結論
サガミホールディングスは、名古屋発の和食麺チェーンである。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。いちばんの理由は、足元の利益が山にあることにある。
稼ぎの中心は「和食麺処サガミ」と、和食ファミレスの「味の民芸」。国内に270店ほどを持ち、売上は約390億円まで戻った。直近の営業利益率は7.6%だが、10年前は3%前後で、赤字の期も何度もある。会社自身が今期の減益を見込んでいる。人件費と家賃が重い店舗型の外食で、この利益率を保ち続けるのは難しい。
10年先の中立は、店の数がほぼ横ばいで、値上げは物価並みにとどまる姿だ。営業利益は30億円に届かず、ROEは6%ほどにしかならない。資本コストに届かない会社に、高い倍率は付けられない。
強みは財務の堅さと地元の信頼で、簡単に傾く会社ではない。ただ、堅いことと、山の利益に高い値段を払うことは別の話だ。中立でも10年後の時価総額は今の4分の1ほどで、還元を足しても今の値段を取り返せない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「いい会社だが、安くない」である。
まず、事業の質を見る。堀は地域の信頼と店舗網で、そばと和食という息の長い商品だ。10年後も店はある。ただし、儲けの厚みは普通の外食にとどまる。ROEが5%に届かない期が長く、株主のお金を増やす力は強くない。
次に、資本の使い方を見る。現金が積み上がり、出店は人手不足で進まない。お金を預かる側として、使い道が少ないのは健全だが、株主から見れば眠る資本である。配当を増やすか、よい出店先を見つけるか、どちらかの決断が要る。
そして、いちばん大事な値段だ。直近の利益は山で、会社自身が今期の減益を見込む。山の利益に、高い倍率を払えば、割高になる。10年の中立では、営業利益は30億円に届かず、ROEは6%ほどで、資本コストを下回る。この水準の会社に払ってよい値段は、今の値段のずっと下だ。
安全域がない。堅い財務は、損をしにくい理由にはなるが、得をする理由にはならない。わかりやすい事業なので確信度は高いが、結論は割高である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は単純だ。店でそばや和食を出し、客が払う代金がそのまま売上になる。名古屋で1970年に生まれ、東海地区を軸に関西・関東・北陸へ広げてきた。ベトナムとイタリアにも店がある。
看板は2つある。「和食麺処サガミ」は、そばを軸に和食の定食や季節の膳を出す店だ。客層は家族連れと高齢者が厚いと筆者はみる。「味の民芸」は、より大きな店で和食の食事や宴会を受けるファミレスに近い。ここに十割そばの「長助」、「どんどん庵」、「びんむぎ」などが加わる。
ここでは3つに分けて見る。麺処サガミと長助、味の民芸、そしてそれ以外(どんどん庵・びんむぎ・海外)だ。会社は業態別の売上を開示していない。店数274と売上394億円から、約175店254億円・55店88億円・44店52億円と割ったのは筆者の推定である。麺処サガミ系が売上の6割強を占めるとみる。
利益は、客数と客単価から、人件費と家賃を引いた残りである。店は賃借が多く、家賃は売上の6〜7%ほどと推定する。売上が伸びれば利益は大きく伸び、落ちれば一気に削られる。この仕組みが、赤字の期を何度も生んできた。
優良さと弱いところ
堀は地域の信頼と、東海に密に張った店舗網だ。ただ、鉄壁とは言えない。
そばと和食は、家族三世代で行ける安心感がある。減塩や健康を意識したメニューにも早くから手をつけた。名古屋周辺でサガミの名を知らない人は少ないだろう。これは値上げをしても客が戻りやすいという形で効く。一方で、そばやうどんの店は全国で減り続けており、業態そのものが追い風ではない。
弱点は利益の薄さと、人の確保だ。過去10年のROEの中央値は5%に届かない。営業利益率が7%台に乗ったのは直近だけで、その前は3%前後か赤字だった。前の中計では、出店が計画に届かなかった。理由は店で働く人が足りなかったからだと会社が認めている。出店したくても人が来ない。これは外食の成長の天井を決める条件である。
財務は堅い。自己資本比率は7割を超え、純現金も45億円ある。ただ、店の家賃という固定の約束が重なるので、見かけほど強くはない。
経営は、前の中計の目標を大きく上回った。売上は335億円の目標に対し394億円、営業利益は18.5億円に対し29.8億円だ。値上げと客数の戻りが重なった結果で、評価できる。ただし、これが山であることは変わらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
そば・うどんの専門店は、数の減る市場だ。店は2006年の約3万4000から、2021年には約2万3000弱へ減ったと、経済センサスを引いた記事にある。市場規模は1兆円強で、ほぼ横ばいか縮小の形だ。人口減と高齢化の影響を、そのまま受ける。
その中で、勝つ会社は決まっている。丸亀製麺を持つトリドールのように、セルフ方式と大量出店で規模を取る会社だ。回転の速いセルフうどんが、そば店の客を少しずつ奪ってきた。サガミは、座って食べる和食と麺で、違う客を取りにいく。和食ファミレスでは、すかいらーくの夢庵や、和食さとと競う。
