産車事業の利益率が 4% 台に戻り、やや楽観の確率を上げる根拠になる。
- 大株主による TOB・非公開化の提案が出たら
- 自己資本の半分という値段が見直される可能性がある。ただし本質価値は提示価格でなく、稼ぐ力で決める。
見ておくもの
- BMW・メルセデス・ベンツ日本との契約更新
- 営業利益率(4% を割らないか)
- 自社株買いの継続と ROE
- 国産車の新店の収益化
- 人件費と中古車オークション相場
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE・資本コスト 7.5%・長期の成長率 4.0% から利益ベースの上限(ROE が k 以下の筋書きは 1÷k=11.8 倍)を出し、その 5〜9.3 割に置いた。今の PER や PBR、同業の倍率には寄せていない。PBR は自己資本の半分ほどだが、それは割安の根拠にしていない。中立の ROE は 7% 台で資本コストを下回る前提とした。セグメントは開示が金額だけなので「取扱高(実質)× 値段の指数」で置き、売上と数量が同じ値になる注意が出る。セグメント利益の合計と連結営業利益の差 13 億円は、前年も同じ規模なので調整の収益として物価で増やさず据え置いた。賃借料は年 14 億円と小さく、新リース会計基準(2028/03 期から)は今と同じ形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→15.13 倍・やや楽観 PER 10→13.94 倍・中立 PER 8.8→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスク(契約の失効)は筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。