これから10年、外食は人件費の上昇と戦うことになる。最低賃金は上がり続け、人は集まりにくい。セルフレジや配膳ロボットで吸収できる会社と、できない会社に分かれる。小さな会社は、設備の投資負担が相対的に重い。
数量は、人口減で国内は0.9〜1.05倍が普通だ。サガミも、店数をほぼ維持し、客数は少しずつ減ると見るのが自然である。値上げは物価並みの10年で1.34倍を基本にした。そばや和食は、値上げが通りやすい業態ではあるが、客が減る力も同時に働く。
外食全体の10年の見通しは、業種ノートの前提どおりだ。国内は店数が飽和に近づき、成長は海外か、取れるシェアか、M&Aにしかない。サガミの海外は、まだ店数で見て一桁台で、利益を左右する大きさではない。
資本政策と M&A
還元は安定配当が中心だ。会社は前の中計で「収益性改善による安定配当」を掲げた。配当性向は3割前後と推定する。自社株買いの方針は、確認できなかった。
前の3か年で、75億円を投資に回す計画だった。内訳はスマート化10億円、既存店15億円、新店50億円。出店は人手不足で届かなかったので、お金は余りやすい。自己資本比率が7割を超え、純現金もあるのは、その表れだ。ROEが低いのは、使い道のない現金が積み上がっているせいでもある。
2026年7月には株式分割(1株を2株に)と、期末配当予想の修正を決めた。優待は、1,000株以上で年3万円分の食事券が出る。優待は個人株主を呼ぶ道具で、会社の稼ぎには効かない。
大株主には、信託銀行のほか、昭和産業、アサヒビール、愛知銀行が並ぶ。仕入れや取引の関係先が、安定株主として厚みを持つ。創業家などの強い支配株主はいない。
M&Aは、中計で「再成長」の手段に挙げられている。ただ、過去の実績は目立たない。買収で成長するタイプの会社ではない。TOBの可能性はkabufuの参考値で16.8%だが、時価総額が700億円近くあり、安定株主も多い。筆者は、買収の期待を価値に入れていない。
点検済み(割高の見落とし点検 2026-10-19):起点の営業利益 30 億円は山として中立で 28 億円に戻し、株数は 2026 年 7 月の株式分割後、純現金 45 億円は悲観の床に入れた。倍率は ROE 5.8% < k で 1÷k の 8 割。
株主優待(現物の還元):年およそ3億円を会社の費用ベースで見込む(優待(100株で年数千円)×優待株主約2万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
サガミは、人の足りない外食で、地域の信頼を武器に静かに伸びる会社だ。名古屋周辺での知名度は高く、高齢の客が増える日本では、座って食べられる和食と麺の店が居場所を保つ。値上げをしても、家族三世代で通う客は離れにくい。直近の営業利益率7.6%は、中計の目標を大きく超えた。これは一過性ではなく、値上げと客数が同時に戻った結果であり、店の運営が上手くなった証拠でもある。
出店が進まなかったのは、人が足りなかったからだ。ここが解ければ、店を増やせる。セルフレジや配膳ロボット、スマート化への投資で、少ない人数でも回る店を作れば、出店のペースは上がる。十割そばの長助は、そば好きの客に刺さる新業態で、関東や関西の駅前に出せる余地がある。
財務は、自己資本比率7割超で、純現金もある。人手が確保できれば、出店資金に困らない。配当も増やせる余地が大きい。ROEは今の8%台から、利益率の維持と出店でさらに上がる。小さな会社ほど、一つの業態がうまくいくと利益は大きく伸びる。10年後に営業利益が45億円になる姿は、無理のある夢ではない。
慎重な見方
今の利益は山だ。10年前は営業利益率が3%前後で、赤字の期もあった。7.6%は例外で、会社も今期は24億円への減益を見込んでいる。第1四半期は売上が増えたのに営業利益は13%減った。これは、人件費と食材費が、値上げを上回って増えている印象を与える。
店で働く人が確保できない問題は、構造的だ。前の中計でも出店が届かなかった。人が足りない店を増やせば、サービスが落ち、客が離れる。賃金を上げれば、利益が削られる。
そばや和食の専門店は、全国で店が減っている。高齢の客が主力だとすれば、10年後には客層そのものが細る。丸亀製麺のようなセルフ方式は、安く速く、若い客を取っていく。名古屋の地元の知名度は、新しい世代には効きにくい。
店は賃借が多く、家賃は固定で払い続ける。売上が落ちれば、家賃の重さで利益が急に消える。純現金45億円は、約120億円と推定する家賃の約束に比べれば、見かけほど厚くない。
中立でも、ROEは6%ほど。資本コストに届かない会社は、ためた利益が額面より小さい価値しか持たない。今のPERは40倍を超え、これは10年先まで高成長が続く会社の値付けである。そんな会社ではない。
どちらに重みを置いたか
利益の質では、慎重な見方が強い。山の利益、人手不足、減っていく業態、固定の家賃のどれもが、10年の道のりでは利益を削る方向に効く。強気の見方の、人が足りなければ出せないという裏返しの条件も、そのまま弱みである。
ただ、財務が堅く、中計の目標を超えた実力は本物なので、倒れる筋書きの確率は12%にとどめた。やや悲観を26%と厚く置き、中立は34%で、楽観側は合わせて28%とした。強気の言い分は、上振れの形としては成り立つが、中心の筋書きにはしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 350 円212 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 122 円74 億円)。 今の値に割り戻すと 239 円145 億円、今との差 −78.9%、 期待の年率 −8.4%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 613 円371 億円 | 190 円115 億円 | −29.3% | −3.4% | 64 円39 億円 |
| やや楽観 | 20% | 506 円307 億円 | 157 円95 億円 | −41.6% | −5.2% | 133 円80 億円 |
| 中立 | 34% | 404 円245 億円 | 132 円80 億円 | −52.8% | −7.2% | 182 円110 億円 |
| やや悲観 | 26% | 205 円124 億円 | 102 円62 億円 | −72.9% | −12.3% | 80 円48 億円 |
| 悲観 | 12% | 75 円45 億円 | 33 円20 億円 | −90.5% | −21.0% | 13 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 350 円212 億円 | 122 円74 億円 | −58.4% | −8.4% | 472 円286 億円 |
今の株価時価総額 1,135 円687 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 人手の壁を越えて出店が進み、利益率も保つ 利益 29 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 613 円371 億円
人手の壁が解ける。セルフレジや配膳ロボットなどの投資で、少ない人数で回る店ができ、十割そばの長助や、どんどん庵が関東・関西の駅前に出ていく。麺処サガミ系は店が約175から195に増え、客も安定する。値上げは物価より少し上の1.4倍まで通る。営業利益率は、山の7.6%を保ち、事業全体で7%台になる。味の民芸も、改装で単価が上がり、5%台の利益を出す。ベトナムなど海外は、小さいながら利益に変わる。10年後の営業利益は約45億円。10年間の純利益は合計で約220億円となり、配当は4割近くに増やせる。ROEは9%近くに上がり、資本コストをわずかに超える。ここまでうまくいけば、小さな外食としては優等生である。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食):数量 195(店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映))× 価格 2.03(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 396 億円・営業利益 32 億円。営業利益率8%
- 味の民芸(和食ファミレス):数量 55.0(店数換算の来店量(店))× 価格 2.21(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 121 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.5%
- その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか):数量 62.0(店数換算の来店量(店))× 価格 1.58(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 98 億円・営業利益 7 億円。営業利益率7%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.28 倍、時価総額 356 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の最大の障害は人手で、前の中計でも解けなかった。それが解け、しかも利益率も保つ組み合わせは、起こりにくいので8%にとどめた。
やや楽観 20% 出店が少し進み、利益率は山からやや下がる 利益 23 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 506 円307 億円
値上げは通り、客数もおおむね戻る。出店は人手の範囲で少しだけ進み、麺処サガミ系は店が約185になる。ただ、人件費も同じペースで上がるため、山の7.6%には戻らない。事業全体の営業利益率は6%台後半で、営業利益は約37億円。味の民芸は小さく改装を続け、利益率は4%台にとどまる。海外やその他の業態は、数店の増加にとどまる。10年間の純利益は合計で約185億円。配当は3割台半ばで、自己資本は約320億円に積み上がる。ROEは7%台で、資本コストにはまだ届かない。財務の堅さと地元の信頼は保たれ、安定した地域チェーンとして評価される10年になる。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食):数量 185(店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映))× 価格 1.99(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 368 億円・営業利益 27 億円。営業利益率7.2%
- 味の民芸(和食ファミレス):数量 54.0(店数換算の来店量(店))× 価格 2.18(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 118 億円・営業利益 5 億円。営業利益率4.5%
- その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか):数量 55.0(店数換算の来店量(店))× 価格 1.58(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 87 億円・営業利益 5 億円。営業利益率6%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 281 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと客数の戻りが続く可能性は十分あるが、山の利益率7.6%は保てない。出店が少し進む程度の上振れとして20%を置いた。
中立 34% 店数は横ばい、値上げは物価並みで、薄い利益の地域チェーンに戻る 利益 17 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 404 円245 億円
店数はほぼ横ばいで推移する。麺処サガミ系は約172店、味の民芸は閉店が少し先行して約52店。新店は出すが、同じ数だけ古い店を閉じる。客数は人口減で少しずつ細り、値上げは物価並みに通る。山の7.6%の利益率は、人件費と食材費の上昇に押されて、事業全体で5%台半ばへ戻る。営業利益は約28億円で、今の30億円とほぼ変わらない。物価の3%が10年積み上がっても、利益が増えないということだ。純利益は約17億円、10年間の合計は約150億円。配当は3割ほどで、自己資本は約300億円になるが、ROEは6%に届かない。堅実に続くが、株主のお金を増やす力は弱いままの10年である。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食):数量 172(店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映))× 価格 1.94(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 335 億円・営業利益 21 億円。営業利益率6.3%
- 味の民芸(和食ファミレス):数量 52.0(店数換算の来店量(店))× 価格 2.14(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 111 億円・営業利益 4 億円。営業利益率3.5%
- その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか):数量 48.0(店数換算の来店量(店))× 価格 1.58(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。営業利益率4.5%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 210 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:店数は維持し、値上げは物価並みという、業種の中心値に合わせた筋書き。利益率は過去の3%と直近の7.6%の間の6%弱で、34%を置いた。
やや悲観 26% 人件費と家賃に押され、利益率が3%台に戻る 利益 11 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 205 円124 億円
最低賃金の上昇と人手不足が、値上げの力を上回って続く。麺処サガミ系は約160店に減り、客数も減る。味の民芸は不採算店の閉鎖が進み、約45店になる。値上げは、競合や客の財布に押されて、物価に届かず1.3倍にとどまる。営業利益率は、10年前の水準に近い3%台前半に戻り、営業利益は約15億円。家賃は売上ほど下がらず、固定費として重くのしかかる。純利益は約10億円まで落ちる。配当は何とか維持するが、自己資本の伸びは小さく、ROEは4%になる。倒れはしないが、成長も株主への見返りもない、じり貧の地域チェーンになる。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に22億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食):数量 160(店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映))× 価格 1.89(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 302 億円・営業利益 12 億円。営業利益率4%
- 味の民芸(和食ファミレス):数量 45.0(店数換算の来店量(店))× 価格 2.08(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 94 億円・営業利益 1 億円。営業利益率1.5%
- その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか):数量 42.0(店数換算の来店量(店))× 価格 1.50(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 63 億円・営業利益 2 億円。営業利益率2.5%
倍率:ROE 4.0%(純利益 10.5 億円 ÷ 自己資本 262 億円)が k 8.3% を大きく下回る。上限 1÷k の 12.0 倍に近づけず、稼ぐ力が細り、家賃が固定費として残る筋書きなので、7 割に引き上げず 8.0 倍(上限の 6.6 割)に置いた。
確率:人手不足と最低賃金の上昇は構造的で、会社の利益率は10年前の水準に近づきやすい。この筋書きに、中立に次ぐ26%を置いた。
悲観 12% 客層が細り、家賃の重さで赤字に戻る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 75 円45 億円
そばや和食の客層が細り、人手不足による閉店が続く。麺処サガミ系は約145店、味の民芸は約38店まで減り、客数も落ちる。値上げは通らず、割引でつなぐ。それでも店の家賃は同じように出ていくため、営業利益は1億円ほどにまで落ち、味の民芸は赤字になる。店の設備は減損され、自己資本は約175億円に減る。ここまで落ちても、会社はすぐには倒れない。純現金と、ためた自己資本があるからだ。ただ、純現金の多くは家賃の約束に食われ、株主に残る価値は、その現金の分くらいになる。配当は、減配しながら続けるのが精一杯の10年である。
株主優待は現物の還元で、年およそ3億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に15億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食):数量 145(店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映))× 価格 1.80(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 261 億円・営業利益 3 億円。営業利益率1%
- 味の民芸(和食ファミレス):数量 38.0(店数換算の来店量(店))× 価格 2.00(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 76 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率-2%
- その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか):数量 36.0(店数換算の来店量(店))× 価格 1.45(1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む))→ 売上 52 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%
倍率:営業利益が 1 億円ほどに落ち、稼ぐ力(純利益 0.5 億円 ÷ k 8.3% = 6 億円)はほぼ無い。価値は純現金 45 億円を、今の自己資本 197 億円に対する PBR 0.23 倍で表した。家賃の約束が現金を食う分、床は純現金までとし、含み益などは足さない。EV ÷ 営業利益は谷の一年の利益で測らず、稼ぐ力と純現金で置いた。
確率:小さな会社で赤字期が何度もあるが、財務は堅く、すぐには倒れない。構造的に負ける確率は12%と、外食の同業並みにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
和食麺処サガミ・長助(そば中心の和食)
そばを軸に和食の定食や季節の膳を出す「和食麺処サガミ」と、十割そばの「長助」。会社の売上の6割強を占めると推定する中心事業。
| 数量店数換算の来店量(店・客数の増減は店数換算で反映) | 価格1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 175 | 1.45 | 254 | 22 |
| 10 年後 中立 | 172 | 1.94 | 335 | 21 |
取り方:店数274・売上394億円のうち、麺処サガミと長助を約175店、売上254億円と推定した(会社は業態別を非開示)。1店舗当たりは約1.45億円。10年の価格は物価並みの1.34倍を基本にした。客数は人口減と高齢化で少しずつ減るため、店数換算の来店量は横ばいから微減に置いた。
味の民芸(和食ファミレス)
和食の食事や宴会を大きな店で出すファミレス型の「味の民芸」。客単価は麺処より高いが、店が大きい分、人手と家賃の重さも大きい。
| 数量店数換算の来店量(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 1.60 | 88 | 5 |
| 10 年後 中立 | 52.0 | 2.14 | 111 | 4 |
取り方:味の民芸を約55店、売上88億円と推定した。1店舗当たりは約1.6億円で、麺処より大きな店。10年の価格は物価並みの1.34倍を基本にし、不採算店の閉鎖で店数換算は少し減らした。
その他(どんどん庵・びんむぎ・海外ほか)
どんどん庵・びんむぎ・海外(ベトナムなど)の店と、それ以外の周辺業態。個々は小さく、利益への寄与も小さい。
| 数量店数換算の来店量(店) | 価格1店舗当たり年間売上(億円。値上げの指数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 44.0 | 1.18 | 52 | 3 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 1.58 | 76 | 3 |
取り方:どんどん庵・びんむぎ・海外などを約44店、売上52億円と推定した。1店舗当たりは約1.2億円。10年の価格は物価並みの1.34倍を基本にし、数店の出店で店数換算は少し増やした。
リスクと懸念
山の利益率が戻る
営業利益率は直近の7.6%が例外で、10年前は3%前後、赤字の期もあった。会社自身が今期は24億円への減益を見込む。値上げと客数の戻りが一巡すれば、人件費の上昇がそのまま利益を削る。倍率を払う前に、まずこの山を疑う必要がある。
人手不足が出店と品質を縛る
前の中計では、出店が計画に届かなかった。理由は店で働く人が足りなかったからだと会社が認めている。人を確保するために賃金を上げれば利益が減り、確保できなければ店を増やせない。外食の小さな会社には、どちらの道も重い。
家賃という固定の約束
店は賃借が多く、家賃は売上の6〜7%ほどと推定する。残りの年数を5年とみれば、約束は120億円ほどになる。売上が落ちても家賃は落ちない。2028年3月期から新リース会計基準で、この約束が貸借対照表に載り、自己資本比率は下がって見える。
そば・うどん店の縮小と客層の高齢化
そばやうどんの店は、2006年から2021年で約3万4000から約2万3000弱へ減った。主な客層が高齢者に寄るなら、10年で客層そのものが細る。若い客は、セルフ方式の丸亀製麺のような店へ流れやすい。
資本が眠る
出店が進まず、純現金と自己資本比率7割超が積み上がる。使い道がなければ、ROEは5%台にとどまり、資本コストを下回る。配当や自社株買いに回すか、買収に使うかの方針が曖昧なまま続くのは、株主にとってのリスクである。
食材費と円安
そば粉や小麦、魚介の価格は、輸入の割合が高く、円安150円の前提ではさらに上がりやすい。値上げが追いつかなければ、原価率が上がり、利益を直接削る。山の利益率が戻る場合、最初に効くのは、この原価と人件費の2つだ。
今後の分かれ目
- 営業利益率が6%台を保ち、2年続けて計画を上回ったら
- 山ではなく実力だったと見直し、楽観とやや楽観の確率を上げる。値上げの定着と、店の運営の改善が本物だったと見る。
- 営業利益率が4%台に戻り、第2四半期以降も減益が続いたら
- 山の利益だったと確認できる。やや悲観と悲観の確率を上げ、中立の利益率も下げて考える。
- 出店と店で働く人の確保が、計画どおり進むようになったら
- 出店の天井が開き、店数が10年で10%以上伸びる可能性が出る。やや楽観寄りに確率を移す。
- 配当性向の引き上げや、自社株買いの方針が打ち出されたら
- 眠っていた現金が株主に戻る。ROEは上がり、倍率の上限に効く。ただし利益そのものは変わらないので、価値の見直しは小幅にとどめる。
- 大型のM&Aや、海外での大きな出店が発表されたら
- 買収額と稼ぎの見合いを確認する。高い値段での買収なら、資本の使い方が悪化したと見て、やや悲観に寄せる。
- 最低賃金の上昇が、値上げのペースを上回り続けたら
- 利益率の低下が構造的だとみて、やや悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 営業利益率の四半期推移(今期予想24億円との差)
- 既存店の客数と客単価(値上げの定着の確認)
- 出店数・閉店数と、店で働く人の確保状況
- 配当方針・自社株買い・現金の使い道
- 新リース会計基準の適用後の自己資本比率と、家賃の約束の大きさ
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに店数換算の来店量(実質)と1店舗当たり売上(名目)で10年を積み、中立の利益は、山の7.6%でなく過去の3%と直近の間の5%台半ばに置いた。倍率は、ROEが資本コストに届かないので1÷kの上限から決め、今の値段には寄せていない。今の値段は、利益が増えても割高のままである。家賃の約束を固定費として悲観に残した。2028年3月期から新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ、家賃を営業費用に入れた形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.28 倍・やや楽観 PER 10.2→12.05 倍・中立 PER 9.6→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality 0.8%を足した8.3%。個別の事情(創業家でなく取引先が株主、出店の人手不足など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。